説明

トッププレート

ダイヤフラムを有する、殊に多孔質の複数の管より成る管束の端面側を固定し、かつ気密に閉鎖するトッププレートにおいて、前記トッププレート(4)が、管材料及び/又はダイヤフラムの最も低い破壊温度よりも低い溶融温度の金属の合金より成っているか又は金属より成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムを有する、殊に多孔質の複数の管より成る管束の端面側を固定し、かつ気密に閉鎖するトッププレート(top plate)に関する。
【0002】
プラスチック、(場合によっては層構造の)プラスチック複合体、セラミック又は金属より成る前記形式の管、例えば細い管、毛細管又はこれと類似のものは、多岐に亘って使用されている。
【0003】
例えば、燃料電池において、前記のような管束の管内で燃料成分の搬送が行われるようになっており、従ってこのようなマイクロリアクターとして構成された細い管は、一般的にダイヤフラムも備えており、このダイヤフラムによって、互いに反応し合う燃料成分が分離されている。
【0004】
このような形式の管束の別の使用分野は、生物学的に再生する材料例えばバイオエタノールより成る駆動材料の精製である。バイオエタノールが半透膜を形成する管を貫流すると、膜によって、バイオエタノール内に存在する水が取り除かれる。
【0005】
このような管束においては基本的に、管束を端部側で固定し、かつ閉鎖しなければならないという問題がある。いわゆるポッティング(Potting;注封)、つまり管束の端部を互いに固定することは、特にケーシング、管路又はこれと類似のものに対して気密に閉鎖するためにも、規則的に合成樹脂注型技術で行われる。このような合成樹脂は、例えば問題がなくはないエポキシ樹脂である。従って、低温作動型燃料電池で150℃までの作動温度、若しくは平均温度作動型燃料電池で250℃までの作動温度における種々異なる熱膨張係数によって、著しく高い熱負荷を生ぜしめられる。この著しく高い熱負荷によって、トッププレートの領域内において破壊、非気密性等が多く発生し、これによって装置全体が、所定の期間内で故障することになる。
【0006】
このような技術的背景から、本発明の課題は、機械的に強い負荷に耐えることができ、管束の各管を確実に把持固定して、気密性を維持することができるようなトッププレートを提供することである。
【0007】
このような技術的な課題は、請求項1の特徴に記載したトッププレートによって、つまり、トッププレートが、管材料及び/又はダイヤフラム(薄膜)の最も低い破壊温度よりも低い溶融温度を有する金属の合金より成っているか又は金属より成っていることによって、解決された。
【0008】
低い温度で溶融する金属、はんだ又は金属の合金は、一般的に非常に脆く、溶融後に再硬化すると非常に粗い粒状になる。これによって、機械的な不安定性が生じる。従って、このような材料は、多くの場合、小さい直径を有する、特に管束の各管の端部側を把持固定し、かつ気密に閉鎖するためには適していない。
【0009】
しかも、本発明によれば、特に管束の管の種々異なる直径(原則的に1mm以下のものからセンチメートル範囲まで可能である)も考慮して、低い温度で溶融する金属及び/又は金属の合金を提供することができる。
【0010】
金属又は金属合金を選択する場合、その溶融温度は、管材料若しくはダイヤフラムの破壊温度よりも低く、しかも完成された装置の作動温度よりも高くなければならない。これは、溶融温度が、100℃特に120℃〜250℃であることによって達成される。
【0011】
有利な形式で、金属としてビスマス(Bismut若しくはWismut、化学記号Bi)が使用されるか、又は合金としてのビスマスを有している。
【0012】
ビスマスは、赤みを帯びた白で光沢のある、適度に硬い重金属である。水と同様に、ビスマスは溶融の際に収縮し、硬化の際に3.32%だけ膨張する。その結果、冷却時にビスマス、及びビスマスを含有する溶融物は、管束の各管の間の最小の中間室内に侵入する。また、ビスマスは化学的に非常に安定しているので、例えば酸化していない酸内で不溶性である。
【0013】
もちろん、純粋なビスマスの融点は271.3℃であって、従って多くの使用例においては高すぎるので、融点を著しく低下させることができるビスマス合金が使用される。このようなビスマス合金は、約14%〜60%のビスマス、20%から30%の鉛、又は45%までの錫、又はアンチモン、カドミウム、インジウム、亜鉛、テルル、水銀又はタリウムも含有している。
【0014】
特に、冒頭に詳しく述べた使用目的において、無鉛の合金又は金属が有利である。
【0015】
有利な合金は、共晶のビスマス・錫合金であって、この合金の融点は138℃、密度は8.58g/cmである。
【0016】
有利な形式で、共晶合金の金属は、液体状態で完全に混合可能であって、溶融物は純粋な材料と同様に、一様な温度で硬化する。硬化時に、前記成分は分解し、共晶構造から微細結晶質の形に結晶する。さらにまた、共融混合物が、考慮された材料システム内で可能な、共晶温度又は共晶点として所属の溶融表に表示された、最も低い凝固点又は溶融点を有していれば、有利である。
【0017】
管材料は、原則としてプラスチック、特にポリマーであってよい。この場合特に、ダイヤフラムもポリマーダイヤフラムであってよい。管若しくはダイヤフラムがもはや機能しなくなる故障温度は、200℃を大きく下回ることはないので、このようなポリマー管若しくはこのようなポリマーダイヤフラムは、金属溶融物若しくは合金溶融物によって損傷されることはない。
【0018】
選択的に、特に多孔性の管は、セラミック及び/又は金属、特に焼結金属より成っていてよい。このような管としては、ダイヤフラムを構成するゼオライトより成る層を備えたものが最も適している。その結晶質の多孔構造に基づいて、このような形式のダイヤフラム層は、液状及びガス状の材料混合物を、大きさ及び形状を選択的に分離するために適している。さらにまた、ゼオライト結晶内のSi/Al比を選択することによって、親水性/疎水性の性質を調節することができる。これによって、疎水性のゼオライトダイヤフラムを、約100℃の温度で透析蒸発させることによって、水から有機的な溶剤例えばエタノールを選択的に分離させるために提供することができる。
【0019】
例えば精糖(Raffinade)、バイオエタノールにおける、特に直径の小さい管では、これらの管を無秩序に、かつ相互接触させながら束ねることができる。しかも、特にビスマスの特性によって、管は確実に把持固定され、かつシールされる。しかしながら、確実性のために、注型部分の軸方向長さを、管束の包絡線の直径よりも長くする必要がある。これによって、軸方向の全長に亘ってあらゆる箇所で、各管を確実に把持固定することができる。
【0020】
勿論、管束の管は選択的に、互いに間隔を保って所定の格子状に整列させることもできる。
【0021】
以下に本発明を、概略的な実施例を示す図面を用いて具体的に説明する。
【0022】
図1は、1つの管束の複数の管の管端部の注型部分の側面図、
図2は、図1のII−II線に沿った拡大断面図である。
【0023】
図1は、複数の管2を備えた管束、例えば約0.5mmの外径を有するポリマーダイヤフラムの側面図である。複数の管2は、無秩序に束ねられていて、互いに接触し合っている。従って管束1の外側輪郭は、一点鎖線の包絡線3で示されている。金属製のトッププレート4は、このトッププレート4が各管2の端部側を確実に、かつ相互に及び例えばハウジングに対してシールしながら把持固定するように(図2参照)、構成することが可能である。
【0024】
このために、冒頭に述べた形式の金属又は金属の合金が、適当な鉢状の型内に流し込まれ、管束1の一端部が溶湯内に浸される。この場合、公知の形式で管2の一端部は閉鎖されていてよい。これは、管2の内径が小さい場合に原則として必要ではない。何故ならば、液状の金属若しくは液状の合金は軸方向で少ししか管2内に侵入しないからである。
【0025】
トッププレート4の軸方向の全長に亘る中間室全体を確実に閉鎖するために、原則として、注型部分5の軸方向長さは、その直径若しくは包絡線3よりも大きい。
【0026】
トッププレート4の仕上げは、例えばII−II線に沿った切断によって行われる。このII−II線に沿った切断によって管端部が露出される。
【0027】
図2は、このような形式の切断部の、後述されている研磨について示している。各管2間の大きい中間室は、本発明による微細な多孔性の金属又は金属の合金によって、図示の大きさで均一に閉じられている。管2同士が非常に接近して、場合によっては接触していると、小さい中間室(矢印6参照)が形成される。これらの中間室は、注型部分5若しくはトッププレート4によって確実に軸方向に亘って閉鎖される。
【0028】
トッププレート4の半径方向の外周面7を相応に加工した後で、管束1は一端部が、別の使用のためにシールされ、かつ把持固定されて保持される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】1つの管束の複数の管の管端部の注型部分の側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った拡大断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 管束、 2 管、 3 包絡線、 4 トッププレート、 5 注型部分、 6 矢印、 7 半径方向の外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラムを有する、殊に多孔質の複数の管より成る管束の端面側を固定し、かつ気密に閉鎖するトッププレートにおいて、
前記トッププレート(4)が、管材料及び/又はダイヤフラムの最も低い破壊温度よりも低い溶融温度を有する金属の合金より成っているか又は金属より成っていることを特徴とする、トッププレート。
【請求項2】
溶融温度が100℃乃至250℃である、請求項1記載のトッププレート。
【請求項3】
前記金属がビスマス(Wismut;Bi)であるか、又は前記合金がビスマスを有している、請求項1又は2記載のトッププレート。
【請求項4】
前記合金がビスマス合金である、請求項1から3までのいずれか1項記載のトッププレート。
【請求項5】
前記金属又は合金が無鉛である、請求項1から4までのいずれか1項記載のトッププレート。
【請求項6】
前記合金が共晶のビスマス・錫合金である、請求項1から5までのいずれか1項記載のトッププレート。
【請求項7】
前記管束(1)の管(2)がポリマーより成っている、請求項1から6までのいずれか1項記載のトッププレート。
【請求項8】
前記ダイヤフラムがポリマーダイヤフラムである、請求項1から7までのいずれか1項記載のトッププレート。
【請求項9】
前記管がセラミック及び/又は金属より成っている、請求項1から8までのいずれか1項記載のトッププレート。
【請求項10】
前記ダイヤフラムがゼオライトダイヤフラムである、請求項1から7及び9までのいずれか1項記載のトッププレート。
【請求項11】
前記管束(1)の管(2)が無秩序に互いに接触して束ねられている、請求項1から10までのいずれか1項記載のトッププレート。
【請求項12】
前記管束の管が、互いに間隔を保って所定の格子状に整列されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のトッププレート。
【請求項13】
注型部分(5)の軸方向長さが、管束(1)の包絡線(3)の直径よりも長く設計されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のトッププレート。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−522736(P2009−522736A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548928(P2008−548928)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000020
【国際公開番号】WO2007/076855
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(506297832)ホワイト フォックス テクノロジーズ リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】White Fox Technologies Limited
【住所又は居所原語表記】10 Cromwell Place, London SW7 2JN, United Kingdom
【Fターム(参考)】