説明

トナーの帯電量測定装置およびトナーの帯電量分布測定方法

【課題】 一成分現像剤に用いても、現像ローラを傷付けることなく正確な測定ができるトナーの帯電量測定装置およびトナーの帯電量分布測定方法を提供する。
【解決手段】 トナー支持体3からトナーTを吸引する中空のトナー吸引口1と、吸引したトナーTの帯電量を測定する帯電量測定手段4とを有するトナーの帯電量測定装置であって、前記トナー吸引口1は、前記トナー支持体3と密閉空間を形成することを特徴とするトナーの帯電量測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録等において使用されるトナーの帯電量測定装置およびトナーの帯電量分布測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トナーの帯電量は、電子写真法によって形成される画像の画質を左右する重要なパラメーターの一つであり、高画質の画像を得るためにトナーの帯電量分布を測定し、その測定結果がトナーの処方の選択、決定に利用される。
【0003】
従来の電子写真用トナーの帯電量測定方法は、ブローオフ法及び吸引法に大別される(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
図7は、ブローオフ法によるトナーの帯電量測定装置を示す図である。
Cはキャリア、Gはガス吸引方向、Tはトナー、4は帯電量測定手段、7は電極、10はマグネットである。
ブローオフ法は、帯電による静電引力で相互に引き合い結合しているトナーTとキャリアCの混合物を取り出して、マグネット10にキャリアを引き付けた状態で空気を吹き付けてトナーTをキャリアCから引き離す。
そして、帯電量測定手段4内では、分離されたトナーTが有する電荷量及びトナーの重量から帯電量分布を求める。
例えば、分離したトナーを一定の電位差を有する電極間へと導入する方法では、トナーTはその帯電力によって逆極となる電極7に引き寄せられ、帯電量に応じて異なる位置で付着する。すなわち、帯電量が大きければ導入位置近傍で電極7に付着し、帯電量が小さければ導入位置から離れた位置で電極7に付着する。その付着したトナーTの粒子の数を画像解析によって計算し、付着位置、付着した粒子数および粒子径の関係から、帯電量分布を求めることができる。
前記ブローオフ法はキャリアを使用するため、二成分現像剤もしくは磁性トナーと磁性キャリアを用いたいわゆる1.5成分現像剤には広く適用されているが、一成分現像剤にはそのまま適用することができない。そこで、一成分現像剤をキャリアと混合して二成分現像剤に調製した後に測定することが考えられるが、帯電量分布の測定条件と実際に画像形成される際の条件とが異なってしまうので、データの信頼性は低かった。
【0005】
一方、一成分現像剤に適した測定方法としては吸引法がある。吸引法は、帯電されたトナーが保持されている現像ローラの表面に、吸引口を近づけてポンプによる吸引を行うことでトナーを引き離し、吸引したトナーを上記ブローオフ法と同様に電極間に導入することで、帯電量分布を測定することができる。
しかし、この方法は、吸引力を大きくすると電極間に導入されたトナーが電極に付着することなく通過してしまい、正確な測定ができなかった。逆に、吸引力を小さくすると現像ローラに強く付着しているトナーを引き離すことが難しく、吸引量が減少して正確な測定ができなかった。
また、吸引力を小さくした上で吸引口を現像ローラ上で移動させることで、吸引量の減少を補う方法も提案されているが、表層の比較的帯電量の低いトナーを優先的に採取することになり、実際の帯電量分布とはやや異なる結果になってしまっていた。さらに、吸引口を現像ローラ上で連続的に移動させることで、吸引口を形成する材料が柔らかい現像ローラを傷付けてしまう恐れもあった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−97981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とする処は、一成分現像剤に用いても、現像ローラを傷付けることなく正確な測定ができるトナーの帯電量測定装置およびトナーの帯電量分布測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の技術的構成により、上記課題を解決できたものである。
【0009】
(1)トナー支持体からトナーを吸引する中空のトナー吸引口と、吸引したトナーの帯電量を測定する帯電量測定手段とを有するトナーの帯電量測定装置であって、前記トナー吸引口は、前記トナー支持体と密閉空間を形成することを特徴とするトナーの帯電量測定装置。
(2)前記トナー吸引口は、先端が釣鐘型であることを特徴とする前記(1)記載のトナーの帯電量測定装置。
(3)トナー支持体からトナー吸引口を介してトナーを吸引する工程と、吸引したトナーの帯電量分布を測定する工程とを有するトナーの帯電量分布測定方法であって、前記トナーを吸引する工程は、前記トナー吸引口を前記トナー支持体に密着させて密閉空間を形成し、スポット状にトナーを吸引する工程であることを特徴とするトナーの帯電量分布測定方法。
(4)前記トナー吸引口は、先端が釣鐘型であることを特徴とする前記(3)記載のトナーの帯電量分布測定方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一成分現像剤に用いても、現像ローラを傷付けることなく正確な測定ができるトナーの帯電量測定装置およびトナーの帯電量分布測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のトナーの帯電量測定装置について図1を用いて説明する。
1はトナー吸引口、2は孔、3は現像ローラ等のトナー支持体、4は帯電量測定手段、7は電極、Gはガス吸引方向、Tはトナーである。
図1に示すように、本発明のトナーの帯電量測定装置はトナーを吸引するトナー吸引口1と吸引したトナーの帯電量を測定する帯電量測定手段4とからなっている。
トナー吸引口1は孔2を備えることで中空になっており、空気等のガスとともにトナーを吸引することでトナーTを採取可能になっている。
また、トナー吸引口1は先端が釣鐘型になっている。
したがって、トナー吸引口1をトナー支持体3に押し付けて密着させてもその力は分散され、トナー吸引口1の先端によってトナー支持体3が傷付くことはない構造となっている。
また、先端が釣鐘型であることにより、トナー吸引口1とトナー支持体3は面接触ではなく点接触となり、トナー支持体3と極小の密閉空間を形成することで負圧によりトナーTを吸引することができる。
これにより、現像ローラに強く付着する一成分現像剤であっても帯電量分布を測定することが可能となる。
なお、トナー吸引口1の先端にゴムキャップを備え、該ゴムキャップを介してトナー吸引口1とトナー支持体3とが点接触する構成にすれば、トナー支持体3が傷付くことがなくなりさらに好ましい。また、トナー吸引口1の材質自体をゴム等にすることもできる。
【0012】
帯電量測定手段4には、電極付着装置等を用いることができる。ハの字に位置した電極7の板上にガラスもしくはテープを取り付け、両電極間に任意の電圧をかけ、その電極間に吸引したトナーTを導入すると、導電性ガラスもしくは導電性テープ上に、帯電量の大きさに応じた位置でトナーTが付着する。付着させたガラスもしくはテープを電極から取り外し、光学顕微鏡で観察し、画像解析によって、付着位置、トナー粒子数および粒子径から帯電量分布を測定する。
【0013】
次に、トナーの帯電量分布測定方法について説明する。
本発明のトナーの帯電量分布測定方法は、トナー支持体3からトナー吸引口1を介してトナーTを吸引する工程と、吸引したトナーの帯電量分布を測定する工程とを有する。
そして、トナーを吸引する工程では、トナー吸引口1をトナー支持体3に密着させて密閉空間を形成し、スポット状にトナーを吸引する。
すなわち、トナー吸引口1はトナー支持体3に接触させた状態で移動させずにトナーTを採取する。
この方法によれば、トナー吸引口1をトナー支持体3上で移動させる場合に比べてトナーの採取量が極端に少なくなり、帯電量を測定してもトナーの個体差等に起因するバラツキが現れて再現性が十分でないように思える。
しかし、実際には非常に再現性に優れ、かつ、トナー支持体3を傷付けない帯電量測定方法となる。
その原因は必ずしも明らかではないが、密閉空間を形成して負圧で吸引することで、表層のトナーだけでなく深層のトナーまで採取していることにより再現性が確保されていると思われる。
【実施例】
【0014】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0015】
非磁性一成分トナーを用いる市販のレーザープリンタ(印字速度A4用紙24枚/分)を用いて無地画像を2枚印刷した後、ポリウレタン製の現像ローラが収納された現像装置を取り出した。
そして、当該現像ローラ上のトナーについて、実施例および比較例の吸引口を用いて採取し、帯電量測定手段(EPPING社製、商品名:「Q−test」)を用いて帯電量分布を測定した。
【0016】
<実施例1>
実施例1では、トナーを吸引するにあたって図2に示す吸引口を用いた。
図2は実施例1の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図である。
1aは先端が釣鐘型でテトラフルオロエチレン製の実施例1の吸引口、8はトナーをクラウド状に吹き上げるための直径0.5mmの空気供給孔、20は円柱状の空間である。
吸引口1aは、空間20を不図示の現像ローラに押し付けることで密閉し、空気供給口8から空気を供給することで空間20内にトナーをクラウド状に吹き上げ、孔2から吸引することで負圧によりトナーを採取する。
なお、空気供給口8による供給ガスの流速は60ml/分、孔2による吸引ガスの流速は100ml/分、吸引時間は5秒とした。
【0017】
<実施例2>
実施例2では、トナーを吸引するにあたって図3に示す吸引口を用いた。
図3は実施例2の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図である。
1bは先端が釣鐘型でテトラフルオロエチレン製の実施例2の吸引口である。
吸引口1bは、孔2を不図示の現像ローラに押し付けることで密閉し、吸引することで負圧によりトナーを採取する。
なお、孔2による吸引ガスの流速は100ml/分、吸引時間は5秒とした。
【0018】
<比較例1>
比較例1では、トナーを吸引するにあたって図4に示す吸引口を用いた。
図4は比較例1の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図である。
1cは先端が円筒型でテトラフルオロエチレン製の比較例1の吸引口、9は溝である。
吸引口1cは、溝9を不図示の現像ローラに押し付けて、空気供給口8から空気を供給することで溝9内にトナーをクラウド状に吹き上げ、孔2により吸引することでトナーを採取する。溝9は密閉されず開放されているが、吸引口1cを現像ローラ上でスライドさせることでトナーの吸引量の減少を補った。
なお、空気供給口8による供給ガスの流速は60ml/分、孔2による吸引ガスの流速は100ml/分、吸引時間は5秒とした。
【0019】
<比較例2>
比較例2では、トナーを吸引するにあたって図5に示す吸引口を用いた。
図5は比較例2の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図である。
1dは先端が釣鐘型でテトラフルオロエチレン製の比較例2の吸引口である。
吸引口1dは、溝9を不図示の現像ローラに押し付けて、空気供給口8から空気を供給することで溝9内にトナーをクラウド状に吹き上げ、孔2により吸引することでトナーを採取する。溝9は密閉されず開放されているが、吸引口1dを現像ローラ上でスライドさせることでトナーの吸引量の減少を補った。
なお、空気供給口8による供給ガスの流速は60ml/分、孔2による吸引ガスの流速は100ml/分、吸引時間は5秒とした。
【0020】
<比較例3>
比較例3では、トナーを吸引するにあたって図6に示す吸引口を用いた。
図6は比較例3の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図である。
1eは先端が釣鐘型でテトラフルオロエチレン製の比較例3の吸引口である。
吸引口1eは、溝9を不図示の現像ローラに押し付けて、孔2により吸引することでトナーを採取する。溝9は密閉されず開放されているが、吸引口1eを現像ローラ上でスライドさせることでトナーの吸引量の減少を補った。
なお、孔2による吸引ガスの流速は100ml/分、吸引時間は5秒とした。
実施例および比較例の主な条件を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例および比較例のトナーについて帯電量分布の測定を10回行い、以下の評価を行った。
【0023】
[現像ローラ傷]
目視により、現像ローラに傷がないかを調査した。
○:傷なし、×:傷あり
【0024】
[再現性]
10回の帯電量分布を10人に見せ、同じトナーの帯電量分布であると判断できた人数を調査した。
○:8人以上、△:4〜7人、×:3人未満
【0025】
【表2】

【0026】
[評価結果]
表2から明らかなように、実施例1〜2では現像ローラ傷および再現性において、実用上問題ない。
なお、実施例で吸引した箇所では現像ローラ上にトナーの取り残しがなかった。
これに対して、比較例1〜2では現像ローラ傷において実用上問題があり、再現性において実用上やや問題がある。
また、比較例3では現像ローラ傷および再現性において、実用上問題がある。
なお、比較例で吸引した箇所では現像ローラ上にトナーの取り残しがあった。
以上のように本発明によれば、一成分現像剤に用いても、現像ローラを傷付けることなく、再現性よく測定できるすなわち正確な測定をすることができるトナーの帯電量測定装置およびトナーの帯電量分布測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のトナーの帯電量測定装置を示す図
【図2】実施例1の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図
【図3】実施例2の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図
【図4】比較例1の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図
【図5】比較例2の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図
【図6】比較例3の吸引口を示す図であって、(a)は底面図、(b)は正面図
【図7】ブローオフ法によるトナーの帯電量測定装置を示す図
【符号の説明】
【0028】
1、1a〜1e トナー吸引口
2 孔
3 トナー支持体
4 帯電量測定手段
7 電極
8 空気供給口
9 溝
10 マグネット
20 円柱状の空間
C キャリア
G ガス吸引方向
T トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー支持体からトナーを吸引する中空のトナー吸引口と、吸引したトナーの帯電量を測定する帯電量測定手段とを有するトナーの帯電量測定装置であって、前記トナー吸引口は、前記トナー支持体と密閉空間を形成することを特徴とするトナーの帯電量測定装置。
【請求項2】
前記トナー吸引口は、先端が釣鐘型であることを特徴とする請求項1記載のトナーの帯電量測定装置。
【請求項3】
トナー支持体からトナー吸引口を介してトナーを吸引する工程と、
吸引したトナーの帯電量分布を測定する工程とを有するトナーの帯電量分布測定方法であって、
前記トナーを吸引する工程は、前記トナー吸引口を前記トナー支持体に密着させて密閉空間を形成し、スポット状にトナーを吸引する工程であることを特徴とするトナーの帯電量分布測定方法。
【請求項4】
前記トナー吸引口は、先端が釣鐘型であることを特徴とする請求項3記載のトナーの帯電量分布測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−150948(P2009−150948A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326727(P2007−326727)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】