説明

データキャリア及びデータキャリアシステム

【課題】1つの通信プロトコルを使用してRF通信及び接触式シリアル通信の両方を行うことが可能であり、外部の通信装置から送られるコマンドに応じたセキュリティレベル領域にアクセス可能な認証方式を切り替えることができ、かつ近接通信と近傍通信とを使い分けすることができるデータキャリアを提供できるようにする。
【解決手段】外部の通信装置との間で通信を行うための通信プロトコルを格納する通信プロトコル格納手段と、上記外部の通信装置からRF信号で送信される質問信号を受信するRFアナログ受信部と、上記外部の通信装置と接触通信を行うための接触通信用端子部と、通信プロトコルで用いられるコマンドを制御するコマンド制御手段と、上記RFアナログ受信部または上記接触通信用端子部の何れか一方と上記コマンド制御手段とを選択的に接続する接続選択手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータキャリア及びデータキャリアシステムに関し、特に、データキャリアとリーダ/ライタ装置との間でRF通信及び接触式シリアル通信の両方を行うために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データキャリアとリーダ/ライタ装置とからなり、上記データキャリアと上記リーダ/ライタ装置との間でデータを非接触で授受するようにしたデータキャリアシステムが種々の分野で実用化されている。このようなデータキャリアシステムにおいては、データキャリアは内蔵するアンテナでリーダ/ライタ装置がアンテナ回路を介して供給するキャリア周波数の交番磁界を受けて動作電力を得ている。
【0003】
また、リーダ/ライタ装置が供給する磁界に変調を掛けてコマンドやデータを含む質問信号を送り、データキャリアはこれを復調してリーダ/ライタ装置から送信されるコマンドやデータを受け取るように構成されている。
【0004】
一方、上記データキャリアから上記リーダ/ライタ装置にデータを送信する場合には、返信する応答信号の内容に応じて、内蔵するアンテナ回路に繋がる負荷を、公知のロードスイッチをオンーオフ動作させて返事を返すようにしている。このようにしてデータキャリアから返事を返す周波数として、リーダ/ライタ装置のアンテナ回路から供給される交番磁界のキャリア周波数に対して、両サイドバンドのサブキャリアを使うように構成されている。
【0005】
上記データキャリアは、電磁界あるいは電波を利用してリーダ/ライタ装置との間で非接触で情報を送信したり受信したりするために、情報を記憶する記憶部と、情報を非接触で送信または送受信するためのアンテナとを備えて構成されており、RFID、ICタグ、IDタグ、RFタグ、無線タグ、電子タグ、トランスポンダ等のような、様々な名称が付けられて種々の分野で使用されている。
【0006】
上述のようなデータキャリアシステムの応用例として、自動販売機、ゲーム機、電気メータ、ガスメータ、水道メータ、家電、OA機器、生産設備等にデータキャリアを配設しておき、これらの電子機器の稼動履歴・売上記録・使用量等の情報を上記データキャリアの記憶部に記録しておくことが行われている。
【0007】
データキャリアは、種々の分野で使用されることにより、その使用形態は様々である。種々の使用形態のうち、リーダ/ライタ装置とRF通信及び接触式シリアル通信の両方を選択的に行うことができるようにした「データ通信装置」が提案されている(例えば、特許文献1を参照)
【0008】
上記特許文献1に記載の「データ通信装置」は、アンテナコイルとこのアンテナコイルを介して外部の通信装置と非接触でデータ通信を行うデータ通信手段と、外部とデータを送受するためのデータ入出力端子及び上記データ入出力端子に接触する接触部を有し、上記データ入出力端子及び接触部を介してシリアル通信を行うことができるようにしている。
【0009】
また、データキャリアは、種々の分野で使用されることにより、その使用形態は様々であるが、リーダ/ライタ装置との間で所定の通信を行い、データキャリアが取り付けられている装置部品が予め認定されたものであるのか確認する技術が提案されている。
【0010】
【特許文献1】特開2004―214879号公報
【特許文献2】特開2001−134151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようなRF通信及び接触式シリアル通信の両方を行うことが可能なデータキャリアにおいて、セキュリティ機能のレベル(種類)がRF通信と接触式シリアル通信とで異なる場合が多い。しかしながら、上記特許文献1に記載の「データ通信装置」は、セキュリティ機能のレベルをリーダ/ライタ装置に対して切り替えることができない問題点があった。
【0012】
例えば、装置部品に取り付けられたデータキャリアがリーダ/ライタ装置と情報の送受信をRF通信で行う場合に、通信相手によっては情報を読み出されないようにしたい場合があった。しかしながら、セキュリティエリアにアクセス可能な通信相手が複数である場合に、通信相手によっては読まれたくない情報も読まれてしまう問題点があった。
【0013】
また、従来のRF通信を行うデータキャリアの種類は、近接型データキャリアと近傍型データキャリアとに大別されていて、近接型データキャリアにおいてはPICCコマンドが用いられ、近傍型データキャリアにおいてはVICCコマンドが用いられていた。このため、近接型データキャリアは近接型VICCコマンドを用いて通信を行うことができず、近傍型データキャリアはPICCコマンドを用いて通信を行うことができない問題点があった。
【0014】
本発明は上述の問題点にかんがみ、1つの通信プロトコルを使用してRF通信及び接触式シリアル通信の両方を行うことが可能であり、外部の通信装置から送られるコマンドに応じたセキュリティレベル領域にアクセス可能な認証方式を切り替えることができ、かつ近接通信と近傍通信とを使い分けすることができるデータキャリアを提供できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のデータキャリアは、外部の通信装置との間で通信を行うための通信プロトコルを格納する通信プロトコル格納手段と、上記外部の通信装置からRF信号で送信される質問信号を受信するRFアナログ受信部と、上記外部の通信装置と接触通信を行うための接触通信用端子部と、上記RFアナログ受信部を介して行われるRF通信プロトコル、または上記接触通信用端子部を介して行われる接触式シリアル通信プロトコルで用いられるコマンドを制御するコマンド制御手段と、上記RFアナログ受信部または上記接触通信用端子部の何れか一方と上記コマンド制御手段とを選択的に接続する接続選択手段と、上記外部の通信装置との近接通信を行うための近接通信用コマンド、及び上記外部の通信装置と近傍通信を行うための近傍通信用コマンドを制御するコマンド制御手段と、上記RFアナログ受信部により受信した質問信号から、上記外部の通信装置との間で行う認証レベルを解析する認証コマンド解析手段と、上記認証コマンド解析手段の解析結果に基づいて、上記外部の通信装置との間で行う認証処理で使用する認証コマンドを選択する認証コマンド選択手段とを有し、上記コマンド制御手段は、上記RFアナログ受信部または上記接触通信用端子部の何れが選択されている場合においても、上記通信プロトコル格納手段に格納されている通信プロトコルを用いて通信を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明のデータキャリアシステムは、上記の何れかに記載のデータキャリアと、上記データキャリアと通信するリーダ/ライタ装置とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、RFアナログ受信部または上記接触通信用端子部の何れを用いる通信であっても同一のコマンド制御手段によりコマンド制御を行うようにしたので、記憶手段に格納されている所定の通信プロトコルを共通に用いて通信を行うことができ、1つの通信プロトコルを使用してRF通信及び接触式シリアル通信の両方を行うことが可能なデータキャリアを提供することができる。また、リーダ/ライタ装置との間で認証を行うための認証用コマンドを格納する領域が少なくとも3つの領域に区画し、上記3つの領域のうち、第1の領域には第1の認証用コマンドを格納し、第2の領域には第2の認証用コマンドを格納し、第3の領域には第3の認証用コマンドを格納するようにしたので、リーダ/ライタ装置から送られるコマンドに応じてセキュリティエリアにアクセス可能な認証方式を切り替えることができる。さらに、リーダ/ライタ装置と近接通信を行うための近接通信用コマンド、及び上記リーダ/ライタ装置と近傍通信を行うための近傍通信用コマンドの両方をコマンド保持手段に保持するようにしたので、近接型コマンドを用いたリーダ/ライタ装置及び近傍型コマンドを用いたリーダ/ライタ装置の両方と通信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明のデータキャリアシステムの実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態のデータキャリア100は、アンテナ回路110、RFアナログ部(RFアナログ受信部)120、セレクタ部130、コマンド制御部140、記憶部150(EEPROMメモリ)、第1の接触端子160、第2の接触端子170等によって構成されている。
【0019】
本実施形態のデータキャリアにおいては、RF通信及び接触式シリアル通信の両方を行うことができるように構成されている。接触式シリアル通信を行う場合には、第1の接触端子160はシリアルクロック160aの入力用として用いられ、第2の接触端子170は多目的データ170aの入出力用として用いられる。
【0020】
アンテナ回路110は、コイルL1及びコンデンサC1の並列共振回路によって構成されている。
RFアナログ部120は、整流回路121、送信回路122、受信回路123及び電源制御部124等によって構成されている。
【0021】
コマンド制御部140は、コマンド制御回路141及びセキュリティ部142を有している。記憶部150は、セキュリティ設定用メモリ151及び送信条件設定用メモリ152を有している。これらのセキュリティ設定用メモリ151及び送信条件設定用メモリ152に格納されているコマンドは、RF通信及び接触式シリアル通信において共通に使用される。
【0022】
図4にコマンドの一例を示す。図4に示すように、本実施形態においては、上記セキュリティ設定用メモリ151に第1のセキュリティエリア151a、第2のセキュリティエリア151b及び第3のセキュリティエリア151cを設けている。そして、図4の例では、第1のセキュリティエリア151aの第1番地1−1に「第1のコマンドの1」を格納している。また、第1のセキュリティエリア151aの第2番地1−2に「第1のコマンドの2」を格納している。更に、第1のセキュリティエリア151aの第3番地1−3に「第1のコマンドの3」を格納している。
【0023】
また、第2のセキュリティエリア151bの第1番地2−1に「第2のコマンドの1」を格納している。第2のセキュリティエリア151bの第2番地2−2に「第2のコマンドの2」を格納している。更に、第2のセキュリティエリア151bの第3番地2−3に「第2のコマンドの3」を格納している。
【0024】
また、第3のセキュリティエリア151cの第1番地3−1に「第3のコマンドの1」を格納している。第3のセキュリティエリア151cの第2番地3−2に「第3のコマンドの2」を格納している。更に、第3のセキュリティエリア151cの第3番地3−3に「第3のコマンドの3」を格納している。
【0025】
コマンド制御部140の制御に応じて、第1のコマンドの1〜3、第2のコマンドの1〜3、第3のコマンドの1〜3の何れかがセキュリティ設定用メモリ151から読み出されてセレクタ部130に与えられる。
【0026】
図2に示すように、本実施形態のデータキャリア100と通信を行うリーダ/ライタ装置10は、送信部11、受信部12、アンテナ回路14、及びフィルタ回路15等によって構成されている。そして、アンテナ回路14からコマンドやデータをデータキャリア100に送信し、リーダ/ライタ装置10とデータキャリア100との間でRF通信を行う。
【0027】
送信部11は、データキャリア100に送信するコマンドやデータよりなる送信信号を生成するためのものであり、所定のキャリア周波数f0(13.56MHz)を変調して送信信号を生成している。受信部12は、データキャリア100から送信されてきたサブキャリア周波数を復号してデータを復調する。
【0028】
アンテナ回路14は、送信部11から出力される送信信号をデータキャリア100に送信するとともに、データキャリア100から送信された応答信号を受信する。以上の構成は、データキャリアシステムにおいて使用されているデータキャリア100の一般的な構成であるが、本実施形態のデータキャリア100においては、近接型データ通信と近傍型データ通信の両方を可能にしていることに特徴を有している。
【0029】
図4に、第1のセキュリティエリア151a、第2のセキュリティエリア151b、第3のセキュリティエリア151cの何れかからコマンドを読み出す構成、及びPICCコマンド152aまたはVICCコマンド152b(図1を参照)の何れかを読み出す構成の一例を示す。
図4に示すように、本実施形態のコマンド制御回路141は認証コマンド解析部1411、認証コマンド選択部1412、認証コマンド読み出し部1413を有している。
【0030】
認証コマンド解析部1411は、リーダ/ライタ装置10から送られてくる質問信号41が「ダイレクト方式コマンド、「タグ認証方式コマンド、「相互認証方式コマンド、「PICCコマンド」、または「VICCコマンド」の何れであるかを判断するためのものであり、判断結果を認証コマンド選択部1412に出力する。
【0031】
認証コマンド選択部1412は、認証コマンド解析部1411から送られるコマンドの解析結果に応じてリーダ/ライタ装置10に送信する応答信号42において使用するセキュリティエリアのコマンド、或いはセキュリティレベルコマンドを選択するものであり、選択する種類のコマンドが格納されているアドレスAをセキュリティ設定用メモリ151、送信条件設定用メモリ152に対して指定する。
【0032】
認証コマンド読み出し部1413は、リーダ/ライタ装置10と通信を行うために使用するコマンドとして、認証コマンド選択部1412により選択されたセキュリティエリアまたは送信条件設定用エリアのコマンドのデータDをセキュリティ設定用メモリ151または送信条件設定用メモリ152から読み出す。
【0033】
そして、図1に示したように、セキュリティ設定用メモリ151または送信条件設定用メモリ152から読み出したコマンドのいずれかをセレクタ部130に出力する。
【0034】
本実施形態のデータキャリア100において、RF通信を行う場合には、リーダ/ライタ装置10から送信される質問信号41に対して返事を返す応答信号42に周波数として、図3に示すように、第1のサブキャリア周波数fsc1及び第2のサブキャリア周波数fsc2のリーダ/ライタ装置のアンテナ回路から供給される交番磁界のキャリア周波数に対して、両サイドバンドのサブキャリアを使用する。
【0035】
また、本実施形態のデータキャリアにおいては、RF通信を行う場合に、近傍通信用コマンド(VICCコマンド)及び近接通信用コマンド(PICCコマンド)の両方を選択的に使用することができるように構成されている。
【0036】
図3のキャリア周波数の説明図に示すように、本実施形態においては、本来の近接通信用コマンド(PICCコマンド)として、第1のサブキャリア周波数fsc1(847.5kHz)を使用し、近傍通信用コマンド(VICC)として、第2のサブキャリア周波数fsc1(437.75kHz)を使用するようにしている。なお、受信特性において、中心周波数は13.56MHz、通信速度は105.94kbps、変調方式はASK(NRZ)である。また、送信特性において、中心周波数は13.56MHz、通信速度は105.94kbps、変調方式はBPSK(NRZ)である。
【0037】
また、本実施形態においては、負荷の大きさを変えることによりサブキャリア強度を変更することができるようにしている。変更度合いは、PICCコマンド及びVICCコマンドのそれぞれにおいて8段階に変更できるようにしている。また、PICCコマンドとVICCコマンドとでは、相対比で(1:3)程度となるようにしている。
【0038】
次に、RF通信の変調方式と接触式シリアル通信の変調方式について、図5及び図6を参照しながら説明する。
図5は、RF通信を行う場合の変調方式を説明する図であり、図5(a)はリーダ/ライタ装置10→データキャリア100に対して質問信号41(図2を参照)を送信する場合の変調方式を示している。
【0039】
この場合、(イ)中心周波数:13.56MHz、(ロ)通信速度:105.94kbps、(ハ)変調方式:ASK(NRZ)、(ニ)変調速度:10〜30%、で行うようにしている。そして、データ「0」は(振幅:a、幅:搬送波(13.56MHz)の128波)としている。また、データ「1」は(振幅:b、幅:搬送波(13.56MHz)の128波)としている。
【0040】
一方、データキャリア100→リーダ/ライタ装置10に応答信号42を送信する場合には、図5(b)に示すように、イ)中心周波数:13.56MHz、(ロ)通信速度:105.94kbps、(ハ)変調方法:負荷変調(負荷変調時リーダ/ライタ装置はHigh Field連続放出が前提)、サブキャリア:847.5kHz(オプション:423.75kHz)、(ニ)変調方式:BPSKとしている。
【0041】
また、接触式シリアル通信においては、図6に示すような方式で行われる。図6はデータキャリア100への受信タグを示し、図6(b)はデータキャリア100からの送信タイミングを示している。なお、図6において、「cs」は非接触/接触動作(Vdd内部発生)モードと、外部電源動作モードの切り替え信号を示している。
図6(a)に示すように、第1の接触端子160にクロック信号160a((IO0)標準:1.695MKHz)が入力されると、それがセレクタ部130に供給され、セレクタ部130によって接触式シリアル通信が行われるように選択される。
【0042】
そして、第2の接触端子170を介して多目的データ170aの入出力が行われる。第2の接触端子170から多目的データ170aが入力されると、クロック信号の立ち上がりエッジに同期して多目的データ170aが取り込まれる。本実施形態においては、リセット解除後に最初に多目的データ170aが「1」→「0」に変化する時点をタイミングの基準としている。これ以降、基本的に「1ETU長」はシリアルクロック160aの16周期長としている。
【0043】
次に、データキャリア100からリーダ/ライタ装置10への送信タイミングについて説明する。
図6(b)に示すように、シリアルクロック160aの立ち上がりに同期してデータ(IO1)を出力する。この場合も、「1ETU長」はシリアルクロック160aの16周期長としている。
【0044】
上述したように、本実施形態のデータキャリアは、RF通信及び接触式シリアル通信の両方を行うことができ、しかもRF通信で使用するRF通信プロトコルと、接触式シリアル通信のプロトコルとを同じ仕様にすることができる。これにより、RF通信用のコマンド制御回路と、接触式シリアル通信用のコマンド制御回路とを別個に設ける必要を無くして制御回路を単純化することができる。また、2種類の通信プロトコルを用意しておかなくても済むので、コマンドを格納しておくためのメモリ容量を削減することができる。
【0045】
次に、上述のように構成された本実施形態のデータキャリア100の使用例を、図7を参照しながら説明する。
図7(a)は、装置部品50にデータキャリア100を取り付けている様子を示しており、例えば、装置部品50がベルトコンベア52上に載置されて装置部品50の製造工場の各工程において、例えば、「製造番号」、「製造月日」、「材料名」、「出荷日」等の製造情報が書き込まれる。この状態で使用されるのは近接通信用コマンドである。
【0046】
図7(b)は、ダンボール箱53に入れられて工場から出荷され、流通管理時に利用される状態を示している。この状態においては、リーダ/ライタ装置10はダンボール箱53の外側から質問信号41を送信するので、データキャリア100とリーダ/ライタ装置10との間の距離が近接通信可能な距離よりも遠くなっている。したがって、この状態ではリーダ/ライタ装置10からは近傍通信用コマンド(VICCコマンド)で質問信号41が送信されてくる。
【0047】
上記近傍通信用コマンド(VICCコマンド)の質問信号41を送信されたデータキャリア100は、送信する応答信号42としては近傍通信用コマンド(VICCコマンド)を使用する必要がある。本実施形態のデータキャリア100においては、上述したように、近接通信用コマンド(PICCコマンド)及び近傍通信用コマンド(VICCコマンド)の両方が送信条件設定用メモリ152に格納されている。これにより、これらの両コマンドを選択的に使用することができるので、装置部品50がダンボール箱53内に収納されている状態においても良好に使用することができる。
【0048】
また、この場合には、リーダ/ライタ装置10がデータキャリア100を認証する「タグ認証」のみならず、データキャリア100がリーダ/ライタ装置10を認証する「相互認証」を行う。上記「タグ認証」及び「相互認証」の詳細な説明は、図8のフローチャートを参照しながら後述する。
【0049】
図7(c)は、装置部品50がダンボール箱60に単体で収納されている状態を示している。このような状態の代表例は、装置部品50が量販店において店頭に並べられている場合が挙げられる。この状態においては、データキャリア100に格納されている種々の情報の中から「製造番号」、「メンテナンスに係る情報」、「出荷日」、「価格」等の情報が読み出される。
【0050】
図7(d)は、装置部品50を装置本体54内に取り付けて使用している状態を示している。この状態においては、装置本体54側に配設されているリーダ/ライタ装置55との距離が至近距離となるので、装置部品50とリーダ/ライタ装置55との間の通信は近接通信用コマンド(PICCコマンド)を用いた通信となる。
【0051】
図8のフローチャートを参照しながら本実施形態のデータキャリア100を用いたデータキャリアシステムの通信例を説明する。
図8に示したように、最初のステップS601において、リーダ/ライタ装置10から質問信号41が送信されて「パワーオン」となるのを待機している。
【0052】
そして、リーダ/ライタ装置10から質問信号41が送信されることによりデータキャリア100に動作電力が発生するとステップS602に進み、上記質問信号41に基いて認証の有無を判断する。この判断の結果、認証が有る場合にはステップS603に進み、アンチコリジョン処理の成功を判断する。
【0053】
アンチコリジョン処理が成功した場合にはステップS604に進み、「相互認証」か否かを判断する。この判断の結果、「相互認証」ではない場合はステップS605に進んで「タグ認証」を行う。また、ステップS604の判断の結果、「相互認証」であった場合にはステップS606に進んで「相互認証」処理を行う。ステップS602及びステップS604におけるセキュリティ判断、上述したコマンド制御回路141に設けられている認証コマンド解析部1411により行われる。
【0054】
本実施形態のデータキャリア100は、上述したように、「認証無し」、「タグ認証」及び「相互認証」のように、3つのセキュリティレベルを設定することが可能に構成されている。「認証無し」は、「パワーオン」からステップS607のコマンド受信状態に直接移行するために、高速なアクセスが可能となる利点が有る。また「認証なし」というセキュリティレベルは、記憶部150(EEPROMメモリ)の全領域に適用できる他、メモリの一部領域のみに適用することも可能である。
【0055】
また、ステップS605において行われる「タグ認証」はタグ(データキャリア)の認証コマンドにより認証を行うので、リーダ/ライタ装置10は正当なデータキャリア100であることを認証することができる。この「相互認証」は、チャレンジレスポンス認証方式と呼ばれており、リーダ/ライタ装置10側で生成した「シード値S」をデータキャリア100に送信する。上記「シード値S」を受信したデータキャリア100は、演算した「認証値N」を応答する。
【0056】
リーダ/ライタ装置10は、データキャリア100から送られてきた「認証値N」が正しいかどうか(正規のタグ)であるかを検証する。なお、「シード値S」はスクランブルであるため、毎回変更するようにしている。
【0057】
一方、ステップS606において行われる「相互認証」処理は、リーダ/ライタ装置10及びデータキャリア100の相互に行われる認証である。本実施形態においては、認証の順番はリーダ/ライタ装置10の認証の後でデータキャリア100の認証を行うようにしている。
【0058】
すなわち、ステップS605で説明した「タグ認証」の処理が終了すると、データキャリア100側で生成した「シード値S´」をリーダ/ライタ装置10に送信する。上記「シード値S´」を受信したリーダ/ライタ装置10は、演算した「認証値N´」を応答する。
【0059】
上述したように、ステップS605における「タグ認証」処理、またはステップS606における「相互認証」処理が終了すると、ステップS607に遷移してコマンド受信の待機状態となる。そして、リーダ/ライタ装置10からコマンドが送られてきたらステップS608に移行して、上記送信されたコマンドに従う処理を実行する。
【0060】
次に、ステップS609においてパワーオフか否かを判断する。この判断の結果、パワーが有る場合にはステップS607に戻ってコマンド受信の待機状態となる。また、ステップS609の判断の結果、パワーオフであった場合にはリーダ/ライタ装置10との通信処理を終了する。
【0061】
以上、説明したように、「認証無し」、「タグ認証」及び「相互認証」の3つのセキュリティレベルを有し、その設定をコマンドの種類を選択することにより切り替えることができるように構成している。これにより、CPU無しのデータキャリア100において、3つのセキュリティレベルの中から、必要なセキュリティレベルを選択することが可能である。
【0062】
また、本実施形態のデータキャリア100は、近接通信用コマンド(PICCコマンド)の他に近傍通信用コマンド(VICCコマンド)でも動作することができるようにしたので、1つのデータキャリアでもって製造工場における製造情報の記録、流通管理に係る記録及び使用状態の管理に係る記録の全てを良好に行うことができる。
【0063】
これにより、製造工程の管理、流通工程の管理及び使用工程の管理を一貫して行うために、従来は近接通信用コマンド(PICCコマンド)のデータキャリア及び近傍通信用コマンド(VICCコマンド)のデータキャリアの両方を取り付けなくても済むようにすることができ、情報管理に必要なコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態を示し、データキャリアの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、リーダ/ライタ装置及びデータキャリアとにより構成されるデータキャリアシステムの概略構成を説明する図である。
【図3】データキャリア信号の一例を説明する波形図である。
【図4】本実施形態のコマンド制御回路の構成例を示し、セキュリティレベルに合ったコマンドの何れかを読み出す例を説明する図である。
【図5】データキャリアとリーダ/ライタ装置との間で行われるRF通信において使用される変調方式の一例を説明する図である。
【図6】(a)はデータキャリアとリーダ/ライタ装置との間で行われる接触式シリアル通信におけるデータキャリアへの受信タイミングを示す図であり、(b)はデータキャリアからの送信タイミングを示す図である。
【図7】データキャリアの使用状態の変化例を説明する図である。
【図8】本実施形態のデータキャリアを用いたデータキャリアシステムの通信例を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
10 リーダ/ライタ装置
11 送信部
12 受信部
13 切り替え部
14 アンテナ回路
15 フィルタ回路
41 質問信号
42 応答信号
100 データキャリア
110 アンテナ回路
120 RFアナログ部
121 整流回路
122 送信回路
123 受信回路
124 電源制御部
130 セレクタ部
140 コマンド制御部
141 コマンド制御回路
142 セキュリティ部
1411 認証コマンド解析部
1412 認証コマンド選択部
1413 認証コマンド読み出し部
150 記憶部(EEPROMメモリ)
151 セキュリティ設定用メモリ
151a 第1のセキュリティエリア
151b 第2のセキュリティエリア
151c 第3のセキュリティエリア
152 送信条件設定用メモリ
160 第1の接触端子
160a シリアルクロック
170 第2の接触端子
170a 多目的データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の通信装置との間で通信を行うための通信プロトコルを格納する通信プロトコル格納手段と、
上記外部の通信装置からRF信号で送信される質問信号を受信するRFアナログ受信部と、
上記外部の通信装置と接触通信を行うための接触通信用端子部と、
上記RFアナログ受信部を介して行われるRF通信プロトコル、または上記接触通信用端子部を介して行われる接触式シリアル通信プロトコルで用いられるコマンドを制御するコマンド制御手段と、
上記RFアナログ受信部または上記接触通信用端子部の何れか一方と上記コマンド制御手段とを選択的に接続する接続選択手段と、
上記外部の通信装置との近接通信を行うための近接通信用コマンド、及び上記外部の通信装置と近傍通信を行うための近傍通信用コマンドを制御するコマンド制御手段と、
上記RFアナログ受信部により受信した質問信号から、上記外部の通信装置との間で行う認証レベルを解析する認証コマンド解析手段と、
上記認証コマンド解析手段の解析結果に基づいて、上記外部の通信装置との間で行う認証処理で使用する認証コマンドを選択する認証コマンド選択手段とを有し、
上記コマンド制御手段は、上記RFアナログ受信部または上記接触通信用端子部の何れが選択されている場合においても、上記通信プロトコル格納手段に格納されている通信プロトコルを用いて通信を行うことを特徴とするデータキャリア。
【請求項2】
上記接触通信用端子部に設けられている通信用端子は、シリアルクロック入力及びシリアルデータ入出力であることを特徴とする請求項1に記載のデータキャリア。
【請求項3】
上記コマンド保持手段に保持されている認証用コマンドは、「タグ認証」通信において使用するコマンド、「相互認証」通信において使用するコマンドであり、この他 メモリ領域を限定し「認証なし」通信用コマンドを使用可能なコマンドであることを特徴とする請求項1または2に記載のデータキャリア。
【請求項4】
上記認証コマンド解析手段は、認証コマンド選択手段及び認証コマンド読み出し手段をハードウェア構成としたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のデータキャリア。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載のデータキャリアと、上記データキャリアと通信する外部の通信装置とからなることを特徴とするデータキャリアシステム。
【請求項6】
上記認証コマンド解析手段は、上記データキャリアより受信した信号中のサブキャリア周波数、通信速度または負荷変調の強度に基づいて近接通信用コマンドであるか近傍通信用コマンドであるか解析することを特徴とする請求項5に記載のデータキャリアシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−134735(P2008−134735A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319151(P2006−319151)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(599098851)吉川アールエフシステム株式会社 (23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】