説明

トイレ機器

【課題】 使用者が着座する便座と、人体の皮膚に接触させ脳に音波信号を伝える体伝導聴覚機とを有するトイレ機器において、前記体伝導聴覚器を前記便座の前記使用者の太股部に直接接触させる位置に設けた超音波振動子を介して、使用者の脳に音波信号を伝える。
【解決手段】 使用者が着座する便座と、前記便座上面に配置され前記使用者の太腿部の皮膚に接触させる超音波振動子と、前記超音波振動子に超音波出力を出し前記皮膚を介して前記使用者の脳に音波信号を伝える体伝導聴覚機と、を有することを特徴とするトイレ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が着座する便座と、人体の皮膚に接触させ脳に音波信号を伝える体伝導聴覚機とを有するトイレ機器において、前記体伝導聴覚器を前記便座の前記使用者の太股部に直接接触させる位置に設けたことを特徴として、トイレ機器の便座に設けられた超音波振動子を介して、使用者の脳に音波信号を伝える体伝導聴覚機を有する機器に応用される。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄水により洗浄される便器本体を快適に使用したいとの要求が高まっており、この要求に答えるべく、楽器、自然、人等の音声をスピーカーより出力可能なトイレ用音響装置が提案されている。(特許文献1)
このトイレ用音響装置によれば、便器本体を使用する者のトイレの入退室を検知して音声をスピーカより音楽を流すので、落ち着いた気分で用便を足すことができ、トイレ空間で、快適な環境を提供することができる。
【0003】
また、別の課題として現在、日本国内に聴覚障害者が約35万人おり、老人性難聴なども含めると約600万人にもなるという。(平成8年厚生省調べ)その聴覚障害者にとってはスピーカーからの音や音声操作情報は聞こえていない場合がある。そのために、空間に音を流して使用者に聞かせる技術でなく、直接、人体を通して、難聴者のために装着制限のある骨伝導技術や、比較的装着制限のない体伝導聴覚機が提案されている。(特許文献2)
【0004】
このように体伝導聴覚機は、音波として人に与えるものではなく、超音波振動に変換して人の体表面に与えるものである。そのため、超音波振動が筋肉などの軟部組織又は骨あるいはその両方を介して人体に伝達されることに耳に達し、聴覚神経を通って脳の聴覚野に届き音として感じることができる原理である。そのため、体伝導聴覚機は、直接皮膚に超音波振動を伝えるために、その超音波振動子をヘッドホーンのような先に設け、耳の近くに装着する案が提案されている。
【特許文献1】特開平9−125492号公報
【特許文献2】特開2001−320799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の音響装置ではスピーカーから音声が出力されるため、周囲にも音が聞こえてくるので、特に公の場などで使用者がだけでなくその周りの人達に聞こえてしまうので、周囲の人には騒音となってしまう。そのために、音楽等を個人で楽しむ場合、ヘッドホーンのように周囲に聞こえないようにする必要があるが、その場合、耳にヘッドホーン装置を装着しなければならない。
【0006】
また、トイレ機器で、使用者が用便をする場合、太腿部の皮膚を露出する。その自然な行為により、使用者にとってわずらわしく、より自然な状態での音楽を楽しむことができる形態及び機器が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、使用者が着座する便座と、前記便座上面に配置され前記使用者の太腿部の皮膚に接触させる超音波振動子と、前記超音波振動子に超音波出力を出し前記皮膚を介して前記使用者の脳に音波信号を伝える体伝導聴覚機と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために請求項2に記載の発明は、前記超音波振動子は、前記便座の上面で左右の太腿部の皮膚に接触する位置にそれぞれ設けられたことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のトイレ機器において、楽曲又は音声データを再生しその再生信号を出力する再生手段を有し、前記再生手段は前記体伝導聴覚機に前記再生信号を伝えるとともに、前記体伝導聴覚機は前記再生信号を前記超音波振動子に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗浄水により洗浄される便器本体とともに用いられるものであって、前記便器本体を使用する者を検知可能な検出手段と、音声データを記憶可能な外部記憶装置が設けられたトイレ装置であって、前装置の便座部分で人体の皮膚が確実に直接接触する箇所に体伝導聴覚機を設置し、そこから音声データを超音波として受け取ることで脳に伝わり音として感じることができるという効果がある。
【0011】
請求項1に記載の発明のトイレ機器において、使用者は、用便をする場合太腿部の皮膚を露出する。その自然な行為により、その太腿部の皮膚が接触させる便座上部にある超音波振動子を通して、使用者の脳へ機器の操作使用ガイドや音楽を伝えられる。つまり、トイレ使用者だけに操作使用ガイドや音楽を伝えることができるので、周りの人達を気にせず音楽を楽しめるようになる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、使用者が便座に座る場合、左右に片よって座ったりして左右どちらかに重心を傾けたりしても、確実に左右どちらかの超音波振動子が触れる状態が作り出せ、確実に情報が伝えることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、特に音楽を伝える場合、Lチャンネル、Rチャンネルの音楽データに対応した超音波振動子を便座の左右に設けられるので、ステレオで音楽を楽しむことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
使用者が着座する便座と、前記便座上面に配置され前記使用者の太腿部の皮膚に接触させる超音波振動子と、前記超音波振動子に超音波出力を出し前記皮膚を介して前記使用者の脳に音波信号を伝える体伝導聴覚機と有するトイレ装置において、前記超音波振動子は、前記便座の左右部位の上面にそれぞれに設けられ、楽曲又は音声データを再生する再生手段を有するとともに、前記再生手段から出力を前記体伝導聴覚機に伝え超音波振動子より出力することを特徴とすることを最良の形態とする。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
本実施形態のトイレ機器は、図1に示すように、トイレ機器に組み込まれている。このトイレ機器では、洗浄水により洗浄される陶磁器製の洋風便器本体1の上部には、便器を使用する者の局部を洗浄可能な洗浄ノズル6を設けた便座装置2を備えている。その便座装置2には、便座5、便蓋4も開閉可能に設けられ、また、このトイレ機器には、便器本体1を使用するものを検知可能な人体検知センサ3を備えている。
【0017】
また、このトイレ装置において、便座装置2には、音声データを記憶可能な外部記憶装置と、外部記憶装置に記憶された音声データを出力可能な体伝導聴覚機と、をこの部分に内蔵している。
【0018】
この図2(a)に超音波振動子7を設けた便座を示す。洗浄ノズル6より温水を噴射し、局部に当たる。最適な位置は便座上部の局部の両側にそれぞれ設けられている。およそ、この位置に使用者の大腿部がきて、便座5と必ず接触するので最適である。便座上部でもの先端部等は人体と触れる部分でないので適さない。
また、図2(b)について説明する。通常、洗浄ノズル6は前後方向に各自体型に合わせて調整して使用する。そのような場合、洗浄ノズル6は前後方向に移動させることができる範囲に相当する範囲でも、確実に便座5と必ず接触するよう長円形に構成させているので最適である超音波振動子7が移動可能な範囲をカバーできる。
【0019】
次に、図3は制御ブロック図を示す。
ここでは、超音波振動子7、体伝導聴覚機13、出力調整部8、再生手段13、制御手段15より構成される。制御手段15より、使用者の音楽再生操作を検出すると、再生手段14に伝える。そして、再生手段14により音楽を再生してその音楽再生信号を体伝導聴覚機13へ出力する。そして、体伝導聴覚機13はこの音楽信号を変換して超音波振動子13に伝える。そして、超音波振動子13を通して人体に伝わっていく。また、出力調整部8により、この超音波振動子13を伝わっていく信号の大きさを調整できる。
【0020】
次に、図4について説明する。便座装置2の側面に、体伝導聴覚機の出力調整部8を設けている。これは、超音波振動子7に出力する体伝導聴覚機の出力を調整可能にしているボリュームに相当する。このような出力調整操作をトイレ機器のどこかに設けられていればいい。
【0021】
以上のように構成されたトイレ機器を使用して、実施形態の動作フローを図5に示す。前記便器装置2に電源が供給されると待機状態(S101)になる。そして、使用者の有無を人体検出センサ3で検出させる。トイレ機器を使用されず人体検出センサ3が人体を検出しない場合(S102:No)は待機状態(S101)のままとなる。
【0022】
次に、使用者が用便を足すために便座5に座ると人体検出センサ3が人体を検出すると(S102:Yes)、楽曲又は音声データを再生する再生手段より体伝導聴覚機に音声データが出力される(S103)。体伝導聴覚機の出力調整部8にて、使用者の好みにより音声データの出力を調整できる。(S104)
【0023】
使用者が終わり便座から離れると人体検出センサ3がOFF(S105:No)になり、音声データの出力がOFFして待機状態(S101)に戻る。これにより、便座に座らないと音を感じないため、音声データの消し忘れが発生してしまうが、使用中のみの動作が可能になり使用者も不自由なく快適に使用することができる。
【0024】
別の実施形態2として、図6に示すように前記トイレ機器1が設置されている同じ室内9に、体伝導聴覚機8などを遠隔操作可能なリモコン10と、複数のスピーカー12を備え、前記リモコン10とスピーカー12のどちらかにも外部記憶装置を備え、前記外部記憶装置に記憶された音声データをスピーカー12から出力されるように設けられている。ここでは、スピーカー12に外部記憶装置と、音声データを操作するシステムである。ここで、リモコン10ですべての操作ができるようになっている。スピーカー12より、音楽を聞くこともできるし、体伝導聴覚機8からでも音楽を楽しむことが可能である。
【0025】
次に、図7にここでのリモコン10の詳細図を示す。このリモコン10に前記体伝導聴覚機7を操作するダイヤルスイッチ17等を設け、便座5に使用者が座り、人体検出センサ3がONすることで、前記体伝導聴覚機に音声データが出力されるが、操作の向上を図るために、前記リモコン10でも前記体伝導聴覚機7のON/OFFや、出力の調整を制御できる。
【0026】
また、同室内にスピーカー12があることで、前記体伝導聴覚機7とは異なる音声データを得ることが可能になる。例えば、前記体伝導聴覚機7で音楽を聴きながら、前記スピーカーで前記便器装置2の操作情報を同時に得ることが可能になる。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のトイレ装置は、使用者が着座する便座と、人体の皮膚に接触させ脳に音波信号を伝える体伝導聴覚機と、前記便座に使用者の太股部に直接接触させる位置に超音波振動子を設けて、使用者の脳に音波信号を伝える体伝導聴覚機を有する機器に応用される。
これにより、空気を通さず、直接、使用者の皮膚には音波信号でさまざまな用途のコンテンツを伝えることができる。(たとえば、音楽のみならず、使用ガイド、広告等)
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態を示すトイレ機器の斜視図である。
【図2】本発明の第一及び第二形態の便座への超音波振動子の取付図である。
【図3】本発明の制御ブロック図である。
【図4】本発明の便座装置へ体伝導聴覚機の出力調整部の取付図である。
【図5】本発明の実施形態の動作フローチャートである。
【図6】本発明の実施形態を示すトイレ機器のシステム図である。
【図7】本発明の実施形態を示すリモコンの正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…トイレ機器
2…便座装置
3…人体検出センサ
4…便蓋
5…便座
6…洗浄ノズル
7…超音波振動子
8…体伝導聴覚機の出力調整部
9…トイレ室内
10…リモコン
11…人(使用者)
12…スピーカー
13…体伝導聴覚機
14…再生手段
15…制御手段
17…リモコンにおける体伝導聴覚機の出力調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する便座と、前記便座上面に配置され前記使用者の太腿部の皮膚に接触させる超音波振動子と、前記超音波振動子に出力し前記皮膚を介して前記使用者の脳に音波信号を伝える体伝導聴覚機と、を有することを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
請求項1記載のトイレ機器において、前記超音波振動子は、前記便座の上面で左右の太腿部の皮膚に接触する位置にそれぞれ設けられたことを特徴とするトイレ機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトイレ機器において、楽曲又は音声データを再生しその再生信号を出力する再生手段を有し、前記再生手段は前記体伝導聴覚機に前記再生信号を伝えるとともに、前記体伝導聴覚機は前記再生信号を前記超音波振動子に出力することを特徴とするトイレ機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−295864(P2008−295864A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147079(P2007−147079)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】