説明

データ通信装置及びデータ通信方法

【課題】人体通信によるデータ通信を行なう場合において、人体との接触部分における接触面積を増加させることにより、生じ得る通信エラーを軽減し、従来よりも通信効率を向上させることができる。
【解決手段】 データ通信装置2は、操作パネル5と人体とが接触されている状態で、その操作パネル5と人体とを介してデータ通信を行なう。また、データ通信装置2は、上記データ通信を行うときの通信効率を取得し、その通信効率が所定値よりも低い場合に、増加させるべき、操作パネル5と人体との接触面積を決定する。そして、データ通信装置2は、その決定される接触面積を操作パネル5において報知する。ユーザが接触面積を増加させると、それに伴ってデータ通信装置2がデータの送受信を行なう際の電荷量が増えるのでS/N比が改善され、通信効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ通信装置及びデータ通信方法に関し、特に、人体通信方式によりデータ通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体を介して複数の通信機器の間でデータ通信を行なう技術がある。図14は、そのような人体通信方式により行なわれるデータ通信の基本的な概念を示す図である。ユーザが指先を入力側の携帯端末B1に接触させるとき、ユーザの指先と携帯端末B1との接触面には、電極A1を有する仮想的なコンデンサa1があると見なすことができる。また出力側の携帯端末B2は、例えば衣服のポケットなどに保持されている。このとき携帯端末B2と人体との接触面には、電極A2を有する仮想的なコンデンサa2があると見なすことができる。
【0003】
出力側の携帯端末B2において、コンデンサa2の電極A2に対して例えば電荷Q2を加えると、人体の表面に電荷が誘起され、ユーザの指先が接触するコンデンサa1の電極A1には、更に電荷Q1が誘起される。そして出力側の携帯端末B2において、電極A2に付与する電荷量を変化させてコンデンサa2の電界強度を変化させる。入力側の携帯端末B1は、その電界強度の変化をコンデンサa1の電極A1を介して検知することで携帯端末B2から出力される信号を検知する。このようにして人体通信によるデータ通信が行なわれる。
【0004】
ところで、人体通信は、上記のように人体に帯電する電荷を用いてデータ通信を行なうため、ノイズの影響を受けやすい。仮に出力信号の信号レベルよりも大きなノイズが発生すると通信が頻繁に途切れてしまうため通信効率が悪くなる。特許文献1には、上記のような場合において、出力信号の信号レベルを増加させて、出力信号の信号レベルとノイズレベルとの比率(以下「S/N比」と称する)を改善させることで、通信効率を向上させる電界通信用トランシーバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−187105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術は、電界通信用トランシーバと人体との接触面積に関わらず単に出力信号の信号レベルを調節するようになっているので以下のような問題がある。図14の例で説明すると、一般的に、電極A1,A2に誘起される電荷量は、各電極A1,A2と、各電極A1,A2に対向する人体の接触面積に比例すると考えられている。例えば、携帯端末B1に対向するユーザの指先の面積は比較的小さいので、電極A1に誘起される電荷量も比較的少ない。一方、携帯端末B2に対向するユーザの胴体の面積は、指先と携帯端末B1との対向面積よりも大きいので電極A2に誘起される電荷量も電極A1より多くなる。
【0007】
一例を挙げて説明すると、出力側の携帯端末B2は、電極A2に対して例えば電荷量Q2を加えることができるとする。このとき、その電極A2に対向する人体の表面にも、同様に電荷量Q2の電荷が誘起される。このように人体表面に誘起される電荷は、人体表面に対してほぼ均等に発生すると考えられる。ところが、携帯端末B1の電極A1に対向するユーザの指先部分の面積は、携帯端末B2の電極A2が人体と対向している面積よりも小さいため、電極A1に誘起される電荷量Q1は、電荷量Q2よりも小さくなり、Q1<Q2となる。
【0008】
加えて、人体の特性上、人体表面に誘起できる単位面積あたりの電荷量はほぼ定まっており、携帯端末B2において出力信号の信号レベル(電荷量)を増加させたとしても、その電荷量の増加分がそのまま人体表面に現れる訳ではない。そのため、携帯端末B2が電極A2に与える電荷量Q2を増加させたとしても、携帯端末B1において検知される電荷量Q1の増加分は、ユーザの指先における僅かな増加分だけとなってしまう。
【0009】
したがって、上記特許文献1に開示された技術のように、出力側で出力信号の信号レベル(電荷量)を増加させたとしても、受信側ではそのような信号レベル(電荷量)を受信することができないため、受信時にノイズの影響を受けてしまい、通信エラーが発生する可能性がある。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、人体通信によるデータ通信を行なう場合において、生じ得る通信エラーを低減し、従来よりも通信効率を向上させることができるデータ通信装置及びデータ通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、データ通信装置であって、人体と接触することにより、その接触部分から人体を介してデータ通信を行なうデータ通信手段と、前記データ通信手段によってデータ通信が行われる場合の通信効率を取得し、その通信効率が所定値よりも低い場合に増加させるべき前記接触部分の接触面積を決定する決定手段と、前記決定手段により決定される接触面積を所定の態様で報知する報知手段と、を備えることを特徴とする構成である。
【0012】
このような構成によれば、人体との接触部分を介してデータ通信を行なうとき、その通信効率が所定値よりも低くなると、通信効率を向上させる接触面積が報知されるので、データ通信装置は、ユーザに対してデータ通信手段と人体との接触面積を増加させることができる。そして、ユーザが接触面積を増加させると、データ通信手段と人体との接触部分が増えるので、データ通信装置は、通信効率を向上させた状態で人体を介したデータ通信を行なうことができる。
【0013】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のデータ通信装置において、前記データ通信手段によってデータ通信を行うときのノイズレベルを検知するノイズ検知手段を更に備え、前記決定手段は、前記データ通信手段によってデータ通信を行なう場合の信号レベルと、前記ノイズ検知手段によって検知されるノイズレベルとに基づいて算出した通信効率を取得することを特徴とする構成である。
【0014】
このような構成によれば、実際のノイズレベルを検知して通信効率が算出されるので、データ通信装置は、S/N比を向上させる接触面積を報知することが可能である。
【0015】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載のデータ通信装置において、前記決定手段は、前記データ通信手段によってデータ通信を行うときのデータ通信速度を測定することによって通信効率を取得することを特徴とする構成である。
【0016】
このような構成によれば、実際のデータ通信速度が測定されるので、データ通信装置は、データ通信速度を向上させる接触面積を報知することが可能である。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のデータ通信装置において、前記データ通信手段における人体との接触面積を検知する接触面積検知手段と、前記接触面積検知手段によって検知される前記データ通信手段と人体との接触面積に基づき調節すべき信号レベルを判断する通信制御手段と、
を更に備えることを特徴とする構成である。
【0018】
このような構成によれば、実際の接触面積に基づいて人体通信を行なう場合の最適な信号レベルを決定することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の何れかに記載のデータ通信装置において、前記データ通信手段は、ユーザによる指示操作を入力する操作パネルに設けられる第1のデータ通信手段と、前記データ通信装置の所定周囲に敷設されるフロアマットに設けられる第2のデータ通信手段とを備え、前記第2の通信手段は、ユーザが前記フロアマット上に位置する状態で人体を介してデータ通信を開始するものであり、前記決定手段は、前記第2の通信手段を介して行なうデータ通信の通信効率が所定値よりも低い場合に、前記第1のデータ通信手段に対して増加すべき接触面積を決定することを特徴とする構成である。
【0020】
このような構成によれば、フロアマットを介して行なうデータ通信の通信効率が低下した場合に、操作パネルに対して増加させるべき接触面積が決定される。これにより、ユーザは、通信効率を向上させる接触面積が報知されてから操作パネルに対して例えば手などを接触すれば良いので、最初から操作パネルに手を接触させる場合に比べて身体的な負担が軽減される。
【0021】
請求項6に係る発明は、人体と接触するデータ通信手段の接触部分と人体とを介してデータ通信を行うデータ通信方法であって、(a)前記接触部分と人体とを介してデータ通信を行う場合の通信効率を取得するステップと、(b)前記ステップ(a)によって取得される通信効率が所定値よりも低い場合に増加させるべき前記接触部分の接触面積を決定するステップと、(c)前記ステップ(b)により決定される接触面積を所定の態様で報知するステップと、を有することを特徴とする構成である。
【0022】
このような構成によれば、人体との接触部分を介してデータ通信を行なうとき、その通信効率が所定値よりも低くなると、通信効率を向上させる接触面積が報知されるので、データ通信装置は、ユーザに対してデータ通信手段と人体との接触面積を増加させることができる。そして、ユーザが接触面積を増加させると、データ通信手段と人体との接触部分が増えるので、データ通信装置は、通信効率を向上させた状態で人体を介したデータ通信を行なうことができる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載のデータ通信方法において、(d)前記データ通信手段によってデータ通信を行うときのノイズレベルを検知するステップを更に有し、前記ステップ(b)は、前記データ通信手段の接触部分と人体とを介してデータ通信を行なう場合の信号レベルと、前記ステップ(d)によって検知されるノイズレベルとに基づいて算出した通信効率を取得することを特徴とする構成である。
【0024】
このような構成によれば、実際のノイズレベルを検知して通信効率が算出されるので、データ通信装置は、S/N比を向上させる接触面積を報知することが可能である。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項6又は7に記載のデータ通信方法において、前記ステップ(b)は、前記データ通信手段の接触部分と人体とを介してデータ通信を行なう場合のデータ通信速度をリアルタイムで測定することによって通信効率を取得することを特徴とする構成である。
【0026】
このような構成によれば、実際のデータ通信速度が測定されるので、データ通信装置は、データ通信速度を向上させる接触面積を報知することが可能である。
【0027】
請求項9に係る発明は、請求項6乃至8の何れかに記載のデータ通信方法において、(e)、前記データ通信手段と人体との接触面積を検知するステップと、(f)前記ステップ(e)により検知される接触面積に基づき調節すべき信号レベルを判断するステップと、を更に有することを特徴とする構成である。
【0028】
このような構成によれば、実際の接触面積に基づいて人体通信を行なう場合の最適な信号レベルを決定することができる。
【0029】
請求項10に係る発明は、請求項6乃至9の何れかに記載のデータ通信方法において、前記データ通信手段は、ユーザによる指示操作を入力する操作パネルに設けられる第1のデータ通信手段と、前記データ通信装置の所定周囲に敷設されるフロアマットに設けられる第2のデータ通信手段とを備え、(g)ユーザが前記フロアマット上に位置する状態で人体と前記第2の通信手段とを介してデータ通信を開始するステップを更に有し、前記ステップ(b)は、前記第2の通信手段を介して行なうデータ通信の通信効率が所定値よりも低い場合に、前記第1のデータ通信手段に対して増加すべき接触面積を決定することを特徴とする構成である。
【0030】
このような構成によれば、フロアマットを介して行なうデータ通信の通信効率が低下した場合に、操作パネルに対して増加させるべき接触面積が決定される。これにより、ユーザは、通信効率を向上させる接触面積が報知されてから操作パネルに対して例えば手などを接触すれば良いので、最初から操作パネルに手を接触させる場合に比べて身体的な負担が軽減される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、人体との接触部分を介してデータ通信を行う際、その接触部分の面積が小さく、通信効率が所定値よりも低下する場合には、通信効率を向上させることができるようになる接触面積を報知する構成である。そのため、人体を介したデータ通信において通信効率が低下すると、ユーザに対して接触面積を大きくさせる操作を行わせることができる。これにより、人体通信時において生じ得る通信エラーを低減し、従来よりも通信効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】データ通信システムの一構成例を示す図である。
【図2】データ通信装置のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】携帯端末のハードウエア構成の一例を示す図である。
【図4】データ通信装置における制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図5】データ通信装置において表示される案内画面の一例を示す図である。
【図6】データ通信装置において実行される処理の概念を示す図である。
【図7】データ通信装置に記憶される対応テーブルの一例を示す図である。
【図8】データ通信装置において表示される報知画面の一例を示す図である。
【図9】データ通信システムによって実行される処理の概略を模式的に示す図である。
【図10】データ通信システムにおいて実行される人体通信処理の全体的な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】データ通信装置において実行される信号レベル放置処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】携帯端末において実行される信号レベル増加処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態におけるデータ通信装置の全体構成例を示す図である。
【図14】従来技術における課題を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0034】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態におけるデータ通信システム1の全体構成例を示す図である。データ通信システム1は、データ通信装置2が実装される画像処理装置3と、その画像処理装置3と人体とを介してデータ通信を行なう携帯端末4とで構成される。画像処理装置3は、例えば、コピー機能、スキャン機能、FAX機能及び印刷機能など各種機能を備える一般的な複合機である。画像処理装置3は、ユーザによる操作指示を入力する操作パネル5を備えている。また、この操作パネル5は、データ通信装置2に対する指示操作を入力するためのユーザインタフェースとしても機能するように構成される。携帯端末4は、ユーザによって携帯可能な大きさに構成され、例えばユーザの衣服のポケットなどに収容される。
【0035】
データ通信装置2は、ユーザによって保持される携帯端末4とデータ通信を行うものであり、ユーザの人体を媒介させてデータ通信を行う人体通信方式が採用されている。操作パネル5は、そのような人体通信を行う際に、人体とデータ通信装置2とをデータ通信可能な状態に接続するためのインタフェースとして機能するように構成される。すなわち操作パネル5には、ユーザがその操作パネル5を操作している状態で人体通信を行うための人体通信部6が内蔵されている。
【0036】
人体通信部6は、人体通信を行う通信モジュールである。この人体通信部6は、通信対象となるデータを携帯端末4に送信する場合、そのデータに基づき人体に付与する電荷量を調節することにより、その人体表面上に現れる電界強度を変化させる構成である。これにより携帯端末4において、その電界強度の変化が検知されることでデータが携帯端末4に入力される。また、それとは逆に、人体通信部6は、携帯端末4から送信されるデータを受信する場合、その携帯端末4によって付与される電荷量によって人体表面に現れる電界強度の変化を検知することでデータを受信するように構成される。
【0037】
操作パネル5の大きさは、少なくとも一般的な成人の片手又は両手の手の平が完全に接触でき、且つ、その手の平が接触される部分とは別の部分で各種情報が表示可能な程度の大きさに構成されることが好ましい。これによりユーザが手の平を操作パネル5に完全に接触させた状態であっても、操作パネル5に表示される各種情報を視認することが可能になる。また、人体通信部6は、上記のような操作パネル5の大きさに伴って、少なくとも一般的な成人の片手又は両手の手の平が完全に接触している状態で、その手の平を介してデータ通信を行なうことができるように構成される。
【0038】
図2は、画像処理装置3のハードウエア構成の一例を示す図である。上述したように、画像処理装置3は、人体を介してデータ通信を行なうデータ通信装置2の機能を有している。画像処理装置3は、そのデータ通信装置2に関するハードウエア構成として、図2において破線領域の内側に示す構成を備えている。すなわち、データ通信装置2は、このデータ通信装置2の動作を制御する制御部10と、人体通信を行なうインタフェースであると共に各種操作指示を入力する操作パネル5と、各種情報を記憶する記憶装置15とを備え、それらがバス20を介して接続されることにより相互に通信可能に構成される。但し、これら各部は、必ずしも画像処理装置3がデータ通信装置2として機能する場合にのみ動作するものではなく、一般的な複合機として機能する場合にも動作する。また画像処理装置3は、一般的な複合機と同様に、画像処理に関する構成として更に、読取部17と、印刷処理部18とを備えている。
【0039】
制御部10は、CPU11とメモリ12とを備えており、各部の動作を制御するものである。CPU11は、記憶装置15に記憶されているプログラム16を読み出して実行する。プログラム16は、制御部10を後述する各種処理部として機能させるためのプログラムである。メモリ12は、CPU11がプログラム16を実行することに伴う一時的なデータなどを記憶するものである。
【0040】
操作パネル5は、例えば液晶パネルなどで構成され各種情報を表示する表示部5aと、その表示部5aに対する人体の接触を検知する接触検知部5bと、人体を介してデータ通信を行う人体通信部6とを備えている。
【0041】
表示部5aは、例えばカラー液晶ディスプレイなどで構成される。接触検知部5bは、その表示部5aの表示画面上に配置される透明なシート状部材であり、所謂タッチパネルセンサなどで構成される。人体通信部6は、例えば、表示部5aの表示画面と、接触検知部5bとの間に配置される透明なシート電極などを備えて構成される。
【0042】
人体通信部6は、上述したように人体通信を行なう通信モジュールである。人体通信部6は、人体通信を行なう際、人体表面上に加える電荷の量を調節することで出力信号の信号レベルの強弱を行なうように構成される。例えば出力信号の信号レベルを強める場合には、人体に与える電界強度を強めるためにシート電極に加える電荷の量を多くする。一方、出力信号の信号レベルを弱める場合には、人体通信部6は、例えば人体に与える電界強度を弱めるためにシート電極に加える電荷の量を少なくする。また、人体通信部6は、必ずしも操作パネル5に設けられている必要はなく、操作パネル5とは異なる部分に設けられても良い。但しこの場合、人体通信部6に対する人体の接触状態を検知するため、接触検知部5bは、操作パネル5とは別に人体通信部6と共に設けられる。
【0043】
記憶装置15は、例えばハードディスク装置などで構成されており、上述したプログラム16などの各種情報を記憶する。
【0044】
読取部17は、原稿画像を読み取って画像データを出力する処理部である。例えば、読取部17は、原稿載置台に載置された複数の原稿を先頭から1枚ずつ搬送する原稿搬送部や、読み取った原稿画像を画像データに変換して出力する画像データ出力部などを備えている。
【0045】
印刷処理部18は、画像データに基づき印刷処理を実行することで印刷物を出力する処理部である。例えば、印刷処理部18は、1枚ずつ給紙された用紙に対して、画像データに基づき画像形成を行う画像形成部、画像形成部によって形成されるトナー像(画像)を用紙に転写させる転写部、用紙に転写されたトナー像を定着させる定着部、印刷された印刷物を排出する印刷物搬送部などを備えている。
【0046】
図3は、携帯端末4のハードウエア構成の一例を示す図である。携帯端末4は、その携帯端末4の動作を制御する制御部4aと、人体通信を行うための人体通信部4bと、プログラムや画像データなどの各種情報を記憶する記憶装置4cとを備えている。また、携帯端末4は、バッテリや電源制御部など携帯するために必要な図示しない構成を備えている。
【0047】
制御部4aは、CPUやメモリなどを備えており、記憶装置8cに記憶されている各種プログラムを読出して実行することで人体通信に伴う処理を実行する。また、人体通信部4bは、データ通信装置2が備える人体通信部6と同様に、人体通信を行う通信モジュールである。尚、図4に示す構成は、例えば携帯電話機、タブレット型のコンピュータ又はICカードなどに組み込まれても良い。
【0048】
上記のように画像処理装置3は、データ通信装置2としての機能を有するため、ユーザが所持する携帯端末4と必要に応じて人体を介してデータの送受信を行なうことが出来る。そのため、画像処理装置3は、例えば、読取部17が原稿画像を読み取って得られる画像データを携帯端末4に出力したり、携帯端末4に記憶されている画像データを取得して印刷出力を行なったりすることができる。
【0049】
図4は、データ通信装置2における制御部10の機能構成の一例を示すブロック図である。以下、図4を参照しつつ制御部10における具体的な処理について説明する。制御部10は、上述したCPU11がプログラム16を実行することにより、パネル制御部25、通信制御部26及び印刷制御部28として機能する。また、通信制御部26は、決定部27を備えている。
【0050】
パネル制御部25は、操作パネル5の動作を制御する処理部である。まずユーザが操作パネル5に指先などでタッチすると、パネル制御部25は、操作パネル5を介して人体通信が可能な状態であることを検知する。そしてパネル制御部25は、操作パネル5に例えばメニュー画面を表示させる。メニュー画面に対してユーザが所定の指示操作を行うと、パネル制御部25は、接触検知部5bから出力される操作情報を受け取ってユーザの指示操作を特定する。以下においては、ユーザの指示操作に基づいて、人体通信方式により携帯端末4から画像処理装置3に対して画像データ30を送信し、その画像データ30を画像処理装置3において印刷出力する場合を例示する。
【0051】
パネル制御部25は、画像処理装置3と携帯端末4とで人体通信によるデータ通信を行なう処理が指示されると、操作パネル5の所定位置に対してユーザにタッチさせるための案内画面を生成して操作パネル5に表示させる。
【0052】
図5は、パネル制御部25によって生成される案内画面35の一例を示す図である。案内画面35には、ユーザに対してタッチさせるべき所定面積を有するエリアが表示される。また、図5に示すように、案内画面35には、印刷出力を行なうファイル名や送信元などが表示されても良い。
【0053】
案内画面35に表示されるエリアに対して、ユーザが例えば指先をタッチすると、図4に示す接触検知部5bは、操作パネル5に対する接触を検知して検知結果を通信制御部26に出力する。また、このとき接触検知部5bは、操作パネル5に接触している人体の接触面積を検知し、その面積に応じた信号を通信制御部26に送信する。これにより通信制御部26において操作パネル5と人体との接触面積を取得することが可能になる。
【0054】
通信制御部26は、人体通信によるデータ通信を制御する処理部である。通信制御部26は、接触検知部5bから検知結果を受け取ると、人体通信部6を介して携帯端末4とのデータ通信を開始する。すなわち、通信制御部26は、メニュー画面において印刷出力が指示されている画像データ30の送信要求を携帯端末4に対して行い、携帯端末4によって送信される画像データ30を受信する。また、このとき携帯端末4は、所定の信号レベルで画像データ30を送信する。
【0055】
図6(a)は、人体を介して、データ通信装置2と携帯端末4とでデータ通信が行なわれる場合の処理の概念を示す図である。ユーザが指先を操作パネル5に接触させるとき、接触検知部5bのセンサ面と人体通信部6が有する電極A1との間には、仮想的なコンデンサa1があると見なすことができる。また、携帯端末4とユーザの胴体とが接触するとき、人体通信部4bが有する電極A2と人体との接触面に仮想的なコンデンサa2があると見なすことができる。
【0056】
人体通信部4bは、電極A2に対して出力信号に基づく電荷量を加えることで人体表面上の電界強度を変化させる。データ通信装置2の人体通信部6は、人体を介して電極A1に誘起される電荷量に基づき、その電界強度の変化を検知することで出力信号を入力し、その入力信号を制御部10に出力する。制御部10において通信制御部26は、その入力信号に基づいて画像データ30を受信する。このようにして人体通信によるデータ通信が行なわれる。
【0057】
ところで、データ通信装置2が携帯端末4からデータを受信するとき、電極A1に誘起される電荷量は、接触検知部5bのセンサ面に接触する人体の接触面積に比例する。そのため、図6(a)に示すように、ユーザが接触検知部5bのセンサ面に対して指先だけを接触させている場合には、接触面積が比較的小さいため、電極A1に誘起される電荷量は少なくなる。すなわち、携帯端末4によって電極A2に付与される電荷量が比較的多い場合であっても、データ通信装置2の人体通信部6が検知する電荷量は、それよりも少なくなる。
【0058】
そのような場合に何ら措置を施さないと、操作パネル5を介してデータ通信装置2に入力される入力信号のS/N比が低下するので、入力側のデータ通信装置2においては、入力信号とノイズとを峻別し難い状態になる。それに伴って通信エラー回数が多くなるので、通信の断絶と再接続とを繰り返すため通信効率が悪くなる。
【0059】
そこで、本実施形態においてデータ通信装置2は、人体通信による通信効率が所定値よりも低下した場合、ユーザに対して操作パネル5に対する接触面積を増加するように報知する構成になっている。ユーザがこの指示に従って、図6(b)に示すように、例えば手の平を操作パネル5に接触させると、接触検知部5bのセンサ面との接触面積は、図6(a)よりも大きくなるので、電極A1に誘起される電荷量を増加させることができる。電荷量が増加すると人体通信部6が検知する電界強度が強められるので、携帯端末4から出力される出力信号は、ノイズに埋もれてしまうことなく操作パネル5を介してデータ通信装置2に入力される。これによりエラー回数が低下するので通信効率が向上する。以下においては、そのような通信効率を向上させるための処理について説明する。
【0060】
図4に戻って、人体通信によるデータ通信が開始されると、通信制御部26に含まれる決定部27が機能する。決定部27は、人体通信による通信効率を計測して取得したり、その通信効率を向上させる接触面積を決定したりする処理部である。決定部27は、例えば、以下に説明する2通りの手法により通信効率を取得する。
【0061】
まず1つ目は、S/N比を算出することで通信効率を取得する手法である。例えば、操作パネル5は、画像処理装置3の周囲に生じているノイズを検知するノイズ検知部を更に備えている。そして、ノイズ検知部は、検知されるノイズレベルを通信制御部26に出力する。決定部27は、ノイズ検知部から受信するノイズレベルと、操作パネル5に入力する信号レベルとに基づきS/N比を算出する。このようにして決定部27は、通信効率を取得する。決定部27は、算出されるS/N比が例えば所定値よりも低い場合に通信効率を改善させる必要があると判断する。
【0062】
2つ目は、人体通信によるデータ通信を行なう場合の実際の通信速度を測定することで通信効率を取得する手法である。一般的に通信速度は、エラー回数が多くなるにつれて遅くなる。決定部27は、例えば、単位時間当たりに受信するデータ量を通信速度としてリアルタイムで測定することにより通信効率を取得する。決定部27は、測定される通信速度が例えば所定値よりも低い場合に通信効率を改善させる必要があると判断する。
【0063】
通信効率を取得する上記2つの手法のうち何れか1つの手法を採用しても構わないし、2つの手法をそれぞれ採用しても構わない。また、通信効率を取得する手法については上記に限定されない。以下の説明では、上記2つの手法が共に採用され、その何れかによって、増加させるべき接触面積を決定する場合を例示する。制御部10は、上記2つの手法のうち何れかの手法によって取得される通信効率に基づき、通信効率を改善させる必要があると判断した場合に以下のように処理を行なう。
【0064】
上述したようにデータ通信装置2に入力する信号レベルは、操作パネル5と人体との接触面積に依存するため、データ通信装置2に入力する信号レベルを引き上げようとする場合には、その接触面積を増加させる必要がある。記憶装置15には、決定部27によって参照される、接触面積を増加させる場合の判断基準となる対応テーブル36が予め記憶されている。
【0065】
図7は、対応テーブル36の一例を示す図である。対応テーブル36は、操作パネル5と人体との接触面積と、その接触面積に適した信号レベルとが対応づけられて記録されている情報である。
【0066】
通信効率がS/N比に基づき判断される場合において通信効率を改善する必要があると判断されると、決定部27は、対応テーブル36を参照して、ノイズ検知センサにより検知されるノイズレベル以上の信号レベルを特定する。そして、決定部27は、再び対応テーブル36を参照して、その信号レベルに対応する接触面積を特定する。複数の信号レベルが該当する場合に何れの信号レベルを特定しても構わないが、例えば最も低い信号レベルを特定することが好ましい。なぜなら、信号レベルが低い方が、接触面積が少ないからである。ユーザにとっては操作パネル5に接触させる面積が大きくなるほど、そのような操作を行うことに煩わしさを感じる。そのため、通信効率が所定値以上となる最小限の面積を特定することで、ユーザが感じる煩わしさをなるべく低減することができるようになる。
【0067】
また、実際の通信効率の測定値が所定値よりも低い場合には、上記のような対応テーブル36は参照する必要はない。この場合、決定部27は、例えば現在の接触面積を所定倍(例えば2倍程度)に増やす接触面積を特定すれば良い。
【0068】
図4に示す通信制御部26は、通信効率を向上させる接触面積を決定すると、その接触面積に関する情報をパネル制御部25に出力する。パネル制御部25は、通信制御部26からその情報を受け取ると、通信効率を向上させるための接触面積を報知する報知画面を生成して操作パネル5に表示させる。
【0069】
図8は、パネル制御部25によって生成される報知画面37の一例を示す図である。報知画面37には、通信効率が向上する接触面積が例えば手形を模した態様で表示される。また、報知画面37には、図例に示すように、リアルタイムで測定される通信速度及び予想される転送所要時間と、接触面積が変更された場合に予想される通信速度及び転送所要時間とを比較できるように表示しても良い。これによりデータ通信装置2は、向上する通信効率を具体的に表示することができ、ユーザに接触面積の変更を行わせることができる。
【0070】
接触面積が変更された場合に予想される通信速度や転送所要時間は、例えば以下のようにして算出される。通信制御部26は、上述したように通信効率を向上させる接触面積Saを特定すると、現在の接触面積Sbとの面積比Sa/Sbを算出する。すなわち、この面積比Sa/Sbが、通信速度の上昇率として仮算出される。ただし、この上昇率は、画像処理装置3の周囲ノイズを考慮したものではないため、あくまで予測値として算出されるにすぎない。そして通信制御部26は、その予測値として算出する上昇率に基づいて、接触面積変更後の通信速度を算出する。また、通信制御部26は、接触面積変更後の通信速度を算出すると、その算出した通信速度や残データ量などに基づき、転送所要時間を予測値として算出する。通信制御部26は、このように予測値として算出した通信速度および転送所要時間をパネル制御部25に出力し、操作パネル5に表示させる。
【0071】
ユーザが報知画面37に表示される指示に従って、例えば手の平を操作パネル5に接触させると、図6(b)に示すように、操作パネル5と手の平との接触面積が、それまでの操作パネル5と指先との接触面積よりも大きくなるので、電極A1に誘起される電荷量が多くなり人体通信部6がより大きな電界を検知可能となる。これにより入力信号の信号レベルがノイズレベルよりも高くなるので、通信制御部26は、人体を介して入力する入力信号とノイズとを峻別することが可能となる。その結果、エラー回数が減少するので通信効率が向上する。
【0072】
通信制御部26は、画像データ30の受信が完了するまで通信効率を改善する必要があるか否かの判断を行なって、通信効率を改善する必要があると判断すると上記の処理を繰り返して行なう。従って、例えば、通信制御部26は、更に通信効率を向上させる接触面積として、両手の手の平を同時に接触させるように報知画面37において報知することもある。そして、通信制御部26は、画像データ30の受信が完了すると、人体通信を終了すると共にその画像データ30を記憶装置15に記憶させる。通信制御部26は、画像データ30を記憶装置15に記憶させると、印刷制御部28に印刷出力を実行するように指示する。
【0073】
図4に示す印刷制御部28は、印刷処理部18に対して印刷処理を行なわせる処理部である。印刷制御部28は、通信制御部26から指示を受け取ると、記憶装置15から画像データ30を読出して印刷処理部18に出力し印刷処理を実行させる。これにより画像データ30が印刷出力される。
【0074】
ところで、携帯端末4は、その携帯端末4に内蔵されるバッテリにより駆動されるため、上記のように携帯端末4からデータ通信装置2に対して画像データ30を出力すると、バッテリが徐々に消耗していく。また図6(a)に示すように、携帯端末4は、操作パネル5と指先との接触面積に応じて電極A1に誘起される電荷量以上に電極A2に電荷を加えると、コンデンサa1に誘起されない余分な電荷まで電極A2に加えることになるので無駄にバッテリの電力を消費してしまう。
【0075】
そのため、データ通信の途中で携帯端末4のバッテリが切れてしまう可能性がある。仮にデータ通信の途中で携帯端末4のバッテリが切れてしまうと、そのバッテリを充電した後などに画像データの転送を始めからやり直すことになり二度手間となる。そこで、以下に説明するように、データ通信装置2は、操作パネル5と人体との接触面積に適した信号レベルになるように、携帯端末4に出力信号を調節させるように構成しても良い。これにより携帯端末4は、必要以上に電力を消費しなくて済むので電力効率が向上する。
【0076】
図9は、データ通信装置2が携帯端末4に信号レベルを調節させるための処理を模式的に示す図である。図9(a)に示すように、制御部10において通信制御部26は、案内画面35(図5)に表示されるエリアに対してユーザによる人体の接触が検知された場合、対応テーブル36(図7)を参照して、操作パネル5と人体との実際の接触面積に対応する信号レベルを最適信号レベルとして特定する。そして、通信制御部26は、その最適信号レベルを携帯端末4に通知する。携帯端末4は、その最適通信レベル通知を受け取ると、その最適信号レベルになるように信号レベルを調節して画像データを送信する。
【0077】
データ通信装置2において通信制御部26は、最適信号レベルで画像データを受信しているとき、上記と同様に通信効率を改善する必要があるか否かを判断し、通信効率を改善する必要がある場合には、報知画面37によって通信効率を向上させる接触面積を報知する。
【0078】
そして、図9(b)に示すように、通信制御部26は、報知画面37に表示されるエリアに対してユーザによる人体の接触が検知された場合、再び対応テーブル36を参照して、実際の接触面積に対応する最適な信号レベルを特定する。そして、通信制御部26は、その信号レベルに調節して出力信号を送信するように携帯端末4に増加指示を行なう。携帯端末4は、通信制御部26から増加指示を受け取ると、その増加指示に基づき信号レベルを調節して出力信号を送信する。通信制御部26は、画像データの受信が完了するまで上記と同様の処理を行なって、画像データの受信が完了すると人体通信を終了する。
【0079】
このように、通信制御部26は、操作パネル5と人体との実際の接触面積に対応する信号レベルを判断する構成である。そして、データ通信装置2は、通信制御部26によって接触面積に対応する最適なレベルとして判断された信号レベルで携帯端末4とデータ通信を行なう構成である。これにより携帯端末4は、無駄な電力を消費しなくて済むので電力効率が向上する。その結果、携帯端末4は、バッテリの消耗を節約できるので、画像データの転送中にバッテリが切れてしまう可能性を低減させることができる。
【0080】
また、例えば携帯端末4の送信能力が比較的低く、通信制御部26から要求される信号レベルまで出力信号を増加できない可能性がある。そのような場合、携帯端末4は、増加指示を受け取ると、その増加指示が自己の送信能力を超える指示であるか否かを判断する。そして、増加指示が自己の送信能力を超える指示である場合、携帯端末4は、通信制御部26に対して、自己の送信能力の上限を通知する。通信制御部26は、その上限通知を受け取ると、その上限通知に基づき変更した増加指示を再度行なう。これにより携帯端末4は、その増加指示に従って出力信号の信号レベルを調節することができる。
【0081】
以上の説明は、携帯端末4から画像処理装置3に対して画像データが送信される場合を例示した。それとは逆に、例えば読取部17の読取動作によって得られる画像データを画像処理装置3から携帯端末4に対して送信する場合にも、通信効率に基づき操作パネル5と人体との接触面積を増加するように報知することで、通信効率を向上させることが可能である。また、この場合、通信制御部26は、操作パネル5に人体が接触すると、対応テーブル36を参照して人体との実際の接触面積に対応する信号レベルを特定し、その信号レベルになるように出力信号を調節して携帯端末4に送信する。これにより画像処理装置3における電力効率が向上する。
【0082】
図10〜図12は、上記のように構成されるデータ通信システム1において実行される処理手順の一例を示したフローチャートである。以下、各図を参照しつつ制御部10の処理手順について説明する。なお、以下の説明では、携帯端末4から画像処理装置3に対して画像データが送信される場合を例示する。
【0083】
図10は、データ通信システム1において実行される全体的な処理の処理手順を示すフローチャートである。データ通信装置2において、操作パネル5に対する接触が接触検知部5bによって検知されると(ステップS1)、データ通信装置2は、対応テーブル36を参照して操作パネル5と人体との実際の接触面積に基づき出力信号の信号レベルを決定する(ステップS2)。このとき決定される信号レベルは、最適信号レベルである。データ通信装置2は、携帯端末4に対してその最適信号レベルを通知すると共に、画像データの送信要求を行なう(ステップS3)。データ通信装置2は、携帯端末4から送信される画像データの受信を開始すると(ステップS4)、信号レベル報知処理を行なう(ステップS5)。そして、データ通信装置2は、携帯端末4から完了通知を受け取ると(ステップS6のYES)、処理を終了する。また、データ通信装置2は、携帯端末4から完了通知を受け取るまで(ステップS6のNO)、ステップS5を繰り返して実行する。
【0084】
一方、携帯端末4は、データ通信装置2において実行される画像データの送信要求を受付けると(ステップS7)、最適信号レベルで画像データを出力する(ステップS8)。携帯端末4は、データ通信装置2において信号レベル報知処理が実行されることに伴って、信号レベル増加処理を行なう(ステップS9)。そして携帯端末4は、画像データの送信が完了すると(ステップS10のYES)、完了通知をデータ通信装置2に送信して(ステップS11)、処理を終了する。携帯端末4は、画像データの出力が完了するまで(ステップS10のNO)、ステップS8〜S10を繰り返して実行する。
【0085】
図11は、データ通信装置2における制御部10において実行される信号レベル報知処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理が開始されると、制御部10は、まず現時点での実際の通信効率を判断する(ステップS21)。制御部10は、通信効率を改善する必要があると判断する場合(ステップS22のYES)、対応テーブル36を参照し(ステップS23)、通信効率が向上する接触面積を決定する(ステップS24)。
【0086】
次に、制御部10は、通信効率が向上する接触面積を報知画面37によって報知する(ステップS25)。次に制御部10は、操作パネル5と人体との実際の接触面積を検知し(ステップS26)、報知画面37を報知する前と比較して接触面積が増加されたか否かを判断する(ステップS27)。接触面積が増加された場合(ステップS27のYES)、制御部10は、対応テーブル36を参照して、その増加された実際の接触面積に基づき信号レベルを決定する(ステップS28)。そして、制御部10は、決定された接触面積に対応する信号レベルで出力信号を送信するように携帯端末4に増加指示を行なう(ステップS29)。
【0087】
そして、制御部10は、携帯端末4から後述する確認通知を受け取ると(ステップS30のYES)、この信号レベル報知処理を終了する。一方、制御部10は、携帯端末4から上限通知を受け取ると(ステップS31のYES)、その上限通知に基づき再度信号レベルを決定する処理を行なう(ステップS28)。また、制御部10は、通信効率を改善する必要があると判断されない場合(ステップS22のNO)、ステップS23〜S31をスキップする。また、ステップS27において実際の接触面積が増加されない場合(ステップS27のNO)、制御部10は、ステップS28〜S31をスキップする。以上のようにして信号レベル報知処理は終了する。
【0088】
図12は、携帯端末4における制御部4aによって実行される信号レベル増加処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部4aは、データ通信装置2から増加指示を受付けると(ステップS41のYES)、要求される信号レベルまで増加できるか否かを判断し、増加できると判断すると(ステップS42のYES)、データ通信装置2に確認を通知する(ステップS43)。次に制御部10は、要求される信号レベルまで出力信号を増加して(ステップS44)、増加後の画像データをデータ通信装置2に送信する。一方、制御部4aは、ステップS42において、要求されるレベルまで信号レベルを増加できない場合(ステップS42のNO)、上限通知をデータ通信装置2に送信する(ステップS45)。この場合、制御部4aは、ステップS41まで戻る。また、データ通信装置2から増加指示を受け取らない場合には(ステップS41のNO)、ステップS42〜S45をスキップする。以上により信号レベル増加処理は終了する。
【0089】
以上のように本実施形態では、データ通信装置2は、人体通信部6が内蔵される操作パネル5と人体とを介してデータ通信を行なう構成である。また決定部27は、操作パネル5と人体とを介してデータ通信が行われるときの通信効率を取得し、その通信効率が所定値よりも低い場合に増加させるべき接触面積を決定する。そして、データ通信装置2は、決定部27により決定される接触面積を案内画面35において報知する構成である。
【0090】
このような構成によれば、操作パネル5には、人体通信を行なっているときの通信効率が低下すると、通信効率を向上させる接触面積が表示されるので、ユーザは、操作パネル5と人体との接触面積を増加させて通信効率を向上させる操作を行うことができる。ユーザが接触面積を増加させると、それに伴ってデータ通信装置2がデータの送受信を行なう際の電荷量が増えるのでS/N比が改善され、通信効率を向上させることができるようになる。
【0091】
また、本実施形態では、操作パネル5は、人体通信部6を介してデータ通信を行うときのノイズレベルを検知するノイズ検知部を更に備えている。そして、データ通信装置2は、人体通信部6を介してデータ通信を行なう場合の信号レベルと、ノイズ検知部によって検知されるノイズレベルとに基づいて算出した通信効率を取得する構成である。このような構成によれば、S/N比に基づいて通信効率が算出されるので、データ通信装置2は、S/N比を向上させる接触面積を報知することが可能である。
【0092】
更に本実施形態では、データ通信装置2は、人体通信部6によってデータ通信を行うときの通信速度をリアルタイムで測定することによって通信効率を取得する構成である。このような構成によれば、実際のデータ通信速度を測定するので、データ通信速度を向上させる接触面積を報知することが可能である。
【0093】
また本実施形態では、データ通信装置2は、案内画面35又は報知画面37が報知された後、操作パネル5と人体との実際の接触面積に基づき調節すべき信号レベルを判断する構成である。すなわち、データ通信装置2は、携帯端末4に対して最適信号レベル通知や増加指示を行なうことで、携帯端末4に信号レベルを調節させる。このような構成によれば、操作パネル5と人体との実際の接触面積に基づき信号レベルが調節されるので、例えば携帯端末4の電力効率を向上させることができる。また、データ通信装置2から携帯端末4に対してデータを出力する場合においても、操作パネル5と人体との実際の接触面積に基づき調節すべき信号レベルを判断することで、その接触面積に適した信号レベルでデータを携帯端末4に送信することができる。これによりデータ通信装置2の電力効率を向上されることができる。
【0094】
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態において、データ通信装置2が実装される画像処理装置3の全体構成例を示す図である。図例に示すように、データ通信装置2は、ユーザの足元を介して人体通信を行なうマット通信部40aが内蔵されるフロアマット40を更に備えている。第2の実施形態において、人体通信部6は、本発明における第1のデータ通信手段であり、マット通信部40aは、本発明における第2のデータ通信手段である。尚、以下の説明においては、第1の実施形態と重複する説明を省略する。
【0095】
マット通信部40aは、データ通信装置2の人体通信部6と同様に人体通信によるデータ通信を行なう通信モジュールである。また、マット通信部40aには、ユーザとの接触を検知する図示しない接触検知部が内蔵される。以下においては、説明の便宜上、操作パネル5に内蔵される接触検知部5bを「第1の接触検知部5b」、フロアマット40に内蔵される接触検知部を「第2の接触検知部」と称する。第2の接触検知部は、ユーザがフロアマット40に立っていることを検知すると、その検知結果を制御部10に出力するように構成される。
【0096】
ユーザは、フロアマット40に立った状態で操作パネル5を操作し、メニュー画面において、例えば上記と同様に、携帯端末4に記憶されている画像データを、画像処理装置3において印刷出力するように指示操作を行う。第2の接触検知部は、ユーザがフロアマット40に立っていることを検知すると、ユーザとの接触面積を検知して、その検知結果を通信制御部26に出力する。通信制御部26は、第2の接触検知部から検知結果を受け取ると、フロアマット40を介して携帯端末4とデータ通信を開始する。第2の実施形態においては、ユーザが既にフロアマット40に立った状態でデータ通信が開始されるので、第1の実施形態のように操作パネル5にタッチすることを案内する案内画面35は表示されない。これにより、ユーザは、人体通信によるデータ通信が開始されるとき、フロアマット40に立っているだけで良く、例えば指先などを操作パネル5に接触する必要が無いので身体的な負担が軽減される。
【0097】
フロアマット40を介してデータ通信が開始されると、決定部27は、上記と同様にして通信効率を取得する。この場合、ノイズを検知する更なるノイズ検知センサをフロアマット40に設け、決定部27は、その更なるノイズ検知センサによる検知結果に基づき通信効率を判断しても良い。通信効率を改善する必要がある場合、決定部27は、対応テーブル36を参照し、通信効率が向上する接触面積を決定する。
【0098】
通信制御部26は、決定部27によって通信効率が向上する接触面積が決定されると、以下のように処理を行なう。まず、通信制御部26は、第2の接触検知部から受け取る検知結果に基づきフロアマット40と足元との実際の接触面積を取得する。そして、通信制御部26は、通信効率が向上する接触面積から実際の接触面積を差し引いた分の差分面積を算出し、算出した差分面積に関する情報をパネル制御部25に出力する。パネル制御部25は、通信制御部26からその情報を受け取ると、報知画面37において差分面積を表示する。その差分面積は、図8に示した報知画面37のように、例えば手形を模した態様で表示される。
【0099】
ユーザが操作パネル5に表示されている報知画面37に対して例えば手の平を接触させると、フロアマット40と操作パネル5のそれぞれを介する2つの通信経路が存在することになる。そして、携帯端末4から出力される出力信号は、それら2つの通信経路を経てデータ通信装置2に入力される。データ通信装置2の通信制御部26は、上記2つの通信経路を経て入力される入力信号を例えば合成することにより取得する。これにより入力信号が増加されるのでS/N比が向上する。又は、通信制御部26は、フロアマット40を介して入力する入力信号とノイズとを峻別できない場合に、通信経路を操作パネル5に切り替えて、その操作パネル5を介して入力する入力信号を取得しても良い。通信制御部26は、画像データの受信が完了するまで、通信効率を改善する必要があるか否かを判断し、通信効率を改善する必要があると判断すると、上記の処理を繰り返して行なう。その後の処理は上記と同様であるので説明を省略する。
【0100】
また、携帯端末4のバッテリの消費を節約するために以下のように構成しても良い。例えば通信制御部26の決定部27は、データ通信を開始する前又は後の所定タイミングにおいて、対応テーブル36を参照して、第2の接触検知部により検知される実際の接触面積に対応する信号レベルを最適信号レベルとして決定する。そして、通信制御部26は、その最適信号レベルを携帯端末4に通知する。携帯端末4は、通信制御部26から最適信号レベルを受け取ると、その信号レベルで画像データを送信する。
【0101】
また、通信制御部26は、報知画面37を表示した後に、フロアマット40と操作パネル5とに対する実際の接触面積に基づき信号レベルを決定しても良い。例えば、通信制御部26は、第2の接触検知部から受け取るフロアマット40と足元との実際の接触面積と、操作パネル5と例えば手の平との接触面積と、の合計面積を算出する。そして、通信制御部26は、対応テーブル36を参照して、その合計面積に対応する信号レベルを特定し、携帯端末4に対してその信号レベルの増加指示を行なう。携帯端末4は、その増加指示に基づき出力信号の出力レベルを増加させてデータ通信装置2に送信する。このように第2の実施形態においても、フロアマット40又は操作パネル5と、人体との実際の接触面積に基づき信号レベルを決定することが可能であるので、携帯端末4の電力効率を向上させることができる。
【0102】
以上のように、本実施形態では、データ通信装置2は、操作パネル5に内蔵される人体通信部6と、フロアマット40に内蔵されるマット通信部40aとを備えている。またデータ通信装置2は、まずフロアマット40を介して人体通信によるデータ通信を開始する構成である。そして、データ通信装置2は、通信効率を改善する必要があると判断される場合に、増加するべき接触面積を操作パネル5において報知する構成である。これによりユーザは、人体通信によるデータ通信が開始されるとき、フロアマット40に立っているだけで良く、例えば指先などを最初から操作パネル5に接触し続ける必要が無いので身体的な負担が軽減される。また、データ通信装置2は、人体通信部6とマット通信部40aとを備えることで、例えば人体通信部6のみによって人体通信を行なう場合よりも大きな接触面積で人体通信を行なうことができる。これによりデータ通信装置2は、例えば操作パネル5のみを用いて人体通信を行なうよりも通信効率を向上させて人体通信を行なうことができる。
【0103】
以上、本発明に関する実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0104】
例えば、上述した第1の実施形態では、データ通信が開始されてから通信効率を取得するように構成されているが、S/N比を算出する手法によれば、以下に説明するようにデータ通信を開始する前に通信効率を取得することができるので、比較的早い段階で通信効率を向上させる接触面積を報知することが可能である。
【0105】
すなわち、案内画面35が表示された後、操作パネル5に対して例えば指が接触されると、通信制御部26は、対応テーブル36を参照して、そのときの実際の接触面積に対応する信号レベルを特定する。そして、その信号レベルと、ノイズ検知部により検知されるノイズレベルとに基づき大まかなS/N比を算出することが可能である。これによりデータ通信が開始される前にS/N比を取得することが可能になるので、そのS/N比に基づいて、例えば、データ通信が開始される前や開始された直後に報知画面37を表示することが可能である。この場合、ユーザが接触面積を変更すると比較的早い段階で通信効率が向上するので、データ転送所要時間を短縮させることができる。
【符号の説明】
【0106】
1 データ通信システム
2 データ通信装置
3 画像処理装置
4 携帯端末
5 操作パネル(報知手段)
5c 接触検知部(接触面積検知手段)
6 人体通信部(第1のデータ通信手段)
26 通信制御部(通信制御手段)
27 決定部(決定手段)
40a マット通信部(第2のデータ通信手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体と接触することにより、その接触部分から人体を介してデータ通信を行なうデータ通信手段と、
前記データ通信手段によってデータ通信が行われる場合の通信効率を取得し、その通信効率が所定値よりも低い場合に増加させるべき前記接触部分の接触面積を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定される接触面積を所定の態様で報知する報知手段と、
を備えることを特徴とするデータ通信装置。
【請求項2】
前記データ通信手段によってデータ通信を行うときのノイズレベルを検知するノイズ検知手段を更に備え、
前記決定手段は、前記データ通信手段によってデータ通信を行なう場合の信号レベルと、前記ノイズ検知手段によって検知されるノイズレベルとに基づいて算出した通信効率を取得することを特徴とする請求項1に記載のデータ通信装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記データ通信手段によってデータ通信を行うときのデータ通信速度を測定することによって通信効率を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ通信装置。
【請求項4】
前記データ通信手段における人体との接触面積を検知する接触面積検知手段と、
前記接触面積検知手段によって検知される前記データ通信手段と人体との接触面積に基づき調節すべき信号レベルを判断する通信制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のデータ通信装置。
【請求項5】
前記データ通信手段は、ユーザによる指示操作を入力する操作パネルに設けられる第1のデータ通信手段と、前記データ通信装置の所定周囲に敷設されるフロアマットに設けられる第2のデータ通信手段とを備え、
前記第2の通信手段は、ユーザが前記フロアマット上に位置する状態で人体を介してデータ通信を開始するものであり、
前記決定手段は、前記第2の通信手段を介して行なうデータ通信の通信効率が所定値よりも低い場合に、前記第1のデータ通信手段に対して増加すべき接触面積を決定することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のデータ通信装置。
【請求項6】
人体と接触するデータ通信手段の接触部分と人体とを介してデータ通信を行うデータ通信方法であって、
(a)前記接触部分と人体とを介してデータ通信を行う場合の通信効率を取得するステップと、
(b)前記ステップ(a)によって取得される通信効率が所定値よりも低い場合に増加させるべき前記接触部分の接触面積を決定するステップと、
(c)前記ステップ(b)により決定される接触面積を所定の態様で報知するステップと、
を有することを特徴とするデータ通信方法。
【請求項7】
(d)前記データ通信手段によってデータ通信を行うときのノイズレベルを検知するステップを更に有し、
前記ステップ(b)は、前記データ通信手段の接触部分と人体とを介してデータ通信を行なう場合の信号レベルと、前記ステップ(d)によって検知されるノイズレベルとに基づいて算出した通信効率を取得することを特徴とする請求項6に記載のデータ通信方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)は、前記データ通信手段の接触部分と人体とを介してデータ通信を行なう場合のデータ通信速度を測定することによって通信効率を取得することを特徴とする請求項6又は7に記載のデータ通信方法。
【請求項9】
(e)前記データ通信手段における人体との接触面積を検知するステップと、
(f)前記ステップ(e)により検知される接触面積に基づき調節すべき信号レベルを判断するステップと、
を更に有することを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載のデータ通信方法。
【請求項10】
前記データ通信手段は、ユーザによる指示操作を入力する操作パネルに設けられる第1のデータ通信手段と、前記データ通信装置の所定周囲に敷設されるフロアマットに設けられる第2のデータ通信手段とを備え、
(g)ユーザが前記フロアマット上に位置する状態で人体と前記第2の通信手段とを介してデータ通信を開始するステップを更に有し、
前記ステップ(b)は、前記第2の通信手段を介して行なうデータ通信の通信効率が所定値よりも低い場合に、前記第1のデータ通信手段に対して増加すべき接触面積を決定することを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載のデータ通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−46337(P2013−46337A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184557(P2011−184557)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】