説明

データ共有化装置、プログラム及び方法

【課題】
POP3プロトコルしか提供していないメールサーバを使うシステムにおいても、IMAP4プロトコルを使うシステムにおいてと同様、メールデータを共有する。
【解決手段】
ファイルを記憶する共有データ記憶手段と、
メール装置からPOPプロトコルで取得したファイルを前記共有データ記憶手段に格納し、複数の端末のおのおのから受信した要求データを取得すると、前記共有データ記憶手段に格納されたファイルを前記要求データの送信元端末に送信する同期制御手段を有する、データ共有化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ共有化装置、プログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子メールシステムは、勤務先、学校、自宅等、あらゆる場面に普及しており、通信手段として中枢的なものになりつつある。その利用形態は、もはや特定の一端末からのメールアカウントへのアクセスする形態に止まらず、複数の場所に置かれた端末から同じアカウントにアクセスする形態に、進化してきている。このような形態により、利用者がどこにいても、同じ電子メールにアクセスできるという利便性が高まる。また、複数の利用者が同じアカウントを使うことで、共通のファイルを利用する、というメリットも得られる。
【0003】
特許文献1は、メールクライアントである複数の端末と、メールサーバ101との間に、各端末が保持するメールリストとメールサーバのメールリストとの内容一致化を行うプロキシサーバを設置して、端末間のメールデータ共有を図る方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、複数の端末と、メールサーバとの間に内容を一致化する機構を設け、それぞれのメールデータを一致させる方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−244979
【特許文献2】特開2007−102301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、POP3プロトコルしか提供していないメールサーバを使うシステムにおいても、IMAP4プロトコルを使うシステムにおいてと同様、メールデータを共有することである。特許文献1の方法も特許文献2の方法も、複数の端末が同時にメールサーバにアクセスする事態を回避する手段について、言及していない。したがって、これらの方法を使うシステムでは、同時に複数のメールクライアントからの操作を受ける事態が発生するため、メールデータを共有する場合、障害が発生する。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決して、POP3プロトコルしか提供していないメールサーバを使うシステムにおいても、IMAP4プロトコルを使うシステムにおいてと同様、メールデータを共有することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ファイルを記憶する共有データ記憶手段と、メール装置からPOPプロトコルで取得したファイルを前記共有データ記憶手段に格納し、複数の端末のおのおのから受信した要求データを取得すると、前記共有データ記憶手段に格納されたファイルを前記要求データの送信元端末に送信する同期制御手段を有するデータ共有化装置が得られる。
【0009】
本発明によれば、ファイルを共有データ記憶部に記憶する共有データ記憶処理と、
メール装置からPOPプロトコルで取得したファイルを前記共有データ記憶部に格納し、複数の端末のおのおのから受信した要求データを取得すると、前記共有データ記憶部に格納されたファイルを前記要求データの送信元端末に送信する同期制御処理と、をコンピュータに実行させるデータ共有化プログラムが得られる。
【0010】
本発明によれば、ファイルを共有データ記憶部に記憶し、
メール装置からPOPプロトコルで取得したファイルを前記共有データ記憶部に格納し、複数の端末のおのおのから受信した要求データを取得すると、前記共有データ記憶部に格納されたファイルを前記要求データの送信元端末に送信する、 データ共有化方法が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、POP3プロトコルしか提供していないメールサーバを使うシステムにおいても、IMAP4プロトコルを使うシステムにおいてと同様、メールデータを共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態の構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の第1の実施形態の同期制御部の動作を示す図である。
【図3】図3は本発明の第1の実施形態の同期管理テーブルの一例を示す図である。
【図4】図4は本発明の第1の実施形態の参照時刻管理テーブルの一例を示す図である。
【図5】図5は本発明の第1の実施形態の一覧テーブルの一例を示す図である。
【図6】図6は本発明の第1の実施形態の一覧テーブルのフォルダとファイルの関係を示す図である。
【図7】図7は本発明の第1の実施形態の処理を表すフローチャートである。
【図8】図8は本発明の第2の実施形態の処理を表すフローチャートである。
【図9】図9は本発明の第3の実施形態の処理を表すフローチャートである。
【図10】図10は本発明の第4の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の構成を示す。図1においてメール共有化装置は、同期制御部102、通信制御部103、ファイル制御部104、共有データ記憶部105、同期データ記憶部106により構成される。
【0014】
メールサーバ101とメールクライアント107は、それぞれ、通信制御部103、ファイル制御部104を介して、メールデータの受け渡しを行う。
【0015】
ここで、メールデータとは、メールの内容を構成するデータである。例えば、メール本文を構成するテキストデータ、画像データが、メールデータには含まれる。なお、メールデータを、それぞれが有するデータの形式で保存したものをメールファイル、と呼ぶ。
【0016】
メールサーバ101は、メールクライアント107に指定されたアドレスに、そのメールクライアント107に指定されたメールファイルを送信する。また、メールサーバ101の送受信メールの格納状況は、図示しないメール表示部によって、メールクライアント107が有する表示部に表示される。
【0017】
メールクライアント107は、メールの送受信、メールファイルを含むファイルの参照を依頼するユーザが直接操作する、ユーザ端末である。メールクライアント107は、自身のアドレス、送信先または送信元のアドレス、メールファイルの名前、メールファイルの格納場所を指定して、通信制御部103を介して、メールサーバ101にメール送受信の要求を発する。
【0018】
メールクライアント107は、共有データ記憶部105が有する一覧テーブルを図示しないメモリにとりこみ、画面に表示することができる。メールクライアント107は、送信するメールファイルとして、ユーザが一覧テーブルを参照して指定したメールファイルを指定することができる。
【0019】
また、メールクライント107は、メールサーバ101が有する、図示しない送受信メールのリストを、同じく図示しないメモリにとりこみ、画面に表示することができる。メールクライアント107は、受信するメールファイルとして、ユーザが送受信メールのリストを参照して指定したメールファイルを指定することができる。ここで、送受信リストは、メールサーバ101が送信したメールファイル名と送信先アドレス、受信したメールファイル名とその送信元アドレスを表示している。
【0020】
また、メールクライアント107は、通信制御部103に指示して、ユーザが新規に作成したメールファイル、編集後更新したメールファイルを、共有データ記憶部105に格納することができる。また、メールクライアント107は、通信制御部103に指示して、ユーザが指定したメールファイルを共有データ記憶部105から削除すること指示することができる。なお、メールクライアント107から通信制御部103が指示を格納、削除の指示を受けた場合、同期制御部102は、同期制御により、ファイル制御部104を介して、これらの指示を実行する。
【0021】
各々のメールクライアント107は非同期にPOP3/SMTPにより通信制御部103に対してメールの送受信、メールファイルの参照、削除および新規格納も含めた更新の要求を行う。なお、POP3はPost Office Protocol Version3であり、SMTPはSimple Mail Transfer Protocolである。
【0022】
共有データ記憶部105は、複数のメールクライアント107が共有するメールアカウントの受信メール、発信メール、アドレス帳のデータ、その他のファイルを一元化して格納する。共有データ記憶部105は、受信メール、送信メールをそれぞれ所定のフォルダ(格納領域もしくは格納場所とも呼ぶ)に格納し、任意に作成されたフォルダに種々のメールを格納している。また、共有データ記憶部105は、これらのメールとその格納領域を示す一覧テーブルを有する。図5は一覧テーブルの一例を示す。一覧テーブルは、共有データ記憶部105のフォルダと、そのフォルダに格納されているファイル、及びその数とを示す。図6は、一覧テーブルの内容を、共有データ記憶部105の構造とともに図示した図である。共有データ記憶部105は、階層構造を持ち、各階層にフォルダを有することが可能な構造をとっている。
【0023】
同期データ記憶部106は、メールサーバ101への接続情報、各メールクライアント107からの処理要求内容、IPアドレス(IP:Internet Protocol)を含む各メールクライアント107の端末情報、を格納する。これらのうち処理要求内容は、後述する同期管理テーブル、参照時刻管理テーブルの様式で格納される。また、同期データ記憶部106は同期時間、同期時間間隔を含む同期制御情報を格納している。
【0024】
同期制御部102は、クロックを内蔵しており、計時を行なって、一定期間(同期期間とも呼ぶ)に送信された要求毎に、メールの送受信処理を含む操作を実行するよう、通信制御部103とファイル制御部104の動作を制御する。同期制御部102は、同期データ記憶部106に格納された同期制御情報に基づいて、通信制御部103が取得した要求データを同期管理テーブルに記録する同期期間と、要求データの処理を実行する実行期間とを繰り返す。なお、通信制御部103がメールクライアント107から受けた要求は、通信制御部103から同期制御部102に通知される。
【0025】
実行期間は、同期期間に受けた、メールクライアント107からの要求に対する処理を、同期期間の終了後に、要求を受けた順に、通信制御部103とファイル制御部104とに指示する期間である。
【0026】
同期制御部102は、ファイル制御部104を介して、共有データ記憶部105から、メールファイルを含むファイルを取得することができる。また同期制御部102は、メモリキャッシュを有し、取得したメールファイルを含むファイルを、このメモリキャッシュに一時的に保存することができる。
【0027】
同期制御部102は、同期期間に受けた要求を後述する同期管理テーブルに記録し、これを参照することができる。
【0028】
同期制御部102は参照したメールクライアント107の名前と参照した時刻を、参照時刻管理テーブルに記録し、これを参照することができる。ここで、通信制御部103を介しての送信要求、受信要求の対象となったメールファイルは、参照されたものとみなされ、この参照時刻管理テーブルに記録される。
【0029】
同期制御部102は、要求対象のメールに関するデータを最後に更新した時刻である最終更新時刻と、最終参照時刻とを比較することができる。
【0030】
同期制御部102は、要求対象のメールのデータの最終更新時刻が最終参照時刻以降の場合は、ファイル制御部104に通信制御部103が受けた要求を指示する処理を中断することができる。
【0031】
同期制御部102は、通信制御部103を介して要求元のメールクライアント107に要求拒否、または、その理由を知らせることができる。要求拒否を受け取ったメールクライアント107は、最新情報を参照(表示更新)した上で、必要に応じて再度要求を行う。
【0032】
通信制御部103は、同期制御部102の指示の元に、メールクライアント107からの、メールの送受信を含む処理要求を、メールサーバ101に対して送信する。
【0033】
通信制御部103は、同期制御部102の指示の元に、メールの送信要求に対して、メールクライアント107から指定されたメールファイルを、同期制御部102、ファイル制御部104を介して、共有データ記憶部105から取得する。
【0034】
通信制御部103は、同期制御部102の指示の元に、このメールファイルを、メールクライアント107から指定された送信先アドレスにメールを送信するよう、メールサーバ101に指示する。
【0035】
通信制御部103は、同期制御部102の指示の元に、メールの受信要求に対して、メールクライアント107から指定されたメールファイルを、メールクライアント107から指定された送信元アドレスから取得するよう、メールサーバ101に指示する。
【0036】
また、通信制御部103は、取得したメールファイルを、ファイル制御部104を介して共有データ記憶部105に格納する。
【0037】
ファイル制御部104は、同期制御部102の指示の元に、共有データ記憶部105から、メールファイルを取得し、同期制御部102を介して通信制御部103に提供する。
【0038】
また、ファイル制御部104は、同期制御部102の指示の元に、共有データ記憶部105に、メールファイルを格納する。
【0039】
また、ファイル制御部104は、同期制御部102に指示の元に、共有データ記憶部105から取得したメールファイルを、指示されたIPアドレスのメールクライアント107に提供する。
【0040】
また、ファイル制御部104は、同期制御部102の指示の元に、各メールクライアント107からの要求に応じて、共有データ記憶部105へのメールファイルの格納、及び、格納されているメールファイルの削除を実行する。いずれかのメールファイルを削除、あるいは、新規のメールファイルの格納の命令を受けた場合、ファイル制御部104は、当該メールファイルの削除あるいは格納と、後述する一覧テーブルの更新とを行う。
【0041】
さらに、ファイル制御部104は、各メールクライアント107からのファイルアクセス要求に対して、同期制御部102の指示の元に、共有データ記憶部105のデータを、各クライアント107に提供する。このデータは、各メールクライアント107が使用しているローカルデータと同じインタフェースで、各メールクライアント107に提供する。
【0042】
なお、同期データ制御部102、通信制御部103、ファイル制御部104は、論理回路を用いたハードウェアで構成されても構わないし、ソフトウェアアプリケーションソフトウェアにより実行されるコンピュータプログラムで構成されても構わない。
【0043】
図2は、同期制御部102の機能を説明する図である。同期制御部102は、通信制御部103とファイル制御部104の動作を同期制御データ記憶部106に記録する同期管理テーブル(図3)と各メールクライアント107の最終参照時刻を記録する参照時刻管理テーブル(図4)に基づいて制御する。この制御は、要求に優先順位を設定し、優先順位の高い要求から処理を実行する特権制御である。同期管理テーブルの最上段の要求データから順に処理を行うという方式は、特権制御方式の一例である。通常、同期管理テーブルには、要求データを受けた時刻の順に上(図3の矢印方向)から要求データが格納されるので、この特権制御は、受付時刻で優先順位が決まることになる。それぞれのメールクライアント107のIPアドレスは、IPアドレス1、IPアドレス2、IPアドレス3、IPアドレス4、IPアドレス5である。
【0044】
図3に示す同期管理テーブルは、要求を出したメールクライアント107のIPアドレスを示す要求元毎に、メールの送信、受信、参照、更新の区別を示す要求内容のデータを格納している。ここで、更新は、改編、新規作成、削除を含む。また、同期管理テーブルは、要求元毎に、送信先アドレスを示す相手先アドレス、要求の対象となる共有データ記憶部105に格納されている、メールファイルの名称を示す要求対象のデータを格納している。
【0045】
また、同期管理テーブルは、要求元毎に、メールファイルの格納場所を示す対象ファイル格納場所、要求データの受付時刻、特権の有無を示す特権について、データを格納している。対象ファイル格納場所は、後述する一覧テーブルにおける、要求対象の格納場所を示す。
【0046】
なお、要求内容が、メールの送信の場合、相手先アドレス(送信先アドレスとも呼ぶ)、要求対象、対象ファイル格納場所で構成されたデータの集合が、要求データと呼ばれる。また、要求内容が、メールの受信の場合、対象ファイル格納場所が、要求データと呼ばれる。また、要求内容が、参照、編集を要求する場合は、要求対象、対象ファイル格納場所で構成されたデータの集合が、要求データと呼ばれる。
【0047】
特権は、特権制御を行うための、記号である。特権は、同期制御部102が、要求内容毎に、受け付けた最も早い要求に対して与える。最初に処理を受ける特権を有する要求元に対して、特権があることを記号で示すものであり、図3の場合は、この記号は黒丸である。同期制御部102は、特権が与えられた要求から処理を開始する。
【0048】
図4の参照時刻管理テーブルは、共有データ記憶部105の処理の対象となるファイル毎に作成され、要求元、最終参照時刻、最終参照時刻時の処理を要求元毎に格納している。最終参照時刻は、ファイルが参照される度に、ファイルが閉じられた時間に更新される。最終参照時刻時の処理は、ファイルが参照されただけの処理(参照)と、参照時に編集による更新がなされた場合(更新)との区別を示す。ここで、「参照」とする処理は、単なる閲覧の他に、編集無しで行った送信操作も含む。「更新」とする処理は、編集の他に、受信時の新規格納操作、新たに作成したファイルの格納操作も含む。
【0049】
図7は、メール共有化の処理をフローチャートで示す。図7の例は、簡単のため、メールクライアント107の要求内容をメールの送受信に限定している。同期制御部102が同期期間を開始する。同期期間経過時間Tには0が入力される(S1)。メールクライアント107から通信制御部103に要求データが入力されると(S2)、同期制御部102は、この要求データを同期データ記憶部106の、同期管理テーブルに格納する(S3)。同期制御部102は時刻が同期時間Tsに至っているか否かを判定する(S4)。同期期間に至っていない間(S4:NO)、同期制御部102は、通信制御部103に、次の要求データを受け付けさせ、受け付けた要求データを同期管理テーブルに格納することを繰り返す。同期時間Tsに至った時点で(S4:YES)、同期制御部102は、同期管理テーブルから、格納した順番に要求データを読み込む(S5)。同期管理テーブルの最上段がもっとも早く格納された要求データであり、この要求データの要求元であるメールクライアント107が、最も早い処理を受ける特権を有する。読み込んだ要求データの要求内容がメール送信であるか否かを判定する(S6)。
【0050】
要求内容がメール送信である場合には(S6 YES)、同期制御部102は、要求対象のメールファイルを、ファイル制御部104を介して共有データ記憶部105から取得し、メモリキャッシュにこれを格納する(S7)。次に、同期制御部102は、このメールファイルを、通信制御部103に出力し、要求データの示す送信先にこのメールファイルを送るよう、メールサーバ101に向けて指示を出させる(S8)。通信制御部103が、メール送信の指示を出した後、同期制御部102は、同期管理テーブルからこの要求データを削除する(S9)。また、同期制御部102は、参照時刻管理テーブルに、要求元、最終参照時刻としてメールファイルをメールサーバ101に送信させた時間、最終参照時刻時の処理として参照をそれぞれ入力する。同期制御部102は、同期管理テーブルにデータが有るか否かを判定し(S14)、ある場合(S13:YES)は、S5にもどって同期管理テーブルを読み込む。ない場合(S14:NO)、同期制御部102は、次の同期期間を開始する(S1)。
【0051】
要求内容がメール送信でない場合は(S6 NO)、同期制御部102は、通信制御部103に指示して、メールサーバ101から受信メールをPOP3プロトコルで取得させる(S10)。続いて、同期制御部102は、通信制御部103からこの受信メールのメールファイルを取得し、ファイル制御部104を介して共有データ記憶部105に書込む(S11)。ファイル制御部104は、一覧テーブルの書き込んだフォルダ名の欄に、ファイル名を記録し、ファイルの件数を一件加算する。同期制御部102は通信制御部103に、要求元のメールクライアント107に、このメールファイルを送信させる(S12)。通信制御部103に、メールファイル送信の指示を出した後、同期制御部102は、同期管理テーブルからこの要求データを削除する(S13)。また、同期制御部102は、参照時刻管理テーブルに、要求元、最終参照時刻としてメールファイルをメールクライアント107に送信させた時間、最終参照時刻時の処理として参照をそれぞれ入力する。同期制御部102は、同期管理テーブルにデータが有るか否かを判定し(S14)、ある場合(S14:YES)は、S5にもどって同期管理テーブルを読み込む。ない場合(S14:NO)、同期制御部102は、次の同期期間を開始する(S1)。
【0052】
このフローチャートでは、同期制御部102が、同期管理テーブルに格納された順番に要求データを処理することを説明した。ここでは、同期管理テーブルには、格納された順に上から要求データが配置されることを前提としている。しかし、同期管理テーブルに、上から順番に要求データが配置されない場合も、同期制御部102は、要求の処理を行うことができる。例えば、共同/同期制御部102は、図3に表される特権のマークがある要求データから処理を開始することができる。共同/同期制御部102は、同期管理テーブルに、要求データの受付時刻を記録し、要求内容が複数ある場合は、特権を持つ要求データのうち、もっとも早く受付けられた、要求データから処理を開始する。
【0053】
また、特権は、必ずしも受付時間の早さだけでなく、要求元によって設定されてもよい。
この場合は、特権を有する要求データの処理が終わった時点では、要求データを受け付けた順に変更することができる。また、特権を有する要求データの処理が終わった時点で、次の要求データを無作為に決めてもよい。
【0054】
このフローチャートでは、要求内容をメール送信とメール受信に限定したが、要求内容として、他に、メールファイルの参照、更新がある場合も、同様にメールデータの共有化が可能である。要求内容が参照、更新の場合は、メールクライアント107の要求データは、ファイル制御部104で受け付ける構成でもよい。
【0055】
なお、ファイル制御部104はメールクライアント107からのファイルアクセスを迅速に行うため、メールクライアント107と同じローカルネットワーク上に配置することができる。しかし、ファイル制御部104は、メールクライアント107側のネットワークと、メール共有装置側のネットワークとに分割して配置してもよい。この構成により、遠方のメールクライアント107が、同じファイル制御部104にアクセスすることができる。この場合、分割して配置されたファイル制御部104間は、任意のプロトコル、例えばHTTPなどによる通信でデータを送受信する。この方式により、メール共有化装置の配置に制限がなくなり、広域のメールクライアント間でメールデータの同期・共有が実現できる。
【0056】
また、ファイル制御部104は必ずしも通信制御部103と別に設ける必要はない。通信制御部103が、ファイル制御部104の機能を有していてもよい。
【0057】
本実施形態は、要求対象がメールファイルである場合について説明したが、要求対象はメールファイルに限定されるものではない。要求対象は、メールファイル以外のファイルでもよい。例えば、Word、一太郎、テキスト、パワーポイントの各形式で保存されたファイルを含む文書ファイル、プレゼンテーションファイルは、グラフィックファイルは要求対象となる。
【0058】
なお、この実施形態では、同期制御部102が、一定時間に取得した要求を、同期データ記憶部106に格納された順番に処理する同期制御方式がとられている。しかし、同期制御方式が、本実施形態を実現する唯一の方式ではない。同期制御部102が、通信制御部103から取得した一つの要求を処理した後、特に一定時間を経ることなく、次の要求を処理する方式がとられてもよい。
【0059】
また、同期制御部102は、通信制御部103、ファイル制御部104の機能を包含して実装されてもよい。
【0060】
この実施形態によれば、同期制御により、同期データ記憶部に格納された順番にメールクライアント107の要求を処理することにより、POP3プロトコルしか提供していないメールサーバを使うシステムにおいても、IMAP4プロトコルを使うシステムにおいてと同様、メールデータを共有することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、参照時刻管理テーブルを利用して、メールファイルの更新の有無を確認する処理を第1の実施形態に加えたものである。図8は第2の実施形態の処理を示すフローチャートである。第1の実施形態との違いは、S6AとS6Bが追加されたことだけであり、他は第1の実施形態と同じである。S6で要求内容が送信であると判断された場合、同期制御部102は参照時刻管理テーブルを参照する。同期制御部102は、要求対象のメールファイルの更新日時(最終参照時刻の処理が“更新”である行の最終参照日時)のが、要求元の最終参照日時より前であるか、後であるかを判断する(S6A)。要求対象のメールファイルの更新日時が要求元の最終参照日時より前である場合、同期制御部102は、第1の実施形態と同様、S7の処理を行なう。要求対象のメールファイルの更新日時が、要求元の最終参照日時より後である場合、同期制御部102は、要求元のメールクライアント107にメールファイルが更新されていることを通知し(S6B)、S7以降の処理を行わずに、S14の判定を行う。
【0061】
以下は、IPアドレス1(メールクライアント−1)が要求元で、要求対象をメール1として、要求内容として送信を実行する例についての、説明である。S6Aにおいて、同期制御部102は、参照時刻管理テーブルを参照し、IPアドレス1の最終参照日時が“1月13日05時00分”であり、IPアドレス2による更新を伴う参照の日時“1月14日05時00分”より前であることを判断する。同期制御部102は、メールクライアント−1に、メール1のファイルが更新されていることを、メールクライアント−1の画面にこの旨を表すコメント、または記号を表示させることによって、通知する。メールクライアント−1は、この通知を受けて、メール1を参照し、必要なら変更して更新した上で、再度送信の要求を発信する。
【0062】
第2の実施形態では、参照時刻管理テーブルを参照する処理を加えているので、第1の実施形態による効果に加えて、最新の情報を選択できるという効果がある。
(第3の実施形態)
同じ同期期間に、複数の要求元から、要求元を除いて同一の要求データが、通信制御部103に入力された場合、同じ要求データをまとめて処理することにより、メールデータをより効率的に扱うことができる。この場合の処理は、図9のフローチャートで示される。図9の例は、説明を簡単にするため、メールクライアント107の要求内容をメールの送受信に限定している。
【0063】
第3の実施形態のフローチャートは、S4A、S4B、S6C、S7Aの処理が、第1の実施形態のフローチャートに追加されている他は、第1の実施形態のフローチャートと同じである。以下の説明は、追加部分、及びその関係箇所について行なわれる。
【0064】
同期制御部102が、同期管理テーブルを読み込む前に、同期管理テーブルをソートし、要求内容と要求対象と相手先アドレスがすべて等しい要求データを、上下方向の順番を保った状態で、連続して配置する(S4A)。同期制御部102は、同期管理テーブルの相手先アドレスである送信先アドレス、要求対象をそれぞれ一時的に保管するメモリA、B、Cを設定する。同期制御部102は、これらのメモリのそれぞれに無効値を格納して初期化する(S4B)。次に同期管理テーブルを読み込む(S5)。
【0065】
同期制御部102が、要求内容を送信であると判断(S6)した後、「要求データの相手先アドレスがメモリAに格納されているデータに等しく、且つ、要求対象がメモリBに格納されているデータと等しいか否か」を判断する(S6C)。S6Cで、等しいと判断された場合、同期制御部102は、メールサーバ101にメモリキャッシュに格納されているメールファイルを、通信制御部103に出力する。次に同期制御部102は、通信制御部103に対し、このメールファイルをメールサーバ101に送信するよう指示する(S8)。S6Cで、異なると判断された場合、同期制御部102は、メールファイルを取得し、メモリキャッシュにこれを格納する(S7)。その後、メモリAにS5で読み込んだ同期管理テーブルの相手先アドレスを、メモリBにメールファイル名を、それぞれ格納する(S7A)。次に、メモリキャッシュに格納されているメールファイルを、通信制御部103に出力する。次に同期制御部102は、通信制御部103に対し、このメールファイルをメールサーバ101に送信するよう指示する(S8)。以降の処理は、第1の実施形態と同じである。
【0066】
同期制御部102が、要求内容を送信ではないと判断(S6:NO)した場合、第1の実施形態と同様、S10〜S12の処理が行われる。
【0067】
なお、ソートは必ずしも必要ではない。
【0068】
第3の実施形態では、同期管理テーブルのソートを行い、同じ要求データを連続して処理することによって、メールファイルの取得、書き込みの回数が減るので、第1の実施形態の効果に加えて、要求データの処理を全体的に効率化する効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
図10は、第4の実施形態を示す構成図である。第4の実施形態は、ファイルを記憶する共有データ記憶部105と、メールサーバ101からPOPプロトコルで取得したファイルを共有データ記憶部105に格納し、複数の端末のおのおのから受信した要求データを取得すると、共有データ記憶部105に格納されたファイルをこの要求データの送信元端末に送信する同期制御部102を有する、データ共有化装置100である。
【0069】
この実施形態によれば、ユーザ端末からの要求を一件ずつ処理することにより、POP3プロトコルしか提供していないメールサーバを使うシステムにおいても、IMAP4プロトコルを使うシステムにおいてと同様、メールデータを共有することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 データ共有化装置
101 メールサーバ
102 同期制御部
103 通信制御部
104 ファイル制御部
105 共有データ記憶部
106 同期データ記憶部
107 メールクライアント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイルを記憶する共有データ記憶手段と、
メール装置からPOPプロトコルで取得したファイルを前記共有データ記憶手段に格納し、複数の端末のおのおのから受信した要求データを取得すると、前記共有データ記憶手段に格納されたファイルを前記要求データの送信元端末に送信する同期制御手段を有する、データ共有化装置。
【請求項2】
前記共有データ記憶手段は、複数の格納場所を含み、ファイルの名称とこのファイルの格納場所とこのファイルの送信先アドレスとを指定した、このファイルの送信を要求するデータを受信する通信制御手段と、前記要求するデータを一件ずつ、前記通信制御手段から取得し、前記要求するデータが指定する前記ファイルの名称を持つ前記ファイルを、前記要求するデータが指定する前記格納場所から取得して前記通信制御手段に出力し、前記通信制御手段に対して、前記要求するデータが指定する前記送信先アドレスに前記ファイルを送信する処理を指示する同期制御手段と、を有する請求項1のデータ共有化装置。
【請求項3】
前記同期制御手段は、一定の期間を計時し、前記一定の期間に取得した前記要求するデータを同期データ記憶部に格納し、前記一定の期間が経過した時点で、前記同期データ記憶部から一件ずつ取得し、前記要求するデータが指定するファイルの名称を持つファイルを、指定された格納場所から取得してメモリキャッシュに格納して、前記メモリキャッシュから取得して前記通信制御手段に出力し、互いに同一のファイル名称、同一の格納場所を指定する複数の要求するデータ(同一要求データ)が、前記同期データ記憶部に格納されている場合は、前記同一要求データを、一括して連続で読み出し、最初に読み出した、前記同一要求データの指定するファイル名のファイル(同一ファイル)を指定された格納場所から取得して、前記メモリキャッシュに格納し、前記メモリキャッシュから、前記ファイルを、前記通信制御手段に出力し、前記通信制御手段に前記同一ファイルを前記同一要求データの指定する前記送信先アドレスに送信させる指示を出し、2番目以降に読み出された前記同一要求データが指定する同一ファイルを、前記メモリキャッシュから取得して、前記通信制御手段に前記メモリキャッシュから取得した前記同一ファイルを前記2番目以降に読み出された前記同一要求データが指定する前記送信先アドレスに送信する指示を出す、請求項2のデータ共有化装置。
【請求項4】
ファイルを共有データ記憶部に記憶する共有データ記憶処理と、メール装置からPOPプロトコルで取得したファイルを前記共有データ記憶部に格納し、複数の端末のおのおのから受信した要求データを取得すると、前記共有データ記憶部に格納されたファイルを前記要求データの送信元端末に送信する同期制御処理とを、コンピュータに実行させるデータ共有化プログラム。
【請求項5】
前記共有データ記憶部は複数の格納場所を含み、ファイルの名称とこのファイルの格納場所とこのファイルの送信先アドレスとを指定した、このファイルの送信を要求するデータを受信する通信制御処理と、前記要求するデータが指定する前記ファイルの名称を持つ前記ファイルを、前記要求するデータが指定する前記格納場所から取得し、前記通信制御処理において、前記ファイルを、前記要求するデータが指定する前記送信先アドレスに前記ファイルを送信させる前記同期制御処理と、を前記コンピュータに実行させる請求項4のデータ共有化プログラム。
【請求項6】
前記コンピュータは、前記同期制御処理において、一定の期間を計時し、前記一定の期間に取得した前記要求するデータを同期データ記憶部に格納し、前記一定の期間が経過した時点で、前記同期データ記憶部から一件ずつ取得し、前記要求するデータが指定するファイルの名称を持つファイルを、指定された格納場所から取得してメモリキャッシュに格納し、前記通信制御処理において、前記メモリキャッシュから取得した前記ファイルを前記要求するデータが指定する前記送信先アドレスに送信させる指示を出し、互いに同一のファイル名称、同一の格納場所を指定する複数の要求するデータ(同一要求データ)が、前記同期データ記憶部に格納されている場合は、前記同一要求データを、一括して連続で読み出し、最初に読み出した、前記同一要求データの指定するファイル名のファイル(同一ファイル)を指定された格納場所から取得して前記メモリキャッシュに格納し、前記通信制御処理において、前記メモリキャッシュから取得した前記同一ファイルを前記同一要求データの指定する前記送信先アドレスに送信させる指示を出し、2番目以降に読み出された前記同一要求データが指定する同一ファイルを、前記メモリキャッシュから取得して、
前記通信制御処理において、前記メモリキャッシュから取得した前記同一ファイルを前記2番目以降に読み出された前記同一要求データが指定する前記送信先アドレスに送信させる指示を出す、請求項5のデータ共有化プログラム。
【請求項7】
ファイルを共有データ記憶部に記憶し、メール装置からPOPプロトコルで取得したファイルを前記共有データ記憶部に格納し、複数の端末のおのおのから受信した要求データを取得すると、前記共有データ記憶部に格納されたファイルを前記要求データの送信元端末に送信する、データ共有化方法。
【請求項8】
前記共有データ記憶部は複数の格納場所を含み、ファイルの名称とこのファイルの格納場所とこのファイルの送信先アドレスとを指定した、このファイルの送信を要求するデータを受信し、前記要求するデータが指定する前記ファイルの名称を持つ前記ファイルを、
前記要求するデータが指定する前記格納場所から取得し、前記要求するデータが指定する前記送信先アドレスに前記ファイルの送信を指示する請求項7のデータ共有化方法。
【請求項9】
一定の期間を計時し、前記一定の期間に取得した前記要求するデータを同期データ記憶部に格納し、前記一定の期間が経過した時点で、前記同期データ記憶部から一件ずつ取得し、前記要求するデータが指定するファイルの名称を持つファイルを、指定された格納場所から取得してメモリキャッシュに格納し、前記メモリキャッシュから取得した前記ファイルを前記要求するデータが指定する前記送信先アドレスに送信させる指示を出し、互いに同一のファイル名称、同一の格納場所を指定する複数の要求するデータ(同一要求データ)が、前記同期データ記憶部に格納されている場合は、前記同一要求データを、一括して連続で読み出し、最初に読み出した、前記同一要求データの指定するファイル名のファイル(同一ファイル)を指定された格納場所から取得して前記メモリキャッシュに格納し、
前記メモリキャッシュから取得した前記同一ファイルを前記同一要求データの指定する前記送信先アドレスに送信させる指示を出し、2番目以降に読み出された前記同一要求データが指定する同一ファイルを、前記メモリキャッシュから取得して、前記メモリキャッシュから取得した前記同一ファイルを前記2番目以降に読み出された前記同一要求データが指定する前記送信先アドレスに送信させる指示を出す、請求項8のデータ共有化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−155453(P2012−155453A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12945(P2011−12945)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】