説明

データ拡散及び仮説検定によるICU患者の記録においてアーチファクトを検出する方法及びシステム

患者をモニタリングする方法は、複数のモニタリングされた信号の各々に対し仮説検定を用いて、前記複数のモニタリングされた信号にアーチファクトが存在しているかを判断する。この仮説検定において、無帰仮説は、前記複数のモニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号のサンプルの組は既定の分布を持つとの仮定を含んでいる。前記方法は、無帰仮説が真である可能性が既定の信頼値以下に下がる場合、前記モニタリングされた信号の1つにアーチファクトが存在し得ると判断する。この方法は、前記患者に関する臨床的に重要な変化をアーチファクトにより生じた変化からフィルタ除去するために、1人以上の患者から多数のデータを処理するためのインテリジェンスモジュールにおいて具現化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にエキスパートシステムに関し、特に患者からのデータを評価するときに使用するためのエキスパートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
健康管理技術(例えば生体用センサ、モニタリングシステム及び医療装置)は、現代の集中治療室(ICU)において完全に普及(装置数)しているのと同様に、機能に関しても素早く進歩している。追加のデータストリームの作成は、重要な“情報過多”の課題を、集中治療用スタッフの危機的な不足にも直面している健康管理スタッフに課し、ICU患者人口の需要を満たしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、集中治療環境又は他の健康管理環境において手動で処理されなければならない情報量を減少させるための方法及び装置を開発するという問題に向けられている。
【0004】
本発明は、インテリジェントモジュールから構成される方法及び装置を提供することによりこの及び他の問題を解決し、これら方法及び装置は、多岐にわたるセンサ及びシステムから発生する多数のデータストリームを吸収することが可能であり、患者の状態に関する臨床的に重要な変化を臨床的に重要ではない変化又はアーチファクトと識別することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様によれば、患者をモニタリングするための方法の例示的な実施例は、モニタリングされた信号にアーチファクトが存在しているかを判断するために、幾つかのモニタリングされた信号の各々に対し仮説検定(hypothesis testing)を使用することを含んでいる。この仮説検定において、無帰(null)仮説は、前記幾つかのモニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号のサンプルの組が既定の分布を持つという仮定を含んでいる。この方法の例示的な実施例は次いで、前記無帰仮説は真であるという可能性が既定の信頼水準以下に下がる場合、前記複数のモニタリングされた信号の1つにアーチファクトが存在し得ると判断する。一般的に、仮説検定は、得られるデータが同様の条件を持つ患者からの歴史的データと一致するかを含んでいる。一致したデータは、同じモニタリングされた信号の歴史的なバージョンに対する、モニタリングされた信号のサンプルの組を含み、この組は高い相関があるモニタリングされた信号である。
【0006】
本発明の他の態様によれば、モニタリングされた信号(S...S)の1つ以上のサンプル(s...s)においてアーチファクトを検出するための方法の例示的な実施例は、
−モニタリングされた信号(S...S)の1つ以上のサンプル(s...s)の各々(s)に対し、各サンプル(s)及び無帰仮定が真であると仮定する他のサンプル(s)を観察する交叉確率(pmk)を計算するステップであり、ここで前記無帰仮定(H)は各サンプル(s)及び各他のサンプル(s)が保存されるバージョンと同じ分布を有するステップ、
−前記交叉確率(pmk)の各々に関連する信頼水準(cmk)を計算するステップ、
−高い相関があるモニタリングされた信号の組の全ての組み合わせに対し、前記計算するステップを繰り返すステップ、
−各サンプル(s)に対し、前記サンプル(s)を含む高い相関がある信号の組と関連する交叉確率(pmk)の全てを合計するステップ、及び
−各サンプルに対する結果を各サンプルにアーチファクトを含まない確率として出力するステップであり、ここで、これらアーチファクトを含まない確率の1つ以上が既定のしきい値よりも下にある場合、前記確率の1つ以上に関連する1つ以上のサンプルがアーチファクトを含み得ることをユーザに示すステップ
を含んでいる。
【0007】
本発明の他の態様によれば、患者をモニタリングするための装置の例示的な実施例は、多数のリード線、メモリ及びプロセッサを含んでいる。これらリード線の各々は、モニタリングされた信号のサンプルを入力する。メモリは前記モニタリングされた信号の前記入力されたサンプルを保存する。プロセッサは前記メモリに結合されると共に、
−モニタリングされた信号各々に対し仮説検定を使用して、アーチファクトがモニタリングされた信号に存在しているかを判断するステップであり、無帰仮説は前記モニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号のサンプルの組は既定の分布を持つという仮定を含んでいるステップ、及び
−前記無帰仮説は真であるという可能性が既定の信頼水準以下に下がる場合、前記モニタリングされた信号の1つにアーチファクトが存在し得ると判断するステップ
を行うようにプログラムされている。前記装置は、有意義な方法でユーザにこの情報を出力するためのユーザインタフェースを含んでいる。
【0008】
本発明のさらに他の態様によれば、前記方法はプロセッサに対する命令として、コンピュータ読み取り可能媒体において符合化されてもよい。
【0009】
本発明の他の態様は、以下の図を考慮して詳細な説明を精査する際、当業者には明白となるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここで“ある実施例”又は“1つの実施例”という如何なる参照も、この実施例と関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも1つの実施例に含まれていることを意味している。本明細書中の様々な場所において“ある実施例において”という用語の存在は必ずしも全て同じ実施例を言及しているものではない。
【0011】
本発明はとりわけ、インテリジェントモジュールから構成されるシステムを使用する方法を提供し、これらモジュールは多岐にわたるセンサ又はシステムから発生する多数のデータストリームを吸収することが可能であり、患者の状態に関する臨床上重要な変化を臨床上重要ではない変化又はアーチファクトと識別することができる。本発明は、データストリームを融合する方法を含み、これはマルチパラメタモニタリング機能を可能にする。
【0012】
本発明のある態様によれば、本発明は統計分析に基づいて所与のモニタリングされた信号(又はモニタリングされた信号の組)におけるアーチファクトを検出する方法も含んでいる。仮説検定は、このモニタリングされた信号がアーチファクト又は臨床上重要な変化の結果であるかを判断するのに使用されることができる。仮説検定は、ある母集団の特性に関する主張が統計上妥当であるかを判断するための手順である。
【0013】
本発明のある態様によれば、仮説検定は、最近得られたデータに1つ以上のアーチファクトが存在しているかを判断するのに使用されることができる。例えば、最近得られたデータは、長期間(又は多数の患者)にわたり得られた同様のデータの分布に従う分布を持つと仮説が立てられる。この仮説が(ある信頼区間内において)真であることが判明した場合、この最近得られたデータはアーチファクトを含んでいない可能性が高く、一方前記仮説が偽である場合、逆の可能性がある。高い相関である信号を2つ一組でこの仮説検定の基礎として使用することにより、増大する信頼がその結果に得られる。
【0014】
多数のモニタリングされた信号(s,s,s,...,s)があると仮定する場合、この信号に対し、全ての信号にアーチファクトの存在に対する標識を持つ必要がある。この処理は、記録されたこれら信号のバンクの中においてオフラインの相関検定を実行することにより始まる。ECG/EEG信号のデータベース源は、公に利用可能であり、容易に得ることができる。結果生じる相関行列は、これら信号の組毎の間における相互依存度の標識を与え、以下の形式
【数5】

となる。
【0015】
ここでr11は、信号sの自分自身との自己相関(r11=1)であり、r1nは信号sとsとの間の相互相関である。これら相互相関値は図1に示されるような統計分析に必要とされる。国立健康研究所は、相互相関値を得ることができる上記データベースを開発している。
【0016】
仮説検定(既定の有意水準、すなわち信頼区間を用いた無帰仮説検定)は、アーチファクトが存在する確率を決めるのに用いられる。仮説検定は、母集団の特性に関する主張が妥当であるかを判断するための手順である。前記無帰仮説は本来の主張である。この場合、無帰仮説は、検討中の信号が同様の信号のデータベースと同じ分布H0を持つことである。
【0017】
代わりの仮説は、前記検討中の信号が同様の信号のデータベースと同じ母集団H1には属していないことである。
【0018】
有意水準は、前記代わりの仮説を優先して前記無帰仮説を棄却することを必要とする確実性の程度に関連する。小さなサンプルをとることにより、その結論に関しては確実ではない。実際に、サンプルが小さいほど、データと他のデータの分布との関係に関する確実性は低くなる。例えば、同様のデータのサンプルの平均値からの幾つかの標準偏差が統計学的な偏差である(すなわち、データは有効であるが、起こる可能性が非常に小さいポイントを単に表し、それにもかかわらず未だ起こることができる)か又はアーチファクトである場合に単一のデータポイントが得られる。しかしながら、幾つかのデータポイントがメインの分布のかなり外側にある可能性が思いもよらず増大するので、データポイントの数が増加するに連れて、そのデータが異常である又はアーチファクトに基づいていることを示す信頼度は増大する。
【0019】
標本結果を観察する確率が有意水準よりも小さい場合、無帰仮説を棄却することを予め決定しなければならない。多くの調査員は、約5%の有意水準を用いる。5%の一般的な有意水準に対し、表記はα=0.05である。この有意水準に対し、前記無帰仮説が実際に真である場合、この無帰仮説を誤って棄却する確率は5%である。このエラーからさらに守られるために、低い値のαが選択されるべきである。
【0020】
前記p値は、前記無帰仮説が真であるという仮定の下で、前記所与のサンプル結果を観察する確率である。このp値がαよりも小さい場合、このとき無帰仮説は棄却されるべきである。例えばα=0.05でありp値が0.03である場合、このとき無帰仮説は棄却される。この逆は真ではない。p値がαよりも大きい場合、このとき前記無帰仮説を棄却する証拠には不十分である。
【0021】
多くの仮説検定機能に対する出力も信頼区間を含んでいる。その期間がここで用いられるので、信頼区間は、真と仮説が行われた数量を含む選択される確率を持つ値の範囲内にある。上述した実施例において、前記標本値は、平均値μに対し95%の信頼区間の内側にある。これは、0.05の有意水準において無帰仮説を棄却することを不可能にするのと同じことである。逆に言えば、100(1−α)の信頼区間がp値を含まない場合、有意水準αにおいて無帰仮説を棄却する。
【0022】
データバンクに保存されるような、調査中のモニタリングされる信号(s,s,s,...,s)の事前検定、及び数1のように相関がある信号の識別に基づいて、あるしきい値を設定し、相関の許容水準を決定する(例えば、40%よりも下の如何なる相関因子rijも棄却する)。調査中の全ての臨床状態(例えば、アンギナ(angina)、出血、脳損傷、肺水腫、脊髄圧迫、代謝コマ(metabolic coma)、呼吸不全等)に(異なる相関行列を生じる)同じ実験を繰り返す。各臨床状態はそれ自身の相関行列を持ち、この状態は、何らかの2つの信号が互いに比較される場合、仮説検定に合格させることの成功を説明している。例えば図1に示されるように、アンギナの場合では、信号s及びsは、ある相関因子r12及びある範囲のp値(例えばpi,j min angina,pi,j min angina)を持ち、これは呼吸不全の場合とは異なっている。現在生成している値が通常の範囲から近づいてくるに連れて、対応する重量は重くなる。これは、公称値により近いp値により多くの重み付けを割り与えることにより測定される。例えば
【数6】

であり、ここでci,jは、信頼因子(累積分布)である。これらの個々の値を合計する場合、調査中の信号がその中にアーチファクトを持たない確率は、
【数7】

である。
【0023】
ここで合計jは、信号iと高い相関がある信号全てに及んでいる。明らかなように、信号iにアーチファクトを有する確率は、(1−Pno artifacts in signal i)である。図1は上記処理のブロック図を示す。
【0024】
図2に戻ってみると、特定の臨床状態に対し治療又は観察されている患者から得られるモニタリングされた信号にアーチファクトが存在しているかを判断するための方法の例示的な実施例が示されている。例えば、モニタリングされた信号は、心電図、呼吸数、心拍数又は患者の健康に関する情報を提供する他の信号とすることができる。この方法は、医療臨床医又はオペレータがアーチファクトとは対照的に、臨床的に重要な変化を含む患者の態様に集中させることができ、これは別々にアドレッシングされる必要がある。アーチファクトの場合、信号線は、データの保全性を検証するためにチェックされる必要があり、これは例えば技術者により遂行されることができる。臨床的に重要な変化の場合、医師又は専門家が適切な応答を決めるために、データの精査を必要としてもよい。
【0025】
ステップ21において、相互相関行列は、
【数8】

であり、これはモニタリングされた信号に対し計算される。この相互相関行列は、同様の臨床的状態の下で、患者から得られるモニタリングされた信号のデータベースから得られる。この行列は、モニタリングされた信号間の関係又は相関を定量的に記載している。これによりrijは、2つのモニタリングされた信号(S及びS)間の相互相関を定量化する。例えば、r11は信号(S)と自分自身との間の相関を表し、それは1である。この行列は、臨床状態毎に変更してもよく、これにより各相互相関行列は、同じ臨床状態である多数の患者から観察された保存されたモニタリングされた信号から得られるべきである。
【0026】
ステップ22において、高い相関がある信号のこれら組が特定される。例えば、0.40又は40%より上の行列における全ての値は、高い相関がある2つの信号を示している。この場合、例えば40%のような既定されるしきい値よりも上の相互相関値を持つこれら信号は、相関が高いと識別される。これらの信号の組は、高い相関がある信号が同様の相関があるサンプルを持つので、データを確認するのに使用されることができる。そのようなサンプルを持たない場合、サンプルが汚染されている可能性が増加する。
【0027】
ステップ23において、最大及び最小確率値は、相互相関の組各々に対するデータベースから決められる。例えば、両方の信号を観察するための最小値は、データベース及び最大値から同様に特定される。
【0028】
ステップ24において、サンプル(s)(興味のあるサンプル)が存在するための各モニタリングされた信号(S)に対し、高い相関があるモニタリングされた信号(S)の1つから、サンプル(s)と一緒にモニタリングされた信号(S)のサンプル(s)を観察する確率が決められる。これらの確率(pij...pik)は、所与の関心のあるサンプルに対し(サンプルが存在する)高い相関の信号全てに対し決められる。例えば、信号S,S及びS(図1示す)は信号Sに関し高い相関性を持ち、次いで交叉確率p12,p15及びp18が決められる。関連する信頼値(cij)も各決められた確率に対し決められ、この場合c12,c15及びc18である。観察される前記モニタリングされた信号の2つのサンプルの確率は、2つのサンプルが同じ且つ既定の確率分布を持つと仮定の下で計算される。例えば、例えばECGIのリード信号のような第1の信号の最初の10分のサンプル、例えばECGIIのリード信号のような第2の信号の次の10分のサンプルを観察する確率は、前記第1及び第2のサンプルが既定の人口分布(例えば通常の分布又はモニタリングされた信号のデータベースと同じ分布)に従うと仮定した下で計算される。これは、コルモゴロフ・スミルノフ検定(Kolmogorov- Smirnov test)を使用して達成される。これは組になったデータサンプルが描かれる人口分布が仮説の分布に従う無帰仮説を検定する。この無帰仮説は、選択した仮説検定により決められるように真である場合、関連する信頼値又は区間と一緒にデータサンプルを観察する確率が生成する。この無帰仮説が前記仮説検定に基づいて真とはなりそうにもない場合、サンプルはアーチファクトで汚染される。
【0029】
ステップ25において、計算される確率は次いで、所与の医療状態に対する確率の範囲を用いて重み付けされる。最終的な結果は、アーチファクトを持たないサンプルの確率である。アーチファクトを持つサンプルの確率は、単に1からこの確率を引いたものである。
【0030】
ステップ26において、重み付けされた確率は、所与のサンプルに対し高い相関がある信号全てにわたり合計される。
【0031】
ステップ27において、各サンプルにアーチファクトを含まない確率として、各サンプルに対する結果を出力する。アーチファクトを含まない確率の1つ以上が既定のしきい値よりも下にある場合、ユーザはこの確率に関連する1つ以上のサンプルはアーチファクトを含み得ると通知される。
【0032】
ステップ28において、前記判断は、より多くのデータが存在する場合に行われ、その場合、新しいサンプルが存在している限り上記処理は常に繰り返される。
【0033】
図3に戻ってみると、本発明の他の態様従って患者をモニタリングするための方法の他の例示的な実施例が示されている。
【0034】
ステップ31において、幾つかのモニタリングされた信号は、前記患者から入力され、これら信号の各々は、患者の健康に関する情報を提供する。これら信号は、EEG信号、ECG信号、ABP信号、呼吸信号、脳波等である。
【0035】
ステップ32において、仮説検定は、複数のモニタリングされた信号の各々に対し用いられ、モニタリングされた信号にアーチファクトが存在するかを判断する。この仮説検定において、無帰仮説は、複数のモニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号のサンプルの組は既定の分布を持つとの仮定を含んでいる。この既定の分布は、モニタリングされた信号の保存されるバージョンの対応する組と同じ分布、又はガウス分布のような幾つかの標準的な確率分布を含んでもよい。前記仮説検定は、前記モニタリングされた信号の各々がアーチファクトを含んでいる確率を発生させる。
【0036】
ステップ33において、前記無帰仮説が真である可能性が既定の信頼水準以下に下がる場合、前記複数のモニタリングされた信号の1つにアーチファクトが存在し得ると判断される。
【0037】
ステップ34において、ステップ32において発生した確率が既定のしきい値を超過している場合、モニタリングされた信号の少なくとも1つはアーチファクトを含み得ることをオペレータに警報するために出力信号が生成される。
【0038】
図4に戻ってみると、医療状態に対しモニタリングされている患者から入力されているデータを処理するための装置が示されている。この装置は、インテリジェントモジュールのシステムの一部であり、これらモジュールの各々が患者からの情報を処理するように、臨床医又は医師がモニタリングされている患者の臨床状態の変化に関して即座に通知又は警報することができる。
【0039】
プロセッサ41は上述した方法を行い、患者からのデータにアーチファクトの存在を識別する。他のモジュールが臨床的に重要な変化を識別してもよく、前記データに存在しているアーチファクトの識別は、アーチファクトにより生じた変化及び患者の状態の変化により生じた変化をフィルタ除去するのに使用されることができる。数千ものサンプルの行列操作を行うことが可能である如何なるプロセッサもここで述べた方法を実行するのに十分であるべきである。ある可能なプロセッサはインテル社のペンティアム(登録商標)プロセッサを含んでいる。
【0040】
1つ以上のリード線45はサンプルをCPU41へ送信する。これらリード線は、標準的なECGリード線、又は患者から他の処理を行うための中央処理セクションへデータを転送する通信システムとすることができる。これらリード線は無線又は有線とすることができる。無線の場合、前記リード線は、単一又は複数のアンテナとすることができる。有線の場合、前記リード線は、複数の信号を搬送する単一のリード線、又は各サンプルに対し単一のリード線とすることが可能である。
【0041】
メモリ43は、プロセッサ41に必要な如何なる情報も保存している。例えば、メモリ43はプロセッサ41をプログラムするための命令を符合化してそこに有するコンピュータ読み取り可能媒体とすることが可能である。メモリ43は、プロセッサ41が先行するサンプルの評価中、サンプルが蓄積されるように、プロセッサ41により後に処理されるために入力するサンプル全てを保存するデータベースとすることも可能である。メモリ43は、例えば前記入力するサンプルをより上手に評価するために、各反復中にますます多くのデータを用いることにより、プロセッサがその分析を微調整するためにサンプルを再使用することができるように、これらサンプルを保存している。50GBのメモリがこの目的に対し十分である。メモリ43は、データが読み取られるだけでなく、書き込みを行うことも可能であるRAM又は他のメモリとすることができる。
【0042】
関心のあるモニタリングされた信号の歴史的なバージョンを保存するデータベース42に結合されるCPU41が示されている。この結合は、CPU41が上述した所望のパラメタをリアルタイムで得ることができるように、実際の通信接続の形式とすることができる。代替的に、この結合は、前記所望のパラメタがデータベース42から得られ、次いでプロセッサにプログラムされる又はメモリ43に保存されている形象描写である。このデータベースの実施例は、上述したようにNIHにより開発されている。
【0043】
ユーザインタフェース44は、患者から入力されるサンプルにアーチファクトが存在する場合、オペレータに通知されるように、プロセッサ41に結合されている。オペレータは、関連する信頼水準と同様に計算された確率も示されることができる。その上、アーチファクトが検出された場合、警報を発することができ、この警報は音響又は視覚的表示器の形式とすることが可能である。
【0044】
本発明の修正及び変更は、上述した説明により網羅されると共に、本発明の意図及び意図する目的から外れることなく添付される特許請求の範囲内にあることは明らかである。上記実施例は確率を合計する前に、これら様々な確率を重み付けするある重み付け技術を論じている一方、他の重み付け技術も同様に用いられることができる。その上、上記実施例がある仮説検定を記載しているのに対し、他の仮説検定が用いられることも可能である。さらに、これら実施例は、特許請求の範囲により網羅される本発明の修正及び変更を制限すると解釈されるべきではなく、可能な変更の単なる例示である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のある態様に従って、多数のデータストリームを処理するための方法の例示的な実施例のブロック図。
【図2】本発明の他の態様に従って、患者をモニタリングするための方法の例示的な実施例のフローチャート。
【図3】本発明のさらに他の態様に従って、患者をモニタリングするための方法の他の例示的な実施例のフローチャート。
【図4】本発明のさらに他の態様に従って、患者をモニタリングするための装置のブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者をモニタリングする方法において、
−複数のモニタリングされた信号の各々に対し仮説検定を用いて、前記複数のモニタリングされた信号にアーチファクトが存在しているかを判断するステップであり、ここで無帰仮説は、前記複数のモニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号のサンプルの組は既定の分布を持つとの仮定を含むステップ、及び
−前記無帰仮説が真である可能性が既定の信頼水準以下に下がる場合、前記複数のモニタリングされた信号の1つにアーチファクトが存在し得ると判断するステップ
を有する方法。
【請求項2】
−前記患者から複数のモニタリングされた信号を入力するステップであり、前記信号の各々は前記患者の健康に関する情報を提供するステップ
をさらに有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記既定の分布は、前記複数のモニタリングされた信号の保存されるバージョンの対応する組と同じ分布を含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記仮説検定は、前記モニタリングされた信号の各々がアーチファクトを含んでいる確率を発生させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記発生した確率が既定のしきい値を超える場合、前記モニタリングされた信号の少なくとも1つはアーチファクトを含んでいることをオペレータに警報するために出力信号を生成するステップをさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数のモニタリングされた信号の1つ以上のサンプルにおいてアーチファクトを検出する方法において、
−前記複数のモニタリングされた信号の前記1つ以上のサンプルの各々に対し、前記サンプル及び無帰仮説が真であると仮定した他のサンプルを観察する交叉確率を計算するステップであり、ここで前記無帰仮説は前記サンプル及び前記他のサンプルが前記複数のモニタリングされた信号の前記サンプルの保存されるバージョンと同じ前記分布を持ち、
−前記交叉確率の各々に関連する信頼水準を計算するステップ、
−前記複数のモニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号の組の全ての組み合わせに対し前記計算ステップを繰り返すステップ、
−サンプル各々に対し、前記サンプルを含んでいる高い相関がある信号の組に関連する前記交叉確率の全てを合計するステップ、及び
−前記サンプルにアーチファクトを含んでいない確率として各サンプルに対する結果を出力するステップであり、ここで、アーチファクトを含んでいない前記確率の1つ以上が既定のしきい値よりも下にある場合、当該確率の1つ以上に関連する1つ以上のサンプルがアーチファクトを含み得ることをユーザに示すステップ
を含む方法。
【請求項7】
−複数の保存されたモニタリングされた信号のデータベースから、前記複数のモニタリングされた信号に対する相関行列
【数1】

を計算するステップであり、ここで、r11は、前記複数のモニタリングされた信号の第1のモニタリングされた信号のそれ自身との自己相関であり、r1nは、前記複数のモニタリングされた信号の前記第1のモニタリングされた信号と、前記複数のモニタリングされた信号の他のモニタリングされた信号との間における相互相関であるステップ
をさらに有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
−モニタリングされた信号の1つ以上の組のどれが既定のしきい値を超えている相互相関を持っているかを決めることにより、前記複数のモニタリングされた信号内において高い相関があるモニタリングされた信号の1つ以上の組を識別するステップ
をさらに有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ノルム(norm)に近いサンプルはより大きく重み付けるように、前記計算された交叉確率の各々を重み付けするステップ
をさらに有する請求項6に記載の方法。
【請求項10】
−所与の臨床状態に対し、前記複数の保存されたモニタリングされた信号の交叉確率の範囲を決めるステップであり、ここで前記重み付けは、前記計算された交叉確率(pmk)の各々を
【数2】

と重み付けすることを含み、ここで、pmk max specific clinical conditionは、1組のモニタリングされた信号の保存されるバージョンからの最大確率値を表し、pmk min specific clinical conditionは、1組のモニタリングされた信号の保存されるバージョンからの最小確率値を表しているステップ
をさらに有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数のモニタリングされた信号の1つ以上のサンプルにおいてアーチファクトを検出する方法において、
−前記複数のモニタリングされた信号の前記1つ以上のサンプルの各々に対し、各サンプル及び無帰仮説が真であると仮定した他のサンプルを観察する交叉確率を計算するステップであり、ここで前記無帰仮説は、前記サンプル及び前記他のサンプルの組み合わされた分布は既定の分布を有しているステップ、
−前記交叉確率の各々に関連する信頼水準を計算するステップ、
−前記複数のモニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号の組の組み合わせに対し前記計算ステップを繰り返すステップ、
−各サンプルに対し、高い相関がある信号の複数の組に関連する複数の交叉確率を合計するステップであり、この信号の各々はサンプルを含んでいるステップ、
−各サンプルに対する結果を、各サンプルにアーチファクトを含んでいる確率として出力するステップであり、前記結果は、各サンプルに対し、1から前記合計を減算することにより得られるステップ、及び
−アーチファクトを含んでいる前記確率の1つ以上が既定のしきい値を超過している場合、前記モニタリングシステムのオペレータに、前記既定のしきい値よりも上にある前記1つ以上の確率に関連する1つ以上のサンプルがアーチファクトを含み得ることを示すステップ
を有する方法。
【請求項12】
信号が患者から入力されている限り、定期的に前記計算、合計及び減算を常に行うステップをさらに有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
−モニタリングされた信号のサンプルを各々入力するための複数のリード線、
−前記モニタリングされた信号の前記入力されたサンプルの各々を保存するためのメモリ、及び
−前記メモリに結合されるプロセッサ
を有する患者をモニタリングする装置において、前記プロセッサは、
−複数のモニタリングされた信号の各々に対し仮説検定を用いて、前記複数のモニタリングされた信号にアーチファクトが存在しているかを判断するステップであり、ここで無帰仮説は、前記複数のモニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号のサンプルの組は既定の分布を持つとの仮定を含むステップ、及び
−前記無帰仮説が真である可能性が既定の信頼水準以下に下がる場合、前記複数のモニタリングされた信号の1つにアーチファクトが存在し得ると判断するステップ
をプログラムされている装置。
【請求項14】
前記プロセッサはさらに、前記モニタリングされた信号の各々がアーチファクトを含んでいる確率を発生させるようにプログラムされる請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記プロセッサはさらに、前記発生した確率が既定のしきい値を超えている場合、前記モニタリングされた信号の少なくとも1つはアーチファクトを含んでいるとオペレータに警報するために出力信号を生成するようにプログラムされる請求項14に記載の装置。
【請求項16】
複数のモニタリングされた信号の1つ以上のサンプルにおいてアーチファクトを検出するための装置において、
−前記複数のモニタリングされた信号の前記1つ以上のサンプルの1つを入力するために結合される1つ以上のリード線、
−前記複数のモニタリング信号の前記入力された1つ以上のサンプルの各々を保存するためのメモリ、及び
−前記メモリ及び前記1つ以上のリード線に結合されるプロセッサ
を有する装置において、前記プロセッサは、
−前記複数のモニタリングされた信号の前記1つ以上のサンプルの各々に対し、各サンプル及び無帰仮説が真であると仮定する他のサンプルを観察する交叉確率を計算するステップであり、ここで前記無帰仮説は、各サンプル及び他のサンプルが前記複数のモニタリングされた信号の前記サンプルの保存されるバージョンと同じ分布を持つことであるステップ、
−前記交叉確率の各々に関連する信頼水準を計算するステップ、
−前記複数のモニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号の組の全ての組み合わせに対し、前記計算ステップを繰り返すステップ、
−各サンプルに対し、各サンプルを含む高い相関がある信号の組に関連する前記交叉確率の全てを、合計するステップ、及び
−各サンプルに対する結果を前記サンプルにアーチファクトを含んでいない確率として出力するステップであり、ここでアーチファクトを含んでいない前記確率の1つ以上が規定のしきい値よりも下にある場合、前記確率の1つ以上に関連する1つ以上のサンプルはアーチファクトを含み得ることをユーザに示すステップ
をプログラムしている装置。
【請求項17】
前記プロセッサはさらに、
−複数の保存されたモニタリングされた信号のデータベースから、前記複数のモニタリングされた信号に対する相関行列
【数3】

を計算するステップであり、ここで、r11は、前記複数のモニタリングされた信号の第1のモニタリングされた信号のそれ自身との自己相関であり、r1nは、前記複数のモニタリングされた信号の前記第1のモニタリングされた信号と、前記複数のモニタリングされた信号の他のモニタリングされた信号との間における相互相関であるステップ
をさらにプログラムする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記プロセッサはさらに、
−モニタリングされた信号の1つ以上の組のどれが既定のしきい値を超えている相互相関を持っているかを決めることにより、前記複数のモニタリングされた信号内において高い相関があるモニタリングされた信号の1つ以上の組を識別するステップ
をさらにプログラムする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセッサはさらに、ノルムに近いサンプルはより大きく重み付けるように、前記計算された交叉確率の各々を重み付け、前記重み付けは、前記計算された交叉確率の各々を
【数4】

と重み付けすることを含み、ここで、pmk max specific clinical conditionは、1組のモニタリングされた信号の保存されるバージョンからの最大確率値を表し、pmk min specific clinical conditionは、1組のモニタリングされた信号の保存されるバージョンからの最小確率値を表す
ようにプログラムされる、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
−複数のモニタリングされた信号の各々に対し仮説検定を用いて、前記複数のモニタリングされた信号にアーチファクトが存在しているかを判断するステップであり、ここで無帰仮説は、前記複数のモニタリングされた信号のうち高い相関があるモニタリングされた信号のサンプルの組は既定の分布を持つとの仮定を含むステップ、及び
−前記無帰仮説が真である可能性が既定の信頼水準以下に下がる場合、前記複数のモニタリングされた信号の1つにアーチファクトが存在し得ると判断するステップ
をプロセッサに行わせるための複数の命令を符号化してそこに有するコンピュータ読み取り可能媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−526029(P2007−526029A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551986(P2006−551986)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050417
【国際公開番号】WO2005/076187
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】