説明

データ送信方法および情報処理システム

【課題】
直感的な操作で、ユーザから離れた位置にある情報処理装置にデータを送信することができるデータ送信方法および情報処理システムを提供する。
【解決手段】
自装置1000が、他装置2000へ送信する対象である送信対象データを、スタイラス3000によってタッチ操作されることで選択する第1ステップと、第1ステップの後、自装置1000が、自装置1000から離間したスタイラス3000の端部が向けられた方向を検出する第2ステップと、第2ステップの後、自装置1000が、予め取得した自装置1000の座標データが示す位置を起点にしてスタイラス3000の端部が向けられた方向にある他装置2000を送信対象の情報処理装置として、この送信対象の情報処理装置へ送信対象データを送信する第3ステップとを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ送信方法および情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の情報処理装置間でデータを受け渡しする場合、持ち運び可能な記録媒体にデータを記録したり、特許文献1に記載の情報処理システムのようにネットワークを介してデータを送信したりする。
【0003】
ネットワークを介するデータ送信では、特許文献2のように、複数のタッチパネル式の情報処理装置間において、一の情報処理装置のタッチ検出領域外までデータがドラッグされた後、他の情報処理装置のタッチ検出領域がタッチされた場合に、当該他の情報処理装置へデータを送信する情報処理システムが提案されている。
【0004】
また、非特許文献1のように、タッチパネル式の情報処理装置において、一の情報処理装置のタッチ検出領域をスタイラスでタッチすることでデータをピックし、その後、他の情報処理装置のタッチ検出領域をスタイラスでタッチすることでデータをドロップする、ピック‐アンド‐ドロップによりデータを送信する情報処理システムも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−133738号公報
【特許文献2】特開2004−30284号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】暦本純一、"Pick-and-Drop: 複数コンピュータ環境での直接操作技法"、[online]、インタラクティブシステムとソフトウェア V、近代科学社、[平成23年1月30日検索]、インターネット〈URL:http://ftp.csl.sony.co.jp/person/rekimoto/papers/wiss97.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2および非特許文献1のシステムによれば、データ送信の際にIPアドレスの指定を行う必要が無いので、一の情報処理装置から他の情報処理装置へのデータの受け渡しを、直感的な操作で行うことができる。しかしながら、データを送信する対象の情報処理装置を直接タッチする必要があるので、当該情報処理装置がユーザから離れた位置にある場合、ユーザがその情報処理装置の位置まで移動する必要があるという手間が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、直感的な操作で、ユーザから離れた位置にある情報処理装置にデータを送信することができるデータ送信方法および情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タッチパネル式情報処理装置と、タッチ操作用スタイラスと、1または複数の他の情報処理装置とを含み、前記タッチパネル式情報処理装置と前記他の情報処理装置とがデータ通信可能に接続される情報処理システムにおけるデータ送信方法において、
前記タッチパネル式情報処理装置が、前記他の情報処理装置へ送信する対象である送信対象データを、前記タッチ操作用スタイラスによってタッチ操作されることで選択する第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記タッチパネル式情報処理装置が、前記タッチパネル式情報処理装置から離間した前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向を検出する第2ステップと、
前記第2ステップの後、前記タッチパネル式情報処理装置が、予め取得した前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報が示す位置を起点にして前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向にある他の情報処理装置を送信対象の情報処理装置として、この送信対象の情報処理装置へ前記送信対象データを送信する第3ステップとを含むことを特徴とするデータ送信方法である。
【0010】
また本発明は、前記第2ステップでは、前記タッチパネル式情報処理装置が、前記タッチパネル式情報処理装置の特定の箇所の向きに対する、前記タッチパネル式情報処理装置から離間した前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた相対的な方向を検出し、
前記第3ステップでは、前記タッチパネル式情報処理装置が、前記第2ステップで検出した相対的な方向と、予め取得した、所定の基準方向に対する前記タッチパネル式情報処理装置の前記特定の箇所が向けられた相対的な方向とから、前記基準方向に対する前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた相対的な方向を算出し、予め取得した前記位置情報が示す位置を起点にして算出した方向にある他の情報処理装置を前記送信対象の情報処理装置とすることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記予め取得した前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報は、前記タッチパネル式情報処理装置が、全地球測位システムによって予め取得した情報であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記情報処理システムは、前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報を前記タッチパネル式情報処理装置から取得し、前記他の情報処理装置の位置情報を前記他の情報処理装置から取得するサーバ装置をさらに含み、
前記第3ステップでは、
前記タッチパネル式情報処理装置は、前記基準方向に対する前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた相対的な方向を示すスタイラス方向データと、前記送信対象データとを、前記サーバ装置へ送信し、
前記サーバ装置は、前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報が示す位置を起点にして前記他の情報処理装置の位置情報が示す位置へ向かう方向を算出し、算出した方向と、前記タッチパネル式情報処理装置から送信された前記スタイラス方向データが示す方向とが一致するときに、この算出した方向に対応する前記他の情報処理装置を前記送信対象の情報処理装置として、前記タッチパネル式情報処理装置から送信された前記送信対象データを送信することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記第2ステップでは、
前記タッチ操作用スタイラスは、前記タッチ操作用スタイラスが振り動かされたことを検出し、振り動かされたことを前記タッチパネル式情報処理装置へ伝達し、
前記タッチパネル式情報処理装置は、前記タッチ操作用スタイラスが振り動かされたことが伝達された後に、前記タッチパネル式情報処理装置から離間した前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向を検出することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、タッチパネル式情報処理装置と、タッチ操作用スタイラスと、1または複数の他の情報処理装置とを含み、前記タッチパネル式情報処理装置と前記他の情報処理装置とがデータ通信可能に接続される情報処理システムにおいて、
前記タッチパネル式情報処理装置は、
前記他の情報処理装置へ送信する対象である送信対象データを、前記タッチ操作用スタイラスによってタッチ操作されることで選択する制御演算部と、
前記制御演算部によって送信対象データを選択した後、前記タッチパネル式情報処理装置から離間した前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向を、超音波の受信によって検出する超音波受信部と、
予め取得した前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報が示す位置を起点にして前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向にある他の情報処理装置を送信対象の情報処理装置として、この送信対象の情報処理装置へ前記送信対象データを送信する通信部とを備えることを特徴とする情報処理システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、他の情報処理装置が、タッチパネル式の情報処理装置のユーザから離れた位置にあっても、タッチ操作用スタイラスを用いた直感的な操作によって、このタッチパネル式の情報処理装置から送信対象のデータを、他の情報処理装置へ送信することができる。
【0016】
また本発明によれば、タッチ操作用スタイラス自体が、基準方向に対する前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた相対的な方向を算出する必要が無いので、タッチ操作用スタイラスの構成を簡略化することができる。
【0017】
また本発明によれば、タッチパネル式の情報処理装置が使用される部屋に、このタッチパネル式の情報処理装置の位置情報を取得するための特別な装置を設ける必要が無いので、利便性が高い。
【0018】
また本発明によれば、サーバ装置を介して間接的にデータを送信することができるので、タッチパネル式の情報処理装置と他の情報処理装置とを相互にデータ通信可能にする必要が無くなり、ネットワークを簡略化することができる。
【0019】
また本発明によれば、タッチパネル式の情報処理装置がタッチ操作用スタイラスの端部の向けられた方向の検出を開始するために、ユーザが複雑な操作を行う必要が無いので、より直感的にタッチパネル式の情報処理装置から他の情報処理装置への送信対象データの送信を行うことができる。
【0020】
また本発明によれば、他の情報処理装置が、タッチパネル式の情報処理装置のユーザから離れた位置にあっても、タッチ操作用スタイラスを用いた直感的な操作によって、このタッチパネル式の情報処理装置から送信対象のデータを、他の情報処理装置へ送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】情報処理システム10000を示す模式図である。
【図2】自装置1000の構成を示すブロック図である。
【図3】スタイラス3000の構成を示すブロック図である。
【図4】サーバ装置4000の構成を示すブロック図である。
【図5】PAT送信法を示すフローチャートである。
【図6】ステップA6の処理をより詳細に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
はじめに、本発明に係るデータ送信方法の実施形態を実行するための情報処理システム10000について説明する。本発明に係るデータ送信方法は、後述するように、ピック(Pick)‐アンド(And)‐スロー(Throw)によってデータを送信する方法であるので、以下では、本発明に係るデータ送信方法の実施形態を、各単語の頭文字をとってPAT送信法と称する。図1は、情報処理システム10000を示す模式図である。情報処理システム10000は、タッチパネル式の情報処理装置1000(以下、「自装置1000」と称する)と、自装置1000以外の他の情報処理装置2000(以下、「他装置2000」と称する)と、スタイラス3000と、サーバ装置4000とを含む。
【0023】
自装置1000は、PAT送信法によってデータを送信しようとするユーザが使用するタブレットPC(Personal Computer)である。スタイラス3000は、自装置1000に対するタッチ操作用の電子スタイラスであり、ユーザが手に持って使用する。他装置2000は、たとえば、自装置1000が使用される部屋と同じ部屋内に、1または複数設置される。自装置1000を使用するユーザは、他装置2000のいずれかに、PAT送信法によってデータを送信することができる。サーバ装置4000は、後述する自装置1000および他装置2000の座標データ(位置情報)を管理する情報処理装置である。自装置1000、他装置2000、およびサーバ装置4000は、有線または無線LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などのIP(Internet Protocol)ネットワークを介して相互にデータ通信可能に接続される。
【0024】
図2は、自装置1000の構成を示すブロック図である。自装置1000は、タッチパネル1001と、表示部1002と、通信部1003と、制御演算部1004と、記憶部1005と、ジャイロセンサ1006と、地磁気センサ1007と、超音波受信部1008と、選択信号受信部1009と、GPS(Global Positioning System,全地球測位システム)用電波受信部1010とを備える。
【0025】
タッチパネル1001は、投影型静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルであり、スタイラス3000やユーザの指によってタッチされると、タッチされた位置を示す信号を、制御演算部1004に入力する。表示部1002は、液晶ディスプレイなどから構成される。タッチパネル1001と表示部1002とは、ともに矩形状であり、主面同士が平行となるように配置される。通信部1003は、ネットワークカードなどから構成される。制御演算部1004は、CPU(Central Processing Unit)などから構成される。
【0026】
記憶部1005は、DDR SDRAM(Double Data Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリ、およびHDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性メモリから構成され、種々のデータを記憶する。記憶部1005は、たとえば、テキストデータ、動画データ、アプリケーションデータなどの、PAT送信法による送信の対象となる各データに対応するアイコンを示す画像データを記憶する。また、記憶部1005は、自装置1000のIPアドレスを記憶する。ジャイロセンサ1006は、自装置1000の傾きを検出するセンサである。ジャイロセンサ1006は、検出した傾きを示す信号を、制御演算部1004に入力する。
【0027】
地磁気センサ1007は、自装置1000の特定の箇所の向く方向が、いずれの方角であるかを検出するセンサである。より詳細には、地磁気センサ1007は、後述する超音波受信部1008の受信面aから受信面a25に向かう方向が、南から北へ向かう基準方向に対して、相対的にいずれの方向を向いているかを検出する。地磁気センサ1007は、検出した方向を、制御演算部1004に入力する。
【0028】
超音波受信部1008は、後述する第1超音波および第2超音波を受信するデバイスである。超音波受信部1008は、タッチパネル1001の矩形状の主面の外縁において、一の長辺に沿って複数設けられる受信面と、一の短辺に沿って複数設けられる受信面とを有する。本実施形態では、タッチパネル1001の主面の長辺の長さは260mmであり、タッチパネル1001の主面の短辺の長さは150mmであり、長辺の一端から他端に向かって10mm間隔で受信面a,a,・・・a25が設けられ、短辺の一端から他端に向かって10mm間隔で受信面b,b,・・・b14が設けられる。超音波受信部1008は、各受信面による超音波の受信結果を示す信号を、制御演算部1004に入力する。なお、各受信面が設けられる間隔は、1mm〜30mmの範囲内で適宜設定してもよい。
【0029】
選択信号受信部1009は、後述する選択信号を受信するデバイスである。選択信号受信部1009は、選択信号の受信を開始すると、受信開始を示す信号を、制御演算部1004に入力する。また、選択信号受信部1009は、選択信号の受信を終了すると、受信終了を示す信号を、制御演算部1004に入力する。GPS用電波受信部1010は、GPSによって、自装置1000の、地球上における緯度方向と経度方向とを座標軸とする座標データを取得するデバイスである。GPS用電波受信部1010は、取得した座標データを、制御演算部1004に入力する。
【0030】
自装置1000において、制御演算部1004は、記憶部1005に記憶される画像データに基づいて、表示部1002に、各データを示すアイコンを表示させる。また、後述するように、PAT送信法は自装置1000の傾きが大きいときには適切に使用することができないので、制御演算部1004は、ジャイロセンサ1006が検出した傾きが所定の閾値以上である場合に、表示部1002に、PAT送信法を使用することができないことを示す警告文を表示させる。たとえば、制御演算部1004は、タッチパネル1001の主面が、水平面に対して30°以上傾いている場合に、警告文を表示させる。
【0031】
また、制御演算部1004は、通信部1003によって、サーバ装置4000に、自装置1000のIPアドレスを送信するとともに、自装置1000の座標データを送信する。制御演算部1004は、所定時間ごとに、GPS用電波受信部1010による自装置1000の座標データの取得、および、取得した座標データのサーバ装置4000への送信を行ってもよい。また、自装置1000に加速度センサを設けて、加速度センサによって検出した加速度に基づいて、自装置1000の座標データの取得および送信を行ってもよい。より詳細には、制御演算部1004は、加速度センサによって検出した加速度が所定の閾値以上である場合に、自装置1000の位置が移動したと判断して、その場合に、自装置1000の座標データの取得および送信を行ってもよい。
【0032】
また、制御演算部1004は、他装置2000のIPアドレスを指定することで、通信部1003によって、そのIPアドレスに対応する他装置2000に、データを送信することができる。制御演算部1004は、IPアドレスを複数指定した場合には、複数の他装置2000にデータを送信することができる。
【0033】
他装置2000は、自装置1000と同様に構成される。他装置2000の制御演算部は、他装置2000の通信部によって、サーバ装置4000に、他装置2000の座標データを送信する。また、他装置2000の制御演算部は、他装置2000の通信部によって、自装置1000から送信されたデータを受信し、他装置2000の記憶部に記憶させることができる。
【0034】
図3は、スタイラス3000の構成を示すブロック図である。スタイラス3000は、制御演算部3001と、第1超音波発信部3002と、第2超音波発信部3003と、選択ボタン3004と、選択信号発信部3005と、加速度センサ3006とを備える。
【0035】
制御演算部3001は、CPUなどから構成される。第1超音波発信部3002は、スタイラス3000の先端部に設けられ、第1の超音波を周囲に向けて発信するデバイスである。第2超音波発信部3003は、スタイラス3000の後端部に設けられ、第1の超音波とは周波数が異なる第2の超音波を発信するデバイスである。
【0036】
選択ボタン3004は、ユーザに押下されることで、押下を示す信号を、制御演算部3001に入力する。選択信号発信部3005は、選択信号を周囲に向けて発信するデバイスである。選択信号は、第1、第2の超音波とは周波数が異なる第3の超音波であってもよいし、所定の周波数の電波であってもよい。加速度センサ3006は、スタイラス3000の加速度を検出するセンサである。加速度センサ3006は、検出した加速度を示す信号を、制御演算部3001に入力する。
【0037】
スタイラス3000において、制御演算部3001は、選択ボタン3004から押下を示す信号が入力されると、選択信号発信部3005によって選択信号を発信させる。選択信号は、選択ボタン3004が押下されている間、発信され続ける。また、制御演算部3001は、加速度センサ3006が検出した加速度が所定の加速度閾値、たとえば0.75〜1m/s以上であると判断した場合に、第1超音波発信部3002および第2超音波発信部3003に、それぞれ、第1、第2の超音波を発信させる。第1、第2の超音波は、加速度が所定の加速度閾値以上であると判断された時点から、所定の発信待機時間の経過後、たとえば1秒間〜5秒間経過後に発信される。
【0038】
図4は、サーバ装置4000の構成を示すブロック図である。サーバ装置4000は、制御演算部4001と、記憶部4002と、通信部4003とを備える。
【0039】
制御演算部4001は、CPUなどから構成される。記憶部4002は、DDR SDRAMなどの揮発性メモリ、およびHDDなどの不揮発性メモリから構成され、種々のデータを記憶する。たとえば、記憶部4002は、自装置1000および各他装置2000のIPアドレスを記憶する。通信部4003は、ネットワークカードなどから構成される。
【0040】
サーバ装置4000において、制御演算部4001は、通信部4003によって、自装置1000から自装置1000の座標データを受信し、他装置2000から他装置2000の座標データを受信する。また、制御演算部4001は、各座標データに基づいて、自装置1000(他装置2000)を起点にして他装置2000に向かう方向が、南から北へ向かう基準方向に対して、相対的にいずれの方向を向いているかを算出する。たとえば、自装置1000を起点にして他装置2000に向かう方向が北東の方角であるときは基準方向に対して右回りに45°の方向を向いていると算出し、自装置1000を起点にして他装置2000に向かう方向が南西の方角であるときは基準方向に対して右回りに225°の方向を向いていると算出する。
【0041】
このように構成される情報処理システム10000において、ユーザは、スタイラス3000を用いて自装置1000を操作することで、PAT送信法によって、所望の他装置2000にデータを送信することができる。PAT送信法においてユーザが行う動作は、(1)自装置1000のタッチパネル1001上のアイコンをスタイラス3000でタッチし、(2)タッチした状態でスタイラス3000の選択ボタン3004を押下し、(3)選択ボタン3004を押下した状態で、タッチパネル1001からスタイラス3000を離し、(4)スタイラス3000を振り動かし、(5)タッチパネル1001の主面に対向する領域内において、スタイラス3000の先端部を送信対象の他装置2000に向ける、という(1)〜(5)の動作である。
【0042】
この(1)〜(5)の動作に伴う情報処理システム10000の処理を説明する。図5は、PAT送信法を示すフローチャートである。PAT送信法は、ステップA1〜ステップA12の処理を含む。ステップA1以前において、自装置1000の制御演算部1004は、各データを表すアイコンを表示部1002に表示させたまま、ユーザのタッチ操作を待つ待機状態であるとする。
【0043】
ステップA1では、ユーザは(1)の動作を行う。すなわち、ユーザは、スタイラス3000を持って、スタイラス3000の先端部によって、自装置1000のタッチパネル1001上のアイコンをタッチする。
【0044】
ステップA2では、自装置1000は、ステップA1においてアイコンがタッチされていれば、そのアイコンに対応するデータを仮選択状態にする。より詳細には、自装置1000の制御演算部1004は、タッチパネル1001から入力された信号の示す位置と、表示部1002に表示させている各アイコンの位置とを比較して、アイコンがタッチされたか否かを判別する。そして、制御演算部1004は、アイコンがタッチされていれば、タッチされたアイコンに対応するデータを、仮選択状態のデータであるとして、記憶部1005に記憶させる。すなわち、記憶部1005に、そのデータが仮選択状態であることを示すフラグを記憶させる。なお、タッチパネル1001がタッチされていても、アイコンがタッチされていなければ、仮選択状態のデータの記憶は行われない。
【0045】
ステップA3では、ユーザは(2)の動作を行う。すなわち、ユーザは、ステップA1でアイコンをタッチした後、タッチした状態を維持したまま、スタイラス3000の選択ボタン3004を押下する。選択ボタン3004が押下されると、スタイラス3000の制御演算部3001は、選択信号発信部3005に、選択信号を発信させる。
【0046】
ステップA4では、自装置1000の選択信号受信部1009は、スタイラス3000から発信された選択信号を受信し、受信開始を示す信号を制御演算部1004に入力する。そして、受信開始を示す信号が入力された制御演算部1004は、仮選択状態のデータについて、仮選択状態を解除して、すなわち、記憶部1005から仮選択状態を示すフラグを削除して、選択状態のデータであるとして、記憶部1005に記憶させる。
【0047】
なお、選択信号の受信開始を示す信号が制御演算部1004に入力される前にタッチパネル1001からスタイラス3000が離れた場合も、制御演算部1004は、仮選択状態を解除する。また、ユーザがスタイラス3000の選択ボタン3004の押下を止めた場合、選択信号発信部3005からの選択信号の発信は終了し、自装置1000の選択信号受信部1009は、選択信号の受信終了を示す信号を制御演算部1004に入力する。そして、受信終了を示す信号が入力された制御演算部1004は、選択状態のデータについて、選択状態を解除する。
【0048】
ステップA5では、ユーザは(3)〜(5)の動作を行う。すなわち、ユーザは、ステップA3でスタイラス3000の選択ボタン3004を押下した後、押下した状態を維持したまま、スタイラス3000を自装置1000のタッチパネル1001から離す(3)の動作を行い、スタイラス3000を所定の加速度閾値以上の加速度で振り動かす(4)の動作を行い、振り動かした時点から所定の発信待機時間経過前に、タッチパネル1001の主面に対向する領域内において、スタイラス3000の先端部を送信対象の他装置2000に向ける(5)の動作を行う。
【0049】
(3)の動作が行われると、自装置1000は、タッチパネル1001がタッチされておらず、かつ、選択状態のデータを記憶している状態となる。この状態のとき、自装置1000の制御演算部1004は、選択状態のデータを表すアイコンの表示を中断させる。したがって、ユーザにとっては、あたかも、スタイラス3000によってアイコンに対応するデータを摘みとった(ピックした)ように見える。なお、選択状態が解除されれば、制御演算部1004は、選択状態が解除されたデータのアイコンの表示を再開させる。
【0050】
(4),(5)の動作が行われると、スタイラス3000の加速度センサ3006は加速度を検出し、スタイラス3000の制御演算部3001は検出された加速度が加速度閾値以上であると判断し、判断した時点から、所定の発信待機時間経過後に、第1超音波発信部3002および第2超音波発信部3003に、それぞれ、第1、第2の超音波を発信させる。よって、(5)の動作により、自装置1000のタッチパネル1001の主面に対向する領域内においてスタイラス3000の先端部が送信対象の他装置2000に向けられた状態で、第1、第2の超音波が発信されることになる。なお、加速度センサ3006によって検出された加速度が加速度閾値未満である場合、第1、第2の超音波の発信は行われない。
【0051】
(4),(5)の動作が終了すると、データの送信のためのユーザの動作は必要無くなるので、情報処理システム10000によるステップA5〜ステップA12の処理によって、自動的にデータの送信が行われる。よって、ユーザは、(5)の動作以降、スタイラス3000の選択ボタン3004の押下をいつ止めてもよい。また、ユーザによる(4),(5)の動作以降はデータの送信に必要なユーザの動作が無くなるので、ユーザにとっては、あたかも、スタイラス3000でピックしたデータが、(4),(5)の動作によって、送信対象の他装置2000に投げられた(スローされた)ように見える。すなわち、ユーザにとっては、ピック‐アンド‐スローによって、データを送信することができる。
【0052】
ステップA6では、自装置1000は、超音波受信部1008によって第1、第2の超音波を受信し、その受信結果が制御演算部1004に入力される。制御演算部1004は、選択信号の受信終了を示す信号が入力される前に超音波受信部1008による受信結果が入力されると、選択状態のデータについて、選択状態を解除して、送信対象のデータであるとして、記憶部1005に記憶させる。
【0053】
さらに、制御演算部1004は、超音波受信部1008による受信結果に基づいて、スタイラス3000の後端部から先端部に向かう方向(以下、「スタイラス方向」と称する)が、自装置1000の特定の箇所の向く方向(超音波受信部1008の受信面aから受信面a25に向かう方向)に対して、相対的にいずれの方向を向いているかを検出する。そして、制御演算部1004は、検出結果と、地磁気センサ1007による検出結果とから、スタイラス方向が、南から北へ向かう基準方向に対して、相対的にいずれの方向を向いているかを算出する。
【0054】
図6を用いて、ステップA6の処理をより詳細に説明する。ステップA5において、スタイラス3000は、自装置1000のタッチパネル1001の主面に対向する領域内において、スタイラス3000の先端部が送信対象の他装置2000に向けられた状態となっており、この状態において、スタイラス3000の先端部にある第1超音波発信部3002から第1の超音波が発信され、スタイラス3000の後端部にある第2超音波発信部3003から第2の超音波が発信される。自装置1000もスタイラス3000もユーザの手元にあるので、ステップA5において超音波が発信された直後に、ステップA6において自装置1000の超音波受信部1008が超音波を受信することになる。
【0055】
図6のようにスタイラス3000の先端部が向けられている場合、先端部において発信された第1の超音波は、自装置1000のタッチパネル1001の長辺に沿う受信面a〜a25のうち、先端部に最も近い受信面a15に最も早く到達し、短辺に沿う受信面b〜b14のうち、先端部に最も近い受信面bに最も早く到達する。したがって、自装置1000の超音波受信部1008および制御演算部1004によって、自装置1000上における、タッチパネル1001の長辺方向と短辺方向とを座標軸とする、スタイラス3000の先端部の座標は(15,9)と検出される。また、スタイラス3000の後端部において発信された第2の超音波は、自装置1000のタッチパネル1001の長辺に沿う受信面a〜a25のうち、後端部に最も近い受信面aに最も早く到達し、短辺に沿う受信面b〜b14のうち、後端部に最も近い受信面bに最も早く到達する。したがって、自装置1000の超音波受信部1008および制御演算部1004によって、自装置1000上におけるスタイラス3000の後端部の座標は(8,6)と検出される。なお、自装置1000は、第1(第2)の超音波が2つ以上の受信面に最も早く同時に到達した場合は、たとえば、添え字の値が小さい方の受信面に先に到達したとみなすようにして、座標を検出する。
【0056】
自装置1000の制御演算部1004は、検出された先端部の座標(15,9)と、検出された後端部の座標(8,6)とから、自装置1000上においてスタイラス方向を示すベクトルを、(15,9)−(8,6)=(7,3)と検出する。自装置1000上の座標空間において、超音波受信部1008の受信面aから受信面a25に向かう方向(以下、「自装置方向」と称する)を示す単位ベクトルは(1,0)であるので、制御演算部1004は、この単位ベクトルとスタイラス方向を示すベクトルとの間の角度を、2つのベクトルの内積とそれぞれの大きさとから、cos-1((7×1+3×0)/((72+321/2×(12+021/2))≒23.2[°]と検出する。この値から、制御演算部1004は、自装置方向に対するスタイラス方向の向きを示す角度θは、自装置1000上の座標空間において、自装置方向に対して右回りに336.8°と検出する。
【0057】
したがって、たとえば、自装置1000の地磁気センサ1007によって、自装置方向が北東の方角であると検出されている場合、すなわち、自装置方向が、南から北へ向かう基準方向に対して右回りに45°の方向であると検出されている場合、自装置1000の制御演算部1004によって、基準方向に対するスタイラス方向の向きを示す角度は、基準方向に対して右回りに336.8+45−360=21.8[°]と算出される。また、たとえば、自装置1000の地磁気センサ1007によって、自装置方向が南東の方角であると検出されている場合、すなわち、自装置方向が、南から北へ向かう基準方向に対して右回りに225°の方向であると検出されている場合、自装置1000の制御演算部1004によって、基準方向に対するスタイラス方向の向きを示す角度は、基準方向に対して右回りに336.8+225−360=201.8[°]と算出される。
【0058】
なお、ステップA5において、自装置1000のタッチパネル1001の主面に対向する領域の外においてスタイラス3000を他装置2000に向けたり、スタイラス3000をタッチパネル1001の主面に垂直な方向に向けたりするなど、ユーザがスタイラス3000の操作を適切に行わなかった場合、自装置1000上の座標空間におけるスタイラス3000の先端部の座標と後端部の座標とが一致してしまい、自装置1000の制御演算部1004は、スタイラス方向が基準方向に対して相対的にいずれの方向を向いているかを算出できなくなるときがある。このようなときには、自装置1000の制御演算部1004は、再度、(1)〜(5)の動作を行うように促す警告文を、表示部1002に表示させる。また、このようなときに警告音を発するように、自装置1000を構成してもよい。さらに、適切に算出できた場合には適切に算出できたことを示す音を発するように、自装置1000を構成してもよい。また、スタイラス3000自体が警告音を発するように構成されていてもよいし、警告音の代わりに、スタイラス3000が振動するように構成して、振動によってユーザに(1)〜(5)の動作を再度行うように促してもよい。
【0059】
また、自装置1000の制御演算部1004が、上記のように、基準方向に対するスタイラス方向の向きを示す角度を適切に算出できるのは、自装置1000のタッチパネル1001の主面が、水平面に対して、ほぼ平行になっているときである。たとえば、タッチパネル1001の主面が、水平面に対して垂直になっている場合、超音波受信部1008および制御演算部1004によって検出される自装置1000上でのスタイラス方向と、地磁気センサ1007によって検出される地球上での自装置方向とが互いに垂直になってしまうので、基準方向に対するスタイラス方向の向きを示す角度を適切に算出することはできない。よって、自装置1000の制御演算部1004は、ステップA1以前およびステップA1〜ステップA5においてジャイロセンサ1006が検出した傾きが所定の閾値以上である場合に、表示部1002に、PAT送信法を使用することができないことを示す警告文を表示させる。
【0060】
ステップA7では、自装置1000の制御演算部1004は、通信部1003によって、自装置1000のIPアドレスをサーバ装置4000に送信するとともに、基準方向に対するスタイラス方向の向きを示す角度データを、スタイラス方向データとして、サーバ装置4000に送信する。たとえば、上記の例では、自装置1000の制御演算部1004は、通信部1003によって、右回りに21.8°であるという角度データを、スタイラス方向データとして、サーバ装置4000に送信する。
【0061】
ステップA8では、サーバ装置4000は、通信部4003によって、自装置1000から送信されたIPアドレスとスタイラス方向データとを受信する。ステップA9では、サーバ装置4000は、自装置1000から受信したデータと、予め算出したデータとから、データの送信対象の他装置2000を検索する。
【0062】
サーバ装置4000は、ステップA8以前から、自装置1000の座標データと、各他装置2000の座標データとをそれぞれ取得し、変更があれば随時更新している。さらに、サーバ装置4000は、ステップA8以前から、自装置1000(他装置2000)を起点にして各他装置2000に向かう方向が、基準方向に対して相対的にいずれの方向を向いているかを示す角度データを、各座標データが更新されるたびに算出している。ステップA9では、この角度データと、ステップA8において受信したIPアドレスおよびスタイラス方向データを用いて、サーバ装置4000の制御演算部4001は、送信対象の他装置2000を検索する。
【0063】
より詳細には、サーバ装置4000の制御演算部4001は、自装置1000からIPアドレスおよびスタイラス方向データを受信する直前において予め算出した角度データ(以下、「直前角度データ」と称する)に基づいて、送信対象の他装置2000を検索する。サーバ装置4000の制御演算部4001は、自装置1000から受信したIPアドレスに基づいて、自装置1000の座標を起点にして算出された直前角度データを検索し、検索により発見された直前角度データが示す角度と、スタイラス方向データが示す角度とを比較する。比較の結果、2つの角度の差が5°以内であれば、サーバ装置4000の制御演算部4001は、2つの角度を一致しているとみなして、比較に用いた直前角度データの算出に用いた座標データに対応する他装置2000を、送信対象の他装置2000であると判断する。
【0064】
たとえば、自装置1000の座標を起点にして算出された直前角度データが、自装置1000から他装置2000に向かう方向が基準方向に対して右回りに25°の方向であることを示しており、スタイラス方向データが、スタイラス方向が基準方向に対して右回りに21.8°の方向であることを示している場合、2つの角度の差は|21.8−25|=3.2[°]である。よって、この場合、サーバ装置4000の制御演算部4001は、この比較に用いた直前角度データの算出に用いた座標データに対応する他装置2000を、送信対象の他装置2000であると判断する。
【0065】
なお、上記の例では、2つの角度の差が5°以内である場合、サーバ装置4000の制御演算部4001は、2つの角度を一致しているとみなしているけれども、これに限られず、自装置1000および他装置2000の配置に応じて、1°以内としても、10°以内としてもよい。
【0066】
また、2つの角度の差が5°以内となる他装置2000が複数存在した場合、サーバ装置4000の制御演算部4001は、角度の差が最も小さい他装置2000を、送信対象の他装置2000であると判断する。さらに、角度の差が最も小さい他装置2000が複数存在した場合、サーバ装置4000の制御演算部4001は、自装置1000からの距離が最も近い他装置2000を、送信対象の他装置2000であると判断する。この場合のために、サーバ装置4000の制御演算部4001は、自装置1000(他装置2000)と他装置2000との間の距離を、予め算出しているものとする。
【0067】
ステップA10では、サーバ装置4000の制御演算部4001は、ステップA9において送信対象の他装置2000であると判断した他装置2000のIPアドレスを、通信部4003によって、自装置1000に送信する。
【0068】
ステップA11では、自装置1000は、通信部1003によって、サーバ装置4000から送信されたIPアドレスを受信する。自装置1000の制御演算部1004は、サーバ装置4000からIPアドレスを受信すると、そのIPアドレスに対応する他装置2000に、ステップA6において送信対象のデータとして記憶したデータを送信する。制御演算部1004は、送信対象のデータの送信が完了すると、そのデータが送信対象であるとした状態を解除し、送信完了を示す文を、表示部1002に表示させる。
【0069】
ステップA12では、他装置2000は、通信部によって、自装置1000から送信されたデータを受信し、受信したデータを記憶部に記憶する。
【0070】
以上に説明したPAT送信法をまとめると、自装置1000は、スタイラス3000によってタッチ操作されることで、他装置2000へ送信する送信対象データを選択する。その後、自装置1000は、自装置方向に対するスタイラス方向の相対的な向きを検出し、検出結果と、予め取得した、南から北へ向かう基準方向に対する自装置方向の相対的な向きとから、この基準方向に対するスタイラス方向の相対的な向きを算出し、算出結果をサーバ装置4000に送信する。サーバ装置4000は、予め取得した自装置1000の座標を起点にして、自装置1000から受信した算出結果が示す方向にある他装置2000を検索し、検索により発見された他装置2000を送信対象の他装置2000として、この他装置2000のIPアドレスを自装置1000に送信する。そして、自装置1000は、サーバ装置4000から受信したIPアドレスを指定して、他装置2000に送信対象データを送信する。
【0071】
このように、PAT送信法によれば、他装置2000がユーザから離れた位置にあっても、スタイラス3000を用いた直感的な操作(ピック‐アンド‐スロー)によって、自装置1000からデータを送信することができる。また、PAT送信法では、スタイラス3000自体がスタイラス方向を検出する必要が無いので、スタイラス3000の構成を簡略化することができる。
【0072】
なお、PAT送信法の変形例としては、スタイラス3000自体に、スタイラス方向を検出する機構を設けてもよい。たとえば、スタイラス3000に地磁気センサを設けてもよい。スタイラス3000に地磁気センサを設けることで、スタイラス方向が南から北に向かう基準方向に対して相対的にいずれの方向を向いているかを、スタイラス3000自体が検出することができる。この検出結果を、スタイラス3000が選択信号発信部3005を利用して自装置1000に送信するように構成すれば、自装置1000は、検出結果をそのままサーバ装置4000に送信するだけでよくなる。よって、この変形例では、自装置1000に超音波受信部1008を設ける必要は無く、スタイラス3000に第1超音波発信部3002および第2超音波発信部3003を設ける必要も無い。また、この変形例では、自装置1000のタッチパネル1001が水平面に対してどのように傾いていても、スタイラス3000自体が基準方向に対するスタイラス方向の向きを検出することができるので、自装置1000にジャイロセンサ1006を設ける必要も無い。
【0073】
またPAT送信法では、上記のように、自装置1000は、自装置方向に対するスタイラス方向の相対的な向きを検出し、検出結果と、予め取得した、南から北へ向かう基準方向に対する自装置方向の相対的な向きとから、この基準方向に対するスタイラス方向の相対的な向きを算出し、算出結果をサーバ装置4000に送信している。これに対して、PAT送信法の変形例としては、自装置1000が、自装置方向に対するスタイラス方向の相対的な向きと、基準方向に対する自装置方向の相対的な向きとを、サーバ装置4000に送信し、サーバ装置4000が、基準方向に対するスタイラス方向の相対的な向きを算出するようにしてもよい。
【0074】
さらに、PAT送信法の他の変形例としては、自装置1000が、サーバ装置4000の機能を有していてもよい。この変形例では、自装置1000自体が、基準方向に対するスタイラス方向の相対的な向きに基づいて、送信対象の他装置2000を検索することができる。
【0075】
またPAT送信法では、自装置1000は、自装置1000の座標データを、GPSによって予め取得している。したがって、自装置1000が使用される部屋に、自装置1000の座標を取得するための特別な装置を設ける必要が無いので、利便性が高い。
【0076】
なお、PAT送信法の変形例としては、自装置1000および他装置2000が使用される部屋に、自装置1000および他装置2000が座標を取得するための照明装置を設けてもよい。この照明装置は、部屋の天井に、格子状に複数箇所配置され、各箇所での明暗、色、または明滅の状態がわずかに異なるように構成される。したがって、この変形例では、自装置1000および他装置2000の座標は、格子状に配置される照明装置の縦方向と横方向とを座標軸としたものとなり、明暗、色、または明滅の状態の相違によって部屋内での自装置1000および2000の座標を特定することができる。この変形例では、自装置1000および他装置2000は、地球上における緯度方向と経度方向とを座標軸とする座標を取得するGPS用電波受信部1010の代わりに、部屋内での照明装置の配置の縦方向と横方向とを座標軸とする座標を取得するために、この照明装置からの光を受光する受光部が設けられる。また、自装置1000にはこの受光部が2箇所以上設けられ、これによって、たとえば部屋の一の壁から他の壁に向かう基準方向に対して、自装置方向が相対的にいずれの方向を向いているかを取得することができる。このような変形例は、GPSを用いる場合と比較して、部屋に特別な照明装置を設ける必要がある点で利便性において劣るけれども、GPSを用いる場合よりも応答が早くなるという利点を有する。
【0077】
なお、上記のような、GPSや照明装置以外にも、たとえば、複数の無線LANアクセスポイントから、無線LANアクセスポイントを基準とする自装置1000や他装置2000の座標を取得してもよい。いずれの方法で座標を取得する場合であっても、自装置1000や他装置2000が部屋内に固定される場合には、座標の取得は一度きりでよい。
【0078】
またPAT送信法では、スタイラス3000は、所定の加速度閾値以上の加速度でスタイラス3000が振り動かされたことを加速度センサ3006によって検出し、検出後、第1、第2の超音波を発信することで、スタイラス3000が振り動かされたことを自装置1000に伝達している。そして、自装置1000は、第1、第2の超音波を受信することでスタイラス3000が振り動かされたことを認識し、その後、自装置方向に対するスタイラス方向の相対的な向きを検出している。
【0079】
よって、PAT送信法では、複雑な操作が必要無いので、より直感的に自装置1000から他装置2000へのデータの送信を行うことができる。なお、スタイラス3000に、加速度センサ3006の代わりに、第1、第2の超音波を発信させるためのボタンを設けてもよい。
【0080】
またPAT送信法では、自装置1000から他装置2000へ、直接的にデータが送信されている。これに対して、PAT送信法の変形例としては、自装置1000から他装置2000へ、間接的にデータを送信してもよい。すなわち、この変形例では、上記ステップA7において、自装置1000は、IPアドレスおよびスタイラス方向データに加えて、送信対象データを、サーバ装置4000に送信する。そして、サーバ装置4000は、上記ステップA10において、送信対象の他装置2000のIPアドレスを送信する代わりに、この他装置2000へ、送信対象データを送信する。このように、サーバ装置4000を介して間接的にデータを送信することで、自装置1000と他装置2000とが相互にデータ通信可能である必要が無くなるので、ネットワークを簡略化することができる。
【0081】
またPAT送信法では、スタイラス3000の先端部を送信対象の他装置2000に向けるようにしているけれどもPAT送信法の変形例では、スタイラス3000の後端部を送信対象の他装置2000に向けるようにしてもよい。
【0082】
またPAT送信法では、直前角度データが示す角度とスタイラス方向データが示す角度との差が5°以内となる他装置2000が複数ある場合に、送信対象の他装置2000を、角度差がより小さい1つの他装置2000に絞り込んでいる。これに対して、PAT送信法の変形例としては、直前角度データが示す角度とスタイラス方向データが示す角度との差が5°以内となる複数の他装置2000すべてに送信対象データを送信するようにしてもよい。この変形例では、サーバ装置4000は、この複数の他装置2000のIPアドレスをすべて自装置1000に送信し、自装置1000は受信したすべてのIPアドレスを指定して、送信対象データを送信する。このような変形例では、たとえば、会議などにおいて会議参加者全員に一斉に送信対象データを送信することができるという利点を有する。なお、この変形例において、送信対象データを必要としない会議参加者のために、他装置2000に、送信対象データの受信を拒否する拒否ボタンを設けてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1000 タッチパネル式の情報処理装置(自装置)
1001 タッチパネル
1002 表示部
1003,4003 通信部
1004,3001,4001 制御演算部
1005,4002 記憶部
1006 ジャイロセンサ
1007 地磁気センサ
1008 超音波受信部
1009 選択信号受信部
1010 GPS用電波受信部
2000 他の情報処理装置(他装置)
3000 スタイラス
3002 第1超音波発信部
3003 第2超音波発信部
3004 選択ボタン
3005 選択信号発信部
3006 加速度センサ
4000 サーバ装置
10000 情報処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネル式情報処理装置と、タッチ操作用スタイラスと、1または複数の他の情報処理装置とを含み、前記タッチパネル式情報処理装置と前記他の情報処理装置とがデータ通信可能に接続される情報処理システムにおけるデータ送信方法において、
前記タッチパネル式情報処理装置が、前記他の情報処理装置へ送信する対象である送信対象データを、前記タッチ操作用スタイラスによってタッチ操作されることで選択する第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記タッチパネル式情報処理装置が、前記タッチパネル式情報処理装置から離間した前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向を検出する第2ステップと、
前記第2ステップの後、前記タッチパネル式情報処理装置が、予め取得した前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報が示す位置を起点にして前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向にある他の情報処理装置を送信対象の情報処理装置として、この送信対象の情報処理装置へ前記送信対象データを送信する第3ステップとを含むことを特徴とするデータ送信方法。
【請求項2】
前記第2ステップでは、前記タッチパネル式情報処理装置が、前記タッチパネル式情報処理装置の特定の箇所の向きに対する、前記タッチパネル式情報処理装置から離間した前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた相対的な方向を検出し、
前記第3ステップでは、前記タッチパネル式情報処理装置が、前記第2ステップで検出した相対的な方向と、予め取得した、所定の基準方向に対する前記タッチパネル式情報処理装置の前記特定の箇所が向けられた相対的な方向とから、前記基準方向に対する前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた相対的な方向を算出し、予め取得した前記位置情報が示す位置を起点にして算出した方向にある他の情報処理装置を前記送信対象の情報処理装置とすることを特徴とする請求項1に記載のデータ送信方法。
【請求項3】
前記予め取得した前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報は、前記タッチパネル式情報処理装置が、全地球測位システムによって予め取得した情報であることを特徴とする請求項1または2に記載のデータ送信方法。
【請求項4】
前記情報処理システムは、前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報を前記タッチパネル式情報処理装置から取得し、前記他の情報処理装置の位置情報を前記他の情報処理装置から取得するサーバ装置をさらに含み、
前記第3ステップでは、
前記タッチパネル式情報処理装置は、前記基準方向に対する前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた相対的な方向を示すスタイラス方向データと、前記送信対象データとを、前記サーバ装置へ送信し、
前記サーバ装置は、前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報が示す位置を起点にして前記他の情報処理装置の位置情報が示す位置へ向かう方向を算出し、算出した方向と、前記タッチパネル式情報処理装置から送信された前記スタイラス方向データが示す方向とが一致するときに、この算出した方向に対応する前記他の情報処理装置を前記送信対象の情報処理装置として、前記タッチパネル式情報処理装置から送信された前記送信対象データを送信することを特徴とする請求項2または3に記載のデータ送信方法。
【請求項5】
前記第2ステップでは、
前記タッチ操作用スタイラスは、前記タッチ操作用スタイラスが振り動かされたことを検出し、振り動かされたことを前記タッチパネル式情報処理装置へ伝達し、
前記タッチパネル式情報処理装置は、前記タッチ操作用スタイラスが振り動かされたことが伝達された後に、前記タッチパネル式情報処理装置から離間した前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向を検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のデータ送信方法。
【請求項6】
タッチパネル式情報処理装置と、タッチ操作用スタイラスと、1または複数の他の情報処理装置とを含み、前記タッチパネル式情報処理装置と前記他の情報処理装置とがデータ通信可能に接続される情報処理システムにおいて、
前記タッチパネル式情報処理装置は、
前記他の情報処理装置へ送信する対象である送信対象データを、前記タッチ操作用スタイラスによってタッチ操作されることで選択する制御演算部と、
前記制御演算部によって送信対象データを選択した後、前記タッチパネル式情報処理装置から離間した前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向を、超音波の受信によって検出する超音波受信部と、
予め取得した前記タッチパネル式情報処理装置の位置情報が示す位置を起点にして前記タッチ操作用スタイラスの端部が向けられた方向にある他の情報処理装置を送信対象の情報処理装置として、この送信対象の情報処理装置へ前記送信対象データを送信する通信部とを備えることを特徴とする情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−181706(P2012−181706A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44519(P2011−44519)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】