説明

トイレ装置

【課題】 着座センサを利用してその着座検知範囲内に人体をかざすことにより使用者の意思で容易に便器洗浄が可能なトイレ装置を提供することを目的とするものであり、特に意思洗浄用のセンサを設けることなく非接触での洗浄を適切なタイミングで確実に行えるトイレ装置を安価に提供することを目的とする。
【解決手段】 トイレ装置の利用者の着座を検知するために設けられた検知センサーが物体を検知した際に、検知した物体が便座に座った人かセンサーにかざした人体かを判別する対象物識別手段を設け、検知物体がセンサーにかざした人体である場合は使用者による便器洗浄の意思があると判断して、便器洗浄を行う構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大便器および大便器に置載される便座を有するトイレ装置において、使用者が望むタイミングで便器洗浄を行うことを可能とするトイレ装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
便器を備えたトイレ装置において便器洗浄を行なうには、古くは洗浄タンクに設けたレバーを手で引いて水を流すようにしていた。最近では、壁掛けリモコンを備えた温水洗浄便座が普及しており、そのリモコンに便器洗浄用スイッチを設けたものも登場しており、これによれば洗浄タンクに手を伸ばさなくても手元のリモコンで楽な姿勢で操作できるのでたいへん便利である。
しかし、いずれの例においても、便器洗浄を行なうためにレバーあるいはスイッチを手で操作するので、衛生面での心配があった。
【0003】
一方、最近では、便器の前から離れると自動的に便器を洗浄する自動便器洗浄を行なうトイレ装置が普及しつつある。
【0004】
この、トイレ装置として自動便器洗浄を実現する為の構成としては、従来より、便器に置載された温水洗浄便座に設けられた人体検知センサや着座検知センサにより使用者の入室や便器への着座状態を検知し、使用者の離座やトイレからの退出に応じて便器洗浄用モーターに洗浄開始指令を送信する構成が用いられている。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
また、男性が小用を足す場合には一般的に便器への着座は行われず、便ふた・便座を上方に開放して便器前方から立位での使用となるが、このような場合においても、便ふた・便座が開放状態でありなおかつ便器前方の人体の存在を検知する人体検知センサが所定時間人体を検知した場合は男子の小用中と判断し、その後便器前方より人が退出した際に小用に応じた洗浄水量にて自動的に便器洗浄を行うこともすでに周知の技術である。(例えば、特許文献2参照。)
【0006】
ここで人体検知センサとは、便器前方空間での人体の有無を判別するセンサであり、その方法としては投光された赤外線の反射の有無を検知する赤外線反射式センサや同様にマイクロ波や超音波などを投射するマイクロ波センサ・超音波センサ、あるいは人体より輻射される遠赤外線を検知する焦電型センサなどが持ちいられるが、ここでは特にその方式は問わない。
【0007】
また便器への使用者の着座を検知する着座検知センサには、人体検知センサと同様の赤外線反射式センサや、静電容量の変化を検知する静電容量式センサ、人体による赤外線の遮断を検知する透過型光電センサなどが用いられるが、近年では、検知精度や誤検知などの要件から赤外線反射式センサーが主として用いられている。
【0008】
このような構成のトイレ装置において、便器の終了を判断する判別方法は一般的に次のような方法によっている。使用者がトイレに入室すると、まず人体検知センサが人体を検知し、使用者の入室を認識する。その後着座センサが所定時間着座を検知すると、使用者が便器使用のために着座したものと判断して、着座使用中モードに移行する。あるいは、着座検知センサが着座を検知せず、人体検知中の間に便ふた・便座が開放された状態が所定時間継続すると、男子の小用中であると判断して男子小用モードへ移行する。
【0009】
着座使用中モードもしくは男子小用中モードの後、着座検知センサ・人体検知センサの検知が停止すると、使用者が使用を終了し便器から離れたものとして、それぞれ所定の洗浄水量にて便器自動洗浄を行う。このような構成により、便器の使用者は、便器洗浄操作を意識して行うことなく、適切なタイミング、適切な洗浄水量で使用後の便器洗浄を行うことが可能となるので、流し忘れの防止や、操作スイッチに触れずに清潔を保てるといった効果を得ることができる。
【0010】
しかし、これらの従来の技術においては次のような欠点を有しており、使用勝手上改善の余地が残されている。すなわち、自動洗浄タイプのトイレ装置においては、いったん便器前方から離れなければ自動洗浄を開始しない為、汚物を残したままトイレを退出することに不安や精神的苦痛を感じる使用者は、退室前に手動で洗浄レバーを操作して便器洗浄を行うことになるので、衛生上の問題が残ることになる。この問題は、前述したように、自動洗浄タイプではないトイレ装置においても同様である。
【0011】
また、便器洗浄に連動して手洗い用の洗浄水が便器後方の給水タンクから吐出される手洗いつきタンクを有する便器においては、いったん便器前方より移動して自動洗浄開始後に再度便器に近づき手洗いをしなければならず、そのため、急いで手を洗いたい使用者は結局手で便器洗浄レバーを操作することになるので、使用者が無駄な動きをしなければならず自動洗浄の利便性が損なわれることになる。
【0012】
以上に述べてきた従来技術の別構成として、人体検知センサを有さずに着座検知センサのみで自動洗浄を行うものや、人体検知センサ・着座センサ双方有しているが着座センサが非検知になった場合に自動便器洗浄を行うものなども存在する。
【0013】
着座センサの非検知により離座と判断して自動洗浄を行なう場合には、使用者が便器使用後に中腰でお尻を拭く場合には中腰の体勢を便器使用後の離座と判断するため、お尻を拭く最中に便器洗浄してしまい、お尻を拭いた後のトイレットペーパーを流すのに再度便器洗浄を行う必要があり洗浄水の無駄になるという問題や、便を観察して健康状態を確認したい人にとっても、便を確認する為に離座すると便が流れてしまうためじっくりと便を観察することが困難である、という問題点も存在した。
【0014】
これらの構成の採用には、センサ構成の簡略化や判別処理の簡素化といった利点があるが、着座せずに便器を立位使用する男子小用を自動判別して使用後に自動洗浄することができないという欠点も有しているので、やはり使用者は洗浄操作レバー等を手動で操作して便器洗浄を行う必要があり、やはり衛生上の問題が残る。
【0015】
これらの問題を解決する手段として、別途非接触式の手かざしセンサやタッチセンサを付加した構成(例えば、特許文献3,4参照)や、便器洗浄に連動せずに非接触で手洗い動作ができるように手洗い用センサを有した便器洗浄タンク(例えば、特許文献5参照)等が提案されているが、専用のセンサを追加する必要があり、またセンサを設置する為の追加工事も必要であるため費用が高額となり、容易に採用できるものではなかった。
【0016】
【特許文献1】特公平1−44858号公報
【特許文献2】特公平6−13774号公報
【特許文献3】特開平9−302749号公報
【特許文献4】特開2002−317482号公報
【特許文献5】特開平11−124889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、着座センサを利用してその着座検知範囲内に人体をかざすことにより使用者の意思で容易に便器洗浄が可能なトイレ装置を提供することを目的とするものであり、特に意思洗浄用のセンサを設けることなく非接触での洗浄を適切なタイミングで確実に行えるトイレ装置を安価に提供することを目的とする。
【0018】
さらに本発明では、使用者が立位にて小用を足した場合にも、着座センサの着座検知範囲内に人体をかざすことにより、使用者の意思で小用に対応した洗浄水量での便器洗浄が行えるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、請求項1のトイレ装置は、便器と、便座と、便器の前にいる人を検知する第一の対象物検知センサと、便座に座った人を検知する第二の対象物検知センサと、便器に洗浄水を供給する洗浄水給水手段と、第一の対象物検知センサの検知状況あるいはスイッチ操作に基づいて前記洗浄水給水手段に制御信号を送信して洗浄水給水手段を作動させ、トイレ装置の動作を制御する制御手段を備えたトイレ装置において、前記第二の対象物検知センサの検知対象が便座に座った人か、センサにかざした人体かを識別する対象物識別手段を備え、前記制御手段は、前記対象物識別手段が第二の対象物検知センサの検知対象がセンサにかざした人体であると識別したときに、前記洗浄水給水手段に制御信号を送信することを特徴とする。
これによれば、使用者が便器洗浄を行いたい場合には第一の対象物検知センサに人体をかざすことにより、追加のセンサ等を必要とすることなく、使用者がスイッチに触れることなく衛生的に、任意に便器洗浄を行うことが可能となる。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項2のトイレ装置は、便器と、便座と、便座に座った人を検知する第一の対象物検知センサと、便器に洗浄水を供給する洗浄水給水手段と、前記対象物検知センサあるいはスイッチ操作に基づいて前記洗浄水給水手段に制御信号を送信して前記洗浄水給水手段を作動させてなる制御手段を備えたトイレ装置において、前記第一の対象物検知センサの検知対象が便座に座った人か、センサにかざした人体かを識別する対象物識別手段を備え、前記制御手段は、前記対象物識別手段が第一の対象物検知センサの検知対象がセンサにかざした人体であると識別したときに、前記洗浄水給水手段に制御信号を送信することを特徴とする。
これによれば、便座に座った人を検知する対象物検知センサのみを有するトイレ装置においても、使用者の意思に応じてスイッチに触れることなく衛生的に、任意に便器洗浄を行うことが可能となる。
【0021】
上記目的を達成するために、請求項3のトイレ装置は、人体局部洗浄機構を備えたケーシングと、ケーシングに開閉自在に取付けられた便座と、便座に座った人を検知する第一の対象物検知センサと、便器に洗浄水を供給する洗浄水給水手段と、前記第一の対象物検知センサの検知状況に基いて前記人体局部洗浄機構の動作を可能とする制御手段を備えたトイレ装置において、前記第一の対象物検知センサの検知対象が便座に座った人かセンサにかざした人体かを識別する対象物識別手段を備え、前記制御手段は、前記対象物識別手段が第一の対象物検知センサの検知対象がセンサにかざした人体であると識別したときに、前記洗浄水給水手段に制御信号を送信することを特徴とする。
これによれば、使用者が便器洗浄を行いたい場合には第一の対象物検知センサに人体をかざすことにより、追加のセンサ等を必要とすることなく、使用者がスイッチに触れることなく衛生的に、任意に便器洗浄を行うことが可能となる。
なお、このトイレ装置においては、便器の前にいる人を検知する第二の対象物検知センサを設けることを疎外するものではない。
【0022】
請求項4のトイレ装置は、請求項1〜3において、前記対象物識別手段は、前記第一の対象物検知センサが便座からの離座を検知した後に検知した対象物をかざした人体と識別することを特徴とする。
これによれば、使用者が便座からの離座後に第一の対象物検知センサに人体をかざすと、使用者が再度着座したのではなく便器洗浄を行う意思を持って人体をかざしたことが識別できるので、使用者がスイッチに触れることなく衛生的に、任意に便器洗浄を行うことが可能となる。また、トイレ掃除に場合などに便座の近くに手を持っていって第一の対象物検知センサの検知領域内に人体が入っても、それをかざした人体とは識別しないので、使用者の意思によらずに便器洗浄が行なわれることを防止でき、水を無駄に流すことを防止できる。
【0023】
請求項5のトイレ装置は、請求項4において、前記対象物識別手段は、前記第一の対象物検知センサが着座を検知した後に所定時間対象物を検知しなかった場合に離座と判断することを特徴とする。
これによれば、着座使用中にお尻を拭くなどの動作のために短時間離座した後の再着座を、かざした人体であると誤判別することがなくなるので、使用者の意思によらずに便器洗浄が行われることが防止でき、水を無駄に流すことを防止できる。
【0024】
請求項6のトイレ装置は、請求項1において、前記便座の開閉状態を検知する便座開閉検知手段を設け、前記対象物識別手段は、前記第二の対象物検知センサが所定時間人を検知し且つ前記便座開閉検知手段が便座開放を検知した状態の後に前記第一の対象物検知センサが検知した対象物をかざした人体と識別することを特徴とする。
これによれば、便座開放状態で行われる立位での男子小用を判別することが可能となり、使用後の便器洗浄を男子小用に適した洗浄水量にて行うことが可能となる。
【0025】
請求項7のトイレ装置は、請求項2または3において、前記便座の開閉状態を検知する便座開閉検知手段を設け、前記対象物識別手段は、前記便座開閉検知手段が便座開放を検知した状態で前記第一の対象物検知センサが対象物を検知すると、検知した対象物をかざした人体と認識することを特徴とする。
これによれば、便座開放状態で行われる立位での男子小用を判別することが可能となり、使用後の便器洗浄を男子小用に適した洗浄水量にて行うことが可能となる。
【0026】
請求項8のトイレ装置は、請求項1〜7の何れかのトイレ装置において、前記第一の対象物検知センサを便器横の壁面あるいはキャビネットに設け、第一の対象物検知センサの検知信号を前記制御手段に送信することを特徴とする。
これによれば、使用者が容易に人体をかざすことが可能となり、便器洗浄操作が容易となる。
なお、このトイレ装置は、便器横の壁面やキャビネットにリモコンを取付け、そのリモコンに第一の対象物検知センサを設けたものを含んでいる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、便座への着座を検知する対象物検知センサを利用してその検知範囲内に使用者が手,腕,足等の人体をかざすことにより使用者の意思で容易に便器洗浄を行なうことができるので、レバー操作やスイッチ操作を行なわずに、また自動洗浄がなされるのを待たずに便器洗浄ができる。特に、洗浄水タンクの上に手洗いを有するトイレ装置の場合には、レバー操作やスイッチ操作を行なわなくても便器洗浄と手洗い水の吐水を行なうことができるので、便利で且つ衛生的である。
また、使用者が立位にて小用を足した場合にも、センサ検知範囲内に人体をかざすことにより、使用者の意思で小用に対応した洗浄水量での便器洗浄が行えるので、便器洗浄の節水化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明によるトイレ装置の実施の形態を図1〜10に基づいて説明する。
【0029】
図1は本発明の第一の実施形態によるトイレ装置をあらわすものである。該トイレ装置は、便器1、便器1の後部に置載され便器1に洗浄水を供給する洗浄タンク11、便器1に置載されたケーシング内に人体局部洗浄機構を有する温水洗浄便座2から構成されており、温水洗浄便座2には、便器1への使用者の接近を検知すべく、便器1の正面前方のエリアAを検知範囲とする人体検知センサ3を備えている。この人体検知センサ3は、エリアAに向けて赤外線を投光する投光部と、エリアA方向から入射する赤外線の存在を検知する受光部とを有している。
【0030】
エリアAの範囲に人体が存在しない場合には受光部が検知可能なレベルの赤外線が入射しないように投光部および受光部が設けられており、エリアAの範囲内に人体が存在する場合にのみ、投光部から投光された赤外線が人体により反射され受光部へと入射するので、受光部への赤外線入射をもって、エリアAに人体が存在することが検知される。
【0031】
温水洗浄便座2は、人体検知センサ3によりエリアAに人体の存在をあらかじめ定められた所定時間T1の間継続して検知した場合、検知した使用者に便器1の使用意思があると判断し、便座21へ使用者が着座できるよう自動的に便ふた22を上方に開放する自動開放機能を有している。
【0032】
温水洗浄便座2は、人体検知センサ3によるエリアAでの人体の検知に加えて、便座21が開放状態にあるのか、閉止状態にあるのかを検知する便座開閉検知センサ210を有している。図2は便座21が開放状態にある場合を示す図、図3は閉止状態にある場合を示す図である。
【0033】
使用者がエリアAにあらかじめ定められた所定時間T2の間継続して存在した場合に、便座開閉検知センサ210が便座の閉止状態を検知している場合は、使用者が着座状態にて便器1を使用する意思が有り、便座開閉検知センサ210が便座の開放状態を検知している場合は、使用者が立位にて便器1を使用する男子小用での使用であることを判断することが可能となる。
【0034】
また、温水洗浄便座2には、使用者の便座21への着座を検知すべく、便座21近辺のエリアBを検知範囲とする着座検知センサ4が設けられている。着座検知センサ4には、エリアBに向けて赤外線を投光する投光部と、エリアB方向から入射する赤外線の存在を検知する受光部とを有している。
【0035】
便座21に使用者が着座していない場合には受光部が検知可能なレベルの赤外線が入射しないように投光部および受光部は設けられており、便座21に使用者が着座した場合には、投光部から投光された赤外線が着座した使用者により反射され受光部へと入射するので、受光部への赤外線入射をもって、便座21に使用者が着座していることが検知される。
【0036】
着座検知センサ4が使用者の着座を検知すると、温水洗浄便座2は便器1内の臭いを脱臭すべく脱臭部の駆動を自動的に開始し、この脱臭部の駆動は使用者が便座21から離座した後一定時間経過すると自動的に停止するよう制御されているため、便器1使用中に発生する使用臭は確実に脱臭され、快適なトイレ環境を維持することが可能となる。
【0037】
また、温水洗浄便座2は、おしり洗浄・ビデ洗浄・おしり乾燥等の動作を指示する為のリモコン操作部6を有しているが、着座検知センサ4が使用者の着座を検知している間のみ、操作部6のスイッチ操作を受け付けるようにすることも可能であり、このようにすることで子供のいたずらによる作動や、トイレ掃除の際に誤ってスイッチ操作を行い、意図せぬ動作を防止することが可能となる。特に、おしり洗浄・ビデ洗浄の洗浄機能については、非着座時にスイッチ操作を受け付けると水が衣服にかかる等の問題があるので、着座検知センサ4が使用者の着座を検知したときのみに洗浄動作を行なうようにしている。
【0038】
ここで、便器1の使用後に行われる便器洗浄について図4に基づき説明を行う。便器1の洗浄は、便器1に後方に置載された洗浄タンク11より便器1に洗浄水を供給することにより行われる。洗浄タンク11内には排水弁110が設けられており、排水弁110を開弁することで、洗浄タンク11に貯留された洗浄水は、排水弁110の開口を経由して便器1へと導かれる。
【0039】
排水弁110を開弁する手段としては、排水弁を手動にて開弁する為の洗浄レバー111および、洗浄レバー111を電気駆動にて開弁する為の電動モーターユニット112が設けてあり、電動モーターユニット112は中継ハーネス114を介して温水洗浄便座2から送信される洗浄指示信号に応じて排水弁110の開弁動作を行う。
【0040】
温水洗浄便座2から電動モーターユニット112へ洗浄指示信号を送信する為の方法としては、リモコン操作部6に付属する便器洗浄指示スイッチ61の押操作と、便器使用終了後の自動便器洗浄モードへの移行の2つの方法がある。自動便器洗浄モードには、着座使用後に移行するモードIと、立位使用後に移行するモードIIが存在するが、これらの移行モードへの移行判断の仕組みを図5および図10に基づき説明する。
【0041】
便座21に着座していた使用者が便器1の使用後に離座すると、着座検知センサ4は着座未検知状態となり、さらに使用者が便器1から離れエリアAの外に移動すると、使用者による便器1の使用が終了したものと判断して自動便器洗浄モードIへと移行し、電動モーターユニット112へ洗浄指示信号を自動的に送信する。
【0042】
モードIにおいては、使用者の着座時間を測定することで小用のみの使用か、排便を含む大使用かを判定することが可能である。本実施例では、着座時間が30秒未満の時、小使用、着座時間が30秒以上の時、大使用と判断し、小使用時には洗浄水量を6L、大使用時には洗浄水量を8Lとして、異なる洗浄指示信号を電動モーターユニット112に送信することで、電動モーターユニット112は便器1の使用状況に適した便器洗浄動作を行うことができ、洗浄水の節約を図ることが可能となる。
【0043】
次にモードIIへの移行について説明する。便座開閉検知センサ210が便座21の開放状態を検知し、かつ人体検知センサ3が所定時間、本実施例では6秒、エリアAでの人体の存在を検知すると、温水洗浄便座2は男子立位使用中と判断する。立位使用中と判断した後に人体検知センサ3による人体の検知が解除されると、立位使用が終了し、使用者がエリアAから離れたとしてモードIIへと移行し、電動モーターユニット112に男子小用に対応した洗浄水量、本例では6L、にて便器洗浄を行うよう洗浄指示信号を送信する。このようにして、便座21への着座を伴わない立位使用においても、適切なタイミング、かつ適切な洗浄水量で、自動的に便器洗浄を行うことが可能となっている。
【0044】
次に、モードI、モードIIによる自動洗浄に先立って使用者が自分の意志で便器洗浄を行う場合についての説明を、図6に基づき説明する。
【0045】
使用者が便器1の着座使用後に離座すると、着座検知センサ4は着座未検知状態となる。ここで使用者がエリアAの外へと移動すると自動便器洗浄モードへと移行するが、エリアA内にとどまったまま着座検知センサ4に対して手や腕などの人体をかざすと、着座検知センサ4は再度検知状態になる。このように一旦離座した後に再度着座検知センサ4が物体を検知した場合は、使用者が便器洗浄の意思を有していると判断し、即座に電動モーターユニット112に洗浄指示信号を送信する。
【0046】
このような構成により、使用者が便器1の前方のエリアAにとどまったまま洗浄レバー111や便器洗浄指示スイッチ61に触れることなく便器洗浄を行うことが可能となる。
【0047】
洗浄タンク11には、洗浄タンク11への洗浄水の貯留の為の給水経路の一部を分岐してタンク上面に手洗吐水口113を設けており、便器洗浄後の洗浄タンク11への洗浄水の貯留にともなって手洗吐水口113から洗浄水の吐水が開始されるので、エリアAにとどまった使用者はこの洗浄水の吐水を利用して容易に手洗いを行うことが可能となる。よって、洗浄レバー111や便器洗浄指示スイッチ61に触れることなく手洗いすることができる。
【0048】
また上記構成に加えて、使用者の便器1からの離座による離座確定の判断を、着座センサ4の着座未検知状態があらかじめ定められた所定時間T3継続後に行うようにすることも可能である。このような構成とすることで、着座体位の変更やトイレットペーパーによる局部の清浄動作など便器使用途中にもかかわらず短時間便座21から離座する状況で、使用者の意図に反して自動便器洗浄モードに移行することを防止することが可能となる。
【0049】
本実施形態においては、着座による便器1の使用状態から、着座検知センサ4が使用者の離座を確定した後、所定時間内に再度着座センサ4が人体を検知した際に、再度の着座検知はかざされた人体であると判断する判断回路をもって対象物識別手段としたが、このような構成にこだわらず、着座検知センサ4が検知した物体が着座した使用者か、かざされた人体であるかを判別可能な手段であれば、その他の方法によっても同様の効果を奏する事ができる。
【0050】
そのような別構成の一例として、次に本発明の第二の実施形態を図7に基づき説明する。図7に示すようにこのトイレ装置においては、第二の対象物検知センサが、赤外線の入射により使用者の着座を検知する着座センサ4に変わり、対象物の形状を識別可能な画像センサ7を用いる点で第一の実施形態と異なっている。
【0051】
この形態において温水洗浄便座2は、あらかじめパターン記憶部71に、着座する人体およびかざされた人体によって得られる画像パターンを格納しており、さらに画像センサ7によって取得された画像とパターン記憶部71に格納された画像パターンとを比較して、画像センサ7が取得した画像が着座する人体であるかかざされた人体であるかを判別する画像判別手段72を有するので、画像センサ7に人体がかざされた場合にはこれを認識して、洗浄水給水手段を作動させる制御信号を送信し、使用者の意思により便器洗浄を行うことが可能となる。
【0052】
次に図8に基づき、本発明の第三の実施の形態について説明を行う。図8に示すように本実施例においては、第二の対象物検知として用いられる着座検知センサ4がトイレの壁面に設けてあるが、その他の構成はこれまで述べてきた第一および第二の実施の形態と変わるところはない。このような構成とすることで、使用者が意思洗浄を行いたい場合、腰をかがめる等の無理な体勢を取ることなく着座検知センサ4に向かって人体をかざすことが可能となり、便器洗浄操作が容易となる。
なお、着座検知センサ4は、トイレの壁面に取付けたリモコン操作部6に設けているが、これに拘泥されず、壁面自体に着座検知センサ4を設けたり、あるいは手洗いカウンターやトイレットペーパーに着座検知センサ4を設けるようにしてもよい。
【0053】
最後に、図9に基づき、本発明の第四の実施の形態について説明する。本形態では、便器前方における人体の存在を検知する人体検知センサ3を有さず、便座21への着座を検知するための着座センサ4を有する構成となっている。この実施形態において温水洗浄便座2は、着座検知センサ4の検知をもって、使用者が便座21に着座して便器1を使用していることを認識することが可能であるので、使用者が離座後に便器使用が終了したと判断して所定時間経過後に自動便器洗浄を行うことができる。
【0054】
ここで、使用者が離座した後に着座検知センサ4に人体をかざすと、使用者が便器洗浄を行う意思を有していると判別できるので、温水洗浄便座2は、自動洗浄に先立って即座に電動モーターユニット112に洗浄指示信号を送信するので、使用者の意思に応じた便器洗浄が可能となる。
【0055】
また本構成例においては、立位による男子小用に応じた便器自動洗浄を行うことはできないが、便座開閉検知センサ210が便座21の開放状態を認識している状態で着座検知センサ4が物体を検知した場合は、便座21が開放状態で使用者が着座を行うことはないので、使用者が着座検知センサ4に人体をかざしたと判断することで、男子小用後にも使用者がスイッチに触れることなく衛生的に、便器洗浄を行うことが可能となる。
【0056】
この際に、電動モーターユニット112に男子小用に応じた洗浄指示信号を送信することで、適切な洗浄水量で便器洗浄を行い洗浄水の節約を行えるという効果を奏することも可能である。
【0057】
なお、以上説明したトイレ装置においては、センサに人体をかざして便器洗浄を行なった後には、自動便器洗浄は作動しないようになっているので、便器洗浄を手動と自動でダブって行なうことはない。
【0058】
また、自動便器洗浄を行なわないトイレ装置にも本発明を好適に用いることができる。すなわち、温水洗浄便座の動作制御のために設けている着座センサを利用して、立位の時に着座センサに人体をかざすと、上述した実施形態と同じように使用者が便器洗浄を行なう意思があると判別して、電動モーターユニット112に洗浄指示信号を送信するのである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第一の実施形態の構成を示す構成図である。
【図2】便座21の開放状態を示す外観図である。
【図3】便座21の閉止状態を示す外観図である。
【図4】便器洗浄の動作を説明する洗浄タンク11の構成図である。
【図5】便器自動洗浄におけるモード移行を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第一の実施形態の作動フローを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第二の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第三の実施形態の構成を示す構成図である。
【図9】本発明の第四の実施形態の作動フローを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第一の実施形態の作動フローを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0060】
1…便器
11…洗浄タンク
110…排水弁
111…洗浄レバー
112…電動モーターユニット(洗浄水給水手段)
113…手洗吐水口
114…中継ハーネス
2…温水洗浄便座
21…便座
210…便座開閉検知センサ(便座開閉検知手段)
22…便ふた
3…人体検知センサ(第二の対象物検知センサ)
4…着座検知センサ(第一の対象物検知センサ)
6…リモコン操作部
61…便器洗浄指示スイッチ
7…画像センサ(第一の対象物検知センサ)
71…パターン記憶部
72…画像判別手段
A…人体検知センサの検知エリア
B…着座検知センサの検知エリア



【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と、便座と、前記便座に座った人を検知する第一の対象物検知センサと、前記便器の前にいる人を検知する第二の対象物検知センサと、便器に洗浄水を供給する洗浄水給水手段と、第二の対象物検知センサの検知状況あるいはスイッチ操作に基づいて前記洗浄水給水手段に制御信号を送信して洗浄水給水手段を作動させ、トイレ装置の動作を制御する制御手段を備えたトイレ装置において、前記第一の対象物検知センサの検知対象が便座に座った人か、センサにかざした人体かを識別する対象物識別手段を備え、前記制御手段は、前記対象物識別手段が第一の対象物検知センサの検知対象がセンサにかざした人体であると識別したときに、前記洗浄水給水手段に制御信号を送信することを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
便器と、便座と、便座に座った人を検知する第一の対象物検知センサと、便器に洗浄水を供給する洗浄水給水手段と、前記対象物検知センサあるいはスイッチ操作に基づいて前記洗浄水給水手段に制御信号を送信して前記洗浄水給水手段を作動させてなる制御手段を備えたトイレ装置において、前記第一の対象物検知センサの検知対象が便座に座った人か、センサにかざした人体かを識別する対象物識別手段を備え、前記制御手段は、前記対象物識別手段が第一の対象物検知センサの検知対象がセンサにかざした人体であると識別したときに、前記洗浄水給水手段に制御信号を送信することを特徴とするトイレ装置。
【請求項3】
便器と、人体局部洗浄機構を備えたケーシングと、ケーシングに開閉自在に取付けられた便座と、便座に座った人を検知する第一の対象物検知センサと、便器に洗浄水を供給する洗浄水給水手段と、前記第一の対象物検知センサの検知状況に基いて前記人体局部洗浄機構の動作を可能とする制御手段を備えたトイレ装置において、前記第一の対象物検知センサの検知対象が便座に座った人かセンサにかざした人体かを識別する対象物識別手段を備え、前記制御手段は、前記対象物識別手段が第一の対象物検知センサの検知対象がセンサにかざした人体であると識別したときに、前記洗浄水給水手段に制御信号を送信することを特徴とするトイレ装置。
【請求項4】
前記対象物識別手段は、前記第一の対象物検知センサが便座からの離座を検知した後に検知した対象物をかざした人体と識別することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記対象物識別手段は、前記第一の対象物検知センサが着座を検知した後に所定時間対象物を検知しなかった場合に離座と判断することを特徴とする請求項4記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記便座の開閉状態を検知する便座開閉検知手段を設け、前記対象物識別手段は、前記第二の対象物検知センサが所定時間人を検知し且つ前記便座開閉検知手段が便座開放を検知した状態の後に前記第一の対象物検知センサが検知した対象物をかざした人体と識別することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項7】
前記便座の開閉状態を検知する便座開閉検知手段を設け、前記対象物識別手段は、前記便座開閉検知手段が便座開放を検知した状態で前記第一の対象物検知センサが対象物を検知すると、検知した対象物をかざした人体と認識することを特徴とする請求項2または3に記載のトイレ装置。
【請求項8】
前記第一の対象物検知センサを便器横の壁面あるいはキャビネットに設け、第一の対象物検知センサの検知信号を前記制御手段に送信することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のトイレ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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