説明

トナー、現像剤、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】従来、トナー表面で生じていたトナー表面部位の物性特性差による不均一性を抑制し、均一な外添剤の分散・付着を可能にさせ、保存性、画像品質性、及び耐久性の優れたトナーを提供すること。
【解決手段】少なくとも結着樹脂、着色剤を含むトナー母体粒子表面に外添剤を付着させたトナーであって、前記外添剤の付着に先立って、前記トナー母体粒子表面が、大気と、酸素、窒素、及び不活性ガスの群から選択される少なくとも1種のガスとの混合ガスの雰囲気下、150KeV以下の電子線で照射されてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等における静電荷像を現像するためのトナー、並びに該トナーを用いた現像剤、該現像剤を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、静電潜像現像用トナーには、トナー母体粒子に外添される添加剤として数nm〜数十nmの微粒子外添剤が用いられており、近年では、大粒径シリカに代表される大粒径粒子が添加剤として用いられ始めている。トナー母体粒子に外添剤として疎水化処理されたシリカ、また金属酸化物等を添加することで、トナー母体粒子だけでは得ることの出来ない、流動性、帯電性、環境安定性等を付与することが可能となる。
【0003】
そこで、本発明者らは、上市されている疎水化処理済の球形微粒子シリカを用いてトナーを作製し、実機を模した試験装置にて外部より試験を実施したところ、該シリカ微粒子をトナー母体粒子表面にて、解砕、分散させる際に、特異的な挙動が存在することが判明した。即ち、トナーの設計、使用されている材料種、用いた外添剤に依存するのか、詳細は不明であるが、トナー母体粒子表面の特定の部位に外添剤が集中的に付着したり、あるいは解砕しないまま塊状で点々と付着したり、設計者の意図しない形態で付着することが多々あることが判明した。
【0004】
このようなトナー表面に存在する特異な挙動に関して、従来、外添剤粒子と有機溶媒(低級アルコール溶液)とを含む外添剤分散液をトナー母体粒子に噴霧することにより外添剤粒子の付着性を向上させようとした試み(特許文献1参照)や、外添剤を混合する条件を細かく規定し、トナー母体粒子表面での解砕・分散性の向上、付着強度を高めるといった取り組み(例えば特許文献2参照)が行われてきたが、問題点を解消するまでには至らなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、従来、トナー表面で生じていた物性特性差による不均一性を抑制して、均一な外添剤の分散・付着を可能にさせ、保存性、画像品質性、及び耐久性の優れたトナーを提供すること、並びにそのトナー用いた現像剤、該現像剤を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、トナー母体粒子に外添剤を添加する前段階において、トナー母体粒子表面に低エネルギーの電子線を照射することにより、トナー表面に存在するランダムな表面性(親水性、疎水性、表面自由エネルギーが異なるなど)を、一括して整え、トナー表面を物性的に均一にし、その後、外添剤を添加・混合することにより、前記課題を解決できることを見出した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づくものであり、以下に示す(1)から(13)の手段が提供される。
【0008】
<1>は、少なくとも結着樹脂、着色剤を含むトナー母体粒子表面に外添剤を付着させたトナーであって、前記外添剤の付着に先立って、前記トナー母体粒子表面が、大気と、酸素、窒素、及び不活性ガスの群から選択される少なくとも1種のガスとの混合ガスの雰囲気下、150KeV以下の電子線で照射されてなる電子写真用トナーであることを特徴とする。
【0009】
<2>は、<1>に記載の電子写真用トナーにおいて、前記選択される少なくとも1種のガスの大気中の濃度が1500ppm以上である電子写真トナーであることを特徴とする。
【0010】
<3>は、<1>または<2>に記載の電子写真用トナーにおいて、前記トナー母体粒子が、有機溶媒中に活性水素基を有する化合物と反応可能な変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂を含むトナー組成分を溶解又は分散させ、次いで該溶解又は分散物を樹脂微粒子を含む水系媒体中で分散させ、該活性水素基を有する化合物と反応させ、得られた分散液から溶媒を除去して得られる電子写真用トナーであることを特徴とする。
【0011】
<4>は、<1>または<2>に記載の電子写真用トナーにおいて、前記トナー粒子母体が、少なくとも結着樹脂、着色剤を含むトナー材料を溶融混練・粉砕して得られる電子写真用トナーであることを特徴とする。
【0012】
<5>は、<1>ないし<4>のいずれかに記載の電子写真用トナーにおいて、前記外添剤として、2種以上の外添剤を用いる電子写真用トナーであることを特徴とする。
【0013】
<6>は、<1>ないし<5>のいずれかに記載の電子写真用トナーにおいて、前記外添剤が、B.E.T比表面積が10から300m/gの範囲の外添剤を少なくとも1種含有する電子写真用トナーであることを特徴とする。
【0014】
<7>は、<1>ないし<6>のいずれかに記載の電子写真用トナーにおいて、前記外添剤が、シリカ、チタン化合物、アルミナ、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグウネシウム、リン酸カルシウム、フッ素含有樹脂微粒子、シリカ含有樹脂微粒子及び窒素含有樹脂微粒子からなる群から選択される少なくとも1種である電子写真用トナーであることを特徴とする。
【0015】
<8>は、<7>に記載の電子写真用トナーにおいて、前記チタン化合物が、湿式法で作製されたTiO(OH)2の一部もしくは全部を、シラン化合物またはシリコーンオイルと反応させて得られるチタン化合物である電子写真用トナーであることを特徴とする。
【0016】
<9>は、<1>ないし<8>のいずれかに記載のトナーを含有する電子写真用現像剤であることを特徴とする。
【0017】
<10>は、<1>ないし<8>のいずれかに記載のトナーと、キャリアを含有する電子写真用現像剤であることを特徴とする。
【0018】
<11>は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を<9>または<10>に記載の現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体上に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含む画像形成方法であることを特徴とする。
【0019】
<12>静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、<9>または<10>に記載の現像剤を用いて現像し可視像とする現像手段と、前記可視像を記録媒体上に転写する転写手段と、前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であることを特徴とする。
【0020】
<13>は、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を<9>または<10>に記載の現像剤を用いて現像し可視像とする現像手段とを少なくとも一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであることを特徴とする。
【0021】
上記本発明によるトナー母体粒子表面の表面処理は、大気と、酸素、窒素、及び不活性ガスの群から選択される少なくとも1種のガスとの混合ガス雰囲気下における低エネルギー電子線の照射によるものであり、その処理強度は照射時間によって制御可能であり、例えば使用する材料の異なるトナー母体粒子や、製造ロットの微妙な違いなどによって生じる表面物性の違いに対して、高強度、低強度の処理といったようないろいろの条件を設備変更無しに行うことが可能である。
【0022】
そのため、本発明によれば、トナー母体粒子表面が有するランダムな表面性を一括して取り除き、複雑な工程を経ることなく、一定の性質を持った表面とすることが可能となるため、高品質の電子写真用トナーを得ることができる。また、トナー母体粒子に添加する外添剤によってトナー母体粒子表面を効率的且つ効果的に被覆することが可能となるため、遊離している、あるいはトナー表面に付着することなく存在している外添剤を減少させることが可能となり、画像出力機器内での外添剤を要因とするトラブルを回避し、機器寿命と、信頼性の向上に寄与することができる。また、トナー母体粒子表面が効率よく被覆され、トナー母体粒子表面部が過度に露出した部位が少なく、トナー母体粒子の樹脂や、内包ワックス等によるフィルミング現象、高温高湿下での保管信頼性向上などに対しても著しい効果を得ることができる。
【0023】
本発明の現像剤は、上記本発明のトナーを含むため、本発明の現像剤を用いて画像形成を行うと、優れたクリーニング性、画像品質性、及び耐久性を兼ね備えた高品質の画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来問題となっていた外添剤の付着、解砕、凝集状態をコントロールすることが可能となり、保存性、画像品質性、耐久性に優れた高品質なトナーを提供することができる。さらにまた、該トナーを用いた保存性、画像品質性、耐久性に優れた高品質な現像剤、並びに該現像剤を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の画像形成方法の実施に使用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像形成方法の実施に使用される画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の画像形成方法の実施に使用されるタンデム型カラー画像形成装置の例を示す概略構成図である。
【図4】図3に示す画像形成装置の一部拡大概略構成図である。
【図5】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上述のように、本発明は、少なくとも結着樹脂、着色剤を含むトナー母体粒子表面に、外添剤を付着させてなるトナーであって、前記外添剤の付着に先立って、前記トナー母体粒子表面が、大気と、酸素、窒素、及び不活性ガスの群から選択される少なくとも1種のガスとの混合ガスの雰囲気下、150KeV以下の電子線で照射されることにより、前記トナー母体粒子表面に均一に外添剤を付着させることができ、それにより保存性、画像品質性、及び耐久性に優れた高品質なトナーを得たものである。
トナー母体粒子表面に、前記の電子線照射をすることにより、トナー母体粒子表面が改質、改良されて均一に外添剤を分散・付着させることができるようになる理由は、必ずしも解明された訳ではないが、以下のように考えられる。
トナーの表面はマクロ的に見れば、疎水化度などで表記されるように、ある値の表面自由エネルギーを有していることになっているが、個別の粒子表面を考えるようなミクロ的な視点で観れば、トナー表面においては、その内包物、表層に現れた材料の影響等により、部位ごとに表面自由エネルギーが異なる状態にある。 このような表面自由エネルギーの違いに対して外添剤の付着性の違いが、同じトナー表面中において生じていると考えられるが、電子線を照射することにより、一律の表面自由エネルギー状態に揃えることが、可能となるようである(効果は、樹脂混合物であれば、1週間程度)。電子線を照射すること、あるいはその照射時間を長くする、強度を高めるといった方向は、照射された表面の親水性が増加する方向に進行する。従って、適切な条件で最も外添剤との付着性が高まる条件があるものと考えられる。更に簡略に述べると、トナーの外添剤は表面処理(疎水化処理)がされているが、この外添剤の疎水化処理のレベル(疎水性が高い)と、電子線照射により親水性が増加(疎水性が低い)したトナー表面とのレベルが離れすぎると、上手く分散・付着できない。つまり、トナー表面に電子線照射することで、トナー表面に存在する差分を小さくし、且つ、外添剤の表面処理剤との相性が良い段階まで、親水へ少し動かすことである。
【0027】
本発明で用いられるトナー母体粒子は、後で詳細に説明するように、重合法によるトナー母体粒子でも粉砕法によるトナー母体粒子でも差し支えない。
【0028】
本発明による電子線の照射は、低エネルギーの電子線、例えば、浜松ホトニクス株式会社製のEB−ENGINE、ライン照射型を使用し、照射条件として、大気と、酸素、窒素、及び不活性ガスの群から選択される少なくとも1種のガスとの混合ガスの雰囲気下の環境に置換可能なチャンバーを用い、照射時間を制御して行うものであり、トナー母体粒子表面の表面物性の違いに応じて、高強度ないし低強度の処理を行うことが可能である。上記雰囲気のガスは、通常の大気雰囲気に、ある濃度のガス、つまり、酸素、窒素、及び不活性ガスの群から選択される少なくとも1種のガスを1500ppm以上の濃度で存在させた状態におくことが好ましい。要は、処理時点で、大気にあるガスを上記濃度存在させた条件で処理を行なうということでよい。上記濃度1500ppm以上が好ましいとしたのは、トナー粒子は非常に小さく(4-8μmなど)、処理される対象となる表面積が平板のフィルム等と異なり非常に大きくなるため、ガスの存在濃度は通常の処理よりも高い濃度でなければ、各粒子表面に対して確実な処理が期待できないためであるからである。
ここで、低エネルギー電子線とは300KeV以下の電子線であり、本発明においてはトナー母体粒子表面の改質、改良を主目的として行うことから、母体粒子を形成する高分子材料そのものの破壊、劣化を招く高〜中強度のエネルギー電子線ではなく、低エネルギー電子線を使用する。本発明者らの検討によると、低エネルギー電子線として150KeV以下の電子線を照射することが好ましい。本発明では、トナー表面において表面自由エネルギーのミクロな差が小さなものは照射量が小さく、ミクロな差が大きなものは照射量を高くして、表面自由エネルギーのミクロな違いを抑制する方向となる。このことから、電子線が用いられたのであり、電子線は、放射線のように樹脂そのものを劣化・破壊するほど強力なものではなく、その作用は表面領域のみに留まる。それゆえ、トナー表面におけるミクロな差が大きい条件の場合に、トナー表面を均質化するのに必要な照射量としては150KeVであり、場合によってそれ以下で構わないと考えるからである(後記実施例参照)。
【0029】
本発明による電子線照射を更に具体的に述べると、上述のガス雰囲気下で、トナー母体粒子表面に満遍なく150KeV以下の電子線が照射されるように、トナー母体粒子を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置に載せて搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリアを1秒〜5秒で通過させることによって行う。
【0030】
<外添剤>
本発明に使用される外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、シリカ(中・小粒径)、チタン化合物、アルミナ、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグウネシウム、りん酸カルシウム、フッ素含有樹脂微粒子、シリカ含有樹脂微粒子、窒素含有樹脂微粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記外添剤はチタン化合物を含むのが好ましく、該チタン化合物が、湿式法で作製されたTiO(OH)の一部もしくは全部を、シラン化合物又はシリコーンオイルと反応させて得られるものが更に好ましい。
【0032】
前記シラン化合物としては、シランカップリング剤が好適に用いられる。該シランカップリング剤としては、例えば、CHSi(Cl)、CHSi(OCH、CHSi(OC、CHCHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CH10Si(OCH、CH(CH11Si(OCH、CH(CH12Si(OCH、CH(CH13Si(OCH、CH(CH14Si(OCH、CH(CH15Si(OCH、CH(CH16Si(OCH、CH(CH17Si(OCH、CH(CH18Si(OCH、CH(CH19Si(OCH、CH(CHSi(OC、CH(CHSi(OC、CH(CHSi(OC、CH(CHSi(OC、CH(CHSi(OC、CH(CH10Si(OC、CH(CH11Si(OC、CH(CH12Si(OC、CH(CH13Si(OC、CH(CH14Si(OC、CH(CH15Si(OC、CH(CH16Si(OC、CH(CH17Si(OC、CH(CH18Si(OC、CH(CH19Si(OC、CFSi(OCH、CHSi(NCO)、(CHSiCl、(CHSi(OCH、(CHSi(OC、(CH)(CHCH)Si(OCH、(CH)〔CH(CH〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH10〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH11〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH12〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH13〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH14〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH15〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH16〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH17〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH18〕Si(OCH、(CH)〔CH(CH19〕Si(OCH、(CHSi(NCO)、(CHSiCl、(CHSi(OCH)、(CHSi(OC)、(CH(CHCH)Si(OCH)、(CH〔CH(CH〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH10〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH11〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH12〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH13〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH14〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH15〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH16〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH17〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH18〕Si(OCH)、(CH〔CH(CH19〕Si(OCH)などが挙げられる。
【0033】
前記シリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、(メタ)アクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0034】
上記反応は、これら材料の溶液中にTiO(OH)を浸漬し、乾燥する方法などが挙げられる。前記カップリング剤による処理は、例えば、カップリング剤を含有する溶液中にTiO(OH)微粒子を浸漬し、乾燥する方法、或いはTiO(OH)微粒子にカップリング剤を含有する溶液を噴霧し、乾燥する方法などが挙げられる。前記カップリング剤の付着量は、TiO(OH)微粒子に対して0.1〜25質量%であることが好ましい。また、前記チタン化合物は、比重が2.8〜3.6であることが好ましい。
【0035】
本発明において、外添剤を2種以上とする場合、外添剤として、疎水性表面処理を行った、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、などを挙げることが可能である。そして、例えば、トナーに必要な流動性、帯電性を付与するために、疎水性シリカを用いると、求められる機能を与えることが出来るが、その際、例えば高温高湿下、低温低湿下での帯電量に大きな差が生じることがあり、この保持帯電量(gあたりの電荷量)の差は画質、制御性に影響を与える。そこで、酸化チタン等、金属酸化物微粒子を同時に併用することにより、低温低湿下での過剰な帯電の抑制が可能となり、その結果、高温高湿下と低温低湿下の保持帯電量差が小さくなり、画質、制御性の向上を得ることが可能となる。このように、1つの外添剤で、全ての期待機能を満たすような外添剤は見つかっておらず、期待機能、発現機能に従い、複数の添加剤を併用して行うことが現状に適っている。
【0036】
前記外添剤のBET比表面積は、10〜300m/gが好ましく、20〜200m/gがより好ましい。
ここで、前記比表面積は、BET法に従い、例えば比表面積測定装置(「オートソーブ1」、湯浅アイオニクス社製)を用い、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0037】
前記外添剤の平均粒径は、10〜300nmが好ましく、10〜180nmがより好ましい。
【0038】
前記外添剤のトナーにおける含有量は、0.1〜8.0質量%が好ましく、0.2〜3.0質量%がより好ましい。
【0039】
前記外添剤と、電子線照射を行ったトナー母体粒子との混合は、例えば、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ハイブリダイザーなど公知の混合機によって行うことができる。これら装置の回転体の周速は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー母体粒子表面に分散し、固定化するには、例えば、ヘンシェルミキサーにより攪拌翼の周速を20m/s程度で回転させることが好ましい。また、前記攪拌時の温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15〜40℃で行われることが好ましい。
【0040】
<トナー母体粒子>
以下に本発明で使用されるトナー母体粒子を構成する材料について説明する。
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えばスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、などの単独重合体、又は共重合体などが挙げられる。
【0041】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等が挙げられる。前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、等が挙げられる。
【0042】
特に代表的な結着樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリエステル樹脂が好ましく、更にウレア変性ポリエステル樹脂が好ましく、ウレア変性ポリエステル樹脂と未変性ポリエステル樹脂の組み合わせが最も好ましい。
【0043】
(着色剤)
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記着色剤の前記トナー母体粒子における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
前記含有量が、1質量%未満であると、トナー母体粒子の着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー母体粒子中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0045】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。該樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記マスターバッチは、前記マスターバッチ用樹脂と、前記着色剤とを高せん断力をかけて混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶剤成分を除去する方法である。前記混合又は混練には、例えば三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。
【0047】
(離型剤)
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類、等が好適に挙げられる。
前記ワックス類としては、例えば、カルボニル基含有ワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カルボニル基含有ワックスが好ましい。
【0048】
前記カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル、ポリアルカノールエステル、ポリアルカン酸アミド、ポリアルキルアミド、ジアルキルケトン、等が挙げられる。前記ポリアルカン酸エステルとしては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等が挙げられる。前記ポリアルカノールエステルとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等が挙げられる。前記ポリアルカン酸アミドとしては、例えば、ジベヘニルアミド等が挙げられる。前記ポリアルキルアミドとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリルアミド等が挙げられる。前記ジアルキルケトンとしては、例えば、ジステアリルケトン等が挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスの中でも、ポリアルカン酸エステルが特に好ましい。
【0049】
前記ポリオレフィンワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
【0050】
前記長鎖炭化水素としては、例えば、パラフィンワックス、サゾールワックス等が挙げられる。
【0051】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40〜160℃が好ましく、50〜120℃がより好ましく、60〜90℃が特に好ましい。前記融点が、40℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。
【0052】
前記離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、10〜100cpsがより好ましい。前記溶融粘度が、5cps未満であると、離型性が低下することがあり、1000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。
【0053】
前記離型剤のトナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0054】
(その他の成分)
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、帯電制御剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。
【0055】
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれも、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも、保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれも、ヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製);銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、等が挙げられる。
【0056】
前記帯電制御剤の前記トナー母体粒子における含有量としては、前記樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。該含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0057】
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0058】
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加され、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好適である。
【0059】
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0060】
(トナー母体粒子の製法)
本発明におけるトナー母体粒子としては、粉砕法;懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法等の重合法により製造することができる。
【0061】
(粉砕法)
前記粉砕法は、例えば、トナー材料を溶融ないし混練し、粉砕、分級等することにより、前記トナーの母体粒子を得る方法である。なお、該粉砕法の場合、前記トナー母体粒子の平均円形度を高くする目的で、得られたトナー母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、前記機械的衝撃力は、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いて前記トナー母体粒子に付与することができる。
【0062】
上記トナー材料を混合し、該混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。該溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。例えば、神戸製鋼所社製KTK型二軸押出機、東芝機械社製TEM型押出機、ケイシーケイ社製二軸押出機、池貝鉄工所社製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。この溶融混練は、バインダー樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は、バインダー樹脂の軟化点を参考にして行われ、該軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。
【0063】
前記粉砕では、前記混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
【0064】
前記分級は、前記粉砕で得られた粉砕物を分級して所定粒径の粒子に調整する。前記分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができる。
【0065】
前記粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中に分級し、所定の粒径のトナー母体粒子を製造する。
【0066】
(重合法)
前記重合法としては、例えば、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体中に乳化ないし分散させて乳化ないし分散液を調製した後、トナー母体粒子を造粒することにより得ることができる。
【0067】
本発明のトナー母体粒子の好ましい態様としては、活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを少なくとも含むトナー材料の溶解ないし分散液を、水系媒体中に乳化ないし分散させ、該水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させて接着性基材を少なくとも含む粒子を生成させて得られるトナー母体粒子が挙げられる。
【0068】
以下、本発明の好ましい態様のトナー母体粒子について説明する。
【0069】
−トナー材料の溶解ないし分散液−
前記トナー材料の溶解ないし分散液は、前記トナー材料を溶媒に溶解ないし分散させてなる。
前記トナー材料としては、トナー母体粒子を形成可能である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基含有化合物、及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)のいずれかを少なくとも含み、前記着色剤、好ましくは前記ワックスを含み、更に必要に応じて、未変性ポリエステル樹脂、離型剤、帯電制御剤等の上記その他の成分を含んでなる。
【0070】
前記トナー材料の溶解ないし分散液は、前記トナー材料を前記有機溶剤に溶解ないし分散させて調製するのが好ましい。なお、前記有機溶剤は、トナーの造粒時ないし造粒後に除去するのが好ましい。
【0071】
前記有機溶剤としては、前記トナー材料を溶解ないし分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除去の容易性の点で沸点が150℃未満の揮発性のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等が挙げられるが、エステル系溶剤であるのが好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
前記有機溶剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー材料100質量部に対し、40〜300質量部が好ましく、60〜140質量部がより好ましく、80〜120質量部が更に好ましい。
【0073】
なお、本発明の前記好ましい態様のトナーの製造方法において、前記トナー材料の溶解ないし分散液の調製は、前記有機溶剤中に、前記活性水素基含有化合物、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、前記未変性ポリエステル樹脂、前記ワックス、前記着色剤、前記帯電制御剤、等のトナー材料を、溶解ないし分散させることにより行うことができ、前記トナー材料の中で、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、後述する水系媒体の調製において、該水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、前記トナー材料の溶解ないし分散液を前記水系媒体に添加する際に、該溶解ないし分散液と共に前記水系媒体に添加してもよい。
【0074】
−−活性水素基含有化合物−−
前記活性水素基含有化合物は、前記水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体が伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。
【0075】
前記活性水素基含有化合物としては、活性水素基を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体が前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)である場合には、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)と伸長反応、架橋反応等の反応により高分子量化可能な点で、アミン類(B)が好適である。
【0076】
前記活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルコール性水酸基が特に好ましい。
【0077】
前記アミン類(B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、前記B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)等、が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン(B1)、ジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)との混合物、が特に好ましい。
【0078】
前記ジアミン(B1)としては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、等が挙げられる。該芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。該脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。該脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0079】
前記3価以上のポリアミン(B2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。
前記アミノアルコール(B3)としては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン、等が挙げられる。
【0080】
前記アミノメルカプタン(B4)としては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン、等が挙げられる。
【0081】
前記アミノ酸(B5)としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、等が挙げられる。
【0082】
前記B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、例えば、前記(B1)から(B5)のいずれかのアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物、等が挙げられる。
【0083】
なお、前記活性水素基含有化合物と前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いることができる。該反応停止剤を用いると、前記接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる点で好ましい。該反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はこれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)、などが挙げられる。
【0084】
アミン類(B)と、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)との混合比率としては、前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、前記アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3〜3/1であるのが好ましく、1/2〜2/1であるのがより好ましく、1/1.5〜1.5/1であるのが特に好ましい。
前記混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3/1を超えると、前記ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0085】
−−活性水素基含有化合物と反応可能な重合体−−
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」と称することがある)としては、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば特に制限はなく、公知の樹脂等の中から適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体樹脂、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0086】
前記プレポリマーにおける前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、特に制限はなく、公知の置換基等の中から適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基、等が挙げられる。
これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、イソシアネート基が特に好ましい。
【0087】
前記プレポリマーの中でも、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない場合でも良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)であるのが特に好ましい。
【0088】
前記ウレア結合生成基としては、例えば、イソシアネート基、等が挙げられる。前記ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)における該ウレア結合生成基が該イソシアネート基である場合、該ポリエステル樹脂(RMPE)としては、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)等が特に好適に挙げられる。
【0089】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物であり、かつ前記活性水素基含有ポリエステル樹脂をポリイソシアネート(PIC)と反応させてなるもの、等が挙げられる。
【0090】
前記ポリオール(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(DIO)、3価以上のポリオール(TO)、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ジオール(DIO)単独、又は前記ジオール(DIO)と少量の前記3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が好ましい。
【0091】
前記ジオール(DIO)としては、例えば、アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
【0092】
前記アルキレングリコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。前記アルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0093】
前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0094】
前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記脂環式ジオールに対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
【0095】
前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。
【0096】
前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記ビスフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
【0097】
これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2〜12のアルキレングリコールとの混合物が特に好ましい。
【0098】
前記3価以上のポリオール(TO)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、3価以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
【0099】
前記3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0100】
前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記3価以上のポリフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
【0101】
前記ジオール(DIO)と前記3価以上のポリオール(TO)との混合物における、前記ジオール(DIO)と前記3価以上のポリオール(TO)との混合質量比(DIO:TO)としては、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0102】
前記ポリカルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸(DIC)単独、又はDICと少量の3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物が好ましい。
【0103】
前記ジカルボン酸としては、例えば、アルキレンジカルボン酸、アルケニレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、等が挙げられる。
前記アルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。
前記アルケニレンジカルボン酸としては、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。前記芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20のものが好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0104】
前記3価以上のポリカルボン酸(TO)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、芳香族ポリカルボン酸、等が挙げられる。
前記芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20のものが好ましく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
前記ポリカルボン酸(PC)としては、前記ジカルボン酸(DIC)、前記3価以上のポリカルボン酸(TC)、及び、前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸との混合物、から選択されるいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステル物を用いることもできる。前記低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0105】
前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物における前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合質量比(DIC:TC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0106】
前記ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを重縮合反応させる際の混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ポリオール(PO)における水酸基[OH]と、前記ポリカルボン酸(PC)におけるカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、通常、2/1〜1/1であるのが好ましく、1.5/1〜1/1であるのがより好ましく、1.3/1〜1.02/1であるのが特に好ましい。
【0107】
前記ポリオール(PO)の前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。
前記含有量が0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0108】
前記ポリイソシアネート(PIC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらのフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの、などが挙げられる。
【0109】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0110】
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0111】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0112】
前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0113】
前記イソシアヌレート類としては、例えば、トリス−イソシアナトアルキル−イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキル−イソシアヌレート等が挙げられる。
【0114】
これらは、1種単独でも使用することができ、2種以上を併用してもよい。
【0115】
前記ポリイソシアネート(PIC)と、前記活性水素基含有ポリエステル樹脂(例えば水酸基含有ポリエステル樹脂)とを反応させる際の混合比率としては、該ポリイソシアネート(PIC)におけるイソシアネート基[NCO]と、該水酸基含有ポリエステル樹脂における水酸基[OH]との混合当量比([NCO]/[OH])が、通常、5/1〜1/1であるのが好ましく、4/1〜1.2/1であるのがより好ましく、3/1〜1.5/1であるのが特に好ましい。
前記イソシアネート基[NCO]が、5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、1未満であると、耐オフセット性が悪化することがある。
【0116】
前記ポリイソシアネート(PIC)の前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。
前記含有量が0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0117】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)の1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4が更に好ましい。
前記イソシアネート基の平均数が、1未満であると、前記ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0118】
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体の質量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、3,000〜40,000が好ましく、4,000〜30,000がより好ましい。該質量平均分子量(Mw)が、3,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、40,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0119】
前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布の測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。
即ち、まず、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させる。この温度でカラム溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50〜200μl注入して測定する。前記試料における分子量の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。前記検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.又は東洋ソーダ工業社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、及び4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。なお、前記検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いることができる。
【0120】
−水系媒体−
前記水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、該水と混和可能な溶剤、これらの混合物、などが挙げられるが、これらの中でも、水が特に好ましい。
前記水と混和可能な溶剤としては、前記水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、などが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0121】
前記水系媒体の調製は、例えば、樹脂微粒子を前記水系媒体に分散させることにより行うことができる。該樹脂微粒子の該水系媒体中の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜10質量%が好ましい。
【0122】
前記樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているのが好ましい。
【0123】
なお、前記ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0124】
また、前記樹脂微粒子としては、少なくとも2つの不飽和基を有する単量体を含んでなる共重合体を用いることもできる。前記少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」、三洋化成工業社製)、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールアクリレートなどが挙げられる。
【0125】
前記樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、該樹脂微粒子の水性分散液として得るのが好ましい。該樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、例えば、
(1)前記ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法、
(2)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法、
(3)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、
(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、
(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、
(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、
(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法、
(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、
などが好適に挙げられる。
【0126】
−乳化ないし分散−
前記トナー材料の溶解ないし分散液の前記水系媒体中への乳化ないし分散は、前記トナー材料の溶解ないし分散液を前記水系媒体中で攪拌しながら分散させるのが好ましい。該分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の分散機などを用いて行うことができ、該分散機としては、前記低速せん断式分散機、前記高速剪断式分散機などが挙げられる。
本発明の前記好ましい態様のトナーの製造方法においては、前記乳化ないし分散の際、前記活性水素基含有化合物と前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを伸長反応ないし架橋反応させると、接着性基材(上記樹脂)が生成する。
【0127】
−−接着性基材−−
前記接着性基材は、紙等の記録媒体に対し接着性を示し、前記活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を前記水系媒体中で反応させてなる接着性ポリマーを少なくとも含み、更に公知の結着樹脂から適宜選択した結着樹脂を含んでいてもよい。
【0128】
前記接着性基材の質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、3,000以上が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましく、7,000〜500,000が特に好ましい。
前記質量平均分子量が、3,000未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0129】
前記接着性基材のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、30〜70℃が好ましく、40〜65℃がより好ましい。前記トナー母体粒子では、架橋反応、伸長反応したポリエステル樹脂が共存していることにより、従来のポリエステル系トナー母体粒子と比較してガラス転移温度が低くても良好な保存性を示すものである。
前記ガラス転移温度(Tg)が、30℃未満であると、トナー母体粒子の耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が十分でないことがある。
【0130】
前記ガラス転移温度は、例えば、TG−DSCシステムTAS−100(理学電機社製)を用いて、以下の方法により測定することができる。まず、試料約10mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットにのせ、電気炉中にセットする。室温から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置し、室温まで試料を冷却して10min放置する。その後、窒素雰囲気下、150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して示差走査熱量計(DSC)によりDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、TG−DSCシステムTAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移温度(Tg)近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点からガラス転移温度(Tg)を算出することができる。
【0131】
前記接着性基材の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル系樹脂、などが特に好適に挙げられる。
前記ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ウレア変性ポリエステル系樹脂、などが特に好適に挙げられる。
前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、前記活性水素基含有化合物としてのアミン類(B)と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としてのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)とを前記水系媒体中で反応させて得られる。
【0132】
前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、ウレア結合のほかに、ウレタン結合を含んでいてもよく、この場合、該ウレア結合と該ウレタン結合との含有モル比(ウレア結合/ウレタン結合)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が特に好ましい。前記ウレア結合が10未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0133】
前記ウレア変性ポリエステル樹脂の好ましい具体例としては、以下(1)から(10)に記載の混合物等が好適に挙げられる。
【0134】
(1)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
【0135】
(2)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
【0136】
(3)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
【0137】
(4)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
【0138】
(5)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
【0139】
(6)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
【0140】
(7)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
【0141】
(8)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
【0142】
(9)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
【0143】
(10)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
【0144】
−−−結着樹脂−−−
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特に、未変性ポリエステル樹脂(変性されていないポリエステル樹脂)が好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂を前記トナー中に含有させると、低温定着性及び光沢性を向上させることができる。
【0145】
前記未変性ポリエステル樹脂としては、前記ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂と同様のもの、即ちポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物、等が挙げられる。該未変性ポリエステル樹脂は、その一部が前記ウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂(RMPE)と相溶していること、即ち、互いに相溶可能な類似の構造であるのが、低温定着性、耐ホットオフセット性の点で好ましい。
【0146】
前記未変性ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜15,000がより好ましい。
前記質量平均分子量(Mw)が、1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあるので、上述したように前記質量平均分子量(Mw)が1,000未満である成分の含有量は、8〜28質量%であることが好ましい。一方、前記質量平均分子量(Mw)が30,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0147】
前記未変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、35〜70℃が好ましい。前記ガラス転移温度が、35℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が不十分となることがある。
【0148】
前記未変性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、5mgKOH/g以上が好ましく、10〜120mgKOH/gがより好ましく、20〜80mgKOH/gが更に好ましい。前記水酸基価が5mgKOH/g未満であると、耐熱保存性と低温定着性とが両立し難くなることがある。
前記未変性ポリエステル樹脂の酸価としては、1.0〜30.0mgKOH/gが好ましく、5.0〜20.0mgKOH/gがより好ましい。一般に前記トナーに酸価をもたせることによって負帯電性となり易くなる。
【0149】
前記未変性ポリエステル樹脂を前記トナーに含有させる場合、前記ウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂(RMPE)と該未変性ポリエステル樹脂(PE)との混合質量比(RMPE/PE)としては、5/95〜25/75が好ましく、10/90〜25/75がより好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂(PE)の混合質量比が、95を超えると、耐ホットオフセット性が悪化することがあり、75未満であると、低温定着性や画像の光沢性が悪化することがある。
【0150】
前記結着樹脂における前記未変性ポリエステル樹脂の含有量としては、例えば、50〜100質量%が好ましく、55〜95質量%がより好ましい。該含有量が50質量%未満であると、低温定着性や定着画像強度、光沢性などが悪化することがある。
【0151】
前記接着性基材(例えば、前記ウレア変性ポリエステル樹脂)は、例えば、(1)前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む前記トナー材料の溶解ないし分散液を、前記活性水素基含有化合物(例えば、前記アミン類(B))と共に、前記水系媒体中に乳化ないし分散させ、前記油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよく、(2)前記トナー材料の溶解ないし分散液を、予め前記活性水素基含有化合物を添加した前記水系媒体中に乳化ないし分散させ、前記油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよく、あるいは(3)前記トナー材料の溶解ないし分散液を、前記水系媒体中に添加混合させた後で、前記活性水素基含有化合物を添加し、前記油滴を形成し、該水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよい。なお、前記(3)の場合、生成するトナー表面に優先的に変性ポリエステル樹脂が生成され、該トナー粒子において濃度勾配を設けることもできる。
【0152】
前記乳化ないし分散により、前記接着性基材を生成させるための反応条件としては、特に制限はなく、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と前記活性水素基含有化合物との組合せに応じて適宜選択することができ、反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
【0153】
前記水系媒体中において、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む前記分散体を安定に形成する方法としては、例えば、前記水系媒体中に、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤、前記未変性ポリエステル樹脂等の前記トナー材料を前記有機溶剤に溶解ないし分散させて調製した前記トナー材料の溶解ないし分散液を添加し、剪断力により分散させる方法、等が挙げられる。
【0154】
前記乳化ないし分散において、前記水系媒体の使用量としては、前記トナー材料100質量部に対し、50〜2,000質量部が好ましく、100〜1,000質量部がより好ましい。前記使用量が50質量部未満であると、前記トナー材料の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0155】
前記乳化ないし分散においては、必要に応じて、前記油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0156】
前記界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、等が挙げられる。
【0157】
前記陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。
【0158】
該フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。該フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(以上、旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(以上、住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(以上、ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(以上、大日本インキ化学工業社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(以上、トーケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(以上、ネオス社製)等が挙げられる。
【0159】
前記陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。前記アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。
【0160】
前記四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。該陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが挙げられる。
【0161】
該カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子社製);フロラードFC−135(住友3M社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(以上、大日本インキ化学工業社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
【0162】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0163】
前記両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0164】
前記難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、等が挙げられる。
【0165】
前記高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、等が挙げられる。
【0166】
前記酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0167】
前記水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
【0168】
前記ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。
【0169】
前記ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
前記アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。
【0170】
前記クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。
【0171】
前記窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。
【0172】
前記ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。
【0173】
前記セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0174】
前記分散液の調製においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。
前記分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸やアルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。該分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。
前記分散液の調製においては、前記伸長反応ないし前記架橋反応の触媒を用いることができる。該触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、などが挙げられる。
【0175】
前記乳化ないし分散により得られた乳化スラリーから、前記有機溶剤を除去する。
【0176】
前記有機溶剤の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、前記油滴中の前記有機溶剤を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法、等が挙げられる。
【0177】
前記有機溶剤の除去が行われると、トナー母体粒子が形成される。該トナー母体粒子に対し、洗浄、乾燥等を行うことができ、その後、所望により分級等を行うことができる。該分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができ、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
【0178】
得られたトナー母体粒子を、前記着色剤、離型剤、前記帯電制御剤等の粒子と共に混合したり、更に機械的衝撃力を印加することにより、該トナー母体粒子の表面から該離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢、等が挙げられる。
【0179】
(懸濁重合法)
以下に懸濁重合法により製造されるトナー母体粒子について説明する。
前記懸濁重合法により製造されるトナー母体粒子は、上述の通り、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体中に乳化ないし分散(懸濁)させて乳化ないし分散液(懸濁液)を調製した後、トナー母体粒子を造粒することにより得ることができる。
【0180】
−トナー材料の溶解ないし分散液−
前記懸濁重合法においては、前記トナー材料の溶解ないし分散液は、重合性単量体、油溶性重合開始剤中に、前記着色剤、更に必要に応じて、前記ワックス、前記帯電制御剤、架橋剤等の成分を溶解ないし分散させてなる。なお、例えば、後述する重合反応で生成される重合体の粘度を低下させるために、有機溶剤、高分子重合体、分散剤等を適宜添加してもよい。
【0181】
−−重合性単量体−−
前記重合性単量体には、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、又はこれらのメチロール化合物;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基を有するアクリレートあるいはメタクリレートなどを一部使用することにより、トナー粒子表面に官能基を導入することができる。なお、使用する分散剤として、酸基や塩基性基を有するものを適宜選択することによってもトナー母体粒子表面に分散剤を吸着残存させ、官能基を導入することができる。
【0182】
前記重合性単量体としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、などが挙げられる。
【0183】
また、前記重合性単量体に加えて樹脂を使用してもよい。例えば、前記重合性単量体は水溶性であるため、水性懸濁液中で溶解してしまい、乳化重合を行うことができないため、アミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルフォン基、グリシジル基、ニトリル基等の親水性官能基含有重合性単量体をトナー中に導入したい場合には、これらとスチレン、エチレン等のビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、などの共重合体の形にした樹脂、あるいはポリエステル、ポリアミド等の重縮合体、ポリエーテル、ポリイミン等の重付加重合体などの形にした樹脂を使用することができる。
【0184】
前記ポリエステル樹脂を形成するアルコール成分と酸成分としては、以下に示すものが挙げられる。
【0185】
前記アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、等が挙げられる。また、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル等の多価アルコールを使用してもよい。
【0186】
前記酸成分としては、例えば、2価のカルボン酸として、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等のベンゼンジカルボン酸又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸又はその無水物;炭素数6〜18のアルキル基若しくはアルケニル基で置換されたコハク酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物;などが挙げられる。また、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、及びこれらの無水物等の多価カルボン酸を使用してもよい。
【0187】
前記ポリエステル樹脂における、前記アルコール成分と前記酸成分との含有量としては、前記アルコール成分が45〜55モル%であり、前記酸成分が55〜45モル%であるのが好ましい。
【0188】
得られるトナー粒子の物性に悪影響を及ぼさない限り、前記ポリエステル樹脂は2種以上を併用してもよい。また、シリコーンやフルオロアルキル基含有化合物により変性する等、物性を調整することもできる。
【0189】
ここで、このような極性官能基を含む高分子重合体を使用する際、該高分子重合体の平均分子量としては、5,000以上が好ましい。
【0190】
更に、前記重合性単量体に加えて、以下に示す樹脂を使用することができる。該樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0191】
前記樹脂の添加量は、前記重合性単量体100質量部に対し、1〜20質量部が好ましい。前記添加量が1質量部未満であると、添加によるトナー粒子の物性調整の効果が発現しないことがあり、20質量部を超えると、トナー粒子の物性設計が困難になることがある。また、前記重合性単量体を重合して得られるトナーの分子量範囲とは異なる分子量の重合体を前記重合性単量体中に溶解して重合させることもできる。
【0192】
−−油溶性重合開始剤−−
前記油溶性重合開始剤は、重合反応時に半減期が0.5〜30時間のものを、前記重合性単量体100質量部に対し、0.5〜20質量部の添加量にて重合反応を行うと、分子量10,000〜100,000の間に極大を有する重合体を得ることができ、トナーに望ましい強度と適度な溶解特性を付与することができる。
【0193】
前記油溶性重合開始剤としては、油溶性である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等の過酸化物系重合開始剤;などが挙げられる。
【0194】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、主に2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物を好適に使用することができ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等の二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0195】
前記架橋剤の添加量としては、例えば、前記重合性単量体100質量部に対し、0.001〜15質量部が好ましい。
【0196】
−水系媒体−
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水が挙げられる。
前記水系媒体は、分散安定剤を含むのが好ましい。
前記分散安定剤としては、例えば、公知の界面活性剤、有機分散剤、無機分散剤等を使用することができるが、これらの中でも、有害な超微粒子が発生し難く、立体障害性により分散安定性が得られるため、反応温度を変化させても安定な状態を保ち、洗浄も容易でトナーに悪影響を与えない点で、無機分散剤が好ましい。
前記無機分散剤としては、例えば、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛等の燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物;などが挙げられる。
【0197】
前記無機分散剤は、そのまま使用することができるが、より細かい粒子を得るために、前記水系媒体中にて前記無機分散剤粒子を生成させて使用してもよい。例えば、前記燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。このとき、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、前記水系媒体中に水溶性塩が存在すると、前記重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合による超微粒トナーが発生し難くなるため好ましい。しかし、重合反応終期に残存重合性単量体を除去するときには障害となるため、水系媒体を交換するか、イオン交換樹脂で脱塩するのが好ましい。なお、前記無機分散剤は、重合終了後に酸あるいはアルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことができる。
【0198】
前記無機分散剤は、前記重合性単量体100質量部に対し、0.2〜20質量部を単独で使用するのが好ましい。なお、前記無機分散剤を使用すると、超微粒子が発生し難いものの、小粒径のトナーが得られ難いため、界面活性剤を0.001〜0.1質量部併用するのが好ましい。
【0199】
前記界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
【0200】
−懸濁−
前記懸濁は、前記トナー材料が均一に溶解ないし分散した前記トナー材料の溶解ないし分散液を前記水系媒体に乳化ないし分散させることにより行われる。このとき、高速撹拌機や超音波分散機等の高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズに分散させると、粒度分布がシャープなトナーが得られる。
なお、前記油溶性重合開始剤は、前記重合性単量体中に他の添加剤を添加するのと同時に加えてもよいし、前記水系媒体中に前記トナー材料の溶解ないし分散液を懸濁させる直前に混合してもよい。またトナーの造粒中、トナーの造粒直後、重合反応を開始する前、に前記重合性単量体あるいは溶媒に溶解した前記油溶性重合開始剤を加えることもできる。
【0201】
−造粒−
前記造粒は、前記重合性単量体を重合反応させることにより行われる。
前記重合反応における温度としては、例えば40℃以上であり、一般的には50〜90℃である。該温度範囲で重合を行うと、トナー母体粒子内部に存在させるべき、前記離型剤、前記ワックス等の類が、相分離により析出し、内包化を図ることができる。
なお、前記造粒においては、得られた重合粒子に更に前記重合性単量体を吸着させた後、前記油溶性重合開始剤を用いて重合させるシード重合法を使用することもできる。このとき、吸着させる重合性単量体中に、極性を有する化合物を溶解又は分散させて使用することもできる。
【0202】
前記重合反応の終了後は、通常の攪拌機を用いて、粒子状態が維持され、かつ粒子の浮遊、沈降が防止させる程度の攪拌速度で攪拌を行うのが好ましい。
前記重合反応終了後の重合粒子に対して、公知の方法により、濾過し、洗浄して余分な前記界面活性剤を除去し、乾燥し、更に無機微粉体を混合し、粒子表面に付着させることによりトナー母体粒子が得られる。このとき、分級を行うことにより、粗粉や微粉を除去するのが好ましい。
【0203】
本発明におけるトナー母体粒子は、その形状、大きさ等の諸物性については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下のような、体積平均粒径(Dv)、体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)等を有していることが好ましい。
【0204】
前記トナー母体粒子の体積平均粒径(Dv)としては、例えば、3〜8μmが好ましく、4〜6μmがより好ましい。前記体積平均粒径が、3μm未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナー母体粒子の粒子径の変動が大きくなることがある。
【0205】
前記トナー母体粒子における体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)としては、例えば、1.30以下が好ましく、1.00〜1.30がより好ましい。
前記体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.00未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、クリーニング性を悪化させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、1.30を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0206】
前記体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.00〜1.30であると、保存安定性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、特に、フルカラー複写機に使用した場合に画像の光沢性に優れる。二成分現像剤では長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られ、一成分現像剤ではトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなるとともに、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等への部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性が得られるため、高画質の画像を得ることができる。
【0207】
前記体積平均粒径、及び前記体積平均粒径と個数平均粒子径との比(Dv/Dn)は、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度測定器「マルチサイザーII」を用いて測定することができる。
【0208】
本発明におけるトナーの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは前記着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができる。
【0209】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明のトナーからなる一成分現像剤であってもよいし、本発明のトナーとキャリアを含む二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で二成分現像剤が好ましい。
本発明のトナーを一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、本発明のトナーを用いた二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0210】
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0211】
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等が好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0212】
前記芯材の粒径としては、体積平均粒径で、10〜150μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。前記平均粒径(体積平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0213】
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0214】
前記アミノ系樹脂としては、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0215】
前記ポリビニル系樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0216】
前記ポリスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等が挙げられる。
【0217】
前記ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0218】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0219】
前記樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、該導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、等が挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0220】
前記樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、等が挙げられる。
【0221】
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、等が挙げられる。
【0222】
前記焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウェーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0223】
キャリアにおける前記樹脂層の含有量としては、0.01〜5.0質量%が好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0224】
二成分現像剤における前記キャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90〜98質量%が好ましく、93〜97質量%がより好ましい。
【0225】
上記本発明の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0226】
(トナー入り容器)
本発明で用いられるトナー入り容器は、本発明のトナーを容器中に充填してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、トナー入り容器本体とキャップとを有してなるもの、等が好適に挙げられる。
【0227】
前記トナー入り容器本体としては、その大きさ、形状、構造、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、円筒状等が好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物であるトナーが排出口側に移行可能であり、かつ該スパイラル部の一部又は全部が蛇腹機能を有しているもの、等が特に好ましい。
【0228】
前記トナー入り容器本体の材質としては、特に制限はなく、寸法精度がよいものが好ましく、例えば樹脂が好適に挙げられ、その中でも、例えばポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、等が好適に挙げられる。
【0229】
このような本発明で用いられるトナー入り容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れ、後述する本発明のプロセスカートリッジ、画像形成装置等に、着脱可能に取り付けてトナーの補給に好適に使用することができる。
【0230】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、好ましくはクリーニング工程を含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば除電工程、リサイクル工程、制御工程等を含んでなる。
【0231】
本発明で用いられる画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、好ましくはクリーニング手段を有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0232】
本発明の画像形成方法は、上記画像形成装置により好適に実施することができ、前記静電潜像形成工程は前記静電潜像形成手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0233】
<静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段>
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記静電潜像担持体(「感光体」と称することもある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0234】
前記静電潜像の形成は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。前記静電潜像形成手段は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0235】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、等が挙げられる。
【0236】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、等の各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0237】
<現像工程及び現像手段>
前記現像工程は、前記静電潜像を、本発明の前記トナーないし前記現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を本発明の前記トナーないし前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
【0238】
前記現像手段は、例えば、本発明の前記トナーないし前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知の現像手段の中から適宜選択することができ、例えば、本発明の前記トナーないし現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナーないし該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられ、前記トナー入り容器を備えた現像器等がより好ましい。
【0239】
前記現像器は、乾式現像方式のもので、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナーないし前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、等が好適に挙げられる。
【0240】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体(感光体)の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0241】
前記現像器に収容させる現像剤は、本発明の前記トナーを含む現像剤であるが、該現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。該現像剤に含まれるトナーは、本発明の前記トナーである。
【0242】
<転写工程及び転写手段>
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
【0243】
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
【0244】
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0245】
<定着工程及び定着手段>
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ、等が挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0246】
<除電工程及び除電手段>
前記除電工程は、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0247】
<クリーニング工程及びクリーニング手段>
前記クリーニング工程は、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真用トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0248】
<リサイクル工程及びリサイクル手段>
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0249】
<制御工程及び制御手段>
前記制御手段は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0250】
次に、図1を参照しながら、本発明の画像形成方法について、説明する。図1に示す画像形成装置は、感光体10と、帯電装置20と、露光装置30と、現像装置40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有するクリーニング装置60と、除電装置70と、転写装置80を備える。なお、帯電装置20としては、帯電ローラ、除電装置70としては、除電ランプ、転写装置80としては、転写ローラが用いられている。
【0251】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置された3個の支持ローラ51で張架され、矢印方向に移動可能に設計されている。3個の支持ローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加することが可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50は、その近傍にクリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。また、被転写体95に可視像を転写(二次転写)するための二次転写バイアスを印加することが可能な転写装置80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、中間転写体50の回転方向において、感光体10及び中間転写体50の接触部並びに中間転写体50及び被転写体95の接触部の間に配置されている。なお、被転写体95としては、転写紙が用いられている。
【0252】
現像装置40は、現像剤担持体としての現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラックの現像ユニット45K、イエローの現像ユニット45Y、マゼンタの現像ユニット45M及びシアンの現像ユニット45Cから構成されている。なお、現像ユニット45Kは、現像剤収容部42K、現像剤供給ローラ43K及び現像ローラ44Kを備えており、現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Y、現像剤供給ローラ43Y及び現像ローラ44Yを備えており、現像ユニット45Mは、現像剤収容部42M、現像剤供給ローラ43M及び現像ローラ44Mを備えており、現像ユニット45Cは、現像剤収容部42C、現像剤供給ローラ43C及び現像ローラ44Cを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が感光体10と接触している。
【0253】
この画像形成装置においては、帯電装置20が感光体10を一様に帯電させた後、露光装置30が感光体10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。次に、感光体10上に形成された静電潜像を、現像装置40が現像剤を供給して現像して可視像を形成する。
可視像は、支持ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、さらに被転写体95上に転写(二次転写)される。その結果、被転写体95上には、転写像が形成される。なお、感光体10上に残存したトナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10の帯電は、除電ランプ70により除去される。
【0254】
次に、図2を参照しながら、本発明の画像形成方法の他の態様について、説明する。図2に示す画像形成装置は、図1に示す画像形成装置における現像装置40の代わりに、感光体10の周囲に、ブラックの現像ユニット45K、イエローの現像ユニット45Y、マゼンタの現像ユニット45M及びシアンの現像ユニット45Cが直接対向して配置されていること以外は、図1に示す画像形成装置と同様の構成を有し、同様の作用効果を示す。
なお、図2においては、図1に示す画像形成装置と同一の構成については、同一符号を付してその説明を省略する。また、後述する図3及び図4においても同様とする。
【0255】
次に、図3を参照しながら、本発明の画像形成方法の他の態様について、説明する。図3に示す画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置である。この画像形成装置は、複写装置本体150、給紙テーブル200、スキャナ300及び原稿自動搬送装置(ADF)400を備えている。
【0256】
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図3中、時計回りに回転することが可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するためのクリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの4つの画像形成ユニット18が対向して並置された画像形成手段120が配置されている。画像形成手段120の近傍には、露光装置21が配置されている。中間転写体50における、画像形成手段120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対の支持ローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される記録紙と中間転写体50とは互いに接触することが可能である。二次転写装置22の近傍には、定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26及びこれに押圧されて配置された加圧ローラ27を備えている。なお、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、記録紙の両面に画像を形成するために、記録紙を反転させるための反転装置28が配置されている。
【0257】
次に、画像形成手段120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、原稿自動搬送装置400を開いて、スキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットして、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0258】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は、直ちに、スキャナ300が駆動し、第一走行体33及び第二走行体34が走行する。このとき、第一走行体33により、光源からの光が照射され、原稿面からの反射光を第二走行体34におけるミラーで反射する。さらに、結像レンズ35を通して、読み取りセンサ36で受光されて原稿が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。次に、各画像情報は、画像形成手段120における各画像形成ユニット18にそれぞれ伝達され、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の可視像が形成される。
【0259】
図4に示すように、画像形成ユニット18は、それぞれ、感光体10、感光体10を一様に帯電させる帯電装置(符号なし)、露光装置21により、各画像情報に基づいて、各画像様に感光体10を露光することにより形成された静電潜像を、各トナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナー)を用いて現像して、各トナーによる可視像を形成する現像装置(符号なし)、可視像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器(符号なし)、クリーニング装置(符号なし)及び除電装置(符号なし)を備えており、各画像情報に基づいて、各色の可視像を形成することが可能である。次に、各色の可視像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上に、順次転写(一次転写)され、各色の可視像が重ね合わされて複合転写像が形成される。
【0260】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つから記録紙を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラ142を回転させ、手差しトレイ54上の記録紙を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には、接地されて使用されるが、記録紙の紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体50上に形成された複合転写像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50及び二次転写装置22の間に、記録紙を送出させ、二次転写装置22により複合転写像を記録紙上に転写(二次転写)することにより、記録紙上にカラー画像が形成される。なお、中間転写体50上に残留したトナーは、クリーニング装置17により除去される。
【0261】
カラー画像が形成された記録紙は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、複合転写像が記録紙上に加熱加圧定着される。その後、記録紙は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。あるいは、切換爪55で切り換えて反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を形成した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0262】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、本発明の現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在である。本発明のプロセスカートリッジは、必要に応じて帯電手段、露光手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段などのその他の手段を更に一体に支持してもよい。また、前記現像手段として、本発明の現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容された現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
【0263】
図5に、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。このプロセスカートリッジは、感光体(静電潜像担持体)10を内蔵し、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、クリーニング装置60及び転写装置80を有する。これらの各部材は、前述する画像形成装置と同様のものを用いることができる。
【実施例】
【0264】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0265】
<トナー母体粒子Aの作製>
−有機微粒子エマルションの合成−
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業社製)11質量部、スチレン83質量部、メタクリル酸83質量部、アクリル酸ブチル110質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。次いで、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。
得られた[微粒子分散液1]をレーザ光散乱法を用いた粒径分布測定装置(LA−920、堀場製作所製)で測定したところ、質量平均粒径は105nmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のガラス転移温度(Tg)は59℃であり、質量平均分子量(Mw)は15万であった。
【0266】
−水相の調製−
水990質量部、[微粒子分散液1]83質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(エレミノールMON−7、三洋化成工業社製)37質量部、酢酸エチル90質量部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0267】
−低分子ポリエステルの合成−
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529質量部、テレフタル酸208質量部、アジピン酸46質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応した。次いで、10〜15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器内に無水トリメリット酸44質量部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[低分子ポリエステル1]を得た。
得られた[低分子ポリエステル1〕は、数平均分子量(Mn)2,500、質量平均分子量(Mw)6,700、ガラス転移温度(Tg)43℃、酸価25mgKOH/gであった。
【0268】
−中間体ポリエステル及びプレポリマーの合成−
冷却管、撹拌機、及び窒索導入管の付いた反応容器内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応した。次いで、10〜15mmHgの減圧で5時間反応して[中間体ポリエステル1]を合成した。
得られた[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量(Mn)2,100、質量平均分子量(Mw)9,500、ガラス転移温度(Tg)55℃、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価51mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、[中間体ポリエステル1]410質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、酢酸エチル500質量部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を合成した。得られた[プレポリマー1]の遊離イソシアネート質量%は、1.53質量%であった。
【0269】
−ケチミンの合成−
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、イソホロンジアミン170質量部とメチルエチルケトン75質量部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を合成した。得られた[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。
【0270】
−マスターバッチの合成−
水35質量部、フタロシアニン顔料(東洋インキ製造社製、FG7351)40質量部、及びポリエステル樹脂(三洋化成工業社製、RS801)60質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、得られた混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して、[マスターバッチ1]を得た。
【0271】
−油相の作製−
撹拌棒、及び温度計をセットした容器内に、[低分子ポリエステル1]378質量部、カルナバワックス110質量部、帯電制御剤(CCA、サリチル酸金属錯体E−84、オリエント化学工業社製)22質量部、及び酢酸エチル947質量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。次いで、容器内に[マスターバッチ1]500質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液1]を得た。
得られた[原料溶解液1]1,324質量部を容器内に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、ワックスの分散を行った。次いで、[低分子ポリエステル1]の65質量%酢酸エチル溶液1,324質量部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料及びワックス分散液1]を得た。得られた[顔料及びワックス分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)は50質量%であった。
【0272】
−乳化−
[顔料及びワックス分散液1]648質量部、[プレポリマー1]154質量部、及び[ケチミン化合物1]6.6質量部を容器内に入れ、TKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmで1分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
【0273】
−形状制御スラリーの調製−
イオン交換水18質量部をTKホモミキサー(特殊機化社製)で2,000rpm回転で撹拌しているところにセロゲンBS−H(第一工業製薬株式会社製)0.75質量部を少量ずつ添加する。添加し終え20℃に保ちながら30分間撹拌する。得られたセロゲン溶液に、イオン交換水725質量部、[微粒子分散液1]58質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(エレミノールMON−7、三洋化成工業社製)147質量部、及び酢酸エチル90質量部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
次に、イオン交換水75.6質量部をTKホモミキサー(特殊機化社製)で2,000rpm回転で撹拌しているところにセロゲンBS−H(第一工業製薬社製)3.15質量部を少量ずつ添加する。添加し終え20℃に保ちながら30分間撹拌する。得られたセロゲン溶液に、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(エレミノールMON−7、三洋化成工業社製)43.3質量部加えて、添加し終え20℃に保ちながら5分間撹拌する。この中に、[乳化スラリー1]2,000質量部を添加し、TKホモミキサーで2,000rpmで1時間混合し、[形状制御スラリー1]を得た。
【0274】
−脱溶剤−
撹拌機、及び温度計をセットした容器内に、[形状制御スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0275】
−洗浄及び乾燥−
[分散スラリー1]100質量部を減圧濾過した後、以下のようにして、洗浄及び乾燥を行った。
(1)濾過ケーキにイオン交換水100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2)(1)の濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3)(2)の濾過ケーキに10質量%塩酸100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4)(3)の濾過ケーキにイオン交換水300質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
得られた[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、最終的な[トナー母体粒子A]を得た。
得られた「トナー母体粒子A」の体積平均粒径は5.8μm、平均円形度は0.966であった。
【0276】
<トナー母体粒子Bの作製>
結着樹脂(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とテレフタル酸を主成分とするビスフェノールタイプポリエステル樹脂、重量平均分子量=1.1×104,数平均分子量=3.9×10、η(140℃)=90Pa・s、ガラス転移温度(Tg)=69℃)100質量部、高溶融粘度樹脂(テルペン変性ノボラック樹脂、重量平均分子量=2500、Tm=165℃、η(140℃)=85,000Pa・s)20質量部、カーボンブラック(BPL、キャボット社製)5質量部、帯電制御剤(ボントロンE84、オリエント化学社製)2質量部、及び低分子量ポリプロピレン(ビスコース660P、三洋化成工業社製)5質量部を、空冷された2本ロールミルに投入し、投入後15分間溶融混練した、冷却後、ジェットミルにより微粉砕を行い、風力式分級機にて分級を行い、体積平均粒径6μmの「トナー母体粒子B」を得た。
【0277】
<外添剤>
以下の実施例及び比較例における外添剤の物性値は、以下のようにして測定した。
【0278】
(BET比表面積の測定)
BET比表面積は、比表面積測定装置(「オートソーブ1」、湯浅アイオニクス社製)を用い、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出した。
【0279】
(真比重の測定)
気相置換法を用いた島津製作所製 アキュピック1330を用いて一定温度で気体の体積と圧力を変化させて、サンプルの体積を求める。気体にはHeガスを用い、圧力と体積を変化させてサンプルの体積を求め、サンプルの密度は体積を測定し後、質量を計量して求めた。
【0280】
<キャリアの作製>
フェライトコア材2,500質量部に対し、シリコーン樹脂溶液(信越化学工業社製)200質量部、カーボンブラック(キャボット社製)3質量部をトルエン中にて溶解分散させたコート液を流動層式スプレー法にて塗布し、コア材表面を被覆した後、300℃の電気炉で2時間焼成し、シリコーン樹脂コートキャリアを得た。なお、キャリア粒径については、粒径分布が比較的シャープな平均粒径が30〜60μmのものを使用した。
【0281】
<電子線の照射>
浜松ホトニクス(株)製 EB-ENGINE ライン照射型を使用し、照射条件として、酸素雰囲気、窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気の各環境に置換可能なチャンバーを用い、照射時間を制御し、ガス種を変更して行った。
【0282】
〔実施例1〕
(トナーAの作製)
[トナー母体粒子A]を酸素雰囲気(2000ppm)下にて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(40keV)が照射されるように、30gの[トナー母体粒子A]を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が1秒となるようにし、実施した。
そのようにして表面処理をしたトナー母体粒子100質量部に対し、平均粒径15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径8nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーA]を作製した。
【0283】
〔実施例2〕
(トナーBの作製)
[トナー母体粒子A]を窒素雰囲気(1500ppm)下にて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(60keV)が照射されるように、30gの[トナー母体粒子A]を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が1秒となるようにし、実施した。
そのようにして表面処理をしたトナー母体粒子100質量部に対し、平均粒径が15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径12nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーB]を作製した。
【0284】
〔実施例3〕
(トナーCの作製)
[トナー母体粒子A]をアルゴンガス雰囲気(2300ppm)下にて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(130keV)が照射されるように、30gの[トナー母体粒子A]を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が1秒となるようにし、実施した。
そのようにして表面処理をしたトナー母体粒子100質量部に対し、平均粒子径20nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーC]を作製した。
【0285】
〔実施例4〕
(トナーDの作製)
[トナー母体粒子A]を酸素雰囲気(2000ppm)下にて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(90keV)が照射されるように、30gの[トナー母体粒子A]を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が2秒となるようにし、実施した。
そのようにして表面処理をしたトナー母体粒子100質量部に対し、平均粒径が15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径12nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーD]を作製した。
【0286】
〔比較例1〕
(トナーEの作製)
[トナー母体粒子A]100質量部に対して、電子線照射を行うことなく、平均粒径が15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径8nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部、及び単分散球形シリカ0.75質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーE]を作製した。
【0287】
〔比較例2〕
(トナーFの作製)
[トナー母体粒子A]を大気条件下にて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(110keV)が照射されるように、30gの[トナー母体粒子A]を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が2秒となるようにし、実施した。
そのようにして表面処理をしたトナー母体粒子100質量部に、平均粒子径20nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーF]を作製した。
【0288】
〔比較例3〕
(トナーGの作製)
[トナー母体粒子A]を窒素雰囲気下1500ppmにて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(300keV)が照射されるように、30gの[トナー母体粒子A]を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が20秒となるようにし、実施した。
そのようにして表面処理をしたトナー母体粒子100質量部に、平均粒径が15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径12nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーG]を作製した。
【0289】
〔比較例4〕
(トナーHの作製)
[トナー母体粒子A]をアルゴンガス雰囲気下2300ppmにて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(180keV)が照射されるように、30gの[トナー母体粒子A]を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が15秒となるようにし、実施した。
そのようにして表面処理をしたトナー母体粒子100質量部に、平均粒径15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径8nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーH]を作製した。
【0290】
〔実施例5〕
(トナーIの作製)
[トナー母体粒子B]を酸素雰囲気下(2000)ppmにて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(120keV)が照射されるように、30gの[トナー母体粒子B]を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が1秒となるようにし、実施した。
そのようにして表面処理をしたトナー母体粒子100質量部に平均粒径15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径8nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーI]を作製した。
【0291】
〔実施例6〕
(トナーJの作製)
[トナー母体粒子B]を窒素雰囲気下(1500ppm)にて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(85keV)が照射されるように、30gの[トナー母体粒子B]を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が2秒となるようにし、実施した。
そのようにして表面処理をしたトナー母体粒子100質量部に平均粒径15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径12nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーJ]を作製した。
【0292】
〔比較例5〕
(トナーKの作製)
[トナー母体粒子B]100質量部に対して、電子線照射を行うことなく、平均粒径15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径12nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーK ]を作製した。
【0293】
〔比較例6〕
(トナーLの作製)
[トナー母体粒子B]を酸素雰囲気下1500ppmにて母体粒子表面に満遍なく低エネルギー電子線(210keV)が照射されるように、30gの母体粒子を幅150mm、長さ480mm、深さ40mmのステンレスバッチ上に広げ、これをベルト式搬送装置を用いて順次搬送し、15cm×15cm=225cmの照射エリア通過時間が20秒となるようにし、実施した。
このようにして得られたトナー母体粒子100質量部に平均粒径15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0、BET比表面積110m/g)0.8質量部、平均粒子径20nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、38μmの目開きのメッシュを使用して粗大粉、凝集体を除去し、[トナーL]を作製した。
【0294】
<画像形成及び評価>
上記のようにして得られた[トナーA]〜[トナーL]を用いて、トナー3質量部、上記キャリア97質量部と混合し、以下に示す画像形成装置で画像形成を行い、下記項目の評価を行った。結果を表2に示す。
即ち、使用した画像形成装置は、像担持体である感光体ドラムの周囲に近接ないし接触して、感光体ドラム上に一様な電荷を帯電させる帯電ローラ、感光体ドラム上に静電潜像を形成するための露光手段である露光装置、静電潜像を顕像化してトナー像とする現像装置、トナー像を転写紙に転写する転写ベルト、感光体ドラム上の残留トナーを除去するクリーニング装置、感光体ドラム上の残電荷を除電する除電ランプ、帯電ローラ印加電圧及び現像のトナー濃度を制御するための光センサが配置されている。この現像装置にはトナー補給装置よりトナー補給口を介してトナーが補給される。作像動作は次のように行われる。感光体ドラムは反時計回転方向に回転する。感光体ドラムは除電光により除電され、表面電位が0〜−150Vの基準電位に平均化される。次に、帯電ローラにより帯電され、表面電位が−1000V前後となる。次に、露光装置で露光され、光が照射された部分(画像部)は表面電位が0〜−200Vとなる。現像装置によりスリーブ上のトナーが上記画像部分に付着する。トナー像が作られた感光体ドラムは回転移動し、給紙部より用紙先端部と画像先端部とが転写ベルトで一致するようなタイミングで転写紙が送られ、転写ベルトで感光体ドラム表面のトナー像が転写紙に転写される。その後、転写紙は定着部へ送られ、熱と圧力によりトナーが転写紙に融着されてコピーとして排出される。感光体ドラム上に残った残留トナーはクリーニング装置中のクリーニングブレードにより掻き落とされ、その後、感光体ドラムは除電光により残留電荷が除電されてトナーの無い初期状態となり、再び次の作像工程へ移る。
【0295】
<クリーニング性>
クリーニング性は、温度/湿度=10℃/15%RHの試験室において、上記画像形成装置にて5,000枚の通紙を行い、その後、白紙画像を通紙中に停止させ、クリーニング工程を通過した感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム社製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
○:ブランクとの差が0.01未満でクリーニング性が良好である
△:ブランクとの差が0.01〜0.02でクリーニング性は良好ではないが許容範囲である
×:ブランクとの差が0.02を超えるものでクリーニング性が不良である
【0296】
<画像品質>
画像品質は通紙後画像の画質品質劣化(具体的には転写不良)を判断した。転写不良は、上記画像形成装置にて5,000枚の通紙を行い、その後、黒ベタ画像を通紙させて、その画像の転写不良レベルを目視でランク付けして判断し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
○:画像品質が良好である
△:画像品質は良好ではないが、実使用許容レベルである
×:画像品質が不良であり、実使用不能なレベルである
【0297】
<保存保管性>
30mlのスクリューバイアル瓶に10gトナーを投入し、2秒間に1回の割合で1cmの高低差のタッピングを100回(200秒)実施。その後密栓し50℃の環境で24時間保管、24℃保管2時間を1セットとして3セット実施。その後、得られたサンプルに対し、日科エンジニアリング社製 針入度試験器を用い、試験器の測定針をスクリューバイアル中のトナー最上面に接するように架台の高さを調整する。その時のダイヤルゲージの目盛りを読み取り測定値(a)とし、測定針の留め金具を押し、針をトナー中に自由落下させその時のダイヤルゲージの目盛りを読み取り、測定値(b)とする。こうして得られた測定値(b)と(a)の差を針入度として得た。
〔評価基準〕
針入度:貫通〜30、保存性極めて良好:○
29〜15、保存性許容:△
14〜0、保存性不良:×
【0298】
<トナー表面における分散・付着性>
日立社製 走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、その表面での付着性を評価した。
評価の手法として、25000倍にてトナー表面像を取り込み、画像評価用ソフトウ添加剤分散性、被覆性を下記の要領で評価した。
〔評価基準〕
◎:1≧S2/S1>0.8きわめて良好
○:0.8≧S2/S1>0.5 良好
△:0.5≧S2/S1>0.3 やや不良
×:0.3≧S2/S1 不良
【0299】
表1に実施例・比較例におけるトナー母体粒子の製法、電子線照射条件、外添剤の種類・混合量を示した。
【0300】
【表1】

【0301】
(注)表中、TiO(1):平均粒径15nmのイソブチル処理された湿式法疎水性酸化チタン(比重4.0)、SiO(1):平均粒径8nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ、SiO(2):平均粒径12nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ、SiO(3):平均粒径20nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ、SiO(4):単分散球形シリカを表す。
【0302】
【表2】

【0303】
表2から、実施例のトナーを用いた現像剤によれば、クリーニング性、画像品質、保存保管性、分散・付着性のすべてにおいて、優れた結果が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0304】
10 感光体(感光体ドラム)
10K ブラック用感光体
10Y イエロー用感光体
10M マゼンタ用感光体
10C シアン用感光体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
30 露光装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 現像装置
41 現像ベルト
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45K ブラック用現像器
45Y イエロー用現像器
45M マゼンタ用現像器
45C シアン用現像器
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 ローラ
52 分離ローラ
53 手差し給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排出トレイ
58 コロナ帯電器
60 クリーニング装置
61 現像器
62 転写帯電器
63 感光体クリーニング装置
64 除電器
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 転写紙
100 画像形成装置
101 感光体
102 帯電手段
103 露光
104 現像手段
105 記録媒体
107 クリーニング手段
108 転写手段
120 タンデム型現像器
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0305】
【特許文献1】特開2009−015083号公報
【特許文献2】特開2001−066820号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、着色剤を含むトナー母体粒子表面に外添剤を付着させたトナーであって、前記外添剤の付着に先立って、前記トナー母体粒子表面が、大気と、酸素、窒素、及び不活性ガスの群から選択される少なくとも1種のガスとの混合ガスの雰囲気下、150KeV以下の電子線で照射されてなることを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項2】
前記選択される少なくとも1種のガスの大気中の濃度が1500ppm以上であるであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真トナー。
【請求項3】
前記トナー母体粒子が、有機溶媒中に活性水素基を有する化合物と反応可能な変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂を含むトナー組成分を溶解又は分散させ、次いで該溶解又は分散物を樹脂微粒子を含む水系媒体中で分散させ、該活性水素基を有する化合物と反応させ、得られた分散液から溶媒を除去して得られることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
前記トナー粒子母体が、少なくとも結着樹脂、着色剤を含むトナー材料を溶融混練・粉砕して得られることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
前記外添剤として、2種以上の外添剤を用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【請求項6】
前記外添剤が、B.E.T比表面積が10から300m2/gの範囲の外添剤を少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【請求項7】
前記外添剤が、シリカ、チタン化合物、アルミナ、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグウネシウム、リン酸カルシウム、フッ素含有樹脂微粒子、シリカ含有樹脂微粒子及び窒素含有樹脂微粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【請求項8】
前記チタン化合物が、湿式法で作製されたTiO(OH)2の一部もしくは全部を、シラン化合物またはシリコーンオイルと反応させて得られるチタン化合物であることを特徴とする請求項7に記載の電子写真用トナー。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載のトナーと、キャリアを含有することを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項11】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を請求項9または10に記載の現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体上に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、請求項9または10に記載の現像剤を用いて現像し可視像とする現像手段と、前記可視像を記録媒体上に転写する転写手段と、前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を請求項9または10に記載の現像剤を用いて現像し可視像とする現像手段とを少なくとも一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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