説明

トイレ機能付き椅子

【課題】 普段は通常の椅子として使用することができ、災害等の緊急時には迅速に簡易トイレとして使用することができる椅子を提供する。
【解決手段】
前脚部7および後脚部11を形成した座部用フレーム5の上部に、開口部25を形成した座部本体13を固定する。座部本体13の上部には、ヒンジ部15を介して先端部が上方に揺動可能となるように便座17を取り付ける。便座17の上部に蓋体19を被せるとともに、この蓋体19を、座部本体13の上部に、ヒンジ部15を介して先端部が上方に揺動可能となるように取り付ける。蓋体19および便座17を覆い隠すように、蓋体19および便座17に袋状のクッション体21を被せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時等に、簡易トイレとして用いることができるトイレ機能付き椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害時等に、簡易トイレとして用いることができるものとして、折りたたみ可能なパイプ椅子状のものが考えられている。この簡易トイレは、座部に排泄用の開口部が形成されていて、椅子状に展開し、座部に腰掛けて使用するといったように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−125974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたようなものは、プレート状の座部それ自体に排泄用の開口部を形成しているので、専ら、非常時の簡易トイレとしての機能しか有していない。したがって、通常は、折りたたんで収容しておくだけのものとなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、普段は通常の椅子として使用でき、しかも、災害等の緊急時には、簡易トイレとして使用することができるトイレ機能付き椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明のトイレ機能付き椅子は、座部と、この座部を支える脚部と、を備え、座部は、開口部およびこの開口部に沿って設けられた便座を有する座部本体と、座部本体に揺動可能に取付けられて便座に被せられた蓋体と、を有していて、蓋体の上に腰掛けることができ、かつ、蓋体を上方に揺動させた状態で、便座に腰掛けることができるように構成されているものである。蓋体の上に快適に腰掛けることができるように、座部には、例えば、蓋体に着脱可能に被せることができる袋状のクッション体が設けられる。クッション体は、蓋体および便座に被せるのが好ましいが、蓋体のみに被せて用いることも可能である。また、クッション体が汚れたり、破損した場合等に備えて、このクッション体と同じクッション体を用意して、クッション体を取替えて使用するようにしてもよい。このトイレ機能付き椅子は、蓋体の上に腰掛けることができるので、通常は椅子として、例えば、リビング等で用いることができる。また、蓋体を上方に揺動させることにより、便座に腰掛けることができるので、災害等により、家庭のトイレが使用不能になった場合には、簡易トイレとして用いることができる。なお、簡易トイレとして用いる場合は、例えば、座部本体の下側に排泄物を溜めるためのビニール袋を内側に入れた容器(例えば、プラスチック製のゴミ容器等)を設置することにより、後処理を簡単に行うことができる。
【0007】
災害等により、家庭のトイレを使用することができず、かつ、避難場所の仮設トイレも不足している場合には、下水用マンホールを利用して簡易トイレを設置することができるようにする。具体的には、下水用マンホールの蓋を開けた状態で、マンホールの蓋の受け枠に設置することができるマンホール設置用の台座を用いたトイレ機能付き椅子を用いる。このトイレ機能付き椅子は、座部本体の下側に、下水用マンホールの蓋の受け枠に設置することができるマンホール設置用の台座が着脱可能に設けられていて、マンホール設置用の台座は、座部本体の開口部と連なる、上下部が開口された筒状体を備えていて、筒状体の下部には、マンホールの蓋の受け枠に取付けるための基体が備えられ、かつ、上部には座部を支持するための座部用支持体が備えられていて、座部本体が座部用支持体に支持された状態で、脚部の下端がマンホールの蓋の受け枠の上方に位置するように形成されているものである。なお、座部のマンホール設置用の台座本体への取付けを安定させるために、例えば、座部本体と座部用支持体とを、ボルトおよびナット等を用いて固定するように構成することも可能である。
【0008】
また、トイレ機能付き椅子をマンホールの蓋の受け枠に設置した場合、このトイレ機能付き椅子の使用者が外から見えないようにするために、マンホール設置用の台座には、例えば、人の出入りが可能な覆い体が着脱可能に設けられる。この覆い体は、具体的には、マンホール設置用の台座に着脱可能に設けられた骨材と、この骨材に着脱可能に取付けられた、開閉可能な出入り口部が形成されたカバーシートと、一端が前記マンホール設置用の台座に左右方向に回転可能に取付けられ、他端が前記カバーシートの出入り口部に固定された、開閉用の揺動アーム材と、を有して構成されていて、開閉用の揺動アーム材を左右方向に回転させることによって、カバーシートの出入り口部を開閉することができるように構成されているものである。覆い体は、少なくとも座部の周りを覆うように構成するが、座部の上方も覆うように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように、本発明のトイレ機能付き椅子は、蓋体の上に腰掛けることができ、かつ、蓋体を上方に揺動させた状態で便座に腰掛けることができるので、通常は、椅子として使用することができ、災害等の場合には、簡易トイレとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明に係るトイレ機能付き椅子を示す斜視図、図2は図1の2−2線に沿う拡大断面図である。
【0012】
トイレ機能付き椅子1は、鉄製やステンレス合金製等のパイプ材で形成された、前後方向に延びていて、かつ、後端部で上方に90度又はほぼ90度の角度を有して延びている立ち上がり部3が形成された左右の座部用フレーム5、5と、この左右の座部用フレーム5、5の先端部で垂直下側方向又はほぼ垂直方向に延びている前脚部7と、左右の座部用フレーム5、5の立ち上がり部3、3にそれぞれ溶接等によって固定された、パイプ材を曲げ加工して略逆U字状に形成された背もたれ部9と、この背もたれ部9の左右の下端部から、垂直下側方向又はほぼ垂直下側方向に延びている後脚部11と、左右の座部用フレーム5、5の上部に配置されて複数本の皿ビス、接着剤等の固定手段によって固定された、上部に便座17を有する座部本体13と、座部本体13の便座17に被せられ、この座部本体13の後側の部位に、ヒンジ部15を介して先端部が上方に揺動可能に取付けられた蓋体19と、この蓋体19および便座17を覆い隠すように、蓋体19に着脱可能に被せられた袋状のクッション体21とで構成されている。なお、左右の座部用フレーム5、5、便座17を有する座部本体13および蓋体19で座部23を構成している。
【0013】
座部本体13は、木製・プラスチック製等の板材からなり、左右側部が左右の座部用フレーム5、5に沿う形状で形成された、ほぼ中央部で、前側が開口されたほぼ卵型形状の開口部25(図4参照)を有するベース板14と、このベース板14の上部にヒンジ部15を介して先端部が上方に揺動可能に取付けられた便座17と、を有して構成されている。
【0014】
便座17は、硬質熱可塑性樹脂やカーボンファイバ入り合成樹脂等の強度性を有する樹脂材で形成されていて、輪郭形状は、例えば、卵形状で形成されている。中央部又はほぼ中央部には、例えば、楕円状又はほぼ楕円状となる開口部27が形成されていて、この開口部27は、ベース板14の開口部25の上側に配されている。また、便座17の先端部は、ベース板14の先端部よりも前側に突出するように設けられている。なお、便座17は、前側が開口されたもの(U字型)で構成することも可能である。
【0015】
図3は、ヒンジ部15の構造を示した断面図である。
【0016】
ヒンジ部15は、便座17の後端両側部寄りの部位に突出して一体形成された、枢支ピン挿入孔29を有する一対の取付片31、31と、この一対の取付片31、31に隣接して座部本体13のベース板14に固定された、取付片31の枢支ピン挿入孔29と連なる別の枢支ピン挿入孔33が形成された一対の支持片35、35と、この一対の支持片35、35の枢支ピン挿入孔33、33および一対の取付片31、31の枢支ピン挿入孔29、29にそれぞれ挿入された枢支ピン37と、を有して構成されている。なお、便座17の一対の取付片31、31の間には、後述する蓋体19の取付片39が配されていて、この取付片39は、枢支ピン37に回転可能に取付けられている。
【0017】
一対の支持片35、35の下部には、この一対の支持片35、35を座部本体13のベース板14に固定するためのボルト材41、41が固定されている。なお、座部本体13のベース板14には、ボルト材41、41が挿入される固定用孔43、43が予め形成されていて、この固定用孔43、43にボルト材41、41を通して、ナット45、45で締め付けることによって固定する。
【0018】
蓋体19は、例えば、便座17と同じ材質で形成されていて、便座17の輪郭形状に沿う形状で形成されているとともに、後端部には、取付片39が一体形成されている。また、蓋体19は、上面部が平坦状又はほぼ平坦状に形成されていて、内面外周部の複数個所(例えば、6個所)には、便座17の上面と接する支持片46が固定されている(図4参照)。このように構成された蓋体19は、取付片39をヒンジ部15の枢支ピン37に回転可能に取付けているので、先端部を上下方向に揺動させることができる。なお、蓋体19および便座17を樹脂製で形成したが、人が座っても破損しない強度を有する材料であれば、例えば、木材等で形成することも可能である。
【0019】
クッション体21は、内部にスポンジ等の発泡樹脂材47が収容されていて、外側が布製や網製等のカバー体49で覆われた、四角形状又はほぼ四角形状で平坦状に形成されたクッション本体51と、このクッション本体51の下部を覆って、前記クッション本体51の前部および左右両側部に縫製等によって固定された布製や網製等の下部シート材53と、で構成されていて、この下部シート材53とクッション本体51とで袋状に形成されている。クッション本体51の後端部には、後側に広げられて、蓋体19や便座17の後端部およびヒンジ部15を覆い隠すことができる、布等で形成された被覆シート材55が縫製等によって固定されている。被覆シート材55の後端両側部には、二本で一組となる取付け用紐57が縫製等によってそれぞれ固定されていて、この取付け用紐57は、座部用フレーム5の立ち上がり部3およびこの立ち上がり部3と連なっている背もたれ部9の下側の外周に、巻くように配した状態で結ぶことができるように構成されている。なお、クッション体21は、後部に挿入口59が設けられていて、この挿入口59より蓋体19(あるいは蓋体19および便座17)に被せることができる。クッション体21を蓋体19(あるいは蓋体19および便座17)に被せた後は、被覆シート55を広げて蓋体19や便座17の後端部およびヒンジ部15を覆い隠すとともに、取付け用紐57を、座部用フレーム5の立ち上がり部3およびこの立ち上がり部3と連なっている背もたれ部9の下側の外周に巻くように配して結ぶ。なお、クッション体21は、クッション本体51と下部シート材53とで袋状に形成したが、例えば、2個のクッション本体51、51を重ねて前部および左右両側部を縫製等によって固定して袋状にしたり、長尺寸法で形成されたクッション本体51を中央部より前後方向に二つ折りして、左右両側部を縫製等によって固定することにより袋状にすることも可能である。
【0020】
図4は本発明に係るトイレ機能付き椅子1を簡易トイレとして使用する状態を示した図である。
【0021】
以上のように構成されたトイレ機能付き椅子1は、通常は椅子として用いることができるとともに、災害時等においてはクッション体21を外して、蓋体19を上方に揺動することによって簡易トイレとして用いることができる。なお、簡易トイレとして用いる場合は、座部本体13のベース板14下側に、例えば、排泄物を溜めるためのビニール袋を内側に入れた容器(例えば、プラスチック製のゴミ容器等)60を設置しておく。なお、トイレ機能付き椅子1は、介護用の椅子としても用いることができる。この場合、身体の不自由な被介護者等は、トイレまで移動しなくても自室で排泄することが可能となる。
【0022】
図5は、別のトイレ機能付き椅子61のマンホール設置用の台座63を示した斜視図、図6は、別のトイレ機能付き椅子61の要部拡大断面図である。
【0023】
別のトイレ機能付き椅子61は、座部本体13のベース板14の下側にマンホール設置用の台座63を設けることができるように構成したものであり、トイレ機能付き椅子1の前脚部7、後脚部11、背もたれ部9、ヒンジ部15、便座17および蓋体19を同一構成又はほぼ同一構成で有して、トイレ機能付き椅子1と同一又はほぼ同一の構成を有している。座部本体13のベース板14の下面の前後左右側の部位には、マンホール設置用の台座63の上面部に設置することができる取付け用脚部材65、65、67、67が固定されている。前側の取付け用脚部材65は、例えば、樹脂パイプ材で形成されていて垂直下側方向又はほぼ垂直下側方向に延びるように形成された脚本体69と、この脚本体69の上端部に設けられた、座部本体13のベース板14の下側に固定ビスや接着剤等の固定手段によって固定された固定片71とで構成されている。後側の取付け用脚部材67、67は、ヒンジ部15のボルト材41、41で構成されている。取付け用脚部材65、65、67、67の下端部には、ゴム材で形成されたキャップ部材73が被せられている。
【0024】
図7は、別のトイレ機能付き椅子61をマンホールの蓋の受け枠に設置した状態を横から見た場合の断面図、図8は、別のトイレ機能付き椅子61をマンホールの蓋の受け枠に設置した状態を上から見た場合の断面図である。
【0025】
マンホール設置用の台座63は、マンホールの蓋の受け枠75内に嵌まる大きさで形成されていて、中央部又はほぼ中央部に円状や楕円状等の第1の孔部77が形成された、木材や金属材等からなる円盤状の基体79と、この基体79の上側に設けられた、例えば、金属板を曲げ加工して両端部を溶接等することによって、上下部が開口した筒状に形成された、内部に排泄路81を有する筒体83と、この筒体83の上側を覆うように設けられた、金属板等で、例えば、四角形状に形成されていて、前記排泄路81と連なる第2の孔部85が形成された座部用支持体87と、を有して構成されている。また、マンホール設置用の台座63は、取付け用脚部材65、65、67、67を、座部用支持体87の上部に載せて支持させた場合に、前後脚部7、11の下端部が少なくとも地上に位置するように(具体的には、前後脚部7、11の下端部が基体79の下端部から約5cm上方に位置するように)形成されている。
【0026】
座部用支持体87の上部には、座部本体13のベース板14の下面に設けられた取付け用脚部材65、65、67、67が載せられるが、この座部用支持体87の上部の、前記取付け用脚部材65、65、67、67が載せられる部位には、前記取付け用脚部材65、65、67、67をずれないように支持するための取付け用凹部89、89、89、89が形成されている。
【0027】
座部用支持体87の下面および基体79の上面には、四角形状の枠体91、91がビスや溶接等によって固定されていて、この枠体91、91の角部に、L字鋼からなる脚材93、93、93、93が、ビスや溶接等によって固定されている。
【0028】
また、マンホール設置用の台座63には、人の出入りが可能な覆い体97が着脱可能に取付けられる。覆い体97は、脚材93、93、93、93の下側に固定具99、99、99、99を介して取付けられる骨材101、101、101、101と、この骨材101、101、101、101に着脱可能に取付けられる、出入り口部103が形成されたカバーシート105と、を有して構成されている。
【0029】
固定具99は、金属板をプレス成型等することによって形成された、骨材101を着脱可能に固定するための固定具本体107と、固定具本体107を脚材93に固定するための蝶ボルト109、109と、で構成されている。固定具本体107の、骨材101と接する部分には、骨材101の外周面形状に沿うように形成された取付け用凹部111が形成されている。
【0030】
骨材101は、アルミやアルミ合金等の金属で断面円弧形状の棒材を曲げ加工することによって形成されていて、先端部が逆L字状に形成された、固定具99によって固定される固定部113と、この固定部113の後端に一体形成された、水平方向又はほぼ水平方向に、例えば、30cm突出するように形成された支持部115と、この支持部115の先端部にリング部117を介して、上方に90度又はほぼ90度曲げられて形成された、高さ寸法を有する直線状の立設部119と、この立設部119の先端部に傾斜部121を介して一体形成されたリング部123とで構成されている。
【0031】
骨材101の固定具99への取付けは、以下のようにして行う。まず、固定具99の蝶ボルト109、109を緩めて固定具本体107の締め付け固定状態を解除する。次に、緩められた固定具本体107の取付け用凹部111内に骨材101の固定部113を位置させる。この状態で蝶ボルト109、109を脚材93に締め付けることによって固定する。
【0032】
カバーシート105は、テント等に用いられる布材等で形成されていて、内周面に骨材101のリング部117、123に縛り付けて固定することができる複数の固定紐125が縫い付け等によって固定された筒状の覆い部127と、この覆い部127の前部に形成された出入り口部103と、覆い部127の上部を覆うように形成された屋根部129とで構成されている。出入り口部103は、覆い部127に上下方向および水平方向に延びるスリットを形成することにより設けられていて、出入り口部103の開閉を確実に行うために、覆い部127の外面および内面には、複数の面ファスナー128が取付けられている。なお、出入り口部103の開け閉めは、面ファスナー128に限らず、ボタンやスナップホック等を用いてもよい。また、カバーシート105の上部には屋根部129が形成されているが、覆い部127の上部を開口させて構成してもよい。
【0033】
トイレ機能付き椅子61は、避難場所の仮設便所等が足りない場合に、下水用マンホールの蓋の受け枠75に設置して簡易トイレとして用いることができる。具体的には、まず、下水用マンホールの蓋を開けて蓋の受け枠75にマンホール設置用の台座63を被せて設置する。次に、座部用支持体87の取付け用凹部89、89、89、89に支持脚65、65、67、67の先端部を嵌めて取付ける。この状態で、骨材101、101、101、101を固定具99で脚材93に固定してから、骨材101、101、101、101の上部からカバーシート105を被せて、固定紐125を骨材101のリング部117、123に縛り付けて固定する。
【0034】
図9はマンホール設置用の台座63の別の使用例を示す図である。
【0035】
マンホール設置用の台座63には、座部用支持体87の後端部に、木材等で形成された板状の便座131および蓋体133を備えたオプション体135を着脱可能に固定することも可能である。オプション体135は、便座131の後端両側部寄りの部位に、便座131の先端部を上下方向に揺動させるための第1のヒンジ部材137、137が固定されていて、この第1のヒンジ部材137、137を座部用支持体87にビス材等によって着脱可能に固定できるように構成されている。また、便座131の第1のヒンジ部材137、137を固定した部分には、蓋体133の先端部を上下方向に揺動させるための第2のヒンジ部材139、139が固定されていて、この第2のヒンジ部材139、139に蓋体133の後端部が固定されている。なお、便座131には、マンホール設置用の台座63の第2の孔部85と連なる開口部141が形成されている。
【0036】
図10は別のトイレ機能付き椅子をマンホールの蓋の受け枠75に設置した状態を上から見た場合の断面図、図11は固定具で開閉用の揺動アーム材を脚材93に取付けた場合の説明図である。
【0037】
別のトイレ機能付き椅子142は、開閉用の揺動アーム材143を用いて、人の出入りを行うように構成したものであり、トイレ機能付き椅子61の座部本体13、前脚部7、後脚部11、背もたれ部9、ヒンジ部15、蓋体19およびマンホール設置用の台座63を同一又はほぼ同一の構成で有して、トイレ機能付き椅子61と同一又はほぼ同一の構成を有している。なお、開閉用の揺動アーム材143で開閉を行うために、覆い体97のカバーシート105に変えて、覆い部127の下側から屋根部129の頂上部に向かってスリットが形成されて出入り口部144が設けられたカバーシート106を用いる。開閉用の揺動アーム材143は、出入り口部144側に配された骨材101の前側に隣接されていて、左右方向に回転できるように固定具145によって骨材101とともに脚材93に固定されている。また、開閉用の揺動アーム材143は、骨材101と同じ又はほぼ同じ形状に形成されていて、骨材101と同じように固定部113、支持部115、立設部119、傾斜部121およびリング部117、123で構成されている。開閉用の揺動アーム材143およびこれに隣接する骨材101の各立設部119、119の外周部には、断面ほぼΣ字状あるいはC字状となる一対の枠部材146、146が取付けられている。枠部材146は、立設部119の軸回り方向に回転可能で、かつ、抜けないように取付けられている。
【0038】
一対の枠部材146、146には、錠147が取付けられていて、この錠147は、後端部が一方の枠部材146、146に枢支されていて、先端部が上下方向に揺動可能に設けられたバー部材149と、他方の枠部材146に固定された、バー部材149の受け具151とで構成されている(図12は、錠147の取付け状態を示した斜視図である。)
【0039】
図13は別のマンホール設置用の台座を示した斜視図、図14は別のトイレ機能付き椅子の要部拡大断面図である。
【0040】
別のトイレ機能付き椅子155は、座部本体13を固定手段157を介してマンホール設置用の台座153に固定することができるように構成したものであり、トイレ機能付き椅子61、142の前脚部7、後脚部11、背もたれ部9、ヒンジ部15およびマンホール設置用の台座63を同一又はほぼ同一の構成で有して、トイレ機能付き椅子61、142と同一又はほぼ同一の構成を有している。固定手段157は、トイレ機能付き椅子61の前側の取付け用脚部材65、65に変えて、座部本体13の下面の前側の左右部位に、複数のビス159によって固定された座付きナット161、161と、座部用支持体87の前側の左右部位に取り付けられた、前記座付きナット161、161にねじ付けて固定するための固定用ボルト163、163と、を有して構成されている。座部用支持体87の前側の左右部位には、ボルト挿入孔165、165が形成されていて、座部用支持体87の下面のボルト挿入孔165、165形成部位には、前記固定用ボルト163、163を座部用支持体87に取付けるための座付きナット167、167が複数のビス169によって固定されている。
【0041】
座部本体13をマンホール設置用の台座153に固定する場合は、固定用ボルト163、163をねじ回していくことにより、ねじ部先端をボルト挿入孔165より突出させるとともに、このねじ部先端を、座部本体13に固定された座付きナット161のねじ部にねじ付けることによって固定する。
【0042】
なお、トイレ機能付き椅子1、61、142、155は、座部本体13の上部に背もたれ部9を構成しているが、背もたれ部9のない構成にしてもよい。
【0043】
また、便座17(131)、蓋体19(133)の形状やクッション体21の形状は、多様な形状で構成してもよい。
【0044】
さらに、クッション体21内に板材などの心材を入れて構成することにより、蓋体19を用いないで構成することも可能である。この場合、心材を入れたクッション体自体が蓋体となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の椅子は、通常は椅子として使用することができ、災害時等においては簡易トイレとして使用することができる。また、介護用の椅子として使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るトイレ機能付き椅子を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿う拡大断面図である。
【図3】ヒンジ部の構造を示した断面図である。
【図4】本発明に係るトイレ機能付き椅子を簡易トイレとして使用する状態を示した図である。
【図5】マンホール設置用の台座を示した斜視図である。
【図6】別のトイレ機能付き椅子の要部拡大断面図である。
【図7】別のトイレ機能付き椅子をマンホールの蓋の受け枠に設置した状態を横から見た場合の断面図である。
【図8】別のトイレ機能付き椅子をマンホールの蓋の受け枠に設置した状態を上から見た場合の断面図である。
【図9】マンホール設置用の台座の別の使用例を示す図である。
【図10】別のトイレ機能付き椅子をマンホールの蓋の受け枠に設置した状態を上から見た場合の断面図である。
【図11】固定具で開閉扉用の骨材をフレーム材に取付けた場合の説明図である。
【図12】錠の取付け状態を示した斜視図である。
【図13】別のマンホール設置用の台座を示した斜視図である。
【図14】別のトイレ機能付き椅子の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1、61、142、155 トイレ機能付き椅子
7 前脚部
9 背もたれ部
11 後脚部
13 座部本体
17、131 便座
19、133 蓋体
21 クッション体
23 座部
63、153 マンホール設置用の台座
79 基体
83 筒体
87 座部用支持体
93 脚材
97 覆い体
101 骨材
105、106 カバーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、この座部を支える脚部と、を備え、
前記座部は、開口部およびこの開口部に沿って設けられた便座を有する座部本体と、前記座部本体に揺動可能に取付けられて前記便座に被せられた蓋体と、を有していて、
前記蓋体の上に腰掛けることができ、かつ、前記蓋体を上方に揺動させた状態で、前記便座に腰掛けることができるように構成されている、ことを特徴とするトイレ機能付き椅子。
【請求項2】
前記座部は、前記蓋体に着脱可能に被せることができる、例えば袋状のクッション体を備えて構成されている、ことを特徴とする請求項1記載のトイレ機能付き椅子。
【請求項3】
前記座部本体の下側には、下水用マンホールの蓋の受け枠に設置することができるマンホール設置用の台座が着脱可能に設けられていて、
前記マンホール設置用の台座は、前記座部本体の開口部と連なる、上下部が開口された筒状体を備えていて、
筒状体の下部には、前記マンホールの蓋の受け枠に取付けるための基体が備えられ、かつ、上部には前記座部を支持するための座部用支持体が備えられていて、
前記座部本体が前記座部用支持体に支持された状態で、前記脚部の下端が前記マンホールの蓋の受け枠の上面又は上方に位置するように形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2記載のトイレ機能付き椅子。
【請求項4】
前記マンホール設置用の台座は、人の出入りが可能な覆い体を着脱可能に備えている、ことを特徴とする請求項3記載のトイレ機能付き椅子。
【請求項5】
前記覆い体は、前記マンホール設置用の台座に着脱可能に設けられた骨材と、この骨材に着脱可能に取付けられた、開閉可能な出入り口部が形成されたカバーシートと、一端が前記マンホール設置用の台座に左右方向に回転可能に取付けられ、他端が前記カバーシートの出入り口部に固定された、開閉用の揺動アーム材と、を有して構成されていて、
前記開閉用の揺動アーム材を左右方向に揺動させることによって、前記カバーシートの出入り口部を開閉することができるように構成されている、ことを特徴とする請求項4記載のトイレ機能付き椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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