説明

トウミョウ入り包装体

【課題】 トウミョウの包装体において、トウミョウを長期間保存しても異臭が発生せず、黄化も見られず、トウミョウの鮮度を長期間保つことができるトウミョウの包装体を提供する。
【解決手段】 有孔合成樹脂フィルムを用いてトウミョウを包装したトウミョウ入り包装体において、有孔合成樹脂フィルムの開孔面積比率が7×10−5〜5×10−4%であり、トウミョウ100gあたりの袋内面積が200〜400cmであり、トウミョウ100g当たりのフィルムの酸素透過量が800〜6000cc/atm・dayであるトウミョウ入り包装体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトウミョウ入りの包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トウミョウは収穫された後も呼吸作用を持続する。このため収穫後の貯蔵・流通および食するまでの間は、トウミョウの品質劣化を防止することが必要である。トウミョウはその性質上、品質の劣化が早く、鮮度保持の為にポリプロピレンフィルムなどによる密封包装が使用されている。しかし、密封包装されたトウミョウは、無酸素状態の雰囲気中にさらされ、嫌気呼吸せざるをえない状態に置かれてしまい、袋を開けたときにはほとんどの包装体で異臭がする。また、トウミョウに含まれるビタミンCが早く壊れるという問題も指摘されている。
【0003】
一般の野菜等の青果物に関して、酸素を供給し、鮮度を保つ方法として有孔フィルムを用いる方法が提案されている(特開昭62−148247号公報)。これらのフィルムでトウミョウを包装しても、トウミョウの品質が低下してしまい、さらには萎れやすいといった問題がある。
【特許文献1】特開昭62−148247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、トウミョウの包装体において、トウミョウの異臭が発生せず、食味の低下、萎れもなく、トウミョウの鮮度、栄養価を長期間保つことができ、市場に陳列された時に見栄えのよいトウミョウの包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
有孔合成樹脂フィルムを用いてトウミョウを包装したトウミョウ入り包装体において、有孔合成樹脂フィルムの開孔面積比率が7×10−5〜5×10−4%であり、トウミョウ100gあたりの袋内面積が200〜400cmであるトウミョウ入り包装体である。
更に好ましい形態としては、トウミョウ100g当たりのフィルムの酸素透過量が800〜6000cc/atm・dayであり、包装体の保存される温度との比、酸素透過量/温度が50〜600、パック後24時間以降の比が70〜400であり、合成樹脂フィルムが有する孔の平均孔径が20〜150μmであるトウミョウ入り包装体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明に従うと、トウミョウの鮮度を長期間保つことができ、異臭もなく、従って、変色も防止でき、食味の劣化もなく、見栄えの良い商品を最良の状態で提供することができる。また、ビタミンCの保存についても壊れることなく消費者に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、トウミョウの包装体に関するものであり、トウミョウとは、えんどう豆が発芽した野菜であるが、その形状については、特にこだわらず、根を切除していても、根にスポンジが付いていてもいなくても構わない。
本発明に用いる有孔合成樹脂フィルムとしては、トウミョウの包装に用いることのできるものであればどのようなものであっても差し支えはないが、例えば、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニールなどのフィルムが用いられる。また、ポリ乳酸などの生分解性フィルムでも良く、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等のフィルムでも良い。さらには前述のフィルムの中から選ばれた複合フィルムであっても良く、さらには、これらのフィルム表面にシーラント層を設けたものでも、防曇処理したフィルムであっても何等差し支えはない。
【0008】
有孔合成樹脂フィルムの厚さは、20〜60μmのものが好ましい。この範囲のフィルムを用いることは、包装体を作成するために要する費用、フィルム強度等の点より好ましい。さらに、これらのフィルムは透明であっても、不透明であっても良く、また表面に印刷を付したものであっても何等差し支えはない。
【0009】
有孔合成樹脂フィルムは孔を有する。孔の形状は、円形や四角または三角形など、どのような形状であってもよく、孔と同様の機能を有するものであれば貫通されたキズなどでも良い。孔の平均孔径としては、20〜150μmが好ましく、より好ましくは30〜100μmである。平均孔径が20μm未満では有孔合成樹脂フィルムの生産性が低下する恐れがある。平均孔径が150μmを超えると、適正な開孔面積比率を得るに必要な孔数が減少して、鮮度保持の品質精度に問題が生じる恐れがある。
貫通されたキズなどの場合、長径方向の径が150μm以下であれば何等差し支えはないが、円形が開孔作業等の面より望ましい。なお、いびつな形状の孔の開孔面積は、例えば、形状を計算し易い幾つかの形状に分けて面積を算出し、その後各面積の合計を求めて算出する方法でも良い。
【0010】
トウミョウ100gあたりの袋内表面積は、200〜400cmが好ましい。トウミョウ100gあたりの袋内表面積が200cm未満であると、袋内のトウミョウの密度が高くなり、トウミョウ同士での接触により傷が付き、軟腐しやすくなる恐れがある。また、トウミョウ100gあたり袋内表面積が400cmを越えると、袋内のトウミョウの密度が低くなり、袋内の初期の酸素量も多く、トウミョウの呼吸作用が活発になり黄化しやすくなり、消耗してしまうことになる。またフィルムの使用量が多いため袋のコストも高くなってしまう。
【0011】
有孔合成樹脂フィルムの開孔面積比率は、7×10−5〜5×10−4%である。更に好ましくは、1×10−4〜3.5×10−4%の範囲である。有孔合成樹脂フィルムの開孔面積比率が、7×10−5%未満であれば、常温にてトウミョウを保存した場合、軟腐、異臭が発生する可能性があり、5×10−4%を越えると、トウミョウの呼吸作用が活発化し、トウミョウの黄化現象、ビタミンCの低下を引き起こす可能性がある。
【0012】
トウミョウ100g当たりの有孔合成樹脂フィルムの酸素透過量が800〜6000cc/atm・dayが好ましい。さらに好ましくは1600〜4500cc/atm・dayである。有孔合成樹脂フィルムの酸素透過量がこの範囲にあると、軟腐、異臭発生防止、黄化発生防止、ビタミンCの低下防止の点でより優れている。
酸素透過量の測定方法は、森産業株式会社製の気体透過率測定装置MK−200を用いた。透過率を測定するための容器の開口部を測定しようとするフィルム試料で密封して密閉室を形成し、密閉室における気体を窒素などで置換することにより酸素濃度0%とした後、経時的に密閉室の酸素濃度の変化を測定して、フィルム試料の酸素透過量を測定するという方法で実施した。
【0013】
本発明のトウミョウ入りの包装体を保存する場合、その保存温度は特に限定されないが、平均気温10〜30℃の温度範囲で保存されても良い。一般にトウミョウ入りの包装体を低温の倉庫で保存すると常温の場合よりも鮮度保持について効果はあるが、本発明を用いると上記の温度範囲で保存されても鮮度保持の効果がある。従って、本発明を用いると恒温設備を有しない場所で保存しても何ら差し支えがなく、例えば、5℃という低温倉庫での保存よりも安く保存することができ、また低温設備が必要とならないので保存場所を選ばない。
【0014】
有孔合成樹脂フィルムの酸素透過量とトウミョウ入り包装体が保存される際の温度(この場合の温度とは包装体が保存されている状況での平均気温をいい、複数の保存温度条件で保存された場合は、各保存温度と保存時間の積算値の合計より平均気温を求める。)との比(酸素透過量/温度)は、50〜600が好ましい。50未満では、保存温度に対して酸素透過量が不足し、軟腐、異臭を発生させてしまう可能性があり、600を越えると黄化現象、ビタミンCの低下などの消耗を止められず、何れも品質が低下する可能性がある。
【0015】
トウミョウの包装後24時間を越えた場合の酸素透過量/温度の比は70〜400が好ましい。24時間という短時間でこの状態に達する条件に設定することにより、その後のトウミョウの鮮度保持期間を延長することができる。
【0016】
トウミョウ用包装袋1袋当たりの孔の個数は、開孔面積比率と平均孔径より算出されるが、できる限り複数個とすることが望ましい。内容物の付着や外的条件、例えば値段表の添付等で孔がふさがれてしまう場合があるので、鮮度を保証するには複数個の孔が好ましく、さらに袋あたり5個以上の孔をもち、孔1個あたりの影響度を20%以下にすることが望ましい。開孔方法は公知の方法を用いることができ、例えば、レーザー、熱針、打ち抜きなどがある。
【0017】
トウミョウの包装袋としては、三方シール袋、四方シール袋、チャック付きの袋またはガゼット袋などの形態の袋であっても差し支えなく、さらには、トレー、カップ等にトウミョウを充填し、これを包装袋で包装する形態のものであってもよい。
上記の包装袋にトウミョウを入れ、包装袋の口を閉じてトウミョウ入りの包装体とする。包装袋の口を閉じる方法は特に規定されず、公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0018】
平均気温は、産地からトラックにて市場に輸送し、市場にて常温で保管し、その後販売店で売られる流通経路を想定して条件を決定した。流通条件Aは、トラックの温度が13℃で10時間輸送し、市場にて30℃で10時間保管し、その後販売店にて7℃で4時間経過を想定した。このときの平均気温は19.1℃である。流通条件Bは、トラックの温度が5℃で10時間輸送し、市場にて20℃で10時間保管し、その後販売店にて10℃で4時間経過を想定した。このときの平均気温は12.1℃である。流通条件Cは、トラックの温度が15℃で8時間輸送し、市場にて30℃で10時間保管し、その後販売店にて20℃で6時間経過を想定した。このときの平均気温は22.5℃である。
【0019】
《実施例1》
内寸が200mm×300mmであり、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンからなる包装袋に、開孔面積比率が1.7×10−4%となるように、平均孔径80μmの孔を40個均一にあけた三方シール袋を作成し、根つきトウミョウを400g充填した(袋内表面積は200×300×2=120000mmであり、トウミョウ100gあたりの袋内表面積は30000mmすなわち300cm、酸素透過量は1981cc)。流通条件Aを経て、7℃で保存し、24時間後、3日および5日後の鮮度を臭気発生状況、黄化発生状況、ビタミンC含量などを評価した。
《実施例2》
内寸が150mm×300mmであり、厚さ25μmの二軸延伸ポリプロピレンからなる包装袋に、開孔面積比率が8.4×10−5%となるように平均孔径40μmの孔を60個均一にあけた三方シール袋を作成し、根つきトウミョウを400g充填した(100g当たりの袋内表面積は225cm、酸素透過量は900cc)。流通条件Bを経て、10℃で保存し、24時間後、3日および5日後の鮮度を臭気発生状況、黄化発生状況、ビタミンC含量などを評価した。
《実施例3》
内寸が200mm×300mmであり、厚さ25μmの生分解性のポリ乳酸からなる包装袋に、開孔面積比率が2.1×10−4%となるように平均孔径60μmの孔を90個均一にあけた三方シール袋を作成し、根つきトウミョウを400g充填した(100g当たりの酸素透過量は2978cc)。流通条件Cを経て、20℃で保存し、24時間後、3日および5日後の鮮度を臭気発生状況、黄化発生状況、ビタミンC含量などを評価した。
【0020】
《実施例4》
内寸が200mm×300mmであり、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンからなる包装袋に、開孔面積比率が3.4×10−4%となるように平均孔径80μmの孔を80個均一にあけた三方シール袋を作成し、根つきトウミョウを400g充填した(100g当たりの酸素透過量は3940cc)。流通条件Cを経て、20℃で保存し、24時間後、3日および5日後の鮮度を臭気発生状況、黄化発生状況、ビタミンC含量などを評価した。
《実施例5》
内寸が200mm×300mmであり、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンからなる包装袋に、開孔面積比率が4.9×10−4%となるように平均孔径85μmの孔を85個均一にあけた三方シール袋を作成し、根つきトウミョウを400g充填した(100g当たりの酸素透過量は5826cc)。 流通条件Cを経て、20℃で保存し、24時間後、3日および5日後の鮮度を臭気発生状況、黄化発生状況、ビタミンC含量などを評価した。
《実施例6》
実施例5と同様の袋に、根つきトウミョウを400g充填した。流通条件Bを経て、10℃で保存し、24時間後、3日および5日後の鮮度を臭気発生状況、黄化発生状況、ビタミンC含量などを評価した。
【0021】
《比較例1》
内寸が200mm×300mmであり、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンからなる包装袋に、開孔面積比率が5.2×10−5%となるように平均孔径40μmの孔を50個均一にあけた三方シール袋を作成し、根つきトウミョウを400g充填した(100g当たりの酸素透過量は635cc)。流通条件Cを経て、20℃で保存し、24時間後、3日および5日後の鮮度を臭気発生状況、黄化発生状況、ビタミンC含量などを評価した。
《比較例2》
内寸が200mm×300mmであり、厚さ25μmの二軸延伸ポリプロピレンからなる包装袋に、開孔面積比率が6.1×10−4%となるように平均孔径85μmの孔を120個均一にあけたで三方シール袋を作成し、根つきトウミョウを400g充填した(100g当たりの酸素透過量は8645cc)。 流通条件Bを経て、10℃で保存し、24時間後、3日および5日後の鮮度を臭気発生状況、黄化発生状況、ビタミンC含量などを評価した。
《比較例3》
内寸が250mm×400mmであり、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンからなる包装袋に、開孔面積比率が3.4×10−4%となるように平均孔径85μmの孔を120個均一にあけた三方シール袋を作成し、根つきトウミョウを400g充填した(100g当たりの袋内表面積500cm、酸素透過量6670cc)。流通条件Cを経て、20℃で保存し、24時間後、3日および5日後の鮮度を臭気発生状況、黄化発生状況、ビタミンC含量などを評価した。
【0022】
実施例及び比較例の鮮度などの結果を表1に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有孔合成樹脂フィルムを用いてトウミョウを包装したトウミョウ入り包装体において、トウミョウ100gあたりの袋内面積が200〜400cmであり、前記有孔合成樹脂フィルムの開孔面積比率が7×10−5〜5×10−4%であることを特徴とするトウミョウ入り包装体。
【請求項2】
トウミョウ100g当たりの有孔合成樹脂フィルムの酸素透過量が800〜6000cc/atm・dayである請求項1に記載のトウミョウ入り包装体。
【請求項3】
有孔合成樹脂フィルムの酸素透過量とトウミョウ入り包装体が保存される際の温度との比、酸素透過量/温度が50〜600である請求項1又は2に記載のトウミョウ入り包装体。
【請求項4】
有孔合成樹脂フィルムの酸素透過量とトウミョウ入り包装体が保存される際の温度との比が、トウミョウを包装後24時間以降の比が70〜400である請求項1、2又は3に記載のトウミョウ入り包装体。
【請求項5】
有孔合成樹脂フィルムの孔の平均孔径が20〜150μmである請求項1、2、3又は4に記載のトウミョウ入り包装体。

【公開番号】特開2007−186247(P2007−186247A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6959(P2006−6959)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】