説明

トイレ装置

【課題】便座への座り心地を改善するために、局部洗浄装置の機能を維持しつつ、便器の上部に取り付けられるケーシングを小型化したトイレ装置を提供する。
【解決手段】便器のボウル104に進出する洗浄ノズル520と、温風乾燥装置と、便器後方上部に取り付けられ、洗浄ノズル520と、温風ダクト500と、を内蔵したケーシング200に対して開閉自在に軸支された便座300と、を備え、便器は、リムの中央後部において下方に凹んだ切り欠き部102を有し、ボウル104に進出していない状態の洗浄ノズル520を前方下がりで切り欠き部102に収納し、温風ダクト500は、ケーシング200の内部において、切り欠き部102に収納された洗浄ノズル520の側方から洗浄ノズル520の上方を介してボウル104に向けて延在し、温風噴出口502は、切り欠き部102に収納された状態の洗浄ノズル520よりもボウル104寄りに配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、トイレ装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰かけた使用者の「おしり」などを水で洗浄可能としたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
初期の局部洗浄装置は、温風乾燥機能や脱臭機能などが搭載されていなかったため、機能部のケーシングの内部には、洗浄ノズルや瞬間式熱交換器や制御基板等の部品が配置される程度であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これに対して、局部洗浄装置が世に認知されていくとともに、次第に温風乾燥機能や脱臭機能等の付加機能が追加されるようになった。現在では、ケーシングの内部には、洗浄ノズル、温風乾燥装置、脱臭装置、および制御基板等の多くの機能部品が配置されている(例えば、特許文献2参照)。そのため、初期の局部洗浄装置よりもケーシングが大型化している。ケーシングの大型化は、局部洗浄装置の商品機能の低下を招いている。その一例は、便座への座り心地の低下である。
【0004】
これは、ケーシングが大型化したことによって、便座のヒンジ位置が初期の局部洗浄装置よりも高くなることが要因である。すなわち、便座の座面の後部が斜め上方に立ち上がる形状となり、便座に座った人の臀部の後方が、その傾斜部に接触してしまうためである。臀部後方における異物の接触は、こそばゆい感覚をもたらすものであり、また便座の内部にヒータを備えた暖房便座の場合には冷たい感覚をもたらすものであり、便座への座り心地の低下の要因となっている。
【特許文献1】特開昭55−75034号公報
【特許文献2】特開2001−152512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便座への座り心地を改善するために、局部洗浄装置の機能を維持しつつ、便器の上部に取り付けられるケーシングを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、便器と、前記便器のボウルに進出する洗浄ノズルと、噴出口が先端に設けられた温風ダクトと、前記温風ダクトに連通する温風送風ファンと、前記温風ダクト内に配置されるヒータと、を有する温風乾燥装置と、前記便器の後方上部に取り付けられ、前記洗浄ノズルと、前記温風ダクトと、を内蔵したケーシングと、前記ケーシングに対して開閉自在に軸支された便座と、を備え、前記便器は、リムの中央後部において下方に凹んだ切り欠き部を有し、前記ボウルに進出していない状態の前記洗浄ノズルを前方下がりの傾斜姿勢で前記切り欠き部に収納可能とされ、前記温風ダクトは、前記ケーシングの内部において、前記切り欠き部に収納された前記洗浄ノズルの側方から前記洗浄ノズルの上方を介して前記ボウルに向けて延在し、前記噴出口は、前記切り欠き部に収納された状態の前記洗浄ノズルよりも前記ボウル寄りに配置されたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、便器と、前記便器のボウルに進出する洗浄ノズルと、噴出口が先端に設けられた温風ダクトと、前記温風ダクトに連通する温風送風ファンと、前記温風ダクト内に配置されるヒータと、を有する温風乾燥装置と、吸い込み口が先端近傍に設けられた脱臭ダクトと、脱臭送風ファンと、脱臭触媒と、を有する脱臭装置と、前記便器の後方上部に取り付けられ、前記洗浄ノズルと、前記温風ダクトと、前記脱臭ダクトと、を内蔵したケーシングと、前記ケーシングに対して開閉自在に軸支された便座と、を備え、前記便器は、リムの中央後部において下方に凹んだ切り欠き部を有し、前記ボウルに進出していない状態の前記洗浄ノズルを前方下がりの傾斜姿勢で前記切り欠き部に収納可能とされ、前記温風ダクトは、前記ケーシングの内部において、前記切り欠き部に収納された前記洗浄ノズルの側方から前記洗浄ノズルの上方を介して前記ボウルに向けて延在し、前記噴出口は、前記切り欠き部に収納された状態の前記洗浄ノズルよりも前記ボウル寄りに配置され、前記吸い込み口は、前記噴出口から離間して設けられ、前記脱臭ダクトは、前記吸い込み口の近傍において、前記温風ダクトと上下方向に重合しないように設けられたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【0008】
なお、「洗浄ノズルを切り欠き部に収納する」とは、洗浄ノズルの全体を切り欠き部に納めた場合と、洗浄ノズルの一部を切り欠き部に納めた場合と、のいずれをも含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、局部洗浄装置の機能を維持しつつ、便器の上部に取り付けられるケーシングを小型化することで、便座への座り心地が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、便器と、前記便器のボウルに進出する洗浄ノズルと、噴出口が先端に設けられた温風ダクトと、前記温風ダクトに連通する温風送風ファンと、前記温風ダクト内に配置されるヒータと、を有する温風乾燥装置と、前記便器の後方上部に取り付けられ、前記洗浄ノズルと、前記温風ダクトと、を内蔵したケーシングと、前記ケーシングに対して開閉自在に軸支された便座と、を備え、前記便器は、リムの中央後部において下方に凹んだ切り欠き部を有し、前記ボウルに進出していない状態の前記洗浄ノズルを前方下がりの傾斜姿勢で前記切り欠き部に収納可能とされ、前記温風ダクトは、前記ケーシングの内部において、前記切り欠き部に収納された前記洗浄ノズルの側方から前記洗浄ノズルの上方を介して前記ボウルに向けて延在し、前記噴出口は、前記切り欠き部に収納された状態の前記洗浄ノズルよりも前記ボウル寄りに設けられたことを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、ケーシングの上下方向の高さを低く抑えることができる。これにより、使用者の臀部の後方部に異物が接触しなくなり、使用者はこそばゆい感覚を覚えたり、便座が暖房便座である場合には冷たさを感じることがないため、便座への座り心地はより良好となる。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記温風送風ファンの少なくとも一部は、前記便器の上面よりも下方に配設されてなることを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、ケーシングの上下方向の高さを低く抑えることができるため、使用者が便座に座ったときの座り心地はより良好となる。また、局部洗浄装置の機能を維持しつつ、ケーシングを小型化することができるため、ケーシングの上面を平面状とすることができる。そのため、商品機能の高いトイレ装置を実現することができる。
【0012】
また、第3の発明は、便器と、前記便器のボウルに進出する洗浄ノズルと、噴出口が先端に設けられた温風ダクトと、前記温風ダクトに連通する温風送風ファンと、前記温風ダクト内に配置されるヒータと、を有する温風乾燥装置と、吸い込み口が先端近傍に設けられた脱臭ダクトと、脱臭送風ファンと、脱臭触媒と、を有する脱臭装置と、前記便器の後方上部に取り付けられ、前記洗浄ノズルと、前記温風ダクトと、前記脱臭ダクトと、を内蔵したケーシングと、前記ケーシングに対して開閉自在に軸支された便座と、を備え、前記便器は、リムの中央後部において下方に凹んだ切り欠き部を有し、前記ボウルに進出していない状態の前記洗浄ノズルを前方下がりの傾斜姿勢で前記切り欠き部に収納可能とされ、前記温風ダクトは、前記ケーシングの内部において、前記切り欠き部に収納された前記洗浄ノズルの側方から前記洗浄ノズルの上方を介して前記ボウルに向けて延在し、前記噴出口は、前記切り欠き部に収納された状態の前記洗浄ノズルよりも前記ボウル寄りに設けられ、前記吸い込み口は、前記噴出口から離間して設けられ、前記脱臭ダクトは、前記吸い込み口の近傍において、前記温風ダクトと上下方向に重合しないように設けられたことを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、ケーシングの上下方向の高さを低く抑えることができるため、使用者が便座に座ったときの座り心地はより良好となる。
【0013】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記温風送風ファン及び前記脱臭送風ファンの少なくとも一部は、前記便器の上面よりも下方に配設されてなることを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、ケーシングの上下方向の高さを低く抑えることができるため、使用者が便座に座ったときの座り心地はより良好となる。また、局部洗浄装置の機能を維持しつつ、ケーシングを小型化することができるため、ケーシングの上面を平面状とすることができる。そのため、商品機能の高いトイレ装置を実現することができる。
【0014】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つに記載の発明において、前記温風ダクトは、前記温風送風ファンと前記噴出口との間に上方に屈曲した屈曲部を有し、前記ヒータは、前記屈曲部よりも前記温風送風ファン寄りに配置されたことを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、洗浄ノズルから噴射された洗浄水や小水が噴出口から侵入したとしても、この洗浄水や小水が上方に屈曲した屈曲部を乗り越えて、ヒータにかかるおそれは少ない。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置を表す模式図である。
また、図2は、本実施形態のトイレ装置の便座および便蓋が閉じた状態を表す模式図である。
【0016】
本実施形態のトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下、単に「便器」と称す)100と、その後方上部に設けられたケーシング200と、ケーシング200に対して開閉自在に軸支された便座300と、を備えている。また、便座300と同様に、ケーシング200に対して開閉自在に軸支された便蓋400を備えている。ケーシング200は便器100の後方上部に設けられ、その内部には、便座300に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する局部洗浄機能部が内蔵されている。その局部洗浄機能部は、便器100の左右側方に設けられたサイドパネル150によって覆われている。
【0017】
ケーシング200の上部には、使用者が便座300に座ったことを検知する着座センサ206が設けられている。着座センサ206が便座300に座った使用者を検知している場合において、使用者が図示しないスイッチを操作すると、便器100の切り欠き部102から後に詳述する洗浄ノズルを便器100のボウル104内に進出させることができる。続いて、洗浄ノズルの先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、便座300に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0018】
切り欠き部102は、後に詳述するように、便器100のリム106の中央後部に設けられ、下方に凹んだ形状を有している。洗浄ノズルの収納時には、洗浄ノズルの先端は切り欠き部102内に配置され、使用時には前述したようにボウル104内に進出する。すなわち、洗浄ノズルの収納時には、洗浄ノズルの先端はリム106よりもケーシング200の内部側に配置される。そのため、収納された状態における洗浄ノズルの先端は、ケーシング前面208よりも後方に配置される。
【0019】
また、ケーシング200の後方上部には、使用者がトイレ室に入室したことを検知する人体検知センサ202Aを設けることができる。人体検知センサ202Aは、便蓋400が閉じられた状態においても、便蓋400が有するセンサ窓402を通して、トイレ室に入室する使用者を検出することができる。例えば、人体検知センサ202Aが使用者を検知すると、自動的に便蓋400を開くようにしてもよい。
【0020】
さらに、ケーシング200の前方上部には、トイレ室内の使用者の存在の有無を検知する人体検知センサ202Bを設けることができる。例えば、人体検知センサ202Bが使用者を検知しなくなり、所定時間が経過すると、便座300および便蓋400を自動的に閉じるようにしてもよい。
【0021】
ケーシング200の内部には、後に詳述するように、便座300に座った状態の使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる温風乾燥装置が設けられている。この温風乾燥装置には、便器100のボウル104内に温風を導くための温風ダクトが設けられている。温風ダクトは、先端に噴出口502を有しており、この噴出口502はケーシング前面208からボウル104内を臨むように配置されている。そのため、噴出口502は、便器100の切り欠き部102の上方部に配置され、さらに後に詳述するように、収納された状態の洗浄ノズルよりもボウル104寄り(前方寄り)に配置されている。
【0022】
後述する図4に表したように、便座300は、ケーシング200に対して開閉軸210を中心として開閉自在に軸支されている。また、便蓋400は、ケーシング200に対して開閉軸212を中心として開閉自在に軸支されている。
【0023】
本実施形態のトイレ装置は、人体検知センサ202Aおよび人体検知センサ202Bの検知状況、あるいは使用者による図示しないスイッチの操作に応じて、後述する便座電動開閉ユニットを用いて自動的に便座300を開閉させることができる。これと同様に、人体検知センサ202Aおよび人体検知センサ202Bの検知状況、あるいは使用者による図示しないスイッチの操作に応じて、後述する便蓋電動開閉ユニットを用いて自動的に便蓋400を開閉させることができる。
【0024】
図3は、本実施形態の温風乾燥装置を説明するための模式側面図である。
また、図4は、洗浄ノズルが収納された状態のケーシング内部を表す模式断面図である。すなわち、図4は、図2におけるA−A断面図に相当する。なお、図3に表したトイレ装置においても、洗浄ノズルは便器100の切り欠き部102に収納された状態を表している。
【0025】
ケーシング200の内部には、便座300に座った状態の使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる温風乾燥装置が設けられている。温風乾燥装置は、便器100のボウル104内に温風を導くための温風ダクト500と、温風送風ファン504と、ヒータ506と、を備えている。温風送風ファン504は、ケーシング200内部の後方部に配置されている。なお、温風送風ファン504は、その大半が便器100の上面よりも下方に配置されている。温風ダクト500は、ボウル104側の一端に噴出口502を有しており、他端は温風送風ファン504に連通している。また、温風ダクト500は、温風送風ファン504と噴出口502との間に、上方に屈曲した屈曲部512を有している。ヒータ506は、屈曲部512と、温風送風ファン504に連通した側の端部と、の間の温風ダクト500内に設けられている。なお、後に詳述するように、温風送風ファン504は、その全体が便器100の上面よりも下方に配置されていてもよい。
【0026】
温風ダクト500は、噴出口502を塞ぐ温風ダンパ508をさらに有しており、この温風ダンパ508は温風ダクト500に対して開閉軸510を中心として開閉自在に軸支されている。なお、図4に表した温風ダンパ508は、開いた状態を表している。温風ダンパ508は、図示しない開閉手段により開いてもよいし、温風送風ファン504から温風ダクト500の内部を通って送られてきた温風の風圧によって開いてもよい。温風送風ファン504からヒータ506を通って送られてきた温風は、図4に表したように温風ダンパ508が開いた状態において、噴出口502から使用者の「おしり」などに向けて吹き付けられる。
【0027】
ケーシング200の内部には、洗浄ノズルユニットがさらに設けられている。洗浄ノズルユニットは、図示しないノズルモータから伝達される駆動力により便器100のボウル104内に進出する洗浄ノズル520と、洗浄ノズル520が収納された状態において洗浄ノズル520の外周表面を洗浄するノズル洗浄室522と、洗浄ノズル520の少なくとも一部を収納するシリンダ部526と、を備えている。
【0028】
洗浄ノズル520は、シリンダ部526およびノズル洗浄室522に対して摺動自在に設けられ、少なくとも一部がシリンダ部526の中に収納可能とされている。洗浄ノズル520が収納された状態においては、図4に表したように、洗浄ノズル先端524は、便器100の切り欠き部102の内部に配置され、ノズル洗浄室522の中に収納される。また、洗浄ノズル先端524以外の大部分は、シリンダ部526の内部に収納される。このとき、洗浄ノズル520は、前方下がりの傾斜姿勢の状態となっている。
【0029】
そのため、図4に表したように、温風ダクト500の噴出口502は、収納された状態の洗浄ノズル520よりも前方寄り(ボウル104寄り)に配置される。すなわち、温風ダクト500の噴出口502は、収納された状態の洗浄ノズル520、あるいはノズル洗浄室522の真上には配置されない。したがって、ケーシング200の上下方向の高さを低く抑えることができる。これにより、使用者が便座300に座ったときの座り心地はより良好になる。
【0030】
これは、ケーシング200の高さを低く抑えることができることによって、便座300の開閉軸210の高さを低く抑えることができる、すなわち便座300の後方部の立ち上がり部304の高さを低く抑えることができるためである。便座300は、前端部から後方部に亘る平坦部302と、後方部の緩やかに傾斜する立ち上がり部304と、を有している。そして、使用者は、便座300に座ったときの姿勢を安定化させるために、便座300のより後方部に臀部を配置させようとする。そのため、平坦部302を後方部にまで長く伸ばし、さらに立ち上がり部304の高さを低くすると、便座300への座り心地はより良好となる。これは、臀部の後方部に異物が接触しないので、使用者はこそばゆい感覚を覚えたり、便座が暖房便座である場合には冷たさを感じることがないためである。
【0031】
本実施形態にかかるトイレ装置においては、前述したように、収納された状態の洗浄ノズル520よりも噴出口502を前方寄りに配置させることによって、ケーシング200の高さを低く抑えることができるため、使用者が便座300に座ったときの座り心地はより良好になる。また、噴出口502は、ケーシング200の左右方向に対して略中央部であって、ボウル104寄りに配置されるため、噴出口502を使用者の臀部に近づけることができる。そのため、「おしり」などの乾燥効率をより高めることができる。
【0032】
図5は、本実施形態の脱臭装置を説明するための模式側面図である。
また、図6は、洗浄ノズルが進出した状態のケーシング内部を表す模式断面図である。すなわち、図6は、図2におけるA−A断面図に相当する。なお、図5に表したトイレ装置においても、洗浄ノズルはボウル内に進出した状態を表している。
【0033】
ケーシング200の内部には、ボウル104内の空気を吸引して臭気成分を除去する脱臭装置が設けられている。脱臭装置は、ボウル104内の空気を吸引する脱臭送風ファン534と、ボウル104内の空気を脱臭送風ファン534へ導くための脱臭ダクト530と、脱臭送風ファン534から排出された空気から臭気成分を除去する脱臭触媒536と、を備えている。脱臭ダクト530は、後に詳述するように、ボウル104側の一端近傍に吸い込み口を有しており、他端は脱臭送風ファン534に連通している。また、脱臭送風ファン534は、その半分以上が便器100の上面よりも下方に配置されている。さらに、脱臭送風ファン534よりも下方に配置された脱臭触媒536は、その全体が便器100の上面よりも下方に配置されている。なお、後に詳述するように、脱臭送風ファン534の全体が便器100の上面よりも下方に配置されていてもよい。
【0034】
ボウル104内の空気は、脱臭ダクト530が有する吸い込み口から吸い込まれ、脱臭ダクト530内を通って脱臭送風ファン534に吸い込まれる。続いて、脱臭送風ファン534に吸い込まれた空気は、脱臭触媒536に向かって吹き出され、この脱臭触媒536を通過する。こうすることで、ボウル104内の空気の臭気成分は除去される。
【0035】
図6に表した洗浄ノズル520は、ボウル104内に進出した状態を表している。このとき、温風ダンパ508は、閉じていることがより好ましい。これは、洗浄ノズル520から吐水された水が使用者の「おしり」などで跳ね返り、その水が温風ダクト500内に配置されたヒータ506にかかるおそれがあるためである。ヒータ506に水がかかると、ヒータ506は損傷するおそれがある。そのため、洗浄ノズル520がボウル104内に進出した状態においては、温風ダンパ508は閉じていることがより好ましい。
【0036】
また、温風ダクト500が上方に屈曲した屈曲部512を有しており、ヒータ506は、この屈曲部512と、噴出口502と反対側の端部に連通された温風送風ファン504と、の間の温風ダクト500内に配置されているため、噴出口502から水や小水が侵入したとしても、この水や小水が上方に屈曲した屈曲部512を乗り越えて、ヒータ506にかかるおそれは少ない。
【0037】
図7は、本実施形態のケーシングの内部の一部を拡大して眺めた模式拡大図である。
また、図8は、本実施形態のケーシングの内部の一部を前方斜めから眺めた模式図である。
また、図9は、本実施形態のケーシングの内部の一部を上方から眺めた模式上面図である。
なお、図7〜図9に表したトイレ装置において、洗浄ノズル520は、ボウル104内に進出した状態を表している。
【0038】
温風ダクト500は、図7〜図9に表したように、温風送風ファン504から洗浄ノズルユニットのシリンダ部526の側方、すなわち収納された状態の洗浄ノズル520の側方を通り、洗浄ノズル520の上方を介して、収納された状態の洗浄ノズル520よりも前方寄り(ボウル104寄り)に延在している。そのため、図4に関して前述したように、噴出口502は、収納された状態の洗浄ノズル520よりも前方寄りに設けられている。なお、温風ダクト500は、温風送風ファン504から送られてきた温風をより確実に使用者の臀部に向けて吹き付けるために、噴出口502の近傍に風向を略一定方向に整える風向リブを有していてもよい。
【0039】
一方、脱臭ダクト530は、図7〜図9に表したように、脱臭送風ファン534(図5参照)から温風ダクト500の側方を通り、ボウル104側の一端近傍に設けられた吸い込み口532をボウル104内に臨ませて配置される。このとき、吸い込み口532は、温風ダクト500の噴出口502の側方に離間して配置される。すなわち、噴出口502と、吸い込み口532と、は上下方向に重合していない。このため、吸い込み口532の近傍において、温風ダクト500と、脱臭ダクト530と、は上下方向に対して重合していない。
【0040】
その結果として、ケーシング200の上下方向の高さを低く抑えることができる。これにより、図4に関して前述したように、使用者が便座300に座ったときの座り心地はより良好になる。また、その他の効果についても、図4に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0041】
次に、本実施形態のケーシングおよび便器の内部構造の詳細について説明する。
図10は、本実施形態のケーシング内および便器内の詳細構造を左前方から眺めた模式斜視図である。
また、図11は、本実施形態のケーシング内および便器内の詳細構造を右前方から眺めた模式斜視図である。
図10に表したように、便器100内の左下方部に熱交換ユニット550が設けられている。また、熱交換ユニット550の上方部には、給水バルブユニット552と、ポンプユニット554と、が設けられている。給水バルブユニット552から熱交換ユニット550に供給された水が加熱され、ノズルユニットに併設されたポンプユニット554で水を汲み上げ、洗浄ノズル520にこの水を供給することができる。
【0042】
ケーシング200内の中央後方部には、タンク556が設けられている。このタンク556は、後に詳述するように、給水バルブユニット552と、ポンプユニット554と、の間の水路に設けられ、逆流防止機能を有している。また、熱交換ユニット550の上方部であって、ケーシング200内の後方部には、便蓋400を自動開閉させるための便蓋電動開閉ユニット410が設けられている。さらに、ケーシング200内の右前方部には、便座300を自動開閉させるための便座電動開閉ユニット310が設けられている。
【0043】
図11に表したように、ケーシング200の下方であって、便器100内の右側方部には、ボウル104内の空気を吸引する脱臭送風ファン534が設けられている。脱臭送風ファン534の下方には、コントローラ基板560が設けられている。コントローラ基板560は、使用者の図示しないスイッチの操作、あるいは人体検知センサ202Aや人体検知センサ202Bや着座センサ206など検知状況から判断して、洗浄ノズルユニットや温風乾燥装置や脱臭装置などの動作を制御することができる。
【0044】
ケーシング200の上面には、前述したように、人体検知センサ202Aと、着座センサ206と、が設けられている。また、ケーシング200の下方であって、便器100の上面よりも下方には、温風送風ファン504が配置されている。温風送風ファン504の前方には、温風ダクト500が設けられており、図7〜図9に関して前述したように、温風ダクト500はシリンダ部526の側方を通り、収納された状態の洗浄ノズル520よりも前方寄りに亘って配置されている。
【0045】
ケーシング200内の中央前方部には、洗浄ノズルユニットが設けられている。図1〜図2に関して前述したように、洗浄ノズルユニットは、便器100の切り欠き部102から洗浄ノズル520をボウル104内に進出させ、洗浄ノズル520の先端付近に設けられた吐水口528から水を噴射して、便座300に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。
【0046】
本実施形態のトイレ装置においては、温風乾燥装置の温風送風ファン504の全体又はその一部、及び/又は脱臭装置の脱臭触媒536と脱臭送風ファン534との全体又はその一部を、ケーシング200の下方であって、便器100の上面よりも下方、すなわち、サイドパネル150により隠蔽される部位に配設することができる。これにより、ケーシング200を小ぢんまりとした大きさにすることができ、且つケーシング200の前方部から後方部に至るまで高さを低く抑えることができ、ケーシング200の上面を凹凸の少ない平面状とすることができる。したがって、デザイン性の高いトイレ装置を実現することができる。
【0047】
図12は、本実施形態のタンクを説明するための水路系を例示するブロック図である。 給水バルブユニット552は、ストレーナと、定流量弁と、電磁弁と、を有しており、水道や貯水タンクなどの給水源に接続されている。ストレーナは、例えばメッシュ構造を有するフィルタであり、給水に混入した異物を除去する。給水バルブユニット552の下流側には、タンク556が設けられている。タンク556には、オーバーフロー口が設けられている。さらに、タンク556の下流側には、ポンプユニット554、熱交換ユニット550、バキュームブレーカ、流調・切替弁、および洗浄ノズル520などが設けられている。
【0048】
ここで、使用者が図示しないスイッチを操作すると、本実施形態のトイレ装置は、給水バルブユニット552の有する電磁弁を開放し、さらにポンプユニット554を駆動して、洗浄ノズル520の先端付近に設けられた吐水口528から水を噴射する。このとき、給水バルブユニット552を通過した水は、タンク556に一旦貯水される。タンク556にはオーバーフロー口が設けられているため、タンク556内の水位が所定水位よりも上昇すると、オーバーフロー口からボウル104へ接続された水路へ水が流出する。このようにして、ポンプユニット554から給水バルブユニット552へ水が逆流することを防止することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、温風ダクト500の噴出口502は、収納された状態の洗浄ノズル520よりも前方寄り(ボウル104寄り)に配置される。また、脱臭ダクト530の吸い込み口532は、温風ダクト500の噴出口502の側方に離間して設けられているため、温風ダクト500と、脱臭ダクト530と、は上下方向に重合しない。そのため、ケーシング200の上下方向の高さを低く抑えることができ、使用者が便座300に座ったときの座り心地をより良くすることができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、洗浄ノズル520は、可動部が2本以上の多段式ノズルであってもよいし、可動部がノズルヘッドのみの単段式ノズルであってもよい。
また、例えば、給水バルブユニット552や熱交換ユニット550が有する各要素や、人体検知センサ202A、202Bや着座センサ206の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、脱臭装置を設けないように変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置を表す模式図である。
【図2】本実施形態のトイレ装置の便座および便蓋が閉じた状態を表す模式図である。
【図3】本実施形態の温風乾燥装置を説明するための模式側面図である。
【図4】洗浄ノズルが収納された状態のケーシング内部を表す模式断面図である。
【図5】本実施形態の脱臭装置を説明するための模式側面図である。
【図6】洗浄ノズルが進出した状態のケーシング内部を表す模式断面図である。
【図7】本実施形態のケーシングの内部の一部を拡大して眺めた模式拡大図である。
【図8】本実施形態のケーシングの内部の一部を前方斜めから眺めた模式図である。
【図9】本実施形態のケーシングの内部の一部を上方から眺めた模式上面図である。
【図10】本実施形態のケーシング内および便器内の詳細構造を左前方から眺めた模式斜視図である。
【図11】本実施形態のケーシング内および便器内の詳細構造を右前方から眺めた模式斜視図である。
【図12】本実施形態のタンクを説明するための水路系を例示するブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
100 便器、 102 切り欠き部、 104 ボウル、 106 リム、 150 サイドパネル、 200 ケーシング、 202A、202B 人体検知センサ、 206 着座センサ、 208 ケーシング前面、 210、212 開閉軸、 300 便座、 302 平坦部、 304 立ち上がり部、 310 便座電動開閉ユニット、 400 便蓋、 402 センサ窓、 410 便蓋電動開閉ユニット、 500 温風ダクト、 502 噴出口、 504 温風送風ファン、 506 ヒータ、 508 温風ダンパ、 510 開閉軸、 512 屈曲部、 520 洗浄ノズル、 522 ノズル洗浄室、 524 洗浄ノズル先端、 526 シリンダ部、 528 吐水口、 530 脱臭ダクト、 532 吸い込み口、 534 脱臭送風ファン、 536 脱臭触媒、 550 熱交換ユニット、 552 給水バルブユニット、 554 ポンプユニット、 556 タンク、 560 コントローラ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と、
前記便器のボウルに進出する洗浄ノズルと、
噴出口が先端に設けられた温風ダクトと、前記温風ダクトに連通する温風送風ファンと、前記温風ダクト内に配置されるヒータと、を有する温風乾燥装置と、
前記便器の後方上部に取り付けられ、前記洗浄ノズルと、前記温風ダクトと、を内蔵したケーシングと、
前記ケーシングに対して開閉自在に軸支された便座と、
を備え、
前記便器は、リムの中央後部において下方に凹んだ切り欠き部を有し、前記ボウルに進出していない状態の前記洗浄ノズルを前方下がりの傾斜姿勢で前記切り欠き部に収納可能とされ、
前記温風ダクトは、前記ケーシングの内部において、前記切り欠き部に収納された前記洗浄ノズルの側方から前記洗浄ノズルの上方を介して前記ボウルに向けて延在し、
前記噴出口は、前記切り欠き部に収納された状態の前記洗浄ノズルよりも前記ボウル寄りに設けられたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記温風送風ファンの少なくとも一部は、前記便器の上面よりも下方に配設されてなることを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
便器と、
前記便器のボウルに進出する洗浄ノズルと、
噴出口が先端に設けられた温風ダクトと、前記温風ダクトに連通する温風送風ファンと、前記温風ダクト内に配置されるヒータと、を有する温風乾燥装置と、
吸い込み口が先端近傍に設けられた脱臭ダクトと、脱臭送風ファンと、脱臭触媒と、を有する脱臭装置と、
前記便器の後方上部に取り付けられ、前記洗浄ノズルと、前記温風ダクトと、前記脱臭ダクトと、を内蔵したケーシングと、
前記ケーシングに対して開閉自在に軸支された便座と、
を備え、
前記便器は、リムの中央後部において下方に凹んだ切り欠き部を有し、前記ボウルに進出していない状態の前記洗浄ノズルを前方下がりの傾斜姿勢で前記切り欠き部に収納可能とされ、
前記温風ダクトは、前記ケーシングの内部において、前記切り欠き部に収納された前記洗浄ノズルの側方から前記洗浄ノズルの上方を介して前記ボウルに向けて延在し、前記噴出口は、前記切り欠き部に収納された状態の前記洗浄ノズルよりも前記ボウル寄りに設けられ、
前記吸い込み口は、前記噴出口から離間して設けられ、
前記脱臭ダクトは、前記吸い込み口の近傍において、前記温風ダクトと上下方向に重合しないように設けられたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項4】
前記温風送風ファン及び前記脱臭送風ファンの少なくとも一部は、前記便器の上面よりも下方に配設されてなることを特徴とする請求項3記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記温風ダクトは、前記温風送風ファンと前記噴出口との間に上方に屈曲した屈曲部を有し、
前記ヒータは、前記屈曲部よりも前記温風送風ファン寄りに配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のトイレ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−209532(P2009−209532A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50857(P2008−50857)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】