説明

デルタ−8デサチュラーゼ遺伝子、それによってコードされる酵素およびそれらの使用

本発明は、デルタ−8デサチュラーゼをコードする単離されたポリヌクレオチド、この単離されたポリヌクレオチドによってコードされるデルタ−8デサチュラーゼ、その単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター、この発現ベクターを含む宿主細胞およびデルタ−8デサチュラーゼおよびポリ不飽和脂肪酸を生成するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デルタ−8デサチュラーゼをコードする単離されたポリヌクレオチド、それらの単離されたポリヌクレオチドによってコードされるデルタ−8デサチュラーゼ、単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター、発現ベクターを含む宿主細胞ならびにデルタ−8デサチュラーゼおよびポリ不飽和脂肪酸を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)は、あらゆる生活形態の適切な機能化において多くの役割を果たす。例えば、PUFAは細胞の原形質膜の重要な成分であり、そこではPUFAはリン脂質の形態で見出される。PUFAは乳児脳の適切な発育に必要であり、成熟した哺乳動物における組織形成および修復にも必要である。
【0003】
多数の酵素、最も顕著にはデサチュラーゼおよびエロンガーゼは、PUFAの生合成に関与している(図1参照)。デサチュラーゼは、基質の脂肪酸アルキル鎖内の炭素原子間に不飽和化(例えば、二重結合)の導入を触媒する。エロンガーゼは、脂肪酸基質に二炭素単位の付加を触媒する。例えば、リノール酸(LA、18:2n−6)はΔ12−デサチュラーゼによってオレイン酸(OA、18:1n−9)から生成される。エイコサジエン酸(EDA、20:2n−6)はΔ9−エロンガーゼによってLAから生成される。ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA、20:3n−6)はΔ8−デサチュラーゼによってEDAから生成される(図1参照)。アラキドン酸(ARA、20:4n−6)はΔ5−デサチュラーゼによってDGLAから生成される(図1参照)。
【0004】
多数の重要な長鎖PUFAが当該技術分野において知られている。例えば、最も重要な長鎖PUFAの1つはエイコサペンタエン酸(EPA)である。EPAは菌類および海洋油において見出されている。第2の重要な長鎖PUFAはドコサヘキサエン酸(DHA)である。DHAは、ほとんどの場合、魚油に見出され、また哺乳動物の脳組織から精製され得る。第3の重要な長鎖PUFAはARAである。ARAは糸状菌において見出され、また肝臓および副腎を含む哺乳動物組織から精製され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ARA、EPAおよび/またはDHAは、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路または従来のΔ6−デサチュラーゼ経路のいずれかにより生成され得る(図1参照)。長鎖PUFA、特にARA、EPAおよびDHAの生成に関する従来のΔ6経路における基質の脂肪酸に活性なエロンガーゼは、従来、同定されている。LAをDGLAに変換し、アルファ−リノレン酸(ALA)をω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)に変換するための従来のΔ6−デサチュラーゼ経路は、LAをガンマ−リノレン酸(GLA)に変換し、ALAをステアリドン酸に変換するΔ6−デサチュラーゼ酵素;ならびにGLAをDGLAに変換し、SDAをω3−ETAに変換するC18−エロンガーゼを利用する。しかしながら、ある場合には、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼは、従来のΔ6−デサチュラーゼ経路よりも優先され得る。例えば、特定の残余物であるオメガ−6またはオメガ−3脂肪酸中間体、例えば、GLAまたはSDAは、DGLA、ARA、ω3−ETA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸(DPA)および/またはDHAの生成過程で所望されない場合、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路が、GLAおよびSDA形成を迂回するための従来のΔ6−デサチュラーゼ経路の代替経路として使用されてもよい。Δ8−デサチュラーゼは、8番目と9番目の炭素原子(この分子のカルボキシル末端から数える)の間で脂肪酸を非飽和化し、例えば、ω6−エイコサジエン酸(EDA)からDGLAおよび/またはω3−エイコサトリエン酸(ω3−ETrA)からω3−ETAへの変換を触媒し得るため、Δ8−デサチュラーゼがこの経路において有用である。したがって、長鎖PUFAの生成に使用し得るΔ8−デサチュラーゼの新しい供給源が当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
一態様では、本発明は、デサチュラーゼ活性を有し、そのアミノ酸配列が、配列番号29を含むアミノ酸配列と少なくとも55%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むまたはそれに相補的な単離されたヌクレオチド酸またはその断片に関する。単離された核酸またはその断片は、ω6−エイコサジエン酸またはω3−エイコサトリエン酸を基質として利用する機能的に活性なΔ8−デサチュラーゼ酵素をコードする。この単離された核酸配列は、エミリアナ・ハックスレイ(Emiliana huxleyi)、好ましくはエミリアナ・ハックスレイCCMP378から得ることができる。
【0007】
別の態様では、本発明は、配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的である単離されたヌクレオチド配列またはその断片に関する。単離されたヌクレオチド配列またはその断片は、基質としてω6−エイコサジエン酸またはω3−エイコサトリエン酸を利用する機能的に活性なΔ8−デサチュラーゼ酵素をコードする。単離されたヌクレオチド配列は配列番号28の配列を有することができる。あるいは、単離されたヌクレオチド配列は配列番号30の配列を有することができる。この単離されたヌクレオチド配列は、エミリアナ・ハックスレイ、好ましくはエミリアナ・ハックスレイCCMP378から得ることができる。
【0008】
別の態様では、本発明は発現ベクターに関する。本発明の発現ベクターは、配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含んでいるまたはその少なくとも55%に相補的である、調節配列に作動的に連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0009】
なおさらなる態様では、本発明は、上記の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。宿主細胞は真核細胞であり得る。具体的には、真核細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞および真菌細胞からなる群から選択される。使用可能である真菌細胞の例は、サッカロミセス(Saccharomyces)属種、カンジダ(Candida)属種、リポミセス(Lipomyces)属種、ヤロウイア(Yarrowia)属種、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属種、ハンゼヌラ(Hansenula)属種、アスペルギルス(Aspergillus)属種、ペニシリウム(Penicillium)属種、ノイロスポラ(Neurospora)属種、トリコデルマ(Trichoderma)属種、およびピチア(Pichia)属種からなる群から選択される真菌細胞である。使用可能である植物細胞の例は、ダイズ、ブラシカ(Brassica)属種、ベニバナ、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタおよび亜麻からなる群から選択される。
【0010】
さらなる別の態様では、本発明は、そのヌクレオチド配列の発現が、植物細胞、植物種子、植物体または植物組織による少なくとも1つのポリ不飽和脂肪酸の生成をもたらす、上記の発現ベクターを含む植物細胞、植物種子、植物体または植物組織に関する。上記発現ベクターによって生成されるポリ不飽和脂肪酸は、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA)またはω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)からなる群から選択される。
【0011】
なおさらなる別の態様では、本発明は、上記の植物細胞、植物種子、植物体または植物組織によって生成される1個以上の植物油または脂肪酸に関する。
【0012】
なおさらなる別の態様では、本発明は、配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列によってコードされる精製されたポリペプチドに関する。
【0013】
なおさらなる別の態様では、本発明は、20個の炭素長であるポリ不飽和脂肪酸(C20−PUFA)基質をその基質の炭素原子8と炭素原子9の間で非飽和化し、配列番号29を含むアミノ酸配列と少なくとも55%のアミノ酸同一性を有する精製されたポリペプチドに関する。
【0014】
なお別の実施態様では、本発明は、配列番号29のアミノ酸配列を有する精製されたポリペプチドに関する。
【0015】
なおさらなる別の実施形態では、本発明は、Δ8−デサチュラーゼ酵素を生成するための方法に関する。この方法は、
a)配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)調節配列に作動的に連結された、ステップa)により単離されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;および
c)Δ8−デサチュラーゼ酵素の生成に十分な時間および条件下で、上記発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ
を含む。
【0016】
上記の方法では、宿主細胞は真核細胞である。具体的には、真核細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞および真菌細胞からなる群から選択される。使用可能である真菌細胞の例は、サッカロミセス属種、カンジダ属種、リポミセス属種、ヤロウイア属種、クリベロマイセス属種、ハンゼヌラ属種、アスペルギルス属種、ペニシリウム属種、ノイロスポラ属種、トリコデルマ属種およびピチア属種からなる群から選択される真菌細胞である。使用可能である植物細胞の例は、ダイズ、ブラシカ属種、ベニバナ、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタおよび亜麻からなる群から選択される。
【0017】
なおさらなる別の実施態様では、本発明は、
a)配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)調節配列に作動的に連結された、ステップa)により単離されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;
c)Δ8−デサチュラーゼ酵素の生成に十分な時間および条件下で、上記発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ;および
d)発現されたΔ8−デサチュラーゼ酵素を、ω6−エイコサジエン酸、ω3−エイコサトリエン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される基質に曝露して、上記基質を生成物のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ
を含む、ポリ不飽和脂肪酸を生成するための方法に関する。
【0018】
上記の方法では、生成物のポリ不飽和脂肪酸は、ジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA)、ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)またはそれらの任意の組み合わせである。
【0019】
さらに、上記の方法は、
生成物のポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つの追加のデサチュラーゼにまたはエロンガーゼに曝露して、生成物のポリ不飽和脂肪酸を別のまたは追加のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ
をさらに含むことができる。生成物のポリ不飽和脂肪酸は、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)もしくはドコサヘキサエン酸(DHA)またはそれらの任意の組み合わせである。
【0020】
なお別の態様では、本発明は、
a)配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)調節配列に作動的に連結された、ステップa)により単離されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;
c)上記b)の発現ベクター、およびデルタ−9エロンガーゼをコードする少なくとも1つの調節配列に作動的に連結された、単離されたヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの追加の組換えDNA構築物を宿主細胞に導入するステップ;
d)発現されたΔ8−デサチュラーゼ酵素およびデルタ−9エロンガーゼを、リノール酸(LA)、アルファ−リノレン酸(ALA)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される基質に曝露して、上記基質を生成物のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ
を含む、宿主細胞においてポリ不飽和脂肪酸を生成するための方法に関する。
【0021】
上記の方法において、生成物のポリ不飽和脂肪酸は、ジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA)もしくはω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)またはそれらの任意の組み合わせである。
【0022】
さらに、上記の方法は、
生成物のポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つの追加のデサチュラーゼにまたはエロンガーゼに曝露して、生成物のポリ不飽和脂肪酸を別のまたは追加のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ
をさらに含むことができる。生成された生成物のポリ不飽和脂肪酸は、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)またはそれらの任意の組み合わせである。
【0023】
上記の方法では、宿主細胞は真核細胞である。具体的には、真核細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞および真菌細胞からなる群から選択される。使用可能である真菌細胞の例は、サッカロミセス属種、カンジダ属種、リポミセス属種、ヤロウイア属種、クリベロマイセス属種、ハンゼヌラ属種、アスペルギルス属種、ペニシリウム属種、ノイロスポラ属種、トリコデルマ属種およびピチア属種からなる群から選択される真菌細胞である。使用可能な植物細胞の例は、ダイズ、ブラシカ属種、ベニバナ、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタおよび亜麻からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】脂肪酸の生合成経路およびこの経路におけるΔ8−デサチュラーゼの役割を示す図である。
【図2A】パブロバ・ルセリ(Pavlova lutheri)CCMP 459(配列番号2)、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)(配列番号3)、ユーグレナ・グラシアリス(Euglena gracialis)(配列番号1)およびパーキンサス(Perkinsus)(配列番号4)由来の既知のΔ8−デサチュラーゼを用いてED3−8(配列番号29)によってコードされるアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。同一の残基は強調され、保存されたヒスチジン−ボックスは下線を引かれ、シトクロームb5ドメインにおける保存領域は下線を引かれる(二重線)。
【図2B】パブロバ・ルセリCCMP 459(配列番号2)、パブロバ・サリナ(配列番号3)、ユーグレナ・グラシアリス(配列番号1)およびパーキンサス(配列番号4)由来の既知のΔ8−デサチュラーゼを用いてED3−8(配列番号29)によってコードされるアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。同一の残基は強調され、保存されたヒスチジン−ボックスは下線を引かれ、シトクロームb5ドメインにおける保存領域は下線を引かれる(二重線)。
【図3A】ユーグレナ・グラシアリス(受託番号AF139720、配列番号1)由来のΔ8−デサチュラーゼのアミノ酸配列を示す図である。
【図3B】パブロバ・ルセリCCMP 459(配列番号2)由来のΔ8−デサチュラーゼのアミノ酸配列を示す図である。
【図4A】パブロバ・サリナ(受託番号DQ995518、配列番号3)由来のΔ8−デサチュラーゼアミノ酸配列を示す図である。
【図4B】パーキンサス・マリヌス(Perkinsus marinus)(受託番号DQ508730、配列番号4)由来のΔ8−デサチュラーゼのアミノ酸配列を示す図である。
【図4C】アカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoenba castellani)(受託番号#CS608483、配列番号5)由来のΔ8−デサチュラーゼのアミノ酸配列を示す図である。
【図5】実施例2に記載されている得られたクローンED3−8のDNA配列(配列番号11)を示す図である。
【図6】実施例2に記載されている得られたクローンED3−8の推定アミノ酸配列(配列番号12)を示す図である。
【図7A】実施例2に記載されている得られたクローンPK15のDNA配列(配列番号15)を示す図である。
【図7B】実施例2に記載されている得られたクローンPK15のアミノ酸配列(配列番号16)を示す図である。
【図8A】実施例2に記載されている得られたクローンED3−8の推定3’末端のDNA配列(配列番号24)を示す図である。
【図8B】実施例2に記載されている得られたクローンED3−8の推定3’末端のアミノ酸配列(出現の順にそれぞれ配列番号25および44−46)を示す図である。
【図9】エミリアナ・ハクスレイCCMP378由来の推定Δ8−デサチュラーゼの1254塩基対の遺伝子配列(配列番号28)を示す図である。
【図10】エミリアナ・ハクスレイCCMP378由来の推定Δ8−デサチュラーゼの1254塩基対の遺伝子配列(配列番号28)によってコードされる417個のアミノ酸のタンパク質(配列番号29)を示す図である。
【図11】エミリアナ・ハクスレイCCMP378由来の推定Δ8−デサチュラーゼのコドン最適化された遺伝子配列(配列番号30)を示す図であり、「ED3−8−EP2−5−SC」と称する。ED3−8−EP2−5−SCは、もとのED3−8遺伝子配列(配列番号28;図9)と66.98%の配列同一性を共有する。コドン最適化された遺伝子の修飾は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列(配列番号29;図10)を変化させなかった。
【図12】イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)(IsoD9)(受託番号CQ831422、配列番号31)由来のΔ9−エロンガーゼの遺伝子配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な記述)
本発明は、エミリアナ(Emiliana)属種、例えば、エミリアナ・ハクスレイ、具体的には、エミリアナ・ハクスレイCCMP378由来のΔ8−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド(例えば、遺伝子)配列および翻訳されたアミノ酸配列に関する。さらに、本発明は、上記遺伝子およびこの遺伝子によってコードされる酵素の使用を含む。例えば、ヌクレオチドおよび対応する酵素は、医薬組成物、栄養組成物、および他の有用な製品に添加することができるポリ不飽和脂肪酸、例えば、DGLA、ARA、EPA、ω3−ETA DPAおよびDHAまたはそれらの任意の組み合わせの生成に使用されてもよい。
【0026】
A.定義
本明細書で使用するとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、その文脈が明らかにそれ以外を記述していない限り、複数表記を含む。本明細書における数値範囲の引用に関して、その間に介在する各数値は、同じ正確度で明示的に想定される。例えば、範囲6−9の場合、6および9に加えて数値7および8が想定され、範囲6.0−7.0の場合、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0が明示的に想定される。
【0027】
a)ブラシカ属種
本明細書で使用するとき、語句「ブラシカ属種」とは、ブラシカ・ユンシア(Brassica juncea)、ブラシカ・ナプス(Brassica napus)、ブラシカ・カリナタ(Brassica carinata)、ブラシカ・オレラセア(Brassica oleracea)、ブラシカ・ニグラ(Brassica nigra)およびブラシカ・カンペストリス(Brassica campestris)の任意の植物を意味する。
【0028】
b)キメラ構築物
本明細書で使用するとき、語句「キメラ構築物」とは、ともに本来は天然に見出されない核酸分子の組み合わせを意味する。したがって、キメラ構築物は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ供給源に由来する調節配列およびコード配列を含んでもよいが、本来は天然に見出されるものとは異なったように並べられてもよい。
【0029】
c)コード配列
本明細書で使用するとき、用語「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を意味する。「調節配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列中またはコード配列の下流(3’非コード配列)に位置されたヌクレオチド配列を意味し、関連したコード配列の転写、RNAプロセッシングもしくは安定性または翻訳に影響を及ぼす。調節配列には、限定されないが、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロンおよびポリアデニル化認識配列が含まれてもよい。
【0030】
d)コドン最適化
「コドン最適化」とは、遺伝子または核酸分子と関連して使用するとき、宿主細胞の好ましいコドンの使用頻度を模倣するように設計されたコドンの使用頻度を有する遺伝子または核酸分子を意味する。
【0031】
e)相補性
本明細書で使用するとき、用語「相補性」とは、2つのDNAセグメント間の関連性の程度を意味する。相補性は、1つのDNAセグメントのセンス鎖が、適切な条件下で他のDNAセグメントのアンチセンス鎖とハイブリダイズし、二重らせんを形成する能力を測定することによって決定される。この二重らせんにはアデニンが一方の鎖に現れ、チミンが他方の鎖に現れる。同様に、グアニンが一方の鎖に現れる場合、シトシンが他方に現れる。2つのDNAセグメントのヌクレオチド配列間の関連性が増すと、2つのDNAセグメントの鎖間のハイブリッド二重鎖を形成する能力が増す。
【0032】
f)によってコードされる、ハイブリダイゼーションおよびストリンジェント条件
本明細書で使用するとき、語句「によってコードされる」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を意味し、ここで、ポリペプチド配列またはその部分は、その核酸配列によってコードされるポリペプチド由来の少なくとも3個の連続したアミノ酸、より好ましくは少なくとも8個の連続したアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも15個の連続したアミノ酸を含む。
【0033】
また、本発明は、PUFAデサチュラーゼ活性を有する酵素をコードし、ストリンジェントな条件下で、配列番号28もしくは配列番号30を含むヌクレオチド配列を含むまたはそれに相補的であるヌクレオチド配列を有する核酸とハイブリダイズすることができる単離されたヌクレオチド配列を包含する。核酸分子は、核酸分子の一本鎖形態が、温度およびイオン強度の適切な条件下で他の核酸分子にアニーリングすることができるとき、別の核酸分子と「ハイブリダイズ可能」である(Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York参照))。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。「ハイブリダイゼーション」は、2つの核酸が相補的な配列を含むことを必要とする。しかしながら、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーによっては、塩基間にミスマッチが生じる場合がある。核酸をハイブリダイズするための適したストリンジェンシーは、核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。このような変数は当業者に周知である。より具体的には、2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が増すと、それらの配列を有する核酸のハイブリッドについてのTm値が増す。長さが100ヌクレオチドより大きなハイブリッドについては、Tmを計算するための式が導き出されている(Sambrookら、上述、参照)。より短い核酸とのハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrookら、上述、参照)。
【0034】
典型的には、ストリンジェント条件は、塩濃度がpH7.0から8.3で約1.5M未満のNaイオンであり、典型的には約0.01から1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、温度が短いプローブ(例えば、10から50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50を超えるヌクレオチド)では少なくとも約60℃という条件となる。また、ストリンジェント条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加により達成されてもよい。低度のストリンジェント条件の例には、30から35%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液を用いた37℃でのハイブリダイゼーション、および1×SSCから2×SSC(20×SSC=3.0MのNaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)中の50から55℃での洗浄が含まれる。中程度のストリンジェント条件の例には、40から45%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中の37℃でのハイブリダイゼーション、および0.5×SSCから1×SSC中の55から60℃での洗浄が含まれる。高度のストリンジェント条件の例には、50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中の37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中の60から65℃での洗浄が含まれる。
【0035】
g)エクソン
本明細書で使用するとき、用語「エクソン」とは、転写される遺伝子であり、その遺伝子から生じる成熟メッセンジャーRNAに見出される遺伝子の配列の一部を意味するが、必ずしも最終遺伝子産物をコードする配列の一部ではない。
【0036】
h)発現、アンチセンス阻害および共抑制
本明細書で使用するとき、用語「発現」とは、機能的な最終産物の生成を意味する。遺伝子の発現は、その遺伝子の転写、および前駆体または成熟タンパク質へのmRNAの翻訳を伴う。
【0037】
本明細書で使用するとき、語句「アンチセンス阻害」とは、標的タンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスRNA転写物の生成を意味する。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「共抑制」とは、同一もしくは実質的に類似の外来または内因性遺伝子の発現を抑制することができるセンスRNA転写物の生成を意味する(米国特許第5,231,020号参照)。
【0039】
i)機能的に同等である断片またはサブ断片
用語「機能的に同等である断片またはサブ断片」および「機能的に同等の断片またはサブ断片」とは、本明細書では交換可能に用いられ、その断片またはサブ断片が活性酵素をコードするか否かに関わらず、遺伝子発現を変更しまたはある種の表現型を生じさせる能力が保持されている単離された核酸分子の部分またはサブ配列を意味する。例えば、その断片またはサブ断片は、形質転換された植物において所望の表現型を生じさせるキメラ構築物の設計に用いることができる。キメラ構築物は、その核酸の断片またはサブ断片が活性酵素をコードするか否かに関わらず、植物のプロモーター配列に対して適切な方向で核酸の断片またはサブ断片を連結させることによって、共抑制またはアンチセンス阻害において使用するために設計され得る。
【0040】
j)遺伝子、天然の遺伝子およびトランス遺伝子
本明細書で使用するとき、用語「遺伝子」とは、特定のタンパク質を発現する核酸分子を意味し、コード配列の前(5’非コード配列)および後(3’非コード配列)にある調節配列を含む。
【0041】
本明細書で使用するとき、語句「天然の遺伝子」とは、それ自体の調節配列を有する、天然に見出される遺伝子を意味する。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「トランス遺伝子」とは、形質転換手法によってゲノムに導入された遺伝子を意味する。
【0043】
k)ゴッシピウム(Gossypium)属種
本明細書で使用するとき、語句「ゴッシピウム属種」は、ゴッシピウム・アルボレウム(Gossypium arboreum)、ゴッシピウム・バルバデンセ(Gossypium barbadense)、ゴッシピウム・ヘルバケウム(Gossypium herbaceum)、ゴッシピウム・ヒルスタム(Gossypium hirsutum)、ゴッシピウム・ヒルスタム・バル・ヒルスタム(Gossypium hirsutum var hirsutum)、ゴッシピウム・ヒルスタム・バル・マリア−ガランテ(Gossypium hirsutum var marie−galante)、ゴッシピウム ラピデウム(Gossypium lapideum)、ゴッシピウム・ストゥルティアヌム(Gossypium sturtianum)、ゴッシピウム・ツベリ(Gossypium thuberi)、ゴッシピウム・ツルベリ(Gossypium thurberi)、ゴッシピウム・トメントスム(Gossypium tomentosum)またはゴッシピウム・トルメントスム(Gossypium tormentosum)の任意の植物を意味する。
【0044】
l)相同性
用語「相同性」、「相同的」、「実質的に類似した」および「実質的に対応する」とは、本明細書では交換可能に使用され、1種以上のヌクレオチド塩基における変化が遺伝子発現を媒介するまたはある種の表現型を生じさせる核酸分子の能力に影響を及ぼさない核酸分子を意味する。また、これらの用語は、初期の未修飾分子と比較して、得られた核酸分子の機能特性を実質的に変更しない1種以上のヌクレオチドの欠失または挿入などの本発明の核酸分子の修飾を意味する。したがって、当業者が認識するように、本発明は特定の例示的な配列よりも多くの配列を包含することが理解される。
【0045】
m)宿主細胞
本明細書で使用するとき、語句「宿主細胞」とは、本発明の単離された核酸配列またはその断片を含む細胞を意味する。宿主細胞は、原核細胞(例えば、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シアノバクテリアおよびバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)または真核細胞(例えば、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞もしくは哺乳動物細胞)であってもよい。
【0046】
使用可能である真菌細胞の例は、サッカロミセス属種、カンジダ属種、リポミセス属種、ヤロウイア属種、クリベロマイセス属種、ハンゼヌラ属種、アスペルギルス属種、ペニシリウム属種、ノイロスポラ属種、トリコデルマ属種およびピチア属種である。特に好ましい真菌細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0047】
植物細胞は、単子葉植物の植物細胞または双子葉植物の植物細胞であり得る。特に好ましい植物細胞は、グリシン・マックス(Glycine max)(例えば、ダイズ)、ブラシカ属種、カーサマス・ティンクトリアス(Carthamus tinctorius)L.(例えば、ベニバナ)、ヘリアンサス・アナス(Helianthus annuus)(例えば、ヒマワリ)、ズィー・メイス(Zea mays)(例えば、トウモロコシ)、ゴッシピウム属種およびリナム・ウシタティシムム(Linum usitatissimum)(例えば、亜麻)由来である。
【0048】
n)同一性、配列同一性および配列同一性の割合(同一性%)
本明細書で使用するとき、用語「同一性」または「配列同一性」とは、本明細書では交換可能に使用され、ヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関連して使用される場合、特定の比較ウィンドウと対比して、一致が最大となるように並べられた場合と同じようである2つの配列における核酸塩基またはアミノ酸残基を意味する。したがって、同一性は、2つのDNAまたはポリペプチドセグメントの同じ鎖(センスまたはアンチセンス)間の類似、一致または同等の程度として定義される。
【0049】
「配列同一性の割合」または「同一性%」は、特定の領域に対して最適に並べられた2つの配列を比較し、同一塩基が両方の配列において出現する位置の数を決定して、合致した位置の数を得て、このような位置の数を比較されているセグメント内の位置の総数で除し、およびこの結果に100を掛けることによって計算される。配列の最適アラインメントは、SmithおよびWaterman,Appl.Math.2:482(1981)のアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:2444(1988)の方法によって、および関連アルゴリズムを実装するコンピュータプログラム(例えば、Higginsら,CABIOS.5L151−153(1989))、FASTDB(インテリジェネティックス(Intelligenetics))、BLAST(全米バイオメディカル情報センター(National Center for Biomedical Information);Altschulら,Nucleic Acids Research 25:3389−3402(1997))、PILEUP(ジェネティックスコンピュータグループ(Genetics Computer Group)、ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI))またはGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA(ウィスコンシンジェネティックスソフトウェアパッケージリリース7.0(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0)、ジェネティックスコンピュータグループ(Genetics Computer Group)、ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI))によって実行することができる(米国特許第5,912,120号参照)。配列同一性パーセントの有用な例は、限定されないが、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が含まれる。これらの同一性は、本明細書に記載されているプログラムのいずれかを用いて決定することができる。
【0050】
o)間接的または直接的に
本明細書で使用するとき、用語「間接的に」は、ポリ不飽和脂肪酸の生成における遺伝子およびその対応する酵素の使用と関連して使用する場合、第1の酸が第1の酵素によって第2の酸(すなわち、経路中間体)に変換され(例えば、Δ9−エロンガーゼによって、例えば、LAからEDA)、次に、第2の酸が、第2の酵素の使用によって第3の酸に変換される(例えば、Δ8−デサチュラーゼによって、例えば、EDAからDGLA)状況を包含する。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「直接的に」は、ポリ不飽和脂肪酸の生成における遺伝子およびその対応する酵素の使用と関連して使用する場合、この酵素が直接、第1の酸を第2の酸に変換し、ここで、次に第2の酸は組成物において使用される(例えば、Δ9−エロンガーゼによって、例えば、LAからEDAへの変換または例えば、Δ8−デサチュラーゼによって、例えば、ω3−ETraからω3−ETAへの変換)状況を包含する。
【0052】
p)イントロン
本明細書で使用するとき、用語「イントロン」とは、タンパク質配列の一部をコードしない遺伝子における介在配列を意味する。したがって、このような配列はRNAに転写されるが、その後、切り出され、翻訳されない。また、この用語は切り出されたRNA配列についても使用される。
【0053】
q)単離された
本明細書で使用するとき、用語「単離された」とは、当該技術分野において知られている日常的な技術を用いて、天然に存在する環境または供給源から(例えば、細菌、藻、菌類、植物、脊椎動物、哺乳動物などから)取り出される核酸分子(DNAもしくはRNA)またはタンパク質もしくは生物学的に活性なその部分を意味する。単離された核酸分子またはタンパク質は、天然に存在する環境において核酸分子またはタンパク質を通常伴うまたは相互作用する成分を実質的にまたは本質的に含まない。
【0054】
r)単離された核酸断片または単離された核酸配列
本明細書で使用するとき、語句「単離された核酸断片」または「単離された核酸配列」とは、一本鎖もしくは二本鎖であり、合成のヌクレオチド塩基、天然に存在しないヌクレオチド塩基もしくは変更されたヌクレオチド塩基を含んでもよい、RNAまたはDNAのポリマーを意味する。DNAのポリマーの形態である単離された核酸断片は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1個以上のセグメントで構成されてもよい。(特定されたポリヌクレオチドの「断片」は、特定されたヌクレオチド配列の領域と同一であるまたは相補的である、およそ、少なくとも約10個の連続したヌクレオチド、少なくとも約15個の連続したヌクレオチド、少なくとも約20個のヌクレオチドなどの連続配列を含むポリヌクレオチド配列を意味する。)ヌクレオチド(これらの5’−一リン酸エステルの形態で通常見出される)は、以下のようなそれらの一文字記号で表される:アデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれRNAまたはDNAに対する)については「A」、シチジル酸またはデオキシシチジル酸については「C」、グアニル酸またはデオキシグアニル酸については「G」、ウリジル酸については「U」、デオキシチミジル酸については「T」、プリン(AまたはG)については「R」、ピリミジン(CまたはT)については「Y」、GまたはTについては「K」、AまたはCまたはTについては「H」、イノシンについては「I」、および任意のヌクレオチドについては「N」である。
【0055】
s)成熟および前駆体
本明細書で使用するとき、用語「成熟」とは、用語「タンパク質」と関連して使用される場合、翻訳後に処理されたポリペプチド;すなわち、一次翻訳産物に存在する任意のプレペプチドまたはプロペプチドが除かれたものを意味する。
【0056】
本明細書で使用するとき、用語「前駆体」とは、用語「タンパク質」と関連して使用される場合、mRNAの翻訳の一次産物;すなわち、プレペプチドおよびプロペプチドがなおも存在する一次産物を意味する。プレペプチドおよびプロペプチドは、限定されないが、細胞内局在化シグナルであってもよい。
【0057】
t)3’非コード配列
本明細書で使用するとき、語句「3’非コード配列」とは、コード配列の下流に位置されたDNA配列を意味し、ポリアデニル化認識配列、およびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことができる調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆体の3’端へのポリアデニル酸トラクトの付加に影響を及ぼすことによって通常特徴付けられる。異なる3’非コード配列の使用は、Ingelbrechtら,(1989)Plant Cell 1:671−680によって例示されている。
【0058】
u)天然に存在しない
本明細書で使用するとき、語句「天然に存在しない」とは、人工的であり、本来は天然に見出されるものとは一致しないものを意味する。
【0059】
v)作動的に連結された
本明細書で使用するとき、語句「作動的に連結された」とは、1つの核酸配列の機能が他方によって制御されるように、単一の核酸分子への核酸配列の関連性を意味する。例えば、プロモーターは、コード配列の発現を制御することができる(すなわち、コード配列がプロモーターの転写調節下にある)場合にコード配列と作動的に連結されている。コード配列は、センスまたはアンチセンス配向で調節配列に作動的に連結され得る。別の例では、本発明の相補的RNA領域は、標的mRNAの5’側もしくは標的mRNAの3’側もしくは標的mRNA内に、直接的または間接的に作動的に連結させることができ、または第1の相補的領域が標的mRNAの5’側にあり、その相補体が標的mRNAの3’側にある。
【0060】
w)植物
本明細書で使用するとき、用語「植物」とは、植物体全体、植物器官、植物組織、種子、植物細胞、種子およびその子孫を意味する。植物は、限定されないが、種子、懸濁培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉および小胞子を含む。
【0061】
x)ポリメラーゼ連鎖反応またはPCR
本明細書で使用するとき、語句「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」とは、多量の特定DNAセグメントを合成するための技術を意味し、一連の繰り返しサイクルからなる(Perkin Elmer Cetus Instruments,コネチカット州ノーウォーク)。典型的には、二本鎖DNAを熱変性し、標的セグメントの3’境界に相補的な2つのプライマーが低温でアニーリングし、次に中間温度で伸長する。これらの3つの連続ステップの1セットは1サイクルと呼ばれる。
【0062】
PCRは、短期間の鋳型の反復複製によって、数百万倍にDNAを増幅させるために使用される強力な技術である(Mullisら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263−273(1986);Erlichら,欧州特許出願第50,424号;欧州特許出願第第84,796号;欧州特許出願第258,017号、欧州特許出願第237,362号;Mullis,欧州特許出願第201,184,Mullisら,米国特許第4,683,202号;Erlich,米国特許第4,582,788号;およびSaikiら,米国特許第4,683,194号)。この方法は、DNA合成を開始するための特定のインビトロで合成されたオリゴヌクレオチドのセットを利用する。プライマーの設計は、分析されることが望まれるDNAの配列に依存する。この技術は、高温で鋳型を融解する多数のサイクル(通常20から50回)を通じて行われ、この鋳型内で相補配列にプライマーがアニーリングできるようにし、次に、DNAポリメラーゼを用いてこの鋳型を複製する。PCR反応の生成物は、アガロースゲルにおける分離、続くエチジウムブロマイド染色、およびUV透光による視覚化によって分析される。あるいは、放射性dNTPがPCRに添加され、この生成物に標識を組み込むことができる。この場合において、PCRの生成物は、ゲルのx線フィルムへの曝露によって視覚化される。放射性標識PCR生成物のさらなる利点は、個々の増幅生成物のレベルが定量され得るということである。
【0063】
y)プロモーターおよびエンハンサー
本明細書で使用するとき、用語「プロモーター」とは、コード配列または機能性RNAの発現を調節ことができるDNA配列を意味する。プロモーター配列は、近位な上流エレメントおよびより遠位な上流エレメントからなり、後者のエレメントは、多くの場合、エンハンサーと呼ばれる。
【0064】
本明細書で使用するとき、用語「エンハンサー」とは、プロモーター活性を刺激することができ、プロモーター固有のエレメント、またはプロモーターのレベルもしくは組織特異性を増大させるために挿入された異種エレメントであってもよいDNA配列を意味する。また、プロモーター配列は、遺伝子の転写された部分の範囲内、および/または転写された配列の下流に位置することができる。プロモーターは、天然の遺伝子から全体で誘導されてもよく、または本来見出される異なるプロモーターから誘導される異なるエレメントで構成されてもよく、または合成DNAセグメントを含んでもよい。異なるプロモーターは、異なる組織もしくは細胞型において、または異なる発生段階で、または異なる環境条件に応答して、遺伝子の発現を指向してもよいことが当業者に理解される。大部分の細胞型において、大部分の時間、遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。植物細胞に有用な種々のタイプの新規なプロモーターは、常に発見されつつある;多数の例がOkamuroおよびGoldberg,(1989)Biochemistry of Plants 15:1−82による編集物において見出すことができる。大分部の場合において、調節配列の正確な境界は完全に画定されていないため、ある変異のDNA分子は同一のプロモーター活性を有する場合があることがさらに認識されている。
【0065】
z)組換え
本明細書で使用するとき、用語「組換え」とは、例えば、化学合成によって、または遺伝子工学技術を用いた核酸の単離されたセグメントの操作によって、配列の2つの別に分離されたセグメントの人工的な組み合わせを意味する。
【0066】
aa)組換え構築物、発現構築物および組換え発現構築物
語句「組換え構築物」、「発現構築物」および「組換え発現構築物」とは、本明細書において交換可能に使用され、当業者に周知な標準的な方法を用いて細胞のゲノムに挿入され得る遺伝物質の機能的単位を意味する。このような構築物はそれ自体で使用されてもよく、またはベクターと連結して使用されてもよい。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者に周知であるように、宿主植物を形質転換するのに使用される方法に依存する。例えば、プラスミドベクターが使用されてもよい。当業者は、本発明の単離された核酸分子分子のいずれかを含む宿主細胞を首尾よく形質転換し、選択しおよび増殖させるために、ベクターに存在しなければならない遺伝要素を十分に認識している。また、当業者は、異なる独立した形質転換事象が発現の異なるレベルおよびパターンをもたらすことを認識し(Jonesら,(1985)EMBO J.4:2411−2418;De Almeidaら,(1989)Mol.Gen.Genetics 218:78−86)、したがって、所望の発現レベルおよびパターンを示す菌株を得るために、多数の事象がスクリーニングされなければならないことを認識する。このようなスクリーニングは、DNAのサザン分析、mRNA発現のノザン分析、タンパク質発現のウェスタン分析、または表現型分析によって達成されてもよい。
【0067】
bb)RNA転写物、メッセンジャーRNA、cDNA、機能性RNAおよび内因性RNA
本明細書で使用するとき、語句「RNA転写物」とは、RNAポリメラーゼによって触媒されたDNA配列の転写から得られた生成物を意味する。RNA転写物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、それは一次転写物と呼ばれ、またはそれは一次転写物の転写後のプロセッシングから誘導されたRNA配列であってもよく、これは成熟RNAと呼ばれる。
【0068】
本明細書で使用するとき、語句「メッセンジャーRNA(mRNA)」とは、イントロンを含まないRNAであり、細胞によってタンパク質に翻訳され得るRNAを意味する。
【0069】
本明細書で使用するとき、用語「cDNA」とは、mRNA鋳型に相補的であり、酵素の逆転写酵素を用いてmRNA鋳型から合成されるDNAを意味する。cDNAは、一本鎖形態であり、またはDNAポリメラーゼIのクレノウ(Klenow)分子を用いて二本鎖形態に変換され得る。「センス」RNAは、mRNAを含むRNA転写物を意味し、細胞内またはインビトロにおいてタンパク質に翻訳することができる。「アンチセンスRNA」は、標的一次転写物またはmRNAの全部もしくは一部に相補的であるRNA転写物、または標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写物を意味する(米国特許第5,107,065号)。アンチセンスRNAの相補性は、特定の遺伝子転写物の任意の部分、すなわち、5’非コード配列、3’非コード配列、イントロンまたはコード配列と一緒であってもよい。
【0070】
本明細書で使用するとき、語句「機能性RNA」とは、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、または翻訳されていないが、なおも細胞プロセスに影響を及ぼす他のRNAを意味する。
【0071】
用語「相補体」および「逆相補体」は、mRNA転写物に関して、本明細書において交換可能に使用され、メッセージのアンチセンスRNAを画定することが意図される。
【0072】
本明細書で使用するとき、語句「内因性RNA」とは、天然に存在するまたは天然に存在しない、すなわち、組換え手段、突然変異などによって導入されたかどうかに関係なく、本発明の組換え構築物を用いた形質転換前に宿主のゲノムに存在する任意の核酸配列によってコードされる任意のRNAを意味する。
【0073】
cc)類似性
本明細書で使用するとき、用語「類似性」とは、2つのアミノ酸配列、タンパク質またはポリペプチド間の「類似性」に言及するときに使用する場合、両方の配列において一連の同一であり、保存されたアミノ酸残基が存在することを意味する。2つのアミノ酸配列間の類似性の度合いが高くなると、2つの配列の一致性、統一性(sameness)または同等性が高くなる。
【0074】
dd)安定な形質転換、一過性形質転換および形質転換
本明細書で使用するとき、語句「安定な形質転換」とは、核ゲノムおよびオルガネラゲノムの両方を含む宿主生物のゲノムに核酸分子を導入し、遺伝的に安定な遺伝をもたらすことを意味する。
【0075】
これに対して、「一過性形質転換」とは、核酸分子を宿主生物の核またはDNA含有オルガネラに導入し、組み込みまたは安定な遺伝なしに遺伝子発現をもたらすことを意味する。形質転換された核酸分子を含む宿主生物は「トランスジェニック」生物と呼ばれる。コメ、トウモロコシおよび他の単子葉植物の好ましい細胞形質転換法は、粒子加速または「遺伝子銃」による形質転換技術(Kleinら,(1987)Nature(London)327:70−73;米国特許第4,945,050号)、またはトランス遺伝子を含む適切なTiプラスミドを用いるアグロバクテリウム(Agrobacterium)を媒介した方法(Ishida
Y.ら,(1996),Nature Biotech.14:745−750)の使用である。
【0076】
本明細書で使用するとき、用語「形質転換」とは、安定な形質転換および一過性形質転換の両方を意味する。
【0077】
ee)翻訳リーダー配列
本明細書で使用するとき、語句「翻訳リーダー配列」とは、遺伝子のプロモーター配列およびコーディング配列間に位置されたDNA配列を意味する。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列の上流の完全に処理されたmRNAに存在する。翻訳リーダー配列は、一次転写物からmRNAへのプロセシング、mRNA安定性または翻訳効率に影響を及ぼす場合がある。翻訳リーダー配列の例は文献に報告されている(Turner,R.およびFoster,G.D.(1995)Molecular Biotechnology
3:225)。
【0078】
本明細書において引用された全ての特許、特許公報および優先権書類は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
B.Δ8−デサチュラーゼ遺伝子およびそれによってコードされる酵素
本発明のΔ8−デサチュラーゼ遺伝子によってコードされる酵素は、少なくとも2つの不飽和化(二重結合)を有し、および全長20個の炭素原子またはそれよりも長いポリ不飽和脂肪酸(PUFA)の生成において本質的である。具体的には、本発明の酵素は、機能的に活性であり(例えば、Δ8−デサチュラーゼ活性を有する)、それは、この酵素が、長さにして少なくとも20個の炭素原子を有し、位置Δ9、Δ12および/またはΔ15の従前より存在する二重結合である炭素原子番号8(C)と炭素原子9(C)の間に二重結合を付加することを意味する。図1に示されるように、本発明のΔ8−デサチュラーゼ遺伝子によってコードされる酵素は、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を介して、20個またはそれを超える炭素原子の長さを有するPUFAを生成する。基質、ω6−エイコサジエン酸、ω3−エイコサトリエン酸またはω6−エイコサジエン酸およびω3−エイコサトリエン酸の両方は、この経路において本発明のΔ8−デサチュラーゼによって利用される。
【0080】
本発明のΔ8−デサチュラーゼ遺伝子は、エミリアナ属種、すなわち、エミリアナ・ハックスレイ、具体的にはエミリアナ・ハックスレイCCMP378から単離された。エミリアナ・ハックスレイCCMP378から単離されたΔ8−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、図9および配列番号28に示されている。推定ヌクレオチド配列の単離されたコドン最適化されたヌクレオチド配列は、図11および配列番号30に示されている。単離されたまたは精製されたアミノ酸配列は配列番号28および配列番号30の両方によってコードされ、図10および配列番号29に示されている。
【0081】
Δ9−エロンガーゼ酵素およびΔ8−デサチュラーゼ酵素を用いたLAのDGLAへの変換およびALAのω3−ETAへの変換は、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路と呼ばれる。LAをDGLAに変換し、ALAをω3−ETAに変換するための従来のΔ6経路は、それぞれLAをGLAに変換し、ALAをSDAに変換するためのΔ6−デサチュラーゼ酵素、GLAをDGLAに変換し、SDAをω3−ETAに変換するためのΔ6−エロンガーゼ遺伝子を利用する。いずれかの経路において、次に、ARAまたはEPAの生成は、例えば、Δ5−デサチュラーゼ酵素によって触媒される。例えば、DHAは、例えば、C20−エロンガーゼおよびΔ4−デサチュラーゼを用いて、それぞれEPAのω3−ドコサペンタエン酸(DPA)への変換、およびω3−ドコサペンタエン酸のDHAへの変換に基づいて生成され得る。
【0082】
例えば、DGLA、ARA、ω3−ETrA、ω3−ETA、EPA、DPAおよび/またはDHAは、ある種の場合において、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路または従来のΔ6経路を介して生成され得るが、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路が従来のΔ6経路よりも好ましい場合がある。例えば、特定の残基であるオメガ−6またはオメガ−3脂肪酸中間体、例えば、GLAまたはSDAがDGLA、ARA、ω3−ETrA、ω3−ETA、EPA、DPAおよび/またはDHAの生成中に所望されない場合、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路が、GLAおよびSDA形成を迂回するための従来のΔ6経路の代替として使用されてもよい。
【0083】
上記で検討したように、Δ8−デサチュラーゼは、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路において必要な酵素である。例えば、EPAは、Δ8−デサチュラーゼ遺伝子およびそれによってコードされる酵素なしに、代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を介して合成することはできない。図1に示されるように、本発明の単離されたΔ8−デサチュラーゼ酵素は、例えば、EDAをDGLAに変換し、ω3−ETrAをω3−ETAに変換する。次に、ω3−ETrAからω3−ETAの生成、およびω3−ETAからEPAの生成は、例えば、それぞれΔ8−デサチュラーゼおよびΔ5−デサチュラーゼによって触媒される。代替のΔ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路の使用の結果として、中間体GLAおよびSDA脂肪酸が迂回される。
【0084】
また、本発明は、配列番号28(エミリアナ・ハックスレイCCMP378由来の単離されたΔ8−デサチュラーゼヌクレオチド配列)または配列番号30(エミリアナ・ハックスレイCCMP378由来の単離されたコドン最適化されたヌクレオチド配列)を含む、からなる、またはその配列において、少なくとも55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のヌクレオチドに相補的である配列(すなわち、配列番号28または配列番号30に配列同一性を有する配列)を有する単離されたまたは精製されたヌクレオチド配列を含む。このような配列は、ヒト供給源、および他のヒト以外の供給源(例えば、C.エレガンス(elegans)またはマウス)由来であってもよい。
【0085】
さらに、本発明はまた、配列番号28または配列番号30のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる断片および誘導体を包含する。配列番号28または配列番号30由来の断片は、10から1250ヌクレオチド、10から1000ヌクレオチド、10から750ヌクレオチド、10から500ヌクレオチド、10から250ヌクレオチド、10から約100ヌクレオチドまたは10から約50ヌクレオチドまたは15から40ヌクレオチドを含むまたはそれからなる長さを有することができる。一態様では、配列番号28および配列番号30の断片は、Δ8−デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。別の態様では、配列番号28および配列番号30の断片は、プライマーおよびプローブとして用いることができる。プライマーおよびプローブを作製する方法は当業者に周知である。このようなプライマーおよびプローブは、10から50ヌクレオチド、好ましくは15から40ヌクレオチドの長さを有することができる。
【0086】
また、配列番号28および配列番号30のヌクレオチド配列の改変体が本明細書において意図される。このような改変体は、1種以上の塩基対の付加、置換または欠失を含んでもよいが、ただし、このような付加、置換または欠失は、3つの高度に保存された「ヒツチジン−ボックス」領域のいずれかにおいて、または配列番号29の5’端に見られるシトクロームb様ドメインにおいて生じない。「ヒスチジン−ボックス」領域およびシトクロームb様ドメインは、配列番号29のアミノ酸の改変体と関連して、本明細書においてより詳細に検討されている。本発明によって包含されるヌクレオチド改変体の例は、以下の表Aに示されている。
【0087】
【表1】

【0088】
また、本発明は他の供給源由来のヌクレオチド配列を包含し、配列番号28または配列番号30に対して上述した相補性または一致性を有する。また、配列番号28または配列番号30の機能性同等物(すなわち、Δ8−デサチュラーゼを有する配列)は、本発明によって包含される。
【0089】
また、本発明は、Δ8−デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその断片を包含し、ここで、上記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号29を含むアミノ酸配列に対して少なくとも55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。このような配列は、ヒト供給源、および他のヒト以外の供給源(例えば、C.エレガンスまたはマウス)由来であってもよい。
【0090】
また、本発明は、長さが少なくとも20個の炭素原子であり、9位の炭素に不飽和を含み、配列番号29のアミノ酸配列に対して少なくとも55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の類似性または同一性を有する脂肪酸の炭素原子番号8と炭素原子9の間に二重結合を付加することを介してポリ不飽和脂肪酸を脱飽和する(これはΔ8−脱飽和活性を有することを意味する)単離されたおよび/または精製されたポリペプチドを含む(図10参照)。具体的には、本発明は、配列番号29のアミノ酸配列を有する精製されたポリペプチドを含む。
【0091】
また、配列番号29の配列を有するポリペプチドの断片が本明細書において意図される。このような断片は、10から400個の連続したアミノ酸、10から300個の連続したアミノ酸、10から200個の連続したアミノ酸j、10から100個の連続したアミノ酸、10から50個の連続したアミノ酸、10から40個の連続したアミノ酸または10から30個の連続したアミノ酸、10から20個のアミノ酸の長さを有することができる。このような断片は、例えば、抗体の調製における免疫原として使用することができる。あるいは、このような断片は、1種以上のイムノアッセイにおける特定の結合パートナーとして使用することができる。
【0092】
また、配列番号29の配列を有するポリペプチドの改変体が本明細書において意図される。このような改変体は、1個以上のアミノ酸の付加、置換または欠失を含んでもよいが、ただし、このような付加、置換または欠失は、3つの高度に保存された「ヒスチジン−ボックス」領域のいずれかにおいて、または配列番号29の5’端で見られるシトクロームb様ドメインにおいて生じない(図2参照)。ヒスチジン−ボックスは、配列番号29のアミノ酸の位置155から160(HDYLH(配列番号32))、197から201(HNTHH(配列番号33))および355から359(QTEHH(配列番号34))で見出される。5’端のシトクロームb様ドメインは、保存されたヘム結合HPGGモチーフ(配列番号29のアミノ酸位置38から41)を有する(図2参照)。このシトクロームb様ドメインは、長鎖PUFA生成に関与するΔ6−、Δ5−およびΔ4−デサチュラーゼなどの多数の「フロントエンド」メンブレン結合したデサチュラーゼ酵素に見出される(Napier JAら,(2003)Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids.68:135−43参照)。シトクロームbは、デサチュラーゼ反応のプロセス中にこれらの酵素における電子供与体として機能すると考えられ、この領域の破壊は酵素活性の喪失または変化をもたらし得る(Sayanova Oら,(1999)Plant Physiol.121:641−646;Guillou H.ら,(2004)J Lipid Res.45:32−40参照)。本発明によって包含されるアミノ酸改変体の例は、以下の表Bに示されている。
【0093】
【表2】

【0094】
C.Δ8−デサチュラーゼ酵素の生成
一度、Δ8−デサチュラーゼ酵素をコードする核酸配列(例えば、遺伝子)が単離されおよび/または精製されると、それは、ベクターまたは構築物の使用を介して原核宿主細胞または真核宿主細胞のいずれかに導入することができる。ベクター、例えば、バクテリオファージ、コスミドまたはプラスミドは、Δ8−デサチュラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列、および宿主細胞内で機能的であり、上記ヌクレオチド配列によってコードされるΔ8−デサチュラーゼの発現を引き出すことができる任意の調節配列(例えば、プロモーター)を含んでもよい。調節配列は、ヌクレオチド配列と作動的に関連しまたは作動的に連結されている。(調節配列がコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、調節配列はコード配列と「作動的に連結されている」と言われる。)適切なプロモーターの例には、限定されないが、アルコール脱水素酵素、グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグルコイソメラーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、酸ホスファターゼ、T7、TPI、ラクターゼ、メタロチオネイン、サイトメロガロウイルス極初期、ホエイ酸タンパク質、グルコアミラーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーター、およびガラクトースの存在下に活性化されるプロモーター、例えば、GAL1およびGAL10が挙げられる。さらに、他のタンパク質、酵素(例えば、Δ9−エロンガーゼ)、オリゴ糖、脂質などをコードするヌクレオチド配列は、ポリアデニル化シグナル(例えば、SV−40T−抗原、オボアルブミンまたはウシ成長ホルモンのポリAシグナル)などの他の調節配列とともにベクターに含めてもよい。構築物に存在する配列の選択は、所望の発現生成物および宿主細胞の性質に依存する。
【0095】
上述されるように、一度、ベクターが構築されると、次に、例えばトランスフェクション、形質転換およびエレクトロポレーションを含む、当業者に知られている方法によって選択した宿主細胞に導入され得る(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Vol.1−3,Sambrookら編,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)参照)。その後、宿主細胞は、遺伝子の発現を可能にする適切な条件下で培養され、所望のPUFAを生成した後、当該技術分野において知られている日常的な技術を用いて回収し、精製される。
【0096】
適切な原核宿主細胞の例には、限定されないが、エシェリキア・コリ、バチルス・サブチリスなどの細菌、スピルリナ属種(すなわち、藍藻)などのシアノバクテリアが挙げられる。真核細胞は、限定されないが、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞または真菌細胞を含む。真菌細胞は、限定されないが、サッカロミセス属種、カンジダ属種、リポミセス属種、ヤロウイア属種、アスペルギルス属種、ペニシリウム属種、ノイロスポラ属種、クリベロマイセス属種、ハンゼヌラ属種、トリコデルマ属種またはピチア属種を含む。特に、真菌細胞は、酵母細胞であってもよく、限定されないが、サッカロミセス属種、カンジダ属種、ハンゼヌラ属種、およびピチア属種が挙げられる。また、酵母は、サッカロミセス・セレビシエであってもよい。植物細胞は、限定されないが、グリシン・マックス(例えば、ダイズ)、ブラシカ属種、カーサマス・ティンクトリアスL.(例えば、ベニバナ)、ヘリアンサス・アナス(例えば、ヒマワリ)、ズィー・メイス(例えば、トウモロコシ)、ゴッシピウム属種およびリナム・ウシタティシムム(例えば、亜麻)を含む。
【0097】
宿主細胞における発現は、一過性または安定的に達成させることができる。一過性発現は、宿主細胞において機能的な発現シグナルを含むが、複製せず、宿主細胞にほとんど組み込まれない、導入された構築物から生じ得て、または宿主細胞が増殖していない場合に生じ得る。また、一過性発現は、対象遺伝子に作動的に連結された調節可能なプロモーターの活性を誘導することによって達成され得るが、このような誘導システムは、発現の低い基底レベルをしばしば示す。安定な発現は、宿主ゲノムに組み込むことができるまたは宿主細胞において自律複製する構築物の導入によって達成することができる。対象遺伝子の安定な発現は、発現構築物に配置されたまたは発現構築物を用いてトランスフェクトされた選択マーカーの使用を介して選択された後に、マーカーを発現する細胞を選択することができる。安定的な発現が組み込みに起因する場合、構築物の組み込みの部位は、宿主ゲノム内でランダムに生じ得て、または宿主遺伝子座との組換えを標的とするのに十分な宿主ゲノムとの相同性の領域を含む構築物の使用を介して標的とすることができる。構築物が内因性遺伝子座に標的とされる場合、転写および翻訳の調節領域の全部または一部は、内因性遺伝子座によって提供することができる。
【0098】
また、トランスジェニック哺乳動物は、Δ8−デサチュラーゼ酵素を発現させ、最終的に対象とするPUFA(単数以上)を発現させるために使用されてもよい。より具体的には、一度、上述した構築物が作製されると、それは胚の前核に挿入されてもよい。次に、胚は、レシピエントの雌に移植されてもよい。あるいは、核導入法もまた利用することができる(Schniekeら,Science
278:2130−2133(1977))。その後、妊娠および出産が可能となる(例えば米国特許第5,750,176号および米国特許第5,700,671号参照)。続いて、子孫からの乳汁、組織または他の流体物試料は、非トランスジェニック動物に通常見出されるレベルと比較して、変化したレベルのPUFAを含まなければならない。後続世代は、変化したまたは増加したレベルのPUFAの生成についてモニターされ、従って、所望のデサチュラーゼ酵素をコードする遺伝子のそれらのゲノムへの組み込みについてモニターされてもよい。宿主として利用される哺乳動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマおよびウシであってもよい。しかしながら、任意の哺乳動物は、対象とする酵素をコードするDNAをそのゲノムに組み込む能力を有する限り使用され得る。
【0099】
Δ8−デサチュラーゼポリペプチドの発現に関して、機能的転写および翻訳開始および終端領域は、このデサチュラーゼポリペプチドをコードするDNAに作動的に連結される。転写および翻訳開始および終端領域は、種々の非排他的な起源、例えば、発現させようとするDNA、所望のシステムにおいて発現可能であることが知られているもしくは疑われる遺伝子、発現ベクター、化学合成、または宿主細胞における内因性遺伝子座に由来する。植物組織および/または植物部分における発現は、特に、組織または部分が種子、葉、果実、花、根などの早期回収されるものである場合にある種の効率を示す。発現は、米国特許第5,463,174号、同第4,943,674号、同第5,106,739号、同第5,175,095号、同第5,420,034号、同第5,188,958号、および同第5,589,379号に記載されている調節配列などの特定の調節配列を利用することによって植物を用いてその位置に標的化され得る。あるいは、発現されるタンパク質は、直接にまたはさらに修飾に応じてのいずれかで、宿主植物から流体物画分に組み込まれ得る生成物を生成する酵素であってもよい。Δ8−デサチュラーゼ遺伝子またはアンチセンスΔ8−デサチュラーゼ転写産物の発現は、植物部分および/または植物組織に見出される特定のPUFAまたはその誘導体のレベルを変化させることができる。Δ8−デサチュラーゼポリペプチドのコーディング領域は、それ自体でまたは他の遺伝子(例えば、Δ9−エロンガーゼをコードする遺伝子、Δ5−デサチュラーゼをコードする遺伝子、Δ17−デサチュラーゼをコードする遺伝子、Δ5−エロンガーゼをコードする遺伝子および/またはΔ4−デサチュラーゼをコードする遺伝子)と共に発現させ、より高い比率の所望のPUFAを含むまたはPUFA組成が人乳により酷似している組織および/または植物部分を生成することができる(WO95/24494参照)。終端領域は、開始領域が得られた遺伝子の3’領域または異なる遺伝子に由来してもよい。多数の終端領域は、同一および異なる属および種由来の種々の宿主で満足できるものとして知られ、見出されている。終端領域は、任意の特性のためというよりもむしろ便宜上の事項として通常は選択される。
【0100】
上述のように、植物(例えば、グリシン・マックスまたはブラシカ・ナプス(キャノーラ))または植物組織はまた、Δ8−デサチュラーゼ酵素の発現のためにそれぞれ宿主または宿主細胞として利用し、続いて、ポリ不飽和脂肪酸の生成に利用されてもよい。より具体的には、所望のPUFAは種子で発現され得る。種子油の分離方法は当該技術分野において知られている。したがって、PUFAのための供給源の提供に加えて、Δ8−デサチュラーゼ遺伝子、エロンガーゼ遺伝子(例えば、Δ9−エロンガーゼ、Δ5−エロンガーゼなど)、および他のデサチュラーゼ遺伝子(例えば、Δ5−デサチュラーゼ、Δ17−デサチュラーゼ、Δ4−デサチュラーゼなど)の発現を通じて操作され、栄養組成物、医薬組成物、動物飼料および化粧品に添加し得る種子油を提供することができる。また、プロモーターに作動的に連結されたΔ8−デサチュラーゼをコードするDNA配列を含むベクターは、Δ8−デサチュラーゼ遺伝子の発現に十分な時間および条件下で植物組織または植物に導入される。また、このベクターは、他の酵素、例えばΔ4−デサチュラーゼ、Δ5−デサチュラーゼ、Δ6−デサチュラーゼ、Δ10−デサチュラーゼ、Δ12−デサチュラーゼ、Δ15−デサチュラーゼ、Δ17−デサチュラーゼ、Δ19−デサチュラーゼ、Δ9−エロンガーゼ、Δ6−エロンガーゼおよび/もしくはΔ5−エロンガーゼをコードする1種以上の遺伝子を含んでもよい。植物組織または植物は、酵素が作用する関連基質を生成してもよく、またはこのような基質を生成する酵素をコードするベクターが植物組織、植物細胞または植物に導入されてもよい。さらに、基質は、適切な酵素を発現する植物組織に噴霧されてもよい。これらの様々な技術を用いて、当業者は、植物細胞、植物組織または植物の使用によってPUFAを生成してもよい。本発明はまた、上述したベクターを含むトランスジェニック植物を包含し、ここで、このベクターのヌクレオチド配列の発現は、例えば、トランスジェニック植物の種子におけるポリ不飽和脂肪酸の生成をもたらすことも留意すべきである。
【0101】
単一の植物プロトプラスト形質転換体または様々な形質転換された外植片からの植物の再生、発生および培養は当該技術分野において周知である(WeissbachおよびWeissbach,In:Methods for Plant Molecular Biology,(Eds.),Academic Press,Inc.San Diego,CA,(1988))。この再生および増殖方法は、典型的には、形質転換された細胞を選択するステップ、通常の胚発生から挿し木苗段階を通じて個別化された細胞を培養するステップを含む。トランスジェニック胚および種子は同様に再生させる。得られたトランスジェニック挿し木苗は、その後、土壌等の適切な植物成長培地において植え付けられる。
【0102】
対象とするタンパク質をコードする外来の外因性遺伝子を含む植物の発生または再生は当該技術分野において周知である。好ましくは、再生された植物は、自家受粉させ、同型のトランスジェニック植物を提供する。さもなければ、再生された植物から得られた花粉が、栽培学的に重要な系列の種子成長植物に交配される。逆に言うと、これらの重要系列の植物由来の花粉は、再生された植物に受粉させるために使用される。所望のポリペプチドを含む本発明のトランスジェニック植物は、当業者に周知な方法を用いて栽培される。
【0103】
植物組織から植物を再生させるための様々な方法がある。再生の特定の方法は、出発植物組織および再生させようとする特定の植物種に依存する。
【0104】
主にアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を使用して双子葉植物を形質転換し、トランスジェニック植物を得る方法は、ワタ(米国特許第5,004,863号、米国特許第5,159,135号、米国特許第5,518,908号);ダイズ(米国特許第5,569,834号、米国特許第5,416,011号、McCabeら,BiolTechnology 6:923(1988),Christouら,Plant Physiol.87:671−674(1988));アブラナ属(米国特許第5,463,174号);ピーナッツ(Chengら,Plant Cell Rep.15:653−657(1996),McKentlyら,Plant Cell Rep.14:699−703(1995));パパイヤ;およびエンドウ(Grantら,Plant Cell Rep.15:254−258,(1995))について公表されている。
【0105】
また、エレクトロポレーション、粒子衝撃およびアグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いる単子葉植物の形質転換が報告されている。形質転換および植物再生は、アスパラガス(Bytebierら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)84:5354,(1987));オオムギ(WanおよびLemaux,Plant Physiol 104:37(1994));ズィー・メイス(Rhodesら,Science 240:204(1988),Gordon−Kammら,Plant Cell 2:603−618(1990),Frommら,BiolTechnology 8:833(1990),Kozielら,BiolTechnology 11;194,(1993),Armstrongら,Crop Science 35:550−557(1995));オート麦(Somersら,BiolTechnology 10:1589(1992));オーチャードグラス(Hornら,Plant Cell Rep.7:469(1988));コメ(Toriyamaら,TheorAppl.Genet.205:34,(1986);Partら,Plant Mol.Biol.32:1135−1148,(1996);Abediniaら,Aust.J.Plant Physiol.24:133−141(1997);ZhangおよびWu,Theor.Appl.Genet.76:835(1988);Zhangら,Plant Cell Rep.7:379,(1988);BattrawおよびHall,Plant Sci.86:191−202(1992);Christouら,Bio/Technology 9:957(1991));ライ麦(De la Penaら,Nature 325:274(1987));サトウキビ(BowerおよびBirch,Plant J.2:409(1992));ヒロハノウシノケグサ(Wangら,BiolTechnology 10:691(1992))、および小麦(Vasilら,Bio/Technology 10:667(1992);米国特許第5,631,152号)において達成されている。
【0106】
クローニングされた核酸構築物の一過性発現に基づく遺伝子発現のアッセイは、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーションまたは粒子衝撃により核酸分子を植物細胞に導入することによって開発されつつある(Marcotteら,Nature 335:454−457(1988);Marcotteら,Plant Cell 1:523−532(1989);McCartyら,Cell 66:895−905(1991);Hattoriら,Genes Dev.6:609−618(1992);Goffら,EMBO J.9:2517−2522(1990))。
【0107】
一過性発現システムは、遺伝子構築物を機能的に分析するために用いられてもよい(一般にはMaligaら,Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor Press(1995))。本発明の核酸分子のいずれかは、ベクター、プロモーター、エンハンサーなどの他の遺伝子エレメントと共に永久的にまたは一過性に植物細胞に導入可能であることが理解される。
【0108】
上記で検討された方法に加えて、実施者は、巨大分子(例えば、DNA分子、プラスミドなど)の構築、操作および単離、組換え生物の作成ならびにクローンのスクリーニングおよび単離のための特定の条件および手法を記載している標準的な資料に精通している(例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1989);Maligaら,Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor Press(1995);Birrenら,Genome Analysis:Detecting Genes,1,Cold Spring Harbor,New York(1998);Birrenら,Genome Analysis:Analyzing DNA,2,Cold Spring Harbor,New York(1998);Plant Molecular Biology:A Laboratory Manual,Clark編,Springer,New York(1997)参照)。
【0109】
上記を考慮すると、本発明はまた、Δ8−デサチュラーゼ酵素を生成するための方法を包含する。このような方法は、1)配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列を単離するステップ;2)上記ヌクレオチド配列を含むベクターを構築するステップ;および3)Δ8−デサチュラーゼ酵素の生成に十分な時間および条件下で上記ベクターを宿主細胞に導入するステップを含む。
【0110】
また、本発明は、ポリ不飽和脂肪酸を生成する方法を包含する。一態様において、この方法は、1)配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列を単離するステップ;2)調節配列に作動的に連結された、ステップ1)の単離されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;3)Δ8−デサチュラーゼ酵素の生成に十分な時間および条件下でこの発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ;および4)発現したΔ8−デサチュラーゼ酵素をω6−エイコサジエン酸、ω3−エイコサトリエン酸またはω6−エイコサジエン酸およびω3−エイコサトリエン酸の両方からなる群から選択される基質に曝露し、この基質を第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸に変換することを伴う。この方法によって生成され得る第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸の例は、DGLA、ω3−ETAまたはDLGAおよびω3−ETAの両方である。さらに、この方法は、第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つのデサチュラーゼまたは少なくとも1つのエロンガーゼに曝露するステップ、必要に応じて、このステップ(すなわち、第2または続く生成物のポリ不飽和脂肪酸を(以前に使用された任意のデサチュラーゼまたはエロンガーゼと同一であるまたは異なっていてもよい)デサチュラーゼまたはエロンガーゼに曝露するステップ)を繰り返して、第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸(例えば、DGLAおよび/またはω3−ETA)を第2または続く(例えば、第3、第4、第5、第6など)生成物のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップをさらに伴うことができる。このステップは、所望の生成物のポリ不飽和脂肪酸が得られるまで必要に応じて何度でも繰り返すことができる。例えば、第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸がDGLAである場合、この方法はARA(第2の生成物のポリ不飽和脂肪酸)を生成するためにDGLAをΔ5−デサチュラーゼに曝露することをさらに含んでもよい。場合により、次に、ARAはEPA(第3の生成物のポリ不飽和脂肪酸)を生成するためにΔ17−デサチュラーゼに曝露されてもよい。なおさらに場合により、EPAはDPA(第4の生成物のポリ不飽和脂肪酸)を生成するためにΔ5−エロンガーゼに曝露されてもよい。なおさらに場合により、DPAはDHA(第5の生成物のポリ不飽和脂肪酸)を生成するためにΔ4−デサチュラーゼに曝露されてもよい。
【0111】
別の態様において、この方法は、1)配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列を単離するステップ;2)調節配列に作動的に連結された、単離されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;3)2)の発現ベクター、およびΔ9−エロンガーゼ(例えば、Δ9−エロンガーゼをコードする単離されたヌクレオチド配列について報告する米国特許出願公開第2008/0214667参照)をコードする少なくとも1つの調節配列に作動的に連結された、単離された塩基配列を含む少なくとも1つの追加の組換えDNA構築物を宿主細胞に導入するステップ;および4)曝露されたΔ8−デサチュラーゼ酵素およびΔ9−エロンガーゼをLA、ALAまたはLAおよびALAからなる群から選択される基質に曝露し、この基質を第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸に変換することを伴う。この方法によって生成され得る第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸の例は、DGLA、ω3−ETAまたはDGLAおよびω3−ETAの両方である。さらに、この方法は、第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つのデサチュラーゼまたは少なくとも1つのエロンガーゼに曝露し、このステップ(すなわち、第2または続く生成物のポリ不飽和脂肪酸を(以前に使用された任意のデサチュラーゼまたはエロンガーゼと同一であるまたは異なっていてもよい)デサチュラーゼまたはエロンガーゼに曝露すること)を繰り返して、第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸(例えば、DGLAおよび/またはω3−ETA)を第2または続く(例えば、第3、第4、第5、第6など)生成物のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップを伴ってもよい。このステップは、所望の生成物のポリ不飽和脂肪酸が得られるまで必要に応じて何度でも繰り返すことができる。例えば、第1の生成物のポリ不飽和脂肪酸がDGLAである場合、この方法はDGLAをΔ5−デサチュラーゼに曝露し、ARA(第2の生成物のポリ不飽和脂肪酸)を生成することをさらに含むことができる。必要に応じて、次に、ARAはΔ17−デサチュラーゼに曝露され、EPA(第3の生成物のポリ不飽和脂肪酸)を生成することができる。なおさらに必要に応じて、EPAはΔ5−エロンガーゼに曝露されて、DPA(第4の生成物のポリ不飽和脂肪酸)を生成することができる。なおさらに必要に応じて、DPAはΔ4−デサチュラーゼに曝露され、DHA(第5の生成物のポリ不飽和脂肪酸)を生成することができる。
【0112】
したがって、上記によって例示されるように、本発明のΔ8−デサチュラーゼは、ポリ不飽和脂肪酸の生成に使用され、続いて、特定の有益な目的のために使用されてもよく、または他のポリ不飽和脂肪酸の生成に使用されてもよい。
【0113】
D.Δ8−デサチュラーゼ遺伝子の使用
上述のように、単離されたΔ8−デサチュラーゼ遺伝子およびそれによってコードされるΔ8−デサチュラーゼ酵素は多数の用途を有する。例えば、この遺伝子および対応する酵素は、ポリ不飽和脂肪酸の生成に間接的にまたは直接的に使用されてもよく、例えば、Δ8−デサチュラーゼはDGLA、ARA、EPA、ω3−ETrA、ω3−ETA、DPAおよび/またはDHAの生成に使用されてもよい。これらのポリ不飽和脂肪酸(すなわち、Δ8−デサチュラーゼ酵素の活性によって直接的または間接的に生成されるもの)は、例えば、栄養組成物、医薬組成物、化粧品および動物飼料に添加することができ、これらのいずれも本発明に包含される。これらの用途は以下に詳細に記載されている。
【0114】
E.栄養組成物
本発明は栄養組成物を含む。このような組成物は、本発明の目的では、生体内に取込まれると、(a)組織に栄養分を与えもしくは強化しまたはエネルギーを供給するように役割を果たし、および/または(b)十分な栄養状態または代謝機能を維持、回復または支持する、腸内または非経口的な消費を含むヒト消費用の任意の食物または調製物を含む。
【0115】
本発明の栄養組成物は、本発明に従って、本明細書に記載されているΔ8−デサチュラーゼ遺伝子の使用によって直接的にまたは間接的に生成された少なくとも1つの油または酸を含み、固体形態または液体形態であってもよい。さらに、この組成物は特定用途に望まれる量の食用多量養素、ビタミンおよびミネラルを含んでもよい。このような成分の量は、組成物がある種の代謝状態(例えば、代謝異常)を伴うものなどの特殊な必要性を有する、正常な健常の乳児、幼児または成人に使用することが意図されるのかどうかに依存して変化する。
【0116】
組成物に添加されてもよい主要栄養素の例には、限定されないが、食用脂、糖質およびタンパク質が挙げられる。このような食用脂の例には、限定されないが、ココナッツオイル、ダイズ油、モノグリセリドおよびジグリセリドが挙げられる。このような糖質の例には、限定されないが、グルコース、食用ラクトースおよび加水分解されたデンプンが挙げられる。さらに、本発明の栄養組成物に利用可能なタンパク質の例には、限定されないが、ダイズタンパク質、電気透析されたホエイ、電気透析されたスキムミルク、乳清またはこれらのタンパク質の加水分解物が挙げられる。
【0117】
ビタミンおよびミネラルに関して、下記:カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩化物、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素、ビタミンA、E、D、CおよびB複合体が、本発明の栄養組成物に添加されてもよい。他のこのようなビタミンおよびミネラルもまた添加されてもよい。
【0118】
本発明の栄養組成物に利用される成分は半精製されたまたは精製されたものである。半精製または精製とは、天然材料の精製によってまたは合成によって調製された材料を意味する。
【0119】
本発明の栄養組成物の例は、限定されないが、乳児用調製物、栄養補助食品、栄養代用食品および再水和組成物が挙げられる。特に対象とする栄養組成物は、限定されないが、乳児用の腸内および非経口補給剤、特殊乳児用調製物、高齢者用補給剤、および胃腸障害および/または吸収不良のある者のための補給剤が挙げられる。
【0120】
また、本発明の栄養組成物は、食事の補給が必要とされない場合でさえも食品に添加することができる。例えば、この組成物は、任意の種類の食品に添加されてもよく、例えば、限定されないが、マーガリン、調製バター、チーズ、ミルク、ヨーグルト、チョコレート、キャンディ、菓子、サラダ油、調理用油、調理用油、肉類、魚および飲料が挙げられる。
【0121】
本発明の好ましい実施形態では、栄養組成物は経腸栄養製品であり、成人または小児の経腸栄養製品がより好ましい。この組成物は、慢性または急性の疾患状態によりストレスを受けたまたは特殊処置を必要とする成人または小児に投与されてもよい。組成物は、本発明に従って製造されるポリ不飽和脂肪酸に加えて、上記のような主要栄養素、ビタミンおよびミネラルを含んでもよい。主要栄養素は、人乳に含まれるものと同等な量またはエネルギー基準、すなわちカロリー当たりの基準で存在されてもよい。
【0122】
液体または固体の経腸および非経口栄養製剤を処方する方法は当該技術分野において周知である。
【0123】
経腸製剤は、例えば、滅菌され、その後、即時使用(RTF)ベースで利用されてもよく、または濃縮液体もしくは粉末で保存されてもよい。粉末は、前述の通りに調製された製剤を噴霧乾燥し、濃縮物を再水和により再構成することによって調製することができる。成人および小児栄養製剤は当該技術分野において周知であり、市販されている(例えば、Rose Products Division,Abbott Laboratories,オハイオ州コロンバスのSimilac(登録商標)、Ensure(登録商標)、Jevity(登録商標)およびAlimentum(登録商標))。本発明に従って生成された油または酸は、これらの製剤のいずれかに添加されてもよい。
【0124】
本発明の栄養組成物のエネルギー密度は、液体形態である場合、約0.6Kcal/mlから約3Kcal/mlの範囲であってもよい。固体または粉末の形態の場合、栄養補給剤は、約1.2から9Kcal/gを超え、好ましくは約3から7Kcal/gを含むことができる。一般に、液体製品の浸透圧は700mOsm未満、より好ましくは660mOsm未満でなければならない。
【0125】
栄養製剤は、本発明に従って製造されたPUFAに加えて、上述される主要栄養素、ビタミンおよびミネラルを含んでもよい。これらの追加成分の存在は、個体がこれらの要素を毎日最小必要量を摂取することを助ける。PUFA供給に加えて、亜鉛、銅、葉酸および酸化防止剤をこの組成物に添加することが望まれる場合もある。これらの物質は、ストレス下にある免疫システムを強化し、したがって、組成物を受ける個体にさらなる利益を与えると考えられる。また、医薬組成物がこれらの成分で補足されてもよい。
【0126】
より好ましい実施形態では、栄養組成物は、酸化防止剤および少なくとも1つのPUFAに加えて、糖質供給源を含み、ここで、糖質の少なくとも5重量%は消化しにくいオリゴ糖である。より好ましい実施形態では、栄養組成物はタンパク質、タウリンおよびカルニチンをさらに含む。
【0127】
上述のように、本発明に従って製造されたPUFAまたはその誘導体は、静脈内栄養補給を受けている患者に対して、または栄養不良もしくは他の状態もしくは疾患状態の予防または治療のために栄養代用食品または栄養補助食品、特に乳児用調製剤に添加され得る。背景として、人乳は、DHAとして約0.15%から約0.36%、EPAとして約0.03%から約0.13%、ARAとして約0.30%から約0.88%、DGLAとして約0.22%から約0.67%、およびGLAとして約0.27%から約1.04%を含む脂肪酸プロファイルを有することに留意すべきである。したがって、本発明に従って製造されるARA、EPAおよび/またはDHAなどの脂肪酸は、例えば、人乳のPUFA含有量を良好に再現し、ヒト以外の哺乳動物の母乳に通常見出されるPUFAの存在を変えるために使用することができる。特に、薬理学的補給剤または食品補給剤、特に母乳代用剤または補給剤において使用するための組成は、ARA、EPA、DGLAおよびDHAの1種以上を含むことが好ましい。より好ましくは、この油は、約0.3から30%のARA、および約0.2から30%のDGLAを含む。
【0128】
トリグリセリドとして計算された約2から約30重量%の脂肪酸を含む非経口医薬組成物は本発明によって包含される。他のビタミン、特に脂溶性ビタミン、例えば、ビタミンA、D、EおよびL−カルニチンが必要に応じて含まれてもよい。所望により、アルファ−トコフェロールなどの防腐剤は約0.1重量%で添加されてもよい。
【0129】
さらに、ARAとDGLAの比は、特別な所定の最終用途に適合させることができる。母乳補給剤または代用剤として処方される場合、ARA、DGLAおよびGLAの1種以上を含む組成物は、それぞれ約1:19:30から約6:1:0.2の比で提供される。例えば、動物の母乳は、1:19:30から6:1:0.2の範囲のARA:DGLA:GLAの比で変化することができ、約1:1:1、1:2:1、1:1:4である中間比を含むことが好ましい。宿主細胞においてともに製造される場合、EDAおよびDGLAなどの前駆体基質からARAへの変換率は、PUFA比を厳密に制御するために使用され得る。例えば、DGLAからARAへの5%から10%の変換率は、約1:19のARA:DGLA比を生成するために用いることができ、一方、約75%から80%の変換率は、約6:1のARA:DGLA比を生じさせるために用いることができる。したがって、細胞培養システムにおいてまたは宿主動物においてであるかに関係なく、デサチュラーゼ発現の時期、程度および特異性の制御、ならびにエロンガーゼ(例えば、限定されないがΔ9エロンガーゼなど)および他のデサチュラーゼの発現を制御することは、PUFAレベルおよび比を調節するために用いることができる。次に、本発明に従って生成されるPUFA/酸(例えばARAおよびEPA)は、所望濃度および比で他のPUFA/酸(例えばGLA)と組み合わせてもよい。
【0130】
さらに、本発明に従って製造されたPUFAまたはこれらを含む宿主細胞はまた、動物の組織または乳脂肪酸組成をヒトまたは動物消費のために望まれるもう1つのものに変えるために動物の飼料補給剤として使用されてもよい。
【0131】
本発明に従って生成されたポリ不飽和脂肪酸を使用する栄養補給剤、乳児用調製剤、栄養代用剤および他の栄養溶液の例は、以下に記載されている。
【0132】
I.乳児用調製剤
A.Isomil(登録商標)鉄分配合ダイズフォーミュラ:
用途:牛乳に対するアレルギーまたは感受性を有する乳児、幼児および成人用飲料として。ラクトースが避けなければならない障害:ラクターゼ欠乏症、ラクトース不耐症およびガラクトース血症の患者のための食事。
【0133】
特徴:
−牛乳タンパク質のアレルギーまたは感受性の症状を避けるためのダイズタンパク質単離体。
−ラクトースに関連した下痢を避けるためのラクトース不含製剤。
−低浸透圧(200mOs/kg水)。
−吸収を最大にし、吸収不良の危険を最小にするように設計された二重糖質(コーンシロップとショ糖)。
【0134】
成分:43.2%コーンシロップ固体、14.6%ダイズタンパク質単離体、11.5%高オレイン酸ベニバナ油、10.3%糖(ショ糖)、8.4%ダイズ油、8.1%ココナッツ油:2%未満のリン酸カルシウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、アスコルビン酸、塩化コリン、L−メチオニン、タウリン、パルミチン酸アスコルビル、硫酸第一鉄、m−イノシトール、混合トコフェロール、硫酸亜鉛、酢酸d−アルファ−トコフェリル、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸銅、塩化チアミン塩酸塩、パルミチン酸ビタミンA、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、ヨウ化カリウム、水酸化カリウム、フィロキノン、ビオチン、セレン酸ナトリウム、ベータ−カロチン、ビタミンD3およびシアノコバラミン。
【0135】
B.Isomil(登録商標)DF下痢用ダイズフォーミュラ:
用途:乳幼児の下痢の食事管理用
特徴:
−特に下痢管理用としてダイズ繊維からの添加された食物繊維を含む最初の乳児用調製剤。
−乳児の軽度から重度の下痢期間に水状軟便期間を短くすることが臨床的に示された。
−ラクトースに関連した下痢を避けるためのラクトース不含処方。
−浸透圧性下痢の危険性を減らすための低浸透圧(240mOsm/kg水)
成分:85.7%水、4.8%コーンシロップ、2.6%糖(ショ糖)、2.1%ダイズ油、2.0%ダイズタンパク質単離物、1.4%ココナッツ油、0.77%ダイズ繊維、クエン酸カルシウム、クエン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化カリウム、モノグリセリドおよびジグリセリド、ダイズレシチン、塩化マグネシウム、カラゲナン、アスコルビン酸、L−メチオニン、塩化ナトリウム、塩化コリン、タウリン、硫酸第一鉄、m−イノシトール、酢酸d−アルファ−トコフェリル、硫酸亜鉛、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン塩酸塩、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、ヨウ化カリウム、フィロキノン、ビオチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3およびシアノコバラミン。
【0136】
C.Isomil(登録商標)Advance(登録商標)鉄分配合ショ糖フォーミュラ
用途:牛乳に対するアレルギーもしくは感受性を有する乳児、幼児および成人用飲料として。ラクトースが避けなければならない障害:ラクターゼ欠乏症、ラクトース不耐症およびガラクトース血症の患者のための食事。
【0137】
特徴:
−精神的および視覚的発育に重要である母乳に見られるDHAおよびARAの2つの栄養素を含む。
−牛乳タンパク質アレルギーまたは感受性の症状を避けるためのダイズタンパク質単離物。
−ラクトースに関連した下痢を避けるためのラクトース不含処方。
−低浸透圧(200mOs/kg水)。
−吸収を最大にし、吸収不良の危険性を最小にするように設計された二重糖質(コーンシロップおよびショ糖)。
成分:43.2%コーンシロップ固体、14.6%ダイズタンパク質単離物、11.5%高オレイン酸ベニバナ油、10.3%糖(ショ糖)、8.4%ダイズ油、7.7%ココナッツ油、C.コーニイ(cohnii)油、M.アルピナ(alpina)油、リン酸カルシウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、アスコルビン酸、塩化コリン、L−メチオニン、タウリン、パルミチン酸アスコルビル、硫酸第一鉄、m−イノシトール、混合トコフェロール、硫酸亜鉛、酢酸d−アルファ−トコフェリル、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸銅、塩化チアミン塩酸塩、パルミチン酸ビタミンA、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、ヨウ化カリウム、水酸化カリウム、フィロキノン、ビオチン、セレン酸ナトリウム、ベータ−カロチン、ビタミンD3およびシアノコバラミン。
【0138】
D.Isomil(登録商標)Advance(登録商標)20即時使用の鉄分配合ダイズフォーミュラ、20Cal/fl oz.:
用途:ダイズ摂取が望まれる場合。
【0139】
成分:85.9%水、6.7%コーンシロップ、1.9% ダイズタンパク質単離体、1.4%高オレイン酸ベニバナ油、1.3%糖(ショ糖)、1.1%ダイズ油、1.0%ココナッツ油、C.コーニイ油、M.アルピナ油、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、モノグリセリドおよびジグリセリド ジグリセリド、ダイズレシチン、カラゲナン、アルコルビン酸、L−メチオニン、塩化マグネシウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、タウリン、硫酸第一鉄、m−イノシトール、酢酸d−アルファ−トコフェリル、硫酸亜鉛、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸銅、パルミチン酸ビタミンA、塩化チアミン塩酸塩、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、ヨウ化カリウム、フィロキノン、ビオチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3およびシアノコバラミン。
【0140】
E.Similac(登録商標)乳児用フォーミュラ:
用途:乳児用フォーミュラが必要とされる場合:1歳未満で授乳の中断を決定した場合、授乳の補完が必要な場合、または授乳を採用しない際の日常食。粉末、濃縮液および即時使用の形態。
【0141】
成分:水、脱脂乳、ラクトース、高オレイン酸ベニバナ油、ダイズ油、ココナッツ油、ホエイタンパク質濃縮物、クエン酸カリウム、炭酸カルシウム、アルコルビン酸、ダイズレシチン、モノグリセリド、カラゲナン、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸第一鉄、塩化コリン、酒石酸水素コリン、タウリン、m−イノシトール、硫酸亜鉛、ナイアシンアミド、酢酸d−アルファ−トコフェリル、パントテン酸カルシウム、l-カルニチン、パルミチン酸ビタミンA、リボフラビン、硫酸銅、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、フィロキノン、ビオチン、ベータ−カロチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3、シアノコバラミン、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウムおよびヌクレオチド(アデノシン5’−モノリン酸、シチジン5’−モノリン酸、グアノシン2ナトリウム5’−モノリン酸、ウリジン2ナトリウム5’−モノリン酸)。
【0142】
F.Similac(登録商標)Advance(登録商標)鉄分配合乳児用フォーミュラ
用途:授乳の補給または代替としての使用。粉末、濃縮液および即時使用の形態。
【0143】
成分:水、脱脂乳、ラクトース、高オレイン酸ベニバナ油、ダイズ油、ココナッツ油、ホエイタンパク質濃縮物、C.コーニイ油、M.アルピナ油、クエン酸カリウム、炭酸カルシウム、アルコルビン酸、ダイズレシチン、モノグリセリド、カラゲナン、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸第一鉄、塩化コリン、酒石酸水素コリン、タウリン、m−イノシトール、硫酸亜鉛、ナイアシンアミド、酢酸d−アルファ−トコフェリル、パントテン酸カルシウム、l−カルニチン、パルミチン酸ビタミンA、リボフラビン、硫酸銅、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、フィロキノン、ビオチン、ベータ−カロチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3、シアノコバラミン、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウムおよびヌクレオチド(アデノシン5’−モノリン酸、シチジン5’−
モノリン酸、グアノシン2ナトリウム5’−モノリン酸、ウリジン2ナトリウム5’−モノリン酸)。
【0144】
G.Similac(登録商標)NeoSure(登録商標)Advance(登録商標)鉄分配合乳児用フォーミュラ
用途:早熟などの状態のための特殊フォーミュラ
特徴:
−25%添加された中位鎖トリグリセリド(MCT)を含む十分に吸収される脂肪混和物。
−標準項式よりも高いレベルの100Calあたりのタンパク質、ビタミンおよびミネラル。
−標準項式よりも多くのカルシウムおよびリン。
成分:脱脂乳、コーンシロップ固体、ラクトース、ダイズ油、高オレイン酸ベニバナ油、ホエイタンパク質濃縮物、中位鎖トリグリセリド、ココナッツ油、C.コーニイ油、M.アルピナ油、クエン酸カリウム、リン酸カルシウム、m−イノシトール、アルコルビン酸、塩化マグネシウム、炭酸カルシウム、タウリン、硫酸第一鉄、酒石酸水素コリン、塩化コリン、パルミチン酸アスコルビル、L−カルニチン、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸亜鉛、混合トコフェロール、酢酸d−アルファ−トコフェリル、クエン酸ナトリウム、ナイアシンアミド、リン酸カリウム、パントテン酸カルシウム、硫酸銅、パルミチン酸ビタミンA、塩化チアミン塩酸塩、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、ベータカロチン、葉酸、硫酸マンガン、フィロキノン、ビオチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3、シアノコバラミンおよびヌクレオチド(アデノシン5’−モノリン酸、シチジン5’−モノリン酸、グアノシン2ナトリウム5’−モノリン酸、ウリジン2ナトリウム5’−モノリン酸)。
【0145】
H.Similac Natural Care Advance即時使用の低鉄分人乳強化剤、24Cal/fl oz.:
用途:低出生体重の乳児に対して、人乳と混合されるようにまたは人乳の代替として与えられるように設計される。
【0146】
成分:水、脱脂乳、コーンシロップ固体、ラクトース、中位鎖トリグリセリド、ホエイタンパク質濃縮物、ダイズ油、ココナッツ油、C.コーニイ油、M.アルピナ油、リン酸カルシウム、クエン酸カリウム、アルコルビン酸、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、ダイズレシチン、モノグリセリドおよびジグリセリド、m−イノシトール、クエン酸ナトリウム、カラゲナン、酒石酸水素コリン、タウリン、塩化コリン、ナイアシンアミド、酢酸d−アルファトコフェリル、L−カルニチン、硫酸亜鉛、塩化カリウム、二塩基性リン酸カリウム、パントテン酸カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸銅、リボフラビン、パルミチン酸ビタミンA、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、ビオチン、葉酸、ベータカロチン、硫酸マンガン、フィロキノン、ビタミンD3、亜セレン酸ナトリウム、シアノコバラミンおよびヌクレオチド(アデノシン5’−モノリン酸、シチジン5’−
モノリン酸、グアノシン2ナトリウム5’−モノリン酸、ウリジン2ナトリウム5’−モノリン酸)。
【0147】
本発明の様々なPUFAは、上記の乳児用フォーミュラおよび当該技術分野において知られている他の乳児用フォーミュラに代えておよび/またはそれに添加することができる。
【0148】
II.栄養製剤
A.ENSURE(登録商標)
用途:濃厚でクリーミーな味のENSUREは、食間または食事とともに補助的に使用するため、および一時的な唯一の供給源を提供するための完全なバランスのとれた栄養素の供給源を提供する。ENSUREは、栄養の危険にある、意図的でない体重減少を経験した、病気もしくは外科的処置から回復した、または変更されたもしくは低残渣の食事を取っている者に恩恵を与えることができる。経口的食事を目的とする。一時的な単独供給源の提供を目的とする。補助的経口栄養素成分のための小売用製品。
【0149】
成分:水、糖(ショ糖)、コーンマルトデキストリン、ミルクタンパク質単離物、ダイズ油、コーン油、菜種油、ダイズタンパク質濃縮物、クエン酸カリウム、天然および人工的なフレーバー、リン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、ダイズレシチン、リン酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩(塩化ナトリウム)、塩化コリン、カラギナン、アルコルビン酸、酢酸d1−アルファ−トコフェリル、硫酸第一鉄、硫酸亜鉛、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸銅、パルミチン酸ビタミンA、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、葉酸、塩化クロム、ビオチン、モリブデン酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム、フィロキノン、ヨウ化カリウム、ビタミンD3およびシアノコバラミン。
【0150】
B.ENSURE(登録商標)HIGH PROTEIN:
用途:ENSURE HIGH PROTEINは、食事に特別なタンパク質および栄養素を必要とする者に有用である。ENSURE HIGH PROTEINは、一般の外科的処置または股関節もしくは他の骨の骨折から回復中の者による使用に適し、床擦れであるまたは床擦れの危険にある者のための栄養素の良好な供給源である。補助的経口栄養素を目的とする。
【0151】
成分:水、糖(ショ糖)、コーンマルトデキストリン、カゼインカルシウムおよびカゼインナトリウム、ダイズ油、ダイズタンパク質単離物、コーン油、クエン酸カリウム、菜種油、リン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、リン酸マグネシウム、人工香味料(塩化ナトリウム)、ダイズレシチン、塩化コリン、アルコルビン酸、カラギナン、硫酸亜鉛、酢酸d1−アルファ−トコフェリル、硫酸第一鉄、ジェランガム、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸銅、パルミチン酸ビタミンA、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、葉酸、塩化クロム、ビオチン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、セレン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD3およびシアノコバラミン。
【0152】
C.ENSURE PLUS(登録商標)
用途:ENSURE PLUSは、患者に健康体重を増加させるまたは維持させるのを助けるために、高カロリーおよびタンパク質を提供する完全なバランスのとれた栄養素の供給源である。ENSURE PLUSは、食事とともにもしくは食間または食事の代用として使用することができる。経口的食事を目的とする。一時的な単独供給源の提供を目的とする。水分制限された患者または容量が制限された食事を必要とする患者を対象とする。
【0153】
特徴:
−心臓の健康を支持するための650mgのオメガ−3脂肪酸ALA(1.6g RDIの40%)。
−24種のビタミンおよびミネラルの優れた供給源。
−免疫システムを強化するための抗酸化剤のセレンならびにビタミンCおよびEの供給源。
−コレステロールの低下。
−コーシャー。
−グルテン不含。
−ラクトース不含。
【0154】
成分:バニラ:水、コーンシロップ、マルトデキストリン(コーン)、コーン油、カゼインナトリウおよびカゼインムカルシウム、糖(ショ糖)、ダイズタンパク質単離物、塩化マグネシウム、クエン酸カリウム、三塩基性リン酸カルシウム、ダイズレシチン、天然および人工的なフレーバー、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化コリン、アルコルビン酸、カラギナン、硫酸亜鉛、硫酸第一鉄、酢酸アルファ−トコフェリル、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸銅、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、パルミチン酸ビタミンA、葉酸、ビオチン、塩化クロム、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、亜セレン酸ナトリウム、フィロキノン、シアノコバラミンおよびビタミンD3。
【0155】
D.ENSURE(登録商標)POWDER:
用途:ENSURE(登録商標)POWDER(水で再構成される)は、食事とともにまたは食間での補助的使用のための完全にバランスのとれた栄養素である。ENSURE(登録商標)POWDERは、変更された食事である、栄養素が危険である、意図的でない体重減少を経験した、病気もしくは外科的処置から回復した、または低残渣の食事を取っている者に恩恵を与え得る。
【0156】
特徴:
−便利であり、混合が容易である。
−低残渣。
−ラクトースおよびグルテン不含。
成分:コーンシロップ、コーンマルトデキストリン、糖(ショ糖)、コーン油、カゼインナトリウムおよびカルシウム、ダイズタンパク質単離物、人工フレーバー、クエン酸カリウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、塩化カリウム、ダイズレシチン、アスコルビン酸、塩化コリン、硫酸亜鉛、酢酸d1−アルファ−トコフェリル、ナイアシンアミド、硫酸第一鉄、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸銅、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、パルミチン酸ビタミンA、葉酸、ビオチン、塩化クロム、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、セレン酸ナトリウム、フィロキノン、シアノコバラミンおよびビタミンD3。
【0157】
E.ENSURE(登録商標)PUDDING
用途:ENSURE PUDDINGは、他の菓子またはデザートの栄養素代替物である。ENSURE PUDDINGは、美味しく食べやすい形態の完全にバランスのとれた栄養素を提供する。ENSURE PUDDINGは、体重不足もしくは栄養不良である者または水分制限されたもしくは容量がされた食事を取っている者に適している。固さが調節された食事(例えば、ソフト、ピューレまたは完全な液体)を取っている者を対象とする。嚥下障害のある者を対象とする。補助的な経口的栄養素を目的とする。
【0158】
特徴:
−24種の必須ビタミンおよびミネラルの良好な供給源。
−冷凍不要の便利なもの。
−グルテン不含。
−給仕あたり1gまたはFOSを含む(FOSは結腸中の有益細菌の増殖を刺激するプレバイオティックである)。
成分:
バニラ:水、糖(ショ糖)、加工コーンスターチ、部分的に水素化されたダイズ油、ミルクタンパク質濃縮物、脱脂乳、フラクトオリゴ糖、硫酸マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、人工フレーバー、アスコルビン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、酢酸d1−アルファ−トコフェリル、硫酸第一鉄、ナイアシンアミド、硫酸マンガン、パントテン酸カルシウム、FD&Cイエロー#5および#6、硫酸銅、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、パルミチン酸ビタミンA、リボフラビン、葉酸、塩化クロム、ビオチン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、セレン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD3およびシアノコバラミン。
【0159】
F.ENSURE(登録商標)WITH FIBER:
用途:ENSURE FIBERは、食物繊維および栄養素の増加から恩恵を受けることができる者のための完全にバランスのとれた栄養素の供給源である。FOS、プレバイオティックとのファイバーブレンドは、消化管の健康の維持を助ける。ENSURE
FIBERは、低残渣を必要としない者に適している。ENSURE FIBERは、経口的にまたは管によって与えることができる。ENSURE FIBERは、変更された食事である、栄養素が危険である、意図的でない体重減少を経験した、病気もしくは外科的処置から回復した者に恩恵を与え得る。経口的な提供を目的とする。一時的な単独供給源の提供を目的とする。
【0160】
特徴:
−1gのFOS/8fl oz.を含む。FOSファイバー(消化されない糖質)は結腸中の自然防御の促進を助ける。
−24種の必須ビタミンおよびミネラルの優れた供給源。
−8−fl−oz給仕あたり2.8gの全食物繊維を提供する。
−ラクトースおよびグルテン不含。
【0161】
成分:
バニラ:水;コーンマルトデキストリン、糖(ショ糖)、カゼインナトリウムおよびカルシウム、ダイズ油、ダイズタンパク質単離物、コーン油、オート麦繊維、フラクトオリゴ糖、菜種油、ダイズ繊維、リン酸カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸カリウム、セルロースゲル、ダイズレシチン、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、天然および人工的なフレーバー、塩化コリン、リン酸マグネシウム、アルコルビン酸、セルロースガム、塩化カリウム、カラギナン、硫酸第一鉄、酢酸d1−アルファ−トコフェリル、硫酸亜鉛、ナイアシンアミド、硫酸マンガン、パントテン酸カルシウム、硫酸銅、パルミチン酸ビタミンA、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、葉酸、塩化クロム、ビオチン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、セレン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD3およびシアノコバラミン。
【0162】
上記されたおよび当業者に知られている種々の栄養補給剤は、本発明に従って生成されるPUFAで置換されるおよび/またはPUFAで補足され得る。
【0163】
G.Oxepa(商標)栄養製品
Oxepa(商標)は、重病患者、人工呼吸器を装着した患者における炎症反応を調節することが臨床的に示されている。Oxepaは、敗血症、SIRS(全身性炎症反応症候群)、ALI(急性肺障害)またはARDS(急性呼吸促迫症候群)を有する患者に適している。管による提供を目的とする。単独供給の栄養素を対象とする。
熱量分布:Oxepaにおける熱量分布は表Cに示されている。
【0164】
【表3】

【0165】
成分:水、カゼインカルシウムおよびカゼインナトリウム、糖(ショ糖)、菜種油、中位鎖トリグリセリド、イワシ油、ルリヂサ油、塩化マグネシウム、リン酸カルシウム、ダイズレシチン、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、アルコルビン酸、リン酸カリウム、天然および人工的なフレーバー、塩化コリン、タウリン、酢酸d−アルファ−トコフェリル、L−カルニチン、塩(塩化ナトリウム)、ジェランガム、硫酸亜鉛、硫酸第一鉄、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸銅、塩化チアミン塩酸塩、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、ベータ−カロチン、パルミチン酸ビタミンA、葉酸、塩化クロム、ビオチン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、セレン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD3およびシアノコバラミン。
【0166】
Oxepa(商標)栄養製品の様々な脂肪酸成分は、本発明に従って生成されるPUFAで置換されるおよび/またはPUFAで補足され得る。
【0167】
F.医薬組成物
また、本発明は、本明細書に記載されている方法に従って、1種以上の酸、および本明細書に記載されているΔ8−デサチュラーゼ遺伝子を用いて生成された得られた油を含む医薬組成物を包含する。より具体的には、このような医薬組成物は、1個以上の酸および/または油、ならびに標準的な周知の非毒性の医薬として許容される担体、アジュバントまたはビヒクル、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、水、エタノール、ポリオール、植物油、湿潤剤または乳化剤、例えば、水/油乳化剤を含んでもよい。この組成物は液体または固体の形態であってもよい。例えば、組成物は、錠剤、カプセル、摂取可能な液体もしくは粉末、注射可能なもしくは局所的軟膏またはクリームの形態であってもよい。適切な流動性は、例えば、分散の場合に必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性剤を用いることによって維持することができる。また、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい場合がある。このような不活性希釈剤に加えて、組成物はまた、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、風味剤および香味剤を含むことができる。
【0168】
懸濁液は、活性な化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロオキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカントまたはこれらの物質の混合物を含んでもよい。
【0169】
錠剤およびカプセルなどの固体投薬形態は、当該技術分野において周知である技術を用いて調製され得る。例えば、本発明に従って生成されるPUFAは、従来の錠剤基剤、例えば、ラクトース、ショ糖、およびコーンスターチを用いて、結合剤、例えば、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン、崩壊剤、例えば、ポテトスターチまたはアルギン酸、および潤滑剤、例えば、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムと組み合わせて錠剤化することができる。カプセルは、これらの賦形剤をゼラチンカプセルに、抗酸化剤および関連PUFA(単数以上)とともに組み込むことによって調製することができる。抗酸化剤およびPUFA成分は、上記で示されたガイドラインに適合しなければならない。
【0170】
静脈内投与について、本発明に従って生成されたPUFAまたはその誘導体は、Intralipids(商標)などの市販製剤に組み込んでもよい。典型的な健常成人の血漿脂肪酸プロファイルは、6.64から9.46%のARA、1.45から3.11%のDGLA、および0.02から0.08%のGLAである。これらのPUFAまたはその代謝前駆体は、患者において正常な脂肪酸プロファイルを達成ために単独でまたは他のPUFAと併用して投与することができる。所望により、製剤の各成分は、単一または多重使用のためのキットの形態で個々に提供されてもよい。特定の脂肪酸の典型的な用量は、0.1mgから20g(最大100g)/日であり、10mgから1、2、5または10g/日が好ましい。
【0171】
本発明の医薬組成物の可能な投与経路は、例えば、腸内(例えば、経口および直腸)および非経口を含む。例えば、液体製剤は、例えば、経口的にまたは直腸に投与されてもよい。さらに、均一な混合物は水に完全に分散され、滅菌条件下で生理学的に許容される希釈剤、防腐剤、緩衝剤または推進剤と混合し、噴霧または吸入剤を形成することができる。
【0172】
投与経路は、当然に所望の効果に依存する。例えば、組成物が、荒れた、乾燥したまたは老化した皮膚の治療、損傷もしくは火傷した皮膚の治療、または疾患もしくは疾病によって影響を受けた皮膚もしくは毛髪の治療に利用される場合、おそらくは局所的に塗布されてもよい。
【0173】
患者に投与される組成物の用量は当業者によって決定することができ、患者の体重、患者の年齢、患者の免疫状態などの種々の因子に依存する。
【0174】
形態に関して、組成物は、例えば、溶液、分散液、懸濁液、乳化剤または後に再構成される滅菌粉末であってもよい。
【0175】
また、本発明は、本明細書に記載される医薬組成物および/または栄養組成物の使用による様々な障害の治療を含む。特に、本発明の組成物は、血管形成後の再狭窄の治療に使用することができる。さらに、炎症、関節リウマチ、喘息および乾癬の症状は、本発明の組成物を用いて治療することができる。また、証拠は、PUFAがカルシウム代謝に関与していることを示している;したがって、本発明の組成物は、おそらくは骨粗鬆症および腎臓または尿管結石の治療または予防に利用できる。
【0176】
さらに、本発明の組成物は、癌の治療に用いることができる。悪性細胞は、脂肪酸の組成が変化していることが示されている。脂肪酸の添加は、悪性細胞の増殖を遅くし、細胞死を生じさせ、および化学治療剤に対する感受性を増加させることが示されている。さらに、本発明の組成物は、癌を伴う悪液質の治療に有用である場合がある。
【0177】
また、本発明の組成物は、糖尿病の治療に使用することができる(例えば、米国特許第4,826,877号およびHorrobin DFら,(1993)Am.J.Clin.Nutr.Vol.57(Suppl.)732S−737S参照)。脂肪酸代謝および組成の変化が糖尿病動物において示されている。
【0178】
さらに、Δ8−デサチュラーゼ酵素の使用により直接的にまたは間接的に生成されたPUFAを含む本発明の組成物はまた、湿疹の治療、血圧降下、および数学的な試験スコアの改善に使用できる。さらに、本発明の組成物は、血小板凝集、血管拡張の誘導、コレステロールレベルの低下、血管壁平滑筋および線維組織の増殖阻害(Brennerら,(1976)Adv.Exp.Med.Biol.Vol.83,p.85−101,1976)、胃腸出血および非ステロイド抗炎症薬の他の副作用(米国特許第4,666,701号参照)の低減または予防、子宮内膜症および月経前症候群(米国特許第4,758,592号参照)の予防または治療、ならびにウイルス感染後の筋痛性脳脊髄炎および慢性疲労(米国特許第5,116,871号参照)の治療に使用することができる。
【0179】
本発明の組成物のさらなる使用は、AIDS、多発性硬化症および炎症性皮膚疾患の治療、ならびに健康維持における使用を含む。
【0180】
さらに、本発明の組成物は、化粧目的に利用されてもよい。本発明の組成物は、混合物が形成されるように既存の化粧品組成物に添加されてもよく、または単独組成物として使用されてもよい。
【0181】
G.獣医用途
動物はヒトと同じ必要なものおよび状態の多くを経験するため、上記した医薬組成物および栄養組成物は、動物(すなわち、家畜または非家畜)と関連してヒトと同じく利用することができる。例えば、本発明の油または酸は、動物または水産養殖飼料補給物、動物飼料代用物、動物ビタミンまたは動物局所軟膏に利用することができる。
【0182】
本発明は、以下の非限定的な実施例の使用によって説明することができる。
【実施例1】
【0183】
エミリアナ・ハックスレイCCMP378由来のΔ8−デサチュラーゼの単離およびcDNAライブラリー構築のための縮退オリゴヌクレオチドの設計
ある種の海草の脂肪酸組成の分析は、エミリアナ・ハックスレイCCMP378において相当量のドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n−3)(全脂質の40重量%)を示した(表1参照)。さらに、この生物は、代替の「Δ8−デサチュラーゼ−Δ9−エロンガーゼ」経路の中間物を示し(図1参照)、この経路がこの生物において活性であることを示す。したがって、この生物は、リノール酸(LA、18:2n−6)をエイコサジエン酸(EDA、20:2n−6)に変換し、またはアルファ−リノレン酸(ALA、18:3n−3)をエイコサトリエン酸(ETrA、20:3n−3)に変換することができる活性Δ9−エロンガーゼを含み、さらにエイコサジエン酸(EDA、20:2n−6)をジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA、20:3n−6)に変換し、またはω3−エイコサトリエン酸(ω3−EtrA、20:3n−3)をω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA、20:4n−3)に変換する活性なΔ8−デサチュラーゼを含むことが予測される(図1参照)。
【0184】
【表4】

【0185】
本研究の目的は、エミリアナ・ハックスレイCCMP378から予測された全長Δ8−デサチュラーゼ遺伝子を単離し、サッカロミセス・セレビシエにおける発現によってその機能性を変化させることであった。そうするために、標準化されたcDNAライブラリーがエミリアナ・ハックスレイCCMP378について構築された。エミリアナ・ハックスレイCCMP378の細胞ペレットは、海洋性植物プランクトンのProvasoli−Guillard−National Center(CCMP−Bigelow Laboratories、メイン州ウェストブーストベイ)から得た。総RNAは、Qiagen RNeasy Maxiキット(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)を用いて製造業者の使用説明書により細胞ペレットから精製された。要約すると、凍結された細胞ペレットは、乳鉢および乳棒を用いて液体窒素中で潰され、RLT緩衝液(Quiagen RNeasy Plant Mini kit)中に懸濁させ、QiaShredderを通過させた。RNAは、製造業者の使用説明書によりRNeasy maxiカラムを用いて精製された。
【0186】
エミリアナ・ハックスレイCCMP378からの一次ライブラリーおよび標準化されたcDNAライブラリーは、Agencourt Biosciences(マサチューセッツ州ウォルサム)によって、彼らの独自の技術を用いて構成された。Agencourtは、第1鎖中のいくつかの独特であり独自のステップを用い、最終的には通常使用される技術と比較して25から30%の効率増加となる。その独自の工程中、RNAは、内部の開始(priming)事象を減少または排除するように設計された条件を用いてssDNAに逆転写される。これと特殊化されたサイクルプログラムの組み合わせは、全長クローンの数を増加させる。第2鎖の合成後、次にcDNAクローンは、1.2kbを超えるサイズで選択され、小さく切断されたcDNAの選択的なクローニングを減少させる。大きなインサートライブラリーについて、より大きなインサートクローンを増やすために、選択されたインサートサイズは4kbを超える。サイズ選択後、cDNA端が磨かれ、このcDNAは、レアーカッティング(rare cutting)酵素を用いて消化される。次に、「レアカッター」制限酵素は、この酵素のための部位がcDNA開始工程中にクローンに導入され、pAGENベクターに方向性クローニング用のクローンを調製するために使用される。「レアカッター」は、cDNAクローン内で切断するのはおそらく20回未満であり、したがって、クローンに沿ってランダムな間隔で切断するより一般的な制限酵素を利用する他のcDNAライブラリー構築プロセスに対して、より多くの全長クローンが得られる。結果物は、レアーカッティング制限酵素から作製された5’平滑部および3’突出部を有するインサートである。このプロセスのため、追加のアダプター連結は、方向性クローニングを確実にするために必要とされない。これは、クローニングプロセスの全体的な効率を改善する。5’アダプターを使用しない方向性クローニングのため、さらに、クローニング中のcDNAの操作数の減少に起因した形質転換効率を増加させる。一次cDNAライブラリーが完成した後、独立したクローンの数、組換えクローンの割合および平均インサートサイズの数について試験される。
【0187】
標準化プロセスは、標準ライブラリーを2つの集団に分けることによって開始される。第1の集団は直線化され、cDNAかRNAに転写され、ビオチン化されたヌクレオチドを組み込んでいる。第2の集団は、ファージミド生成を介して一本鎖DNAプラスミドにされる。細胞溶解物中の二本鎖DNAはDNAseIを用いて消化される。これは、一本鎖DNAプレップからの二本鎖DNAプラスミド汚染を排除する。
【0188】
次に、2つの集団が混合され、ssDNAプラスミドからの任意の過剰発現されたクローンは、ビオチン化されたRNA集団由来のそれらの片方とハイブリダイズする。Agencourtは、ハイブリダイゼーション前にポリ−A領域をプレブロックするためにオリゴdTおよびプライマー伸長を用いる。これは、ポリ−AクローンとRNAのポリ−Uのハイブリダイゼーションを妨げる。ストレプトアビジン/フェノール抽出法を用いて、全てのビオチン化されたハイブリダイズされた対および直線化されたビオチン化されたRNAを取り除き、このようにして、一本鎖の反応性が低い(under−represented)DNAプラスミドを残す。インサートを含むクローンだけにハイブリダイズするオリゴを用いて、DNA合成は二本鎖cDNAクローンを再生するために開始される。次に、これらのクローンは細菌に形質転換され、最終的な標準化されたcDNAライブラリーを作製する。このプロトコールを用いて、力価が2.6×10cfu/mlである標準化されたcDNAライブラリーが作製され、得られたコロニーの総数は1.8×10であり、平均インサートサイズは1.05kbであった。
【0189】
このライブラリーからΔ8−デサチュラーゼ様の候補物を単離するために、既知のΔ8−デサチュラーゼに存在する保存されたアミノ酸モチーフをコードする縮退オリゴヌクレオチド(すなわち、プライマー)が設計された。その後、これらのプライマーは、推定のΔ8−デサチュラーゼにおいてこれらの保存された領域を含むDNA断片を同定するために、PCR反応に用いられた。
【0190】
以下の生物由来の既知のΔ8−デサチュラーゼアミノ酸配列がアラインメントおよびプライマーの設計のために使用された:ユーグレナ・グラシアリス(受託番号AF139720、配列番号1;図3A)、パブロバ・ルセリCCMP 459(WO2007/127381A2、配列番号2;図3B)、パブロバ・サリナ(受託番号DQ995518、配列番号3;図4A)、パーキンサス・マリヌス(受託番号DQ508730、配列番号4;図4B)およびアカントアメーバ・カステラーニ(受託番号CS608483、配列番号5;図4C)。
【0191】
使用された縮退プライマーは以下の通りであった:
タンパク質モチーフ1:(配列番号38):
NH−R D A T H−COOH
プライマーRO1714(フォワード)(配列番号6):
5’−CGC GAC GCG ACG GAS SMG TTC RWG KYK WWS CAC−3‘
このプライマーは、推定シトクロームbドメインに保存された配列モチーフを含んでいた。
タンパク質モチーフ2:(配列番号39):
NH−G W L H D H H−COOH
プライマーRO1715(フォワード)(配列番号7):
5’−GGC TGG CTT KCK CAC GAC WWC YYG CAT CAC−3’
このプライマーは「ヒスチジン−ボックス1」を保存した配列モチーフを含んでいた。
タンパク質モチーフ3:(配列番号40):
NH−W R H N H H−COOH
プライマーRO1716(フォワード)(配列番号8)
5’−TGG MRS SYG CGC CAT AAC RCG CAC CAC GTG KSC AGC AAC−3’
このプライマーは「ヒスチジン−ボックス2」を保存した配列モチーフを含んでいた。
タンパク質モチーフ4:(配列番号41):
NH−F V V F A T H Y−COOH
プライマーRO1717(リバース)(配列番号9)
5’−ATA GTG GGT TGC AAA GAC AAC SAY SSC CGT CSC GAA −3’
タンパク質モチーフ5:(配列番号42):
NH−Q I/T E H H L F P T/M M P−COOH
プライマーRO1718(リバース)(配列番号10)
5’−GGG CAT SRT GGG GAA GAG GTG ATG CTC GRT CTG−3’
このプライマーは「ヒスチジン−ボックス3」を保存した配列モチーフを含んでいた。
【0192】
オリゴヌクレオチド合成のための標準のミックスベース(MixBase)はK=G、T;R=A、G;S=C、G;M=A、C;W=A、C;Y=C、T;B=C、G、T;H=A、C、T;V=A、C、G;D=A、T、C;X=A、C、G、Tであった。
【実施例2】
【0193】
エミリアナ・ハックスレイCCMP378由来の推定Δ8−デサチュラーゼ遺伝子の単離
エミリアナ由来のΔ8−デサチュラーゼ遺伝子を単離するために、上述した縮退オリゴヌクレオチドの種々の置換体および組み合わせ(実施例1参照)をPCR反応において使用した。鋳型として標準化されたcDNAライブラリーから単離された2μlのプラスミドDNA、1×PCR緩衝液マイナスMgCL(20mMのTris−HCl、pH8.4、50mMのKCl)、1.5mM MgSO、各々200μMのdNTP、各々2pmolのプライマーおよびプラチナTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を含む50μl容積においてPCR増幅を実施した。94℃/3分間の初期変性後、(94℃/30秒間;55℃/30秒間;72℃/1分間)の35サイクル、72℃/5分間の最終伸長のように増幅を実施し、反応を4℃で終了させた。全PCR反応生成物を、Qiagen MinElute Reaction Cleanup Kit(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)を用いて精製し、反応生成物を0.8%アガロースゲル上で分離した。適切なサイズのバンド(既知のΔ8−デサチュラーゼに基づく)を、QiaQuick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いてゲル精製し、これらのDNA断片を製造業者のプロトコールによりTOPO−TAクローニングベクター(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)にクローニングした。組換えプラスミドをTOP10スーパーコンポネント細胞(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)に入れて形質転換し、クローンの配列を決定した。試験された様々なプライマーセットのうち、既知のΔ8−デサチュラーゼに対して配列類似性を有するDNA断片を生じさせるための唯一のプライマーの組み合わせは、RO1715およびRO1717であった。
【0194】
このようにして、以前に単離されたΔ8−デサチュラーゼに配列相同性を示した1つのクローンを単離した。このクローン(ED3−8)は長さが531bpであり、それ由来の推定アミノ酸配列は、BLASTサーチにおける最高スコアの適合として、パブロバ・ルセリCCMP 459(WO2007/127381A2、配列番号2;図3B)と62%のアミノ酸配列同一性を示した。このクローンのDNAおよび推定アミノ酸配列が示されている(それぞれ配列番号11および12;図5および6)。
【0195】
ED3−8断片の5’末端を単離するために、鋳型としてcDNAライブラリーから精製されたプラスミドDNAおよびオリゴヌクレオチド(プライマー):RO1720(配列番号13)(5’−GAT CAC CGG GCT GTT GCG CAC GAA G−3’)およびRO899(配列番号14)(5’−AGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGC−3’)を用いてPCR増幅を実施した。プライマーRO1720は、この推定のΔ8−デサチュラーゼのED3−8断片に基づいて設計され、プライマーRO899はcDNAライブラリーの調製のために用いられたpAGENベクター由来の配列に対応していた。製造業者の使用説明書により、50μlの最終体積に含まれる、各々10pmolのプライマー、1μlのDNA鋳型、1.5μlの50mMのMgSO、1×PCRx緩衝液(Qiagen)、0.5×エンハンサー溶液(最終濃度)、1μlの10mMのdNTP、および0.5μlプラチナTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)を用いて増幅を実施した。試料を94℃で2分間初期変性させた後、94℃で45秒間、55℃で30秒間、68℃で1分間の35サイクルを行った。68℃で7分間による最終伸長サイクルを実施し、その後、反応を40℃で終了させた。PCR断片を0.8%アガロースゲル上で分離し、Qiagen Mini−elute Gel Extraction Kitを用いてゲル精製した。DNA断片をTOPO−TAクローニングベクター(Invitrogen)にクローニングした。組換えプラスミドをTOP10スーパーコンポネント細胞(Invitrogen)に入れて形質転換し、クローンの配列を決定した。
【0196】
クローンPK15は、既知のΔ8−デサチュラーゼとのアミノ酸配列相同性および「ATG」、「Met」開始コドンに基づく推定Δ8−デサチュラーゼの5’末端を含むことが同定された692bpインサート(配列番号15;図7A)を含んでいた。推定Δ8−デサチュラーゼの5’端を含むこのPK15クローンのコードされるアミノ酸配列が示されている(配列番号16;図7B)。
【0197】
エミリアナ・ハックスレイ由来のこのΔ8−デサチュラーゼの3’末端を単離するために、以下のプライマーを使用した:
フォワードプライマーRO1719(配列番号17):5’−GTA CCA GTG GCT GCT GCT GAC GAT G−3’)
または
フォワードプライマーRO1724(配列番号18):5’−CTG GCG CTT CGA GTC GAT GCA GTA CCT−3’
または
フォワードプライマーRO1727(配列番号19):5’−CTT CGT GCG CAA CAG CCC GGT GAT C−3’
および
リバースプライマーRO898(配列番号20):5’−CCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAG−3’。
【0198】
RO1719、RO1724およびRO1727は、先に同定されたED3−8断片の反応に基づいて設計された。RO898は、cDNAライブラリー構築物用に使用されたpAGENベクターの配列に基づいて設計し、cDNAライブラリーからのΔ8−デサチュラーゼの3’末端をPCR増幅することが指示された。ED3−8の5’末端を単離するために記載された条件と同じPCR条件を使用した。しかしながら、このようにして生じたPCR産物は、ED3−8の推定Δ8−デサチュラーゼの3’末端を含んでいなかった。
【0199】
また、製造業者の仕様書によりプラチナTaq High Fidelity(HF)酵素(Invitrogen)を用いてPCRを実施し、提供された1×HF PCR緩衝液(最終濃度)、各々10pmolのプライマー、1μlのDNA鋳型、1.5μlの50mM MgSO、1μlの1mM dNTP、および0.5μlのプラチナTaq HF DNAポリメラーゼ(Qiagen)を最終体積50μl中で使用した。試料を94℃で2分間初期変性させた後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、68℃で2分間の30サイクルを行った。68℃で7分間の最終伸長サイクルを実施した後、反応を4℃にて終了させた。しかしながら、このようにして生じたPCR産物は、ED3−8の推定Δ8−デサチュラーゼの3’末端を含んでいなかった。
【0200】
プライマーRO1727およびRO898、ならびにAccuPrime pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を用いた最終PCR増幅は、製造業者のプロトコールにより実施した。PCR反応は、50μlの全反応中に2μlのcDNAライブラリーのDNA鋳型、1×最終濃度のAccuPrime Pfx緩衝液、各々20pmolのプライマーおよび1μlのAccuPrime pfx DNAポリメラーゼを含んでいた。試料を95℃で2分間初期変性させた後、95℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で1分間の30サイクルを行った。反応を4℃で終了させた。しかしながら、このようにして生じたPCR産物は、ED3−8の推定Δ8−デサチュラーゼの3’末端を含んでいなかった。
【0201】
次に、推定のΔ8−デサチュラーゼ遺伝子、ED3−8の3’末端を単離するために新しい戦略を開始した。RACE(cDNA末端の急速増幅)を、その3’末端を単離するためにGeneRace Kit(Invitrogen)を用いて実施した。エミリアナから単離された全RNAの5μgを、製造業者の仕様書により第1鎖のcDNAを生じさせるためにGeneRacer Oligo dTプライマー(5’−GCT GTC AAC GAT ACG CTA CGT AAC GGC ATG ACA GTG(T)24−3’(配列番号43))とともに使用した。
【0202】
上記で生じさせたRACE ready cDNAのPCR増幅は、製造業者の仕様書により、30pmolのGeneRacer 3’プライマー(5’−GCT GTC AAC GAT ACG CTA CGT AAC G−3’(配列番号22)および推定Δ8−デサチュラーゼ(ED3−8)に特異的である10pmolのRO1724フォワードプライマー(配列番号18)を用いて実施した。PCR反応は、50μlの全反応中に、2μlのcDNA鋳型、1×HF PCR緩衝液(Invitrogen)、1μlの10mM dNTP、2μlの50mM MgSO、0.5μlプラチナTaq HF DNAポリメラーゼ、および上述されたプライマーを含んでいた。PCR増幅を以下のように実施した:94℃/2分間の初期変性;94℃/30秒間の変性を5サイクル;72℃/1分間の伸長;94℃/30秒間の変性を5サイクル;70℃/1分間の伸長;94℃/30秒の変性を20サイクル;65℃/30秒間の伸長;65℃/10分間の最終伸長;4℃で反応終了。PCR産物の分析は、非常に微かなバンドを表し、おそらくはcDNAプールにおける遺伝子の低比率のためである。よって、入れ子PCRは、鋳型として1μlの上記で生じさせたPCR反応、ならびに10pmolの遺伝子特異的プライマーRO1719(配列番号17)および10pmolのGeneRacer 3’入れ子プライマー(5’−CGC TAC GTA ACG GCA TGA CAG TG−3’(配列番号23))を用いて実施された。PCR反応は、RACE ready cDNA鋳型(上述)を用いて一次反応について記載されたPCR反応と同一であった。増幅条件は、以下の通りであった:94℃/2分間の変性;94℃/30秒間の変性、65℃/30秒間のアニーリング、68℃/1分間の伸長を25サイクル;68℃/10分間の最終伸長、4℃で反応の終了。0.8%アガロースゲル上のPCR断片の解析は、明確なバンドの存在を表した。これらを、Qiagen Mini−elute Gel Extraction Kitを用いてゲル精製した。DNA断片の末端を、T4ポリメラーゼを用いて補充し、得られた平滑末端の断片をTOPO−Bluntクローニングベクター(Invitrogen)にクローニングした。組換えプラスミドをTOP10スーパーコンポネント細胞(Invitrogen)に入れて形質転換し、クローンの配列を決定した。配列決定は、既知のΔ8−デサチュラーゼとのアミノ酸配列の相同性、「TAG」終止コドンおよびポリAテールの存在に基づいて、ED3−8の推定3’末端を含むアミノ酸配列(配列番号25および44から46;図8B)をコードする589bpのインサート(配列番号24;図8A)を示した。
【0203】
推定のΔ8−デサチュラーゼであるED3−8の全長遺伝子は、以下のプライマーを用いてPCR増幅によって単離された:
RO1736(配列番号26):
(フォワード、ATG開始コドン(ボールド)およびEcoRIクローニング部位(下線)を含む
【0204】
【化1】

RO1737(配列番号27):
(リバース、TGA終止コドン(ボールド)およびHindIIIクローニング部位(下線)を含む
【0205】
【化2】

PCR反応に使用された鋳型は、以下の通り、RACE−ready cDNA、またはエミリアナの標準化されたcDNAライブラリーから単離されたDNAを含んでいた:
【0206】
【表5】

【0207】
増幅は以下のように実施された:95℃/2分間の初期変性;(95℃/15秒間の変性;55℃/30秒間のアニーリング;68℃/1.5分間の伸長)を30サイクル;68℃/4分間の最終伸長;4℃で反応の終了。PCRは約1254bpの単一なバンドを生じさせ、これは、製造業者のプロトコールによりTOPO−Bluntベクター(Invitrogen)にクローニングされた。両方の鋳型は同じサイズのDNAバンドを生じさせた。鋳型としてcDNAライブラリーを用いることによって得られたPCR産物(ED3−8−EP2−5)の配列決定は、エミリアナ・ハックスレイCCMP 378由来の推定のΔ8−デサチュラーゼの全長1254bpの遺伝子配列(配列番号28;図9)を示し、この遺伝子配列は417アミノ酸を含むタンパク質をコードしている(配列番号29;図10)。この遺伝子はED3−8と称され、発現試験のために使用された。
【0208】
ED3−8に加えて、全長遺伝子のある種の領域においていくつかの配列変異を示した追加の改変体クローンは、配列決定中に特定された(表2参照)。これらの改変は、おそらくPCR増幅の過程中に一般に生じる突然変異によって引き起こされ、使用されるDNAポリメラーゼの低い特異性に起因している。また、これらのクローンは、cDNAライブラリーが鋳型として使用される場合(ED3−8−EP−Xと称される)またはRACE ready cDNAが鋳型として使用される場合(ED3−8−ER−Xと称される)に得られた。また、これらの遺伝子は、もとのED3−8クローンについて記載されているように、Δ8−デサチュラーゼ活性について評価された。
【0209】
Δ8−デサチュラーゼED3−8をコードするヌクレオチド配列を、pUC57クローニングベクターにクローニングし、pRSP61と称した。このベクターは、ブタペスト条約に基づき、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard、バージニア州マナッサス 20110に寄託し、ATCC特許指定番号PT A−9477が付与された。
【0210】
【表6】

【0211】
Blast解析は、全長遺伝子ED3−8(配列番号29)によってコードされるアミノ酸配列が既知のΔ8−デサチュラーゼに最も高いアミノ酸配列相同性を示したことを明らかにした。これれは、パブロバ・ルセリCCMP 459((配列番号2;図3B)、パブロバ・サリナ(配列番号3;図4A)、パーキンサス・マリヌス(配列番号4;図4B)およびユーグレナ・グラシアリス(配列番号1;図3A)由来のΔ8−デサチュラーゼを含んでいた。これは、パブロバ・ルセリCCMP 459のΔ8−デサチュラーゼに対して最も高い(52.3%)のアミノ酸配列同一性を示した。また、それは、酵素活性に本質的であることが知られている(Sayanova Oら,(2001)J Exp Bot.52:1581−1585;Sayanova Oら,(2000)Biochem Soc Trans.28:636−638)、全ての既知の膜結合性デサチュラーゼにおいて見出された3つの保存「ヒスチジンボックス」(Okuleyら,(1994)The Plant Cell 6:147−158;Pereira SLら,(2003)Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids.68:97−106)を含んでいた。ED3−8によってコードされるタンパク質における保存されたヒスチジンボックスは、アミノ酸位置155から160(HDYLH(配列番号32))、197から201(HNTHH(配列番号33))、および355から359(QTEHH(配列番号34))に存在していた(図2参照)。また、この配列は、5’末端にシトクロームb様ドメインを含み、これは保存されたヘム結合HPGGモチーフ(アミノ酸位置38から41)を有していた(図2参照)。この遺伝子の全G+C含量は約65%である。
【実施例3】
【0212】
遺伝子ED3−8によってコードされる推定のΔ8−デサチュラーゼの酵素活性の特徴付け
ED3−8遺伝子をコードする推定のΔ8−デサチュラーゼを、酵母発現ベクターであるpYX242(Novagen)のEcoRI/HindIII部位にクローニングし、クローンpRSP60を生じさせ、次にコンピテントサッカロミセス・セレビシエ菌株SC334に入れて形質転換した。製造業者によって特定された条件に従って、Alkali−Cation Yeast Transformation Kit(QBioGene)を用いて酵母形質転換を実施した。ロイシン欠損培地(DOB[−Leu])上でロイシン栄養要求性について形質転換体を選択した。
【0213】
ED3−8によってコードされる酵素の特異的デサチュラーゼ活性を決定するために、形質転換体を50μMの特定の脂肪酸基質(以下に列挙される)の存在下で増殖し、特定の生成物への変換を用いて、基質特異性を決定した:
Δ8−デサチュラーゼ活性について:
エイコサジエン酸(EDA、20:2n−6)→ジホモガンマ−リノレン酸(DGLA、20:3n−6)
エイコサトリエン酸(ETrA、20:3n−3)→ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA、20:4n−3)
Δ6−デサチュラーゼ活性について:
リノール酸(18:2n−6)→ガンマ−リノレン酸(GLA、18:3n−6)
アルファ−リノレン酸(18:3n−3)→ステアリドン酸(SDA、18:4n−3)
Δ5−デサチュラーゼ活性について:
ジホモ−ガンマ−リノレン酸(20:3n−6)→アラキドン酸(ARA,20:4n−6)
ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA、20:4n−3)→エイコサペンタエン酸(EPA、20:5n−3)
Δ4−デサチュラーゼ活性:
ω6−アドレン酸(ADA、22:4n−6)→ω6−ドコサペンタエン酸(ω6−DPA、22:5n−6)
ω3−ドコサペンタエン酸(ω3−DPA、22:5n−3)→ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n−3)
陰性対照の菌株は、S.セレビシエ334において発現されたpYX242ベクターからなっていた。
【0214】
選択的DOB[−Leu]培地から単離された形質転換されたコロニーを、激しく振とうしながら30℃にて10mlのYPD液体ブロス中で一晩増殖させた。次に、一晩培養したものの5mlを、50または25μM(最終濃度)の様々な脂肪酸基質(特定されている)を含む選択培地(DOB[−Leu])の45mlに添加し、これらを48から72時間(指示されている)24℃にて激しく振とう(250rpm)した。
【0215】
全脂質抽出について、酵母細胞を2000rpm/15分間にて遠沈し、0.5mlの水を添加し、試料をボルテックスし、次に10mlのメタノールを穏やかに旋回させながら添加した。その後、20mlのクロロホルムを添加し、試料を1分間、高速にてボルテックスし、2時間室温に放置した。次に、6mlの生理食塩水を試料に添加し、その後、2200rpmにて10分間遠心分離した。上部のクロロホルム層を、きれいな/乾燥した30mlのバイアルに取り出し、クロロホルムを40℃にて窒素気流下で乾燥するまで蒸発させた。一度、溶媒が完全に蒸発されると、2mlのクロロホルムを各々のバイアルに添加し、試料を誘導体化した。
【0216】
脂質の脂肪酸メチルエステル(FAME)への誘導体化について、各々の管を、100μlの内部標準(17.216μg/100μl)のTriheptadecanonを用いてスパイクした。クロロホルムを窒素下で40℃にて乾燥するまで蒸発させ、2mlの三フッ化ホウ素の14%メタノール溶液が添加され、その後、2滴(約50μl)のトルエンを添加した。各々のバイアルは窒素が注ぎ、15分間95℃にて加熱した。バイアルを冷却した後、2mlの生理食塩水を添加し、脂質を1分間激しくボルテックスすることによって4mlのヘキサンにより抽出した。次に、ヘキサン抽出物を、20mlのきれいな/乾燥したスクリューキャップ管に移し、5mlのdi−HOを添加し、試料をボルテックスし、1500rpmにて4分間遠心分離した。その後、洗浄されたヘキサンを20mlの試薬管に移した。ヘキサンを乾燥するまで蒸発させ、各々の試料を0.5mlの新鮮なヘキサンを用いて再構成した。再構成された最終ヘキサンをボルテックスし、脂質を分散した。次に、全試料をGCオートサンプラーバイアルに導入し、4μlを分析のために注入した。GCをNuChek Std.461を用いて較正した。
【0217】
基質の生成物への変換率を、下式を用いて計算した:
【0218】
【数1】

表3は、添加された基質の変換率に基づいたED3−8をコードしたタンパク質の酵素活性を示す。エミリアナ由来のED3−8遺伝子を変換したpRSP60クローンは、1.68%のEDA(20:2n−6)基質をDGLA(20:3n−6)に変換し、0.58%のETrA(20:3n−6)基質をETA(20:4n−3)に変換した。これは、ED3−8遺伝子が、n−6およびn−3脂肪酸基質を認識し得るΔ8−デサチュラーゼをコードし、n−6基質、EDAを優先することを示した。ベクターだけの対照を用いた場合、バックグラウンド(基質の非特異的変換)活性は検出されなかった(表2参照)。ED3−8をコードした酵素は、試験された他の基質のいずれに対しても活性がなく(データを示さない)、それはΔ6−、Δ5−またはΔ4−デサチュラーゼ活性を有しないことを示した。
【0219】
【表7】

さらに、ED3−8をコードするタンパク質の他の改変体(表2参照)は、同じ増殖条件下でS.セレビシエにおいて発現された。結果は、これらの改変体は、もとのED3−8をコードしたタンパク質と比較して、より低いΔ8−デサチュラーゼ活性を有するまたは活性がないことを示した(表4参照)。このようにして、ED3−8のアミノ酸配列における小さな変化は、その位置に依存して、酵素活性に影響を及ぼし得る。これらの変化は、酵素の触媒中心または低い活性をもたす酵素の安定性に影響を及ぼす可能性がある。これらの膜結合性デサチュラーゼの結晶構造は現在のところ解明されていないため、酵素活性に本質的である酵素における全ての領域を予測することは不可能である。「ヒスチジン−ボックス」領域およびシトクロームb領域が活性に本質的であることは周知である。しかしながら、これらのED3−8改変体は、「ヒスチジン−ボックス」およびシトクロームb領域における変化はない(表2参照)。したがって、酵素活性に重要である、ED3−8によってコードされるこのΔ8−デサチュラーゼにおける追加の領域を同定した。
【0220】
【表8】

ED3−8のΔ8−デサチュラーゼ活性は試験された培養条件下において低いため、培養条件を修正して、活性がいずれかの方法において、添加された基質の量を変化させることによってまたは発現中の温度および時間を変化させることによって改善され得るかどうかを決定した。このようにして、pRSP60で形質転換された酵母培養物を、25μM基質の存在下、24℃で48時間、または50μMもしくは25μM基質、20℃で72時間において増殖させた。表5は、培養条件を変化させることが酵母における発現を改善し得ることを示す。基質の生成物への変換率は約1.7%から約4.5%に増加した。
【0221】
【表9】

【実施例4】
【0222】
ED3−8のコドン最適化およびサッカロミセス・セレビシエにおけるそのコードされるタンパク質の発現
ED3−8のG+C含量が高い(約65%)ため、これは、酵母における発現に応じて示された相対的に低いΔ8−デサチュラーゼ活性の主な原因である可能性があった。したがって、ED3−8、エミリアナ・ハックスレイCCMP378(配列番号28;図9)のコドン使用頻度を、サッカロミセス・セレビシエにおける発現について最適した。サッカロミセス・セレビシエのコドン使用頻度パターンを、Codon Usage Database(Nakamura,Y.,Gojobori,T.and Ikemura,T.(2000)Nucl.Acids Res.28,292)から決定し、これをベクターNTIプログラム(Invitrogen)を用いてED3−8遺伝子配列に適用した。1254bpのコード配列の全412bp(約33%)を、そのコドン使用頻度とサッカロミセス・セレビシエのコドン使用頻度を並べるために修飾した。さらに、内部のHindIII部位を、様々な発現ベクターのマルチクローニングサイトのHindIII部位に遺伝子のクローニングを促進するために排除した。このようにして、1254bpのコード領域の全414bpを修飾した。この新規なコドン最適化された配列は、もとのED3−8遺伝子配列と66.98%の配列同一性を共有していた。コドン最適化された遺伝子における修飾は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させるものではなかった(配列番号29;図10)。さらに、「AAA」がATG翻訳開始コドンに対して5’に付加され、それは酵母における発現を促進すると考えられている。この配列は、「ED3−8−EP2−5−SC」(配列番号30;図11)と称された。また、隣接している制限部位を、様々な発現ベクターへのクローニングを促進するために付加した。所望の「ED3−8−EP2−5−SC」遺伝子を、GenScriptコーポレーション(ニュージャージー州ピスカタウェイ)によって合成し、pUC57クローニングの「TA」クローニング領域にクローニングした。次に、この遺伝子を、構築物を生じさせるためにpESC−Ura酵母発現ベクターのEcoRI/SpeI部位にサブクローニングし、pRSP62と称した。
【0223】
pESC−UraベクターにクローニングされたED3−8−EP2−5−SC遺伝子(配列番号30)を含むクローンは、pRSP62と称し、ブタペスト条約に基づき、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard、バージニア州マナッサス 20110に2008年9月26日付けで寄託し、ATCC特許受託番号PTA−9532が付与された。
【0224】
pRSP62を、実施例3に記載されたのと同じプロトコールを用いて、サッカロミセス・セレビシエに形質転換し、この形質転換体を、ウラシルを欠損している培地(DOB[−Ura])(QBioGene)を用いてウラシル栄養供給性について選択した。選択的DOB[−Ura]培地から単離された形質転換されたコロニーを、10mlのYPD液体ブロス中、300℃にて一晩、激しく振とうしながら増殖した。次に、この一晩の培養物の5mlを、pRSP62の発現を誘導するために添加された2%ガラクトース(最終濃度)および様々な脂肪酸基質(特定されている)の50μM(最終濃度)を含む選択培地(デキストロース不含DOB[−Ura])の45mlに添加した。培養物を、48時間(指定されている)24℃にて激しく振とう(250rpm)した。また、全脂肪酸の単離および分析を、実施例3に記載されたように実施した。
【0225】
表6は、添加された基質の変換率に基づく「ED3−8−EP2−5−SC」をコードするタンパク質の酵素活性を示す。コドン最適化されたED3−8遺伝子のΔ8−デサチュラーゼ活性は、もとのED3−8をコードしたタンパク質の活性よりも非常に高かった。結果は、EDA(20:2n−6)基質のDGLA(20:3n−6)への変換は12.51%であり、ETrA(20:3n−6)基質のETA(20:4n−3)への変換は8.45%であることを示している。バックグラウンド(基質の非特異的な変換)活性は、pESC−Uraベクターのみの対照を用いた場合には検出されなかった(表6参照)。コドン最適化されたED3−8をコードした酵素は、試験された他の基質のいずれに対してもΔ6−、Δ5−およびΔ4−デサチュラーゼ活性を示さなかった(データを示していない)。
【0226】
【表10】

【実施例5】
【0227】
酵母におけるコドン最適化されたΔ8−デサチュラーゼ「ED3−8−EP2−5−SC」およびイソクリシス(Isochrysis)Δ9−エロンガーゼの同時発現
コドン最適化されたΔ8−デサチュラーゼ「ED3−8−EP2−5−SC」を、イソクリシス・ガルバナ(IsoD9)(受託番号CQ831422、配列番号31;図12)とともに同時発現させた。IsoD9遺伝子の合成遺伝子構築物を、GenScript(ニュージャージー州ピスカタウェイ)によって作製し、pUC57クローニングベクターにクローニングした。この遺伝子を、pYX242酵母発現ベクターのEcoRI/BamHIにサブクローニングし、この構築物をpIsoD9と称した。
【0228】
構築物pRSP62(pESC−UraにおけるED3−8−EP2−5−SC)およびpIsoD9を、実施例3に記載されているプロトコールにより、サッカロミセス・セレビシエ菌株SC334に同時形質転換した。ロイシンおよびウラシル栄養供給性(DOB[−Leu−Ura]培地)を用いて同時形質転換体の選択を行った。形質転換されたコロニーを、30℃にて10mlのYPD液体ブロス中で一晩、激しく振とうしながら増殖させた。次に、この一晩の培養物の5mlを、50μM(最終濃度)のLA(18:2n−6)またはALA(18:3n−3)(特定されている)を含む選択培地(デキストロース不含DOB[−Leu−Ura]+2%ガラクトース)の45mlに添加し、これらを、48から72時間(指示されている)24℃または20℃にて激しく振とうした。また、全脂肪酸の単離および分析を実施例3に記載されるように実施した。
【0229】
【表11】

Δ8−デサチュラーゼおよびΔ9−エロンガーゼは協調して機能することができ、LA(18:2n−6)のDLGA(20:3n−3)への変換をもたらす。Δ9−エロンガーゼ(IsoD9)はLAをEDA(20:2n−6)に変換し、Δ8−デサチュラーゼ(ED3−8−EP2−5−SCをコードした酵素)はEDAをDGLAに変換する。これは、エミリアナ・ハックスレイから単離されたED3−8によってコードされるΔ8−デサチュラーゼがアラキドン酸(ARA)またはEPA/DHA生合成をもたらす、代替の(Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ)経路において機能し得ることを示す。したがって、これらの酵素は、様々な宿主においてLAからARAを生じさせ、またはALAからEPA/DHAを生じさせるために追加のデサチュラーゼおよびエロンガーゼ(すなわち、Δ5−デサチュラーゼ、C20−エロンガーゼおよびΔ4−デサチュラーゼ)と組み合わせて使用することができる。
【実施例6】
【0230】
植物における発現
コドン最適化されたΔ8−デサチュラーゼ遺伝子である「ED3−8−EP2−5−SC」は、モデル脂肪種子植物であるアラビドーシス(Arabidopsis)において、イソクリシス・ガルバナ(IsoD9)(受託番号CQ831422、配列番号31;図12)由来のΔ9−エロンガーゼ遺伝子、およびユーグレノイド・デセス(Euglenoid deses)Ehr.CCMP2916(EugMO7ELO、配列番号35)(より完全には2009年7月17日に出願された米国特許出願シリアル第12/505,293号に記載され、これは本明細書と一致する範囲を参照することにより本明細書に援用される)を用いて同時発現させた。
【0231】
EugMO7ELOのコード配列(配列番号35)を、センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド:5’−TATAGAATTCAAATGGACGTCGCGACTACGCTG−3’(配列番号36)および5’−TATTCTCGAGTTCTAGTCCACTTTCTTCTCATCCTTC−3’(配列番号37)(付加された制限酵素認識配列は下線が引かれている)を用いて、対応する遺伝子を含むプラスミドからPCRによって増幅させた。PCR反応を、非常に忠誠なPhusionポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いて行った。EcoRIおよびXhoIによる制限酵素消化後、産物は、バイナリーベクターにおいて、産物の5’末端でダイズ由来の種子特異的なグリシニン−1プロモーターに連結され、産物の3’末端でグリシニン−1の3’非翻訳領域に連結され、プラスミドpEugMO7ELOを生じさせた。グリシニン−1調節エレメントは、以前に報告されている(Nielsen,N.C.ら,(1989)Characterization of the glycinin gene family in soybean.Plant Cell,1,313−328)。また、このベクターは、蛍光および細菌選択用のカナマイシン耐性マーカーによって、形質転換された種子を選択するためのカッサバモザイクウイルスプロモーターの調節下にDs−Redトランス遺伝子を含んでいる。また、このベクターは、宿主植物において多重遺伝子の遺伝子発現のための他のトランス遺伝子のクローニングを可能にするいくつかの固有の制限酵素部位(例えば、MluI)を含んでいる。これらの実験の対照として、イソクリシス・ガルバナのΔ9−ELO(配列番号31)を、pBinGlyRed2におけるグリシニン−1プロモーターの調節下でEcoRI/XhoI断片としてクローニングし、プラスミドpIsoD9を生じさせた。
【0232】
ED3−8−EP2−5−SCコード配列(配列番号30)を、オープンリーディングフレームの両端に位置するNotI制限酵素部位を用いて合成した。ED3−8−EP2−5−SCコード配列を、β−コングリシニン遺伝子のダイズα’−サブニットのための種子特異的なプロモーター、およびファセオルス・ブルガリス(Phaseolus vulgaris)由来のファセオリン遺伝子のための3’ミス翻訳された領域を含むpBConベクターの対応する部位にNotI断片としてクローニングした。ED3−8−EP2−5−SCを、その5’末端にβ−コングリシニンプロモーターの配列によって、およびその3’末端に3’ファセオリン非翻訳領域によって挟んだ。プロモーター、ED3−8−EP2−5−SCコード配列および3’非翻訳領域を含む得られたカセットを、カセットの両端に位置するAscI制限酵素部位を用いてpBConベクターから取り出した。その後、AscIカセットは、pEugELOの相性のよいMM部位に、EugMO7ELOおよびED3−8−EP2−5−SCデサチュラーゼの種子特異的な同時発現のためのトランス遺伝子を含むプラスミドpEugMO7ELO−‘ED3−8−EP2−5−SC’を生じさせた。また、ED3−8−EP2−5−SCデサチュラーゼのための種子特異的なトランス遺伝子を含むAscIカセットをpIsoD9のMluI部位にクローニングし、pIsoD9−‘ED3−8−EP2−5−SC’を生じさせた。
【0233】
pEugMO7ELO−‘ED3−8−EP2−5−SC’およびpIsoD9−‘ED3−8−EP2−5−SC’をアグロバクテリウム・ツメファシエンス菌株のC58 MP90にエレクトロポレーションによって導入した。次に、カナマイシン耐性のアグロバクテリウムを、フローラルディップ法(Clough,SJ.and Bent,A.F.(1998)Floral dip:a simplified method for Agrobacterium−mQdiatQd transformation of Arabidopsis thaliana.Plant J,16,735−743))によって、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)生態型Col−0の形質転換のために使用した。アグロバクテリウムのフローラルディップ後、植物を、成熟およびドライダウンに到達するまで1日当たり16時間の長さで22℃にて維持した。これらの実験について、低レベルのα−リノレン酸および非常に長い鎖の脂肪酸(≧C20)を含むが、しかし、その種油においてリノレン酸レベルが上昇しているアラビドプシス(Arabidopsis)のfad3/feal変異体が使用された(Cahoon,E.B.ら,(2006)Conjugated fatty acids accumulate to high levels in phospholipids of metabolically engineered soybean and Arabidopsis seeds.Phytochemistry,67,1166−1176)。この遺伝的背景は、ベニバナおよび低リノレン酸ダイズなどの穀物由来の種油の脂肪酸プロファイルに近い。アグロバクテリウムに浸されたアラビドプシス(Arabidopsis)植物由来のトランスジェニック種子は、既知の方法を用いてDsRedマーカータンパク質の蛍光によって特定された(Pidkowich,M.S.ら,(2007)Modulating seed beta−ketoacyl−acyl carrier protein synthase II level converts the composition of a temperate seed oil to that of a palm−like tropical oil.Proc Natl Acad Sci USA,104,4742−4747)。単独トランスジェニック種子および非トランスジェニック対照種子を、トリメチルスルホニウムヒドロキシド(TMSH)試薬を使用することによって、トリアシルグリセロールを含む構成脂質の直接的なエステル交換(transesterication)に供した(Cahoon,E.B.and Shanklin,J.(2000)Substrate−dependent mutant complementation to select fatty acid dessaturase variants for metabolic engineering of plant seed oils.Proc Natl Acad Sci USA,97,12350−12355)。単一の種子から得られた脂肪酸メチルエステルを、INNOWaxカラム(30m長×0.25mm内径)が装着されたAgilent 7890ガスクロマトグラフの使用、および7℃/分で185℃(1分保持)から230℃(2分保持)にプログラムしたオーブン温度によってフレームイオン化検出を用いたガスクロマトグラフィーにより分析した。構成脂肪酸メチルエステルを、野生型アラビドプシス・タリアナCol−0の種子由来の既知の同一性の脂肪酸メチルエステルと比較した保持時間に基づいて、および標準の脂肪酸メチルエステルの保持時間と比較して、同定した。
【0234】
pEugMO7ELO−‘ED3−8−EP2−5−SC’を用いて形質転換された植物から5個の独立した形質転換事象由来の単一のT種子の脂肪酸組成が表8に示されている。また、plsoD9−‘ED3−8−EP2−5−SC’を用いて形質転換された植物から独立した事象を示す単一のT種子の脂肪酸組成が示されている(表9)。ユーグレナ−MO7−エロンガーゼおよびED3−8Δ8−デサチュラーゼを同時発現するpEugMO7ELO−‘ED3−8−EP2−5−SC’形質転換体由来の種子は、主にΔ8,11,14−エイコサトリエン酸(20:3Δ8,11,14)およびより少量のΔ11,14−エイコサジエン酸を蓄積していた。これらの種子において、20:3Δ8,11,14は、多量の脂肪酸であり、その相対量は全脂肪酸の28%から37%の範囲であった。これらの種子における20:2Δ11,14の相対量は、全脂肪酸の10.8から14.5%の範囲であった。比較すると、20:3Δ8,11,14および20:2Δ11,14は、非形質転換のアラビドプシスfad3/fael植物の種子において検出されないまたはごく微量見出された(表10)。イソクリシス・ガルバナΔ9ELOおよびED3−8Δデサチュラーゼを同時発現する種子において、20:3Δ8,11,14は全脂肪酸の最大37%を占め、20:2Δ11,14は全脂肪酸の最大6%を構成していた(表9)。全体的に、これらの所見は、ユーグレナ−MO7−エロンガーゼおよびED3−8Δ8デサチュラーゼまたはイソクリシス・ガルバナΔ9ELOおよびED3−8Δ8デサチュラーゼを同時発現する、18:2で富んでいる種子は、相当量の20:3Δ8,11,14、アラキドン酸の即時の生合成前駆体(20:4Δ5,8,11,14)を生成することができる。また、これらの所見は、脂肪種子におけるARAまたはEPA/DHA生成において本質的な段階を操作するために、EugMO7ELOなどの18:2特異的なエロンガーゼ、およびED3−8Δ8デサチュラーゼなどの20:2Δ8デサチュラーゼの同時発現の実施可能性を示す。トランスジェニック脂肪種子におけるARAまたはEPAの生成の最終目的を達成させるために、これらの遺伝子とd5−デサチュラーゼを同時発現させることが可能である。
【0235】
【表12】

【0236】
【表13】

【0237】
【表14】

説明として本明細書に適切に記載されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(単数以上)、制限(単数以上)がない状態で実施することができる。使用されている用語および表現は、説明であって制限ではない用語として使用され、このような用語および表現の使用において、示されおよび記載されている特徴の任意の同等物またはそれらの一部を除外する意図はない。主張される本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。従って、本発明は、好ましい実施形態により具体的に開示されるが、本明細書に開示されている概念の任意の特性、変更および変化が、添付の特許請求項の範囲により定義されるように本発明の範囲内にあると見なされることが理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デサチュラーゼ活性を有し、そのアミノ酸配列が配列番号29を含むアミノ酸配列と少なくとも55%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むまたはそれに相補的である単離されたヌクレオチド酸またはその断片。
【請求項2】
配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的である単離されたヌクレオチド配列またはその断片。
【請求項3】
配列が、ω6−エイコサジエン酸またはω3−エイコサトリエン酸を基質として利用する機能的に活性なΔ8−デサチュラーゼ酵素をコードする、請求項2の単離されたヌクレオチド配列。
【請求項4】
配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含んでいるまたはその少なくとも55%に相補的である、調節配列に作動的に連結されたヌクレオチド配列
を含む発現ベクター。
【請求項5】
請求項4のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞および真菌細胞からなる群から選択される真核細胞である、請求項5の宿主細胞。
【請求項7】
そのヌクレオチド配列の発現が植物細胞、植物種子、植物体または植物組織による少なくとも1つのポリ不飽和脂肪酸の生成をもたらす、請求項4のベクターを含む植物細胞、植物種子、植物体または植物組織。
【請求項8】
ポリ不飽和脂肪酸が、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA)またはω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7の植物細胞、植物種子、植物体または植物組織。
【請求項9】
請求項8の植物細胞、植物種子、植物体または植物組織によって生成される1種以上の植物油または脂肪酸。
【請求項10】
配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列によってコードされる精製ポリペプチド。
【請求項11】
20個の炭素長のポリ不飽和脂肪酸(C20−PUFA)基質を該基質の炭素原子8と炭素原子9との間で不飽和化し、配列番号29を含むアミノ酸配列と少なくとも55%のアミノ酸同一性を有する精製されたポリペプチド。
【請求項12】
配列番号29のアミノ酸配列を有する、請求項11の精製されたポリペプチド。
【請求項13】
a)配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)調節配列に作動的に連結された、ステップa)により単離されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;および
c)Δ8−デサチュラーゼ酵素の生成に十分な時間および条件下で、前記発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ
を含む、Δ8−デサチュラーゼ酵素を生成するための方法。
【請求項14】
a)配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)調節配列に作動的に連結された、ステップa)により単離されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;
c)Δ8−デサチュラーゼ酵素の生成に十分な時間および条件下で、前記発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ;および
d)前記発現されたΔ8−デサチュラーゼ酵素をω6−エイコサジエン酸、ω3−エイコサトリエン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される基質に曝露して、前記基質を生成物のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ
を含む、ポリ不飽和脂肪酸を生成するための方法。
【請求項15】
生成物のポリ不飽和脂肪酸が、ジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA)、ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)またはそれらの任意の組み合わせである、請求項14の方法。
【請求項16】
生成物のポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つの追加のデサチュラーゼまたはエロンガーゼに曝露して、前記生成物のポリ不飽和脂肪酸を別のまたはさらなるポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ
をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項17】
a)配列番号28および配列番号30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むまたはその少なくとも55%に相補的であるヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)調節配列に作動的に連結された、ステップa)により単離されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;
c)b)の発現ベクター、およびデルタ−9エロンガーゼをコードする少なくとも1つの調節配列に作動的に連結された単離されたヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの追加の組換えDNA構築物を宿主細胞に導入するステップ;
d)前記発現されたΔ8−デサチュラーゼ酵素およびデルタ−9エロンガーゼを、リノール酸(LA)、アルファ−リノレン酸(ALA)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される基質に曝露して、前記基質を生成物のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ
を含む、宿主細胞においてポリ不飽和脂肪酸を生成するための方法。
【請求項18】
ポリ不飽和脂肪酸が、ジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA)もしくはω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)またはそれらの任意の組み合わせである、請求項17の方法。
【請求項19】
生成物のポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つの追加のデサチュラーゼまたはエロンガーゼに曝露して、前記生成物のポリ不飽和脂肪酸を別のまたは追加のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップをさらに含む、請求項17の方法。
【請求項20】
生成物のポリ不飽和脂肪酸が、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)またはそれらの任意の組み合わせである、請求項19の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−504960(P2012−504960A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531114(P2011−531114)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/059689
【国際公開番号】WO2010/042510
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】