説明

データ処理装置、データ処理方法およびインクジェット記録装置

【課題】いかなる画像であっても、双方向記録による高速出力を実現しながら、色むらの発生を軽減することが可能なデータ処理装置、データ処理方法およびインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】複数の画素で構成される所定領域に対する往路走査の記録比率と復路走査の記録比率を、当該所定領域の多値の画像データに基づいて設定する。そして、設定された記録比率と多値の画像データに基づいて、所定領域に対する往路走査用の2値の記録データと復路走査用の2値の記録データを生成する。このような構成により、色むらが現れにくい領域については双方向記録の割合を高めることが出来、色むらが現れやすい領域は片方向記録の割合を高めることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを走査させながら記録媒体にインク等の記録液体を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置のためのデータ処理方法に関する。特に、異なるインクを吐出するための複数の記録ヘッドを、双方向に記録走査することによって、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置のデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアル型のカラーインクジェット記録装置では、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)などのインクに対応した複数の記録ヘッドが、キャリッジ上にキャリッジの進行方向に並列に搭載されていることが多い。そして、キャリッジの移動に伴ってこれら記録ヘッドから画像データに応じてインクを吐出する記録走査と、当該記録走査と交差する副走査方向に記録媒体を搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に段階的に画像を形成する。
【0003】
この際、キャリッジの往路走査と復路走査の両方でインクを吐出する双方向記録を行えば、往路走査のみでインクを吐出する片方向記録に比べて記録時間を短縮することができる。しかしながら、このような双方向記録では、記録媒体に対するインクの付与順序が往路走査と復路走査で逆転する。
【0004】
例えば、キャリッジにおいて主走査方向にBk、C、M、Yの順で記録ヘッドが配列されている場合、往路走査では記録媒体に対してBk、C、M、Yの順でインクが付与される。しかし、復路走査ではY、M、C、Bkの順でインクが付与される。すなわち、記録媒体では、Bk、C、M、Yの順でインクが付与されるバンドと、Y、M、C、Bkの順でインクが付与されるバンドが副走査方向に交互に配置される。一般に、複数のカラーインクが記録媒体に付与される場合、インクの組み合わせが同じであっても付与の順番が異なると、発色に差が現れることが知られている。よって、一様な画像であっても往路走査で記録されたバンドと復路走査で記録されたバンドとで色差が発生し、これが色むらという画像弊害を招致してしまっていた。
【0005】
このような色むらは、例えば分割記録を行うことによって多少軽減することができる。分割記録では、1回の記録走査において、1つのバンドに配列する複数画素のうち一部の画素にのみ記録を行う。そして、残りの画素については別の異なる記録走査で記録を行う。よって、いずれのバンドの中にもBk、C、M、Yの順でインクが付与される複数の画素とY、M、C、Bkの順でインクが付与される複数の画素とが混在する。その結果、隣接するバンド間の色差が目立ち難くなる。
【0006】
但し、記録媒体で形成される個々のドットの大きさは、1画素の領域よりも大きく設計されているのが一般である。よって、分割記録を行った場合でも、Bk、C、M、Y→Y、M、C、Bkの順で記録を行ったバンドと、Y、M、C、Bk→Bk、C、M、Yの順で記録を行ったバンドでは、やはりある程度の色差が発生してしまう。
【0007】
例えば特許文献1では、色むらが目立ち易い画像と目立ち難い画像が存在することに着目し、画像データに基づいて双方向記録と片方向記録を切り替える構成が開示されている。具体的には、記録媒体の所定領域に記録されるドット数をインク色ごとにカウントし、色むらが懸念される閾値を超えない領域については双方向記録を行うが、当該閾値を越えた領域については片方向で記録する。このような記録方向を採用すれば、色むらが目立ち難い画像については双方向記録によって比較的高速に画像を記録し、色むらが目立ちやすい画像については片方向記録によって色むらの発生を防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−180017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法では、所定の閾値を超える領域が連続する画像の場合、従来の片方向記録と同等の記録動作となり、双方向記録による高速出力の効果を得ることが出来なかった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よって、その目的とするところは、いかなる画像であっても、双方向記録による高速出力を実現しながら、色むらの発生を軽減することが可能なデータ処理装置、データ処理方法およびインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために本発明は、主走査方向に配列し異なるインクを吐出する複数の記録ヘッドに、前記主走査方向における往路走査および復路走査を繰り返させながら、2値の記録データに基づいてインクを吐出させることにより、記録媒体に画像を記録するためのデータ処理装置であって、複数の画素で構成される所定領域について、当該所定領域に対する前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率を、前記複数の画素が有する多値の画像データに基づいて設定する記録比率設定手段と、該記録比率設定手段によって設定された前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率と、前記多値の画像データに基づいて、前記所定領域に対する前記往路走査の2値の記録データと前記復路走査の2値の記録データを生成する記録データ生成手段と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、色むらが現れにくい領域は双方向記録の割合を高め、色むらが現れやすい領域は片方向記録の割合を高めるように制御することが出来るので、双方向記録による高速出力を実現しながら、色むらの発生を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】シリアル型のカラーインクジェット記録装置の断面図である。
【図2】記録ヘッドにおける吐出口の配列状態を説明するための模式的平面図である。
【図3】インクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】ホスト装置及び記録装置が実行する画像データの変換の過程を示す模式図である。
【図5】1つのインデックスパターンのカラムの分類を説明するための図である。
【図6】600dpiの1画素についての画像処理および記録構成を示す模式図である。
【図7】(a)および(b)は、インデックスパターン群の一例を示す図である。
【図8】分割記録方法を実行する際に行う処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8のステップS4で参照する閾値テーブルを示す図である。
【図10】(a)および(b)はインデックスパターン選択マトリクスを示す図である。
【図11】ステップS6のインデックス展開処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】(a)および(b)は、インデックス選択テーブルの例を示す図である。
【図13】(a)〜(f)は、各領域の記録状態を具体的に説明するための図である。
【図14】(a)〜(c)は、記録画像と記録ヘッドの位置関係を示す図である。
【図15】第2の実施形態における、2値データを格納エリアの配列状態を示す図である。
【図16】(a)および(b)は、第2の実施形態のインデックスパターン群を示す図である。
【図17】(a)〜(c)は、第3の実施形におけるインデックス切り替え個数の取得方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態で採用するシリアル型のカラーインクジェット記録装置2(以下、単に記録装置ともいう)の断面図である。キャリッジ1は、不図示のキャリッジモータからベルト34を介して伝達される駆動力によって、主走査方向(X方向)に往復移動可能になっている。キャリッジ1には、インクの種類に応じて複数用意された記録ヘッド5が、図のようにX方向(主走査方向)に並列に搭載されている。そして、個々の記録ヘッド5には、複数のノズルが副走査方向(Y方向)に所定のピッチで配列されている。キャリッジ1がX方向に移動する最中、個々のノズルから画像データに従ってインクが滴として吐出され、プラテン4に支持された記録媒体にドットが記録される。これにより、1回分の記録走査が行われる。このような記録走査と、記録媒体をY方向(搬送方向)へと搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に段階的に画像が形成されて行く。
【0015】
キャリッジ1には、光学式センサ32が設けられており、キャリッジ1と共にX方向へと移動しつつ、プラテン4上における記録媒体の存否を検出することが出来る。
【0016】
インクジェット記録装置2には、記録ヘッド5の吐出性能を適正な状態に保つための吸引回復機構30が備えられている。吸引回復機構30には、ノズル先端に形成される吐出口をキャップで覆い、ポンプによってキャップ内に負圧を発生させ、ノズル内の増粘インク等を強制的に排出するための機構などが備えられている。
【0017】
図2は、記録ヘッド5における吐出口の配列状態を説明するための模式的平面図である。本実施形態において、キャリッジ1には図のような順番で、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを夫々吐出する4つの記録ヘッドか並列配置されている。このような配列により、キャリッジ1の往路走査では、記録媒体に対しK、C、M、Yの順番でインクが付与される。一方、キャリッジ1の復路走査では、記録媒体に対しY、M、C、Kの順番でインクが付与される。
【0018】
記録ヘッド5のそれぞれには、Y方向に沿って、1200dpiの密度で1280個ずつの吐出口nが配列されている。各吐出口nには不図示のインク流路が連通しており、毛細管現象によって供給されたインクは、吐出口の手前でメニスカスを形成する。また、各インク流路内には、インクを局所的に加熱するための電気熱変換体が設けられている。吐出信号に応じて個々の電気熱変換素子に電圧パルスが印加されることにより、インク中に膜沸騰が生じ、その発泡エネルギで個々の吐出口よりインクが滴として吐出される仕組みになっている。
【0019】
図3は、本実施形態のインクジェット記録装置2の制御系の構成を示すブロック図である。主制御部300は、演算、選択、判別、制御等の処理動作を実行するCPU301と、CPU301によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM302と、記録データのバッファ等として用いられるRAM303、および入出力ポート304等を備える。そして、入出力ポート304には、搬送モータ(LFモータ)312、キャリッジモータ(CRモータ)313、記録ヘッド5及び切断ユニットにおけるアクチュエータなどの各駆動回路305、306、307、308が接続されている。さらに入出力ポート304には、種々のセンサ類が接続されている。例えば、記録ヘッドの温度を検出するヘッド温度センサ314、キャリッジ1がホームポジションの位置に有ることを検出するホームポジションセンサ310、記録ヘッド5の吐出状態を検査する不吐ノズル検出ユニット316などが接続されている。さらに、主制御部300はインターフェース回路311を介してホスト装置315に接続されている。
【0020】
次に、本実施形態のホスト装置315およびインクジェット記録装置2のCPU301が実行する画像処理について簡単に説明する。本実施形態のインクジェット記録装置2は、ドットの記録(1)あるいは非記録(0)によって画像を記録する2値の記録装置である。よってホスト装置のアプリケーションで作成された多値の画像データは、最終的に、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の夫々に対応した2値データに変換される。本実施形態では、記録すべき多値の画像データ(RGB)は、まずホスト装置315にインストールされたプリンタドライバによって、記録装置が使用するインクの種類に対応した600dpiの多値データ(KCMY)に変換されるものとする。
【0021】
図4は、ホスト装置315および記録装置のCPU301が実行する画像データの変換の過程を説明するための模式図である。図において、401は、ホスト装置315のプリンタドライバで作成された600dpiの1画素データを示す図である。この段階の画像データは、例えば8bitで256階調が表現され、インク色分のデータ(K、C、M、Y)の分だけ用意されている。
【0022】
その後プリンタドライバは、このような画像データ401に対し、インク色ごとに多値量子化処理を行い、例えば2bitで0〜2レベルが表現される3値のデータ(K、C、M、Y)402に変換する。このような状態で画像データ402は記録装置2に転送される。
【0023】
記録装置2のCPU301は、予めROM302に格納されているインデックスパターンを参照することにより、受信した画像データ402を1200dpiの2値データ403に変換する。インデックスパターンは、1200dpiの1画素に相当するエリアが2×2だけ配列して構成されており、個々のエリアは、0〜2の入力データに対応して記録(1)あるいは非記録(0)が定められている。CPU301は、インデックスパターンを参照することにより、受信した画像データ402を600dpiの画素ごとに1200dpiの2値データに変換し、インク色ごとにラスタデータとしてRAMに格納していく。
【0024】
各色の2値データが蓄積されると、CPU301は、ROM302に格納されたプログラムに従い、各種駆動回路を制御して記録動作を行う。このとき本実施形態では、キャリッジの移動速度を高速に維持するため、記録ヘッドが1回の記録走査で記録可能な領域のデータを、記録ヘッドの2回の記録走査に分割して記録するいわゆる分割記録方法を採用する。
【0025】
一般に、記録ヘッドの個々のノズルにおいては、インクを吐出し、再びインクが充填されて正常なメニスカスが形成されるまでにある程度の時間を有する。この時間を周期として記録ヘッドの吐出周波数が定まるが、近年のように記録解像度が高くなっている状態では、実現可能な周波数で記録走査を行うと、キャリッジを好適な速度で移動させることが出来なくなってしまう。そこで、記録ヘッドの吐出周波数はそのままにしながら、1200dpiの記録画素を数画素おきに記録することにより、各記録走査におけるキャリッジ走査速度を高速に維持するのが本実施形態の分割記録方法である。分割記録方法では、1回の記録走査では数画素おきのデータしか記録しないため、記録媒体の同一領域に対して複数回の記録走査が行われる。
【0026】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の分割記録法では、1回の記録走査で1画素おきのデータを記録する2カラム間引き方法を実行する。この際、記録媒体の同一画像領域は2回ずつの記録走査によって600dpiの画像が記録される。
【0027】
図5は、1つのインデックスパターンの2カラム間引きにおけるカラムの分類を説明するための図である。2カラム間引き方法では、個々のインデックスパターンの左側は奇数カラムデータ501、右側は偶数カラムデータ502に相当する。
【0028】
図6は、600dpiの1つの画素についての画像処理および記録構成を示す模式図である。記録装置2のCPU301は、予めROM302に格納されているインデックスパターンを参照することにより、ホスト装置より受信した600dpi3値データ603を、1200dpiの2値データ604に変換する。この2値データ604が、記録ヘッドが実際にインクを吐出するため記録データとなる。ここで、1および3は奇数カラムデータを格納するエリアとなり、2および4は偶数カラムデータを格納するエリアとなる。ここで、2カラム間引き方法によって、奇数カラムデータに基づく記録走査と、偶数カラムデータに基づく記録走査とを順次繰り返しながら双方向記録を行った場合を考える。すると、エリア1、3に格納された奇数カラムデータが往路走査で記録されればエリア2、4に格納された偶数カラムデータは復路走査で記録される。また、エリア1、3に格納された奇数カラムデータが復路走査で記録されればエリア2、4に格納された偶数カラムデータは往路走査で記録される。
【0029】
往路の記録走査でも復路の記録走査でも600dpiの解像度で記録を行うので、エリア1に格納されたデータとエリア2に格納されたデータは、605のAで示すように記録媒体の同じ位置に着弾する。また、エリア3に格納されたデータとエリア4に格納されたデータは、605のBで示すように記録媒体の同じ位置に着弾する。すなわち、エリア1と2の両方のデータが記録(1)である場合、着弾位置Aは双方向記録でドットが記録されるが、エリア1と2のどちらか一方が記録(1)でもう片方が非記録(0)である場合、着弾位置Aは片方向記録でドットが記録される。
【0030】
本実施形態は、2カラム間引きとインデックスパターンのこのような関係を利用して、特別なインデックスパターンを用意する。具体的には、色むらが懸念されないようなデータについては、往路走査と復路走査の両方でドットが記録されるように、奇数カラムと偶数カラムの両方に記録(1)データが存在するようなインデックスパターンを積極的に使用する。一方、色むらが懸念されるようなデータについては、往路走査或いは復路走査のどちらか一方のみでドットが記録されるように、奇数カラム或いは偶数カラムのどちらか一方のみに記録データ(1)が存在するようなインデックスパターンを積極的に使用する。このようにすれば、色むらが懸念されないデータについては双方向記録によってドットが記録されるが、色むらが検されるデータについては片方向記録によってドットが記録されるようになる。
【0031】
図7(a)および(b)は、本実施形態で採用するインデックスパターン群の一例を示す図である。2×2エリアのうち、黒で示したエリアがドットを記録するエリア、白く示したエリアがドットを記録しないエリアを夫々示している。図7(a)は600dpiの画素内を双方向で記録するためのインデックスパターン群A、同図(b)は、600dpiの画素内を片方向で記録するためのインデックスパターン群Bを夫々示している。本実施形態において、CPU301は、0〜2で表される600dpiの画像データを受信するので、レベル0〜レベル2に対応するインデックスパターンを用意する。但し、レベル0については、いずれのパターンでも2×2エリアの全てが非記録(0)となるのでここでは特に示していない。
【0032】
インデックスパターン群Aでは、レベル1およびレベル2について(I)〜(IV)の4種類のパターンが用意されている。また、インデックスパターン群Bでは、レベル1およびレベル2について(V)〜(VIII)の4種類のパターンが用意されている。そして、インデックスパターン群Aが設定された場合、CPU301は(I)〜(IV)のパターンの中から1つを選択する。一方、インデックスパターン群Bが設定された場合、CPU301は(V)〜(VIII)のパターンの中から1つを選択する。
【0033】
インデックスパターン群Aについては、偶数カラムと奇数カラムに満遍なく記録(1)を示すデータが配置されるようになっている。例えばレベル1が連続する場合であっても、(I)〜(IV)の4種類のパターンが順番に配置されることにより、記録(1)を示すデータは、偶数カラムと奇数カラムに分散される。レベル2については、記録(1)となるエリアの位置は異なっているが、いずれのパターンも奇数カラムと偶数カラムの両方に1つずつ記録(1)を示すデータが配置されている。
【0034】
一方、インデックスパターン群Bについては、奇数カラムにのみ記録(1)を示すデータが配置されるようになっている。レベル1およびレベル2について、(V)〜(VIII)のいずれのパターンが選択されても、記録(1)を示すデータは奇数カラムに配置されている。本実施形態では、CPU301が、このような特徴的な2つのインデックスパターン群AおよびBのうち、1つのパターン群を画像データに応じて選択する。
【0035】
図8は、CPU301が、2カラム間引きの分割記録方法を実行する際に行う処理を説明するためのフローチャートである。本処理が開始されると、CPU301はまずステップS1において、ホスト装置315より受信した多値の画像データをRAM303に格納する。本実施形態において、ホスト装置から受信される画像データは0〜255の値を有するCMYKのデータであり、ここでは各画素におけるシアンの入力値をVc、マゼンタの入力値をVm、イエローの入力値をVy、ブラックの入力値をVkとする。
【0036】
続くステップS2において、CPU301は格納した画像データのうち、所定の大きさ(横8画素×縦4画素)で構成される1つの注目領域を抽出する。
【0037】
その後、CPU301は、抽出した注目領域に含まれる画像データを検知し、ドット形成比率判定値Sを算出する(ステップS3)。本実施形態において、ドット形成比率判定値Sは以下のようにして求める。
【0038】
まず、横8画素×縦4画素に含まれる各画素について、式1に従って換算値Kn(n=1〜32)を求める。
Kn=Nc×Vc+Nm×Vm+Ny×Vy+Nk×Vk (式1)
ここで、Nc、Nm、Ny、Nkは、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの重み付け係数であり、色むらに対する各インクの寄与程度に鑑みて予め設定される値である。例えば、シアンの色むらが最も目立ち、ブラックの色むらはさほど目立たない場合には、重み付け係数はNc=1.3、Nm=1.0、Ny=1.5、Nk=0.7のように定めることが出来る。その後、32個の換算値Kn(n=1〜32)の平均値として注目領域のドット形成比率判定値Sを算出する。
S=ΣKn/32 (式2)
【0039】
例えば、注目領域に含まれる32画素のうち、(Vc、Vm、Vy、Vk)=(210、128、32、16)となる画素が16個、(Vc、Vm、Vy、Vk)=(160、100、128、64)となる画素が16個存在する場合を考える。このとき、上記(式1)、(式2)および重み付け係数を用いると、ドット形成比率判定値S=502となる。
【0040】
ステップS3で注目領域のドット形成比率判定値Sが求められると、ステップS4に進み、算出したドット形成比率判定値Sを予めROM302に格納されている閾値テーブルと比較する。
【0041】
図9は、ステップS4で参照する閾値テーブルを示す図である。CPU301は、算出したドット形成比率判定値Sを、32個の比率切り替え閾値を比較して、右欄に示されたインデックス切り替え個数を取得する。例えば、ドット形成比率判定値S=502の場合、th14<S<th15となるので、インデックスの切り換え個数は15個となる。
【0042】
次にCPU301は、やはりROM302に格納されているインデックスパターン選択マトリクスを参照し、所定領域のうちインデックスパターンを切り替える画素を決定する(ステップS5)。本実施形態の初期設定では、全ての画素にインデックスパターン群Aが設定されているものとする。そして、ステップS5によって、特定の画素のみがインデックスパターン群Aからインデックスパターン群Bに切り替えられるようになっている。
【0043】
図10(a)および(b)は、ROM302に格納されているインデックスパターン選択マトリクスの一例を示す図である。インデックスパターン選択マトリクスの大きさは、注目領域の大きさに相当し、横8画素×縦4画素で構成されている。個々の画素に対応する領域に記載されている数字は、ステップS4で得られたインデックス切り替え個数と比較するための閾値番号である。そして、インデックス切り替え個数が当該閾値番号以上である画素では、インデックスパターン群をインデックスパターン群Bに切り替える。一方、インデックス切り替え個数が閾値番号より小さい画素では、インデックスパターン群Aのままとする。例えば、インデックスの切り換え個数が16の場合、閾値番号が0〜15の画素ではインデックスパターン群Bが設定され、閾値番号が16〜31ではインデックスパターン群Aが設定される。図10(b)では、このような場合において、インデックスパターンBに切り替えられる画素をグレーで示している。
【0044】
再び、図8に戻る。続くステップS6において、CPU301は、図7(a)および(b)で示したインデックスパターを参照することにより、注目領域に含まれる全ての画素についてインデックス展開を行い、注目領域に対応する2値データを生成する。
【0045】
図11は、上記ステップS6でCPU301が実行するインデックス展開処理を具体的に説明するためのフローチャートである。
【0046】
本処理が開始されると、CPU301は、まずステップS11において、注目領域を構成する32の画素のうち1つの画素を注目画素として設定する(n=1)。そしてステップS12では、注目画素が、ステップS5においてインデックスパターンを切り替える画素と決定されたか否かを判断する。インデックスパターンを切り替える画素であると判断した場合はステップS13へ進み、当該注目画素に対し図7(b)で示したインデックスパターン群Bを設定する。一方、インデックスパターンを切り替える画素ではないと判断した場合はステップS16へ進み、当該注目画素に対し図7(a)で示したインデックスパターン群Aを設定する。その後、ステップS14及びステップS17では、予めROM302に格納されているインデックス選択テーブルを参照し、夫々のインデックスパターン群で用意されている複数のパターン(I)〜(IV)或いは(V)〜(VIII)の中から1つを選択する。
【0047】
図12(a)および(b)は、ステップS14またはステップS17において、CPU301が参照するインデックス選択テーブルの例を示す図である。具体的に説明すると、ステップS14では、図12(b)で示したインデックス選択テーブル群Bを参照することにより、注目領域における注目画素の画素位置から、(V)〜(VIII)のうち1つのパターンを選択する。例えば、注目画素が注目領域の左上に位置する場合はパターン(V)が選択され、右下に位置する場合はパターン(VIII)が選択される。一方、ステップS17では、図11(a)で示したインデックス選択テーブルAを参照することにより、注目領域における注目画素の画素位置から、(I)〜(IV)のうち1つのパターンを選択する。例えば、注目画素が注目領域の左上に位置する場合はパターン(I)が選択され、右下に位置する場合はパターン(IV)が選択される。このように、予め複数のパターンを用意しておきながら、図12(a)あるいは(b)のようなインデックス選択テーブルを用いてドットの配置を決定することにより、特定のドット配置が繰り返されることなく、テクスチャの発生を抑制することができる。
【0048】
更に、ステップS15およびステップS18では、ステップS14あるいはステップS17で設定されたパターンと、注目画素が有するレベル値とから最終的な2×2のインデックスパターンを決定する。CPU301は、これを用いて、注目画素が有する0〜2の多値データを2値データに展開する。
【0049】
ステップS15或いはステップS18で注目画素の2値データへの展開が完了すると、CPU301はステップS19に進み、注目領域に含まれる全ての画素についてインデックス展開が完了したか否かを判断する。全ての画素について完了したと判断した場合は、本処理を終了し、図8のフローチャートに戻る。まだ、処理すべき画素が残っていると判断した場合は、注目画素を指し示すための変数nをインクリメントし、次の注目画素の処理のためにステップS12に戻る。
【0050】
図8のフローチャートに戻る。ステップS6において注目領域のインデックス展開が完了すると、ステップS7に進み、ステップS1で受信した全ての画像データについてインデックス展開が完了したか否かを判断する。未だ処理すべき領域が残っていると判断した場合は、ステップS2に戻り、次の注目領域に対する上記処理を繰り返す。一方、全ての画像データについてインデックス展開が完了したと判断した場合は、ステップS8に進み、ステップS1で受信した画像データについての記録動作を実行する。以上で本処理が終了する。
【0051】
図13(a)〜(f)は、上記説明した一連の処理に従って画像を記録した場合の、記録状態を具体的に説明するための図である。図13(a)はホスト装置から入力された画像データの一例を示し、個々の四角は、600dpiの入力画素が縦4画素×横8画素ずつ配列して構成される領域A〜Pを示す。領域A〜Pのそれぞれは、本実施形態においてインデックスパターン群Aとインデックスパターン群Bの比率を決定するための単位(所定領域)に相当する。
【0052】
領域A〜Pには、図8のフローチャートに従って処理した結果得られる判定値Sと、夫々の判定値Sから得られるインデックス切り替え個数が示されている。本例において、例えば領域B、G、Nでは各色の多値データの値が低く、式1から得られる判定値Sが図9を参照するに、S<th0=32を満たし、インデックス切り替え個数が0となっている。よって、これら領域については、全ての画素に対しインデックスパターン群Aが使用される。
【0053】
一方、領域A、C、H、J、Pでは、式1から得られる判定値Sがth15<S<th16を満たし、インデックス切り替え個数が16となっている。よって、これら領域については、インデックスパターン群Aとインデックスパターン群Bが半数ずつ使用される。
【0054】
更に、領域E、I、K、Oでは、式1から得られる判定値Sがth31<Sを満たし、インデックス切り替え個数が32となっている。よって、これら領域については、全ての画素に対しインデックスパターン群Bが使用される。
【0055】
ここで、図13(b)は領域A〜Pのそれぞれに対する往路走査での記録比率を示し、図13(c)は復路走査での記録比率を示している。例えば、往路走査の記録比率は、「領域内におけるインデックスパターン群Aの割合×50%+インデックスパターン群Bの割合」で算出することが出来る。また、復路走査の記録比率は、「領域内におけるインデックスパターン群Aの割合×50%」で算出することが出来る。そして、いずれの領域においても、往路走査での記録比率と復路走査での記録比率の和が100%となっている。
【0056】
例えば、全ての画素に対しインデックスパターン群Aが使用される領域B、G、Nでは、往路走査と復路走査のそれぞれで50%の記録比率となる。インデックスパターン群Aとインデックスパターン群Bが半数ずつ使用される領域A、C、H、J、Pでは、往路走査の記録比率が25%+50%=75%、復路走査の記録比率が25%となっている。全ての画素に対しインデックスパターン群Bが使用される領域E、I、K、Oでは、往路走査の記録比率が0%+100%=100%、復路走査の記録比率が0%となっている。
【0057】
図13(d)は、同図(a)と同じくホスト装置から入力された画像データの、記録デューティを示した図である。記録デューティDは、0〜255の値を有する入力値Vc、Vm、Vy、Vkを用い、D=Vc/255+Vm/255+Vy/255+Vk/255で算出することが出来る。
【0058】
図13(e)は、同図(d)に示される各領域の記録デューティDのうち、往路走査で記録される記録デューティを示し、記録デューティDと 図13(b)で示した往路走査の記録比率との積によって求めることが出来る。一方、図13(f)は、復路走査で記録される記録デューティを示し、記録デューティDと 図13(c)で示した復路走査の記録比率との積によって求めることが出来る。
【0059】
図13(d)〜(f)によれば、比較的記録デューティが低く色むらが目立ち難い領域は、往路走査の記録デューティと復路走査の記録デューティが略等しくなっている。これに対し、比較的記録デューティが高く色むらが目立ちやすい領域は、往路走査の記録デューティが復路走査よりも高くなっている。
【0060】
図14(a)〜(c)は、図13(e)および(f)に示した記録デューティに従って、2カラム間引きの分割記録方法を行った場合の、記録画像と記録ヘッドの位置関係を示す図である。ここでは簡単のため、Y方向に32個のノズルを有する記録ヘッドHを用いて説明する。
【0061】
図14(a)は、第1記録走査を示す。第1記録走査は、画像の上半分の領域A〜Hに対し、記録ヘッドの下半分の16ノズルによって、往路走査で行われる。第1記録走査は往路走査であるので奇数カラムのみの記録となり、図13(e)に示した記録デューティに従った画像が上半分だけ記録される。このような第1記録走査の後、記録媒体がY方向に16ノズル分だけ搬送される。
【0062】
図14(b)は、上記搬送動作に続いて行われる第2記録走査を示す。第2記録走査は、全画像領域A〜Pに対し、記録ヘッドの全32ノズルによって、復路走査で行われる。第2記録走査は復路走査であるので偶数カラムのみの記録となり、図13(f)に示した記録デューティの画像が記録される。第1記録走査と第2記録走査によって、領域A〜Hの記録が完了する。このような第2記録走査の後、記録媒体は再びY方向に16ノズル分だけ搬送される。
【0063】
図14(c)は、第3記録走査を示す。第3記録走査は、記録が完了していない画像領域I〜Pに対し、記録ヘッドの上半分の16ノズルによって、往路走査で行われる。第3記録走査は第1記録走査と同様、奇数カラムのみの記録となり、図13(e)に示した記録デューティに従った画像が下半分だけ記録される。第2記録走査と第3記録走査によって、下半分の領域I〜Pの記録が完了する。以上のような3回の記録走査によって、全領域A〜Pの記録は完了する。
【0064】
以上説明したように本実施形態によれば、奇数カラムと偶数カラムの両方に均等に記録(1)データが配置されるインデックスパターンA群と、奇数カラムのみに記録(1)データが配置されるインデックスパターン群Bを用意する。その上で、色むらが現れ難い領域にはインデックスパターン群Aを多く宛がい、色むらが現れ易い領域にはインデックスパターン群Bを多く宛がって、2カラム間引きの双方向分割記録で画像を記録する。このような構成によれば、所定の領域ごとに、往路走査記録と復路走査記録の記録比率設定を色むらの程度に応じて適切に調整することが可能となる。その結果、画像全体に対しては双方向記録による高速出力を実現しながら、色むらの発生を軽減することが出来る。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態においても図1〜図3に示すインクジェット記録装置を用いる。但し、本実施形態のCPU301がホスト装置315より受信する画像データは、レベル0〜レベル4の5値で表される600dpiの(K、C、M、Y)データとする。そして、CPU301はこの600dpi5値の画像データを、縦1200dpi×横2400dpiの2値データに変換する。
【0066】
図15は、本実施形態における、2値データを格納するエリアの配列状態を示す図である。個々の四角は1200dpi×2400dpiの1画素に対応するエリアを示している。ここで、1、3、5、7は奇数カラムデータを格納するエリアとなり、2、4、6、8は偶数カラムデータを格納するエリアとなる。ここで、2カラム間引き方法によって、奇数カラムデータに基づく記録走査と、偶数カラムデータに基づく記録走査とを順次繰り返しながら双方向記録を行った場合を考える。すると、エリア1、3、5、7に格納された奇数カラムデータが往路走査で記録されればエリア2、4、6、8に格納された偶数カラムデータは復路走査で記録される。このような4×2のインデックスパターンを使用することにより、本実施形態では、0〜4レベルの記録方向を制御することが可能になる。
【0067】
図16(a)および(b)は、本実施形態で採用するインデックスパターン群の一例を示す図である。2×4エリアのうち、黒で示したエリアがドットを記録するエリア、白く示したエリアがドットを記録しないエリアを夫々示している。図16(a)は600dpiの画素内を双方向で記録するためのインデックスパターン群A、同図(b)は、600dpiの画素内を片方向で記録するためのインデックスパターン群Bを夫々示している。本実施形態において、CPU301は、0〜4で表される600dpiの画像データを受信するので、レベル0〜レベル4に対応するインデックスパターンを用意する。
【0068】
インデックスパターン群Aでは、全レベルについて(i)〜(iv)の4種類のパターンが用意されている。また、インデックスパターン群Bでも、全レベルについて(v)〜(viii)の4種類のパターンが用意されている。
【0069】
インデックスパターン群Aについては、偶数カラムと奇数カラムに満遍なく記録(1)を示すデータが配置されるようになっている。これに対し、インデックスパターンBについては、奇数カラムにのみ記録(1)を示すデータが配置されるようになっている。
【0070】
本実施形態においても、図8および図11に示したフローチャートに従って、インデックス展開処理を行うことが出来る。そして、図14(a)〜(c)に示したような2カラム間引きの分割記録法を実行することにより、所定の領域ごとに、往路走査記録と復路走査記録の割合を色むらの程度に応じて適切に調整することが可能となる。その結果、画像全体に対しては双方向記録による高速出力を実現しながら、色むらの発生を軽減することが出来る。
【0071】
さらに本実施形態では、レベル0〜4の5つのレベルに対し、往路走査および復路走査の記録比率を制御する事ができる。よって、上述した実施形態1よりも、更に高精度な記録比率制御が可能になる。
【0072】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態においても図1〜図3に示すインクジェット記録装置を用い、図8および図11で示したフローチャートに従ってインデックス展開を行うものとする。但し本実施形態では、判定値Sの算出方法やインデックス切り替え個数を決定する際に参照する閾値テーブルは、上記実施形態とは異なるものを用いる。
【0073】
既に説明した実施形態1および2では、色むらの程度を示すための判定値Knを、式1に従って求めた。式1は、色むらへの寄与の程度に基づいてインク色ごとに重み付けはされていたが、基本的には、各インク色の記録デューティの和に基づく値となっていた。すなわち、記録デューティが高いほど色むらが目立ち易いと判断され、記録デューティが高い領域であるほど片方向記録の比率が高く設定されていた。
【0074】
しかしながら、実際に視覚的に認識される色むらは、記録デューティよりも色相によって左右されることも多い。そこで本実施形態では、CMYKの記録デューティではなく、多値の輝度データ(RGB)の組み合わせから、色むらの程度を示すための判定値Tを算出する。このため、本実施形態の記録装置は、ホスト装置315のプリンタドライバから、8bitで256階調を有する(R、G、B)の形態で600dpi画像データを取得する。
【0075】
図17(a)は、0〜255の値を有するRGBの各信号値を4つに区分するための表である。信号値192〜255は区分A、128〜191は区分B、64〜127は区分C、0〜63は区分Dとする。
【0076】
本実施形態においてCPU301は、図17(b)に示される色相マトリクス表を参照することにより、RGB各色の区分の組み合わせから600dpiの個々の画素の判定値Tn(n=1〜32)を取得する。RGBの3色それぞれが4つに区分されていることにより、その組み合わせは64通りとなる。それぞれの組み合わせによって色むらの目立ち方は様々であり、判定値Tnは各組み合わせの色むらの程度をチェックすることにより予め設定しておく。その後、CPU301は、32個の換算値Tn(n=1〜32)の平均値をとして、32画素で構成される注目領域のドット形成比率判定値Sを算出する。
S=ΣTn/32 (式3)
【0077】
図17(c)は、本実施形態のCPU301が、インデックス切り替え個数を設定するために参照する閾値テーブルを示す図である。CPU301は、式3によって算出したドット形成比率判定値Sを、32個の比率切り替え閾値を比較して、右欄に示されたインデックス切り替え個数を決定する。例えば、注目領域に含まれる32画素のうち、(R、G、B)=(200、150、50)となる画素が16個、(R、G、B)=(150、50、150)となる画素が16個存在する場合を考える。このとき、図17(a)と(b)および(式3)を用いると、ドット形成比率判定値S=27となる。そして、図17(c)に示される閾値テーブルを参照すると、得られたドット形成比率判定値S=27は、th14<S<th15を満足するので、インデックスの切り換え個数は15個となる。以後の処理については、上記実施形態と同様である。
【0078】
このように、本実施形態では各領域の色相(すなわちRGBの組み合わせ)に従って、注目画素あるいは注目領域の色むらの程度を判定する。このような構成によれば、所定の領域の色相に応じて、往路走査記録と復路走査記録の割合をより適切な割合で調整することが可能となる。その結果、画像全体に対しては双方向記録による高速出力を実現しながら、色むらの発生を軽減することが出来る。
【0079】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、電気熱変換素子を用いてインクを吐出する方式を示したが、本発明は、ピエゾなどの電気機械変換素子を用いてインクを吐出する方式を採用することも可能である。
【0080】
また、上記実施形態で説明したような、注目領域の大きさ、判定値の算出方法、インデックスパターンの具体的内容、閾値テーブル、も本発明を限定するものではない。所定の画像領域の色むらの程度に応じて、当該画像領域を構成する複数の画素に対する、片方向記録の比率と双方向記録の比率を、制御可能な構成であれば本発明の範疇となる。例えば、往路走査用のメモリ、復路走査用のメモリを予め別々に用意しておきながら、各領域の多値の画像データと判定値に応じて、2値化処理後のデータがそれぞれのメモリに直接分配されるような記録データ生成とすることも出来る。
【0081】
また、上記では、インクジェット記録装置が本発明のデータ処理装置としての機能を有する内容で説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記一連の画像処理がホスト装置のプリンタドライバで行われ、往路走査用の2値データと復路走査用の2値データのそれぞれを、記録装置が受信する形態とすることも出来る。この際、ホスト装置が本発明のデータ処理装置となる。
【0082】
さらに、本発明は、上述した各実施形態の機能を実現する、図11に示したフローチャートの手順を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体によっても実現することができる。また、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0083】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットに接続しホームページから本発明のプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをダウンロードすることでも供給できる。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範囲に含まれるものである。
【0084】
またコンピュータが読み出したプログラムを実行して、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムによってコンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【符号の説明】
【0085】
201〜204 記録ヘッド
500 記録制御部
600 記録装置
1200 ホスト装置
J0006 ドット配置パターン化処理
J0008 マスクデータ変換処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に配列し異なるインクを吐出する複数の記録ヘッドに、前記主走査方向における往路走査および復路走査を繰り返させながら、2値の記録データに基づいてインクを吐出させることにより、記録媒体に画像を記録するためのデータ処理装置であって、
複数の画素で構成される所定領域について、当該所定領域に対する前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率を、前記複数の画素が有する多値の画像データに基づいて設定する記録比率設定手段と、
該記録比率設定手段によって設定された前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率と、前記多値の画像データに基づいて、前記所定領域に対する前記往路走査の2値の記録データと前記復路走査の2値の記録データを生成する記録データ生成手段と
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記往路走査と前記復路走査の両方で均等にドットが記録されるように記録データが配列され、前記多値の画像データに応じて選択されるインデックスパターンの複数からなるインデックスパターン群Aと、
前記往路走査あるいは前記復路走査のどちらか一方でのみドットが記録されるように記録データが配列され、前記多値の画像データに応じて選択されるインデックスパターンの複数からなるインデックスパターン群Bとを更に備え、
前記記録比率設定手段は、前記所定領域に含まれる前記複数の画素が有する多値の画像データに基づいて、前記複数の画素のうち、前記インデックスパターン群Aを宛がう画素の数と前記インデックスパターン群Bを宛がう画素の数を設定し、
前記記録データ生成手段は、前記記録比率設定手段が定めた画素の数に従って、前記複数の画素のそれぞれを、前記インデックスパターン群Aあるいは前記インデックスパターン群Bから選択したインデックスパターンを用いて、前記多値の画像データを前記2値の記録データに変換することを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記記録比率設定手段は、前記複数の画素が有する多値の画像データから、前記所定領域に記録されるインクの量を算出し、該算出した値に基づいて、前記所定領域に対する前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率を設定することを特徴とする請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記記録比率設定手段は、前記複数の画素が有する多値の画像データから、前記所定領域に記録される画像の色相に基づいて、前記所定領域に対する前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率を設定することを特徴とする請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記インデックスパターンは、多値の画像データを有する1つの画素を2値の記録データを有する複数のエリアに対応させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
主走査方向に配列し異なるインクを吐出する複数の記録ヘッドに、前記主走査方向における往路走査および復路走査を繰り返させながら、2値の記録データに基づいてインクを吐出させることにより、記録媒体に画像を記録するためのデータ処理方法であって、
複数の画素で構成される所定領域について、当該所定領域に対する前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率を、前記複数の画素が有する多値の画像データに基づいて設定する記録比率設定工程と、
該記録比率設定工程によって設定された前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率と、前記多値の画像データに基づいて、前記所定領域に対する前記往路走査の2値の記録データと前記復路走査の2値の記録データを生成する記録データ生成工程と
を有することを特徴とするデータ処理方法。
【請求項7】
主走査方向に配列し異なるインクを吐出する複数の記録ヘッドに、前記主走査方向における往路走査および復路走査を繰り返させながら、2値の記録データに基づいてインクを吐出させることにより、記録媒体に画像を記録するためのインクジェット記録装置であって、
複数の画素で構成される所定領域について、当該所定領域に対する前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率を、前記複数の画素が有する多値の画像データに基づいて設定する記録比率設定手段と、
該記録比率設定手段によって設定された前記往路走査の記録比率と前記復路走査の記録比率と、前記多値の画像データに基づいて、前記所定領域に対する前記往路走査の2値の記録データと前記復路走査の2値の記録データを生成する記録データ生成手段と、
該記録データ生成手段によって生成された2値の記録データに従って、前記往路走査および前記復路走査を繰り返させながら、前記記録ヘッドからインクを吐出させることにより、前記記録媒体に画像を記録する手段と
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−223970(P2012−223970A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93064(P2011−93064)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】