説明

データベース、プロファイル方法、細胞型特定方法及び汚染検出方法

細胞をプロファイルするプロファイル方法を提供する。電極と、必要な培地とを有する培養ウェルに細胞の母集団からの細胞を分散し、培養する。そして、様々な期間にコンダクタンスを検出する。コンダクタンスの測定値を参照データと比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養された細胞から検出されたコンダクタンスを含む培養細胞から得られたデータを含むデータベースに関する。また、本発明は、このデータベースを生成及び利用するプロファイル方法、細胞型特定方法及び汚染検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞分析の技術が急速に進歩している。これらの技術の多くは、侵襲的手法を含み、細胞試料を殺滅又は損傷させる。すなわち、これらの技術の多くは、分析を実行するために細胞を殺滅させるという問題を有している。したがって、分析を実行すると、細胞試料を後に用いることはできなくなってしまう。このように、従来の技術では、実時間で細胞を検査し、細胞を分析し、細胞の使用を継続することができないという問題があった。このため、非侵襲的に細胞を分析する技術が望まれている。
【0003】
また、培養細胞における検出汚染も重要な課題となっている。この問題は、公に入手可能な全てのヒト胚性幹細胞の汚染に関する最近の報告程度にしか知られていない。残念ながら、研究室がこれらの細胞の研究への参加を継続し、公的資金の援助を受け取るには、これらの細胞型を用いることが要求されていた。このため、培養細胞汚染を検出する技術が必要となっている。
【0004】
これまで、細胞分析は、実験試料(experimental sample)から得られたデータと、対照試料(control sample)から得られたデータとの比較に依存していた。ここで、細胞試料は、非常に貴重であり、分析を実行する都度、全ての必要な対照を行うために十分な細胞を準備できないという問題が頻繁に生じている。したがって、当分野では、培養された細胞について様々な分析を実行するために必要な細胞の数を最小化する手法が望まれている。換言すれば、非侵襲的分析データを最大限活用できる手法が望まれている。
【0005】
関連技術
米国特許第5,643,742号は、細胞を電子的に監視するシステムを開示している。米国特許第6,235,520号及び第6,472,144号は、細胞を電子的に監視するための高スループットの方法及び装置を開示している。米国特許第6,656,713号は、細胞を電子的に監視し、細胞成長(cell growth)又は増殖(proliferation)を検査するシステムの使用方法を開示している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
所定の期間に亘る測定によって、複数、例えば少なくとも第1及び第2の細胞型から検出されたコンダクタンスを表すデータを格納するデータベースを提供する。幾つかの実施の形態では、第1及び第2の細胞は、第1及び第2の異なる細胞型を意味する。また、他の実施の形態では、第1及び第2の細胞は、同一の細胞型で、それぞれ異なる種類の処理が施され又は条件が与えられた細胞を意味する。コンダクタンスは、特定の細胞型を代表又は暗示する。
【0007】
また、本発明は、上述したデータベースに格納されたデータを含む記録媒体、特にコンピュータにより読取可能な記録媒体を提供する。
【0008】
更に、本発明は、細胞をプロファイルするプロファイル方法を提供する。このプロファイル方法は、細胞の母集団をマルチウェルプレートの少なくとも1つのウェルに分散させる工程と、ウェルに配設された電極の対に亘って、低電圧の交流信号を印加し、同時に、電極に亘るコンダクタンスを測定することによって、細胞を含むウェルにおけるコンダクタンスを判定し、各ウェルに含まれている細胞の機能を監視する工程とを有する。
【0009】
更に、本発明は、細胞型又は細胞代謝状態をプロファイルするこの技術に基づき、基板に細胞を分散させる工程と、細胞からコンダクタンスを検出する工程と、細胞型を示す検出されたコンダクタンスの表現をコンダクタンスのデータベースに照合し、細胞型を特定する工程とを有する、細胞型を特定する細胞型特定方法を提供する。
【0010】
更に、本発明は、細胞型の汚染を検出する汚染検出方法において、基板に細胞を分散させる工程と、コンダクタンスを検出する工程と、検出されたコンダクタンスを細胞型の標準コンダクタンスと比較し、検出されたコンダクタンスが標準コンダクタンスとは異なる場合、細胞型が汚染されていると判定する工程とを有する汚染検出方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、更なる操作のために細胞を検索する能力を維持しながら、様々な期間に亘って、実時間で細胞を検査する方法を提供する。更に、本発明は、細胞の実時間分析によって、汚染を検出する方法を提供する。また、本発明は、様々な細胞培養条件の下で、様々な細胞型から導出又は検出された電気的データのデータベースを提供する。
【0012】
本発明は、異なる細胞型は、電子的な測定に対して固有のプロファイルを示すという認識に部分的に基づいている。培養された細胞は、培養液内に電圧を印加し、コンダクタンスを検出することによって電気的に測定できる。なお、異なる細胞型が固定電圧又は可変電圧に対して固有に応答し、これにより生じる電流が特定の細胞型を示すということは、これまで知られていなかった。後述するように、異なる細胞型又は異なる処理が施された同じ細胞型は、固有の電気特性を示す。したがって、本発明は、細胞型をプロファイリングするための方法及び装置を提供する。また、本発明は、培養細胞の汚染を実時間で評価及び検出する方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、細胞コンダクタンスのデータベースを提供する。すなわち、細胞型は、特定の処理に曝されると、固有のコンダクタンスパターンを示すことに基づき、本発明は、複数の細胞型のコンダクタンスデータのデータベースを提供する。
【0014】
「コンダクタンスデータ」とは、細胞の試料から導出又は検出された電気的データを意味する。
【0015】
「データベース」とは、データの集合体を意味する。このデータは、多くの場合、細胞又は対照試料を含むウェルから検出されたコンダクタンスを表す。
【0016】
「固有のコンダクタンスパターン」とは、特定の細胞型の細胞条件、例えば、以下に限定されるわけではないが、細胞応答、細胞代謝、タンパク質合成、細胞有糸核分裂、細胞増殖、細胞成長、アポトーシス等を代表するコンダクタンスを意味する。
【0017】
「野生型(wild-type)」とは、同様の遺伝的背景を有する修飾された細胞型に対して、処理が施されていない細胞型を意味する。野生型細胞は、患者からの体外培養細胞又は培養液内の細胞であってもよい。
【0018】
データベースは、少なくとも2つの細胞型から、又はある細胞型の少なくとも2つの条件からのコンダクタンスデータを含む。なお、データベースは、好ましくは、少なくとも5個又は10個、更に好ましくは、少なくとも50個、100個又は1000個、若しくは数千個の細胞型又は条件のデータを含む。幾つかの実施の形態では、データベースは、細胞型、細胞成長条件、細胞平板培養密度(cell plating density)及び特定の分析における識別に関連した他の情報を含む。
【0019】
本発明では、周知の電気的検出システムを用いてコンダクタンスを検出する。引用により本願に援用される上述した米国特許第6,472,144号、第5,643,742号及び第6,235,520号には、マルチウェル(multiwell)デバイスを含む監視システムが開示されている。マルチウェルデバイスは、以下に限定されるものではないが、24個、96個、384個又は1536個のウェルプレートを含むプレートを備える。更に、高スループットシステムは、密度が100/cmより高いウェルを備える。この高スループットシステムでは、ウェル容量は、多くても約106細胞/ウェルであり、好ましくは、1〜100細胞/ウェルであり、各ウェルが、コンダクタンスを測定できる構造を有する。
【0020】
検出器は、細胞からコンダクタンスを検出する。測定構造は、(i)基板上のウェルに差し込むことができる電極対と、(ii)電極が媒体に含浸されると、電極に亘って低電圧の交流電圧を印加する回路とを備える。検出システムは、マルチウェルプレートのウェルに配置される電極対を備える。好ましい実施の形態では、マルチウェルプレートの各ウェルは、ウェルに挿入されるように構成された対応する電極対を有する。幾つかの実施の形態では、電極対は、マルチウェルプレートの蓋に形成される。このような構成については、引用により本願に援用される上述した米国特許米国特許第6,472,144号、第5,643,742号及び第6,235,520号に更に詳細に説明されている。電極は、ウェル内の細胞から総合的な信号を検出する。このため、電極は、信号を検出するために、細胞又は選択された細胞の十分近くに配置する必要がある。経験的には、プローブの直径及び長さが、プローブ間の幅に略々等しい場合にコンダクタンスが測定される。この比率により、物質を介して電流が流れやすくなる。
【0021】
これにより、例えば、以下に限定されるわけではないが、ウェルに収容されている細胞の成長又は代謝活性等、細胞活動のレベルの指標として、電極に亘る電流を同時に測定し、細胞コンダクタンスを監視することができる。
【0022】
様々な好ましい実施の形態では、信号回路は、ピークトゥピーク電圧が5〜10mVである信号を有効に生成し、5〜10mVの選択されたピークトゥピーク電圧に信号電圧レベルを調整するフィードバック回路を備える。
【0023】
他の実施の形態では、回路は、印加された信号の電圧を、選択された信号の位相角で抽出し、又はこれに代えて、印加された信号の電圧を、信号の周波数よりも少なくとも1桁大きい周波数で抽出するように設計される。
【0024】
システムは、上述のように構成されて、様々な分析評価に使用される。分析評価は、様々な刺激に対する細胞の応答を検出し、若しくは細胞型又は細胞代謝状態を検出するために設計してもよい。分析評価は、システムのウェルに細胞を収容することによって開始してもよい。
【0025】
細胞は、如何なる細胞型を含んでいてもよい。細胞型は、自然発生的な細胞及び細胞母集団又は遺伝子組み換え細胞ラインのいずれであってもよい。仮想的には、如何なる型及びサイズの細胞も準備することができる。原核細胞や真核細胞等の全ての細胞型を用いることができる。更に、本発明は、菌類、昆虫細胞、哺乳細胞等にも適用することができる。更に、本発明は、グラム陽性及び陰性細胞を含む如何なる原核細胞にも適用することができる。細胞は、均質の細胞母集団であってもよく、培養細胞等、純化された細胞母集団を含んでいてもよい。培養細胞は、同期細胞(synchronized cell)であっても、非同期細胞(asynchronous)であってもよい。培養細胞は、商業的に販売されている培養細胞であっても、公的に入手可能な培養細胞であってもよい。また、他の細胞型、例えば、大腸菌、ブドウ球菌バクテリア、骨格筋細胞への筋芽細胞前駆細胞、好中性白血球、リンパ球白血球、赤芽球赤血球、造骨細胞、軟骨組織細胞、好塩基白血球、好酸性白血球、脂肪細胞、無脊椎動物の神経(カタツムリ)、哺乳動物の神経、副腎髄質細胞、菌類、昆虫、藻類、カエル、魚植物細胞等を用いてもよい。好ましい実施の形態では、例えば、ヒト幹細胞を含む幹細胞等の細胞型が本発明に適用される。更に、分析に好適な細胞は、ヒト末梢血液細胞(human peripheral blood cell:HPBC)である。また、如何なる細胞型又は細胞型母集団の混合体を用いてもよい。細胞ラインの特に有用なソースは、全て引用によって本願に援用される、「アメリカンタイプカルチャー社(American Type Culture Co.(Rockville, Md.))」から入手可能な「ATCC Cell Lines and Hybridomas (8th ed., 1994)」、「Bacteria and Bacteriophages (19 th ed., 1996)」、「Yeast (1995)」、「Mycology and Botany (19 th ed., 1996)」、「Protists: Algae and Protozoa (18 th ed., 1993)」に開示されている。他の細胞の入手先として、ニュージャージ州08103、キャムデン、ハドンアベニュー403に所在するコリエル医療研究所(Coriell institute for Medical Research at 403 Haddon Ave., Camden, NJ 08103)がある。
【0026】
細胞は、当分野で周知の手法に基づく方式で培養される。培養条件は、当業者にとって周知である。
【0027】
培養ウェル内において、細胞は、様々な培養期間で培養できる。培養期間は、分析評価の要求に応じて、数分であっても数週間であってもよい。培養期間は、通常、数分又は数時間から、数日又は数週間に亘って行われる。好ましくは、培養期間は、約2週間未満であり、より好ましくは、約10日間又は7日間未満である。これに代えて、培養期間は、約数分以上、約5分以上、約60分以上、又は120分(2時間)であってもよい。更に、複数の培養期間に亘って細胞を観察してもよい。
【0028】
コンダクタンスは、様々な期間毎に測定してもよく、連続的に監視してもよい。すなわち、連続的な監視が不要である場合又は望まれない場合、2秒毎、5〜10秒毎、又は30秒毎の間隔で測定を行うようにシステムをプログラミングしてもよい。より好ましくは、1分毎、5分毎、10分毎又は15分毎に測定を行うようにしてもよい。幾つかの実施の形態では、30毎又は1時間毎にコンダクタンスを測定することが好ましく、他の幾つかの実施の形態では、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎、7時間毎、8時間毎、9時間毎、10時間毎、11時間毎、12時間毎、13時間毎、14時間毎、15時間毎、16時間毎、17時間毎、18時間毎、19時間毎、20時間毎、21時間毎、22時間毎、23時間毎又は24時間毎、例えば、一日に一回、測定を行うことが好ましい。上述したように、細胞の生育性又は媒体の妥当性に応じて、短い場合、数秒乃至数分から、長い場合、1〜4週間に亘って、培養細胞から測定値を得ることができる。
【0029】
本発明の重要な特徴は、細胞内で生じる細胞の遷移事象を検出することである。すなわち、細胞は、動的であり、その時々で様々な事象が生じている。培養されている細胞は、時間の経過に伴って、絶え間なく成長し、自らの環境を変更し、異なるタンパク質及びイオンを生成する。しかしながら、これまで、このような過渡的な現象を検出する手法は存在しなかった。ほとんどの細胞分析は、最終的に何が起こったかを検出するのみである。一方、本発明では、過渡的な現象を検出することができる。すなわち、本発明により、従来の手法では検出できない現象を検出することができる。
【0030】
ここで、重要な点として、それぞれの分析によって検出されたデータは、その後の分析のために記録媒体に保存できる。幾つかの分析は、手動で実行してもよいが、好ましい実施の形態では、分析をコンピュータで実行する。したがって、本発明に基づくシステムは、記録媒体、好ましくは、コンピュータにより読取可能な媒体と、コンピュータとを備える。コンピュータは、好ましくは、実験細胞又は実験ウェルからのコンダクタンスと、対照ウェル、例えば、対照細胞から検出されたコンダクタンスとを比較するソフトウェアを実行する。
【0031】
コンピュータは、中央演算処理装置及びシステムメモリを備える。デバイスインタフェースは、ハードウェアコンポーネント及びソフトウェアコンポーネントの両方を含んでいてもよい。例えば、コンピュータは、ハードディスクドライブと、リムーバブル媒体に対し、データを読み書きするフロッピー(登録商標)ディスクドライブとを備えていてもよい。更に、コンピュータは、MOディスクドライブと、光学媒体に対し、データを読み書きする光ディスクドライブとを備えていてもよい。更に、コンピュータは、DVD−ROMドライブ又はCD−ROMドライブを備えていてもよい。これらのドライブ及び関連するコンピュータにより読取可能な媒体は、コンピュータにストレージ能力を提供する。また、コンピュータは、上述したコンピュータにより読取可能な媒体に加えて、例えば、ZIPドライブ、フラッシュメモリ等、他の種類の読取可能な媒体を用いてもよい。
【0032】
ドライブ及びシステムメモリには、複数のプログラムモジュールを保存できる。システムメモリは、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory :RAM)及び読取専用メモリ(Read Only Memory:ROM)の両方を含んでいてもよい。プログラムモジュールは、コンピュータがどのように動作し、ユーザ、入出力デバイス及び他のコンピュータとどのようにインタラクトするかを制御する。プログラムモジュールは、ルーチン、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、データ構造及び他のソフトウェア又はファームウェアコンポーネントを含む。
【0033】
コンピュータは、1つ以上のリモートコンピュータへの論理的接続を用いて、ネットワーク環境で動作できる。リモートコンピュータは、サーバ、ルータ、ピアデバイス又は他の共通ネットワークノードであってもよく、コンピュータに関して説明した要素の多く又は全てを備える。ネットワーク環境では、リモートコンピュータにプログラムモジュール及びデータを保存してもよい。
【0034】
コンピュータ又はストレージ媒体に様々な実験からのデータを保存することによって、システムは、細胞型及び細胞条件から電子情報のデータベースを生成し、利用することができる。本発明に基づくシステムの特別な利点は、第1に、異なる細胞型又は異なる条件下の細胞が、再現可能で固有の電気的データを示すという点である。すなわち、本発明に基づくシステムは、異なる細胞型の固有の電気的データを測定することができる。更に、異なる条件下の細胞型は、システムに対して、固有の電気的反応を示す。したがって、本発明に基づくシステムは、異なる細胞型及び異なる培養条件に関する電気的データのデータベースを提供する。
【0035】
様々な細胞及び対照分析からのデータを保存することによって、これらのデータを後の実験セッションからのデータと比較することができる。後の実験セッションでは、データを、内部の対照細胞、例えば、サンプルプレート内の対照細胞及び保存されているデータのいずれか又は両方と比較することができる。比較は、様々なデータ処理を行い又はグラフをプロットし、データ又はグラフを比較することによって容易に行うことができる。好ましくは、実験信号から背景信号を減算する。また、図に示すように、コンダクタンスを時間の関数としてプロットすることが好ましい。個々のウェルをプロットしてもよい。個々の細胞ウェルから培地を除去してもよい。また、個々ウェルのプロットを正規化してもよい。
【0036】
更に、データに対して、他の様々な統計的分析を実行してもよい。例えば、また、システムは、各ランの間の各ウェルのデータ点を平均して、単一の読出値Xを算出してもよい。そして、各グループ内の全てのウェルの読出値を平均し、ラン毎にグループ平均値Xijを算出する。
以下に例示的な具体例を示す。
【0037】
【数1】

【0038】
ここで、以下の式に基づいて、ラン毎の各グループの正規化されたグループ平均Nを算出する。
【0039】
【数2】

【0040】
更に、以下の式に基づいて、ラン毎の各グループの修正されたグループ平均Cを算出する。
【0041】
【数3】

【0042】
幾つかの実施の形態では、導関数グラフ又はプロットを用いる。導関数は、細胞母集団の成長率である。現在の細胞数から以前の細胞数を減算することによって成長率が算出される。
【0043】
【数4】

【0044】
この式は、時間の経過に伴う成長率の変化を示しており、これにより細胞をプロファイリングすることができる。
【0045】
幾つかの実施の形態では、分散グラフ又はプロットを用いる。分散グラフは、セルグループにおけるラン毎の総平均分散(Total Average Variance)を表す。
【0046】
【数5】

【0047】
幾つかの実施の形態では、相関グラフ又はプロットを用いる。相関グラフは、2つの細胞グループ間の相関を表す。
【0048】
【数6】

【0049】
標準的には、細胞の総数を時間に対してプロットする。
【0050】
成長率を表す導関数は、第1のプロットの導関数である。
【0051】
分散を算出する場合、好ましい実施の形態では、同じ条件下で細胞対時間について異なる測定値を得る。分散は、時間の経過に伴う細胞数の変動性又は時間の経過に伴う成長率を表しており、プロットに信頼区間を加える。相関プロットは、システムからのデータを細胞数に関連付ける。また、幾つかの実施の形態では、システムは、細胞計算器又は細胞カウンタを備える。したがって、細胞をマニュアルで数え、システムに入力してもよく、又は、細胞カウンタ又は細胞計算器によって細胞の計数を自動的に行ってもよい。細胞カウンタ又は細胞計算器からのデータは、分析及びコンダクタンスデータ又は他のデータとの比較のためにシステムに入力される。
【0052】
本発明に基づいて実現されたシステムは、様々な細胞パラメータの検出に使用できる。このようなパラメータは、細胞の様々な代謝状態の検出を含む。更に、分析評価によって細胞型を検出できる。またこのシステムによって、細胞汚染を検出できる。
【0053】
代謝状態を検出するとは、システムが、例えば、増殖、死滅、成長等、培養中の細胞の特定の細胞フェーズを検出できることを意味する。例えば、特定の細胞型の増殖細胞は、時間に関して固有のコンダクタンスを示し、例えば、同じ細胞型の老化細胞から識別できる。同様に、細胞数又は他の細胞増殖マーカからは検出することが困難なサイズが成長する細胞は、非成長細胞と比較することによって検出できる。本発明に基づくシステムが検出できる他の特徴としては、以下に限定されるものではないが、細胞代謝、細胞成長、細胞分裂、アポトーシス、タンパク質合成、細胞死、細胞サイズ等が含まれる。
【0054】
また、上述したように、本発明のシステムは、細胞培養における汚染を検出する手法を提供する。「汚染」とは、細胞が、外来性物質への曝露の結果、不純になることを意味する。外来性物質は、例えば、黴類、バクテリア又はウイルス等の生体組織であってもよい。或いは、外来性物質は、生体組織ではない化学物質又は外来性分子であってもよい。外来性物質は、望ましくない増殖因子、化学物質、炭水化物、リポ多糖等であってもよい。
【0055】
この実施の形態では、特定のウェル内の細胞のコンダクタンスを、対照ウェル又は対照試料プレートの細胞と比較できる。汚染される細胞は、時間に関して固有のコンダクタンスを示し、汚染されていない細胞から識別できる。また、重要な点として、サンプルウェル内の細胞のコンダクタンスは、同じ細胞型の参照データと比較することができる。上述したように、コンダクタンスデータは、保存又は格納され、新たに導出されたデータとの比較のためにアクセスできる。対照細胞からの格納されたデータとは異なる最近導出されたデータからのコンダクタンスプロファイルは、汚染された状態の細胞があるかを示す。
【0056】
更に、本発明は、修飾された細胞(modified cell)の検出にも適用できる。「修飾された細胞」とは、野生型の細胞に対して変更された細胞を意味する。修飾された細胞は、汚染された細胞であってもよい。これに代えて、修飾された細胞は、修飾物質によってトランスフェクト、感染、又は変形等された細胞であってもよい。「修飾物質」とは、細胞を変更する物質を意味し、感染源又は核酸等をも含む。「核酸」、「オリゴヌクレオチド」又はこれらと同等の表現は、共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。本発明において、核酸は、包括的に、ホスホジエステル結合を含むが、幾つかの場合には、以下に示すように、代替のバックボーンを有することができる核酸類似体も含まれる。これらの例としては、ホスホルアミド(phosphoramide)(「Beaucage, et al., Tetrahedron, 49(10):1925 (1993)」及びその参考文献、「Letsinger, J. Org.Chem., 35:3800 (1970)」、「Sprinzl, et al., Eur.J. Biochem., 81:579 (1977)」、「Letsinger, et al.Nucl.Acids Res., 14:3487 (1986)」、「Sawai, et al., Chem.Lett., 805 (1984)」、 「Letsinger, et al., J. Am.Chem.Soc, 110:4470 (1988)」、及び「Pauwels, et al., Chemica Scripta, 26:141 (1986))」参照)、ホスホロチオエート(phosphorothioate )(「Mag, et al., Nucleic Acids Res., 19:1437 (1991)」、及び米国特許番号第5,644,048号参照)、ホスホロジチオエート(phosphorodithioate)(「Briu, et al., J. Am.Chem.Soc, 111:2321 (1989)参照」、O−メチルホスホロアミダイト連鎖(O-methylphophoroamidite linkages)(「Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press)」、ペプチド核酸バックボーン及び連鎖(「Egholm, J. Am.Chem.Soc, 114:1895 (1992)」、「Meier, et al., Chem.Int.Ed.Engl, 31:1008 (1992)」、「Nielsen, Nature, 365:566 (1993)」、「Carlsson, et al., Nature, 380:207 (1996)」参照)等がある。これらの文献は全て引用により本願に援用されるものとする。他の核酸類似体としては、陽性のバックボーン(positive backbone)(「Denpcy, et al., Proc Natl.Acad.Sci.USA., 92:6097 (1995)参照」、非イオンバックボーン(米国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号、第4,469,863号、「Kiedrowshi, et al., Angew.Chem.Ml.Ed.English, 30:423 (1991)」、「Letsinger, et al., J. Am.Chem.Soc, 110:4470 (1988)」、「Letsinger, et al., Nucleosides & Nucleotides, .13:1597 (1994)」、「Chapters 2 and 3, ASC Symposium Series 580, "Carbohydrate Modifications in Antisense Research", Ed.Y. S. Sanghui and P. Dan Cook」、「Mesmaeker, et al., Bioorganic & Medicinal Chem.Lett., 4:395 (1994)」、「Jeffs, et al., J. Biomolecular NMR, 34:17 (1994)」、「Tetrahedron Lett., 37:743 (1996)参照」及び非リボースバックボーン(「米国特許第5,235,033号、第5,034,506号、「Chapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580, "Carbohydrate Modifications in Antisense Research", Ed.Y. S. Sanghui and P. Dan Cook.」参照)を有する核酸類似体がある。また、核酸の定義には、1つ以上の炭素環式糖類を含む核酸(「Jenkins, et al., Chem.Soc.Rev., (1995) pp. 169-176」参照)も含まれる。更に、「Rawls, C & E News, Jun.2, 1997, page 35.」にも幾つかの核酸類似体が開示されている。これらの文献は全て引用によって本願に援用される。例えば、標識等の更なる残基の追加、又は安定性を向上させ及び生理的な環境におけるこのような分子の半減期を増加させるために、リボースリン酸バックボーンを修飾してもよく、例えば、PNAを用いることが特に好ましい。更に、天然の核酸及び類似体の混合物を生成してもよい。特に好ましい実施の形態では、修飾物質は、siRNA又はアンチセンスRNAである。
【0057】
修飾物質は、外来性遺伝子又はcDNAであってもよい。遺伝子又はcDNAを促進剤によって制御し及び/又は動作的にリンクして、mRNA及びcDNAによって遺伝暗号化されたタンパク質又はタンパク質の発現を促してもよい。「外来性」とは、核酸、例えば、遺伝子又はcDNAが細胞に加えられることを意味する。外来性遺伝子は、内因性遺伝子と同じシーケンスを有する場合もあるが、この場合も、外来性遺伝子は、それが細胞に加えられているので、外来性であるとみなされる。したがって、本発明は、遺伝子の発現のタイミングを検出する方法を提供する。特定の遺伝子の発現のタイミングを特定する目的では、遺伝子は、外来性遺伝子又はcDNAである必要はないが、監視される遺伝子の特徴は、既知である必要がある。すなわち、内因性遺伝子の変更された発現に関連する可能性がある細胞又は培養細胞の電気的活動の変化を検出することは可能であるが、どの内因性遺伝子が細胞コンダクタンスの変化を引き起こしたかを特定することはできない。一方、遺伝子(又は、cDNA)が外来性遺伝子であれば、発現と細胞コンダクタンスの変化との間の相関性は、より容易に特定される。これは、外来性核酸を誘導可能な促進剤によって制御している場合に特に有効である。誘導可能な促進剤は、様々なソースから容易に入手できる。促進剤、特に誘導可能な促進剤を含む外来性核酸を準備する必要性は、当業者にとって明らかである。
【0058】
これに代えて、異なる核酸類似体の混合物及び天然の核酸及び類似体の混合物を生成してもよい。核酸は、特定の一本鎖であっても、二本鎖であってもよく、二本鎖シーケンスの部分と一本鎖シーケンスの部分とを含んでいてもよい。核酸は、ゲノム及びcDNAの両方を含むDNA、RNA又はハイブリッドであってもよく、核酸は、デオキシリボ核酸及びリボ核酸の任意の組合せ、及びウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン、並びに例えば、ニトロピロール及びニトロインドール等の塩基類似体を含む塩基の如何なる組合せも含む。
【0059】
したがって、本発明は、細胞をプロファイリングするプロファイル方法を提供する。このプロファイル方法では、細胞の母集団からの細胞は、必要な媒体を含む培養ウェル内に分散され、所望の期間培養される。コンダクタンスは、上述したように、数秒から数分乃至数時間の様々な期間毎に定期的に検出される。上述したように、検出は、最大数週間に亘って行われるが、検出を行う期間は、数分から数時間乃至数日程度であってもよい。これに代えて、コンダクタンスを継続的に検出してもよい。
【0060】
また、好ましい実施の形態では、様々な細胞型を同時に分析する。したがって、一実施の形態においては、細胞の第1の母集団からの第1のサンプルをウェル内に分散させ、細胞の第2の母集団からの第1のサンプルを分析評価プレートのウェルに分散させる。この具体例では、各母集団は、異なる細胞型であってもよく、又は、分析の前に異なる処理が施された同じ細胞型であってもよい。ここでも、細胞が培養され、所定の期間に亘ってコンダクタンスが検出される。コンダクタンスデータは、保存及び分析される。
【0061】
これに代えて、コンダクタンスデータを実時間で比較してもよい。実時間とは、分析を実行する際、コンダクタンスデータを測定しながら、他のウェルからのデータ又は例えば、データベースに保存されているデータと比較することを意味する。
【0062】
更に、本発明により、細胞型を特定することができる。この実施の形態では、上述のように、未だ特定されていない細胞のサンプルがウェルに分散される。そして、細胞のコンダクタンスを検出し、コンダクタンスデータと、上述したデータベースからのデータとを比較する。幾つかの実施の形態では、未加工のデータと、データベース内の未加工のデータとを比較する。これに代えて、例えば、グラフ等、データの表現を準備し、データベースからのデータの表現と比較してもよい。
【0063】
また、本発明によって、細胞における生理活性物質の効果を特定することができる。この場合も、上述のように、細胞を分析評価ウェルに分散させる。そして、細胞を生理活性物質に接触させる。なお、本明細書において「生理活性物質」には、例えば、タンパク質、オリゴペプチド、有機小分子、配位錯体、多糖、ポリヌクレオチド等、本発明に基づく分析評価ウェル内の細胞と接触できる様々な分子が含まれる。
【0064】
生理活性物質は、多くの化学物質クラスを包含するが、通常は有機分子であり、好ましくは、100ダルトン以上、約2500ダルトン以下の分子量を有する小さい有機化合物である。生理活性物質は、タンパク質との構造的な相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、通常、少なくともアミノ基、カルボニル基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を含み、好ましくは、少なくとも2つの官能基を含む。生理活性物質は、上述した官能基の1つ以上が、環状炭素、若しくは複素環式の構造及び/又は芳香族又は多環芳香族構造に置換されていることも多い。また、生理活性物質は、ペプチド、核酸、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、及びこれらの誘導体、構造類似体又はこれらの組合せを含む生体分子にも見出される。特に核酸及びタンパク質が好ましい。
【0065】
生理活性物質は、合成化合物又は天然化合物のライブラリを含む様々なソースから入手できる。例えば、様々な手法で、ランダム化されたオリゴヌクレオチドの発現を含む様々な有機化合物及び生体分子の無作為な及び作為的な合成を行うことができる。これに代えて、バクテリア、真菌、植物及び動物由来の形式の天然化合物のライブラリを抽出してもよく、生成してもよい。更に、周知の化学的、物理的、生化的手法を用いて天然の又は合成により生成されたライブラリ及び化合物を修飾してもよい。周知の薬物に、例えば、アシル化、アルキル化、エステル化及び/又はアミド化等の作為的又は無作為の化学修飾を施し、構造類似体を生成してもよい。
【0066】
好ましい実施の形態では、生理活性物質は、タンパク質である。本明細書において「タンパク質」とは、少なくとも2つの共有結合されたアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド及びペプチドを含む。天然のアミノ酸及びペプチド結合又は合成ペプチドミメティック構造からタンパク質を生成してもよい。したがって、本明細書における「アミノ酸」又は「ペプチド残基」は、天然のアミノ酸及び合成アミノ酸の両方を意味する。例えば、本発明では、ホモフェニルアラニン、シトルリン及びノルロイシンもアミノ酸とみなす。側鎖は、(R)又は(S)のいずれの構成を有していてもよい。好ましい実施の形態では、アミノ酸は、(S)又はL配置の構成を有する。非天然の側鎖が用いられる場合、例えば、生体分解を防止し又は遅延させるために、非アミノ酸置換基を用いてもよい。
【0067】
好ましい実施の形態では、生理活性物質は、天然のタンパク質又は天然のタンパク質の断片である。したがって、例えば、タンパク質を含む細胞抽出物又はタンパク性細胞抽出物の無作為の又は作為的な分解物を使用してもよい。このように、本発明に基づくシステムのスクリーニングのために、原核生物及び真核生物のタンパク質のライブラリを作成してもよい。この実施の形態においてライブラリに含まれるタンパク質は、好ましい順に、バクテリア、真菌、ウイルス及び哺乳動物のタンパク質、特に好ましくは、ヒトのタンパク質である。
【0068】
好ましい実施の形態では、生理活性物質は、約5〜30のアミノ酸、好ましくは、約5〜20のアミノ酸、特に好ましくは、約7〜15のアミノ酸のペプチドである。ペプチドは、上述したように、天然のタンパク質の分解物であってもよく、ランダムペプチド又は「バイアスされた」ランダムペプチドであってもよい。本明細書において、「ランダム化された」という用語は、各核酸及びペプチドが、それぞれ、実質的にランダムのヌクレオチド及びアミノ酸からなることを意味する。これらのランダムペプチド(又は後述する核酸)は、化学的に合成され、如何なるヌクレオチド又はアミノ酸が如何なる位置に組み込まれてもよい。ランダム化されたタンパク質又は核酸を生成するように合成処理を設計し、シーケンスの全体に亘って、可能な組合せの全て又は殆どが形成されるようにすることによって、ランダム化されたタンパク性物質のライブラリが形成される。
【0069】
好ましい実施の形態では、生理活性物質のライブラリを用いる。また、好ましい実施の形態では、ライブラリは、如何なる部分にも配列の偏りや連続性がないように完全にランダム化される。更に、好ましい実施の形態では、ライブラリは、バイアスされる。すなわち、シーケンス内の幾つかの部分は、一定に保たれ又は限定された数の可能性から選択される。例えば、好ましい実施の形態では、ヌクレオチド又はアミノ酸残基は、例えば、疎水性アミノ酸、親水性残基、架橋のためにシステインの作成に向かって立体的にバイアスされた(小又は大)残基、SH−3ドメインのプロリン、セリン、トレオニン、リン酸化部位のためのチロシン又はヒスチジン等又は定義されたクラス内で、又はプリン等にランダム化される。
【0070】
好ましい実施の形態では、上述したように、生理活性物質は、核酸である。
【0071】
生理活性物質の処理により、又は生理活性物質の処理に続いて、コンダクタンスが測定又は検出され及び分析される。上述したように、コンダクタンスは、対照、例えば、同じプレート上の対照試料ウェルと比較することができ、処理されたウェルと対照との間のコンダクタンスの差は、細胞に対する生理活性物質の作用を示す。これに代えて、コンダクタンスを測定又は検出し、上述したように、データベースと比較してもよい。この手法により、対照に関するコンダクタンスの変化を検出できるだけではなく、1又は複数の細胞に対し、生理活性物質が如何なる種類の作用を及ぼしたかを判定することができる。これは、データベースが、異なる処理が施された異なる細胞型及び新陳代謝の段階が異なる細胞のコンダクタンスデータを含むためである。このように、1又は複数の細胞のコンダクタンスの特徴的変化を観察することによって、生理活性物質が特定の細胞の機能又は特徴に影響したことがわかる。このような情報により、治療法を速やかに開発することができ、及び様々な生理活性物質又は候補治療分子のスクリーニングを速やかに行うことができる。この手法の利点は、生理活性物質が細胞に影響したことを検出できる点だけではなく、どの細胞機能が影響を受けたかを判定できる点にある。
【0072】
上述した本発明に基づく技術を用い、本発明の様々な側面を実現するために想定される最適な実施の形態を明瞭にする具体例を以下に示す。なお、これらの具体例は、本発明の範囲を限定するものではなく、説明の目的のために例示的に開示しているに過ぎない。本明細書に示す全ての参考文献は、引用によってその全体が本願に援用される。
【0073】
実施例
実施例1
図1は、細胞を複数回培養した後でも細胞を観察できることを示している。
【0074】
ベロ細胞の成長をサポートする無血清培地を形成した。そして、培地を検査し、3つの連続した培養について成長率が略々同じであることを確かめた。4日間、細胞を成長させ及び観察し、これを分割し、更に4日間二次培養した。そして、このプロセスを再び繰り返した。14間の期間の全体に亘ってコンダクタンスを測定した結果、ベロ細胞は、略々同じ成長率を維持した。
【0075】
実施例2
図2は、ラット初代新生児培養の反応を示している。接種密度は、培地1mlに対して5×10とした。セルスタット(CellStat:商標)細胞分析システムは、所定の条件下で分裂しない細胞の特徴に基づき、細胞分裂によって引き起こされたものではない代謝反応を測定できる。
【0076】
独立した論文「Phenylephrine, endothelin, prostaglandin F2alpha' and leukemia inhibitory factor induce different cardiac hypertrophy phenotypes in vitro King KL, Winer J, Phillips DM, Quach J, Williams PM, Mather JP Genentech, Inc., South San Francisco, CA 94080, USA, 」によれば、これらの配位子を有する代謝活性は、以下のように向上する。PGFは、54%高くなり、心拍動PEは、84%高くなり、LIFを含む心拍動は、125%高くなった。
【0077】
実施例3
図3は、例えば、菌類、バクテリア及びSf9細胞等の様々な細胞型のコンダクタンスをプロットしたグラフを示している。
【0078】
これらのグラフでは、個別のコンダクタンスをプロットしている。これらのデータは、異なる細胞型のコンダクタンスプロットは、それぞれの細胞型を特徴付け、又は表現していることを示している。
【0079】
実施例4
図4は、SK−BR2細胞のコンダクタンスの経時的な変化を示している。
【0080】
初期の接種密度を2.0×10として、2mlの培地に細胞を平板培養した。LXプラスミド(トリガされていない)を含む条件又はプラスミドが「トリガされ」、遺伝子が誘導された条件等、制御された条件下で細胞を培養した。遺伝子は、ミトコンドリア機能を阻害し、したがって、細胞呼吸及び新陳代謝を阻害することが知られているTH遺伝子である。これらのデータは、TH遺伝子の誘導によって、コンダクタンスが低下したことを示しており、これは、代謝活性が低下したことを意味する。ここでも、このような結果は、細胞を視覚化し、又は細胞を数えることによっては観察できない。
【0081】
実施例5
図5は、癌遺伝子(cullen oncogene)の更なる複製によって感染させられたヒト乳房上皮細胞のコンダクタンスを示している。
【0082】
図5に示すように、誘導された癌遺伝子及びコンダクタンスの初期の増加は、観察された細胞サイズの増加に一致する。
【0083】
候補癌遺伝子の複製によってヒト乳房上皮細胞を感染させた。この実験の目的は、遺伝子の過剰発現が細胞ラインの増殖に影響するかを確認することである。セルスタット(CellStat:商標)細胞分析システムによる読取の結果は、初期には、感染した細胞が、対照より急速に成長し、サイズも大きくなり、やがて、不死化された対照細胞の増殖の速度が高まるにつれて、成長が漸減する観察と一致していた。
【0084】
実施例6
図6は、細胞コンダクタンス及び細胞数に対する化学療法薬の効果を表している。
【0085】
図6に示すように、培養されている細胞の処理により、細胞コンダクタンスが低下し、この低下は、細胞数の減少に大きく関連している。10%のFBSを含む2mlのDMEMに対し、1.0E+5の密度で細胞を接種した。そして、24時間、細胞を成長させ、培養した。2日目に、8個のウェルを、最初の細胞カウントのためにトリプシン処理によって採取した後に、コールターカウンタによってカウントした。細胞を含む更なるウェルを調べ、位相顕微鏡法で細胞生存率及び健康状態を確認した。そして、培地を吸引し、DMEM+10%の血清(対照)又は様々な濃度の化学療法薬(例えば、メトトレキサート)を含むDMEM+10%の血清によってウェルを満たした。適用量は、培地1mlあたり100ngとした。
【0086】
実施例7
図7〜図11は、本発明によって、細胞のフェーズの変化を容易に観察できることを示している。長い又はプラトーフェーズに入った細胞は、生体培養において出現すると観察できる。図7は、本発明に基づいて検査される正常細胞の細胞周期制御フェーズを示している。図8は、癌細胞における細胞成長フェーズの欠如を示している。図9は、比較目的のために、培地の微分データを示している。サンプリングレートは、15分毎とした。図10A〜図10Cは、同じ密度で平板培養されたEPH4細胞の4つのウェルの線形グラフ及び微分グラフを示している。これらのグラフは、これらの細胞は、増殖し、飽和量(confluency)に達すると、飽和量を低減させるが、成長を続けることを示している。図11A〜図11Cは、同じ密度で平板培養されたBT16細胞の4つの個々のウェルの線形グラフ及び微分グラフを示している。線形グラフは、40Kで平板培養されたこの非常に攻撃的なメラノーマ細胞ラインが細胞死し、その後、再び成長することを示している。図10A〜図10C及び図11A〜図11Cは、同じ密度で平板培養された個々のウェルにおいても、培地を分離することなく、特徴的パターンを観測できることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】細胞を複数回培養した後でも細胞を観察できることを説明する図である。
【図2】細胞分裂のためだけではない代謝変動を読み取った結果を示す図である。
【図3】例えば、菌類、バクテリア及びSf9細胞等の様々な細胞型のコンダクタンスをプロットしたグラフを示す図である。
【図4】SK−BR2細胞のコンダクタンスの経時的な変化を示す図である。
【図5】癌遺伝子(cullen oncogene)の更なる複製によって感染させられたヒト乳房上皮細胞のコンダクタンスを示す図である。
【図6】細胞コンダクタンス及び細胞数に対する化学療法薬の効果を示す図である。
【図7】正常細胞の細胞周期制御フェーズを示す図である
【図8】癌細胞における細胞成長フェーズの欠如を示す図である。
【図9】比較のために、培地の微分データを示す図である。
【図10A】同じ密度で平板培養されたEPH4細胞の4つのウェルの線形グラフを示す図である。
【図10B】同じ密度で平板培養されたEPH4細胞の4つのウェルの微分グラフを示す図である。
【図10C】同じ密度で平板培養されたEPH4細胞の4つのウェルの微分グラフを示す図である。
【図11A】同じ密度で平板培養されたBT16細胞の4つの個々のウェルの線形グラフを示す図である。
【図11B】同じ密度で平板培養されたBT16細胞の4つの個々のウェルの微分グラフを示す図である。
【図11C】同じ密度で平板培養されたBT16細胞の4つの個々のウェルの微分グラフを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の期間に亘る測定によって、少なくとも第1及び第2の細胞型から検出されたコンダクタンスを表すデータを格納するデータベース。
【請求項2】
上記コンダクタンスは、上記第1及び第2の細胞型の複数の細胞から検出されることを特徴とする請求項1記載のデータベース。
【請求項3】
上記コンダクタンスは、少なくとも5つの細胞型から検出されることを特徴とする請求項1記載のデータベース。
【請求項4】
上記各細胞型からのコンダクタンスを表すデータは、該細胞型を表していることを特徴とする請求項1記載のデータベース。
【請求項5】
上記所定の期間は、少なくとも約5分間であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載のデータベース。
【請求項6】
上記所定の期間は、14日間より短いことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載のデータベース。
【請求項7】
上記所定の期間は、5分間から14日間の間であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載のデータベース。
【請求項8】
上記所定の期間は、1時間から10日間の間であることを特徴とする請求項7記載のデータベース。
【請求項9】
上記コンダクタンスは、電極の対によって測定されることを特徴とする請求項1記載のデータベース。
【請求項10】
請求項1記載のデータベースを格納する記録媒体。
【請求項11】
当該記録媒体は、コンピュータにより読取可能であることを特徴とする請求項10記載の記録媒体。
【請求項12】
当該記録媒体は、ハードディスク及び光磁気ディスクからなるグループから選択されることを特徴とする請求項11記載の記録媒体。
【請求項13】
請求項10乃至12いずれか1項記載の記録媒体を備えるコンピュータ装置。
【請求項14】
細胞をプロファイルするプロファイル方法において、
a)細胞の母集団をマルチウェルプレートの少なくとも1つのウェルに分散させる工程と、
b)上記ウェルに配設された電極の対に亘って、低電圧の交流信号を印加し、同時に、該電極に亘るコンダクタンスを測定することによって、上記細胞を含む上記ウェルにおけるコンダクタンスを判定し、各ウェルに含まれている細胞の機能を監視する工程とを有し、
上記コンダクタンスは、上記母集団における細胞型を表していることを特徴とするプロファイル方法。
【請求項15】
上記コンダクタンスを、測定されたコンダクタンスのデータベースに照合し、上記細胞型を特定する工程を更に有する請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項16】
上記分散させる工程は、
a)上記細胞を、同じ母集団から上記マルチウェルプレートの2つの異なるウェルに分散させる工程を含むことを特徴とする請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項17】
上記2つの異なるウェル内の第1の細胞は、エージェントと接触し、上記2つの異なるウェル内の第2の細胞は、該エージェントの対照と接触し、該第1の細胞において測定されたコンダクタンスと、該第2の細胞において測定されたコンダクタンスとの間の差分は、該エージェントが、上記第1の母集団の細胞の機能に対する効果を有することを示すことを特徴とする請求項16記載のプロファイル方法。
【請求項18】
上記機能は、細胞増殖、細胞代謝、有糸核分裂、減数分裂、タンパク質合成、細胞分裂、細胞死又は細胞サイズからなるグループから選択されることを特徴とする請求項17記載のプロファイル方法。
【請求項19】
上記細胞は、原核細胞及び真核細胞からなるグループから選択されることを特徴とする請求項14乃至18いずれか1項記載のプロファイル方法。
【請求項20】
上記各ウェルは、少なくとも1つの細胞を含むことを特徴とする請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項21】
上記マルチウェルプレートは、少なくとも2個のウェルを含むことを特徴とする請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項22】
上記マルチウェルプレートは、少なくとも6個のウェルを含むことを特徴とする請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項23】
上記マルチウェルプレートは、少なくとも24個のウェルを含むことを特徴とする請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項24】
上記マルチウェルプレートは、少なくとも96個のウェルを含むことを特徴とする請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項25】
上記マルチウェルプレートは、少なくとも384個のウェルを含むことを特徴とする請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項26】
上記マルチウェルプレートは、少なくとも1536個のウェルを含むことを特徴とする請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項27】
上記エージェントは、ポリペプチド、小分子及び核酸からなるグループから選択されることを特徴とする請求項14記載のプロファイル方法。
【請求項28】
細胞型を特定する細胞型特定方法において、
a)基板に細胞を分散させる工程と、
b)上記細胞からコンダクタンスを検出する工程と、
c)上記細胞型を示す上記検出されたコンダクタンスの表現をコンダクタンスのデータベースに照合し、該細胞型を特定する工程とを有する細胞型特定方法。
【請求項29】
細胞型の汚染を検出する汚染検出方法において、
a)基板に細胞を分散させる工程と、
b)コンダクタンスを検出する工程と、
c)上記検出されたコンダクタンスを上記細胞型の標準コンダクタンスと比較し、該検出されたコンダクタンスが該標準コンダクタンスとは異なる場合、該細胞型が汚染されていると判定する工程とを有する汚染検出方法。
【請求項30】
上記細胞型は、核酸、ウイルス、バクテリア、菌類及びリポ多糖からなるグループから選択される汚染物質によって汚染されていることを特徴とする請求項29記載の汚染検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公表番号】特表2008−537879(P2008−537879A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503144(P2008−503144)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/010456
【国際公開番号】WO2006/102445
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507318680)セルスタット テクノロジーズ, インコーポレイテッド. (1)
【Fターム(参考)】