説明

デュプレクサ

【課題】 横方向に小型化できると共に、全体にコンパクトなデュプレクサを提供する。
【解決手段】 本発明のデュプレクサは、複数枚が積層されて形成され、上部が開放状態となった凹部からなる収納部1aを有する多層基板1を有し、位相回路8が受信用表面弾性波フィルタ11の下部に位置する多層基板1の内層に設けられたため、多層基板1の表面積を小さくできて、横方向に小型化できると共に、送信用表面弾性波フィルタ9は、接続面側を上方にした状態で凹み部1c内に配置して、収納部1a内の位置でワイヤー10ボンディングされるため、ワイヤーボンディングが容易となり、また、送信用表面弾性波フィルタ9の下部に位置する多層基板1の箇所には、放熱手段Hが設けられたため、送信用表面弾性波フィルタ9からの発熱を効果的に放熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話機等の無線機器に用いられる表面弾性波フィルタ(SAWフィルタ)を使用したデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来のデュプレクサの概要を示す斜視図で、次に、従来のデュプレクサの構成を図6に基づいて説明すると、平板状のセラミック基板51上には、送信用の表面弾性波フィルタ(SAWフィルタ)52と受信用の表面弾性波フィルタ(SAWフィルタ)53が間隔を置いて配置されている。
【0003】
また、セラミック基板51上には、表面弾性波フィルタ52、53との間に、位相回路54が配置されて、これ等の表面弾性波フィルタ52、53,及び位相回路54は、電気的に接続された構成となって、従来のデュプレクサが形成されている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
しかし、従来のデュプレクサは、表面弾性波フィルタ52、53,及び位相回路54が1枚のセラミック基板51上に並列状態で配置されるため、横方向に大型になるばかりか、表面弾性波フィルタ52、53,及び位相回路54を覆うカバーを設けると、全体が一層大型になる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−176337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のデュプレクサは、表面弾性波フィルタ52、53,及び位相回路54が1枚のセラミック基板51上に並列状態で配置されるため、横方向に大型になるばかりか、表面弾性波フィルタ52、53,及び位相回路54を覆うカバーを設けると、全体が一層大型になるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は横方向に小型化できると共に、全体にコンパクトなデュプレクサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の解決手段として、複数枚が積層されて形成され、上部が開放状態となった凹部からなる収納部を有する多層基板と、送信信号用の帯域通過フィルタとして動作し、前記収納部内に配置された送信用表面弾性波フィルタと、受信信号用の帯域通過フィルタとして動作し、前記収納部内に配置された受信用表面弾性波フィルタとを備え、前記多層基板の前記収納部内の底部には、前記底部から段差を持って形成された凹み部を有し、前記送信用表面弾性波フィルタは、接続面側を上方にした状態で前記凹み部内に配置して、前記収納部内の位置でワイヤーボンディングされ、前記受信用表面弾性波フィルタは、接続面側を下方に状態で前記底部上の位置で接続され、前記送信用表面弾性波フィルタの下部に位置する前記多層基板の箇所には、放熱手段を設けると共に、前記受信用表面弾性波フィルタの下部に位置する前記多層基板の内層には、位相回路を設けた構成とした。
【0009】
また、第2の解決手段として、前記送信用表面弾性波フィルタの上部に位置する前記接続面側は、前記受信用表面弾性波フィルタの前記接続面側の反対側の上部より低くすると共に、前記多層基板の上端には、前記収納部を塞ぐ蓋体が設けられた構成とした。
【0010】
また、第3の解決手段として、前記放熱手段は、前記凹み部の底面に設けられた金属体と、前記多層基板の下面に設けられた放熱用ランド部と、前記多層基板に設けられ、前記金属体からの熱を前記放熱用ランド部に伝導する熱伝導体で形成され、前記送信用表面弾性波フィルタの下部が前記金属体に接触した構成とした。
【0011】
また、第4の解決手段として、前記収納部の底部には、少なくとも接地用パターンが設けられると共に、前記送信用表面弾性波フィルタと前記受信用表面弾性波フィルタは、前記収納部の前記底部上の位置で接続された構成とした。
【0012】
また、第5の解決手段として、前記凹み部の外周に位置する前記収納部の底部上には、前記底部より高くするための積層部が設けられ、前記送信用表面弾性波フィルタは、前記積層部上の位置で前記ワイヤーボンディングされた構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明のデュプレクサは、複数枚が積層されて形成され、上部が開放状態となった凹部からなる収納部を有する多層基板と、送信信号用の帯域通過フィルタとして動作し、収納部内に配置された送信用表面弾性波フィルタと、受信信号用の帯域通過フィルタとして動作し、収納部内に配置された受信用表面弾性波フィルタとを備え、多層基板の収納部内の底部には、底部から段差を持って形成された凹み部を有し、送信用表面弾性波フィルタは、接続面側を上方にした状態で凹み部内に配置して、収納部内の位置でワイヤーボンディングされ、受信用表面弾性波フィルタは、接続面側を下方に状態で底部上の位置で接続され、送信用表面弾性波フィルタの下部に位置する多層基板の箇所には、放熱手段を設けると共に、受信用表面弾性波フィルタの下部に位置する多層基板の内層には、位相回路を設けた構成とした。
即ち、位相回路が受信用表面弾性波フィルタの下部に位置する多層基板の内層に設けられたため、多層基板の表面積を小さくできて、横方向に小型化できると共に、送信用表面弾性波フィルタは、接続面側を上方にした状態で凹み部内に配置して、収納部内の位置でワイヤーボンディングされるため、ワイヤーボンディングが容易となり、また、送信用表面弾性波フィルタの下部に位置する多層基板の箇所には、放熱手段が設けられたため、送信用表面弾性波フィルタからの発熱を効果的に放熱することができる。
【0014】
また、送信用表面弾性波フィルタの上部に位置する接続面側は、受信用表面弾性波フィルタの接続面側の反対側の上部より低くすると共に、多層基板の上端には、収納部を塞ぐ蓋体が設けられたため、ワイヤーボンディングが一層容易となる上に、全体としてコンパクトで、小型のものが得られる。
【0015】
また、放熱手段は、凹み部の底面に設けられた金属体と、多層基板の下面に設けられた放熱用ランド部と、多層基板に設けられ、金属体からの熱を放熱用ランド部に伝導する熱伝導体で形成され、送信用表面弾性波フィルタの下部が金属体に接触したため、送信用表面弾性波フィルタからの発熱が多層基板外に効果的に放熱することができる。
【0016】
また、収納部の底部には、少なくとも接地用パターンが設けられると共に、送信用表面弾性波フィルタと受信用表面弾性波フィルタは、収納部の底部上の位置で接続されたため、送信用表面弾性波フィルタと受信用表面弾性波フィルタの接続構造を簡単にできて、配線の引き回しの容易なものが得られる。
【0017】
また、凹み部の外周に位置する収納部の底部上には、底部より高くするための積層部が設けられ、送信用表面弾性波フィルタは、積層部上の位置でワイヤーボンディングされたため、ワイヤーを短くできて、ワイヤーボンディングが一層容易なものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のデュプレクサの図面を説明すると、図1は本発明のデュプレクサの第1実施例に係る要部断面図、図2は本発明のデュプレクサの第1実施例に係り、蓋体を取り去った状態の平面図、図3は本発明のデュプレクサの第1実施例に係り、送信用表面弾性波フィルタと受信用表面弾性波フィルタの接続状態を示す要部断面図、図4は本発明のデュプレクサの第2実施例に係り、蓋体を取り去った状態の平面図、図5は本発明のデュプレクサの第2実施例に係り、送信用表面弾性波フィルタと受信用表面弾性波フィルタの接続状態を示す要部断面図である。
【0019】
次に、本発明のデュプレクサの第1実施例に係る構成を図1〜図3に基づいて説明すると、複数枚が積層されて形成された多層基板1は、上部が開放状態となった凹部からなる収納部1aと、この収納部1a内の位置で、底部1bから段差を持って形成された凹み部1cを有する。
【0020】
また、この多層基板1の底部1b上には、接地用パターン2aを含む配線パターン2が設けられると共に、凹み部1cの底面には、熱伝導性の良い金属体3が設けられ、更に、金属体3と対向する多層基板1の下面1dには、放熱用ランド部4が設けられて、金属体3と放熱用ランド部4は、多層基板1内に設けられた熱伝導体(サーマルビア)5によって繋がれて、金属体3,放熱用ランド部4,及び熱伝導体5からなる放熱手段Hが形成されている。
【0021】
また、凹み部1cが設けられていない多層基板1の内層には、ストリップライン6と、このストリップライン6の上下に位置する内層に設けられた二つのグランド導体7が設けられて、位相回路8が形成されている。
【0022】
送信信号用の帯域通過フィルタとして動作する送信用表面弾性波フィルタ(SAWフィルタ)9は、接続面9aを有し、この送信用表面弾性波フィルタ9は、接続面9aを上方にして凹み部1c内に配置され、接続面9aと反対側の下部9bが金属体3に接触した状態で、ワイヤー10によるボンディングによって底部1b上に位置する配線パターン2に接続されると共に、ワイヤー10の一部は、接地用パターン2aに接続された状態となる。
【0023】
受信信号用の帯域通過フィルタとして動作する受信用表面弾性波フィルタ(SAWフィルタ)11は、接続面11aを有し、この受信用表面弾性波フィルタ11は、位相回路8が設けられた位置と対向する底部1b上に、接続面11aを下方にして配置され、フリップチップ等によって、底部1b上に位置する配線パターン2に接続されると共に、一部は、接地用パターン2aに接続された状態となる。
【0024】
そして、送信用表面弾性波フィルタ9と受信用表面弾性波フィルタ11は、同一面である底部1b上で接続されると共に、送信用表面弾性波フィルタ9の上部に位置する接続面9aは、受信用表面弾性波フィルタ11の接続面1aと反対側の上部11bより低くなっており、これによって、送信用表面弾性波フィルタ9の収納を効率的に行うと共に、ワイヤー10の収納を確保している。
【0025】
また、送信用表面弾性波フィルタ9と受信用表面弾性波フィルタ11が収納部1a内に取り付けられると、位相回路8と送信用表面弾性波フィルタ9、及び受信用表面弾性波フィルタ11間は、電気的に接続された状態となっている。
そして、多層基板1の上端には、平板状の蓋体12が取り付けられて、収納部1aを塞ぐと、本発明のデュプレクサが形成される。
【0026】
このような構成を有する本発明のデュプレクサは、使用途上において、発熱量の大きな送信用表面弾性波フィルタ9が発熱するが、この熱は、放熱手段Hである金属体3と熱伝導体5を介して放熱用ランド部4に伝導して、放熱用ランド部4によって多層基板1外に放熱されるようになる。
【0027】
また、図4,図5は本発明のデュプレクサの第2実施例を示し、この第2実施例を説明すると、凹み部1cの外周に位置する収納部1aの底部1b上には、底部1bより高くするための積層部1eが設けられ、送信用表面弾性波フィルタ9は、積層部1e上の位置でワイヤー10によるボンディングが行われたものである。
【0028】
その他の構成は、上記第1実施例と同様であるので、同一部品に同一番号を付し、ここではその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のデュプレクサの第1実施例に係る要部断面図。
【図2】本発明のデュプレクサの第1実施例に係り、蓋体を取り去った状態の平面図。
【図3】本発明のデュプレクサの第1実施例に係り、送信用表面弾性波フィルタと受信用表面弾性波フィルタの接続状態を示す要部断面図。
【図4】本発明のデュプレクサの第2実施例に係り、蓋体を取り去った状態の平面図。
【図5】本発明のデュプレクサの第2実施例に係り、送信用表面弾性波フィルタと受信用表面弾性波フィルタの接続状態を示す要部断面図。
【図6】従来のデュプレクサの斜視図。
【符号の説明】
【0030】
1:多層基板
1a:収納部
1b:底部
1c:凹み部
1d:下面
1e:積層部
2:配線パターン
2a:接地用パターン
3:金属体
4:放熱用ランド部
5:熱伝導体
H:放熱手段
6:ストリップライン
7:グランド導体
8:位相回路
9:送信用表面弾性波フィルタ
9a:接続面
9b:下部
10:ワイヤー
11:受信用表面弾性波フィルタ
11a:接続面
11b:上部
12:蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚が積層されて形成され、上部が開放状態となった凹部からなる収納部を有する多層基板と、送信信号用の帯域通過フィルタとして動作し、前記収納部内に配置された送信用表面弾性波フィルタと、受信信号用の帯域通過フィルタとして動作し、前記収納部内に配置された受信用表面弾性波フィルタとを備え、前記多層基板の前記収納部内の底部には、前記底部から段差を持って形成された凹み部を有し、前記送信用表面弾性波フィルタは、接続面側を上方にした状態で前記凹み部内に配置して、前記収納部内の位置でワイヤーボンディングされ、前記受信用表面弾性波フィルタは、接続面側を下方に状態で前記底部上の位置で接続され、前記送信用表面弾性波フィルタの下部に位置する前記多層基板の箇所には、放熱手段を設けると共に、前記受信用表面弾性波フィルタの下部に位置する前記多層基板の内層には、位相回路を設けたことを特徴とするデュプレクサ。
【請求項2】
前記送信用表面弾性波フィルタの上部に位置する前記接続面側は、前記受信用表面弾性波フィルタの前記接続面側の反対側の上部より低くすると共に、前記多層基板の上端には、前記収納部を塞ぐ蓋体が設けられたことを特徴とする請求項1記載のデュプレクサ。
【請求項3】
前記放熱手段は、前記凹み部の底面に設けられた金属体と、前記多層基板の下面に設けられた放熱用ランド部と、前記多層基板に設けられ、前記金属体からの熱を前記放熱用ランド部に伝導する熱伝導体で形成され、前記送信用表面弾性波フィルタの下部が前記金属体に接触したことを特徴とする請求項1、又は2記載のデュプレクサ。
【請求項4】
前記収納部の底部には、少なくとも接地用パターンが設けられると共に、前記送信用表面弾性波フィルタと前記受信用表面弾性波フィルタは、前記収納部の前記底部上の位置で接続されたことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のデュプレクサ。
【請求項5】
前記凹み部の外周に位置する前記収納部の底部上には、前記底部より高くするための積層部が設けられ、前記送信用表面弾性波フィルタは、前記積層部上の位置で前記ワイヤーボンディングされたことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のデュプレクサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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