説明

トナー及びその製造方法、並びに定着装置及び画像形成装置

【課題】非加圧で短時間のレーザ定着方式の定着装置に用いても、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現し得るレーザ定着用トナーを実現する。
【解決手段】トナー203は、レーザ光201を転写材204上の未定着のトナー像に照射し、トナー像を構成するトナーを、光のエネルギーを用いて溶融させ、転写材上に定着させる定着装置4において用いられる、トナー母粒子に少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナーであって、トナー母粒子にレベリング剤を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙等の記録媒体上に形成された未定着画像をレーザ光照射手段により定着する定着装置を備えた、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置等に用いるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンタ)には、記録媒体(記録紙又は、用紙)上に形成されたトナー像を熱溶融することによって用紙上に定着させる定着装置が備えられている。この定着装置の一例として、定着ローラと加圧ローラとから構成されるローラ対方式の定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
定着ローラは、アルミニウム等の金属製中空芯金の表面に弾性層が形成されたローラ部材であり、この芯金の内部に熱源としてハロゲンランプが配置された構成である。そして、温度制御装置が、定着ローラ表面に設けられた温度センサから出力される信号に基づいてハロゲンランプをオン/オフ制御することによって、定着ローラ表面の温度を制御する。
【0004】
また、加圧ローラは、芯金上に被覆層としてシリコンゴム等の耐熱性弾性層を設けたローラ部材である。この加圧ローラは、定着ローラ周面に対して圧接され、加圧ローラの前記弾性層の弾性変形によって、定着ローラと加圧ローラとの間にニップ領域が形成される。
【0005】
前記の構成において、定着装置では、未定着のトナー像が形成された用紙を定着ローラと加圧ローラとの間のニップ領域に挟み込み、これら両ローラを回転させることによって前記用紙を搬送するとともに、定着ローラ周面の熱により用紙上のトナー像を溶融させて用紙に定着させる。
【0006】
しかし、従来のローラ対方式では、電源投入直後において、定着ローラ及び加圧ローラが室温状態にあるため、電源ON後、所定温度にまで上昇させる必要があり、ウォームアップ時間を要する。また、コピー動作が行われていない待機状態であっても、ローラ表面を所定温度に保持する必要があるため、コピー動作が行われていない時も常にローラを加熱していなければならない。よって、従来のローラ対方式では、コピー動作以外にも無駄なエネルギーを消費する。
【0007】
そこで、無駄なエネルギーを消費せず効率よくトナーのみを定着させる方法として、レーザーパワーを利用してトナーを定着させる定着装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2に記載の定着装置では、複数のレーザを用いてトナーを加熱することで、1つの弱いレーザだけでは不十分であった定着性を向上させており、また、低出力で安価なレーザを使うことが可能なため、装置全体を簡単な構成にすることができると記載されている。
【0009】
ここで、上述したローラ対方式での定着では、熱による溶融及び加圧力によりトナーを用紙に付着させているため、加圧力によりトナー画像は平滑になり、散乱光が抑制され光沢感のある画像を得ることができる。しかしながら、トナー画像を加圧しない簡易な、特許文献2による定着装置では、トナーの溶融によるレベリング状態によりトナー画像の平滑性が決まるため、より少ないエネルギーで溶融する低温定着性のトナーが必要になる。
【0010】
このような低温定着性のトナーとして、例えば、有機溶媒中でのトナー組成物の酸価が5〜20mgKOH/g、アミン価が0.5〜10mgKOH/gのポリエステル樹脂から構成されるトナーが知られている(例えば、特許文献3参照)
前記トナーは、定着性が良好で、対オフセット性に優れ、低温定着性であり、その低温定着性は、窒素原子を含む官能基を利用した架橋及び又は伸長反応を行わせて、粒子径と分子量とを調整することによって確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−38802号公報(平成11年 2月12日公開)
【特許文献2】特開平7−191560号公報(平成 7年 7月28日公開)
【特許文献3】特開2009−63883号公報(平成21年 3月26日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記特許文献3に記載のトナーであっても、非加圧のレーザ定着方式の定着装置に用いると、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像が得られないという問題を生じる。
【0013】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、非加圧で短時間のレーザ定着方式の定着装置に用いても、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現し得るレーザ定着用トナーを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は前記課題を解決するために、鋭意検討を行った。本発明者は、まず、特許文献3に記載のトナーを非加圧のレーザ定着方式の定着装置に用いると定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像が得られない原因について検討した。
【0015】
その結果、特許文献3に記載のトナーでは、溶融時の樹脂粘度が高く、また十分に加熱して溶融粘度を低下させたとしても、溶融トナーの表面張力が高いため、用紙には十分濡れ広がらず、平滑な表面を有するトナー画像が得難いことが原因であることを見出した。
【0016】
具体的には、特許文献3に記載のトナーでは、トナーを略球形とし、また、トナーを低温定着性とするために、低分子量化が容易なポリエステルを樹脂として選択する必要があり、粒子径及び分子量の調整において窒素原子を含む官能基を利用している。ここで、特許文献3に記載のトナーは、ローラ対加熱を用いた定着方式の定着装置で用いられるため、トナーのレベリングを考慮する必要がなく、トナーは強制的に用紙上に拡張される。しかしながら、前記トナーを非加圧のレーザ定着方式において用いた場合には、前記トナーでは窒素原子が樹脂中の官能基として残存しているため、当該トナーは、用紙には十分濡れ広がらず、平滑な表面を有するトナー画像は得難い。
【0017】
そこで、このような知見に基づいて、本発明者は、更に検討を重ねた結果、トナー母粒子にレベリング剤を含有させることによって、トナーの用紙への濡れ性及び溶融レベリング性を向上させることができ、その結果、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
尚、特許文献3には、変性シリコーンオイル等の表面処理剤で表面処理を行った外添剤を含有するトナーが開示されている。しかしながら、このような構成では、表面処理剤は外添剤と強固に固定付着されているため、トナー溶融時において、当該表面処理剤は、トナーの用紙への濡れ性及び溶融レベリング性を向上させることは困難である。
【0019】
即ち、本発明に係るトナーは、前記課題を解決するために、レーザ光を転写材上の未定着のトナー像に照射し、トナー像を構成するトナーを光のエネルギーを用いて溶融させ、転写材上に定着させる定着装置において用いられる、トナー母粒子に少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナーであって、トナー母粒子にレベリング剤を含有していることを特徴としている。
【0020】
前記構成によれば、トナー母粒子はレベリング剤を含有しているため、トナー溶融時の表面張力を低下させることができる。その結果、非加圧で短時間のレーザ定着方式の定着装置に用いても、トナーの用紙への濡れ性及び溶融レベリング性を向上させることができ、溶融トナーが用紙に十分濡れ広がり、平滑な表面を有するトナー画像が得られる。よって、前記構成によれば、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現し得るレーザ定着用トナーを提供することができるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係るトナーでは、前記レベリング剤は、その分子中に、結着樹脂と相溶し易い相溶性構造と、相溶し難い非相溶性構造とを有していることが好ましい。
【0022】
前記構成によれば、レべリング剤が、トナーの溶融時に表面に配向し易くなり、トナーの表面張力をより低減させ、紙への濡れ性をより向上させることができ、その結果、トナーを紙表面及び内部に拡張させ、定着性をより向上させることができる。このように、前記レべリング剤は少量で効果があり、トナー中の含有量を減らすことができるため、トナー粒子の保存時におけるブロッキング性等の問題をより抑制することができる。
【0023】
本発明に係るトナーでは、トナー母粒子中に前記レベリング剤を0.05〜5.0重量%含有することが好ましい。
【0024】
前記構成によれば、レベリング性向上を確保することができ、且つトナー粒子の保存時にブロッキング性等の問題を抑制することができる。
【0025】
本発明に係るトナーでは、トナー母粒子にアミド系ワックスを更に含有することが好ましい。
【0026】
前記構成によれば、アミド系ワックスは比較的高融点のワックスであり、トナーのブロッキング性を確保しながら、少量で紙への親和性が向上するため、トナー樹脂のレベリング性をより向上させることができる。また、アミド基と用紙との親和性が良好であるため、トナーの付着力が向上し、定着性が良好となる。
【0027】
本発明に係るトナーでは、トナー母粒子にレーザ光熱変換剤を更に含有し、前記トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤、レベリング剤、アミド系ワックス及びレーザ光熱変換剤を混合する工程を含む製造方法によって得られ、前記工程では、アミド系ワックスとレーザ光熱変換剤との混合物を予め作製し、当該混合物を、結着樹脂、着色剤及びレベリング剤と混合することが好ましい。
【0028】
前記構成によれば、アミド系ワックスとレーザ光熱変換剤との混合物を予め作製し、当該混合物を、結着樹脂、着色剤及びレベリング剤と混合する方法によって得られるため、レーザ光熱変換剤をトナー樹脂中に均一に分散させることができる。その結果、レーザ光熱変換がトナー粒子全体にわたって均一に行われるため、トナーの流動が均一に起こり、用紙への濡れとレベリングがより良好になる。
【0029】
本発明に係るトナーでは、前記レベリング剤を少なくとも母粒子の内部に含有していることが好ましい。
【0030】
前記構成によれば、各トナーにおけるレベリング剤の含有量を均一にし易く、また、トナーが用紙の上に移行付着するまでの間にレべリング剤が脱離し難いため、定着性及び光沢性により優れた高品質のトナー画像を実現し得る。
【0031】
本発明に係るトナーでは、前記レベリング剤が、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、高分子エーテル系レベリング剤、ノニオン系レベリング剤からなる群から選択された1種又は2種以上であることが好ましい。
【0032】
本発明に係るトナーの製造方法は、レーザ光を転写材上の未定着のトナー像に照射し、トナー像を構成するトナーを、光のエネルギーを用いて溶融させ、転写材上に定着させる定着装置において用いられるトナーの製造方法であり、結着樹脂、着色剤及びレベリング剤を含むトナー組成物を混合する混合工程を含むことを特徴としている。
【0033】
前記方法によれば、トナー母粒子はレベリング剤を含有することになるため、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現し得るレーザ定着用トナーを製造することができるという効果を奏する。
【0034】
また、レべリング剤はトナー母粒子の内部に均一に含有されることになるため、各トナーにおけるレベリング剤の含有量は均一となり、また、トナーが用紙の上に移行付着するまでの間にレべリング剤が脱離し難い。
【0035】
本発明に係るトナーの製造方法では、前記トナー組成物は、アミド系ワックス及びレーザ光熱変換剤を更に含み、前記混合工程では、アミド系ワックスとレーザ光熱変換剤との混合物を予め作製し、当該混合物を、結着樹脂、着色剤及びレベリング剤と混合することが好ましい。
【0036】
前記方法によれば、アミド系ワックスとレーザ光熱変換剤との混合物を予め作製し、当該混合物を、結着樹脂、着色剤及びレベリング剤と混合するため、レーザ光熱変換剤をトナー樹脂中により均一に分散させることができる。その結果、レーザ光熱変換がトナー粒子全体にわたって行われるため、トナーの流動が均一に起こり、用紙への濡れとレベリングとがより良好になる。
【0037】
本発明に係る定着装置は、転写材上に形成された、複数のトナー像を重ね合わせた未定着のトナー像にレーザ光源より光を照射し、光のエネルギーを用いてトナー像を構成するトナーを、溶融させ、転写材上に定着させる定着装置であって、上述した本発明に係るトナーを備えたことを特徴としている。
【0038】
前記構成によれば、上述した本発明に係るトナーを備えているため、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現し得る定着装置を提供することができるという効果を奏する。
【0039】
本発明に係る定着装置では、少なくとも、最後に重ね合わせるトナーとして、上述した本発明に係るトナーを用いることが好ましい。
【0040】
例えば、シアン、マゼンタ、イエローを用いたカラー画像の場合、定着に要する濡れ性及びレベリング性が必要な箇所は、3色が重なった部分になる。この場合に、少なくとも表層になるトナーが容易に用紙に濡れ広がり且つレベリングすることができばトナー画像の平滑性を向上させることができる。このため、前記構成によれば、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現することができるという効果を奏する。
【0041】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る前記定着装置を備えたことを特徴としている。
【0042】
前記構成によれば、本発明に係る定着装置を備えているため、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現することができるという効果を奏する。
【0043】
また、レーザ光によって定着を行う構成であるため、画像形成装置のウォームアップ時間が短縮でき、待機時の消費電力も必要がないため、低消費電力の画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係るトナーは、以上のように、トナー母粒子がレベリング剤を含有していることを特徴としている。
【0045】
このため、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現し得るレーザ定着用トナーを提供することができるという効果を奏する。
【0046】
また、本発明に係るトナーの製造方法は、結着樹脂、着色剤及びレベリング剤を含むトナー組成物を混合する混合工程を含むことを特徴としている。
【0047】
このため、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現し得るレーザ定着用トナーを製造することができるという効果を奏する。
【0048】
更には、本発明に係る定着装置は、少なくとも、最後に重ね合わせるトナーとして、上述した本発明に係るトナーを用いることを特徴としている。また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る前記定着装置を備えたことを特徴としている。
【0049】
このため、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置における現像装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】図1に示す画像形成装置における定着装置の概略構成を示す正面図である。
【図4】図3に示す定着装置におけるレーザーヘッドの概略構成を示す側面図である。
【図5】図3に示す定着装置におけるレーザーヘッドの概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(I)トナー
本実施の形態に係るトナーは、レーザ光を、転写材上の未定着のトナー像に照射し、光のエネルギーを用いてトナー像を構成するトナーを、溶融させ、転写材上に定着させる定着装置において用いられる、トナー母粒子に少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナーであって、前記トナー母粒子はレベリング剤を含有している。
【0052】
尚、以下の説明では、定着用のレーザには780nmの波長の半導体レーザを用いた場合について説明しているが、他の波長の半導体レーザを用いた場合であっても、当業者であれば、技術常識に基づいて本発明を実施し得る。
【0053】
また、本発明のトナーとしては、コア・シェル構造を有するトナーを用いることもできる。この場合、コア及び/又はシェルにレベリング剤を添加してトナーを作製できる。
【0054】
〔レベリング剤〕
従来のローラ対加熱方式の定着装置では、加圧力により、トナーの用紙表面での拡張及び平滑性が確保されていた。しかしながら、非加圧のレーザ定着装置では、レーザ照射により光熱変換剤の発熱でトナーが溶融し用紙に定着するとき、溶融トナーの表面張力が高いと用紙への濡れ性が悪く、トナーは用紙へ拡張せず、画質不良となる。また、非加圧の定着方式では、トナーの溶融粘性が高いとレベリング性が悪く、平滑なトナー画像が得られない。
【0055】
そこで、本発明に係るトナーでは、レベリング剤をトナー母粒子に含有させることでトナーの表面張力を低下させ、用紙への拡張性、濡れ性及びレベリング性とを向上させている。
【0056】
前記レベリング剤としては、溶融トナー表面のレベリング性を改善するものであれば特には限定されないが、例えば、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、高分子エーテル系レベリング剤、ノニオン系レベリング剤等を使用することができる。
【0057】
フッ素系レべリング剤としては、パーフルオロアルキル変性ポリアクリレート、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0058】
シリコーン系レべリング剤としては、ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、ポリエステル変性ポリシロキサン、アラルキル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン変性ポリアクリレート等が挙げられる。
【0059】
高分子エーテル系レべリング剤としては、ポリエーテル変性ポリアクリレート、ポリエーテル変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0060】
ノニオン系レべリング剤としては、ノニオン性界面活性剤、フッ素化合物を含有するノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0061】
前記レベリング剤は、トナーの溶融時に、溶融トナー表面に配向することで、少量で効果が発現する。ここで、トナーの溶融時にレベリング剤を表面に有効に配向させるためには、分子中に、結着樹脂と相溶し易い相溶性構造と、相溶し難い非相溶性構造とを有しているレベリング剤を用い、非相溶性構造がトナー表面(外側)に向いた配向をさせることが好ましい。
【0062】
このようなレベリング剤としては、例えば、結着樹脂と相溶性が良好である、当該結着樹脂の構造と、当該結着樹脂と相溶し難いポリシロキサンの構造とを有するレベリング剤が挙げられ、具体的には、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合には、ポリエステルの構造とポリシロキサンの構造とを有する、ポリエステル変性ポリシロキサンが挙げられる。
【0063】
このような相溶性構造と非相溶性構造とを有するレベリング剤は、少量でトナーの溶融時に表面に配向して表面張力を低減することができる。その結果、紙への濡れ性を向上することができ、トナーを紙表面及び内部に拡張させ、定着性を向上することができる。また、少量添加で効果があるため、トナー粒子の保存時にブロッキング性等の問題を抑制することができる。
【0064】
つまり、レベリング剤全体として結着樹脂との相溶性が良好であると、レベリング剤がトナー表面に配向せず、トナー内部で相分離、海島構造に分散した状態となる傾向にある。このため、結着樹脂との相溶性が適切なレベリング剤を選択することによって、レベリング剤をトナー表面に配向することが可能となり、少量で効果を発現し得る。
【0065】
トナー母粒子中のレべリング剤の含有量は、0.05〜5.0重量%であることが好ましく、0.1〜3.0重量%であることがより好ましい。レベリング剤のトナー母粒子中の含有量が0.05重量%以上であることによって、溶融トナーの表面張力を良好に制御することができる。また、5.0重量%以下であれば、トナーの保存中におけるブロッキングをより抑制することができる。
【0066】
〔結着樹脂〕
前記結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として常用されるものであれば特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また同一種の樹脂であっても、分子量、単量体組成等の何れか1つ又は複数が異なる樹脂を複数種併用することができる。
【0067】
ポリエステルは透明性に優れ、凝集粒子に良好な粉体流動性、低温定着性及び二次色再現性等を付与することができるので、カラートナー用の結着樹脂に好適である。ポリエステルとしては公知のものを使用することができ、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物等が挙げられる。
【0068】
前記多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして公知のものを使用することができ、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物等が挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記多価アルコールとしても、ポリエステル用モノマーとして公知のものを使用することができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族系ジオール類等が挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は従来公知の方法に従って実施することができ、例えば、有機溶媒の存在下又は非存在下において、重縮合触媒の存在下、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行うことができる。そして、生成するポリエステルの酸価、軟化点等が所定の値になるまで反応を行うことによって、結着樹脂としてのポリエステルが得られる。
【0071】
ここで、多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率等を適宜変更することによって、例えば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整することができ、その結果、得られるポリエステルの特性を制御することができる。
【0072】
また、多塩基酸として無水トリメリット酸を用いてポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することによっても、ポリエステルの特性を制御することができる。

【0073】
尚、ポリエステルの主鎖及び/又は側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基を結合させた、水中自己分散性ポリエステルも使用することができる。またポリエステルとアクリル樹脂とをグラフト化して用いてもよい。
【0074】
スチレン−アクリル樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
【0075】
〔着色剤〕
前記着色剤としては、有機若しくは無機の、顔料及び/又は色素であり、より具体的には、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料等を使用することができる。また、着色剤は、分散剤、分散助剤等を含んでいてもよい。
【0076】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト及びマグネタイト等が挙げられる。
【0077】
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0078】
橙色の着色剤としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43等が挙げられる。
【0079】
赤色の着色剤としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0080】
紫色の着色剤としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。
【0081】
青色の着色剤としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60等が挙げられる。
【0082】
緑色の着色剤としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0083】
白色の着色剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の化合物が挙げられる。
【0084】
着色剤は1種を単独で使用してもよいし2種以上の異なる色のものを併用してもよい。また同色であっても、2種以上を併用してもよい。着色剤の使用量は特に制限されないが、結着樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲が好ましく、0.2〜10重量部の範囲がより好ましい。
【0085】
〔レーザ光熱変換剤〕
レーザ定着に用いるレーザ波長でのトナーによる吸収率が低い場合には、赤外線吸収剤等のレーザ光熱変換剤を添加してもよい。特に、カラートナー(イエロー、マゼンタ、シアン)はモノクロトナーに比べてレーザ光の吸収率が低いことから、レーザ光熱変換剤を添加することが好ましい。これにより、モノクロトナーと同じ吸収率を確保することができる。
【0086】
前記赤外線吸収剤としては、置換ベンゼンジチオールニッケル錯体類、ビスジチオベンジルニッケル錯体類等のニッケル錯体や、フタロシアニン等のフタロシアニン類や、アントラキノン類、ポリメチン錯体、シアニン錯体、オニウム錯体等が挙げられ、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
レーザ光熱変換剤の添加量は、特には限定されないが、例えば、カラートナーの結着樹脂100重量部に対して、フタロシアニン等のレーザ光熱変換剤を1重量部〜5重量部内添することができる。
【0088】
〔離型剤〕
従来のローラ対加熱方式の定着装置では、溶融トナーがローラ等の部材から離型する必要があるため、シリコーンオイルを用いたり、トナーにワックスを添加したりして離型性を確保していた。このため、離型剤はこの分野で常用されている。一方、非加圧のレーザ定着方式では、定着部材との離型性を考える必要がないため、離型目的で離型剤を添加する必要がない。
【0089】
しかしながら、ワックスの中でもアミド基を有するアミド系ワックスは、色材への濡れ、吸着、分散に効果があるため、本発明に係るトナーでは、トナー母粒子中にアミド系のワックスを更に含有することが好ましい。
【0090】
アミド系ワックスとしては、アミド系ワックス、変性アミド系ワックスが挙げられ、具体的には、炭素数8〜30の脂肪族モノカルボン酸化合物と炭素数8〜30の脂肪族モノアミン化合物との縮合反応により得られたアミドワックス等が挙げられ、これらの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
従来、アミド系ワックスは離型材として添加していたが、特に、トナーに、色素であるレーザ光熱変換剤を含有させる場合には、当該レーザ光熱変換剤の分散を容易にするためにアミド系ワックスを予めレーザ光熱変換剤と混合しておくことが好ましい。
【0092】
レーザ光熱変換剤の分散性を高めることによって、トナー母粒子中に均一にレーザ光熱変換剤が分散することになるため、レーザ照射時にトナーが均一に加熱され、定着性がより均一になる。また、アミド系ワックスはレーザ光熱変換剤等の色素の分散剤としてだけではなく、用紙への濡れ性に優れるため、短時間でのレーザ定着を達成するために有効である。
【0093】
ここで、ワックスを用いるに当たって、トナー保存中のブロッキングが問題となり得るが、アミド系ワックスは比較的融点が高く、ブロッキング性が確保される。アミド系ワックスとしては、融点が50〜160℃、好ましくは60℃〜120℃のものを使用することが好ましい。融点が50℃以上であれば、ワックスは耐熱保存性に優れ、160℃以下であれば、ワックスは低温での溶融性が良好であり、トナーの定着性に優れる。
【0094】
ワックスの使用量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択することができるが、結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部の範囲内が好ましく、結着樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部であることがより好ましい。ワックスの使用量が、結着樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上であれば、分散性及び濡れ性により優れ、20重量部以下であれば、トナー保存中のブロッキング性を良好に抑制することができる。
【0095】
〔帯電制御剤〕
帯電制御剤としては、この分野で常用される正電荷制御用及び負電荷制御用のものを使用することができる。
【0096】
正電荷制御用の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料及びその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩等が挙げられる。
【0097】
負電荷制御用の帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラック等の油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸及びその誘導体の金属錯体及び金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウム等)、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸等が挙げられる。
【0098】
帯電制御剤は、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。また、帯電制御剤の使用量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できる。例えば、帯電制御剤は、結着樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部の範囲で用いることができる。尚、トナーをコア・シェル構造とする場合には、帯電制御剤は、コア粒子中に含有させてもよく、被覆層中に混ぜて使用してもよい。帯電制御剤を、コア粒子中に含有させる場合、帯電制御剤は、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部であることが好ましい。
【0099】
〔外添剤〕
本発明のトナーには、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善及び感光体表面磨耗特性制御等の機能を担う外添剤が添加されてもよい。外添剤としては公知のものを使用することができ、例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末及びアルミナ微粉末等が挙げられる。また、これらは、シリコーン樹脂、シランカップリング剤等によって表面処理されていることが好ましい。
【0100】
外添剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、及びトナーの環境特性等を考慮し、トナー母粒子100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0101】
尚、本発明のトナーは、一成分現像剤としても二成分現像剤としても使用することができる。1成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくトナーのみで使用する。また1成分現像剤として使用する場合、ブレード及びファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にトナーを付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。二成分現像剤として使用する場合、本発明のトナーをキャリアとともに用いる。
【0102】
〔トナーの製造方法〕
上述したトナーは、一般的なトナーの製造方法に従って製造することができる。一般的なトナーの製造方法としては、例えば、粉砕法等の乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法等の湿式法が挙げられる。以下、一例として粉砕法による作製方法を説明する。
【0103】
粉砕法では、結着樹脂、着色剤、レベリング剤及びその他のトナー添加成分を含むトナー組成物を、混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練する。溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機によって粉砕する。その後必要に応じて分級等の粒度調整を行い、トナー母粒子を得る。
【0104】
混合機としては公知のものを使用することができ、例えば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)等が挙げられる。
【0105】
混練機としても公知のものを使用することができ、例えば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミル等の一般的な混練機を使用することができる。更に具体的には、例えば、TEM100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87(商品名、株式会社池貝製)、PCM−30(商品名、株式会社池貝製)等の1軸又は2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)等のオープンロール方式の混練機が挙げられる。
【0106】
結着樹脂以外の、着色剤等の合成樹脂用添加剤は、合成樹脂用添加剤を混練物中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。また合成樹脂用添加剤の2種以上を複合粒子化して用いてもよい。マスターバッチ及び複合粒子は、乾式混合の際に粉体混合物に混入される。
【0107】
前記のような複合粒子は、例えば、合成樹脂用添加剤の2種以上に適量の水、低級アルコール等を添加し、ハイスピードミル等の一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造することができる。
【0108】
本発明のトナーに、レーザ光熱変換剤及びワックスを添加する場合には、樹脂中にレーザ光熱変換剤を均一に分散するため、レーザ光熱変換剤とワックスとを予めニーダー等の混合機で混合しておき、メイン樹脂へ混錬分散することが好ましい。
【0109】
(II)画像形成装置
本発明の一実施形態として、上述したトナーを含む二成分現像剤を用いて現像を行う現像装置及び、該現像装置を備えた画像形成装置を例示して説明する。また、本実施の形態として、画像形成装置をカラー複合機に適用した場合について説明する。
【0110】
尚、本実施の形態では、二成分現像剤を用いて現像を行う場合について説明するが、一成分現像剤を用いてもよく、また、画像形成装置をモノクロ複合機に適用してもよく、このような構成であっても、当業者であれば技術常識に基づいて同様に実施することができ、本実施の形態と同様の効果を奏する。
【0111】
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置100の概略構成を示す断面図である。以下、画像形成装置100の構成を、図1に示す断面図を参照しながら説明する。
【0112】
画像形成装置100は、複写機能、プリンタ機能及びファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録紙等の記録媒体上にフルカラー又はモノクロの画像を形成する。即ち、画像形成装置100においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモード及びFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信等に応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。
【0113】
画像形成装置100は、図1に示すように、トナー像形成部7と、転写部8と、定着装置4と、記録媒体供給部5と、排出部6とを含む。
【0114】
本実施の形態において、トナー像形成部7を構成する各部材及び転写部8に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)及びイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。以降、本明細書中において、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0115】
〔トナー像形成部〕
トナー像形成部7は、感光体ドラム11と、帯電部12と、露光ユニット13と、現像装置14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電部12、現像装置14及びクリーニングユニット15は、感光体ドラム11の回転方向まわりに、この順序で配置される。帯電部12は、現像装置14及びクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
【0116】
感光体ドラム11は、図示しない駆動部により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、例えば、円筒状、円柱状、薄膜シート状等の形状を採ることができる。感光層は、例えば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。
【0117】
帯電部12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性及び電位に帯電させる。帯電部12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置等を用いることが可能である。
【0118】
本実施の形態において、帯電部12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるが、これに限定されるものではない。例えば、帯電部12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラム11とが圧接するように帯電ローラを配置してもよく、帯電ブラシ、磁気ブラシ等の接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
【0119】
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電部12と現像装置14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でb、c、m、yの各色情報の光に分岐し、帯電部12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、例えば、レーザ照射部及び複数の反射ミラーを備えるレーザースキャニングユニットを使用することができる。他にもLED(Light Emitting Diode)アレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
【0120】
ここで、本発明の一実施形態である現像装置14の構成を、図2に示す断面図を参照しながら説明する。図2は、図1に示す画像形成装置100における現像装置14の概略構成を示す断面図である。
【0121】
現像装置14は、本発明のトナーを含む二成分現像剤を用いて現像を行う。図2に示すように、現像装置14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。
【0122】
現像槽20は、感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容し、且つ現像ローラ22、供給ローラ23、撹拌ローラ24等のローラ部材、又はスクリュー部材を収容して、これらを回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ22が設けられる。
【0123】
現像ローラ22は、感光体ドラム11との圧接部又は最近接部において感光体ドラム11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ22表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ22表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。更に、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御することができる。
【0124】
供給ローラ23は現像ローラ22を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ22周辺にトナーを供給する。撹拌ローラ24は供給ローラ23を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ23周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成してもよい。
【0125】
図1に示すクリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、例えば、クリーニングブレード等の板状部材が用いられる。
【0126】
尚、本発明の画像形成装置100においては、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられる。有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電部12によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行し易い。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。従って、オゾン等による表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるが、特に限定されるものではなく、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
【0127】
このように、トナー像形成部7では、帯電部12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0128】
〔転写部〕
前記転写部8は、図1に示すように、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。
【0129】
中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。
【0130】
駆動ローラ26は駆動部(図示せず)によってその軸線回りに回転駆動が可能なように設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。
【0131】
従動ローラ27は、駆動ローラ26の回転駆動に従動して回転可能なように設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。
【0132】
中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、且つ駆動部(図示せず)によってその軸線回りに回転駆動が可能なように設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する電源(図示せず)が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。
【0133】
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。
【0134】
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、駆動部(図示せず)によって軸線回りに回転駆動が可能なように設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されるトナー像が、記録媒体供給部5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着装置4に送給される。
【0135】
転写部8によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
【0136】
〔定着装置〕
次に、定着装置4について、図3〜図5を用いて詳細に説明する。尚、図3は図1に示す画像形成装置100における定着装置4の概略構成を示す正面図であり、図4は図3に示す定着装置4におけるレーザーヘッドL1の概略構成を示す側面図であり、図5は図3に示す定着装置4におけるレーザーヘッドL1の概略構成を示す正面図である。
【0137】
定着装置4は、図3に示すように、レーザーヘッド(レーザ照射手段)L1と、用紙搬送装置(用紙搬送手段)L2とを備えている。
【0138】
前記定着装置4は、記録紙等の記録媒体204の表面に形成された未定着のトナー画像を熱によって記録媒体204に定着させる。具体的には、図3に示すように、レーザ光201が照射される、用紙搬送装置L2上のレーザ照射部202に、所定の定着速度及び複写速度で、未定着トナー203からなる未定着トナー像を担持した記録媒体204が搬送され、レーザ光201の熱によって未定着トナー203の定着が行われる。
【0139】
本実施の形態に係る画像形成装置100では、例えば、最大定着速度225mm/sec、最大複写速度50枚/分(A4横送り)とすることができ、定着速度(複写速度)が画像パターンにより可変制御し得る。
【0140】
ここで、未定着のトナー画像は、例えば、非磁性トナーを含む非磁性1成分現像剤、非磁性トナー及びキャリアを含む非磁性2成分現像剤、磁性トナーを含む磁性現像剤等の現像剤に含まれるトナーで形成され得るが、本実施の形態では、非磁性トナー及びキャリアを含む非磁性2成分現像剤に含まれるトナーで形成される。
【0141】
用紙搬送装置L2は、搬送ベルト205、駆動ローラ206、従動ローラ207、吸着チャージャー208、分離チャージャー209、除電チャージャー210、分離爪211、駆動モーター(図示せず)とを備えている。
【0142】
搬送ベルト205は、例えば、ベルト厚75μm、体積抵抗率1016Ω・cmのポリイミド樹脂からなり、駆動ローラ206と従動ローラ207とに張架されている。駆動ローラ206は駆動モーター(図示せず)により、任意の速度で回転駆動するよう構成されており、搬送ベルト205は駆動ローラ206の回転により矢印方向に任意の速度で回転する。また、搬送ベルト205の周囲には吸着チャージャー208、分離チャージャー209、除電チャージャー210、分離爪211が設けられている。
【0143】
このような装置において、転写部8から搬送されてきた未定着トナー像が形成された記録媒体204は従動ローラ207上の搬送ベルト205と吸着チャージャー208との間に搬送される。
【0144】
従動ローラ207は、導電性材料で構成され接地されており、吸着チャージャー208によって記録媒体204に電荷を与えることで記録媒体204及び搬送ベルト205はそれぞれ誘電分極を起こし、記録媒体204は搬送ベルト205上に静電吸着する。
【0145】
記録媒体204は駆動ローラ206の駆動によってレーザ照射部202に搬送される。レーザ照射部202まで搬送された記録媒体204上の未定着トナー像にはレーザーヘッドL1によって画像情報に応じてレーザが照射され、定着が行われる(つまり、定着トナー222からなる定着トナー像が得られる)。
【0146】
レーザ照射部202でのトナー画像の定着を終了した記録媒体204は、搬送ベルト205に静電吸着された状態で分離チャージャー209と駆動ローラ206との間に搬送される。駆動ローラ206は導電性材料で構成され接地されており、分離チャージャー209によって記録媒体204上を除電することで搬送ベルト205と記録媒体204との間の静電吸着力が弱まる。その状態で搬送ベルト205は駆動ローラ206に沿って回動し、搬送ベルト205は大きな曲率を持つため、記録媒体204の先端部は搬送ベルト205から浮き、更に分離爪211にて記録媒体204は完全に搬送ベルト205から分離する。記録媒体204が剥離された搬送ベルト205は、除電チャージャー210により外面及び内面が除電された後、再び記録媒体204の吸着位置へ駆動される。
【0147】
レーザーヘッドL1はレーザ照射部202において未定着トナー像にレーザ光201を照射し、未定着トナー203を記録媒体204に定着させる目的のものである。レーザーヘッドL1は、図3及び図4に示すように、複数の半導体レーザ素子216が長手方向に一列状に配列した半導体レーザーアレイ、放熱板(ヒートシンク)212及び温度センサ213を備えている。
【0148】
尚、本実施の形態では、半導体レーザーアレイは、波長780nmで、1個の定格出力が150mWであるレーザ素子216を1,000個配列したものを用いている。この時、各レーザ素子216の配列ピッチpは0.3mmでレーザースポット径dも0.3mmとすることができる。また、放熱板212としては、例えば、アルミニウム合金製でベースサイズが30mm×30mm、高さ20mm、熱抵抗1.6℃/Wのヒートシンク((株)アルファ社製 UB30−20B)を計10個一列に並べたもの(トータルの熱抵抗0.16℃/W)を用いることができる。
【0149】
更に、レーザーヘッドL1の詳細構成について図4及び図5を用いて説明する。
【0150】
レーザーヘッドL1は以下のように製造される。まず、入力された信号によりレーザ光出力を可変したり、受光素子であるモニター用フォトダイオード214からの信号によりレーザ光出力を一定に保ったりするための制御回路(図示せず)とフォトダイオード214とがモノシリックに形成されたシリコン基板215に、半導体レーザ素子(チップ)216をマウントし、レーザ素子216とシリコン基板215との間にワイヤーボンド線217等で電気的接続を行う。
【0151】
次に、このレーザ素子216付シリコン基板215をセラミック基板218上に複数個取り付け、ワイヤーボンディング等によりセラミック基板218の表面電極219とシリコン基板215上の電極との間に電気的接続を行う。最後に、この複数個のレーザ装置が並んだセラミック基板218に、放熱板212と、複数個の集光光学系としての複数の凸レンズ220とが保持されたレンズホルダー221を取り付ける。これにより、本実施例に係るレーザーヘッドL1が製造される。
【0152】
このレーザーヘッドL1における複数の凸レンズ220とレンズホルダー221とは、各凸レンズ220を樹脂ホルダー等に組み込んだものよりも、樹脂によるレンズ−レンズホルダー一体成形品や、平板ガラスをレンズ状にイオン交換して製造される平板マイクロレンズ等のレンズアレイである方が、価格や工程、組立精度に関して有利である。また、集光光学系を無くし、平行光の状態でトナー画像にレーザを照射することも可能である。
【0153】
更に、セラミック基板218上には、レーザーヘッドL1の温度を測定するためのサーミスタからなる温度センサ213が取り付けられている。尚、本サーミスタは、定着装置の長手方向の位置に関しては中央部に配置されている。そして、サーミスタにより検出された温度データに基づいて、第1の制御手段としての制御回路(図示せず)が、レーザ素子に印加する電圧を制御する。
【0154】
〔排出部〕
排出部6は、図1に示すように、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、記録媒体の搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着装置4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置100の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
【0155】
以上のように、本実施の形態に係る画像形成装置100における画像形成の工程は以下のようになる。まず、感光体ドラム11表面を帯電部12で一様に帯電した後、露光ユニット(光学系ユニット)13により感光体ドラム11表面を画像情報に応じてレーザ露光し、静電潜像を形成する。帯電部12としては、感光体ドラム11表面を一様に、またオゾンを極力発生させることなく帯電するために、帯電ローラ方式を採用している。その後、現像装置14bにより感光体ドラム11b上の静電潜像に対しトナー像を現像し、この顕像化されたトナー画像をトナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された一時転写ユニット(中間転写ローラ)28bにより中間転写ベルト25上に転写する。他の3組の現像装置14c、14m、14yも同様に動作し順次中間転写ベルト25上に転写するようになっている。
【0156】
中間転写ベルト25上のトナー画像は転写ローラ30まで搬送され、別途、内部給紙ユニット35の給紙ローラ36又は手差し給紙ユニット39の給紙ローラ39aから給紙された記録媒体に、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加されて転写される。記録媒体上のトナー画像は定着装置4に搬送され、レーザ照射により加熱されて記録媒体上に融着し、外部へ排出される。
【0157】
尚、図1に示すように、カラートナーを重ね合わせてから定着する画像形成装置の場合は、少なくとも最後に形成される色のトナーを上述した本発明に係るトナーにすることが好ましい。つまり、積層された下側のトナーは、直接レーザ光が当たらないので通常のトナーでもかまわない。つまり、最も定着にエネルギーが必要なときは、必ず、最後に形成される色のトナーが載っていることになるため、最後に形成される色のトナーに表面調整剤であるレベリング剤を含有させておいて、レーザ光の利用効率を上げることが有効である。
【0158】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、例えば、画像形成装置100の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置100の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置100内部の各所に配置される図示しないセンサ等からの検知結果、外部機器からの画像情報等が入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、例えば、記録媒体を判定する記録媒体判定手段、トナーの付着量を制御する付着量制御手段、トナーの定着条件を制御する定着条件制御手段等である。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)等が挙げられる。
【0159】
前記外部機器には、画像情報の形成又は取得が可能であり、且つ画像形成装置100に電気的に接続可能な電気・電子機器を用いることができる。例えば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機器、ビデオレコーダ、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置等が挙げられる。
【0160】
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報等)及び各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、前記演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部及び演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ等によって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置100内部における各装置にも電力を供給する。
【実施例】
【0161】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、下記において「部」は重量部、「%」は重量%を意味する。
【0162】
(1)評価方法
光沢、画像濃度、定着性、トナー保存安定性の評価は、以下の方法により評価した。また、画像サンプルは、シャープ社製フルカラー専用紙(PP106A4C)上に、シャープ社製MX−5001FNを用いて、所定のトナー付着量になるように調整して印字させた後、本実施の形態で示した、レーザー光によって定着を行う外部定着機を用いて定着させた。
【0163】
尚、同一トナー付着量で現像し、同一の定着条件で定着しても、顔料濃度に応じて色度の変化や彩度の変化(プロセスカラーからの色彩の変化や彩度の劣化等)が生じる場合がある。このため、濃度に応じて現像条件や定着条件を変更し、最適な現像条件や定着条件になるように設定した。
【0164】
〔光沢の評価〕
GlossMeterGM−26D(商品名、村上色彩技術研究所)を用い、入射角75度にて画像サンプルの光沢値を測定した。光沢値は大きいほど表面の平滑性が高いことを示している。
【0165】
〔画像濃度の評価〕
フルカラー専用紙上のトナー付着量を1.0mg/cmとした画像サンプルの濃度(画像濃度ID)を、測色計X−rite938(X−rite社製)を用いて測定した。1.6以上の値であれば、○とし、1.6未満であれば×とした。
【0166】
〔定着性の評価〕
定着したベタ画像を荷重1kgの錘を用いて折り曲げ、この折り曲げた画像上を、前記錘をその上に載せた未印字のフルカラー専用紙で引き擦ることで、トナー画像の折り目でトナーを剥離させ、その剥離状態から定着性を評価した。
【0167】
〔トナー保存安定性の評価〕
トナー10gをポリエチレン瓶に入れ、45℃で7日間保管した。放冷後、瓶から取り出し目視にて凝集の程度を判定した。塊が無い場合、並びに、塊があるとき、指で軽く触れたとき塊がほぐれ実用上問題のない場合は◎、一部にほぐれない塊があるが、実用上問題のない場合は○、硬さを感じる場合は×と判定した。
【0168】
(2)トナーの作製
以下に示す実施例及び比較例では、ポリエステル樹脂として、ガラス転移温度Tgが63℃、1/2フロー軟化温度Tmが109℃、屈折率が1.57、重量平均分子量11000であるものを用いた。また、疎水性シリカ微粒子として、シランカップリング剤とジメチルシリコーンオイルで表面処理されたシリカ微粒子を用いた。
【0169】
〔製造例1:マスターバッチの作製〕
ポリエステル樹脂60部に対して、着色剤としてシアン顔料(ピグメントブルー15:3、ホスタパームブルーB2G、クラリアントジャパン社製)40部を加えて加圧ニーダー及び2本ロールにより溶融混練分散させ、マスターバッチを作製した。
【0170】
〔実施例1〕
赤外線吸収剤(フタロシアニン類)100部と、融点105℃の変性脂肪酸アミドワックス50部とを加熱混合して、赤外線吸収剤とワックスとの混合物を得た。
【0171】
次に、ポリエステル樹脂79.1部、前記マスターバッチ12.5部、シリコーン系レベリング剤(変性ポリジメチルシロキサン)1.0部、赤外線吸収剤とワックスとの前記混合物3部、及び帯電制御剤4部からなる成分をスーパーミキサーにて均一混合し、次いで2本ロール(製品名:ニーデックスMOS140−800、三井鉱山株式会社製)により溶融混錬し、冷却した後、ジェットミルによる微粉砕と風力分級機による分級とを行うことによって、トナー母粒子を作製した。
【0172】
更に、得られたトナー母粒子100部と、疎水性シリカ微粒子(粒子径100nm)1.0部及びチタン化合物(粒子径10nm)1.5部とを混合して、負摩擦帯電性のトナーを調製した。
【0173】
次に、これらのトナーとキャリアとを混合し、現像剤を作製した。キャリアにはフェライト粒子を使用し、現像剤のトナー濃度は4.0%に設定した。
【0174】
〔比較例1〕
ポリエステル樹脂81.1部、マスターバッチ12.5部、赤外線吸収剤2.0部、及び帯電制御剤4.0部からなる成分をスーパーミキサーにて均一混合し、次いで2本ロール(製品名:ニーデックスMOS140−800、三井鉱山株式会社製)により溶融混錬し、冷却した後、ジェットミルによる微粉砕と風力分級機による分級を行うことによって、トナー母粒子を作製した。
【0175】
更に、前記トナー母粒子100部と、疎水性シリカ微粒子(粒子径100nm)1.0部及びチタン化合物(粒子径10nm)1.5部とを混合して、負摩擦帯電性のトナーを調製した。
【0176】
次に、これらのトナーとキャリアとを混合し、現像剤を作製した。キャリアにはフェライト粒子を使用し、現像剤のトナー濃度は4.0%に設定した。評価結果を表1に示す。
【0177】
尚、ポリエステル樹脂、マスターバッチ、赤外線吸収剤、帯電制御剤は、実施例1で用いたものと同じものを用いた。
【0178】
〔実施例2〕
ポリエステル樹脂80.1部、マスターバッチ12.5部、シリコーン系レベリング剤(変性ポリジメチルシロキサン)1.0部、赤外線吸収剤2.0部、及び帯電制御剤4.0部からなる成分をスーパーミキサーにて均一混合し、次いで、2本ロール(製品名:ニーデックスMOS140−800、三井鉱山株式会社製)により溶融混錬し、冷却した後、ジェットミルによる微粉砕と風力分級機による分級とを行った。
【0179】
尚、ポリエステル樹脂、マスターバッチ、シリコーン系レベリング剤、赤外線吸収剤、及び帯電制御剤は、実施例1で用いたものと同じものを用いた。
【0180】
更に、実施例と同様に負摩擦帯電性のトナーに調製し、現像剤を作製した。評価結果を表1に示す。
【0181】
〔実施例3〕
実施例2で用いた材料と同じ材料を用い、ポリエステル樹脂81.05部、マスターバッチ12.5部、シリコーン系レベリング剤(変性ポリジメチルシロキサン)0.05部、赤外線吸収剤2.0部、及び帯電制御剤4.0部からなる成分をスーパーミキサーにて均一混合し、次いで2本ロール(製品名:ニーデックスMOS140−800、三井鉱山株式会社製)により溶融混錬し、冷却した後、ジェットミルによる微粉砕と風力分級機による分級とを行った。
【0182】
更に、実施例1と同様に負摩擦帯電性のトナーに調製し、現像剤を作製した。評価結果を表1に示す。
【0183】
〔実施例4〕
実施例2で用いた材料と同じ材料を用い、ポリエステル樹脂76.1部、マスターバッチ12.5部、シリコーン系レベリング剤(変性ポリジメチルシロキサン)5.0部、赤外線吸収剤2.0部、及び帯電制御剤4.0部からなる成分をスーパーミキサーにて均一混合し、次いで2本ロール(製品名:ニーデックスMOS140−800、三井鉱山株式会社製)により溶融混錬し、冷却した後、ジェットミルによる微粉砕と風力分級機による分級とを行った。
【0184】
更に、実施例1と同様に負摩擦帯電性のトナーに調製し、現像剤を作製した。評価結果を表1に示す。
【0185】
〔実施例5〕
実施例2で用いた材料と同じ材料を用い、ポリエステル樹脂81.07部、マスターバッチ12.5部、シリコーン系レベリング剤(変性ポリジメチルシロキサン)0.03部、赤外線吸収剤2.0部、及び帯電制御剤4.0部からなる成分をスーパーミキサーにて均一混合し、次いで2本ロール(製品名:ニーデックスMOS140−800、三井鉱山株式会社製)により溶融混錬し、冷却した後、ジェットミルによる微粉砕と風力分級機による分級とを行った。
【0186】
更に、実施例1と同様に負摩擦帯電性のトナーに調製し、現像剤を作製した。評価結果を表1に示す。
【0187】
〔実施例6〕
実施例2で用いた材料と同じ材料を用い、ポリエステル樹脂76.0部、マスターバッチ12.5部、シリコーン系レベリング剤(変性ポリジメチルシロキサン)5.1部、赤外線吸収剤2.0部、及び帯電制御剤4.0部からなる成分をスーパーミキサーにて均一混合し、次いで2本ロール(製品名:ニーデックスMOS140−800、三井鉱山株式会社製)により溶融混錬し、冷却した後、ジェットミルによる微粉砕と風力分級機による分級とを行った。
【0188】
更に、実施例1と同様に負摩擦帯電性のトナーに調製し、現像剤を作製した。評価結果を表1に示す。
【0189】
【表1】

【0190】
表1に示すように、本発明に係る実施例1〜6のトナーを含む現像剤による結果では、レベリング剤をトナー母粒子に含まない比較例1の結果と比較して、光沢値は約2倍であり、定着性は3〜7倍改善しており、保存安定性にも優れていた。
【0191】
従って、本発明によれば、非加圧で短時間のレーザ定着方式の定着装置に用いても、定着性及び光沢性に優れた高品質のトナー画像を実現し得るレーザ定着用トナーを実現することが確認された。
【0192】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明のトナーは、当該トナーを含む一成分現像剤、又は当該トナーとキャリアとを含む二成分現像剤に適用可能であり、当該一成分現像剤又は二成分現像剤を用いて現像を行う現像装置、及び定着装置を備えた各種画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0194】
4 定着装置
100 画像形成装置
201 レーザ光
216 レーザ素子(レーザ光源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を転写材上の未定着のトナー像に照射し、トナー像を構成するトナーを、光のエネルギーを用いて溶融させ、転写材上に定着させる定着装置において用いられる、トナー母粒子に少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナーであって、
トナー母粒子にレベリング剤を含有していることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記レベリング剤は、その分子中に、結着樹脂と相溶し易い相溶性構造と、相溶し難い非相溶性構造とを有していることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
トナー母粒子中に前記レベリング剤を0.05〜5.0重量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
トナー母粒子にアミド系ワックスを更に含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のトナー。
【請求項5】
トナー母粒子にレーザ光熱変換剤を更に含有し、
前記トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤、レベリング剤、アミド系ワックス及びレーザ光熱変換剤を混合する工程を含む製造方法によって得られ、
前記工程では、アミド系ワックスとレーザ光熱変換剤との混合物を予め作製し、当該混合物を、結着樹脂、着色剤及びレベリング剤と混合することを特徴とする請求項4に記載のトナー。
【請求項6】
前記レベリング剤を少なくとも母粒子の内部に含有していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のトナー。
【請求項7】
前記レベリング剤が、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、高分子エーテル系レベリング剤、ノニオン系レベリング剤からなる群から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のトナー。
【請求項8】
レーザ光を転写材上の未定着のトナー像に照射し、トナー像を構成するトナーを、光のエネルギーを用いて溶融させ、転写材上に定着させる定着装置において用いられるトナーの製造方法であり、
結着樹脂、着色剤及びレベリング剤を含むトナー組成物を混合する混合工程を含むことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項9】
前記トナー組成物は、アミド系ワックス及びレーザ光熱変換剤を更に含み、
前記混合工程では、アミド系ワックスとレーザ光熱変換剤との混合物を予め作製し、当該混合物を、結着樹脂、着色剤及びレベリング剤と混合することを特徴とする請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
転写材上に形成された、複数のトナー像を重ね合わせた未定着のトナー像にレーザ光源より光を照射し、光のエネルギーを用いてトナー像を構成するトナーを、溶融させ、転写材上に定着させる定着装置であって、
トナーとして、請求項1〜7の何れか1項に記載のトナーを備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項11】
少なくとも、最後に重ね合わせるトナーとして、請求項1〜7の何れか1項に記載のトナーを用いることを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−232454(P2011−232454A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101226(P2010−101226)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】