説明

データ検出装置

【目的】 チャネルからの再生信号のジッタの影響を受けずにデータを検出できるようにする。
【構成】 チャネルからの再生信号のサンプルに基づいて、その間の信号値を補間フィルタ部11によって補間し、補間された信号値のうち、再生信号のデータ存在点の位相に一致する信号値をリサンプリング部12によって取り出す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばディジタル磁気記録装置等に使用されるチャネルからの再生信号のデータを検出するデータ検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、チャネルからの再生信号を観測してビタビ復号を行うことにより、再生信号のデータを検出するデータ検出装置が提案されている。ビタビ復号器には、(1)本来のデータ存在時刻(すなわち「0゜位相」)における信号レベル値のサンプル、(2)再生信号に含まれるノイズを平均化した時の0゜位相信号レベル平均値、の2つを与える必要がある。
【0003】このため、データ検出装置は、0゜位相に同期するための位相ロックループ(以下、「PLL」と称す)と、信号レベル平均値追従回路を有しなければならない。そこで、従来は、確率的最急降下アルゴリズムにより、サンプリング位相とゲインを制御することにより、上記2つの機能を実現している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来のデータ検出装置においては、入力再生信号のジッタにより、サンプリング位相が揺らぎ、ビタビ復号器や後段のデコーダ等のディジタル回路が、この揺らぎに従って動作せざるを得ない。従って、特に、高速動作する回路の設計が難しく、またLSI化した回路のテストが困難である等の問題点があった。
【0005】本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、チャネルからの再生信号のジッタの影響を受けずに再生信号のデータを検出できるデータ検出装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のデータ検出装置は、チャネルからの再生信号をサンプリングしてサンプルを出力するサンプリング回路と、このサンプリング回路から出力されるサンプルに基づいて、その間の信号値を補間する補間器(例えば、実施例の補間フィルタ部11)と、この補間器によって補間された信号値のうち、再生信号のデータ存在点の位相に一致する信号値を取り出す抽出手段(例えば、実施例のリサンプリング部12)とを備えることを特徴とする。
【0007】
【作用】上記構成の本発明のデータ検出装置においては、サンプリング回路が、チャネルからの再生信号をサンプリングしてサンプルを出力し、補間器が、サンプリング回路から出力されるサンプルに基づいて、その間の信号値を補間し、抽出手段が、補間器によって補間された信号値のうち、再生信号のデータ存在点の位相に一致する信号値を取り出す。従って、全ての処理を、ジッタを含む再生デ−タとは同期しない固定クロックに基づいて行うことができるので、チャネルからの再生信号のジッタの影響を受けずに再生信号のデータを検出できる。
【0008】
【実施例】図1は、本発明のデータ検出装置の一実施例の構成を示す。この実施例の説明に入る前に、本発明を利用できるディジタル磁気ディスク記録再生装置について説明する。
【0009】図10は、データの流れから見たディジタル磁気ディスク記録再生装置を示すブロック図である。ホストコンピュータ80からハードディスクドライブ(HDD)サブシステム90にデータを記録する場合には、まず、ホストコンピュータ80からバスインターフェースを介してHDDサブシステム90内部のコントローラ91にデータが送られ、コントローラ91はこのデータを磁気ディスクに記録できるフォーマットにあてはめ、さらに磁気記録再生チャネルに適合する変調を施して、記録アンプ92に送る。記録アンプ92はヘッドディスクアセンブリ93内部の磁気ヘッドに記録電流を流して、データの記録が行われる。なおヘッドディスクアセンブリ93は、データを記録する磁気ディスク、記録再生ヘッド、ヘッド移動機構およびスピンドルモータ等からなる機構ブロックである。
【0010】データを再生する場合は、ヘッドディスクアセンブリ93において磁気ディスク上の記録磁化パターンが磁気再生ヘッドにより読み出され、再生アンプ94により再生信号として増幅され、データ検出装置95において、ディジタルデータに戻される。このディジタルデータは、さらにコントローラ91でチャネル変調の復調やフォーマットの解除が行われ、バスインターフェースを介してホストコンピュータ80に送られる。
【0011】本発明は、図10の磁気記録再生装置のうちデータ検出装置95において利用可能なものである。
【0012】本発明を利用できるデータ検出装置95は、例えば、図11に示されているように、再生アンプ94の出力を受けてエンベロープレベル一定の信号を出力するアナログAGCアンプ100と、このアンプ100の出力信号をディジタル信号に変換するA/D変換器101と、この変換器101の出力信号を等化するトランスバーサル型等化器(FIRフィルタ)102と、この等化器102の出力Skを受けて0゜位相クロックを抽出して、0゜位相データすなわちデータ存在点の位相Pkを出力するディジタルPLL回路103と、等化器102の出力およびディジタルPLL回路103の出力を受けて、データ存在点(0゜位相)における信号振幅レベルS0kを出力する0゜位相サンプル値補間器104と、この補間器104から出力される信号振幅レベルS0kに基づいて、最尤復号を行ってデータ判定を行い、検出データdkを出力するビタビ復号器105とを含んで構成される。
【0013】補間器104の出力S0kは、サンプリング間隔Tsに1回ずつ出力されるので、平均して2サンプルに1つしか0゜位相に該当しない。補間器104の出力S0kが、データ判定対象となる0゜位相振幅レベル値か否かを示す信号として、ディジタルPLL回路103から有効信号Vkが、ビタビ復号器105に供給される。ビタビ復号器105は、Vk=1となる時刻においてのみ、データ判定動作を行えば良い。
【0014】データ検出装置95においては、A/D変換器101以降全ての回路がディジタル信号処理を行う。また、データ検出の動作速度は、通常10Mbits/sec以上の高速である。従って、回路規模を小さくするためには、装置内部の各部の信号データ表現を固定小数点にするのが一般的であり、かつ信号語長を必要最小限に抑えることが必要である。ところが、信号語長を短くすると、装置各部で表現できる信号のダイナミックレンジが小さくなり、再生信号レベルに大きな変動があると、オーバフローが生じてしまう。アナログAGCアンプ100は、再生信号レベルをほぼ一定に保ち、データ検出装置95内部のオーバフローを防止する。
【0015】A/D変換器101は、AGCアンプ100からのアナログ再生信号をチャネルビットレートの定数倍のサンプリング周波数fsでサンプリングし所定の信号語長に量子化する。実施例は、最も簡単な場合であるサンプリング周波数fsがチャネルビットレートの2倍の場合である。
【0016】等化器102は、磁気記録チャネルの帯域制限特性などによる符号間干渉を除去する。例えばトランスバーサル型などの線形等化器を使用してディジタル信号処理回路で実現できる。
【0017】ディジタルPLL回路103は、固定クロックでサンプリングされた信号サンプル値Skに基づいて、データ存在点の位相Pkに同期する回路である。ディジタルPLL回路103については、特願平3−306643号に詳しく開示されているので、ここでは、図1212に概略的構成を示し、簡単に説明するだけにとどめる。
【0018】図12を参照するに、瞬時位相計算部110から説明する。瞬時位相計算部110は、入力として、時刻t=kTsにおけるPRSチャネル再生信号のサンプル値Skを受ける。瞬時位相計算部110は、入力信号データとは非同期に固定クロックでサンプリングされた連続する2つの信号サンプル値に基づいて、信号サンプルSkの存在時刻t=kTsからさかのぼって当該第kタイムスロット内の信号波形ゼロクロス点(0゜位相の候補)までの時間である瞬時位相ΔPkを出力する。単位は、量子化位相数である。
【0019】瞬時位相ΔPkは、位相値0を持つ0゜位相から時刻kTsまでの距離であると同時に、時刻t=kTsが位相上でどの値を持つかを表す。ここで位相上では、360゜がデイジタル値2NPLLに相当する。また、1タイムスロット幅の時間Tsは、位相上では180゜に相当し、量子化位相数を単位とすると2NPLL-1に相当する。
【0020】瞬時位相ΔPkは、連続する2つの信号サンプル値SkとSk-1間の信号波形が直線近似できるものと仮定し、(式1)を使用して求める(図13参照)。
【0021】
【数1】


【0022】ただし、2NPLL-1は、1サンプル間隔の位相量子化数である。なお、Sk-1=Skの場合は、分母が0となる問題が発生するが、実は、零交差が存在せずPLL位相更新が行われないので、ΔPkを計算する必要はない。
【0023】瞬時位相ΔPkは、NPLL(図13の例では、5)ビットの位相データΔPkとして、ANDゲート111を介してディジタル信号処理型PLL113に入力される。
【0024】次に、0゜位相対応瞬時位相データ選出部112について説明する。瞬時位相ΔPkは、信号波形がゼロクロスする場合には、常に計算されるものである。従って、チャネル符号法によっては、本来のデータが存在する0゜位相ではない点において計算されたものである場合がある。例えば、図14に示すようアイパターンを呈するチャネル符号化の場合には、全てのゼロクロス点が0゜位相に対応するが、図15に示すようアイパターンを呈するパーシャルレスポンス(以下、PRSと称す)(1,0,1)の場合等では、0゜位相以外にも逆位相でゼロクロスする場合がある。従って、何らかの手段によって、真の0゜位相における瞬時位相計算出力だけを選別なければならない。このため、例えばPRS(1,0,1)の場合には、3値レベル予測部112Aによって仮データを検出し、位相制御信号生成部112Bが、仮データに基づいて0゜位相と判定した瞬時位相ΔPkに対して位相制御信号modifiy_Pkを出力する。これにより、選別された瞬時位相ΔPkのみが、ANDゲート111を介してディジタル信号処理型PLL回路113に供給可能となる。
【0025】次に、ディジタル信号処理型PLL回路113について説明する。このPLL回路113は、ディジタル信号処理で実現した1次位相同期ループであり、入力された瞬時0゜位相に追従するべく、内部位相データPkを更新していく。ディジタル信号処理型PLL回路113は、ディジタルループフィルタ115と、このフィルタ115から出力される位相データPkを1サンプリング時間間隔遅延させて内部位相データPk-1を出力する内部位相レジスタ116と、このレジスタ116から出力される内部位相データPk-1と、ANDゲート111から供給される瞬時0゜位相とを加算する加算器114とを含んで構成される。位相更新規則は、(式2)に示す通りである。
【0026】
【数2】


【0027】図13に示されているように、k番目のタイムスロット((k−1)Ts<t≦kTs)は、2NPLL-1個の量子化位相に仮想的に分割されている。時刻の推移に従って、各量子化位相値は、モジュロ(2NPLL)(すなわちmodulo(2NPLL))でインクリメントしていく。ディジタルPLL回路103の出力位相Pkは、サンプリング時刻t=kTs(第kタイムスロットの終端時刻)の位相であり、0゜位相時刻での位相値は0である。従って、Pkは、固定サンプリング時刻t=kTsから0゜位相点までの時間(量子化位相単位での距離)を表す。ところで、サンプリングレートは、チャネルデータレートの2倍なので、平均して2タイムスロットに1回しか0゜位相データは存在しない。よって、ディジタルPLL回路83から、0゜位相データの有無を示す有効信号Vkが、次の(式3)に従って生成される。
【0028】
【数3】


【0029】0゜位相データPkおよび有効信号Vkは、0゜位相データ存在点のタイムスロット内における位置を示すデータとして、0゜位相サンプル値補間器104に供給される。
【0030】次に、本発明によるデータ検出装置の実施例すなわち0゜位相サンプル値補間器104の実施例の動作原理および構成について説明する。
【0031】本発明のデ−タ検出装置では、等化、位相同期など全ての処理が、再生デ−タとは非同期のサンプルに基づいて行われる。このため、等化後サンプル系列から、補間によりデ−タ判定に必要な0゜位相信号値を計算する。補間器には、オーバーサンプリング補間フィルタを用いた方法を採用する。
【0032】まず、等化器出力サンプルを2NPLL-1倍ゼロ詰めオ−バ−サンプリングする。このオ−バ−サンプル系列を、カットオフ周波数がfs/2の直線位相FIR−LPF(ローパスフィルタ)で補間フィルタリングすれば、各量子化位相における信号レベルが計算できる。これら量子化位相のうちどれかが0゜位相であるので、そこにおける補間後信号サンプルのみをリサンプリングして、ビタビ復号器105等のデ−タ判定器に供給する。
【0033】実際には、全ての量子化位相において補間フィルタリングをする必要はなく、デ−タ判定に必要な0゜位相においてのみ、補間フィルタリング演算を行うのみでよい。
【0034】本発明の本質的特徴は、等化、位相同期など全ての処理がジッタを含む再生デ−タとは同期しない固定クロックにもとづいて行われることである。そのため殆どの場合、等化出力サンプルは、本来の再生デ−タとして意味のある0゜位相サンプルには一致しない。ところが、最終段でのビタビ復号等のデータ判定のためには、0゜位相における等化後信号サンプルが必要である。
【0035】サンプルと0゜位相との関係は、図16に示されている。ここで、何らかの計算手段によって、当該タイムスロットの前後の複数サンプルと0゜位相指示値Pkに基づき、0゜位相での信号サンプル値を求める必要がある。
【0036】0゜位相サンプル値補間を行うための手法としては、Newton補間公式を用いる方法などが考えられるが、次数が小さい場合には、補間精度が良くないといわれている。
【0037】そこで、ディジタルオ−ディオ機器などで用いられているサンプリングレ−ト変換器にヒントを得て、オ−バ−サンプリングフィルタを応用する方法を発明した。ここで必要なのはサンプリングレ−ト変換ではなく、いわばサンプリング位相変換であるが、周波数変化の積分が位相変化であることから分かるように、両者は、同一事象を異なる見地から眺めているだけである。よって、同一原理が適用できる。また、実質的にディジタル磁気記録再生信号は帯域制限されていると見なせるので、ディジタル信号処理理論に基礎を置く本方法が適当と言える。
【0038】図1は、本発明のデータ検出装置の一実施例の構成を示し、図2は、図1の実施例の動作例を示し、図3は、図1の実施例の各部の信号のパワースペクトラム密度の例を示す。
【0039】オ−バ−サンプリング部10は、入力信号サンプルを本来のサンプルレ−トfsの2NPLL-1倍の速度で0詰めオ−バ−サンプリングする。これにより、図2R>2(b)の波形が得られる。本来の入力サンプルの存在点以外のサンプルは0であり、実質上は、入力サンプル系列と変わらない。このスペクトラムは、図3(a)に示されているように、周波数軸上を周期fsで繰り返す。
【0040】補間フィルタ部11は、2NPLL-1・fsのクロックで動作するFIR−LPFであり、オーバーサンプリング部10の出力に対して補間フィルタリングを行う。これにより、0詰めされていた点のサンプル値が計算され、補間される。時間軸上では、図2(c)に示されるインパルス応答が、オ−バ−サンプル後系列の非0サンプルに畳み込みされ、図2(d)に示されている補間後サンプル列となる(図2(d)では、見安くするため、離散サンプル列を連続表現している)。
【0041】図2(a)の入力系列から見て図2(d)の補間出力系列が遅延しているのは、補間フィルタ部11の群遅延によるものである。遅延量はインパルス応答長の1/2である。
【0042】図3(b)に示されているように、補間フィルタ部11は、周期fsで繰り返す入力信号スペクトラムをカットオフ周波数f/2のLPFで、切り取るように動作する。 以上で、入力サンプル系列の間のサンプル点が補間され、サンプリング周波数が見かけ上2NPLL-1倍に上げられた系列が作られることになる。
【0043】次に、リサンプリング部12について説明する。補間後系列のサンプルのうちのどれかが、0゜位相サンプルである。これは平均して2Ts[Sec]に1つ存在する(ここで、1Ts=1/fs)。すなわち、2NPLL個の補間後サンプルのうち、平均して1つである。どれが0゜位相サンプルかは、ディジタルPLL回路(D3PLL)103の出力する位相Pkにより各タイムスロットTs毎に指示される。そこで、位相Pkにおける補間後サンプルをリサンプリングしてやれば、ビタビ復号器105に必要な0゜位相サンプルが得られる(但し、Pkはアナログ量としての真の0゜位相を1Ts当たり、2NPLL-1個に量子化したものである。よって厳密には、補間により得られるのは、真の0゜位相デ−タ振幅値にもっとも近い量子化位相サンプル値である。)。リサンプリング部12の出力は、D型フリップフロップ13のD入力に供給される。
【0044】リサンプリングにより、周波数軸上スペクトラム分布は変化する。リサンプリング周期は、ジッタによる再生信号のチャネルビットレ−ト変動により、固定クロックのTsよりも短くなったり、長くなったりする。今、リサンプリング周波数が少し高くなり、fs+Δfになると、図3(c)に示すように、スペクトラム分布は引き延ばされたようになる。リサンプリング周波数が少し低くなったときは、図3(d)に示すように、スペクトラム分布が逆に圧縮される。
【0045】次に、リサンプリングを考慮した補間計算簡略化について説明する。これまで、原理に忠実に補間原理を述べてきた。しかし、実際には補間フィルタ部11は、0詰めされた、殆どのものが0のサンプル系列を対象に畳み込み演算を行うわけであり、値が0のサンプルに対する演算を省略すれば、計算量をかなり減らせる。
【0046】今、図4の補間原理ブロック図に示すように記号を付ける。時間インデックスi,j,kの関係は、図5に示されている。kは、A/D変換器101のサンプリングクロック(すなわちデータ検出装置95全体のマスタ−クロック)に対応し、iおよびjは、1タイムスロット内部にディジタルPLL回路103により仮想的に設定されている量子化位相に対応する時刻である。
【0047】まず、補間原理の各処理ステップにおける信号サンプルの関係を以下に数式表現する。
【0048】[ステップ−1]0詰めオーバーサンプリング入力信号サンプルの存在時刻のみ、非0サンプルが出力され、その他の時刻では0が詰められるので、
【0049】
【数4】


【0050】
【数5】


【0051】[ステップ−2]補間フィルタリング0詰めオ−バ−サンプリングされたサンプル系列xiに対して、補間フィルタ部11のインパルス応答hiが畳み込みされる。補間フィルタ部11の次数を偶数Nとする時、
【0052】
【数6】


【0053】ここで、HはN次インパルス応答ベクトルであり、Xはオ−バ−サンプル後信号サンプルベクトルである。
【0054】
【数7】


【0055】
【数8】


【0056】[ステップ−3]リサンプリング1タイムスロットにおいて、Skの存在時刻kからさかのぼって0゜位相サンプルS0kに至るまでの距離(時間差あるいは位相差)がPkである。これは、ディジタルPLL回路(D3PLL)103の出力位相である。リサンプル部12は、Pkの値に従って補間フィルタ出力系列から、0゜位相サンプルS0kを選び出し、出力する。
【0057】
【数9】


【0058】[補間演算の簡略化]実際には、0゜詰め後のサンプルxi=0の場合は、補間フィルタリング演算(式7)における係数乗算と累加算は不要だから、演算は大幅に簡略化される。(式6)と(式9)より、リサンプリング後の0゜位相サンプルは、(式10)で示されるようになる。
【0059】
【数10】


【0060】ここで、(式5)よりx(2NPLL-1・k−Pk−i)は、2NPLL-1・k−Pk−iが2NPLL-1の整数倍である時を除き、0である。すなわち、ある整数nに対して、
【0061】
【数11】


【0062】よって、iが次の条件を満たす時のみ、係数hiの乗算を行えば良い。
【0063】
【数12】


【0064】この時、オ−バ−サンプル後信号サンプルxは、入力サンプルSnに等しくなる。
【0065】
【数13】


【0066】以上から、補間原理の3ステップは、次の1ステップに集約することができる。
【0067】
【数14】


【0068】当該タイムスロット(k=0)にのみ着目すると、補間出力を得るのに必要な演算は、次の(式15)のようになる。
【0069】
【数15】


【0070】従って補間演算は、N次FIRフィルタ係数ベクトルhを2NPLL-1毎に間引いたものを入力信号サンプルに畳み込むだけで良い。ここで、間引きの位相が、Pkにより指示される。すなわち補間器は、図6に示されるように、係数ベクトルhを位相データPkに基づいて選択するスイッチ20と、スイッチ20の出力hPkと入力信号ベクトルSとの内積演算手段21とを含むN/(2NPLL-1)次のリアルタイム可変係数FIRフィルタに簡略化することができる。
【0071】[簡略演算のためのハ−ドウエア構成](式15)を実行するための補間ハ−ドウエアは、リアルタイムに係数ベクトルhが入れ換えられるFIRフィルタであれば良い。係数ベクトルhのセットは、補間フィルタ部11の設計が終われば直ちに与えられ、後で変更する必要はない。よって、各タップ係数をROMテ−ブルに記憶させ、位相デ−タPkにより各ROMテ−ブルのアドレスを一斉に切り換えれば良い。
【0072】図7は、(式15)の簡略化補間演算を実行するハ−ドウエア構成例を示す。パラメ−タは、次のように設定した。
N=128,NPLL=5,2NPLL-1=162NPLL-1種類の係数を記憶するROMテ−ブルにより、FIRフィルタの各タップ係数が与えられる。各ROMに記憶されるデ−タすなわち出力係数を図8に示す。各ROMに記憶されるデータは、原理上のN次FIRフィルタのインパルス応答を、長さ2NPLL-1=16ずつ切り取ったものである。各ROMのアドレスは、ディジタルPLL回路(D3PLL)103から与えられる位相デ−タPkに従って一斉に切り替えられ、補間と同時にリサンプリングが行われる。ここで、Pkは各タイムスロットにおいて変化する可能性があり、係数ROMアドレスも各タイムスロット内で切り替えが可能でなければならない。
【0073】また、デ−タの存在する0゜位相は、平均して2タイムスロットに1回しか存在しない。0゜位相が存在しないスロットでは、Pkは当該時刻kから隣のスロットに存在する0゜位相S゜k-1までの距離(量子化位相数)を表現しており、その値はPk-1+2NPLL-1である。ここでディジタルPLL回路(D3PLL)103からは、あるスロットにおける0゜位相の有無を示すために有効信号Vkが出力されている。0゜位相が存在しない(Validでない)スロットに対しても補間フィルタは動作しているため、補間出力が得られる。そのためには、次の場合分けを行って正しいアドレスAkを計算すれば良い。
【0074】
【数16】


【0075】図7のブロック図においては、(式16)の計算を実行するために、定数器42が2NPLL-1を発生し、加算器41が定数器42の出力2NPLL-1とPkとを加算し、スイッチ43が、有効信号Vkに従って、加算器41の出力と、Pkとを切り換えて出力するように構成されている。しかし、実際のディジタルハードウェアにおいては、このアドレス計算は、単にPkのMSBを無視するだけでよく、特にハードウェアは不要である。
【0076】図7のブロック図の他の部分について説明すると、縦続接続された7つの遅延回路31、32、33、34、35、36および37は、入力Skに対してそれぞれ1タイムスロットずつ遅延させる。ROM51、52、53、54、55、56、57および58は、それぞれ、スイッチ43から供給されるアドレスに対応したデータすなわち係数を出力する(各係数については、図8参照)。乗算器61は、入力Skと、ROM51の出力係数とを乗算し、乗算器62は、遅延回路31の出力と、ROM52の出力係数とを乗算し、乗算器63は、遅延回路32の出力と、ROM53の出力係数とを乗算し、乗算器64は、遅延回路33の出力と、ROM54の出力係数とを乗算し、乗算器65は、遅延回路34の出力と、ROM55の出力係数とを乗算し、乗算器66は、遅延回路35の出力と、ROM56の出力係数とを乗算し、乗算器67は、遅延回路36の出力と、ROM57の出力係数とを乗算し、乗算器68は、遅延回路37の出力と、ROM58の出力係数とを乗算する。加算器71は、乗算器61と62の出力を加算し、加算器72は、乗算器63の出力と加算器71の出力を加算し、加算器73は、乗算器64の出力と加算器72の出力を加算し、加算器74は、乗算器65の出力と加算器73の出力を加算し、加算器75は、乗算器66の出力と加算器74の出力を加算し、加算器76は、乗算器67の出力と加算器75の出力を加算し、加算器77は、乗算器68の出力と加算器76の出力を加算してS0kを出力する。
【0077】無効(Invalid)なスロットに対して補間演算しても、それはデータ判定には使用されない。その意味で、補間器の演算の約1/2は、冗長である。これは、本発明の原理上、隣接する2つのタイムスロットが有効(Valid)である場合が存在するためである。この冗長度は、ビタビ複合器105等のデータ判定器内に設けられたFIFOバッファによって取り除かれる。
【0078】図9は、図1の実施例と、図11のディジタルPLL回路103との連係動作例を示す。図9(a)は、ディジタルPLL回路103および0゜位相サンプル値補間器104への入力信号のアナログ表現である。ビットレートがPLLの中心周波数(固定周波数のサンプリングレートの1/2)よりも4%ほど低い場合に相当する正弦波である。これを固定クロックでサンプリングして得られたサンプルSkが、図9(b)に示されている。
【0079】ディジタルPLL回路103は、図9(b)に示されたSkから瞬時位相ΔPkを計算する。瞬時位相ΔPkは、図9(d)に示されているように、入力信号周波数が低いため、瞬時位相ΔPkは、時間の経過とともに、modulo(16)で小さくなり、のこぎり波状に変化する。ディジタルPLL回路103は、内部位相を修正しつつ、瞬時位相ΔPkに追従し、位相Pkを出力する。図9(f)に示されているように、位相Pkものこぎり波状に変化し、入力信号の位相推移に追従する。
【0080】図9(e)に示されているように、有効信号Vkは、通常、1サンプルおきに有効(Valid)と無効(Invalid)とを繰り返す。これは、平均して2タイムスロットに1回しか0゜位相データ点が存在しないからである。しかし、入力信号がゆっくり変化するのに対応するために、25サンプルに1回は、無効を2回連続させている。
【0081】図9(c)は、0゜位相サンプル値補間器104の出力S0kを示す。図9(c)中、有効なサンプルには、丸印が付されている。これらの出力サンプルは、ほぼ−1,0,+1のいずれかであり、本来の0゜位相データ値と一致している。すなわち、このことは、入力信号周波数とPLL中心周波数とがずれているにもかかわらず、本発明により、正しく位相同期と0゜位相データ値の補間が行われていることを意味する。これに対し、入力サンプルSkにおいては、有効なサンプルが、必ずしも正しいデータ値になっていない。例えば、S10、S12、S14は、データ値−1,0+1と全く一致しない。
【0082】上記実施例においては、データ検出のために、ビタビ復号器を使用したが、単純な閾値との比較によるデータ検出器を使用しても良い。
【0083】上記実施例は、PRS(1,0,−1)に関するものであるが、本発明は、これに限定されず、PRS(1,−1)にも適用できる。
【0084】また、本発明は、ディジタル磁気記録再生装置のほか、ディジタル通信装置等種々の装置に利用できる。
【0085】
【発明の効果】本発明のデータ検出装置によれば、補間器が、サンプリング回路から出力されるサンプルに基づいて、その間の信号値を補間し、抽出手段が、補間器によって補間された信号値のうち、再生信号のデータ存在点の位相に一致する信号値を取り出すようにしたので、データ検出装置内の全ての構成要素ブロックを、同一の固定クロックで同期動作するディジタル信号処理回路で実現できるから、チャネルからの再生信号のジッタの影響を受けずに再生信号のデータを検出できる。また、従来、異なるチップに分割して配置されていたデータ検出装置、ECC復号器、コントローラ、およびインターフェース回路等を、同一LSIチップ上に容易に形成できる。従って、装置全体の小型化および低コスト化を実現できる。また、大規模LSI化の際の設計およびテストが容易となる。さらに、アナログ外付け部品が不要となり、無調整化を図ることができるとともに、経年変化も小さい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のデータ検出装置の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の実施例の動作例を示す波形図である。
【図3】図1の実施例の各部の信号のパワースペクトラム密度の例を示す図である。
【図4】図1の実施例において補間計算の簡略化を行った場合の信号記号の定義を示す説明図である。
【図5】図4の各記号によって示される信号の時間関係を示す説明図である。
【図6】リアルタイム可変係数FIRフィルタを示すブロック図である。
【図7】式15の簡略化補間演算を実行するハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図8】図7の各ROMの出力係数を示す図である。
【図9】図1の実施例と、図11のディジタルPLL回路103との連係動作例を示す波形図である。
【図10】ディジタル磁気ディスク記録再生装置の例を示すブロック図である。
【図11】図10のデータ検出装置95の一構成例を示すブロック図である。
【図12】図11のディジタル位相ロックループ回路103の一構成例を示すブロック図である。
【図13】図11のディジタル位相ロックループ回路103におけるPRS(1,0−1)再生信号波形からの瞬時位相データ検出の原理を示す説明図である。
【図14】信号波形のゼロクロス点が常に0゜位相に対応する一例のアイパターンを示す波形図である。
【図15】PRS(1,0,−1)チャネルからの再生信号の一例のアイパターンを示す波形図である。
【図16】PRS(1,0,−1)チャネルからの再生信号波形における等化出力サンプルと0゜位相データとの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10 オーバーサンプリング部
11 補間フィルタ部
12 リサンプリング部
95 データ検出装置
103 ディジタル位相ロックループ回路
104 0゜位相サンプル値補間器
105 ビタビ復号器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 チャネルからの再生信号をサンプリングしてサンプルを出力するサンプリング回路と、前記サンプリング回路から出力されるサンプルに基づいて、その間の信号値を補間する補間器と、前記補間器によって補間された信号値のうち、前記再生信号のデータ存在点の位相に一致する信号値を取り出す抽出手段とを備えることを特徴とするデータ検出装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図14】
image rotate


【図15】
image rotate


【図3】
image rotate


【図16】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図13】
image rotate


【図12】
image rotate