説明

トコジラミの蔓延を監視するための検出装置および方法

トコジラミなどの昆虫の蔓延を監視するための検出装置および方法が提供される。適切な装置は、内部の間隔によって隔てられた1対のプレートを備えており、内部の間隔は、検出装置への1匹以上の昆虫の進入を可能にするように寸法付けられている。さらには、ホテルの多数の部屋や動物を収容する領域などの多数の領域においてトコジラミなどの昆虫を容易に検出するための方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温血の宿主の血液を食物とするトコジラミおよび他の昆虫の存在を検出するために使用される装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
監視装置は、例えばゴキブリおよびセイヨウシミを監視するための専用のわなを備えている粘着トラップなど、総合的病害虫管理の規則による病害虫の管理に頻繁に使用されるツールである。市場で入手することができる監視トラップ(特に、粘着トラップ)は、トコジラミにはほとんど受け入れられていない。トコジラミの監視において、高価でなく、取り扱いが容易であり、顧客の目に留まらず、(ホテルの)ルームサービス係または病害虫管理の担当者(PMP)にとって判断が容易であり、虫類をきわめて引き付ける特別な装置が必要とされている。
【0003】
トコジラミは、動物の血液のみを食物とする小型の昆虫である。一般的なトコジラミであるCimex lectulariusは、人間との共存に最も適合したトコジラミの種である。成虫のトコジラミは、長円形の平たい体を有し、約1/4インチまたは約6ミリメートルの長さ、5から6ミリメートルの幅、および赤茶色である。幼虫は、成虫に似た外観であるが、成虫よりも小さく、成虫よりも薄い色である。
【0004】
トコジラミは、飛ぶことはないが、表面上をきわめて素早く移動することができる。雌のトコジラミは、隠れた領域に産卵し、1日あたり最大5個、生涯の間に500個もの卵を産むことができる。トコジラミは、食物がなくても長期にわたって生存することができる。例えば、幼虫は、食物なしで数ヵ月間生存することができ、成虫は、1年よりも長く生存することができる。結果として、該当の領域に宿主が存在しないだけでは、蔓延を除くことにはならないであろう。
【0005】
トコジラミは、細長い吻で血液を吸うことによって生命を維持するための栄養を得る。3から10分間にわたって人間に取り付く可能性があるが、人間は、おそらくは咬まれたことを感じない。咬まれた後で、犠牲者は、咬まれた領域において痒みを伴う腫れまたはむくみに直面することが多い。一部の犠牲者は、トコジラミに咬まれても反応を生じず、または最小限の反応しか示さないため、蔓延が、検出されることなく長期間にわたって続く可能性がある。新たなトコジラミの蔓延は、トコジラミが容易に運ばれる所有物、例えば、衣類、シーツ、および他の品物に付着するなどして、新たな領域へと運ばれることに起因する。結果として、ホテルまたはアパートなどの占有者の入れ替わりが多い生活領域が、トコジラミの蔓延に特にさらされる。
【0006】
以上の理由で、トコジラミは、検出および撲滅が困難であることが多い。病害虫管理の担当者(PMP)および殺虫剤が、典型的には必要とされ、不必要な物体を部屋から取り除き、電気掃除機によってトコジラミおよび卵を取り除き、次いで殺虫剤を隠れていそうな領域へと適用する必要がある。トコジラミの蔓延に対する処置は、侵入的であって、通常の業務を妨げ、かつ高価につくため、トコジラミの早期検出およびトコジラミの存在の継続的な監視が、強く望まれる。早期の検出がなされれば、蔓延が確立される前に適切な処置をとることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Identification of the Airborne Aggregation Pheromone of the Common Bed Bug,Cimex lectularius」、Journal of Chemical Ecology、vol 34、no.6、June 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特に占有者の頻繁な入れ替わりに直面するホテルおよび他の宿泊場所において、トコジラミの蔓延を監視するための検出装置であって、トコジラミを引き付け、取り扱いが容易であり、独立しており、幅広い範囲の領域に配置できる検出装置が必要とされている。また、複数の部屋をトコジラミの蔓延に関して迅速に監視するための方法が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
トコジラミの蔓延を監視するための検出装置であって、検出装置への1匹以上のトコジラミの進入を可能にするように寸法付けられた内部の間隔によって隔てられている第1のプレートおよび第2のプレートと、第1のプレートおよび第2のプレートの間に支持構造とを備えている、検出装置が提供される。支持構造を、例えば、装置内の内部の間隔を維持するために使用することができる。
【0010】
一態様においては、内部の間隔が、約1mmから約5mmである。随意により、第1のプレートおよび第2のプレートを、プラスチック材料から製作することができ、有利にはポリカーボネート材料から製作することができる。別の態様においては、第1のプレートまたは第2のプレートあるいは第1のプレートおよび第2のプレートの両方が、少なくとも部分的に透明である。別の態様においては、第1のプレートまたはトコジラミが移動すると予想されるプレートが、肌理のある表面を備えている。
【0011】
さらなる態様によれば、昆虫(特に、トコジラミ)の存在を検出するための方法が提供される。またさらなる実施形態によれば、少なくとも1つの所定の領域内の昆虫の存在を監視し、トコジラミなどの昆虫が検出された場合に、昆虫が検出された領域に処置を適用するための方法が提供される。
【0012】
本開示の性質、目的、および利点のさらなる理解のために、以下の図面と併せて検討される以下の詳細な説明を参照すべきである。図面において、類似の参照符号は類似の構成要素を指し示している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態による斜視図である。
【図2】図1の実施形態の正面図である。
【図3】図1の実施形態の側面図である。
【図4】図1の実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
さらに検出装置は、トコジラミ誘引剤および/またはフェロモンを備えることができる。例えば、トコジラミから単離される揮発性物質が、この目的のために使用可能であり、集合、警報、および/または性フェロモンの代表である。他に適切でありうる物質として、ここでの参照により全体が本明細書に組み込まれる「Identification of the Airborne Aggregation Pheromone of the Common Bed Bug,Cimex lectularius」、Journal of Chemical Ecology、vol 34、no.6、June 2008に開示の物質が挙げられる。他の適切な誘引剤として、固体、ゲル、または液体の形態など、任意の形態の食餌誘引物質が挙げられる。二酸化炭素、メタノール、メタン、フラン、ピリジン、ヒトの汗、乳酸、酪酸、オクテノール、インドール、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン、ゲラニルアセトン、1−ドデカノール、3−メチル−1−ブタノール、カルボン酸、尿素、および皮脂(スキンオイルの成分)を利用することも可能である。適切な誘引剤は、1つ以上のハーボレイジング剤(harboraging agent)を含むことができる。また、検出装置は、カルバマート、ピレスロイド、フェニルピラゾール、および/またはクロロニコチニル化合物などの殺虫剤や、任意の他の適切な化合物をさらに含むことができる。
【0015】
トコジラミの存在を検出するための方法も提供される。この方法は、たとえ検出の評価の時点で目に見える虫が存在しない場合でも、トコジラミの検出を可能にする。この方法は、トコジラミが血液を食物とし、ヘム、グロビン、またはヘモグロビンなどの血液の名残を、虫の便において検出できるということを利用する。この方法の別の態様は、便の出所としてのトコジラミの強力な徴候である血液の存在を検出するために、昆虫の便に便潜血検査を適用するステップを含む。一般に、任意の検査システムを使用することができるが、例えば色反応など、視覚的な読み取りを可能にする検出システムを使用することが好ましい。
【0016】
この検査をトコジラミの便に容易に適用できるよう、この方法を、トコジラミの進入が可能であり、さらには/またはトコジラミが休息に利用することができ、したがって便を放出する場所として機能することができる本開示の装置に、組み合わせることが有用である。これにより、便を、上述の方法によって血液の存在について容易にチェックすることができる。
【0017】
したがって、トコジラミの存在を検出するための方法であって、内部空間と、検出装置への1匹以上のトコジラミの進入を可能にするように寸法付けられた開口とを有する検出装置を用意するステップと、装置において実行され、または装置の中身を装置から取り出した後でこの中身について実行される便潜血検査によって、トコジラミの存在を検出するステップとを含む方法も提供される。
【0018】
さらに別の態様においては、上述の装置を、便潜血の存在についての検査を容易に実行および評価できるように作成することが可能である。これを達成するために、好ましくは、例えば便潜血検出剤を含浸させた紙の層など、便潜血検出剤を含浸させた吸収層が、第1のプレートに取り付けられる。便潜血検出剤の一例は、現像剤としての過酸化水素が加えられたとき、トコジラミからの便潜血が存在する場合に視覚的な徴候を表示することができるグアヤク脂である。装置内での読み取りを可能にするために、装置のプレートが、好ましくは少なくとも部分的に透明である。
【0019】
したがって、トコジラミの蔓延を監視するための検出装置であって、検出装置への1匹以上のトコジラミの進入を可能にするように寸法付けられた内部の間隔によって隔てられている第1のプレートおよび第2のプレートと、第1のプレートおよび第2のプレートの間の支持構造と、第1のプレートに固定された吸収層上の随意による便潜血検出剤とを備える検出装置が提供される。第1および第2のプレートの間の支持構造を、任意の所望の様相で、内部の間隔の維持および/またはトコジラミの走触性の挙動の惹起などの任意の所望の目的のために配置することができる。
【0020】
トコジラミは、粗い表面の肌理および表面多孔性を有する物質に引き寄せられる。検出装置自体を形成するために使用することができ、さらには/または検出装置へと取り入れることができる材料の例として、木材、ボール紙、段ボール紙、綿、または壁紙が挙げられる。いくつかの場合には、伝熱率の低い材料も適する場合がある。
【0021】
さらなる実施形態によれば、ホテルの部屋、寝室、動物の飼育の領域(鶏舎や家畜小屋の各区画など)、などの多数の目立たない領域において、昆虫、特に、トコジラミの存在を監視するための方法が提供される。この方法によれば、トコジラミなどの昆虫の進入を許す装置が、監視が求められる各場所に配置される。個別の監視が必要な目立たない領域の数に応じて、1つの装置または数百個以上の装置を存在させることができる。例えば、ホテルにおいては、個々の装置を、ホテルの各部屋の個々のベッドに取り付けることができる。装置は、任意の所望の装置であってもよいが、有利には、本明細書に開示のとおりの装置である。装置が、例えば毎週、隔週ごと、もしくは24時間ごとなど、定期的な方法でチェックされ、または所望に応じてチェックされる。装置内に昆虫が見られ、装置内に便が存在し、さらには/または昆虫の便からの血液が存在するなど、装置が昆虫の接触の徴候を有する場合に、その特定の装置が取り付けられていた領域が、この領域の昆虫の活動を撲滅または軽減する処理計画の対象とされる。
【0022】
トコジラミなどの昆虫が、監視対象の領域のうちの1つにおいて検出された場合、随意により、シーツおよびまくらカバーならびに衣類を、好ましくは最初にその領域から運び去るべきである。好ましくは、ベッドを分解すべきであり、虫が蔓延したマットレス、寝台用スプリング、カウチ、または他の付属物が、有利には廃棄される。処理は、領域に蔓延する昆虫に対して有効であることが知られている任意の殺虫剤によることができる。
【0023】
例えば、トコジラミの蔓延については、SUSPEND SC(0.06%のデルタメトリン)を、主たる液体殺虫剤として随意により使用することができる。適用は、マットレス、寝台用スプリング、ベッドの枠、およびヘッドボードの縫い目、ふさ、およびすき間、幅木沿い、および幅木の下、布張りされた椅子、ソファ、および木製家具の縫い目、ふさ、およびすき間、ベッドおよびカウチの下の床領域、天井−壁の継ぎ目、ならびに鏡および額縁などの壁取り付け物の背後など、トコジラミが発見された領域またはトコジラミが移動もしくは潜伏する可能性がある領域を対象にして、徹底的でなければならない。最初の処理においてアパートごとに適用されるSUSPEND SCの平均量は、有利には、0.9ガロン(範囲:0.25から1.5ガロン)であってもよい。必要であれば、望ましくは多くの場合、殺虫剤が追い打ちとして適用されてもよい。追い打ちの適用においては、任意の量の殺虫剤を使用することができ、典型的には0.25から0.5ガロンの殺虫剤を使用することができる。任意の回数の追い打ちの適用を、撲滅が達成されるまで、必要または所望に応じて行うことができる。トコジラミが蔓延した/蔓延しやすい領域を、例えばDRIONE(シリカゲル+ピレトリン)またはDELTADUST(0.05%のデルタメトリン)で処理することも可能である。これらの粉剤の主たる適用場所として、幅木およびカーペットの縁の下方、コンセントおよびスイッチ板の背後、ならびにカウチおよび寝台用スプリングの内部の骨組みが挙げられる。事例ごとの状況に応じて使用することができるさらなる製品として、CB−80 EXTRA(0.5%の除虫菊)、STERI−FAB(主としてアルコール+d−フェノトリン)、およびINVADER−HPX(1%のプロポキスル)が挙げられる。
【0024】
処理の後で、さらなる追跡検査を、好ましくは少なくとも隔週ごとの方法で行うことができる。トコジラミは多くの場合に撲滅が困難であるため、所望の結果を達成するために、徹底的な検査および繰り返しの適用を行わなければならず、充分な量の殺虫剤を使用しなければならない。蔓延した各々の領域において最初の処理に費やされる時間は、好ましくは1から2人時の範囲であり、各々の事後保守または処理が、好ましくは少なくともさらなる1時間にわたる。領域がひとたび処理されたならば、その領域に、将来の昆虫の存在の監視のために、新たな装置を設置すべきである。一実施形態によれば、トコジラミなどの昆虫の処理についての保守契約が、いずれかの装置が蔓延の存在を検出した場合の処理に結び付けられた特定の数の監視装置の提供を含むことができる。
【0025】
添付の図1から図4が、典型的な構成および形状を示している。装置について、他の望ましい構成および形状も考えられ、それらは本出願の技術的範囲に包含される。図1が、トコジラミの蔓延を監視するための一実施形態による検出装置1を示している。図1に示されるとおり、検出装置1は、第1のプレート2および第2のプレート3を備えている。第1のプレート2が、トコジラミが横断することが期待される表面である。第1のプレート2および第2のプレート3は、1匹以上のトコジラミ(図示されていない)が検出装置1へと進入できるように寸法付けられた内部の間隔Aによって隔てられている。内部の間隔Aを維持するために、支持構造4が、第1のプレート2と第2のプレート3との間に存在している。そのような支持構造4は、単純に、進入スロット6、7を定めるように装置1の両端に位置する側壁5であってもよい。
【0026】
内部の間隔Aは、検出装置1にトコジラミが進入できるように充分に大きいが、小さな割れ目およびすき間に住もうとするトコジラミの傾向に訴えるように依然として充分に小さく設計される。例えば、内部の間隔Aは、約1mmから約15mmの間、約2mmから約13mmの間、約5mmから約11mmの間、または約7mmから約9mmの間であってもよい。内部の間隔Aは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mmであってもよい。
【0027】
別の実施形態においては、小さな基材11(例えば、木の棒、プラスチック、または任意の他の基材であってもよく、随意により肌理を設けることができる)が、第1のプレート2と第2のプレート3との間に取り付けられる。小さな基材11は、トコジラミの走触性の挙動を惹起させる目的である。走触性は、基材11への接触など、触刺激に応答して行われる昆虫の移動の方向の変化である。基材11に接触することで、刺激によって運動が抑止され、トコジラミを装置1の内部に密接に接触した状態にとどめることができると考えられる。
【0028】
基材11は、約15mmから約100mmの間、約25mmから約75mmの間、または約50mmの長さであってもよい。基材11は、約0.5mmから約5mmの間、約0.75mmから約3mmの間、または約1mmの幅であってもよい。基材11の厚さは、一般的には検出装置1の厚さTと同じである。
【0029】
一実施形態においては、基材11が、検出装置1の長辺に平行に配置される。この実施形態においては、基材11が、検出装置1の一方の長辺から約2mmから約20mmの間、約5mmから約17mmの間、または約12mmに配置される。
【0030】
別の実施形態においては、検出装置が、複数の基材11を有することができ、その各々を、トコジラミの検出を最大にするように互いに独立に配置することができる。別の実施形態においては、基材11が真っ直ぐではない。基材11が、湾曲、ジグザグ、波状、これらの任意の組み合わせ、または任意の所望の形状であってもよい。
【0031】
検出装置1を、幅広い範囲のサイズおよび形状にて製作することができる。検出装置1の幅Wの適切な範囲として、約5mmから約50mmの間、約10mmから40mmの間、約15mmから約35mmの間、または約25mmが挙げられる。検出装置1の長さLの適切な範囲として、約25mmから約125mmの間、約50mmから100mmの間、または約75mmが挙げられる。検出装置1の厚さTの適切な範囲として、約1mmから約15mmの間、約3mmから12mmの間、または約5mmから約10mmの間が挙げられる。検出装置1の全体サイズの決定における因子は、検出装置1を容易には占有者の目につかない領域に容易に配置することができる可搬性および分別である。検出装置1は、正方形、矩形、三角形、および円形など、任意の形状であってもよい。円形の検出装置1は、約10mmから約50mmの半径Rを有することができる。
【0032】
随意により、第1のプレート2および第2のプレート3を、ポリカーボネート材料から製作することができる。Bayer MaterialScience AGから市販されているMAKROLONという製品、PTS LLCから市販されているTRISTARという製品、ならびに任意の他の所望の材料など、任意の所望のポリカーボネート材料を利用することができる。しかし、ポリカーボネートは1つの選択肢であり、プレートを、個々の状況において有用であるように、任意の所望の製品で形成することができる。他の実施形態においては、第1のプレート2または第2のプレート3あるいは両方が、検出装置1の内面の目視検査を実行できるよう、少なくとも部分的に透明である。このようにして、ユーザまたはPMPが、トコジラミの存在を視覚的に検出することができ、または便潜血検出剤がトコジラミからの便潜血に対して反応を示したか否かを視覚的に検出することができる。
【0033】
別の態様においては、第1のプレート2が、すでに述べた吸収層8を使用することによって簡単に達成できる肌理のある表面10を備えている。そのような肌理のある表面10は、装置1を検査のために移動させるときにトコジラミが意図せずに脱落することがないように、トコジラミが装置1の内側に付着できるようにする。
【0034】
検出装置1において、便潜血検出剤を第1のプレート2に塗布することができる。便潜血検出剤の一例は、トコジラミからの便潜血が存在するときに視覚的な徴候を表示することができるグアヤク脂溶液である。便潜血検出剤の例として、HEMOCCULT、HEMOCCULT II、HEMO−FEC、GAMMA FE−CULT、FECATEST、およびCAMCO−PAC GUAIACが挙げられる。そのような便潜血検出剤は、便の地点への現像液(通常は、過酸化水素を含んでいる)の塗布後に、トコジラミからの便潜血の存在において材料の色変化を呈する。別の実施形態においては、第1のプレート2が、便潜血検出剤を含浸させた紙の層8を備えている。
【0035】
さらに、検出装置1は、紙の層8などの検出装置1の内面へと塗布されたトコジラミ誘引剤またはフェロモンを、随意により備えることができる。検出装置1に、検出装置1の繰り返しの使用の後で誘引剤の効果が弱まったとき、折々に追加の誘引剤を補給することができる。
【0036】
さらに、検出装置1は、検出装置1の内面に塗布された殺虫剤を備えることができる。例えば、殺虫剤を、カルバマート、ピレスロイド、フェニルピラゾール、およびクロロニコチニルで構成される群から選択することができる。
【0037】
一実施形態は、検出装置1の運用のための方法である。この方法において、検出装置1が、マットレスの下、シーツの間、または同様の領域など、トコジラミが存在する可能性があると考えられる領域に単純に配置される。検出装置1の回収および検査を、必要に応じて専門でない者またはPMPが、毎日行うことができる。特定の検出装置1においてトコジラミの存在が検出された場合、その検出装置1を、さらなる蔓延を防止するために処分することができる。
【0038】
検出装置1を、分解性の紙および1つ以上の分解性のプラスチックなど、分解性の構成部品で製作することができる。さらに、検出装置1は、分解性の誘引剤、分解性の殺虫剤、および分解性の検出剤など、分解性の化学物質を含むことができる。
【0039】
以上の説明から、本開示が、トコジラミの検出および監視に対して費用対効果に優れかつ有利な技術的解決策を提供することを、見て取ることができる。約3から6個の検出装置1を、典型的なホテルの部屋に配置することができる。検出装置1は、廃棄されるまでに約3ヵ月から約12ヵ月の寿命を有すると考えられる。ホテルの従業員および他のPMPは、回収が容易であるが、部屋の使用者の目にはつきにくい場所に、検出装置1を配置することができる。
【0040】
検出装置1を、接着手段または従来のフックとループとからなる固定材料によって、ベッドの構造体または同様の表面へと取り付けることができる。別の実施形態においては、検出装置1が、磁気片を備えている。
【0041】
検出装置1を、個別に製造することができ、または検出装置1のブロックとして製造することができる。ブロックとして製造される場合には、個々の検出装置を、後に梱包に先立って分離することができる。検出装置1を、個別のパッケージに封じることができ、または複数の検出装置1を含むパッケージに封じることができる。
【0042】
検出装置1を、使い捨てとして製造することができ、または複数回使用されるように製造することができる。さらに、検出装置1を、企業のロゴや、部屋番号、検出装置1の開封日または設置日、検出装置1を使用するホテルまたはモーテルの名称を記載するラベルなどの項目を含むようにカスタマイズすることができる。別の実施形態においては、部屋番号を記載するラベルを取り外し可能にすることができ、取り外したラベルを目録にすることができ、または報告作業に使用することができる。
【0043】
そのような検出装置1を使用することで、PMPは、現行の検査技法よりも短い時間で、処理後の資産のフォローアップにおいて、省力化を実現することができる。さらには、そのようなPMPは、蔓延を抑えるためにできることをすべて行った旨を事業主に対して保証するために、追加のサービスを提供することができる。同様に、サービス業の企業が、被害を被った宿泊客による訴訟での答弁において、そのようなトコジラミの監視および予防活動を提示することができる。
【0044】
上述の検出装置1を、例えばHaematosiphon属またはOeciacus属など、トコジラミ種またはトコジラミ科の他の属が蔓延し、または蔓延する可能性がある他の場所でも使用することができる。そのような場所の例は、鶏舎である。一実施形態においては、検出装置1が、鶏舎において使用される。検出装置1のサイズおよび形状が、鶏舎または家禽もしくは動物が飼育される他の場所においては別のサイズおよび形状であってもよいことを、理解すべきである。例えば、より小さなサイズまたは外形など、発見されにくさに関する問題は、家禽の小屋においてはあまり需要でない。
【0045】
実施例1
この実施例は、上述のような検出装置が、たとえ誘引剤が存在しなくても、トコジラミを引き寄せるうえで有効であることを示している。
【0046】
幼虫および成虫の種々の段階のトコジラミ(Cimex lectularius)の混合集団を、プラスチック箱(200mm×200mm)に配置した。集団は、約200匹のトコジラミを含んでいた。各々の箱の底を、トコジラミに隠れ家を提供するために、折り畳んだフィルタ紙で覆った。4日後に、検出装置を1つ、各々の箱においてフィルタ紙の下方に配置した。
【0047】
検出装置は、25mm×75mmの寸法を有するMACROLONの2枚の透明層で構成され、層の間に2mmのすき間を含んでいた。2種類の検出装置を比較した。1種類は、トコジラミ誘引剤を含んでいた。この実施例では、トコジラミ培養物からの汚染紙片を、誘引剤として使用した。他方の種類は、いかなるトコジラミ誘引剤も含んでおらず、単に小さなフィルタ紙片を含んでいた。
【0048】
検出装置を、1、2、3、4、および7日目に評価した。評価は、写真の撮影によった。罠の内部のトコジラミは、乱れを避けるために数えなかった。
【0049】
下記の表に示されるとおり、誘引剤を含む検出装置は、処理なしの検出装置よりも多くのトコジラミを引き寄せた。しかしながら、処理なしの検出装置も、トコジラミを引き寄せた。
【表1】

【0050】
当然ながら、本開示について、上述の教示に照らして、多数の変形および変種が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の技術的範囲において、本開示を、本明細書において具体的に述べた方法以外の方法で実施することが可能であることを、理解すべきである。
【0051】
さらには、本開示が後述される特定の実施形態に限られないことを、理解すべきである。なぜならば、それら特定の実施形態の変種が可能であり、依然として添付の特許請求の範囲の技術的範囲に包含されるからである。さらには、使用されている用語が、特定の実施形態を説明する目的のためのものであって、本発明を限定しようとするものではないことも、理解すべきである。むしろ、技術的範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【0052】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそのようでないことが明らかでないかぎり、複数も指す。特に定義されないかぎり、本明細書において使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫の蔓延を監視するための検出装置であって、
検出装置への1匹以上の昆虫の進入を可能にするように寸法付けられた内部の間隔によって隔てられている第1のプレートおよび第2のプレートと、
第1のプレートおよび第2のプレートの間に位置し、前記プレートの間の内部の間隔を維持するように構成された支持構造とを備えている、装置。
【請求項2】
昆虫が、トコジラミを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
内部の間隔が、約1mmから約5mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1のプレートおよび第2のプレートが、プラスチック材料から作られている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
プラスチック材料が、ポリカーボネートを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
第1のプレートまたは第2のプレートが、少なくとも部分的に透明である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
第1のプレートが、肌理のある表面を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
便潜血検出剤をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
第1のプレートに取り付けられた吸収材料をさらに備えており、吸収材料が、便潜血検出剤で含浸されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
吸収材料が、紙を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
便潜血検出剤が、グアヤク脂である、請求項8または9に記載の装置。
【請求項12】
便潜血検出剤が、トコジラミからの便潜血が存在するときに視覚的な徴候を表示する、請求項8または9に記載の装置。
【請求項13】
トコジラミ誘引剤またはフェロモンをさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
カルバマート、ピレスロイド、フェニルピラゾール、およびクロロニコチニルで構成される群から選択される殺虫剤をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
昆虫の存在を検出するための方法であって、昆虫の便の潜血を検出するステップを含んでいる、方法。
【請求項16】
昆虫が、トコジラミを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
昆虫の存在を検出するための方法であって、
内部空間と、検出装置への1匹以上の昆虫の進入を可能にするように寸法付けられた開口とを有する検出装置を用意するステップと、
内部空間に塗布された便潜血検出剤によって昆虫の存在を検出するステップとを含んでいる、方法。
【請求項18】
昆虫が、トコジラミを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
検出装置が、少なくとも部分的に透明である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
内部空間が、肌理のある表面を備えている、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
内部空間に取り付けられた吸収層をさらに備えており、層が、便潜血検出剤で含浸されている、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
吸収層が、紙を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
便潜血検出剤が、グアヤク脂である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
便潜血検出剤が、トコジラミからの便潜血が存在するときに視覚的な徴候を表示する、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
内部空間が、トコジラミ誘引剤またはフェロモンを備えている、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
内部空間が、カルバマート、ピレスロイド、フェニルピラゾール、およびクロロニコチニルで構成される群から選択される殺虫剤を備えている、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
トコジラミの蔓延を監視するための検出装置であって、
検出装置への1匹以上のトコジラミの進入を可能にするように寸法付けられた内部の間隔によって隔てられている第1のプレートおよび第2のプレートと、
第1のプレートおよび第2のプレートの間に位置し、トコジラミの走触性の挙動を促進するように構成された支持構造とを備えている、装置。
【請求項28】
昆虫の存在を監視するための方法であって、
昆虫の進入を許す装置を、監視が求められる各位置に配置するステップと、
各々の装置を定期的に、いずれかの装置が昆虫の接触の徴候を示していないかどうかチェックするステップと、
随意により、前記徴候を示している前記装置に関係する領域を、該領域の昆虫の活動を撲滅または軽減する目的の処理計画の対象とするステップとを含んでいる、方法。
【請求項29】
昆虫が、トコジラミを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
或る場所の昆虫の存在を監視するための方法であって、
請求項1に記載の装置を、監視が求められる各位置に配置するステップと、
各々の装置を定期的に、いずれかの装置が昆虫の接触の徴候を示していないかどうかチェックするステップと、
随意により、前記徴候を示している前記装置に関係する領域を、該領域の昆虫の活動を撲滅または軽減するための処理計画の対象とするステップとを含んでいる、方法。
【請求項31】
前記昆虫が、トコジラミを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
約5mmから約50mmの幅、約25mmから約125mmの長さ、および約1mmから約15mmの厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項33】
約10mmから約40mmの幅、約50mmから約100mmの長さ、および約3mmから約12mmの厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項34】
約15mmから約35mmの幅、約50mmから約75mmの長さ、および約5mmから約10mmの厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項35】
前記第1および第2のプレートの間に基材が設けられ、前記基材が、15から100mmの長さを有している、請求項32に記載の装置。
【請求項36】
前記基材が、前記装置の長さに平行に向けられている、請求項35に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−518433(P2012−518433A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552043(P2011−552043)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/021950
【国際公開番号】WO2010/098917
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(506018237)バイエル・クロツプサイエンス・エル・ピー (16)
【Fターム(参考)】