説明

トナーの製造方法

極性媒質、有機溶媒及び界面活性剤を含む媒質を攪拌して溶媒エマルションを製造する工程と、溶媒エマルションに樹脂及び着色顔料を含むトナー構成成分を添加する工程と、トナー構成成分を含む溶媒エマルションから有機溶媒を除去する工程と、有機溶媒が除去された溶媒エマルションからトナー微粒子を回収する工程とを含むトナーの製造方法を開示する。この製造方法は、トナー構成成分を有機溶媒に先ず溶解した後、水相に分散させる既存のトナーの製造方法と異なって、溶媒エマルションを形成した後、トナー構成成分を投入して溶解させてトナー粒子を製造する方法であって、トナー構成成分の投入順序を調節することによってトナー構造の制御が容易で、小さな体積平均粒径、狭いサイズ分布、向上した定着性及び向上した高温保管安定性を持つトナーを製造できる。また、選択的に着色顔料をマスターバッチ形態として使用してカプセル化することによって、トナー表面電荷の調節が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナーの製造方法に係り、さらに詳細には、トナーの構造の制御が容易で、製造されたトナーの定着性と高温保管安定性との向上を同時に確保できるトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、印刷市場で高速印刷に適したトナー、特に体積平均粒径が小さくて狭いサイズ分布を持ち、かつ向上した定着性と高温保管安定性とを提供するトナーへの要求が増大しつつある。
【0003】
一般的にトナーは、バインダー樹脂として作用する熱可塑性樹脂に着色剤、電荷調節剤、染料、顔料、離型剤などを添加して製造される。また、トナーに流動性を付与するか、帯電制御またはクリーニング性などの物性を向上させるために、シリカや酸化チタンなどの無機または金属微粉末が外添剤としてトナーに添加される。
【0004】
かかるトナーは、物理的方法または化学的方法で製造できる。
【0005】
物理的方法としては粉砕法が代表的であり、従来、多く使われてきた。粉砕法は、ポリエステル樹脂などのバインダー樹脂に着色剤及び帯電制御剤などを溶融混合して、これらを均一に分散させたトナー組成物を得て、前記トナー組成物を粉砕及び分級することでトナーを製造する方法である。前記粉砕法は、使われる樹脂の種類などが制限されないという長所があるが、せん断力により樹脂を粉砕して粒子を製造するので多くのエネルギーを使用し、粒子の粒径を縮小するのに限界がある。また、製造された粒子のサイズにバラツキがあって粒子のサイズ分布が広いため、印刷される画像の画質改善のために、所定範囲を外れる大径及び小径の粒子を別途に分離する工程が追加されねばならない。また、添加剤が均一に分散されない場合には、トナーの流動性、現像性、耐久性、及び画像品質などが低下するという問題点もある。したがって、高速プリンタ用トナーの製造には適していない。
【0006】
一方、化学的方法には、懸濁重合法及び乳化凝集法を挙げることができる。
【0007】
懸濁重合法は、特許文献1に開示された内容であって、バインダー樹脂単量体を含むトナー材料を懸濁重合させることによってトナーを製造する方法である。前記懸濁重合法は、製造される粒子が球形であり、粒子のサイズを小さくすることができ、多くのエネルギーを使用しないという長所がある。しかし、前記懸濁重合法は、ラジカル開始剤でもって重合の可能なビニル系樹脂に、樹脂の種類が制限される。また、懸濁重合は、重合が完全に進みがたい。したがって、製造された粒子内に未反応単量体及び溶媒が残存して、粒子の表面に染み込んでトナー粒子の物性を低下させる恐れがあり、多くの揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)を放出させるという問題がある。
【0008】
乳化凝集法は、特許文献2及び3に開示された内容であって、エマルション重合反応を通じて微細乳化樹脂粒子組成物を製造した後、前記組成物を別途の分散液で顔料と共に凝集させてトナーを製造する方法である。前記乳化凝集法は、凝集条件を調節することによってトナー粒子の形態を非球形などの多様な形態に作ることができるという長所はある。しかし、この方法も乳化重合を伴うので、バインダー樹脂としてスチレン・アクリル共重合体のようなビニル系樹脂のみ使われるという制限があり、別途の分散液を製造する工程が付加されねばならない。
【0009】
前記化学的方法は、溶液中に重合が伴われるので、バインダー樹脂としてビニル系樹脂のみ使われうる。しかし、高速プリンタ用トナーは、ポリエステル樹脂を使用して製造することがさらに望ましい。ポリエステル樹脂は、スチレン・アクリル共重合体樹脂に比べて向上した顔料分散性、優秀な透明性、低い定着温度、狭いガラス転移温度範囲などの長所を持つため、高速プリンタ用またはカラープリンタ用に適するためである。
【0010】
したがって、ポリエステル樹脂を使用する化学的トナーの製造方法が最近多く研究された。
【0011】
例えば、特許文献4及び5は、有機溶媒にトナー構成成分を溶解させた後、界面活性剤を含む水相に分散させてトナー粒子を製造する方法を開示している。この場合、バインダー樹脂などの選択が自由で揮発性有機化合物の量が減少するという長所があるが、有機溶媒にトナー構成成分を予めいずれも添加せねばならないので、製造されるトナー粒子の構造を制御し難いという問題がある。
【0012】
したがって、前記従来技術が持つ問題点を乗り越えて、トナーの構造を制御して小さな体積平均粒径、狭いサイズ分布、向上した定着性及び向上した高温保管安定性を提供するトナーを容易に製造できる方法が依然として要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6177223号明細書
【特許文献2】米国特許第5916725号明細書
【特許文献3】米国特許第6268103号明細書
【特許文献4】特許第3640918号公報
【特許文献5】特許第3878537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする技術的課題は、小さな体積平均粒径、狭いサイズ分布、向上した定着性及び向上した高温保管安定性を同時に確保できるトナーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記のような課題を解決するために本発明は、極性媒質、有機溶媒及び界面活性剤を含む媒質を攪拌して溶媒エマルションを製造する工程と、前記溶媒エマルションに樹脂及び着色顔料を含むトナー構成成分を添加する工程と、前記トナー構成成分を含む前記溶媒エマルションから前記有機溶媒を除去する工程と、有機溶媒が除去された前記溶媒エマルションからトナー微粒子を回収する工程と、を含むトナーの製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の望ましい具現例によるトナーの製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の一具現例によるトナーの製造方法は、極性媒質、有機溶媒及び界面活性剤を含む媒質を攪拌して溶媒エマルションを製造する工程と、前記溶媒エマルションに樹脂及び着色顔料を含むトナー構成成分を添加する工程と、前記トナー構成成分を含む前記溶媒エマルションから前記有機溶媒を除去する工程と、有機溶媒が除去された前記溶媒エマルションからトナー微粒子を回収する工程とを含む。
【0018】
本具現例によるトナーの製造方法についてさらに具体的に説明すれば、まず反応器に極性媒質、有機溶媒及び界面活性剤を含む媒質を投入し、これらを攪拌して極性媒質に有機溶媒が分散された状態である溶媒エマルションを製造する。次いで、前記溶媒エマルションに樹脂、着色顔料、離型剤、電荷調節剤などを含むトナー構成成分を添加する。この時、前記トナー構成成分が溶解度差により分散された有機溶媒内に選択的に浸透してエマルションが得られる。次いで、前記トナー構成成分を含む微粒子エマルションを加熱して前記有機溶媒を除去し、常温に冷却した後、トナー微粒子を回収して洗浄及び乾燥して、乾燥されたトナー微粒子を得る。
【0019】
本具現例で前記トナー構成成分の有機溶媒に対する溶解度は極性媒質に対する溶解度より高いことが望ましく、さらに望ましくは、前記トナー構成成分は、前記極性媒質に不溶性である。かかる溶解度差によりトナー構成成分が選択的に有機溶媒に浸透する。
前記トナーの製造方法で、前記有機溶媒は前記極性媒質より沸点が低いことが望ましい。これによって、前記微粒子エマルションから有機溶媒を選択的に除去することが容易になる。
【0020】
前記微粒子エマルションから前記有機溶媒を除去する方法は、昇温、減圧または昇温と減圧との同時適用方法であることが望ましいが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、前記微粒子エマルションから有機溶媒を選択的に除去できる方法ならば特別に限定されない。
【0021】
さらに具体的に、前記有機溶媒は、前記極性媒質に比べて沸点が15℃以上低いことが望ましい。すなわち、前記有機溶媒と前記極性媒質との沸点は、圧力に関係なく15℃以上の差を持つことが望ましい。
【0022】
したがって、前記有機溶媒の除去が常圧で昇温により行われる場合、昇温温度の範囲は60ないし95℃であることが望ましい。前記温度が60℃未満である場合、有機溶媒の揮発が容易でないという問題があり、前記温度が95℃を超過する場合、極性媒質の揮発があまりにも多くなるという問題がある。
【0023】
前記トナーの製造方法に使われる極性媒質は、水;グリセロール;1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−プロピレングリコールなどのグリコール類;1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ソルビトール、ポリビニルアルコール及びその共重合体などの多価アルコール類;またはこれらの混合物などが望ましいが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使われる極性媒質であって前記有機溶媒と不混和性(immiscible)のものならば特別に限定されない。望ましくは、前記極性媒質は水である。
【0024】
前記トナーの製造方法に使われる有機溶媒は、微粒子が製造される時に樹脂の粘度を低めて粒子の形成が容易になるように助力する役割を担い、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、メチルエチルケトン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムまたはこれらの混合物などが望ましいが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、前記極性媒質と不混和性であり、前記極性媒質より沸点が低いものならば特別に限定されない。
【0025】
前記トナーの製造方法で、前記トナー構成成分は同時にまたは順次に添加されることが望ましい。樹脂及び着色顔料などの構成成分を実施者の意図によって順序を取り替えて順次に添加するか、または同時に添加できる。かかるトナー構成成分の添加順序によって製造されるトナーの構造が変わるので、必要に応じてトナーの構造を制御することが容易である。
【0026】
例えば、一般的に極性作用基を持つ着色顔料がトナー表面の周囲に主に存在すれば、トナーの帯電速度及び帯電量を低減させる問題をもたらす。しかし、本願発明のトナーの製造方法では、トナー構成成分の添加順序を着色顔料及び樹脂の順序に設定することによって、着色顔料がトナーの内部に主に存在するようにトナー構造を変更できる。
【0027】
前記トナー構成成分が溶媒エマルションに添加される性状は特別に限定されず、例えば、微細な樹脂粉末の形態に粉砕されて添加されてもよく、これらが補助溶媒に溶解された状態で添加されてもよい。
【0028】
前記トナー構成成分が溶解された状態で添加される場合に、前記溶解に使われる補助溶媒は、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、メチルエチルケトン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどが望ましい。
【0029】
前記トナーの製造方法に使われる樹脂は、ポリエステル樹脂、スチレン系共重合体樹脂、エポキシ系樹脂またはこれらの混合物などが望ましいが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使われる樹脂ならば特別に限定されない。
【0030】
前記トナーの製造方法に使われる樹脂は、水分散性作用基を含むことができる。かかる水分散性作用基は、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基及び硫酸基からなる群から選択された一つ以上の作用基の金属塩形態を含み、例えば、スルホン酸ナトリウム、カルボン酸塩ナトリウムなどである。
【0031】
望ましくは、本発明に使われるポリエステル樹脂は、6,000ないし100,000の重量平均分子量を持ち、PDI(多分散性指数)であるMw/Mn値が2ないし15であり、樹脂のMz/Mwが3ないし20であり、酸価が約2ないし20であり、ジカルボン酸残基を基準に、ジカルボン酸残基総量に対してスルホン酸ナトリウム陰イオン基を含むジカルボン酸残基の含有量が約0.05ないし0.5モル%であり、THF(テトラヒドロフラン)溶媒に対する不溶分の含有量が40ないし0.01重量%であるポリエステル樹脂が望ましく、前記不溶分の含有量は20ないし0.01重量%がさらに望ましく、10ないし0.01重量%がさらに望ましい。
【0032】
前記トナーの製造方法に使われる着色顔料は、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料、ブラック顔料、白色顔料またはこれらの混合物などを色相、彩度、明度、耐候性、透明度、トナー樹脂との親和性などを考慮して適宜に選択して使用できる。
【0033】
前記着色顔料の種類には、下記を例として挙げることができる。すなわち、ブラック顔料は、SB4、SB7、またはSB9などのブラックを使用するか、酸化チタンまたはカーボンブラックなどが使われうる。シアン顔料は、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキン化合物、または塩基染料レーク化合物などが使われうる。具体的に、C.I.顔料ブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、または66などが使われうる。マゼンタ顔料は、縮合窒素化合物、アントラキン、キナクリドン化合物、塩基染料レーク化合物、ナフトール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、チオインジゴ化合物、またはペリレン化合物などが使われうる。具体的に、C.I.顔料レッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、または254などが使われうる。イエロー顔料は、縮合窒素化合物、イソインドリノン化合物、アントラキン化合物、アゾ金属錯体、またはアリルイミド化合物などが使われうる。具体的に、C.I.顔料イエロー12、13、14、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、または168などが使われうる。これらの選択基準は、カラー座標や色の濃度などを考慮して適宜に選択する。
【0034】
着色顔料は、過量で含まれる場合、樹脂組成物の弾性が強くなって、微粒子の形成が難しいか、または粒度の分布が広くなる恐れがあり、少量で含まれる場合には、トナーの着色度が低くて、印刷時に色感表現が不十分な問題点がありうる。望ましくは、前記着色顔料の含有量は、トナー総重量に対して2ないし15重量%、さらに望ましくは4ないし12重量%である。
【0035】
前記トナーの製造方法で、前記着色顔料はそのまま使われてもよいが、着色顔料が樹脂内に分散されたマスターバッチ形態として使われることが望ましい。このようにマスターバッチ形態として使用することによって、着色剤の表面露出を抑制してトナー粒子の帯電性能を向上させることができる。
【0036】
マスターバッチは、高濃度の顔料が均一に分散された樹脂組成物を意味するものであって、前記マスターバッチは、高温高圧下で着色顔料及び樹脂を混練するか、樹脂を溶剤に溶解し、前記形成された溶液に着色顔料を添加した後、高いせん断力を加えて着色顔料を分散させる方法により製造される。後者の方法である場合には、溶剤をトナー使用前にいずれも除去せねばならない。マスターバッチは、単純混合に比べて顔料の分散が均一になる。注目すべき点は、マスターバッチが媒質への分散時に非常に小さなサイズに粉砕されるが、マスターバッチに使われる樹脂は溶媒に完全に溶けないという点である。すなわち、マスターバッチ粒子のサイズが小さくなっても、本工程に適用する場合に、着色顔料粒子の表面が樹脂で包まれている構造を維持できる。
【0037】
一般的に、顔料に多量に存在する極性基がトナー粒子の表面に現れる場合、トナー内に溜まる電荷をかえって放電させる機能を持つようになり、結果的にトナーの帯電速度及び帯電量を低減させる結果をもたらす。しかし、マスターバッチを使用するトナーの場合、高濃度の顔料がポリエステル樹脂内に均一に分散されるので、トナー表面で顔料の直接的な露出を回避することができる。すなわち、顔料粒子がポリエステル樹脂によりカプセル化された効果を持つようになって、トナーの電荷の調節に非常に有利である。
【0038】
本発明で使われるマスターバッチのうち、顔料の含有量は10ないし60重量%が望ましく、20ないし40重量%がさらに望ましい。
【0039】
本発明で前記トナー構成成分は、離型剤、電荷調節剤及び外添剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0040】
前記離型剤は、トナー画像の定着性を向上させることができる添加剤であって、エステルワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ビーズワックス、パラフィンワックスまたはこれらの混合物などが使われうる。離型剤の含有量が過度に低い場合、オイルを使用せずにはトナー粒子を定着させ難く、離型剤の含有量が過度に高い場合、長期保管時にトナーの固まり現象が発生して望ましくない。
【0041】
前記トナーに含まれる離型剤の含有量は0.1ないし30重量%が望ましく、さらに望ましくは1ないし10重量%である。
【0042】
前記電荷調節剤は、最終トナーに付与しようとする電荷によって適宜に選択されて使われ、正電荷調節剤、負電荷調節剤またはこれらの混合物などが使われうる。
正電荷調節剤としては、化学構造上、アジン系と4級アンモニウム塩系とに大別される。アジン系の正電荷調節剤は、その色が主に黒色であるため、黒色トナーの製造時のみに使用でき、4級アンモニウム塩を使用する場合には、白色の粉末状であるため、トナーカラーに制約がない。負電荷調節剤は、化学構造上、大きくtert−ブチルサリチル酸金属塩系の白色電荷調節剤とアゾ系の黒色電荷調節剤が多く使われる。tert−ブチルサリチル酸金属塩内の中心金属としては、クロム、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、ボロン、アセチルボロンなどが使われ、アゾ系の場合には、金属としてクロム、鉄などが主に使われる。前記金属塩は、トナーに含まれる場合に、帯電速度、帯電量などを調節できる。
【0043】
本発明で前記電荷調節剤の含有量が少ない場合、トナーの帯電速度が遅くなって帯電量が少ない問題があり、含有量が多い場合、過度に電荷が多くなって画像に歪曲が生じる問題点がありうるので、前記電荷調節剤の含有量は、トナー総重量に対して0.1ないし8重量%が望ましく、0.3ないし5重量%がさらに望ましい。
【0044】
本具現例によるトナーの製造方法で、前記トナー構成成分が樹脂及び着色顔料以外に離型剤、電荷調節剤及び外添剤などをさらに含む場合に、前記トナー構成成分は、樹脂及び離型剤の順序に溶媒エマルションに添加されるか、離型剤及び樹脂の順序に溶媒エマルションに添加されうる。また、前記着色顔料及び電荷調節剤は、前記溶媒エマルションに樹脂と共に、または樹脂の添加後に順次に添加されうる。
【0045】
本具現例で前記極性媒質、有機溶媒及び界面活性剤を含む媒質が増粘剤をさらに含むことが望ましい。
【0046】
前記増粘剤は極性媒質に溶解されるものであって、極性媒質100重量部に対して0.01ないし5重量部の量で添加されることが望ましく、前記バインダー樹脂100重量部に対して0.1ないし10重量部の量で添加されることがさらに望ましい。さらに具体的に、前記増粘剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの陰イオン共重合体、ポリビニルピロリドンの陽イオン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の共重合体、ゼラチン、キトサン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、寒天またはこれらの混合物などが望ましい。
【0047】
本発明で前記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及びこれらの混合物からなる群から選択される一つ以上の界面活性剤であって、HLB(親水性親油性バランス)値が10以上のものならば、特別に限定されない。
【0048】
さらに具体的に、前記界面活性剤は、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリエチレングリコールコカミン、ポリエチレングリコールソルビタンヘキサノエート、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、タローアミンアセテート、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリプロピレングリコール、ステアミンアセテート、タローアミンアセテート、ステアリン酸グリセリル、ラノリン酸ポリエチレングリコール、パルミチン酸ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールヒドロキシエチルコカミン、ラウリン酸ポリエチレングリコールグリセリル、ポリエチレングリコールステアリン酸、トリエチルアミンオレエート、ポリエチレングリコールタローアミン、ラウリン酸サッカロース、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、塩化アルキルアンモニウム、臭化アルキルアンモニウム、またはこれらの混合物などが望ましい。
【0049】
また、前記トナー構成成分は、高級脂肪酸や脂肪酸アミド、またはその金属塩などをさらに含むことができる。このような、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、またはその金属塩は各種現像特性の劣化を防止して高品質の画像を得るために適宜に使われうる。
【0050】
前記トナー構成成分には、非常に小さな有機または無機粒子である流動化剤などの外添剤をトナー粒子の表面にコーティングして添加できる。
【0051】
外添剤は、トナーとして使われる粒子の流動性を向上させる役割を担うか、帯電量及び帯電速度などの帯電特性を調節するものとして、微細に分級された疎水性シリカ粒子;親水性シリカ粒子;ストロンチウム、カルシウムなどの伝導性物質が表面にコーティングされたシリカ粒子;半導体である酸化インジウム、酸化アンチモンスズなどが表面にコーティングされたシリカ粒子;酸化チタン粒子;ストロンチウム、カルシウムなどの伝導性物質が表面にコーティングされた酸化チタン粒子;半導体である酸化インジウム、酸化アンチモンスズなどが表面にコーティングされた酸化チタン粒子;ステアリン酸亜鉛粒子;ステアリン酸マグネシウム粒子;アルミナ粒子;ポリメチルメタクリレート粒子;ポリスチレン粒子;シリコン粒子;などが使われうる。
【0052】
本具現例によるトナーの製造方法で得られる前記分離されたトナー微粒子は、体積平均粒径が2.0ないし8.0μmであり、80%スパン値が0.88以下であることが望ましく、0.80以下であることがさらに望ましい。
【0053】
前記80%スパン値が0.9を超過する場合、トナー粒径の不均一性が帯電特性の不良や機器内の汚染などを引き起こして使用し難く、これを使用するためには、一定範囲を外れるサイズを持つトナーを分離する分級という追加工程を経ねばならない。
【0054】
また、前記分離されたトナー微粒子の球形化度は0.95ないし0.99範囲であることが望ましい。
【0055】
本具現例の方法で製造されたトナーがキャリア(固形運搬体粒子)をさらに含むこともできる。前記キャリアは、磁性体が絶縁物質で被覆されている構造であって、さらに具体的に、絶縁物質で被覆されたフェライト、絶縁物質で被覆されたマグネタイト、絶縁物質で被覆された鉄粉末またはこれらの混合物などが望ましい。
【0056】
本具現例によるトナーの製造方法で使われる界面活性剤、極性媒質、有機溶媒、補助溶媒及び/または増粘剤の種類によって、物理的に同じせん断力を加える場合にも非球形の多様な形状を持つトナーを製造でき、有機溶媒を除去する温度を変更することによっても多様な形状を持つトナーを製造できる。例えば、補助溶媒を添加するなどの方法で溶媒の組成を変化させて非球形トナー粒子を製造できる。非球形トナー粒子は、掃除(クリーニング)工程で機器誤作動問題を容易に解決できる長所がある。
【0057】
以下、望ましい実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
下記の実施例及び製造例で使われる用語及び樹脂、トナー粒子などの各種物性は別途に定義されない場合、下記の方法で測定される。
【0059】
体積平均粒径の測定
体積平均粒径は、コールターマルチサイザー(Coulter Electronics Co.,Ltd.,米国フロリダ州のセントピーターズバーグ所在)で測定した。前記コールターマルチサイザーにおいて、アパーチャ(開口)は100μmを利用し、電解液であるISOTON−II(Beckman Coulter社製)50〜100mlに界面活性剤を適正量添加し、これに測定試料10〜15mgを添加した後、超音波分散器で1分間分散処理することによって試料を製造した。
【0060】
体積平均粒径(L)
Powder Technology Handbook(K.Gotoh et al.,2nd Edition,Marcell Dekker Publications,1997)の3頁ないし13頁に定義された用語である。
【0061】
80%スパン値の測定
80%スパン値は、粒子のサイズ分布を規定する指数であって、体積を基準に10%に該当する粒径、すなわち、粒径を測定して小さな粒子から体積を累積する場合、総体積の10%に該当する粒径をd10、50%に該当する粒径をd50、90%に該当する粒径をd90と定義し、粒子サイズ分布度で前記値を求め、下記の数式1によりその値を求めた。
[数式1]
80%スパン値=(d90−d10)/d50
ここで、80%スパン値が小さいほど狭い粒子分布を表し、大きいほど広い粒子分布を表す。
【0062】
球形化度の測定
FPIA−3000(シスメックス社製)を利用して測定した。FPIA−3000を利用した球形化度の測定において、測定試料の製造は、蒸溜水50〜100mlに界面活性剤を適正量添加し、これにトナー粒子10〜20mgを添加した後、超音波分散器で1分間分散処理することによって行われた。
【0063】
球形化度は、下記の数式2によりFPIA−3000で自動的に求められる。
[数式2]

前記式で、面積(area)は投影されたトナーの面積を意味し、周囲長(perimeter)は、投影されたトナーの面積と同じ面積を持つ円の周囲の長さを意味する。この値は0〜1値を持つことができ、1に近いほど球形を意味する。
【0064】
ガラス転移温度(Tg、℃)の測定
示差走査熱量計(Netzsch社製)を使用して、試料を10℃/分の加熱速度で20℃から200℃まで昇温させた後、20℃/分の冷却速度で10℃まで急冷させた後、再び10℃/分の加熱速度で昇温させて測定した。得られた吸熱曲線付近のベースラインとの各接線の中央値をTgとした。
【0065】
酸価の測定
酸価(mgKOH/g)は、樹脂をジクロロメタンに溶解させた後、冷却させて0.1N KOHメチルアルコール溶液で滴定して測定した。
【0066】
帯電量の測定
帯電量は、ブローオフ粉体帯電量の測定装置としてVertex Charge Analyzer 150(Vertex Image Products、ペンシルベニア州のユーコン所在)を使用して測定した。
【0067】
ブローオフ法では、両端に網をかけた円筒容器内に粉体とキャリアとの混合体を入れて、一端から高圧ガスを吹き込んで粉体とキャリアとを分離し、網の目から粉体のみブローオフ(噴出)する。この時、粉体が容器の外部に持っていった帯電量と等量であり逆の極性を持つ帯電量がキャリアに残る。また、この電荷による電束すべてがファラデー箱によりコンデンサーに集まり、その分量だけコンデンサーが充電される。コンデンサー両端の電位を測定することによって、粉体の電荷量(Q)を下記の数式3により求める。
[数式3]
Q=CV
ここで、Cはコンデンサー容量であり、Vはコンデンサー両端の電圧であり、Qは粉体の電荷量である。
【0068】
帯電速度は、キャリアとトナー粒子とを混合しつつ両物質の間に発生する電荷量を混合にかかる時間で割ることによって測定される。初期帯電速度は、電荷量がトナー上に形成される速度を意味するが、本願発明での初期帯電速度は、キャリアとトナーとの混合時間が1分を経過した後、測定した電荷量で計算した。
【0069】
水分散性作用基を持つポリエステル樹脂の合成
製造例1:ポリエステル樹脂1の合成
攪拌器、温度計、コンデンサー及び窒素注入口付きの3L反応器をオイル槽内に設けた。前記反応器にジメチルテレフタレート0.5モル、ジメチルイソフタレート0.495モル、ジメチル5−スルホイソフタレートナトリウム塩0.005モル、1,2−プロピレングリコール2.3モル及びトリメリット酸0.02モルをそれぞれ投入した。次いで、重合触媒としてチタン酸テトラブチルを単量体総重量に対して500ppmの量で投入した。次いで、反応器の攪拌速度を100rpmに維持しつつ温度を150℃まで高めた。以後、約5時間反応を進めた。エステル反応の副産物であるメタノールを、それ以上コンデンサーで得られなければ、反応温度を220℃まで高めて反応器の圧力を0.1torrに減圧して、15時間さらに反応させた。
【0070】
反応完了後、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を利用してポリエステル樹脂1のガラス転移温度(Tg)を測定した結果、前記転移温度は65℃であった。これをテトラヒドロフラン(THF)に溶解した結果、不溶性のゲル成分が、ポリエステル総重量に対して8重量%であった。酸価を測定した結果、5mgKOH/gであった。また、ポリスチレン基準試料を使用してGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定したポリエステル樹脂1の数平均分子量は4500であり、PDI(多分散性指数)は3.5であり、z−平均分子量は120,000であり、製造されたポリエステル樹脂は、ジカルボン酸残基を基準にジカルボン酸残基総量に対して、スルホン酸ナトリウム陰イオン基を含むジカルボン酸残基の含有量が0.3モル%であった。
【0071】
着色顔料マスターバッチの製造
製造例2:シアン顔料マスターバッチ1の製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1と、ブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:3、色指数(CI)no.74160、大日本インキ社(DIC)製品)とを重量基準で6:4で混合した後、エチルアセテートを前記樹脂100重量部に50重量部の割合で添加して約60℃に昇温させた後、ニーダー(kneader)で攪拌しつつ混合させた。次いで、前記混合物を真空装置が連結された二軸押出器を利用して50rpmの速度で混合しつつ、真空装置を利用して溶媒であるエチルアセテートを除去することによって、シアン顔料マスターバッチ1を得た。
【0072】
実質的に球形のトナー粒子の製造
実施例1:シアントナーの製造
コンデンサー、温度計及びインペラ型攪拌器を装着した、加圧可能な1L反応器に蒸溜水400g、ポリビニルアルコール10g(P−24;DC Chemical Co.製、韓国・ソウル所在)、中性界面活性剤7g(tween 20、Aldrich Chemical Company製、米国ウィスコンシン州のミルウォーキー所在)、及び陰イオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム4.2g(純正化学株式会社製、東京所在)を入れて、70℃の温度で500rpmの速度で攪拌して固形分を完全に溶解させた。前記水溶液にメチルエチルケトン100g(Aldrich Chemical Company製、米国ウィスコンシン州・ミルウォーキー所在)を混合して、乳白色の溶媒エマルションを得た。
【0073】
次いで、前記反応器に製造例1で合成したポリエステル樹脂1 85g、カルナバワックス(SX−70;max Chemical製、韓国・大田所在)5g、製造例2で製造したシアン顔料マスターバッチ1 15g及び、電荷調節剤2g(N−23;HB Dinglong社製、中国・湖北所在)を順次に投入した。この時、前記ポリエステル樹脂1は約1mmの大きさに粉砕して使用した。
【0074】
前記内容物を還流状態で72℃に加熱して、3時間1000rpmで攪拌させてエマルションを得た。攪拌後、反応器の底部に在った樹脂が完全に溶解されて安定したエマルションが得られたことを確認した。
【0075】
次いで、前記エマルションの攪拌速度を300rpmに減速し、反応器内の温度を90℃に加熱しつつ、100mmHgの部分減圧状態で有機溶媒であるメチルエチルケトンを除去した。
【0076】
4時間経過後、除去されたメチルエチルケトンの量を確認して、添加されたメチルエチルケトンがいずれも除去されたことを確認した後、前記エマルションを25℃に冷却させた。
【0077】
次いで、通常のろ過装置を使用してエマルションからトナー粒子を分離させた。フィルターケーキを蒸溜水に再分散して蒸溜水で4回再ろ過して、フィルターケーキに含まれていた界面活性剤と増粘剤とをいずれも除去する洗浄工程を繰り返した。
【0078】
再ろ過されたトナー粒子を40℃の真空オーブンで1日間乾燥させ、乾燥されたトナー粒子を得た。
【0079】
得られたトナー粒子を分析した結果、ポリエステル樹脂87.9重量%、着色顔料5.6重量%、カルナバワックス4.6重量%及び電荷調節剤1.9重量%を含むことと分かった。
【0080】
実施例2:シアントナーの製造
カルナバワックス、ポリエステル樹脂1、シアン顔料マスターバッチ1及び電荷調節剤の順序に投入順序を変更したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0081】
得られたトナー粒子を分析した結果、ポリエステル樹脂87.9重量%、着色顔料5.6重量%、カルナバワックス4.6重量%及び電荷調節剤1.9重量%を含むことと分かった。
【0082】
実施例3:シアントナーの製造
製造例2で製造したシアン顔料マスターバッチ1 15gの代りに、ブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:3、色指数(CI)no.74160、大日本インキ社(DIC)製品)6gを使用し、製造例1で合成したポリエステル樹脂1 85gの代りに、マスターバッチのポリエステル樹脂量を考慮してポリエステル樹脂1 94gを使用したことを除いては、実施例2と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0083】
実質的に非球形のトナー粒子の製造
実施例4:シアントナーの製造
蒸溜水400gの代りに、蒸溜水360gと1,3−ブチレングリコール40gとの混合物を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でシアントナーを製造した。
【0084】
前記トナーを走査電子顕微鏡で観察した結果、粒子形態は若干伸びた形態であった。
【0085】
比較例1:シアントナーの製造
コンデンサー、温度計及びインペラ型攪拌器を装着した、加圧可能な1L反応器1に蒸溜水400g、ポリビニルアルコール10g(P−24;DC Chemical Co.製、韓国・ソウル所在)、中性界面活性剤7g(tween 20、Aldrich Chemical Company製、米国ウィスコンシン州・ミルウォーキー所在)、及び陰イオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム4.2g(純正化学株式会社製、東京所在)を入れて、70℃の温度で500rpmの速度で攪拌して固形分を完全に溶解させた。
【0086】
反応器2にメチルエチルケトン300g(Aldrich Chemical Company製、米国ウィスコンシン州のミルウォーキー所在)を投入し、カルナバワックス(SX−70;maxChemical製、韓国・大田所在)5g、製造例1で合成したポリエステル樹脂1 94g、ブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:3、色指数(CI)no.74160、大日本インキ社(DIC)製品)6g、電荷調節剤2g(N−23;HB Dinglong社製、中国・湖北所在)をいずれも投入して、約65℃に加熱して投入した内容物を溶解及び分散した。この時、前記ポリエステル樹脂は約1mmの大きさに粉砕して使用した。
【0087】
反応器2の内容物を、反応器1に200rpmの速度で攪拌しつつ投入した後、攪拌速度を高めて1000rpmで攪拌しつつ混合物を形成した。次いで、還流状態で前記混合物を72℃に加熱して3時間攪拌させてエマルションを得た。攪拌後、反応器の底部に存在した樹脂が完全に溶解されて安定したエマルションが得られたことを確認した。
次いで、前記エマルションの攪拌速度を300rpmに減速し、反応器内の温度を90℃に加熱しつつ、100mmHgの部分減圧状態で有機溶媒であるメチルエチルケトンを除去した。
【0088】
4時間経過後、除去されたメチルエチルケトンの量を確認して、添加されたメチルエチルケトンがいずれも除去されたことを確認した後、前記エマルションを25℃に冷却させた。
【0089】
次いで、通常のろ過装置を使用してエマルションからトナー粒子を分離させた。フィルターケーキを蒸溜水に再分散し、蒸溜水で4回再ろ過してフィルターケーキに含まれていた界面活性剤と増粘剤とをいずれも除去する洗浄工程を繰り返した。
【0090】
再ろ過されたトナー粒子を40℃の真空オーブンで1日乾燥させ、乾燥されたトナー粒子を得た。
【0091】
以下、前記実施例及び比較例で製造したトナー粒子の物性を前記方法で評価した。
【0092】
トナー粒子の体積平均粒径、80%スパン値及び球形化度の測定
前記実施例1〜4及び比較例1でそれぞれ製造されたシアントナー粒子の体積平均粒径、80%スパン値及び球形化度を評価し、その結果を下記の表1に表した。
【0093】
【表1】

【0094】
前記表1に見られるように、本願発明の実施例1〜4によるトナー粒子は、比較例1のトナー粒子に比べて小さな体積平均粒径及び狭いサイズ分布を持つことが分かる。
【0095】
また、前記実施例1で使われるメチルエチルケトンの量(100g)と比較例1で使われるメチルエチルケトンの量(300g)との比較から分かるように、本具現例によるトナーの製造方法は、従来技術に比べて有機溶媒の使用量を顕著に低減させることができる。
【0096】
また、前記実施例4に見られるように、溶媒の組成(すなわち、補助溶媒の添加)を変化させて、実質的に非球形のトナー粒子を容易に製造できる。
【0097】
外添後のトナー粒子の帯電量の測定
前記実施例1〜3及び比較例1でそれぞれ製造されたシアントナー粒子100重量部に、シリカ(TG 810G、キャボット社製)1重量部をロールミルで15分間混合して、外添剤を含むトナー粒子を製造した。このようにして得た外添剤を含むトナーに対して、ブローオフ法で帯電量を測定した。
【0098】
測定結果を下記の表2に表した。
【表2】

【0099】
前記表2に見られるように、マスターバッチを使用した実施例1及び2の場合には、マスターバッチを使用していない実施例3及び比較例1の場合に比べて帯電速度及び帯電量の低減が相対的に抑制された。したがって、マスターバッチの使用で表面電荷の調節が容易であることが分かる。
【0100】
また、マスターバッチの使用は、前記結果から分かるように、着色顔料がトナーの外部にはみ出すことを防止する。その結果、トナー製造時に着色顔料分離のための追加工程を省略できる。
【0101】
高温保管安定性の評価
前記実施例1ないし3及び比較例1で製造したトナー粒子9.75g、シリカ(TG 810G;キャボット社製)0.2g、及びシリカ(RX50;デグサ社製)0.05gを25mlのガラス瓶に入れて、50℃/80%水分条件で72時間放置した後、これを肉眼で観察することによって高温保管安定性を評価した。前記評価結果をそれぞれ◎、○、△、×で表示して下記表3に表したが、これらそれぞれは下記の意味を持つ。
◎:凝集トナーがなく、したがって全く問題がない
○:軽い凝集が在るが、振ればすぐなくなって実用上問題がない
△:軽い凝集が在って、振っても容易になくならず、実用上一部問題がある
×:強い凝集体が在って、容易になくならず、実用上問題がある
【0102】
定着温度範囲の評価
前記実施例1ないし3及び比較例1で製造したトナー粒子9.75g、シリカ(TG 810G;キャボット社製)0.2g、及びシリカ(RX50;デグサ社製)0.05gを混合して製造したトナー組成物を使用して、三星CLP−510プリンタで30mmx40mmソリッド(Solid)像の未定着画像を集めた。次いで、定着温度を任意に変更できるように改造された定着試験器で、定着ローラの温度を変化させつつ前記未定着画像の定着性を評価した。広い定着温度範囲は優秀な定着性を意味する。評価結果を下記の表3に表した。
【0103】
【表3】

【0104】
前記表3に示されたように、本願発明の実施例1ないし3は、比較例1に比べて向上した定着性及び向上した高温保管安定性を示す。
【0105】
定着性の場合には、実施例1ないし3いずれも比較例1に比べて高温定着温度が20℃ほど向上して、定着温度範囲が拡大した。したがって、高温の定着ローラとの接触時間が長くなる場合にも、実施例1ないし3のトナーが定着ローラについて汚染を発生させる可能性が、比較例1のトナーに比べて低い。
【0106】
高温保管安定性の場合には、ワックスがトナー内部に主に分布する実施例2及び3のトナーの高温保管安定性が最も優秀であり、ワックスの分布が不規則な比較例1のトナーの高温保管安定性が最も劣った。
【0107】
結果として、本願発明のトナーの製造方法は、従来技術に比べて小さな体積平均粒径、狭いサイズ分布、向上した定着性及び向上した高温保管安定性を持つトナーを製造できる。また、選択的に着色顔料をマスターバッチ形態として使用してカプセル化することによって、トナー表面電荷の調節が容易である。
【0108】
以上で本発明による望ましい実施例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性媒質、有機溶媒及び界面活性剤を含む媒質を攪拌して溶媒エマルションを製造する工程と、
前記溶媒エマルションに樹脂及び着色顔料を含むトナー構成成分を添加する工程と、
前記トナー構成成分を含む前記溶媒エマルションから前記有機溶媒を除去する工程と、
有機溶媒が除去された前記溶媒エマルションからトナー微粒子を回収する工程と、を含むトナーの製造方法。
【請求項2】
前記極性媒質は、前記トナー構成成分に対して不溶性である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記極性媒質は、水;グリセロール;1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ソルビトール、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコール共重合体からなる群から選択された一種以上である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記極性媒質は水である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒は、前記極性媒質と混和せず、沸点が前記極性物質より低い請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒は、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、メチルエチルケトン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム及びこれらの混合物からなる群から選択される一つ以上の溶媒である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
前記トナー構成成分が同時にまたは順次に添加される請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂は、ポリエステル樹脂、スチレン系共重合体樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群から選択される一つ以上の樹脂を含む請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂は水分散性作用基を含む請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
前記水分散性作用基は、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基及び硫酸基からなる群から選択された一つ以上の作用基の金属塩形態を含む請求項9に記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
前記着色顔料は、樹脂内に着色顔料が分散されたマスターバッチ形態で添加される請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項12】
前記着色顔料は、マスターバッチの総重量に対して10ないし60重量%の範囲で含まれる請求項11に記載のトナーの製造方法。
【請求項13】
前記トナー構成成分は、離型剤、電荷調節剤及び外添剤からなる群から選択される一つ以上の添加剤をさらに含む請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項14】
前記トナー構成成分は、樹脂及び離型剤の順序に添加されることを特徴とする請求項13に記載のトナーの製造方法。
【請求項15】
前記トナー構成成分は、離型剤及び樹脂の順序に添加される請求項13に記載のトナーの製造方法。
【請求項16】
前記トナー構成成分のうち着色顔料及び電荷調節剤は、樹脂と共にまたは樹脂の添加後に順次に添加される請求項13に記載のトナーの製造方法。
【請求項17】
前記トナー微粒子の体積平均粒径は、2.0ないし8.0μmであり、80%スパン値が0.88以下である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項18】
前記トナー微粒子の球形化度は、0.95ないし0.99範囲である請求項1に記載のトナーの製造方法。

【公表番号】特表2010−540984(P2010−540984A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525767(P2010−525767)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005584
【国際公開番号】WO2009/038404
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(508130188)サムスン ファイン ケミカルズ カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】