説明

データ転送制御装置、および、データ転送制御システム

【課題】データ転送時間をより適切に制御することが可能なデータ転送制御装置を提供する。
【解決手段】データ転送制御装置は、複数の送信回路と複数の受信回路との間における転送データの転送を制御する。データ転送制御装置の調停回路は、第1の到達目標時間と第1の送信回路により第1の転送データが送信されてから現在までに経過した第1の経過時間との差である第1の演算値と、第2の到達目標時間と第2の送信回路により第1の転送データが送信されてから現在までに経過した第2の経過時間との差である第2の演算値と、を比較する。調停回路は、第1の演算値と第2の演算値のうち小さい方に対応する第1の転送データまたは第2の転送データの何れか一方を、先に転送し、残りの他方を、後に転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、転送データを転送するデータ転送制御装置、および、データ転送制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送信回路から受信回路まで転送データを転送するためのデータ転送時間を、所望の範囲内に制御する要求がある。
【0003】
通常、送信回路から受信回路まで通信経路の合流地点は多段になっている。このため、データ転送時間を所定の範囲に制御するためには、該通信経路の合流地点毎に調停方法を調整する必要がある。
【0004】
すなわち、データ転送時間の制御は、多段の調停を各送信・受信回路の組に対して総合的に実行される必要がある。また、ある合流地点の調停時の情報は、後段の調停のために伝達されない。
【0005】
したがって、或る送信回路から或る受信回路まで転送データを転送するためのデータ転送時間を適切に制御することができない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−85079
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
データ転送時間をより適切に制御することが可能なデータ転送制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施例に従ったデータ転送制御装置は、複数の送信回路と複数の受信回路との間における転送データの転送を制御する。データ転送制御装置は、第1の送信回路が送信し且つ前段の第1の通信経路を介して入力され第1のリクエストを含む第1の転送データと、第2の送信回路が送信し且つ前段の第2の通信経路を介して入力され第2のリクエストを含む第2の転送データと、の転送順序を調停し、調停した前記転送順序に基づいて、前記第1の転送データと前記第2の転送データとを後段の通信経路に順次転送する調停回路を備える。前記第1の転送データは、前記第1の転送データが前記第1の送信回路から送信されてから第1の受信回路に到達するまでの目標の時間となる第1の到達目標時間を含む。前記第2の転送データは、前記第2の転送データが前記第2の送信回路から送信されてから第2の受信回路に到達するまでの目標の時間となる第2の到達目標時間を含む。前記調停回路は、前記第1の到達目標時間と前記第1の送信回路により前記第1の転送データが送信されてから現在の時刻までに経過した第1の経過時間との差である第1の演算値と、前記第2の到達目標時間と前記第2の送信回路により前記第2の転送データが送信されてから現在の時刻までに経過した第2の経過時間との差である第2の演算値と、を比較する。前記調停回路は、前記第1の演算値と前記第2の演算値のうち小さい方に対応する前記第1の転送データまたは前記第2の転送データの何れか一方を、先に転送し、残りの他方を、後に転送する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施形態に係るデータ転送制御装置100を含むデータ転送制御システム1000の構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すデータ転送制御装置100の調停回路の調停動作の一例を説明するため図である。
【図3】図3は、図1に示すデータ転送制御装置100の調停回路の調停動作の他の例を説明するための図である。
【図4】図4は、図1に示すデータ転送制御装置100の調停回路の調停動作のさらに他の例を説明するための図である。
【図5】図5は、図1に示すデータ転送制御システム1000において、送信回路と受信回路との間で適用されるクロック信号の周波数が、複数存在する場合の一例を示す図である。
【図6】図6は、転送データの転送対象、送信回路、および、受信回路の具体例を示す図である。
【図7】図7は、図6に示す具体例をデータ転送制御システム1000に適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施形態に係るデータ転送制御装置100を含むデータ転送制御システム1000の構成の一例を示す図である。なお、図1では、送信回路と受信回路との間に、調停回路が最大3段繋がっている構成が記載されているが、4段以上調停回路が繋がっていても、本実施形態は同様に説明される。また、さらに多くの送信回路、受信回路を有する場合も、本実施形態は同様に説明される。
【0012】
図1に示すように、データ転送制御システム1000は、複数の送信回路SC1〜SC5と、複数の受信回路RC1、RC2と、複数の調停回路AD1〜AD5と、複数の通信経路CP1〜CP18と、を備える。なお、図1では、これらの構成以外は、簡単のため、省略されている。
【0013】
このデータ転送制御システム1000は、複数の送信回路SC1〜SC5と複数の受信回路RC1、RC2との間における転送データ(パケット)の転送を、多段構成の調停回路AD1〜AD5により制御するようになっている。なお、各転送データは、それぞれの転送データが送信回路から送信されてから受信回路に到達するまでの目標の時間となる到達目標時間を含んでいる。このように、転送データに到達目標時間が付加されているため、通信経路内のどこでも到達目標時間は参照されることができる。
【0014】
このデータ転送制御システム1000は、例えば、送信回路のリクエストに応じて受信回路から音楽データ等の電子データを読み出し、または、受信回路に音楽データ等の電子データを記憶するオーディオ機器等の電子機器に適用される。
【0015】
各送信回路SC1〜SC5は、リクエスト(例えば、リードコマンド、リードレスポンス、ライトコマンド、ライトレスポンス等)を含む転送データをそれぞれ送信するようになっている。
【0016】
各通信経路CP1〜CP18は、前段側から転送された該転送データを、それぞれ後段側に転送するようになっている。
【0017】
各調停回路AD1〜AD5は、入力された複数の転送データの転送順序を調停し、調停した転送順序に基づいて、該転送データを後段の通信経路に順次転送するようになっている。
【0018】
これらの調停回路AD1〜AD5は、複数の送信回路SC1〜SC5と複数の受信回路との間における転送データの転送を制御するデータ転送制御装置100を構成する。
【0019】
また、各受信回路RC1、RC2は、転送された該転送データを受信するようになっている。
【0020】
次に、以上のような構成を有するデータ転送制御装置100の動作の一例について説明する。
【0021】
図2は、図1に示すデータ転送制御装置100の調停回路の調停動作の一例を説明するため図である。この図2の例では、簡単のため図1の調停回路AD3の動作の一例に注目して説明するが、他の調停回路の動作も同様に説明される。また、図2の例では、2つ転送データを受信する受信回路が異なる場合について説明しているが、2つの転送データを受信する受信回路が同じ場合も同様に説明される。
【0022】
図2に示すように、例えば、調停回路AD3は、送信回路SC1が送信し且つ前段の通信経路CP5を介して入力されリクエストR0を含む転送データTD0と、送信回路SC3が送信し且つ前段の通信経路CP6を介して入力されリクエストR1を含む転送データTD1と、の転送順序を調停する。
【0023】
ここで、転送データTD0は、この転送データTD0が送信回路SC1から送信されてから受信回路RC1に到達するまでの目標の時間となる到達目標時間A0(例えば、時間カウント値で“10”)を含む。さらに、転送データTD0は、ここでは、例えば、送信回路SC1により転送データTD0が送信されてから現在の時刻までに経過した経過時間B0(カウント値で“5”)を含む。
【0024】
また、転送データTD1は、この転送データTD1が送信回路SC2から送信されてから受信回路RC2に到達するまでの目標の時間となる到達目標時間A1(例えば、時間カウント値で“20”)を含む。さらに、転送データTD1は、ここでは、例えば、送信回路SC3により転送データTD1が送信されてから現在の時刻までに経過した経過時間B1(時間カウント値で“14”)を含む。
【0025】
先ず、図2に示すように、調停回路AD3は、到達目標時間A0と送信回路SC1により転送データTD0が送信されてから現在の時刻までに経過した経過時間B0との差である第1の演算値(A0(10)−B0(5)=5)と、到達目標時間A1と送信回路SC3により転送データTD1が送信されてから現在の時刻までに経過した第2の経過時間との差である第2の演算値(A1(20)−B1(14)=6)と、を比較する。
【0026】
ここで、該第1の演算値が“5”であり、該第2の演算値が“6”であるので、該第1の演算値の方が小さい。これにより、調停回路AD3は、この該第1の演算値に対応する転送データTD0を、先に転送し、残りの転送データTD1を、後に転送するように転送順序を調停する。
【0027】
そして、調停回路AD3は、調停した該転送順序に基づいて、転送データTD0と転送データTD1とを後段の通信経路CP12、CP13に順次転送する。
【0028】
このように、調停回路AD3は、該第1の演算値と該第2の演算値のうち小さい方に対応する転送データTD0または転送データTD1の何れか一方を、先に転送し、残りの他方を、後に転送する。
【0029】
これにより、調停回路AD3は、到達目標時間までの残り時間がより少ない転送データを、優先して転送することができる。
【0030】
また、図3は、図1に示すデータ転送制御装置100の調停回路の調停動作の他の例を説明するための図である。この図3の例では、図2の例と同様に、簡単のため図1の調停回路AD3の動作の一例に注目して説明するが、他の調停回路の動作も同様に説明される。また、図2の例では、2つ転送データを受信する受信回路が異なる場合について説明しているが、図2の例と同様に、2つの転送データを受信する受信回路が同じ場合も同様に説明される。
【0031】
ここで、転送データTD0は、この転送データTD0が送信回路SC1から送信されてから受信回路RC1に到達するまでの目標の時間となる到達目標時間A0(例えば、カウント値で“10”)を含む。さらに、転送データTD0は、ここでは、例えば、送信回路SC1により転送データTD0が送信されてから現在の時刻までに経過した経過時間B0(カウント値で“5”)を含む。
【0032】
また、転送データTD1は、この転送データTD1が送信回路SC2から送信されてから受信回路RC2に到達するまでの目標の時間となる到達目標時間A1(例えば、カウント値で“20”)を含む。さらに、転送データTD1は、ここでは、例えば、送信回路SC3により転送データTD1が送信されてから現在の時刻までに経過した経過時間B1(カウント値で“15”)を含む。
【0033】
先ず、図3に示すように、調停回路AD3は、到達目標時間A0と送信回路SC1により転送データTD0が送信されてから現在の時刻までに経過した経過時間B0との差である第1の演算値(A0(10)−B0(5)=5)と、到達目標時間A1と送信回路SC3により転送データTD1が送信されてから現在の時刻までに経過した経過時間B1との差である第2の演算値(A1(20)−B1(15)=5)と、を比較する。
【0034】
ここで、該第1の演算値が“5”であり、該第2の演算値が“5”であるので、該第1の演算値と該第2の演算値とは等しい。
【0035】
そこで、調停回路AD3は、このように該第1の演算値と該第2の演算値とが等しい場合、到達目標時間A0に対する経過時間B0の第1の割合(B0(5)/A0(10)=5/10)と、到達目標時間A1に対する経過時間B1の第2の割合(B0(15)/A0(20)=15/20)と、を比較する。
【0036】
ここで、該第1の割合が“5/10”であり、該第2の割合が“15/20”であるので、該第2の割合の方が大きい。これにより、調停回路AD3は、この該第2の割合に対応する転送データTD1を、先に転送し、残りの転送データTD0を、後に転送するように転送順序を調停する。
【0037】
そして、調停回路AD3は、調停した該転送順序に基づいて、転送データTD0と転送データTD1とを後段の通信経路CP12、CP13に順次転送する。
【0038】
このように、調停回路AD3は、該第1の割合と該第2の割合のうち大きい方に対応する転送データTD0または転送データTD1の何れか一方を先に転送し、残りの他方を後に転送する。
【0039】
これにより、調停回路AD3は、到達目標時間までの残り時間が等しい複数の転送データのうち、到達目標時間に対する残り時間の割合が小さい転送データを優先して転送することができる。
【0040】
このように、図3に示す例では、先ず、調停回路AD3は、該第1の演算値と該第2の演算値とを比較する。次に、調停回路AD3は、該第1の演算値と該第2の演算値とが等しい場合に、該第1の割合と該第2の割合とを比較し、該第1の割合と該第2の割合のうち大きい方に対応する転送データTD0または転送データTD1の何れか一方を先に転送し、残りの他方を後に転送する。
【0041】
しかし、調停回路AD3は、先ず、該第1の割合と該第2の割合とを比較し、該第1の割合と該第2の割合のうち大きい方に対応する転送データTD0または転送データTD1の何れか一方を先に転送し、残りの他方を後に転送するようにしてもよい。さらに、調停回路AD3は、該第1の割合と該第2の割合とが等しい場合に、該第1の演算値と該第2の演算値とを比較し、該第1の演算値と該第2の演算値のうち小さい方に対応する転送データTD0または転送データTD1の何れか一方を先に転送し、残りの他方を後に転送するようにしてもよい。
【0042】
また、図4は、図1に示すデータ転送制御装置100の調停回路の調停動作のさらに他の例を説明するための図である。この図4の例では、図2の例と同様に、簡単のため図1の調停回路AD3の動作の一例に注目して説明するが、他の調停回路の動作も同様に説明される。
【0043】
ここで、転送データTD0は、送信回路SC1から受信回路RC1までの転送の間における残りの調停の総回数である第1の残り調停回数E0を含む。なお、この第1の残り調停回数E0は、調停回路で処理される毎に、1回減算される。したがって、第1の残り調停回数E0の初期値は、送信回路SC1から受信回路RC1までの合計の調停回数に相当する。
【0044】
また、転送データTD1は、送信回路SC3から受信回路RC2までの転送の間における残りの調停の総回数である第2の残り調停回数E1を含む。なお、この第2の残り調停回数E1は、調停回路で処理される毎に、1回減算される。したがって、第2の残り調停回数E1の初期値は、送信回路SC3から受信回路RC2までの合計の調停回数に相当する。
【0045】
先ず、図4に示すように、調停回路AD3は、到達目標時間A0と経過時間B0との差である第1の演算値(A0(10)−B0(5)=5)と、到達目標時間A1と経過時間B1との差である第2の演算値(A1(20)−B1(15)=5)と、を比較する。
【0046】
ここで、該第1の演算値が“5”であり、該第2の演算値が“5”であるので、該第1の演算値と該第2の演算値とは等しい。
【0047】
そこで、調停回路AD3は、このように該第1の演算値と該第2の演算値とが等しい場合、第1の調停回数E0と第2の調停回数E1とを比較する。
【0048】
ここで、第1の残り調停回数E0が1回であり、第2の残り調停回数E1が0回であるので、第1の残り調停回数E0の方が多い。これにより、調停回路AD3は、この第1の残り調停回数E0に対応する転送データTD0を、先に転送し、残りの転送データTD0を、後に転送するように転送順序を調停する。
【0049】
このように、調停回路AD3は、第1の調停回数E0と第2の調停回数E1のうち多い方に対応する転送データTD0または転送データTD1の何れか一方を、先に転送し、残りの他方を、後に転送する。
【0050】
なお、調停回路AD3は、転送データTD0および転送データTD1を転送する際に、第1の残り調停回数E0および第2の残り調停回数E1から1回分減算する。
【0051】
このように、図4に示す例では、調停回路AD3は、該第1の演算値と該第2の演算値とが等しい場合に、第1の調停回数E0と第2の調停回数E1とを比較し、第1の調停回数E0と第2の調停回数E1のうち多い方に対応する転送データTD0または転送データTD1の何れか一方を、先に転送し、残りの他方を、後に転送する。
【0052】
しかし、調停回路AD3は、該第1の割合と該第2の割合とが等しい場合に、第1の調停回数E0と第2の調停回数E1とを比較し、第1の調停回数E0と第2の調停回数E1のうち多い方に対応する転送データTD0または転送データTD1の何れか一方を、先に転送し、残りの他方を、後に転送するようにしてもよい。
【0053】
ここで、図2ないし図4に示した転送データTD0の経過時間B0は、前段の調停回路および通信経路の転送時、前段の調停回路AD1、通信経路CP1、CP5内のクロック信号に同期して第1の時間カウント値が加算される。
【0054】
これにより、調停回路AD3に入力された転送データTD0の経過時間B0は、第1の時間カウント値の積算値として表される。
【0055】
同様に、図2ないし図4に示した転送データTD1の経過時間B1は、前段の調停回路AD2、通信経路CP3、CP6の転送時、前段の調停回路AD2、通信経路CP3、CP6内のクロック信号に同期して第2の時間カウント値が加算される。
【0056】
これにより、調停回路AD3に入力された転送データTD1の経過時間B1、第2の時間カウント値の積算値として表される。
【0057】
さらに、調停回路AD3は、処理中の転送データTD0の経過時間B0および処理中の転送データTD1の経過時間B1に、調停回路内AD3のクロック信号に同期して、第3の時間カウント値を加算する。
【0058】
すなわち、調停回路AD3から出力される転送データの経過時間は、入力時の経過時間と、調停回路AD3の処理中に経過した時間に対応する、第3の時間カウント値の積算値と、の和として表される。
【0059】
なお、各通信経路CP1〜CP18は、例えば、論理回路を含む。例えば、それぞれの該論理回路は、時間カウント値を転送データの経過時間に加算するようになっている。
【0060】
ここで、送信回路と受信回路との間で適用されるクロック信号の周波数が、複数存在する場合、転送データの経過時間の統一性の向上を図るために、転送データの経過時間にクロック信号に同期して加算する時間カウント値を補正する必要がある。
【0061】
図5は、図1に示すデータ転送制御システム1000において、送信回路と受信回路との間で適用されるクロック信号の周波数が、複数存在する場合の一例を示す図である。
【0062】
この図5の例では、通信経路CP5(CP5a、CP5b)に、クロック信号CLKの周波数(100MHz)とクロック信号CLKの周波数(200MHz)との境がある。このクロック信号の周波数が異なる境には、クロック信号の周波数を変換するための周波数変換回路FCが設けられている。
【0063】
以下、簡単のため図1の調停回路AD3に注目して説明するが、他の調停回路の動作も同様に説明される。
【0064】
図5に示しように、第3の時間カウント値(C3=“1”)と調停回路内AD3、通信経路CP5bのクロック信号の周波数(200MHz)との積は、第1の時間カウント値(C1=“2”)と通信経路CP1、CP5a、調停回路AD1内のクロック信号の周波数(100MHz)との積と等しくなるように設定されている。
【0065】
なお、図5には示していないが、第3の時間カウント値(C3=“1”)と調停回路内AD3、通信経路CP5bのクロック信号の周波数(200MHz)との積は、同様に、既述の第2の時間カウント値と既述の通信経路CP6内のクロック信号の周波数との積と等しくなるように設定される。
【0066】
このようにして、時間カウント値を補正することにより、転送データの経過時間の統一性の向上を図ることができる。
【0067】
以上のように、図2ないし図4の例では、転送データに経過時間が含まれている。しかし、この経過時間を、転送データが送信回路から送信された時刻である送信時刻と、現在の時刻情報とから該経過時間を算出するようにしてもよい。
【0068】
この場合、例えば、時刻管理回路(図示せず)から送信回路、受信回路、および全ての調停回路に同一の現在の時刻情報が常に配信されるようにする。
【0069】
ここで、例えば、転送データTD0は、経過時間B0に代えて、転送データTD0が送信回路SC1から送信された時刻である第1の送信時刻を含むものとする。さらに、転送データTD1は、経過時間B1に代えて、転送データTD1が送信回路SC2から送信された時刻である第2の送信時刻をむものとする。
【0070】
そして、調停回路AD3は、該第1の送信時刻と現在の時刻との差を経過時間B0として算出し、且つ、該第2の送信時刻と現在の時刻との差を経過時間B1として算出する。
【0071】
これにより、調停回路AD3は、この算出した経過時間B0、B1を用いて、図2ないし図4の例と同様にして、転送データの転送順序を調停することができる。
【0072】
以上のようにして、転送された転送データは、受信回路RC1、RC12により受信される。
【0073】
ここで、例えば、受信回路RC1は、実際に既述の転送データTD0の転送に掛かった実転送時間を送信回路SC1に転送する。なお、この実転送時間は、例えば、受信回路RC1が転送データTD0を受信したときの経過時間B0に相当する。
【0074】
そして、送信回路SC1は、既述の到達目標時間A0が、受信回路RC1から転送された該実転送時間よりも短い場合は、次に送信する転送データTD0の到達目標時間A0を長くする。一方、送信回路SC1は、既述の到達目標時間A0が、受信回路RC1から転送された該実転送時間よりも長い場合は、次に送信する転送データTD0の到達目標時間A0を短くする。なお、送信回路SC1は、既述の到達目標時間A0が、受信回路RC1から転送された該実転送時間と等しい場合は、次に送信する転送データTD0の到達目標時間A0をそのままにする。
【0075】
なお、リクエスト(コマンド)を含む転送データの実転送時間を、受信回路RC1から送信回路SC1へのレスポンスに付加される。また、リクエスト(コマンド)を含む転送データの通信経路とは独立に、受信回路RC1から送信回路SC1に対して実転送時間をフィードバックする経路を設けてもよい。
【0076】
このような受信回路RC1および送信回路SC1の動作は、他の受信回路、送信回路にも同様に適用される。
【0077】
これにより、各転送データの到達目標時間を、実転送時間に近づくように、より適切に設定することができる。
【0078】
ここで、以上のようなデータ転送制御システム1000を適用する具体例について説明する。図6は、転送データの転送対象、送信回路、および、受信回路の具体例を示す図である。また、図7は、図6に示す具体例をデータ転送制御システム1000に適用した例を示す図である。
【0079】
図6、図7に示すように、ケース(1)、(3)では、バスマスタが送信回路に相当し、バススレーブが受信回路に相当し、転送対象であるリクエストがリードコマンド、ライトコマンドに相当する。
【0080】
また、ケース(2)、(4)では、バスマスタが受信回路に相当し、バススレーブが送信回路に相当し、転送対象であるリクエストがリードレスポンス、ライトレスポンスに相当する。
【0081】
また、ケース(5)、(6)では、バスマスタが受信回路に相当し、バススレーブが送信回路に相当し、転送対象であるリクエストがリードレスポンス、ライトレスポンスに相当する。このケース(5)、(6)では、リードコマンド、ライトコマンドの送信からリードレスポンス、ライトレスポンスの受け取りまでを一つの経路として扱う。例えば、バススレーブは、リードデータを送信する場合にリードコマンドを受け取ってからリードレスポンスを送信するまでの時間を、既述の経過時間に加算する。
【0082】
以上のように、本実施例に係るデータ転送制御装置によれば、データ転送時間をより適切に制御することができる。
【0083】
なお、実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。
【符号の説明】
【0084】
100 データ転送制御装置
1000 データ転送制御システム
SC1〜SC5 送信回路
RC1、RC2 受信回路
CP1〜CP18 通信経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信回路と複数の受信回路との間における転送データの転送を制御するデータ転送制御装置であって、
第1の送信回路が送信し且つ前段の第1の通信経路を介して入力され第1のリクエストを含む第1の転送データと、第2の送信回路が送信し且つ前段の第2の通信経路を介して入力され第2のリクエストを含む第2の転送データと、の転送順序を調停し、調停した前記転送順序に基づいて、前記第1の転送データと前記第2の転送データとを後段の通信経路に順次転送する調停回路を備え、
前記第1の転送データは、前記第1の転送データが前記第1の送信回路から送信されてから第1の受信回路に到達するまでの目標の時間となる第1の到達目標時間を含み、
前記第2の転送データは、前記第2の転送データが前記第2の送信回路から送信されてから第2の受信回路に到達するまでの目標の時間となる第2の到達目標時間を含み、
前記調停回路は、
前記第1の到達目標時間と前記第1の送信回路により前記第1の転送データが送信されてから現在の時刻までに経過した第1の経過時間との差である第1の演算値と、前記第2の到達目標時間と前記第2の送信回路により前記第2の転送データが送信されてから現在の時刻までに経過した第2の経過時間との差である第2の演算値と、を比較し、
前記第1の演算値と前記第2の演算値のうち小さい方に対応する前記第1の転送データまたは前記第2の転送データの何れか一方を、先に転送し、残りの他方を、後に転送する
ことを特徴とするデータ転送制御装置。
【請求項2】
前記調停回路は、
前記第1の演算値と前記第2の演算値とが等しい場合、前記第1の到達目標時間に対する前記第1の経過時間の第1の割合と、前記第2の到達目標時間に対する前記第2の経過時間の第2の割合と、を比較し、
前記第1の割合と前記第2の割合のうち大きい方に対応する前記第1の転送データまたは前記第2の転送データの何れか一方を先に転送し、残りの他方を後に転送する
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ転送制御装置。
【請求項3】
前記第1の転送データは、前記第1の転送データが前記第1の送信回路から送信された時刻である第1の送信時刻を含み、
前記第2の転送データは、前記第2の転送データが前記第2の送信回路から送信された時刻である第2の送信時刻を含み、
前記調停回路は、
前記第1の送信時刻と現在の時刻との差を前記第1の経過時間として算出し、且つ、前記第2の送信時刻と現在の時刻との差を前記第2の経過時間として算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のデータ転送制御装置。
【請求項4】
前記第1の転送データは、前記第1の経過時間を含み、前記第1の経過時間は、前記第1の通信経路の転送時、前記第1の通信経路内のクロック信号に同期して第1の時間カウント値が加算されており、
前記第2の転送データは、前記第2の経過時間を含み、前記第2の経過時間は、前記第2の通信経路の転送時、前記第2の通信経路内のクロック信号に同期して第2の時間カウント値が加算されており、
前記調停回路は、
処理中の前記第1の転送データの前記第1の経過時間および処理中の前記第2の転送データの前記第2の経過時間に、前記調停回路内のクロック信号に同期して、第3の時間カウント値を加算する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のデータ転送制御装置。
【請求項5】
前記第3の時間カウント値と前記調停回路内のクロック信号の周波数との積は、前記第1の時間カウント値と前記第1の通信経路内のクロック信号の周波数との積、および、前記第2の時間カウント値と前記第2の通信経路内のクロック信号の周波数との積と等しくなるように設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載のデータ転送制御装置。
【請求項6】
前記第1の転送データは、前記第1の送信回路から前記第1の受信回路までの転送の間における残りの調停の総回数である第1の残り調停回数を含み、
前記第2の転送データは、前記第2の送信回路から前記第2の受信回路までの転送の間における残りの調停の総回数である第2の残り調停回数を含み、
前記調停回路は、
前記第1の演算値と前記第2の演算値とが等しい場合、前記第1の調停回数と前記第2の調停回数とを比較し、前記第1の調停回数と前記第2の調停回数のうち多い方に対応する前記第1の転送データまたは前記第2の転送データの何れか一方を、先に転送し、残りの他方を、後に転送する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のデータ転送制御装置。
【請求項7】
前記調停回路は、
前記第1の転送データおよび前記第2の転送データを転送する際に、前記第1の残り調停回数および前記第2の残り調停回数から1回分減算する
ことを特徴とする請求項6に記載のデータ転送制御装置。
【請求項8】
前記第1の受信回路は、前記第2の受信回路であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のデータ転送制御装置。
【請求項9】
複数の送信回路と複数の受信回路との間における転送データの転送を多段構成の調停回路により制御するデータ転送制御システムであって、
第1のリクエストを含む第1の転送データを送信する第1の送信回路と、
第2のリクエストを含む第2の転送データを送信する第2の送信回路と、
前記第1の転送データを転送する第1の通信経路と、
前記第2の転送データを転送する第2の通信経路と、
前段の前記第1の通信経路を介して入力された前記第1の転送データと、前段の前記第2の通信経路を介して入力され前記第2の転送データと、の転送順序を調停し、調停した前記転送順序に基づいて、前記第1の転送データと前記第2の転送データとを後段の通信経路に順次転送する調停回路と、
前記第1の転送データを受信する第1の受信回路と、
前記第2の転送データを受信する第2の受信回路と、を備え、
前記第1の転送データは、前記第1の転送データが前記第1の送信回路から送信されてから第1の受信回路に到達するまでの目標の時間となる第1の到達目標時間を含み、
前記第2の転送データは、前記第2の転送データが前記第2の送信回路から送信されてから第2の受信回路に到達するまでの目標の時間となる第2の到達目標時間を含み、
前記調停回路は、
前記第1の到達目標時間と前記第1の送信回路により前記第1の転送データが送信されてから現在の時刻までに経過した第1の経過時間との差である第1の演算値と、前記第2の到達目標時間と前記第2の送信回路により前記第2の転送データが送信されてから現在の時刻までに経過した第2の経過時間との差である第2の演算値と、を比較し、
前記第1の演算値と前記第2の演算値のうち小さい方に対応する前記第1の転送データまたは前記第2の転送データの何れか一方を、先に転送し、残りの他方を、後に転送する
ことを特徴とするデータ転送制御システム。
【請求項10】
前記第1の受信回路は、実際に前記第1の転送データの転送に掛かった第1の実転送時間を前記第1の送信回路に転送し、
前記第1の送信回路は、
前記第1の到達目標時間が前記第1の実転送時間よりも短い場合は、次に送信する第1の転送データの第1の到達目標時間を長くし、
前記第1の到達目標時間が前記第1の実転送時間よりも長い場合は、次に送信する第1の転送データの第1の到達目標時間を短くする
ことを特徴とする請求項9に記載のデータ転送システム。
【請求項11】
複数の送信回路と複数の受信回路との間における転送データの転送を制御するデータ転送制御装置であって、
第1の送信回路が送信し且つ前段の第1の通信経路を介して入力され第1のリクエストを含む第1の転送データと、第2の送信回路が送信し且つ前段の第2の通信経路を介して入力され第2のリクエストを含む第2の転送データと、の転送順序を調停し、調停した前記転送順序に基づいて、前記第1の転送データと前記第2の転送データとを後段の通信経路に順次転送する調停回路を備え、
前記第1の転送データは、前記第1の転送データが前記第1の送信回路から送信されてから第1の受信回路に到達するまでの目標の時間となる第1の到達目標時間を含み、
前記第2の転送データは、前記第2の転送データが前記第2の送信回路から送信されてから第2の受信回路に到達するまでの目標の時間となる第2の到達目標時間を含み、
前記調停回路は、
前記第1の到達目標時間に対する前記第1の経過時間の第1の割合と、前記第2の到達目標時間に対する前記第2の経過時間の第2の割合と、を比較し、
前記第1の割合と前記第2の割合のうち大きい方に対応する前記第1の転送データまたは前記第2の転送データの何れか一方を先に転送し、残りの他方を後に転送する
ことを特徴とするデータ転送制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−123545(P2012−123545A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272832(P2010−272832)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】