説明

トグル加圧ユニット

【課題】管理やメンテナンスが容易で、プレスラムのストロークが調整可能であり、且つ、装置の大型化を招くことなく大きな加圧力が得られるトグル加圧ユニットを提供する。
【解決手段】電動機1を駆動源とし、電動機1による回転駆動力をボールネジ機構2及びトグルリンク3を介してプレスラム4に伝達し、このときのプレスラム4の加圧力でワークを加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トグルリンクを介した加圧力でワークを加工するトグル加圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
トグル加圧ユニットは、駆動源で発生させた駆動力をトグルリンクを介してプレスラムに伝達し、このときのプレスラムの加圧力でワークの加工を行うものである。このようにトグルリンクを介することにより、小さな駆動力から大きな加圧力を得ることができるため、トグル加圧ユニットは、例えばカシメ加工や穴あけ加工等のように、大きな加圧力を要する加工に好適に適用される。
【0003】
例えば特許文献1に示されているトグル加圧ユニットでは、流体圧により揺動可能な揺動ピストンを駆動源とし、この揺動ピストンで発生した駆動力をトグルリンクを介してプレスラムに伝達している。流体圧としては、空気圧(圧縮空気)によるものが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭53−44708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、流体圧による揺動ピストンを駆動源とすると、流体圧を十分に管理する必要があると共に、流体漏れを防止するメンテナンス作業が必要となる。また、空気圧により揺動可能な揺動ピストンを駆動源とすると、空気の体積変化によりプレスラムを往復動ストローク途中で精度良く停止させることができない。
【0006】
また、上記のトグル加圧ユニットの加圧力を大きくしようとすると、揺動ピストンに供給される流体圧を大きくする必要があるため、装置の大型化を招く。
【0007】
さらに、上記のようなトグル加圧ユニットにより加工する際、ワークの状態、すなわち、所定のワークが正常にセットされたか否か、あるいは、ワークに所定の加工が正常に施されたか否かは、例えばワークの加工部の寸法を直接測定することにより、あるいは、目視や監視カメラ等により確認することにより、管理することができる。しかし、このような管理方法では加工部が多数の場合には測定や確認作業に手間がかかる。また、加工部が微小である場合は、加工部の測定や確認が困難となり、品質管理の信頼性が低下する場合がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、管理やメンテナンスが容易で、プレスラムのストロークを高精度に調整可能であり、且つ、装置の大型化を招くことなく大きな加圧力が得られるトグル加圧ユニットを提供することにある。
【0009】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、ワークの状態を容易且つ確実に管理することができるトグル加圧ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、電動機を駆動源とし、電動機による回転駆動力をボールネジ機構及びトグルリンクを介してプレスラムに伝達し、このときのプレスラムの加圧力でワークを加工するトグル加圧ユニットを提供する。
【0011】
このように、本発明のトグル加圧ユニットは、電動機を駆動源としているため、管理やメンテナンスが容易である。また、電動機でプレスラムを駆動することで、プレスラムを往復動ストロークの途中で正確に停止させることができるため、ワークの大きさに合わせてプレスラムのストロークが調整可能となり、これによりサイクルタイムの短縮を図ることができる。さらに、電動機による駆動力を、倍力機能を有するボールネジ機構を介してトグルリンクに伝達することにより、装置の大型化を招くことなく大きな加圧力を出力することができる。
【0012】
上記のようなトグル加圧ユニットは、例えばカシメ加工や穴あけ加工等のように大きな加圧力を要する加工に適しており、特に、変形量の大きいカシメ加工(例えば据え込み加工等)や厚い材料への穴あけ加工等のように、非常に大きな加圧力を要する加工に適している。
【0013】
例えばボールネジ機構は、電動機の出力軸に接続された軸部材と、軸部材に外挿され、トグルリンクに接続されたサポートナットと、軸部材の外周面に形成された螺旋溝とサポートナットの内周面に形成された螺旋溝との間に配された複数のボールとを備え、電動機の回転駆動力で軸部材を回転させることにより、サポートナットを回転軸方向に移動させてトグルリンクを駆動するものとすることができる。この場合、電動機の出力軸と軸部材とを直結することにより、簡単な機構でボールネジ機構に駆動力を伝達することができる。これとは逆に、サポートナットを回転させて軸部材を回転軸方向に移動させる場合は、サポートナットと電動機とを歯車やベルト等を介して連結する必要があるため、駆動力を伝達する機構が複雑になり、装置の大型化を招く。
【0014】
また、上記のように駆動源に電動機を用いることで、電動機に流れる電流値に基づいてワークの状態を管理する管理部を設けることができる。すなわち、電動機に流れる電流値は電動機に加わる負荷によって変動する。従って、加工が正常に行われた場合に電動機に流れる基準電流値を取得し、実際の加工時に測定した測定電流値と前記基準電流値とを比較することで、ワークの状態、すなわち、所定のワークが正常にセットされたか否か、あるいは、ワークに正常な加工が行われたか否かを判別することができる。具体的には、測定電流値と基準電流値との差が所定範囲内であれば、ワークの状態が正常であり、所望の加工品質が得られたとみなすことができ、測定電流値と基準電流値との差が正常範囲外であれば、ワークの状態に何らかの異常が生じたために加工が正常に行われず、所望の加工品質が満たされていないとみなすことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のトグル加圧ユニットによれば、プレスラムのストロークを調整してサイクルタイムを短縮することができると共に、コスト高や大型化を招くことなく大きな加圧力を得ることができる。
【0016】
また、上記のように電動機の電流値に基づいて加工品質を管理することで、加工部の直接測定や目視等に比べてワークの状態の管理が容易化されると共に、加工部が微小である場合であっても品質管理の信頼性は低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トグル加圧ユニットの内部の様子を示す側面図(プレスラム上端位置)である。
【図2】トグル加圧ユニットの内部の様子を示す側面図(プレスラム下端位置)である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】管理部のブロック図である。
【図5】電動機の電流値の波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すトグル加圧ユニットは、トグルリンク3を介した加圧力でワークWを加工するものであり、本実施形態では、例えば一対の板状ワークWのカシメ加工を行うものである。トグル加圧ユニットは、駆動源としての電動機1と、ボールネジ機構2と、トグルリンク3と、プレスラム4と、加工治具5とを備える。
【0020】
電動機1は、例えば制御部(図示省略)により制御されるサーボモータであり、側部フレーム10に設けられたモータベース11に固定される。モータベース11は、側部フレーム10と垂直な垂直部11aと、垂直部11aから延びた取付部11bとを有し、取付11bがベアリング12を介して側部フレーム10に取付けられる。これによりモータベース11、電動機1、及びボールネジ機構2は、側部フレーム10の面方向に沿って回転可能とされる。
【0021】
ボールネジ機構2は、軸部材21と、軸部材21に外挿されたサポートナット22と、軸部材21の外周面に形成された螺旋溝21aとサポートナット22の内周面に形成された螺旋溝22aとの間に配された複数のボール23とを備える。図示例では、軸部材21が電動機1により回転駆動され、サポートナット22が、軸部材21の回転により回転軸方向(図1のM方向)に駆動される。軸部材21の後方側(電動機1側)端部は、電動機1の出力軸13とカップリング14を介して直結され、これにより軸部材21及び電動機1が同一軸線M上に配される。サポートナット22の前方側(トグルリンク3側)には、内周に軸部材21を収容した筒部24が設けられ、図示例では、サポートナット22及び筒部24がスライド部材Sとして一体に設けられる。スライド部材Sの前方側端部は、連結部25を介してトグルリンク3に回転可能に接続される。
【0022】
ボールネジ機構2のスライド部材Sは、リニアガイド26により軸方向にガイドされる。具体的には、モータベース11の垂直部11aに直線状のレール26aを設けると共に、スライド部材Sにガイド26bを設け、ガイド26bをレール26aに軸方向に摺動可能な状態で嵌合させることにより、スライド部材Sが軸方向Mに沿ってガイドされる。
【0023】
トグルリンク3は、ボールネジ機構2から入力された駆動力をプレスラム4に出力するものである。本実施形態のトグルリンク3は、リンク連結部33を介して回動可能に連結された第1リンク31及び第2リンク32からなる。リンク連結部33付近にはボールネジ機構2のスライド部材Sが連結され、図示例では、第2リンク32のリンク連結部33付近に設けられた入力部32aにボールネジ機構2の連結部25が回転可能に連結される。第1リンク31の上端部31aは側部フレーム10に回転可能に取付けられ、第2リンク32の下端部32bにはプレスラム4が回転可能に連結される。以上により、トグルリンク3は、ボールネジ機構2の伸縮動作により、両リンク31・32を「く」の字型に折り曲げた状態(図1参照)と、略一直線状にした状態(図2参照)との間で回動可能とされる。尚、トグルリンク3は、外部に露出した状態で設けられるため、側部フレーム10等を外すことなく容易にメンテナンスを行うことができる。特に、両リンク31・32を一直線状にした状態で、リンク連結部33が側部フレーム10から外部に出ることで(図2参照)、リンク連結部33に不具合が生じた場合でも容易にメンテナンスすることができる。
【0024】
プレスラム4は、トグルリンク3から伝達された駆動力により所定方向に往復動可能に設けられ、図示例では、その下端部に装着された加工治具5と共に昇降可能に設けられる。図示例の加工治具5は、カシメ加工を行うためのものであり、ポンチ5aと、ポンチ5aの外周に設けられた押さえ部材5bとを有する。プレスラム4及び加工治具5の下方には、下部フレーム15に固定されたダイス6が設けられる。ダイス6は、ポンチ5aの下端部が当接する本体部6aと、本体部6aの外周に設けられ、ポンチ5aの加圧力により外方に開いて分割可能な一対の分割部6bとを有する。プレスラム4を下端位置付近まで降下させたときに、ダイス6の上に載置されたワークWが加工治具5及びダイス6で加圧されるように、加工治具5及びダイス6の位置(高さ)が設定される(図2参照)。
【0025】
このトグル加圧ユニットには、プレスラム4の往復動を所定方向(図示例では上下方向)にガイドするガイド機構が設けられる。図示例では、ガイド機構として、第1ガイド部41及び第2ガイド部42が設けられる。第1ガイド部41は、プレスラム4に設けられたガイド41aと、側部フレーム10に固定された上下方向の直線レール41bとからなる。ガイド41a及び直線レール41bは、例えば図3に示すように、水平方向(図中の左右方向)に互いに係合すると共に、上下方向(図中の紙面と直交する方向)に摺動可能な状態で嵌合する。第2ガイド部41は、プレスラム4の下部に設けられた円筒ガイド42aと、下部フレーム15に固定されたガイド棒42bとからなり、円筒ガイド42aの内周面とガイド棒42bの外周面とが上下方向に摺動可能な状態で嵌合している。尚、プレスラム4には、ガイド棒42bとの干渉を回避するために、プレスラム4が降下したときにガイド棒42bが挿入可能な挿入穴43が設けられる。
【0026】
次に、上記構成のトグル加圧ユニットの動作、特に、プレスラム4を上端位置(図1参照)から下端位置(図2参照)まで降下させる動作を説明する。まず、図1に示す状態から、電動機1を回転駆動し、この回転駆動力により出力軸13及びカップリング14を介して、ボールネジ機構2の軸部材21を回転させる。軸部材21が回転すると、ボールネジ機構2のスライド部材Sが、リニアガイド26でガイドされながら先端側(トグルリンク3側)にスライドする。こうして電動機1による回転駆動力がボールネジ機構2で軸方向に変換され、この軸方向の駆動力がトグルリンク3に伝達される。
【0027】
ボールネジ機構2のスライド部材Sによる押し込み力が、トグルリンク3を介してプレスラム4に伝達される。具体的には、トグルリンク3の入力部32aが、ボールネジ機構2のスライド部材Sにより軸方向先端側(図示例ではおよそ水平方向左側)に押し込まれる。これにより、トグルリンク3が、第1リンク31の上端部31aを支点として、両リンク31・32の屈曲角αが大きくなる方向に回動する。これに伴って、第2リンク32の下端部32bに連結されたプレスラム4が、第1ガイド部41及び第2ガイド部42でガイドされながら降下する。そして、プレスラム4が下端位置付近まで降下すると(図2参照)、加工治具5の押さえ部材5bがダイス6に載置されたワークWに当接し、さらにプレスラム4が降下することで、加工治具5のポンチ5aとダイス6の本体部6aとでワークWが加圧され、ワークに所定の加工(本実施形態ではカシメ加工)が施される。
【0028】
尚、電動機1を回転駆動してボールネジ機構2のスライド部材Sをスライドさせる際、スライド部材Sの先端部(連結部25)は、トグルリンク3の入力部32aの昇降に伴って若干上下方向に移動する。本実施形態では、ボールネジ機構2及び電動機1を固定したモータベース11がベアリング12を中心に回転可能に設けられているため、ボールネジ機構2及び電動機1の中心軸Mをベアリング12を中心に回動させることができる。これにより、連結部25の上下方向移動を中心軸Mの回動によって吸収することができるため、スライド部材Sのスライド動作、ひいてはプレスラム4の昇降動作をスムーズに行うことができる。
【0029】
上記のようなトグル加圧ユニットでは、トグルリンク3の両リンク31・32の屈曲角αが小さいとき(図1参照)はプレスラム4の昇降スピードが速く、屈曲角αが大きいとき(図2参照)は、プレスラム4の昇降スピードは遅くなるが、プレスラム4の加圧力が大きくなる。したがって、トグルリンク3を介してプレスラム4を昇降することで、両リンク31・32の屈曲角αが小さいとき、すなわち加工が行われないときは、プレスラム4の素早い昇降によりサイクルタイムの短縮が図られ、両リンク31・32の屈曲角αが大きいとき、すなわち加工が行われるときは、プレスラム4の大きな加圧力によりワークWに確実に加工を施すことができる。
【0030】
また、ボールネジ機構2は、電動機1の回転駆動力よりも大きな軸方向の駆動力を出力する、いわゆる倍力機能を備えているため、電動機1の出力を大きくすることなく、すなわち装置の大型化を招くことなく、プレスラム4の加圧力をさらに大きくすることができる。
【0031】
また、上記の説明では、プレスラム4を、上端位置(図2のX位置)と下端位置(図2のY位置)との間を最大ストロークL1で昇降させる場合を示しているが、プレスラム4は必ずしも最大ストロークL1で昇降させる必要は無い。すなわち、ワークWを加工することができ、且つ、ワークWの搬入出に支障を来たさなければ、プレスラム4を、上端位置Xよりも下方の位置Z(図2の鎖線参照)と下端位置Yとの間を比較的短いストロークL2で昇降させてもよい。この場合、プレスラム4のストロークが短縮されることで、サイクルタイムの短縮を図ることができる。特に、多数の打点を加工する際には、プレスラムのストロークを必要最小限として一打点あたりのサイクルタイムを短縮することで、全体のサイクルタイムを大幅に短縮することができる。プレスラム4のストロークは、電動機1の回転を制御することにより調整することができる。本実施形態では、電動機1がサーボモータであるので、所望のプレスラム4の昇降ストロークに合わせて、電動機1の回転方向、回転速度、あるいは回転トルク等を自動的に制御することができる。特に、電動機1の出力軸13とボールネジ機構2の軸部材21とをカップリング14を介して直結しているため、電動機1と軸部材21との間に遊びは生じず、プレスラム4の位置を高精度に設定することができる。
【0032】
上記のトグル加圧ユニットには、電動機1に流れる電流値に基づいてワークの状態を管理する管理部が設けられる。本実施形態の管理部7は、例えば図4に示すように、電動機1の電流値を測定する電流値測定部71と、電流値測定部71で測定した測定電流値を、正常な加工が行われた場合の基準電流値と比較し、その差が所定範囲内であるか否かを判別する比較判別部72と、比較判別部72による判別結果を出力する出力部73(例えばモニタ)とを備える。
【0033】
管理部7は、以下のようにしてワークWの状態、すなわち、所定のワークWが正常にセットされたか否か、及び、ワークWに正常な加工が施されたか否かを管理する。まず、所定のワークWが正常にセットされ、正常な加工が行われた場合の電動機1の基準電流値Iを取得する。例えば図5に、プレスラム4が1サイクル(1往復)する間、連続的に測定した正常加工時の基準電流値Iを時刻tに対してプロットした波形を実戦で示す。そして、実際にワークWの加工を行い、ワークWを加工している間の電流値I’を電流値測定部71で測定する。この測定電流値I’と前記基準電流値Iとが比較判別部72で比較され、加工が正常に行われたか否かが判別される。すなわち、時刻tにおける測定電流値I’と基準電流値Iとの差が所定範囲内であれば、ワークの状態が正常であるみなすことができ、測定電流値I’と基準電流値Iとの差が所定範囲外であれば、ワークの状態に何らかの不具合が生じたとみなすことができる。この判別結果が出力部73に伝達され、モニタ等に表示される。
【0034】
例えば、ワークWの厚さが所定よりも厚い場合、あるいは、板状ワークWの枚数が所定よりも多い場合の電流値を図5に鎖線Iaで示す。この場合、加工治具5とワークWとは、正常なワークを加工する場合より早期に当接する(当接開始位置が図2で示す場合よりも高くなる)ため、図5に示す加工開始予定時刻t1よりも早くに(左側に)測定電流値I’の立ち上がり部が形成される。従って、加工開始予定時刻t1における測定電流値I1’は、基準電流値I1よりも大きくなっているはずである(I1’>I1)。一方、ワークWの厚さが所定より薄い場合や、板状ワークWの枚数が所定より少ない場合(あるいはワークWが全くセットされていない場合)の電流値を図5に鎖線Ibで示す。この場合、加工治具5とワークWとは、正常なワークを加工する場合よりも遅れて当接する(あるいは当接しない)ため、図5に示す加工開始予定時刻t1よりも遅くに(右側)に電流値I0の立ち上がり部が形成される。従って、加工開始予定時刻t1よりも少し後の時刻t2(例えば電流値Ibの加工開始時刻)における測定電流値I2’は、基準電流値I2よりも小さくなっているはずである(I2’<I2)。以上より、時刻t1やt2における測定電流値I’と、その時刻における基準電流値Iとの差が所定範囲を超えていれば、ワークの厚さや枚数、あるいはセット状態に何らかの異常が生じたとみなすことができる。
【0035】
また、基準電流値Iの加工開始予定時刻t1と加工終了予定時刻t4との間、すなわち加工が行われている間の任意の時刻t3における測定電流値I3’(図示省略)と基準電流値I3とを比較し、これらの差が所定範囲外であれば、電動機1に過大あるいは過小な負荷が加わっていることとなり、所定の加工が行われていないとみなすことができる。
【0036】
このように、電動機1の電流値に基づいてワークWの状態を管理すれば、加工部を直接測定等で確認する方法と比べて管理作業が容易化され、且つ、加工部が微小であっても品質管理の信頼性の低下を招くことはない。尚、電流値を測定する回数は特に限定されず、1サイクル中に1回測定してもよいし、複数回測定してもよい。あるいは、1サイクル中の電流値を連続して測定し、電流値の波形全体を比較してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 電動機
2 ボールネジ機構
21 軸部材
22 サポートナット
3 トグルリンク
31 第1リンク
32 第2リンク
33 リンク連結部
4 プレスラム
5 加工治具
6 ダイス
7 管理部
10 側部フレーム
11 モータベース
12 ベアリング
13 出力軸
14 カップリング
15 下部フレーム
S スライド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を駆動源とし、電動機による回転駆動力をボールネジ機構及びトグルリンクを介してプレスラムに伝達し、このときのプレスラムの加圧力でワークを加工するトグル加圧ユニット。
【請求項2】
ワークにカシメ加工又は穴あけ加工を施すためのものである請求項1記載のトグル加圧ユニット。
【請求項3】
ボールネジ機構が、電動機の出力軸に接続された軸部材と、軸部材に外挿され、トグルリンクに接続されたサポートナットと、軸部材の外周面に形成された螺旋溝とサポートナットの内周面に形成された螺旋溝との間に配された複数のボールとを備え、電動機の回転駆動力で軸部材を回転させることにより、サポートナットを回転軸方向に移動させてトグルリンクを駆動する請求項1又は2記載のトグル加圧ユニット。
【請求項4】
電動機に流れる電流値に基づいて、ワークの状態を管理する管理部を設けた請求項1〜3の何れかに記載のトグル加圧ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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