説明

データ収集管理装置および欠損データの補間処理方法

【課題】欠損パターンに応じて適切な補間処理を実行することにより補間データの精度を向上させること。
【解決手段】 複数の機器が一または二以上のグループに分けられ、各グループの総消費エネルギー量データと各グループに属する機器の個別消費エネルギー量データとを所定の周期で収集する消費エネルギー量収集手段と、消費エネルギー量収集手段によって収集されたデータ中にデータ欠損を検出したときは、欠損パターンごとに予め定められた補間処理によって補間データを算出する欠損データ補間手段と、消費エネルギー量収集手段によって正常に収集されたデータと、欠損データ補間手段によって算出された補間データとを識別表示する表示手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーマーケットなどのバックヤードでの消費エネルギー量を計測・記録表示する技術に係り、特に計測値の収集過程で欠損が生じた場合でも、精度良く補間してデータ収集することのできるデータ収集管理装置および欠損データの補間処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットなどのバックヤードで機器の消費エネルギー量を計測する場合、機器ごとの消費エネルギー量と、主幹から収集した機器全体の消費エネルギー量のデータを収集している。このとき、計測データに欠損が発生した場合は、前回値を用いて補間するのが一般的である。
【0003】
なお、従来の消費エネルギー量の計測技術に関して、例えば、特許文献1では、複数部門が所在しているエリアのレイアウト条件が変動した場合であっても、エリアに対して設けられているエネルギー使用設備の全消費エネルギー量のうち各部門毎の個別の消費エネルギー量を算出するため、各部門の個別消費エネルギー量の全消費エネルギー量に対する使用割合を保存しておき、全消費エネルギー量にこの使用割合を乗ずることによって、レイアウトが変更になった各部門の個別消費エネルギー量を算出する方法および装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、欠損している消費エネルギー量を補間するため、例えば厨房用器具の所有台数等の属性に基づいて、旧属性の消費エネルギー量と新属性の消費エネルギー量とを収集し、CPUにより、新属性の標準値、旧属性の消費エネルギー量及び標準値に基づいて旧属性の消費エネルギー量に対応する新属性の消費エネルギー量を算出して、欠損部を補間するという手法、および、旧属性の標準値、新属性の消費エネルギー量及び標準値に基づいて新属性の消費エネルギー量に対応する旧属性の消費エネルギー量を算出して、欠損部を補間するという手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−340595号公報
【特許文献2】特開2003−269991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来の技術は、あるデータを用いて他のデータを算出するものであるが、バックヤードのデータを収集管理するような場合、データの欠損のしかたは多種多様であり、欠損のしかた(欠損パターン)に応じて精度の高いデータ補間を行う必要がある。
【0007】
また、リアルタイムに計測データを監視する必要から、欠損が生じたときに、直ちにデータを補間して、監視処理を継続する必要もある。
【0008】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、欠損パターンに応じて適切な補間処理を実行することにより補間データの精度を向上させ、より正確な監視業務を可能にするデータ収集管理装置および欠損データの補間処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係わるデータ収集管理装置は、複数の機器が一または二以上のグループに分けられ、各グループの総消費エネルギー量データと各グループに属する機器の個別消費エネルギー量データとを所定の周期で収集する消費エネルギー量収集手段と、消費エネルギー量収集手段によって収集されたデータ中にデータ欠損を検出したときは、欠損パターンごとに予め定められた補間処理によって補間データを算出する欠損データ補間手段と、消費エネルギー量収集手段によって正常に収集されたデータと、欠損データ補間手段によって算出された補間データとを識別表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明では、データ欠損を検出したときは、欠損パターンごとに予め定められた手順で補間処理を行い、補間データと正常に受信したデータとを識別表示するので、データ欠損のパターンによって適切な補間処理が可能となり、また管理担当者は、正常に受信したデータか補間処理によって算出されたデータかを知ることができるので正しい判断が可能となる。
【0011】
本発明に係わるデータ収集管理装置は、さらに、個別の機器ごとに消費エネルギー量の履歴情報を保存する手段と、履歴情報をもとに、各機器の個別消費エネルギー量の総消費エネルギー量に対する按分係数を計算する按分係数算出手段とを備え、欠損データ補間手段は、按分係数を用いて補間処理を実行することを特徴とする。
【0012】
本発明では、消費エネルギー量の履歴情報から按分係数を計算して補間処理を実行する。これにより、同一グループ内の複数の機器のデータが同時に欠損したときにも補間処理が可能となる。
【0013】
なお、按分係数は、予め管理担当者が設定した値を用いてもよいが、好ましくは、消費エネルギー量の履歴は、例えば、季節ごと、平日・休祭日など機器の使用割合が異なることが想定される所定の時期ごとに各周期のデータの平均値をとるようにするとよい。これにより、精度の高い補間処理が可能となる。なお、管理担当者の設定した按分係数を初期値として用い、周期的に実行される按分係数算出手段で、新たに按分係数が求まったときには、この按分係数を用いることによって、時間の経過に伴い精度の高い按分係数を適用することができる。
【0014】
また、本発明に係わるデータ収集管理装置は、さらに、収集タイミングごとの総消費エネルギー量の前回値と今回値の変化率を計算する変化率算出手段を備え、欠損データ補間手段は、ある収集タイミングで同一グループの全てのデータの欠損を検出したときは、変化率算出手段によって算出された変化率のうち、最新の変化率を用いて、当該グループの総消費エネルギー量を算出し、当該総消費エネルギー量に当該グループに属する各機器の按分係数を適用して各機器の個別消費エネルギー量を算出することを特徴とする。
【0015】
本発明では、総消費エネルギー量の変化率を随時記録しておき、この変化率と各機器の按分係数とを用いることによって、全データ欠損時にも精度の良いデータ補間が可能となる。
【0016】
好ましくは、欠損データ補間手段は、算出した補間データに対して補間処理に対応する信頼度を付加し、表示手段は、補間データを識別表示する際に、当該補間データに付加されている信頼度に基づいてデータを識別表示すると良い。
【0017】
これにより、管理担当者は、補間データか否かのみでなく、さらに補間データの信頼度を知ることができるので、監視業務に役立てることができる。
【0018】
なお、この信頼度が、所定値以下の場合は、後の収集タイミングで収集したデータを用いて、例えば、後のデータの按分係数と補間処理時の按分係数との平均を用いて再計算するなどの処理によって、当該補間データを修正するのが好ましい。これによって、補間データの精度を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係わる欠損データの補間処理方法は、複数の機器の消費エネルギー量データを収集し、データの欠損を検出して欠損データを補間する欠損データの補間処理方法であって、複数の機器を一または二以上のグループに分け、各グループの総消費エネルギー量データと各グループに属する機器の個別消費エネルギー量データとを所定の周期で収集するステップと、個別の機器ごとに消費エネルギー量の履歴情報を保存するステップと、履歴情報をもとに、各機器の個別消費エネルギー量の総消費エネルギー量に対する按分係数を計算するステップと、収集タイミングごとの総消費エネルギー量の前回値と今回値の変化率を算出するステップと、収集されたデータ中にデータ欠損を検出したとき、欠損パターンごとに予め定められた補間処理を実行する一方、ある収集タイミングで同一グループの全てのデータの欠損を検出したときは、算出された変化率のうち、最新の変化率を用いて、当該グループの総消費エネルギー量を算出した後、当該総消費エネルギー量に当該グループに属する各機器の按分係数を適用して各機器の個別消費エネルギー量を算出する補間処理を実行するステップと、正常に収集されたデータと、補間処理によって算出されたデータとを識別表示するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、欠損パターンに応じて当該パターンに対応する補間処理を実行するので、データ補間の精度を向上させることができる。
【0021】
また、ある収集タイミングにおいて全てのデータが欠損した場合でも、直近の総エネルギー量の変化率と過去の機器の個別消費エネルギー量の按分係数によって欠損データの補間をすることにより、監視業務を続行させることができ、さらに、補間したデータを識別表示することによって、より正確な監視業務が可能となる。
【0022】
また、データ補間のパターンと信頼度を関連付け、所定値以下の信頼度については、その後に収集した他のデータで修正することによって精度の高いデータ収集管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるデータ収集管理装置1の機能ブロック図である。
【図2】図1の設定テーブル19のデータ構成例である。
【図3】図1の計測エネルギーDB21のデータ構成例である。
【図4】図1の欠損データ補間手段12の実施例1による処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の欠損データ補間手段12の実施例2による処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図1の欠損データ補間手段12の実施例3による処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図1の消費エネルギー量DB22のデータ構成例である。
【図8】図1の表示画面30に表示される画面の例である。
【図9】本発明の第2の実施の形態によるデータ収集管理装置1の機能ブロック図である。
【図10】図9の按分係数算出DB23に格納されている按分係数算出用設定テーブル23cのデータ構成例である。
【図11】図9の按分係数算出DB23に保存されている平均消費エネルギー量テーブル23aと按分係数算出テーブル23bとの関係図であり、図11(a)は平均消費エネルギー量テーブル23aのデータ構成図、図11(b)は按分係数算出テーブル23bのデータ構成図である。
【図12】図9の按分係数算出手段14の処理概要を表した図である。
【図13】図11(a)の平均消費エネルギー量テーブル23aの機器1(フライヤー)の具体的なデータ例である。
【図14】図11(b)の按分係数算出テーブル23bの同一グループに属する機器の具体的な按分係数の例である。
【図15】本発明の第3の実施の形態によるデータ収集管理装置1の機能ブロック図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態による按分係数算出テーブル23bのデータ例である。
【図17】図15の欠損データ補間手段12の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第3の実施の形態による消費エネルギー量DB22のデータ例である。
【図19】本発明の第3の実施の形態による計測エネルギーDB21のデータ例である。
【図20】図15の補間データ修正手段16による修正処理後の消費エネルギー量DB22のデータ例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態を説明する。図1は、第1の実施の形態によるデータ収集管理装置1の機能ブロック図である。
【0025】
この図において、データ収集管理装置1は、バックヤード50の計測対象機器(図中、主幹および機器)の消費エネルギー量のデータを、部門など所定のグループごとに消費エネルギー量を検知するセンサ2を介して入力する。データは、収集時刻においてグループNo.、およびグループ内の機器を特定する構成要素No.に関連付けてセンサで検知した消費エネルギー量のデータ値を付して送られる。このとき、ノイズや機器の不具合等によって収集データに欠損が発生した場合は、後述する補間処理によって欠損データを補間して、一連のデータを保存管理すると共に画面に表示出力する。管理担当者は、この表示画面に出力された消費エネルギー量によって計測対象機器の稼動状態や異常の有無等の監視を行う。
【0026】
次に、データ収集管理装置1の構成を説明する。
データ収集管理装置1は、計測対象機器センサ2から直接または図示しない伝送装置を介して送られてくる消費エネルギー量のデータを入力して、計測エネルギーDB21に保存する消費エネルギー量収集手段11、データ欠損の発生を検出し、収集したデータをもとに欠損データの補間処理を実行して、その結果および収集データを消費エネルギー量DB22に保存する欠損データ補間手段12、各計測対象機器の消費エネルギー量を表示装置の表示画面30へ出力する表示手段13を有している。各手段11〜13は、プログラムによって実現可能な機能である。
【0027】
データ収集管理装置1は、また、計測対象機器のグルーピングやデータ収集のための種々のパラメータを保存する設定テーブル19を備えている。
【0028】
図2は、設定テーブル19のデータ構成例である。各計測点の名称と、プログラムやデータベースで管理するための計測点ID、入力処理や伝送で使用する物理アドレス情報のほか、各計測点のグループNo.やその中の機器を特定する構成要素No.および按分係数が互いに関連付けられて保存されている。この按分係数は、各機器の消費エネルギー量の割合を示すもので管理担当者によって設定される。また、物理アドレス情報は、電力量計など使用するセンサの仕様で決まるアドレスで、通常は通信アドレスと回路No.の組み合わせとなる。グループ構成定義のグループNo.は主に部門を示す識別子、また構成要素No.は部門(グループ)内の機器を示す識別子であり、この図では、「0」は部門全体、「1」以降は各機器を示すようにしている。
【0029】
次に、上記の構成を有するデータ収集管理装置1の動作を説明する。
(消費エネルギー量収集処理)
消費エネルギー量収集手段11は、予め定められた所定の時刻毎に、消費エネルギー量を収集し、収集したデータを図3に例示する計測エネルギーDB21の該当するグループ構成定義の計測値欄に格納する。また、正常に消費エネルギー量を収集できたか否かを示す情報を、各計測値欄に関連付けて保存する。この図では、所定の収集タイミングでデータが正常受信された場合は「0」を結果欄に格納し、そうでない場合は異常として「1」を格納する。
【0030】
(欠損データ補間処理)
以下、欠損データ補間手段12の処理手順を実施例ごとに説明する。
【実施例1】
【0031】
まず図4を用いて実施例1による欠損データ補間手段12の処理手順を説明する。
欠損データ補間手段12は、収集タイミングから一定時間経過後に起動されると、計測エネルギーDB21にアクセスして、当該収集タイミングの各計測値の結果欄を参照して、受信データが正常か異常かを判定する。当該収集タイミングの全ての結果欄が「0」すなわち正常の場合は、欠損なしとして(S101で「No」)、計測値から各計測対象機器の消費エネルギー量を抽出し、あるいはスケール変換等の所定の演算処理によって計算して(S102)、消費エネルギー量DB22の該当欄に格納する(S103)。
【0032】
一方、ステップS101において、結果欄が「1」すなわち異常の場合は、欠損ありとして(S101で「Yes」)、次にそのデータがグループ定義されているか否かを判定する(S104)。グループ定義されていない場合、すなわち当該データ単独で収集した場合は(S104で「No」)、前回の収集タイミングのデータ(前値)で計算して(S105)、消費エネルギー量DB22に保存する(S103)。
ステップS104でグループ定義されている場合は、その収集タイミングの一連の結果欄の異常個数は一つのみか否かを判定し(S106)、一つのみの場合は下記の関係式(1)をもとにその一つの結果を算出し(S107)、当該演算結果を含め、当該収集タイミングのすべての計測データを消費エネルギー量DB22へ保存する(S103)。
関係式
全体(主幹)の消費エネルギー量=Σグループ内の機器の消費エネルギー量
・・・ (1)
【実施例2】
【0033】
実施例2による欠損データ補間手段12の処理手順を図5に示す。この図において、ステップS201〜S205の処理は、図4のステップS101〜S105の処理に対応している。
【0034】
ステップS204において、グループ定義をされている場合は(S204で「Yes」)、次に、同じ収集タイミングで複数データの欠損があり、かつ、一連の計測データのうち最低一つでも計測されたか否かを判定し(S206)、Yesの場合は、設定テーブル19に保存されている按分係数を用いて計算し(S207)、その計算結果を含め、一連の計測データを消費エネルギー量DB22に保存する。
【0035】
ステップS207において、按分係数を用いた計算のしかたとして、総消費エネルギー量が計測されている場合は、この計測値に各機器の按分係数を乗じて、各機器の個別の消費エネルギー量を算出する。ある機器の消費エネルギー量のみが計測されている場合は、その機器の計測値にその機器の按分係数と他の機器の按分係数の比を乗じて、当該他の機器の消費エネルギー量を算出する。また、計測された機器の計測値をその機器の按分係数で除することによって総消費エネルギー量を算出することができる。
【実施例3】
【0036】
次に、実施例3として、実施例1と実施例2とを複合した例を図6に示す。
図6において、ステップS301〜S307は、図4のステップS201〜S207と同様である。また、ステップS308,S309は、図5のステップS206,S207と同様である。
【0037】
つまり、図6中に記載した処理A、処理B、処理Cを切替えて欠損データを補間することによって、欠損データ復元精度を向上させることができる。図6の例では、処理Aが最も精度が高く、続いて、処理B、処理Cの順となる。
【0038】
以下、欠損のケースごとに、どのように補間処理されるかを説明する。なお、下記において、計算例の番号は、図3の右欄に付した計算例番号に対応している。また、補間処理については、図6に示す対応する処理記号(A〜C)を付す。
【0039】
a.欠損が無い場合(計算例0)
【表1】

【0040】
欠損がない場合は、計測値をそのまま消費エネルギー量DB22に保存すると共に、補間なしを示すフラグ「0」を格納する。
【0041】
b.欠損が主幹のみの場合(計算例1)(処理A)
【表2】

【0042】
表2において、全体(主幹)の収集のみが出来なかった場合は、式(1)より、グループ内の機器の消費エネルギー量を合計して、全体(主幹)の消費エネルギー量を求める。
【0043】
c.欠損が機器2のみの場合(計算例2)(処理A)
【表3】

【0044】
表3において、機器2の収集のみが出来なかった場合は、式(1)をもとに、全体(主幹)の消費エネルギー量から機器1と機器3の消費エネルギー量の合計値を減算して、機器2の消費エネルギー量を求める。
【0045】
d.全体の総消費エネルギー量データのみ収集できた場合(計算例3)(処理B)
【表4】

【0046】
グループ内の総消費エネルギー量のみが収集できた場合は、総消費エネルギー量をもとに、各個別消費エネルギー量に設定された按分係数を乗じて、欠損した各個別消費エネルギー量を算出する。
【0047】
e.複数の個別消費エネルギー量のうちの1つのみが収集できた場合(計算例4)(処理B)
複数の個別消費エネルギー量のうちの1つが収集できたとき、この収集できた個別消費エネルギー量をもとに、該個別消費エネルギー量に設定された按分係数を除算して総消費エネルギー量を復元し、この復元された総消費エネルギー量をもとに、個別消費エネルギー量毎に設定された按分係数を乗じて収集できなかった個別消費エネルギー量を算出する。
【表5】

【0048】
表5の例では、機器2の個別消費エネルギー量「42」と、この按分係数「30%」から、表5中の計算式に基づいて、まず全体(主幹)の総消費エネルギー量「140」を求める。これに、機器1または機器3の按分係数を乗じて、それぞれの個別消費エネルギー量を計算する。
【0049】
f.全てのデータが欠損した場合(計算例5)(処理C)
全ての機器の消費エネルギー量が欠損したときは、このそれぞれの欠損した消費エネルギー量に、前回取得したそれぞれの消費エネルギー量を割り当てて復元する。
【表6】

【0050】
全て欠損のため、今回値=前回値として、今回値−前回値によって消費エネルギー量を算出して「0」とする。
【0051】
(その他の計算例)
なお、上記の計算のしかたは一例であり、他の計算式を用いてそれぞれの消費エネルギー量を求めることができる。例えば、下記の表7に示す個別消費エネルギー量が一つでも計測されている場合は、まず全体の使用量を求め、次に各機器の按分係数で按分するようにしても良いし、全体から計測されている機器の個別の消費量との差を求め、欠損機器の按分係数の比率からそれぞれの個別消費エネルギー量を求めるようにしても良い。
【0052】
なお、計測されている機器の使用量の按分係数と欠損している機器の按分係数との比から求めることもできるが、本実施の形態では、管理担当者により予め設定された按分係数を用いるので、精度が低くなるため好ましくない。
【0053】
したがって、欠測パターンに応じて予め精度の高いアルゴリズムを定めておき、このアルゴリズムを用いて補間処理を行うのが良い。
【表7】

【0054】
欠損データ補間手段12は、上述のごとく欠損パターンごとに補間処理を行い、その結果と計測データとを消費エネルギー量DB22に保存する。また、補間データか、計測データかを示すフラグを各データに関連付けて格納する。
【0055】
図7は、消費エネルギー量DB22のデータ例であり、図3との対応において示している。消費エネルギー量DB22には、欠損データが補間されて一連のデータが格納される。なお、表最右欄の計算例は、図3および上述の各計算例の説明と対応している。
図7において、消費エネルギー量DB22は、日付と時刻、および、所定時間当たりの消費エネルギー量と補間したか否かを示すフラグ(1:補間あり、0:補間なし)のデータを持っている。
【0056】
(消費エネルギー量表示処理)
表示手段13は、消費エネルギー量DB22に保存されている各計測対象機器の消費エネルギー量を表示画面30に表示する。
【0057】
図8は、表示装置に表示される表示画面の例である。ここで、欠損データ部を「●」として識別表示をすることにより、管理担当者が表やグラフを見ながら消費エネルギー量を目視にて確認できるようにしている。
【0058】
以上、本実施の形態によれば、データ欠損を検出したときは、欠損パターンごとに予め定められた手順で補間処理を行い、補間データと正常に受信したデータとを識別表示するので、データ欠損のパターンによって適切な補間処理が可能となる。また、管理担当者は、正常に受信したデータか補間処理によって算出されたデータかを知ることができるので正しい判断が可能となる。
【0059】
次に第2の実施の形態を説明する。
図9は、第2の実施の形態によるデータ収集管理装置の機能ブロック図である。図1との主な違いは、収集した消費エネルギー量データをもとに、全体の消費エネルギー量に対する各機器の消費エネルギー量の割合を時々刻々計算して按分係数算出DB23に保存する按分係数算出手段14を追加したことである。その他の構成は図1と同様であるので、同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
本実施の形態では、按分係数算出DB23に図10に例示する按分係数算出用設定テーブル23cを設けて、期間ごとに按分係数を管理可能にする。図10において、期間1〜4は、按分係数算出手段14で算出する按分係数を年間共通とするか、期間で分けるかを指定するもので、各期間の開始日、終了日を設定する。図10は年間共通の指定の例であるが、期間で分ける場合は例えば、期間1:4/1〜6/30、期間2:7/1〜9/30、期間3:10/1〜11/30、期間4:12/1〜3/31というように季節に対応させて分けることができる。
【0061】
次に図11を用いて按分係数算出DB23の構成について説明する。按分係数算出DB23は、平均消費エネルギー量テーブル23aと按分係数算出テーブル23bを有している。按分係数算出用設定テーブル23cの期間と対応して、それぞれ期間1〜4に分けてデータを管理する。図11は、期間1を例にしているが、他の期間(期間2〜4)についても同様である。
【0062】
平均消費エネルギー量テーブル23aは、機器ごとに平日、休祭日ごとなど、機器の稼動状態が変ることによって消費エネルギー量の割合が変化する可能性のある管理単位で所定の周期(例えば時間ごと)の平均消費エネルギー量のデータを格納できるようになっている。
【0063】
一方、按分係数算出テーブル23bは、平均消費エネルギー量テーブル23aのデータに基づいて、上記の管理単位ごとに、同じグループ内の機器の所定周期ごとの平均消費エネルギー量の比率を格納できるようになっている。
【0064】
次に、上記の構成を有するデータ収集管理装置1において、次に按分係数算出手段14の処理手順を説明する。
図12は、按分係数算出手段14の処理概要を表した図である。この図において、按分係数算出手段14は、所定の収集タイミングから一定時間後に起動されると、設定テーブル19と按分検出算出DB23を参照して、以下に説明する平均消費エネルギー量計算処理(S401)と、按分係数算出処理(S402)を実行する。
【0065】
(平均消費エネルギー量計算処理)
平均消費エネルギー量計算処理は、収集タイミングごとに計測エネルギーDB21に格納されたデータの中で、グループ定義された構成要素の全計測点について収集が正常終了したデータを対象に行う。図2の惣菜グループの機器1(フライヤー)、機器2(多目的焼き器)、機器3(食器洗浄器)の2008年10月15日9時の計測データが全点で収集が正常終了した場合、図10按分係数算出用設定テーブル23cを参照して期間を判定すると、期間1となる。また、2008年10月15日は水曜日なので平日となる。按分係数算出DB23の平均消費エネルギー量テーブル23aの期間1、平日の機器1,2,3の各々の現在の平均消費エネルギー量と、今回の消費エネルギー量とから、平均値を再計算して、同テーブル23aに反映する。例えば、期間1、機器1、平日9時の現在の平均消費エネルギー量=79で、5日分のデータの場合、今回が85の場合、平均値を再計算すると、(79×5+85)/6=80となる。
【0066】
図13は、平均消費エネルギー量テーブル23a中の機器1(フライヤー)の具体的なデータ例である。
【0067】
(按分係数算出処理)
平均消費エネルギー量計算処理の終了によって按分係数算出処理を起動する。按分係数算出DB23の平均消費エネルギー量テーブル23aの所定の管理単位(例えば期間1、平日)の各機器の平均消費エネルギー量から按分係数を再計算し、按分係数算出テーブル23bに反映する。なお、設定テーブル19に予め設定されている按分係数をテーブル23bの初期値として用いるようにしても良い。
【0068】
例えば、期間1、平日の9時の平均値が、機器1(フライヤー)=80[kWh],機器2(多目的焼き器)=103[kWh],機器3(食器洗浄器)=7[kWh]であったとき、按分係数を再計算すると、機器1(フライヤー)=42%,機器2(多目的焼き器)=54%,機器3(食器洗浄器)=4%となる。
【0069】
図14は、所定の管理単位(本例では、期間1,平日)の所定グループに属する機器の具体的な按分係数の例である。
【0070】
(欠損データ補間処理)
第1の実施の形態の第2,第3の実施例では、欠損データ補間手段12は、設定テーブル19に予め設定されている按分係数を用いて補間処理を実行していたが、本実施の形態では、欠損データ補間手段12は上記の処理で随時更新する按分係数算出DB23の按分係数を用いて、補間処理を実行する。
【0071】
欠損データ補間手段12では、欠損データの日付をもとに曜日、また按分係数算出用設定テーブル23cを参照して期間1〜4のどの期間に該当するかを判定し、按分係数算出DB23の按分係数算出テーブル23bから対応する期間の按分係数算出テーブルを決定し、曜日、時刻、機器の按分係数を抽出して使用する。補間処理の手順は、図5,図6に示したアルゴリズムを用いることができる。
【0072】
以上、本実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて以下の如くリアルタイムで算出した按分係数を使用する場合の効果を奏する。
【0073】
特に、実際のバックヤードでのエネルギーの消費量は、曜日(平日、休祭日)と時間帯によって異なる特徴がある。例えば、平日よりも休祭日の方が夜遅い時間帯でも調理する、調理順番によって使用する機器が異なる、調理しながら皿や容器などの片付け(洗浄)を行うが、最後にまとめて片付ける、などである。このような特徴があるので、按分係数を固定値とするよりも、リアルタイムで曜日(平日、休祭日)と時間毎に按分係数を算出して使用することにより、欠損データ復元精度をより向上させることが可能となる。
【0074】
次に第3の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、リアルタイムにデータ補間を実行する一方、その後に収集したデータに基づいて、補間データを修正して、精度の良い収集管理を実現するものである。
図15は、第3の実施の形態によるデータ収集管理装置1の機能ブロック図である。
【0075】
本実施の形態によるデータ収集管理装置1は、図9に示す第2の実施の形態の構成に対して、総消費エネルギー量の変化率を収集タイミングごとに逐次算出する変化率算出手段15と補間データの信頼度を上げるため、後に収集する他のデータを用いて補間データを修正する補間データ修正手段16を追加した。
【0076】
以下、本実施の形態によるデータ収集管理装置1の動作について、第2の実施の形態との違いを中心に説明する。
【0077】
(変化率算出処理)
変化率算出手段15は、収集タイミングごとに消費エネルギー量収集手段11からの指令によって起動されると、その収集タイミングで総消費エネルギー量を正常に収集できたか否かを判定して、正常に収集した総消費エネルギー量の前回値と今回値の変化率を計算する。
【0078】
図16に示すように、本実施の形態による按分係数算出テーブル23bには、収集タイミングごとに算出された総消費エネルギー量の変化率も格納されている。
【0079】
(欠損データ補間処理)
本実施の形態による欠損データ補間手段12の動作を図17を用いて説明する。図6との違いは、全てのデータが欠損した場合に(S508で「No」)、上記の処理で算出した変化率を用いて、総消費エネルギー量の前値に対して、当該前値欄に関連付けて記録されている変化率を適用して総消費エネルギー量の推定値を算出する(S510)。このとき、この処理によって算出した推定値であることを示すフラグ「2」をこの推定値に関連付けて格納する。このフラグは、処理内容によってデータの信頼度を示すものである。
【0080】
さらに、ステップS510で算出した総消費エネルギー量の推定値に対して、按分係数算出テーブル23bに保存されている按分係数を乗じて、各機器の個別の消費エネルギー量を算出する(S511)。この消費エネルギー量についても上記と同様にフラグ「2」を格納する。その他の処理については図6と同様である。
【0081】
表示処理手段13は、消費エネルギー量をフラグ(0〜2)に基づいて識別表示する。
【0082】
(補間データ修正処理)
補間データ修正手段16は、消費エネルギー量収集手段11または欠損データ補間手段12からの起動要求によって起動されると、総消費エネルギー量の今回値のフラグが「0」または「1」であって前回値のフラグが「2」の場合は、前回値の修正処理を実行する。修正処理の内容としては、修正対象データの前後のフラグ「0」または「1」の直近データでその間の変化率が等しくなる方向に当該修正対象データの値を修正する。
【0083】
総消費エネルギー量の修正後、上記の修正処理で用いた修正対象の前後の直近データの各機器の按分係数の平均によって、各機器の個別消費エネルギー量を算出する。修正したデータはフラグ「1」にセットする。
【0084】
例えば、図18の消費エネルギー量DB22のデータで23:00の計測データがフラグ2となった場合で、その後24:00の時点で図19に示す計測データが収集されたときは、上述の修正処理を実行して図20に示すように消費エネルギー量DB22の23:00時点のデータを修正する。
【0085】
以上、本実施の形態によれば、補間処理の内容に対応して、算出した補間データに信頼度を付与し、この信頼度と共に収集データを識別表示するので、管理担当者はその信頼度に基づいて、より適切な評価・判断が可能となる。また、補間データ修正手段によって、所定値以下の信頼度のデータについては、その後に収集した、より信頼度の高いデータによって修正演算を行うので、精度の高いデータを保存・管理することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 データ収集管理装置
2 センサ
11 消費エネルギー量収集手段
12 欠損データ補間手段
13 表示手段
14 按分係数算出手段
15 変化率算出手段
16 補間データ修正手段
19 設定テーブル
21 計測エネルギーDB
22 消費エネルギーDB
23 按分係数算出DB
30 表示画面
50 バックヤード
51 主幹
52 機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器が一または二以上のグループに分けられ、各グループの総消費エネルギー量データと各グループに属する機器の個別消費エネルギー量データとを所定の周期で収集する消費エネルギー量収集手段と、
前記消費エネルギー量収集手段によって収集されたデータ中にデータ欠損を検出したときは、欠損パターンごとに予め定められた補間処理によって補間データを算出する欠損データ補間手段と、
前記消費エネルギー量収集手段によって正常に収集されたデータと、前記欠損データ補間手段によって算出された補間データとを識別表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とするデータ収集管理装置。
【請求項2】
個別の機器ごとに消費エネルギー量の履歴情報を保存する手段と、
前記履歴情報をもとに、各機器の個別消費エネルギー量の総消費エネルギー量に対する按分係数を計算する按分係数算出手段と、を備え、
前記欠損データ補間手段は、前記按分係数を用いて前記補間処理を実行することを特徴とする請求項1に記載のデータ収集管理装置。
【請求項3】
収集タイミングごとの総消費エネルギー量の前回値と今回値の変化率を計算する変化率算出手段を備え、
前記欠損データ補間手段は、ある収集タイミングで同一グループの全てのデータの欠損を検出したときは、前記変化率算出手段によって算出された変化率のうち、最新の変化率を用いて、当該グループの総消費エネルギー量を算出し、当該総消費エネルギー量に当該グループに属する各機器の前記按分係数を適用して各機器の個別消費エネルギー量を算出することを特徴とする請求項2に記載のデータ収集管理装置。
【請求項4】
前記欠損データ補間手段は、算出した補間データに対して前記補間処理に対応する信頼度を付加し、
前記表示手段は、前記補間データを識別表示する際に、当該補間データに付加されている前記信頼度に基づいてデータを識別表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のデータ収集管理装置。
【請求項5】
前記欠損データ補間手段によって算出された補間データに付加されている信頼度が所定値以下の場合は、後の収集タイミングで収集したデータを用いて当該補間データを修正する補間データ修正手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載のデータ収集管理装置。
【請求項6】
複数の機器の消費エネルギー量データを収集し、データの欠損を検出して欠損データを補間する欠損データの補間処理方法であって、
複数の機器を一または二以上のグループに分け、各グループの総消費エネルギー量データと各グループに属する機器の個別消費エネルギー量データとを所定の周期で収集するステップと、
個別の機器ごとに消費エネルギー量の履歴情報を保存するステップと、
前記履歴情報をもとに、各機器の個別消費エネルギー量の総消費エネルギー量に対する按分係数を計算するステップと、
収集タイミングごとの総消費エネルギー量の前回値と今回値の変化率を算出するステップと、
収集されたデータ中にデータ欠損を検出したとき、欠損パターンごとに予め定められた補間処理を実行する一方、ある収集タイミングで同一グループの全てのデータの欠損を検出したときは、前記算出された変化率のうち、最新の変化率を用いて、当該グループの総消費エネルギー量を算出した後、当該総消費エネルギー量に当該グループに属する各機器の前記按分係数を適用して各機器の個別消費エネルギー量を算出する補間処理を実行するステップと、
正常に収集されたデータと、前記補間処理によって算出されたデータとを識別表示するステップと、
を含むことを特徴とする欠損データの補間処理方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図12】
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【図15】
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【図17】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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