説明

データ収集装置

【課題】データ収集装置において、各測定モジュールのデータ送信を制御するメイン装置を設けることなく、データ送信の衝突を防ぐととともに、各測定モジュールで時刻に同期した測定を行なえるようにする。
【解決手段】単一系のシリアルバスに接続された複数台の測定モジュールを備えたデータ収集装置であって、測定モジュールのそれぞれが、時刻を計時する時計部と、シリアルバスを介したデータの受信を行なう受信部と、他の測定モジュールから受信した時刻情報にしたがって時計部の計時を修正する時計修正部と、時計部の計時を基準に、所定の送信タイミングで測定データを、シリアルバスを介して送信する送信部とを備え、複数台の測定モジュールのうち1台の送信部は、時計部の計時に基づく時刻情報を他の測定モジュールに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一系統のシリアルバスで接続された複数台の測定モジュールを備えたデータ収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧、抵抗、温度等の様々な物理量の信号を測定する場合、複数の測定モジュールを用い、それぞれの測定モジュールに機能を割り当てて測定を行ない、データ収集することが行なわれている。また、同じ物理量の信号測定であっても、多数の測定点で測定する場合には、同一機能の測定モジュールを複数用いて測定を行なってデータ収集することが行なわれている。
【0003】
測定モジュール間の通信には、一般に、小型化を図ると共にコストを抑えるために単一系統のシリアルバスが用いられている。単一系統のシリアルバスは、1つのシリアルバスを各測定モジュールで共有するため、複数の測定モジュールが同時にデータを送信することができない。
【0004】
ところで、複数のモジュールを用いて様々な物理量の信号を測定する際に、測定タイミングを時刻に同期させる必要がある場合がある。従来、測定タイミングを時刻に同期させる場合には、図7に示すように、メインとなる測定モジュールが時計を持ち、その時計の時刻を基準に各測定モジュールに測定の開始を順に指示していた。本例では、時計を備えている測定モジュールMod0がメインとなり、図7(a)〜(c)に示すように、測定モジュールMod1、測定モジュールMod2、測定モジュールMod3に順に測定スタート信号を送ることで時刻に同期させ、さらに、確実に測定開始を伝送するために、各測定モジュールからの応答を確認するようにしていた。
【0005】
また、測定データの収集では、図8に示すように、メインとなる測定モジュールがポーリングを行なって各測定モジュールから測定データを得ていた。本例では、メインの測定モジュールMod0が、図8(a)〜(c)に示すように、測定モジュールMod1、測定モジュールMod2、測定モジュールMod3に順にデータを問い合わせ、各モジュールからの応答として測定データを受信する。このように、メインとなるモジュールを定めているため測定スタートの伝送と衝突せずに測定データの収集を行なうことができる。
【0006】
なお、単一系統のシリアルバスを用いた、測定モジュール以外の機器間通信では、図9に示すように、各モジュールが順番に送信することで、各モジュールでデータを共有する仕組みを用いているものもある。
【0007】
具体的には、例えば、図10に示すように、モジュールMod0の送信タイミングとして、自身が送信してから100ms経過後と定めておき、モジュールMod1の送信タイミングとして、モジュールMod0が送信してから20ms経過後、あるいは自身が送信してから110ms経過後と定めておき、モジュールMod2の送信タイミングとして、モジュールMod0が送信してから40ms経過後、あるいはモジュールMod1が送信してから20ms経過後、あるいは自身が送信してから120ms経過後と定めておき、モジュールMod3の送信タイミングとして、モジュールMod0が送信してから60ms経過後、あるいはモジュールMod1が送信してから40ms経過後、あるいはモジュールMod2が送信してから20ms経過後、あるいは自身が送信してから130ms経過後と定めておくことで、送信データがぶつかることなくデータを共有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2004−295743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
メイン装置を定めて、測定スタートの指示を行なったり、ポーリングによって測定データを収集する方式は、各測定モジュールで時刻に同期した測定を行なうことが可能であるが、メイン装置となる装置が必須となり、各測定モジュールに処理を分散させていくことが困難である。
【0010】
これに対して、他のモジュールの送信タイミングに基づいて定められるタイミングにデータを送信する方式は、メイン装置が不要となり、各モジュールで処理が分散されることになるが、時刻情報を用いていないため、時刻に同期した測定を行なうことができず、測定時刻の概念が重要なデータ収集装置にそのまま適用することはできない。
【0011】
そこで、本発明は、単一系統のシリアルバスで接続された複数台の測定モジュールを備えたデータ収集装置において、各測定モジュールのデータ送信を制御するメイン装置を設けることなく、データ送信の衝突を防ぐととともに、各測定モジュールで時刻に同期した測定を行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のデータ収集装置は、単一系のシリアルバスに接続された複数台の測定モジュールを備えたデータ収集装置であって、前記測定モジュールのそれぞれが、時刻を計時する時計部と、前記シリアルバスを介したデータの受信を行なう受信部と、他の前記測定モジュールから受信した時刻情報にしたがって前記時計部の計時を修正する時計修正部と、前記時計部の計時を基準に、所定の送信タイミングで測定データを、前記シリアルバスを介して送信する送信部とを備え、複数台の前記測定モジュールのうち1台の前記送信部は、前記時計部の計時に基づく時刻情報を他の測定モジュールに送信することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記送信部における所定の送信タイミングは、他の測定モジュールの送信タイミングと異なるタイミングとすることができる。また、前記測定モジュールのそれぞれが、前記時計部が計時する時刻に同期して測定を行なう測定部を備えることが望ましい。
【0014】
このデータ収集装置によれば、各測定モジュールが時計部を備え、1台の測定モジュールが送信する時刻情報にしたがって時計部の計時を修正するため、各測定モジュールの時計部が同期することになる。この同期した時計部を基準に所定の送信タイミングで測定データを送信するため、メイン装置を設けることなく、データ送信の衝突を防ぐことができる。また、各測定モジュールが時計部を備えているため、各測定モジュールで時刻に同期した測定を行なえるようになる。
【0015】
また、前記送信部は、前記所定の送信タイミングで、同一の測定データを複数個送信することで、通信の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、単一系統のシリアルバスで接続された複数台の測定モジュールを備えたデータ収集装置において、各測定モジュールのデータ送信を制御するメイン装置を設けることなく、データ送信の衝突を防ぐととともに、各測定モジュールで時刻に同期した測定を行なえるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るデータ収集装置の構成を示す図である。
【図2】測定モジュールの通信に関する構成を示すブロック図である。
【図3】各測定モジュールが測定データを順次送信する様子を示す図である。
【図4】測定モジュールの動作について説明するフローチャートである。
【図5】時刻情報の送信タイミングと測定データの送信タイミングの例を示す図である。
【図6】測定モジュールの通信に関する構成の別例を示すブロック図である。
【図7】メインの測定モジュールが各測定モジュールに測定スタート指示を送信し、応答を受信する例を示す図である。
【図8】メインの測定モジュールから各測定モジュールにポーリングを行なって測定データを収集する例を示す図である。
【図9】各モジュールが順番に送信することで、各モジュールでデータを共有する例を示す図である。
【図10】各モジュールの送信タイミングの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るデータ収集装置の構成を示す図である。本図に示すように、データ収集装置は、複数台の測定モジュールがシリアルバスによって接続されて構成される。本実施形態では、複数台の測定モジュールのうち、1台の測定モジュールが時刻マスタとして機能し、他の測定モジュールに定期的に時刻情報を送信する。
【0019】
各測定モジュールは、時刻を計時する時計部を備え、時刻マスタとなった測定モジュールから送られた時刻情報にしたがって、自身の時計部が計時する時刻情報を修正する。これにより、すべての測定モジュールの時計部が同期することになり、メイン装置からの測定開始指示を受信しなくても、自身の時刻情報を基準に、時刻に同期した測定を行なうことができるようになる。
【0020】
また、各測定モジュールは、自身の時刻情報を基準に、あらかじめ測定モジュール毎に定められた送信タイミングにしたがって送信処理を行なう。具体的には、図3(a)〜(d)に示すように、各測定モジュールが測定データ等の送信を、設定された送信タイミングで順次行なうようにする。これにより、メイン装置がポーリングを行なわなくても、各測定モジュールが、他の測定モジュールと衝突せずに、自主的に測定データ等を送信することができるようになる。
【0021】
したがって、本実施形態では測定開始の指示を行なったり、ポーリングによってデータを収集していたメイン装置を設ける必要がなくなり、各測定モジュールによる処理の分散化を図ることができるようになる。
【0022】
複数の測定モジュールうち、どの測定モジュールが時刻マスタとなるかは、適宜定めることができる。例えば、測定モジュール同士で情報を交換して、最も精度の高い時計部を備えている測定モジュールを時刻マスタとして定めることができる。あるいは、設定されているアドレスが最も小さい測定モジュールを時刻マスタとする等の所定の規則にしたがって定めたり、データ収集装置の管理者があらかじめ定めておくようにしてもよい。
【0023】
図2は、本実施形態に係る測定モジュールの通信に関する機能構成を示すブロック図である。本図に示すように、測定モジュール100は、シリアルドライバ110、送信部120、受信部130、データバッファ140、受信時刻情報格納部150、時計部160、時刻修正部170、測定部180を備えている。これらの機能部は、CPU、メモリ、インタフェース、その他のハードウェアあるいはソフトウェアにより構築することができる。
【0024】
シリアルドライバ110は、他の測定モジュールとシリアルバスを介したデータのやり取りを行なうための処理を行なう。送信部120は、測定データ等の送信処理を行なう。また、時刻マスタとなった測定モジュール100の送信部120は、自身の時計部160が計時する時刻情報の送信処理も行なう。さらに、送信部120は、時刻マスタとなる測定モジュール100を設定したり、測定データ等の送信タイミングを設定したりする送信制御部121を備えている。
【0025】
受信部130は、シリアルバスを介して時刻マスタとなった測定モジュール100から時刻情報を受信したり、他の測定モジュール100からデータを受信する処理を行なう。データバッファ140は、送信部120から送信する測定データや受信部130が受信したデータを一時的に格納する。
【0026】
受信時刻情報格納部150は、時刻マスタとなった測定モジュール100から受信した時刻情報を一時的に格納する。時計部160は、時刻を計時する。時刻修正部170は、時刻マスタとなった測定モジュール100から送られた時刻情報に基づいて自身の時計部160が計時する時刻情報の修正を行なう。測定部180は、測定モジュール100に割り当てられた測定を行なう。このとき、時計部160の計時する時刻情報を基準に、時刻に同期した測定を行なうことができる。
【0027】
次に、上記構成の測定モジュール100の動作について図4のフローチャートを参照して説明する。まず、データ収集装置を構成する複数台の測定モジュール100の中から、時刻マスタとなる測定モジュール100の設定を行なう(S101)。時刻マスタとなる測定モジュール100の設定は、上述のように、測定モジュール100同士が情報を交換する等して行なうことができる。
【0028】
次いで、送信タイミングの設定を行なう(S102)。送信タイミングは、他の測定モジュール100の送信タイミングとぶつからないように、あらかじめ定められた規則にしたがった設定することができる。例えば、アドレスの順に所定の時間間隔で送信タイミングを割り当てることで設定したり、管理者が適宜設定することができる。なお、時刻マスタとなる測定モジュール100や各測定モジュール100の送信タイミングは、規則にしたがって動的に定めるようにしてもよいし、あらかじめ固定的に定めておくようにしてもよい。
【0029】
そして、データ収集装置における通信を開始すると(S103:Yes)、時刻マスタとなった測定モジュール100は(S104:Yes)、所定のタイミングで、自身の時計部160が計時している時刻情報を、シリアルバスを介して他の測定モジュール100に送信する(S105)。所定のタイミングは、例えば、一定の周期毎とすることができる。
【0030】
一方、時刻マスタ以外の測定モジュール100は(S104:No)、時刻マスタとなった測定モジュール100が送信した時刻情報を受信すると(S106)、受信した時刻情報を受信時刻情報格納部150に格納し、受信した時刻情報に基づいて自身の時計部160が計時している時刻情報を修正する(S107)。時刻情報の修正は、例えば、受信した時刻情報と、自身の時計部160が計時している時刻情報との差分を算出することにより行なうことができる。
【0031】
これにより、各測定モジュール100の時計部160の計時する時刻情報が同期することになる。本フローチャートには示していないが、各測定モジュール100の測定部180は、同期した時計部160の計時を基準にして、時刻に同期した測定を行なうことができるようになる。
【0032】
そして、測定モジュール100は、設定された送信タイミングになると(S108:Yes)、シリアルバスを介して測定データを送信する(S109)。送信すべき測定データがない場合は、その送信タイミングにおける送信を行なわないようにしてもよいし、稼働状態であることを示すために何らかのデータを送信するようにしてもよい。
【0033】
測定モジュール100は、以上に示した(S104)〜(S109)の処理を、通信が終了するまで繰り返す(S110)。これにより、周期的に時刻情報の修正が行なわれ、各測定モジュール100は、他の測定モジュール100と衝突せずに測定データの送信を繰り返すことができる。
【0034】
図5は、時刻マスタとなった測定モジュール100の時刻情報の送信タイミングと各測定モジュール100の測定データの送信タイミングの例を示す図である。本図の例では、「0」〜「F」の16台の測定モジュール100が通信を行なう場合について示しており、時刻マスタとなった測定モジュール100は、10mS毎に時刻情報を送信する。「0」〜「F」の16台の測定モジュール100は、他の測定モジュール100と重ならないように送信タイミングが定められ、指定された時刻になると順次測定データを送信する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、データ収集装置において、各測定モジュールのデータ送信を制御するメイン装置を設けることなく、データ送信の衝突を防ぐととともに、各測定モジュールで時刻に同期した測定を行なえるようになる。
【0036】
なお、上記の例では、時刻マスタとなった測定モジュール100は、自身の時計部160が計時する時刻情報を他の測定モジュール100に送信するようにしていたが、SNTP(Simple Network Time Protocol)サーバ等の、外部の時刻に同期する機構を組み入れることで、データ収集装置を外部の時刻に同期させることができるようになる。
【0037】
また、測定データの送信において、通信が失敗したときのリカバリが行なえるように、一回の送信タイミングで、同じ測定データを複数回送信するようにしてもよい。この場合、受信側の測定モジュール100では、1個の測定データを受信すれば足りる。
【0038】
このため、例えば、図6に示すように、受信済データバッファ190を、他の測定モジュール100に対応して設けることで、同一の測定データを複数個受信してしまうことを防ぐことができる。すなわち、同じ測定モジュール100から送信された測定データは1個のみ格納するようにする。ただし、次の送信タイミングで送信された測定データは格納できるようにするために、受信済データバッファ190は、送信タイミングの周期よりも短い間隔で、例えば、時刻マスタとなった測定モジュール100からの時刻情報の受信を契機にクリアするようにする。
【符号の説明】
【0039】
100…測定モジュール、110…シリアルドライバ、120…送信部、121…送信制御部、130…受信部、140…データバッファ、150…受信時刻情報格納部、160…時計部、170…時刻修正部、180…測定部、190…受信済データバッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一系のシリアルバスに接続された複数台の測定モジュールを備えたデータ収集装置であって、
前記測定モジュールのそれぞれが、時刻を計時する時計部と、
前記シリアルバスを介したデータの受信を行なう受信部と、
他の前記測定モジュールから受信した時刻情報にしたがって前記時計部の計時を修正する時計修正部と、
前記時計部の計時を基準に、所定の送信タイミングで測定データを、前記シリアルバスを介して送信する送信部とを備え、
複数台の前記測定モジュールのうち1台の前記送信部は、前記時計部の計時に基づく時刻情報を他の測定モジュールに送信することを特徴とするデータ収集装置。
【請求項2】
前記送信部における所定の送信タイミングは、他の測定モジュールの送信タイミングと異なるタイミングであることを特徴とする請求項1に記載のデータ収集装置。
【請求項3】
前記測定モジュールのそれぞれが、前記時計部が計時する時刻に同期して測定を行なう測定部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のデータ収集装置。
【請求項4】
前記送信部は、前記所定の送信タイミングで、同一の測定データを複数個送信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデータ収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−227795(P2011−227795A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98443(P2010−98443)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】