説明

トナー及びトナーの製造方法と画像形成方法及び画像形成装置

【課題】定着工程における消費エネルギーがきわめて小さいにも関わらず、定着直後の画像強度が高く、画像屈曲対して強い画像が得られると共に、耐熱保存性にも優れたトナー、該トナーの製造方法、並びに、前記トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】着色剤と、結着樹脂と、を含み、当該トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を用いて記録媒体に定着されるトナーであって、結着樹脂は水に不溶かつ有機溶剤に可溶のセルロース誘導体であって、重量平均分子量が30,000から100,000であることを特徴とするトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びトナーの製造方法、並びに、前記トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置などのような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。特に、電子写真方式の画像形成装置は、普通紙に高精細な画像を高速で形成することができるため、広くオフィスで使用されている。このような電子写真方式の画像形成装置においては、記録媒体上のトナーを加熱して溶融させ、溶融したトナーを加圧することによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く用いられている。この熱定着方式は、高い定着速度及び高い定着画像品質等を提供することができるため、好適に用いられている。
【0003】
しかし、このような電子写真方式の画像形成装置における消費電力の約半分以上は、熱定着方式においてトナーを加熱することに消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、低消費電力(省エネルギー)の定着装置が望まれている。即ち、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させること、又はトナーを加熱することを必要としない定着方法が望まれている。特に、トナーを全く加熱することなくトナーを記録媒体に定着させる非加熱定着方法が低消費電力の点で理想的である。
【0004】
このような非加熱定着方法としては、例えばトナーを溶解または膨潤可能で、水に不溶または難溶な有機化合物が水に分散混合された水中油滴型の定着剤を、未定着のトナーが所定位置に配設された被定着物の表面から噴霧または滴下してトナーを溶解または膨潤させた後、被定着物を乾燥させるトナーの湿式定着方法が、特許文献1に提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の特許第3290513号公報記載の湿式定着方法においては、水に不溶又は難溶な有機化合物が、水に分散混合された水中油滴型の定着剤を用いているため、多量の定着剤を未定着トナーに付与した場合には、転写紙などの記録媒体(被定着物)が、定着剤の水分を吸収し、記録媒体にシワやカールが発生する。これにより、画像形成装置に必要とされる安定かつ高速な記録媒体の搬送を著しく損なうこととなる。そこで、乾燥装置を用いて、定着剤に含まれる多量の水を蒸発させることにより、記録媒体に付与された定着剤から水分を除去しようとすると、熱定着方式を用いる画像形成装置の消費電力に匹敵する電力を必要とすることとなる。
【0006】
また、撥水性処理された未定着トナーを弾かない定着液として、油性溶媒に、トナーを溶解又は膨潤させる材料を溶解させた油性の定着液が従来よりいくつか提案されている。
その一つとして例えば、特許文献2の特開2004−109749号公報には、トナーを構成する樹脂成分を溶解又は膨潤させる材料を成分としての脂肪族二塩基酸エステル等を希釈液(溶媒)として不揮発性のジメチルシリコーンで希釈した(溶解させた)定着液が提案されている。また、特許文献3の特開昭59−119364号公報には、静電気的方法で形成された未定着画像を、画像を乱すことなく鮮明にかつ容易に受像シート上に固着できる定着方法に用いることのできる定着用溶液として、トナーを溶解し、かつシリコーンオイルと相溶性を有する溶剤100容量に対し、シリコーンオイル8〜120容量部を混合してなる相溶状態の未定着トナー画像の定着用溶液が提案されている。このような油性の定着液は、撥水性処理された未定着トナーとの高い親和性を有する油性溶媒を含むため、撥水性処理された未定着トナーを弾くことなく、トナーを溶解又は膨潤させ、トナーを記録媒体に定着させることができる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の方法では、定着液を記録媒体に付与するため、膜厚が薄すぎると定着液の表面張力により付与手段(例えば典型的には塗布手段)へトナーがオフセットして問題となる。逆に、膜厚が厚すぎると定着液が記録媒体に過剰に付与されることになり、定着応答性の悪化や、定着液の流動によりトナー粒子が流され画像が劣化すること、記録媒体のカールの発生、画像形成装置内におけるジャムの発生などの問題が生じる。
【0008】
そこで特許文献4の特開2009−8967号公報では上記の種々の問題を同時に解決し得る定着方法として、泡状定着液を用いて定着を行ない、該泡状定着液を所望の膜厚に制御することが提案されている。
しかしながら、かかる提案をもってしても充分な定着性を有しているとはいえず、更なる改善への要求が高まっている。
【0009】
ところで、上記のような定着液を用いて記録媒体上へ積極的に定着させるトナー側の改善方法としては、トナーに対して軟化剤を3重量%添加したときのDSC測定において、トナーのガラス転移温度の変化幅である△Tgが30℃以上であるトナーを用いる定着方法が特許文献5において開示されている。特許文献5の特開2008−139504号公報に記載の定着方法では、軟化剤が少量の場合でもトナーと軟化剤との相溶性が充分であるため、トナーを充分軟化させることが可能となり、定着速度の高速化への対応が可能としたものである。即ち、トナーと軟化剤との相溶性を向上させるという観点から高速化を可能としたものである。
しかしながら、更なる定着速度の高速化が望まれていて、このためには他の観点からのアプローチが必要である。
【0010】
電子写真用途に用いられる結着樹脂は熱定着システムを達成する観点より、熱特性を分子量や分子骨格によって調整しやすい観点でポリエステルやスチレン−アクリル共重合体等が好適に用いられてきたが、これらは、本発明が対象とする、軟化剤を含有する定着液を用いてトナーを定着させる画像形成方法においては必ずしも適切な分子構造とはいえない。本発明が対象とする定着方式においては、トナーを紙に定着させるためにはトナーを充分に軟化させる必要があると同時に、軟化剤を含む定着液の浸透によりトナーを速やかに軟化させる必要があり、トナーの軟化状態が不充分であったり不均一であったりする場合や軟化速度が遅い場合には、特に高速印刷時にトナーの紙に対する密着性が充分に得られず、特に画像が剥がれ易いという問題があることが本発明において判った。
他方、セルロース誘導体をトナーに含有若しくは使用することは、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂等、他の易熱溶融性樹脂の場合に比較すれば、あまり一般的ではないが、これら樹脂材料が易溶融性である当然の結果としての高粘着性や易凝集性の阻止、トナー樹脂の高硬度化と使用前の常温保存性の確保、及び過帯電防止等の目的で用いることが提案されてはいる。
例えば特許文献6の特開2004−163640号公報には、感光体表面へのトナーフィルミング防止や画像形成装置部材表面への付着防止のため、エチルセルロースをワックス及び環状オレフィン樹脂と共に結着樹脂中に添加してオイルレストナーとすることが記載されており、特許文献7の特開2005−23322号公報および特許文献8の特開2005−346092号公報には、スチレン系やアクリル系の樹脂結合剤の乳化重合の際の分散助剤としてエチルセルロース等のセルロース誘導体を添加することにより、乳化粒子の合体を防止して、小粒径の粒度分布狭いトナー母体粒子を得ることが記載されており、特許文献9の特開2008−122604号公報および特許文献10の特開2008−89829号公報には、柔らかく粘着性、弾力性ある結着樹脂中に、粉砕助剤として脂肪酸セルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース誘導体を添加して、粉砕効率のよい粉砕トナーを製造することが記載されており、特許文献11の特開2007−279713号公報には、溶融乳化法の造粒工程でトナー原料の溶融混練物と混合させる水溶性分散剤の水溶液に、増粘によりせん断力を有効に伝播するせん断力増強剤としてカチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、ヒアルロン酸、カラギーナン、ローストビーンガム,グァーガム等のセルロース誘導体を添加することが記載されている。
しかしながら、これらは、トナー粒子に用いた結着剤樹脂の定着時の易軟化性の促進や溶媒への易溶解性の促進を意図するものとは、ほぼ逆の機能を期待したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、定着工程における消費エネルギーがきわめて小さいにも関わらず、定着直後の画像強度が高く、紙への密着性が高い画像が得られると共に、耐熱保存性にも優れたトナー、並びに、前記トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的とする。
また本発明は、前記トナーを安定的に、且つ、小粒径であると共にシャープな粒度分布で製造することができるトナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記問題点を解決するために、本発明者らが鋭意検討を行なった結果、トナーを構成する結着樹脂を適切に設計し、軟化剤を含有する定着液をトナー中に速やかに浸透させ、且つ、トナーを充分に軟化させることにより、高速印刷においてもトナーの紙(記録媒体)に対する定着強度が高く、画像の剥がれを抑制可能であり、耐熱保存性にも優れたトナーを提供することができる。
さらに本発明のトナー粒子は粒径分布が狭いという特徴から、トナーへ定着液が付与された場合、トナーへの軟化剤の浸透が均一になり、すなわち個々のトナー粒子の軟化の程度が均一になるため、トナー粒子が単独で定着するようなハーフトーン画像において、更に定着したトナーが剥がれにくい特徴を発揮する。この結果、トナーの樹脂を溶解または軟化させる軟化剤を含有する定着液を用いてトナーを記録媒体に定着させる画像形成方法において、定着後に特に紙への密着性の高いトナーを提供することができる。
【0013】
即ち、上記課題を解決するために本発明に係るトナー及びトナーの製造方法、並びに、前記トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置は、具体的には下記(1)〜(19)に記載の技術的特徴を有する。
(1):着色剤と、結着樹脂と、を含み、当該トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を用いて記録媒体に定着されるトナーであって、結着樹脂は水に不溶かつ有機溶剤に可溶のセルロース誘導体であって、重量平均分子量が30,000から100,000であることを特徴とするトナーである。
(2):重量平均粒子径が3.0〜6.0μmであり、且つ、重量平均粒子径/個数平均粒子径が1.15以下であることを特徴とする上記(1)に記載のトナーである。
(3):前記重量平均粒子径/個数平均粒子径が1.10以下であることを特徴とする上記(2)に記載のトナーである。
(4):前記結着樹脂がエチルセルロールでありエチル基の置換度が40〜50%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のトナーである。
(5):着色剤と、結着樹脂と、を含み、当該トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を用いて記録媒体に定着されるトナーの製造方法であって、前記トナーの結着樹脂は水に不溶かつ有機溶剤に可溶のセルロース誘導体であって、重量平均分子量が30,000から100,000であり、工程(A):前記結着樹脂及び前記着色剤を含有するトナー組成物を分散乃至溶解させたトナー組成液が満たされた液室から、該液室に設けられた複数のノズルが形成された薄膜と、該薄膜に平行な振動面を持つ振動発生手段と、を用いて前記トナー組成液を前記複数のノズルから周期的に液滴化して液滴を吐出し、工程(B):次いで、前記液滴を固化させてトナーを製造することを特徴とするトナーの製造方法である。
(6):前記ノズルは、径が4μm乃至20μmであり、前記振動発生手段は、振動周波数が20kHz以上2.0MHz未満であることを特徴とする上記(5)に記載のトナーの製造方法である。
(7):前記液室に配置されるノズルは、10乃至5,000個であることを特徴とする上記(5)または(6)に記載のトナーの製造方法である。
(8):前記液室の外部に気流路が設けられ、前記複数のノズルのトナー組成液の吐出方向に気流が形成されてなり、前記気流路は、前記トナー組成液が前記複数のノズルから吐出される位置の直後で、気流が通過する断面積を縮小せしめる気流絞りが設けられてなることを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれか1項に記載のトナーの製造方法である。
(9):前記トナー組成液は、溶媒を含有し、前記工程(B)は、前記液滴を溶媒除去部で乾燥することを特徴とする上記(5)〜(8)のいずれか1項に記載のトナーの製造方法である。
(10):前記工程(B)は、前記溶媒除去部内で液滴吐出方向と同方向に流れる乾燥気体によって前記液滴を搬送して溶媒を除去することを特徴とする上記(9)に記載のトナーの製造方法である。
(11):重量平均粒粒子径が3.0〜6.0μmであり、且つ、重量平均粒子径/個数平均粒子径が1.15以下であることを特徴とする上記(5)〜(10)のいずれか1項に記載のトナーの製造方法である。
(12):前記結着樹脂がエチルセルロールでありエチル基の置換度が40〜50%であることを特徴とする上記(5)〜(11)のいずれか1項に記載のトナーの製造方法である。
(13):トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を記録媒体上のトナー像に付与して該トナーを記録媒体に定着する定着方法において、前記トナーは、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のトナーであることを特徴とする定着方法である。
(14):前記定着液は、水を含む希釈剤と、当該定着液を泡状とする起泡剤と、軟化剤と、を含有し、前記定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成工程と、前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに調整する膜厚調整工程と、前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー像に付与する泡状定着液付与工程と、を含むことを特徴とする上記(13)に記載の定着方法である。
(15):前記軟化剤は、常温で固体であり、且つ、前記希釈剤に可溶であり、当該希釈剤に溶解している状態で前記トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる固体可塑剤であることを特徴とする上記(14)に記載の定着方法である。
(16):前記固体可塑剤は、ポリエチレングリコールであることを特徴とする上記(15)に記載の定着方法である。
(17):静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、前記記録媒体上に転写されたトナー像を定着させる定着工程と、を含む画像形成方法であって、前記定着工程は、上記(13)〜(16)のいずれか1項に記載の定着方法により行なわれることを特徴とする画像形成方法である。
(18):静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体、現像剤を前記現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材、及び、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器を備え、前記静電潜像を前記現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、前記記録媒体上に転写されたトナー像を定着させる定着手段と、を有する画像形成装置であって、前記定着手段は、定着液を記録媒体上のトナーに付与する定着液付与手段を有し、前記トナーは、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置である。
(19):静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体、現像剤を前記現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材、及び、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器を備え、前記静電潜像を前記現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、前記記録媒体上に転写されたトナー像を定着させる定着手段と、を有する画像形成装置であって、前記定着手段は、定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、前記泡状定着液を記録媒体上のトナー像に付与する泡状定着液付与手段と、前記泡状定着液付与手段の泡状定着液の膜厚を調整する膜厚調整手段と、を有し、前記トナーは、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、定着工程における消費エネルギーがきわめて小さいにも関わらず、定着後の画像強度が高く、紙への密着性の強い画像が得られると共に、耐熱保存性にも優れたトナー、並びに、前記トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
また本発明によれば、前記トナーを安定的に、且つ、小粒径であると共にシャープな粒度分布で製造することができるトナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明で用いられるトナーの製造装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1の液滴吐出ユニットを示す図である。
【図3】図1の液滴吐出ユニットを示す側面断面図である。
【図4】複数の液滴吐出ユニットが乾燥塔に保持されている構成を示す断面図である。
【図5】図1のノズルの一部を示す断面図である。
【図6】図5のノズルの変形例を示す断面図である。
【図7】図2の液滴吐出ユニットの変形例を示す概略断面図である。
【図8】図2の液滴吐出ユニットの変形例を示す概略断面図である。
【図9】図1のトナーの製造装置の変形例を示す模式図である。
【図10】図9の液滴吐出ユニットを示す図である。
【図11】円形膜の周囲を固定した場合のたわみ振動の基本振動を示す図である。
【図12】中心部が凸形状である円形膜の周囲を固定した場合のたわみ振動を示す図である。
【図13】本発明に係る定着方法における定着液付与後のトナーの定着の様子を示す概略断面図である。
【図14】泡状定着液の構成を示す概略断面図である。
【図15】本発明に係る定着方法を実施するための定着装置における泡状定着液生成手段の構成の一例を示す概略図である。
【図16】(A)は本発明に係る定着方法を実施するための定着装置における泡状定着液生成手段及び泡状定着液付与手段の一例を示す概略構成図である。(B)は(A)の一部を拡大した拡大図である。
【図17】(A)膜厚調整用ブレードを用いた泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整の様子を示す概略図である。(B)膜厚調整用ブレードを用いた泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整の様子を示す概略図である。
【図18】本発明に係る定着方法を実施するための定着装置の一実施の形態における構成を示す概略図である。
【図19】本発明に係る定着方法を実施するための定着装置のその他の実施の形態における構成を示す概略図である。
【図20】本発明に係る定着方法を実施するための定着装置のさらにその他の実施の形態における構成を示す概略図である。
【図21】本発明に係る画像形成装置の一実施の形態における構成を示す概略図である。
【図22】図21の一部である画像(作像)形成部を拡大した拡大図である。
【図23】本発明に係る画像形成装置のその他の実施の形態における構成を示す概略図である。
【図24】図23の一部である画像形成部(作像手段)を拡大した拡大図である。
【図25】図23の一部である定着手段(定着装置)を拡大した拡大図である。
【図26】本発明に係る画像形成装置のさらにその他の実施の形態における構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔トナー〕
本発明に係るトナーは、着色剤と、結着樹脂と、を含み、当該トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を用いて記録媒体に定着されるトナーであって、結着樹脂は水に不溶かつ有機溶剤に可溶のセルロース誘導体であって、重量平均分子量が30,000から100,000であることを特徴とする。
次に、本発明に係るトナーについてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0017】
−結着樹脂種類の効果−
本発明に係るトナーは、トナーの樹脂を溶解または膨潤させる軟化剤を含有する定着液を用いて記録媒体に定着させるが、その際定着液中の軟化剤がトナー中に浸透することでトナーが軟化され、その後加圧ローラにて記録媒体に押し付けられることによって記録媒体にトナーが定着される。このとき重要となるのがトナーに対する軟化剤の浸透速度と、トナーの軟化状態である。特に、高速印刷時においては、定着液がトナーに触れてから加圧ローラによりトナーが加圧されるまでの時間が極短時間であるため、軟化剤の浸透速度を上げることが必須となる。
【0018】
本発明者らは鋭意検討した結果、トナーに関する要件としては、トナーを構成する結着樹脂の種類がこれらの特性に対して特に大きな影響を及ぼすという知見が得られた。これは軟化剤成分が結着樹脂に浸透し、結着樹脂を軟化させ、紙表面にトナーが接着するという本発明のメカニズムにおいて、結着樹脂の構造が影響しているということを示している。
詳細なメカニズムを充分解明するには至っていないが、セルロース誘導体の持つ極性や分子同士の隙間、いわゆる自由体積が軟化剤の浸透および拡散に適したものであると考えることができる。また、本発明の結着樹脂はセルロース誘導体であることで、紙を構成するセルロースとの親和性が高いことも、結着樹脂と紙との高い密着性に達成するうえで大きく影響していると考えられる。
【0019】
<<結着樹脂>>
本発明で前記結着樹脂として用いるセルロース誘導体について更に詳しく説明する。セルロースはβ−グルコースが重合したものであり、植物細胞の細胞壁および繊維の主成分で、地球上で最も多く存在する炭水化物である。セルロース自体の性能としては、水をはじめ有機溶剤には全く溶解しない性質を持っている。これはセルロースの単位分子内にある3つの水酸基による強力な水素結合によって分子間の結合力が強いためといわれている。
この性質によりセルロースは工業的に利用しにくいので、水酸基の一部または全てを反応させ、別の官能基を導入することで水酸基による分子間の水素結合を弱め、水または有機溶剤に可溶化させたものがある。これらを一般的にはセルロース誘導体と呼んでいる。
水酸基に化学的に別の官能基や構造を導入することを変性といい、セルロース分子内全ての水酸基の変性割合で変性の程度が示される。
セルロース誘導体は水酸基より置換された構造の違いによって水溶性を示すものと、水には溶けず、有機溶剤のみに溶解性を示すものに分けられる。水に溶解するものは一般的には、カルボキシメチルセルロースやカルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性セルロース誘導体を本発明に適用しようとすると、定着後画像が吸水して画像同士あるいは画像が別の用紙に接着してしまうといった画像ブロッキングを生じたため、本発明には適していない。一方で、水に不溶で且つ有機溶剤に溶解するセルロース誘導体は前述の吸水による画像ブロッキングの悪影響がなく、種々のトナー製造工程を用いることができるので好適である。
水に不溶且つ有機溶剤に可溶なセルロース誘導体であり工業的に利用されているものとして代表的なものにニトロセルロース、酢酸セルロースおよびエチルセルロースがある。
いずれもセルロースの単位分子内の水酸基を全て置換しないほうが本発明の目的に対しては好適である。これはセルロース単位分子内の水酸基が残っていることで本来のセルロースとしての性質が維持された状態で、セルロースの弱点である溶剤への溶解を改善できるためである。本来のセルロースの性能を残すことで、紙への高い密着性が達成される。
具体的にはセルロース分子内全ての水酸基のうち40〜60%程度の水酸基を変性させることが好ましい。これより変性率が低いと有機溶剤への溶解性が低下し、これより高いとセルロースとしての性能が低下し、紙との親和性が低下するばかりでなくセルロース誘導体を作成することが困難となる。
エチルセルロースは水に不溶且つ有機溶剤に可溶なセルロース誘導体として特に有用である。これは溶剤に溶解させたときに低粘度を示すため、トナー作成時においては作業性が向上する。また、溶剤を用いなくとも溶融混練することも可能であることからも、トナーを得る手段として粉砕法を適用することもできる。更にエチルセルロースはもともと耐屈曲性が高い特性があり、定着性向上にも寄与していると考えられる。また、エチルセルロースは結晶性を持たない高分子であるため、透明性に優れ、分子に適度な極性を有するために顔料の分散性が良好であるため、トナーとしたときの発色性も高い。ニトロセルロースは透明性が高く、光学的な特性は良好であるが、燃焼性が高い特徴があるため、電子写真用途には適していない。酢酸セルロースは、変性率を調整したとしても有機溶剤への溶解性が低く、溶解させたときの粘度が高いという特性がある。
【0020】
本発明のトナーにおいて、トナーの重量平均分子量が30,000以上100,000以下であることが好ましく、より好ましくは30,000以上8,0000以下であり、更に好ましくは30,000以上50,000以下である。該トナーの重量平均分子量が30,000未満のものは評価できなかったが30,000の分子量のものでも本発明の目的に対して充分な特性を有していた。該トナーの重量平均分子量100,000を超えると、トナーに対する定着液の浸透速度が遅くなると共に、軟化剤により軟化されにくくなるため好ましくない。尚、本発明におけるトナーの重量平均分子量とは、THF(テトラヒドロフラン)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した分子量分布における重量平均分子量を意味する。
【0021】
前記トナーの重量平均分子量の測定方法としては、例えば、GPC(gel permeation chromatography)を用いて、以下のような条件で測定することができる。
【0022】
装置:GPC−150C(ウォーターズ社製)
カラム:KF801〜807(ショウデックス社製)
温度:40℃
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
流速:1.0ml/分
試料:0.05〜0.6重量%の試料を0.1ml注入
検量線作成用単分散ポリスチレン標準試料:分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10(東洋ソーダ工業社製)
【0023】
以上の条件で測定したトナーの分子量分布について単分散ポリスチレン標準試料により作成した検量線を使用してトナーの重量平均分子量を算出することができる。
【0024】
一般的にはトナーのガラス転移温度(Tg)は50℃以上であることがトナーの耐熱保存性を満足するために好ましく、より好ましくは60℃以上である。該トナーのガラス転移温度(Tg)が50℃以下であると、トナーが保障する一般的な保管条件の上限においてトナー粒子のブロッキングを生じやすくなるためである。一般的な熱定着システムでは結着樹脂のガラス転移温度が70℃を超えると、溶融し難くなるため定着性が悪化するが、本発明の軟化剤による定着においては熱定着用トナーに用いられる結着樹脂よりガラス転移温度が高くとも、定着液によって軟化すれば定着性に障害はないため、特に上限はない。
【0025】
前記トナーのガラス転移温度(Tg)の測定方法としては、例えばDSCシステム(示差走査熱量計)(「DSC−60」、島津製作所製)等を用いて測定することができる。具体的には、トナーを乳鉢にて充分に粉砕し、約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、20℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱し、DSCによりDSC曲線を計測する。その後、150℃から降温速度10℃/minにて0℃まで冷却した後、再度昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱し、DSC曲線を計測する。この2回目の昇温によるDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、結着樹脂に由来する吸熱ピークの解析を行ない、吸熱ピークの低温側ショルダー温度から、これをトナーのガラス転移温度(Tg)として求めることができる。結着樹脂のガラス転移温度(Tg)についても同様に測定できる。
【0026】
本発明のトナーでは、前記軟化剤を30質量%含有した定着液を前記結着樹脂に塗布した際の該軟化剤の浸透時間が1.0秒/1μm以下であることが望ましい。該軟化剤の浸透時間が1.0秒/1μmを超える場合、特に高速印刷において軟化剤の浸透速度が不充分となり、極短い定着工程の間ではトナーが内部まで充分に軟化されず、擦れ等により定着したトナーが剥がれてしまう問題が発生することがあるため好ましくない。
【0027】
<軟化剤の浸透時間の測定方法>
使用電極:ビー・エー・エス株式会社製 くし形電極Au10μm(絶縁膜なし) 型番012259
キャピラリー:アズワン製 EMマイスターミニキャップス4μL
樹脂をメチルエチルケトン(溶媒)に溶媒比率70%で溶解させ、0.45μmのフィルターを用いて異物を除去し樹脂溶液を得た。
MIKASA社製スピンコーター(機種名:1H−DX)を用いて3,000rpm 20秒の条件で、くし形電極に前記樹脂溶液をスピンコートし、溶媒を揮発させるために、100℃の雰囲気下で2時間加熱し、乾燥室内で室温まで冷却することで薄膜を得た。この時点で薄膜の膜厚を触針式段差計(DECTAK3)にて計測した。
測定箇所付近にキャピラリーにて液接触させ、ALS社製ポテンショスタット(機種名:CHI−660C)にて、接液してから液とくし形電極間に流れる電流値が10−8Aを超えるまでの時間を計測した。その際の電圧は5Vにて測定した。
得られた薄膜の膜厚と前記くし形電極に流れるまでの時間から、下記式で示されるFICKの第二方程式を用いた拡散方程式を用いて、厚み1μmあたりの、液が1%まで拡散した時間を浸透時間として算出した。(FICKの第二方程式については非特許文献1を参照。固体内の拡散については非特許文献2を参照。)
【0028】
【数1】

【0029】
上記式において、Dは拡散係数(diffusion coefficient)で、次元は[L−1]である。また、cは濃度で、次元は[ML−3]である。さらに、tは時刻で、次元は[T]である。
【0030】
次いで、本発明に係るトナーを構成するトナー組成物(トナー材料)について以下に説明する。本発明に係るトナーは、結着樹脂と、着色剤と、を含有し、必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0031】
結着樹脂は上記のセルロース誘導体樹脂の他、公知のいかなる樹脂を併用してもよく、併用する樹脂は、用途・目的に応じて適宜好ましいものを選択することができる。一般に、併用される樹脂として好ましいものは、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびそれらの併用であり、さらに好ましいのは、ポリウレタン樹脂、およびポリエステル樹脂であり、とくに好ましいのは、1,2−プロピレングリコールを構成単位として含有する、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂である。また、トナーの保存性や、水系造粒のしやすさ等の物性調整の観点から直鎖状ポリエステルが好ましい。
【0032】
<<着色剤>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記着色剤の前記トナーにおける含有量としては、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
【0033】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。該樹脂としては、結着樹脂と同じものを使用することが望ましい。
【0034】
<<その他の成分>>
上述のとおり本発明に係るトナーにはその他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、帯電制御剤、無機微粒子、流動性向上剤、磁性体などが挙げられる。
【0035】
−帯電制御剤−
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、後述する静電潜像担持体(感光体)に帯電される電荷の正負に応じて、正又は負の帯電制御剤を適宜選択して用いることができる。
【0036】
−負の帯電制御剤−
前記負の帯電制御剤としては、例えば、電子供与性の官能基を持つ樹脂又は化合物、アゾ染料、有機酸の金属錯体などを用いることができる。
具体的には、ボントロン(品番:S−31、S−32、S−34、S−36、S−37、S−39、S−40、S−44、E−81、E−82、E−84、E−86、E−88、A、1−A、2−A、3−A)(いずれも、オリエント化学工業株式会社製)、カヤチャージ(品番:N−1、N−2)、カヤセットブラック(品番:T−2、004)(いずれも、日本化薬株式会社製);アイゼンスピロンブラック(T−37、T−77、T−95、TRH、TNS−2)(いずれも保土谷化学工業株式会社製);FCA−1001−N、FCA−1001−NB、FCA−1001−NZ、(いずれも、藤倉化成株式会社製)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
−正の帯電制御剤−
前記正の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料等の塩基性化合物;4級アンモニウム塩等のカチオン性化合物;高級脂肪酸の金属塩などを用いることができる。
具体的には、ボントロン(品番:N−01、N−02、N−03、N−04、N−05、N−07、N−09、N−10、N−11、N−13、P−51、P−52、AFP−B)(いずれも、オリエント化学工業株式会社製);TP−302、TP−415、TP−4040(いずれも、保土谷化学工業株式会社製);コピーブルーPR、コピーチャージ(品番:PX−VP−435、NX−VP−434)(いずれも、ヘキスト社製);FCA(品番:201、201−B−1、201−B−2、201−B−3、201−PB、201−PZ、301)(いずれも、藤倉化成株式会社製);PLZ(品番:1001、2001、6001、7001)(いずれも、四国化成工業株式会社製)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記帯電制御剤の添加量は、特に制限はなく、結着樹脂の種類、分散方法を含めたトナー製造方法などに応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記添加量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電気的吸引力が増大し、電子写真用現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがあり、0.1質量部未満であると、帯電立ち上り性や帯電量が充分でなく、トナー画像に影響を及ぼしやすいことがある。
【0039】
−無機微粒子−
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等を用いることができ、シリコーンオイルやヘキサメチルジシラザンなどで疎水化処理されたシリカ微粒子や、特定の表面処理を施した酸化チタンを用いることがより好ましい。
【0040】
前記シリカ微粒子としては、例えば、アエロジル(品番:130、200V、200CF、300、300CF、380、OX50、TT600、MOX80、MOX170、COK84、RX200、RY200、R972、R974、R976、R805、R811、R812、T805、R202、VT222、RX170、RXC、RA200、RA200H、RA200HS、RM50、RY200、REA200)(いずれも、日本アエロジル株式会社製)、HDK(品番:H20、H2000、H3004、H2000/4、H2050EP、H2015EP、H3050EP、KHD50)、HVK2150(いずれも、ワッカーケミカル社製)、カボジル(品番:L−90、LM−130、LM−150、M−5、PTG、MS−55、H−5、HS−5、EH−5、LM−150D、M−7D、MS−75D、TS−720、TS−610、TS−530)(いずれも、キャボット社製)などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記無機微粒子の添加量としては、トナー母体粒子100質量部に対し、0.1質量部〜5.0質量部が好ましく、0.8質量部〜3.2質量部がより好ましい。
【0042】
−磁性体−
本発明で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金。(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
【0043】
磁性体として具体的に例示すると、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe1O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
【0044】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されていることが好ましい。
【0045】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
前記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒子径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0046】
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0047】
−粒形分布の効果−
トナーは一般的に粒径分布を持っている。
本発明のトナーに用いられる画像形成方法はトナーの結着樹脂を溶解または膨潤させる軟化剤を含有する定着液を用いてトナーを定着させるが、定着液中の軟化剤がトナーに染み込むことで軟化が達成され、その後加圧ローラにて記録媒体に押し付けられることによって記録媒体へのトナーの定着が達成される。
トナーの粒径分布が広い場合、定着品質が不安定化、すなわちハーフトーン画像での画像擦れに対する耐性が低く、逆に粒形分布が狭い場合、耐性が高いことがわかった。
【0048】
このメカニズムとしては明確ではないが、トナーと定着液の接触によってトナーを軟化させるにあたり、粒径の大きなトナーではトナー内部まで浸透するのに時間がかかるため軟化が遅く、小さなトナーでは逆に軟化が早いため、粒径の違いによってトナーの軟化状態が異なることが推測される。また、ハーフトーン画像はトナーが粒子状態として記録媒体上に存在するため、粒径の不均一なトナーを記録媒体に定着させる場合には、粒径の大小で軟化速度に違いを生じ、定着直後においては、粒径の大きなトナー粒子の記録媒体に対する接着強度が不充分となり、選択的に剥がれてしまうと考えられる。これは、定着液がトナー中に浸透する深さがある程度限定されており、比較的表層部しか軟化していないことによると考えられる。すなわち、粒径の大きなトナーでは充分に内部まで軟化剤が浸透しないため、定着ニップ時にトナーが変形できず、トナーが紙との間に充分な結合力を持つことができないためと考えられる。逆に粒径の小さなトナーは内部まで浸透するため、変形も大きくトナーは充分につぶれるために、記録媒体との接触面積も大きく取れるため定着後画像屈曲対してははがれやにくいと考えられる。
【0049】
このように、本発明のトナーは粒径分布が狭く、粒径が小さいことが好ましい。こうすることで、トナーへ定着液が塗布された場合、トナーへの軟化剤の浸透が均一になるため、定着直後に充分な画像強度を有することができる。
【0050】
従って、本発明のトナーは一般的なトナーに比べて粒径が小さく、粒径分布幅が狭いことを特徴とする。平均粒径としては、3.0〜6.0μmが好ましく、軟化応答の速さからより好ましくは3.0〜5.5μmである。平均粒径が3.0μmを下回ると、電子写真プロセスにおける現像工程および転写工程に備わる未転写トナーのクリーニングが達成できないため、好ましくない。平均粒径が6.0μmより大きいと軟化剤浸透によるトナー表面可塑化の応答層度が遅くなるため、定着直後の画像強度を得難くなる。
【0051】
粒度分布としては重量平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)の比で比較することができ、Dv/Dnで示すことができる。Dv/Dn値は最も小さいもので1.0であり、これはすべての粒径が同一であることを示している。Dv/Dnが大きいほど粒径分布が広いことを示す。一般的な粉砕トナーはDv/Dn=1.15〜1.25程度である。
また重合トナーはDv/Dn=1.10〜1.15程度である。本発明のトナーはDv/Dn=1.15以下とすることで印刷品質に効果が確認されており、より好ましくはDv/Dn=1.10以下の場合である。
【0052】
前記トナーの平均粒子径は、次のようにして求めることができる。
<粒度分布>
本発明のトナーの重量平均粒子径(Dv)及び個数平均粒子径(Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行なった。具体的にはガラス製100mlビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.5ml添加し、各トナー0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II本多電子社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター製)を用いて測定を行なった。測定は装置が示す濃度が8±2%に成るように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8±2%にすることが重要である。
この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とした。トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定後、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を求めることができる。粒度分布の指標としては、トナーの重量平均粒子径(Dv)を個数平均粒子径(Dn)で除したDv/Dnを用いる。完全に単分散であれば1となり、数値が大きいほど分布が広いことを意味する。
【0053】
<トナー製造方法>
トナー製造方法に関しては目的の粒径分布が得られれば、どのような手段でトナーを得ても構わない。一般的には下記のようなトナー製造方法が存在するが、粒径分布を精密に調整するためには乳化重合法、懸濁重合法、水系媒体中に特定の結着樹脂溶解液を乳化乃至分散させる方法、噴射造粒法が望ましい。
【0054】
−粉砕法−
前記粉砕法は、例えば、トナー材料を溶融乃至混練し、粉砕、分級等することにより、前記トナーの母体粒子を得る方法である。なお、該粉砕法の場合、前記トナーの平均円形度を高くする目的で、得られたトナーの母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、前記機械的衝撃力は、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いて前記トナーの母体粒子に付与することができる。
【0055】
上記記載のトナー材料を混合し、該混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。該溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。例えば、株式会社神戸製鋼所製KTK型二軸押出機、東芝機械株式会社製TEM型押出機、有限会社ケイシーケイ製二軸押出機、株式会社池貝鉄工所製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。この溶融混練は、バインダー樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行なうことが好ましい。
具体的には、溶融混練温度は、バインダー樹脂の軟化点を参考にして行なわれ、該軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。
【0056】
前記粉砕では、前記混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターとの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
前記分級は、前記粉砕で得られた粉砕物を分級して所定粒径の粒子に調整する。前記分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行なうことができる。
前記粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中に分級し、所定の粒径のトナーを製造する。
【0057】
−噴射造粒工法−
噴射造粒工法は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を分散ないし溶解させたトナー組成液が満たされた液室を有し、前記液室に設けた複数のノズルが形成された薄膜及び、前記薄膜に平行な振動面を持つ振動発生手段で構成された液滴化手段を用いて、前記トナー組成液を、前記複数のノズルから周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、前記放出されたトナー組成液の液滴を固化させる粒子形成工程からトナーを製造する方法であり、本発明のトナーを製造するための製造方法として好適に用いられる。
【0058】
換言すると、噴射造粒工法は、工程(A):結着樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を分散乃至溶解させたトナー組成液が満たされた液室から、該液室に設けられた複数のノズルが形成された薄膜と、該薄膜に平行な振動面を持つ振動発生手段と、を用いて前記トナー組成液を前記複数のノズルから周期的に液滴化して液滴を吐出し、工程(B):次いで、前記液滴を固化させてトナーを製造する方法である。
【0059】
従来の加熱加圧定着方式で用いられるトナーには、定着時のホットオフセット等を防止することを目的に、トナー材料として、離型剤が用いられてきた。この離型剤は、熱ローラ定着を行なう際に溶融し、ローラと記録媒体上のトナーとの付着を防止する効果を有する物質(低分子量ポリオレフィン・ワックス等)である。
しかしながら、これら離型剤はトナーの結着樹脂中への均一分散は困難であり、離型剤がトナー表面などに多く存在する場合には、耐ブロッキング性の低下、静電潜像担持体(感光体とも称する。)、キャリア等へのフィルミング、スペント化、経時での部材汚染等の問題を生ずる原因ともなりうる。
【0060】
一方、トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を用いて記録媒体にトナーを定着させる方法に用いられるトナーは、非加熱の定着方法に用いられるものであるから、熱ローラ定着を行なう際に溶融し、ローラと記録媒体上のトナーとの付着を防止する効果を有する物質を含有する必要がない。
【0061】
他方、噴射造粒法でトナー材料として離型剤を含むトナーを製造する場合において、噴射ノズルが詰まり、安定的に液滴を放出することができず、小粒径かつシャープな粒度分布のトナーを得るのは困難であった。
詰まりの原因について分析した結果、トナー材料に含まれる微粒子化させた離型剤粒子の凝集体や、微粒子化させた離型剤粒子のうちで比較的粒径の大きいものがノズル穴を閉塞することが判明した。特に微粒子化させた離型剤粒子は、トナー組成液を放置しておくだけでも凝集し凝集体を形成する傾向があることがわかっており、その改善はきわめて困難である。
【0062】
本発明のトナーは材料として離型剤を含まないため、複数のノズルから周期的に液滴を放出しても噴射ノズルを詰まらせることがないから、噴射像粒法で容易に製造することができ、結果として従来にはない小粒径かつシャープな粒度分布を満足する非加熱定着用のトナーを得ることができる。
【0063】
噴射造粒工法について図面と共にさらに詳細に説明する。
図1に、本発明で用いられるトナーの製造装置の一例を示す。トナーの製造装置(100)は、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散させたトナー材料液(トナー組成液)(L)を吐出する液滴吐出ユニット(110)と、液滴吐出ユニット(110)の下方に配置され、液滴吐出ユニット(110)から吐出された液滴(L’)を、乾燥気体(G)を用いて乾燥して母体粒子Tを形成する乾燥塔(溶媒除去部)(120)と、母体粒子(T)を捕集する捕集部(130)と、捕集部(130)で捕集された母体粒子(T)を貯留する貯留部(140)と、液滴吐出ユニット(110)にトナー材料液(L)を供給する供給部(150)とを有する。なお、乾燥気体(G)とは、大気圧下の露点温度が−10℃以下である気体を意味する。
【0064】
図2に、液滴吐出ユニット(110)を示す。液滴吐出ユニット(110)は、トナー材料液(L)が搬送される流路(111)と、振動部材(振動発生手段)(112)を有する。なお、図2(a)及び(b)は、それぞれ概略断面図及び底面図である。
【0065】
流路(111)は、複数の吐出口(N)が形成されている薄膜(111a)、流路部材本体(111b)及びトナー材料液(L)へ振動を作用させる液室(111c)を有する。
【0066】
薄膜(111a)は、トナー材料液(L)に含まれる有機溶媒に耐性を有する接合部材を用いて、流路部材本体(111b)と接合されている。
【0067】
薄膜(111a)を構成する材料としては、弾性率が大きい材料であれば、特に限定されないが、ニッケル、ニッケル合金、SUS、ケイ素、酸化ケイ素等が挙げられるが、アスペクト比が大きい吐出口を精度よく形成できることから、ニッケル、ニッケル合金、ケイ素、酸化ケイ素が好ましい。
【0068】
薄膜(111a)の製造方法としては、電鋳法、シリコンプロセス等が挙げられる。また、パンチを用いて、吐出口(N)を形成することにより、薄膜(111a)を製造してもよい。
【0069】
薄膜(111a)は、通常、厚さが5〜500μmであり、吐出口(N)の開口径(ノズルの径)が4〜20μmである。厚さが5μm未満であると、薄膜(111a)の剛性が小さくなることがあり、500μmを超えると、トナー材料液(L)を吐出することが困難になることがある。また、吐出口(N)の開口径が4μm未満であると、吐出口(N)が目詰まりしやすくなることがあり、20μmを超えると、トナーに適した粒径の母体粒子(T)を形成することが困難になることがある。
なお、吐出口(N)の開口径は、吐出口(N)の形状が真円であれば、直径を意味し、楕円であれば、短径を意味する。
【0070】
また、薄膜(111a)には、吐出口(N)が10〜5,000個形成されている。吐出口(N)が10個未満であると、生産性が低下することがあり、5,000個を超えると、粒度分布が狭い母体粒子を形成することが困難になることがある。
【0071】
なお、流路(111)には、支持部材(不図示)が設けられており、これにより、液滴吐出ユニット(110)が乾燥塔(120)の天面部に保持されている。このとき、液滴吐出ユニット(110)は、乾燥塔(120)の側面に保持されていてもよい。
【0072】
振動部材(112)は、薄膜(111a)に平行な面を有する電歪振動子(112a)、電歪振動子(112a)で発生したたわみ振動の振幅を増幅するホーン(112b)、電歪振動子(112a)を挟持する電極(112c)及び(112d)、電極(112c)及び(112d)の間に交流電圧を印加する電源(112e)を有する。このとき、電極(112c)及び(112d)の間に交流電圧を印加すると、電歪振動子(112a)の薄膜(111a)に対して平行な面は、薄膜(111a)に対して垂直な方向に周期的にたわみ振動する。さらに、電歪振動子(112a)で発生したたわみ振動の振幅がホーン(112b)で増幅され、ホーン(112b)の薄膜(111a)に対して平行な面(P)は、薄膜(111a)に対して垂直な方向に周期的にたわみ振動する。その結果、薄膜(111a)が周期的にたわみ振動し、複数の吐出口(N)からトナー材料液(L)が吐出される。
【0073】
薄膜(111a)がたわみ振動する周波数は、通常、20kHz以上2MHz未満であり、50以上500kHz未満が好ましい。周波数が20kHz未満であると、吐出口(N)が目詰まりしやすく、振動部材(112)による振動によってトナー材料液(L)がキャビテーションを起こし、トナー材料液(L)吐出が不安定化することがある。2MHz以上であると、粒度分布が狭い母体粒子Tを形成することが困難になることがある。このとき、電歪振動子(112a)がたわみ振動する振動波形としては、特に限定されないが、sin波形、矩形波形等が挙げられる。
【0074】
電歪振動子(112a)としては、特に限定されないが、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられる。圧電セラミックスは、一般に、振動の変位が小さいため、積層体として用いられる。また、これら以外の電歪振動子(112a)としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の圧電単結晶材料等が挙げられる。
【0075】
また、電歪振動子(112a)としては、圧電セラミックスが機械的に結合されており、高強度であることから、ボルト締めランジュバン型振動子が好ましい。これにより、高振幅で励振するときに破損を抑制することができる。
【0076】
なお、電歪振動子(112a)の代わりに、磁歪振動子を用いて、電極(112c)及び(112d)の間に交流電流を印加してもよい。磁歪振動子としては、特に限定されないが、ニッケル、鉄、フェライト等の強磁性体が挙げられる。
【0077】
ホーン(112b)は、電歪振動子(112a)で発生したたわみ振動の振幅を増幅することができるため、電歪振動子(112a)で発生するたわみ振動の振幅が小さくてもよく、機械的負荷が軽減するため、振動部材(112)を長寿命化することができる。このとき、ホーン(112b)の薄膜(111a)に対して平行な面Pが最大振動面となるように設計されている。
【0078】
なお、電歪振動子(112a)で発生するたわみ振動の振幅が大きい場合は、ホーン(112b)を省略してもよい。
【0079】
液滴吐出ユニット(110)は、図3に示すように、トナー材料液(L)が吐出される方向と略同一の方向に乾燥気体(G’)を供給する流路(113)が形成されている。乾燥気体(G’)の速度V1は、噴射された液滴の初速よりも大きければよく、吐出口(N)から吐出された液滴(L’)の初速度V0よりも大きいことが好ましい。乾燥気体(G’)は、複数の吐出口(N)から吐出された液滴(L’)の速度を調整するため、液滴(L’)の合一を抑制することができる。乾燥気体(G’)は、流路(113)の周方向に均一な層流を形成していることが好ましい。乾燥気体(G’)が乱流を形成していると、液滴(L’)が別の液滴と結合することがある。このような現象は均一粒径のトナーを得ようとすることの妨げとなり、好ましくない。乾燥気体(G’)としては、特に限定されないが、空気、窒素等が挙げられる。
【0080】
気相流路(113)には、複数の吐出口(N)の近傍に、乾燥気体(G’)の流れを絞る絞り(気流絞り)(111d)が設けられており、複数の吐出口(N)に対向する開口部(111e)が形成されている。即ち気流路は、複数の吐出口(N)における吐出される位置の直後に、気流が通過する断面積を縮小せしめる気流絞りが設けられてなる。
このとき、開口部(111e)の幅Dに対して、薄膜(111a)と絞り(111d)の間のクリアランスCが小さいため、クリアランスCが乾燥気体(G’)の速度を決定する主な要因となる。また、開口部(111e)は、上流側から下流側に向けて拡大するテーパー状であるため、液滴(L’)が絞り(111d)に付着することを抑制できる。
【0081】
乾燥塔(120)内には、乾燥気体供給口(121)から乾燥気体(G)が供給される。
乾燥気体(G)は、乾燥塔(120)の周方向に均一な層流を形成しており、開口部(111e)から放出された液滴(L’)を搬送すると共に、乾燥させる。これにより、開口部(111e)から放出された液滴(L’)の合一を抑制することができる。このとき、乾燥気体(G)の速度V2は、乾燥気体(G’)の速度以上であることが好ましい。V2がV1未満であると、乱流を形成することがある。また、圧力計PG1における圧力P1は、圧力計PG2における圧力P2以下であることが好ましい。P1がP2以下を超えると、液滴(L’)に負圧が作用して逆流することがある。
【0082】
このとき、乾燥気体供給口(121)から乾燥気体(G)を供給する代わりに、乾燥塔(120)の下部から吸引してもよい。
【0083】
なお、図1では、液滴吐出ユニット(110)が乾燥塔(120)に1個保持されているが、生産性をさらに向上させるために、図4に示すように、複数の液滴吐出ユニット(110)が乾燥塔(120)に保持されていてもよい。このとき、乾燥塔(120)に保持される液滴吐出ユニット(110)は、100〜1,000個であることが好ましい。液滴吐出ユニット(110)が100個未満であると、トナーの生産性が低下することがあり、1,000個を超えると、液滴吐出ユニット(110)を制御することが困難になることがある。このとき、単一の供給部から、複数の液滴吐出ユニット(110)にトナー材料液(L)を供給する構成としてもよい。
【0084】
乾燥塔(120)では、トナー材料液(L)を吐出する方向と略同一の方向に流れる乾燥気体(G)を用いて、液滴吐出ユニット(110)から吐出された液滴(L’)を搬送することにより、液滴(L’)が乾燥し、母体粒子(T)が形成される。
【0085】
捕集部(130)は、母体粒子(T)の搬送方向の下流側に、乾燥塔(120)に連続して設けられており、開口径が上流側から下流側に向けて縮小するテーパー面(131)を有する。さらに、吸引ポンプ(不図示)を用いて吸引することにより、捕集部(130)内に上流側から下流側に向かう渦流(S)が発生する。これにより、母体粒子(T)が捕集され、配管(132)を介して、貯留部(140)に移送されて貯留される。このとき、捕集部(130)から貯留部(140)に母体粒子(T)を圧送してもよいし、貯留部(140)の側から母体粒子Tを吸引してもよい。
【0086】
供給部(150)は、トナー材料液(L)を貯留するタンク(151)と、トナー材料液(L)を圧送供給するポンプ(152)と、トナー材料液(L)を液滴吐出ユニット(110)に供給する配管(153)と、トナー材料液(L)を液滴吐出ユニット(110)から排出する配管(154)とを備え、循環系が構築されている。また、この循環系中には流量センサ(155)が設けられ、流量を検知している。
【0087】
図5に、ノズル(N)の断面の一部を示す。ノズル(N)は単なる円筒状の空間でもよいが、送液側から吐出側に向けて孔径が縮小するテーパー形状の孔を形成してもよい。この効果としてはトナー材料液(L)が吐出方向に押し出されるときに速度が増すため、効率よく液滴を吐出することができる。このとき、テーパー形状の孔のテーパー角θは、通常、30〜80°であり、45〜70°が好ましい。
【0088】
なお、ノズル(N)の孔径とは送液側から吐出側に向けて孔径が変化する場合、ノズルの孔径の最小値を意味する。
【0089】
また図6のように、断面視すると送液側から吐出側に向けて孔径が縮小する曲線形状の孔が形成されているノズルを用いてもよい。
【0090】
次に、トナーの製造装置(100)を用いて、トナーを製造する方法について説明する。
まず、液滴吐出ユニット(110)の流路(111)にトナー材料液(L)を供給した状態で、振動部材(112)の電歪振動子(112a)に交流電圧を印加することにより、電歪振動子(112a)でたわみ振動が発生する。さらに、たわみ振動の振幅がホーン(112b)により増幅され、ホーン(112b)の薄膜(111a)に対して平行な面(P)は、薄膜(111a)に対して垂直な方向に周期的に振動する。即ち、振動部材(112)の薄膜(111a)に対して平行な面(P)のたわみ振動が貯留部材(111)内のトナー材料液(L)に伝播されて圧力が周期的に変化する。その結果、薄膜(111a)が周期的にたわみ振動して、乾燥塔(120)内にトナー材料液(L)が液滴化された状態で(液滴(L’)として)吐出される。
【0091】
そして、乾燥塔(120)内に吐出された液滴(L’)は、トナー材料液(L)が吐出される方向と略同一の方向に流れる乾燥気体(G)を用いて搬送されることにより、有機溶媒が除去され、母体粒子(T)が形成される。さらに、母体粒子(T)は、乾燥塔(120)の下流側の捕集部(130)で、渦流(S)を用いて捕集され、貯留部(140)に移送されて貯留される。その結果、個数平均粒子径に対する重量平均粒子径の比が1.00〜1.10である母体粒子Tを製造することができる。また、重量平均粒子径が3〜6μmである母体粒子(T)を製造することができる。
【0092】
図7に、液滴吐出ユニット(110)の変形例を示す。液滴吐出ユニット(110’)は、流路(111)及びホーン(112b)の代わりに、トナー材料液が通過する液室(111c’)を有するホーン(112b’)が設けられている以外は、液滴吐出ユニット(110)と同一の構成である。このとき、ホーン(112b’)は、トナー材料液(L)に含まれる有機溶媒に耐性を有する接合部材を用いて、薄膜(111a)と接合されており、流路部材の一部を兼ねる。また、液室(111c’)は、配管(153)及び(154)と接続されており、液滴吐出ユニット(110’)は、必要に応じて、弾性体を用いて、乾燥塔(120)に保持される。
【0093】
図8に、液滴吐出ユニット(110)の変形例を示す。液滴吐出ユニット(110’’)は、流路(111)、電歪振動子(112a)及びホーン(112b)の代わりに、電歪振動子(112a)が2層積層されている積層体がホーン(112b)及びトナー材料液を貯留する液室(111c’)を有するホーン(112b’)に挟持されているボルト締めランジュバン型振動子を用いる以外は、液滴吐出ユニット(110)と同一の構成である。
【0094】
図9に、トナーの製造装置(100)の変形例を示す。トナーの製造装置(200)は、液滴吐出ユニット(110)の代わりに、液滴吐出ユニット(210)が設けられている以外は、トナーの製造装置(100)と同一の構成である。
【0095】
図10に、液滴吐出ユニット(210)を示す。液滴吐出ユニット(210)は、トナー材料液(L)を搬送される流路(211)と、振動部材(212)を有する。なお、図10(a)及び(b)は、それぞれ断面図及び底面図である。このとき、液滴吐出ユニット(210)にも、液滴吐出ユニット(110)と同様に、トナー材料液(L)が吐出される方向と略同一の方向に乾燥気体を供給する流路(113)が形成されている。
【0096】
流路(211)は、流路部材本体(111b)及び液室(111c)の代わりに、形状が異なる流路部材本体(211b)及び液室(211c)が設けられている以外は、流路(111)と同一の構成である。
【0097】
薄膜(111a)は、トナー材料液(L)に含まれる有機溶媒に耐性を有する接合部材を用いて、流路本体(211b)と接合されており、ノズル(N)の断面形状は図5や図6の形状が適している。
【0098】
なお、流路(211)には、支持部材(不図示)が設けられており、これにより、液滴吐出ユニット(210)が乾燥塔(120)の天面部に保持されている。このとき、液滴吐出ユニット(110)は、乾燥塔(120)の側面に保持されていてもよい。
【0099】
振動部材(212)は、ホーン(112b)を設けず、電歪振動子(112a)が電極(112c)及び(112d)で挟持されている積層体の代わりに、薄膜(111a)に平行な面を有する電歪振動子(212a)が電極(212c)及び(212d)で挟持されている積層体が薄膜(111a)の複数の吐出口(N)の周囲に円環状に設けられている以外は、振動部材(112)と同一の構成である。
このとき、電極(212c)及び(212d)の間に交流電圧を印加すると、電歪振動子(212a)の薄膜(111a)に対して平行な面は、薄膜(111a)に対して垂直な方向に周期的にたわみ振動する。その結果、薄膜(111a)が周期的にたわみ振動し、複数の吐出口(N)からトナー材料液(L)が液滴化された状態で(液滴(L’)として)吐出される。
【0100】
薄膜(111a)がたわみ振動する周波数は、通常、20kHz以上2MHz未満であり、50以上500kHz未満が好ましい。周波数が20kHz未満であると、吐出口(N)が目詰まりしやすくなることがあり、また振動部材(212)による振動によってトナー材料液(L)がキャビテーションを起こし、トナー材料液(L)吐出が不安定化することがある、2MHz以上であると、粒度分布が狭い母体粒子(T)を形成することが困難になることがある。このとき、電歪振動子(212a)がたわみ振動する振動波形としては、特に限定されないが、sin波形、矩形波形等が挙げられる。
【0101】
なお、図9では、液滴吐出ユニット(210)が乾燥塔(120)に1個保持されているが、生産性をさらに向上させるために、複数の液滴吐出ユニット(210)が乾燥塔(120)に保持されていてもよい。このとき、乾燥塔(120)に保持される液滴吐出ユニット(210)は、100〜1,000個であることが好ましい。液滴吐出ユニット(210)が100個未満であると、トナーの生産性が低下することがあり、1000個を超えると、液滴吐出ユニット(210)を制御することが困難になることがある。このとき、単一の供給部から、複数の液滴吐出ユニット(210)にトナー材料液(L)を供給する構成としてもよい。
【0102】
次に、液滴吐出ユニット(210)を用いて液滴を吐出するメカニズムについて説明する。なお、ここでは、半径がr0である円形膜の周囲を固定した場合について説明する。
なお、半径がr1である同心円内に複数の吐出口が形成されている。この場合、たわみ振動の基本振動は、図11に示すように、周囲(r=r0)が節になり、中心O(r=0)で振動の変位△Lが最大(△Lmax)となり、周期的にたわみ振動する。なお、図11(a)及び(b)は、それぞれ円形膜の半径方向の断面図及び円形膜の時間tにおける半径座標に対する振動の変位の関係を示す。
【0103】
さらに、図12に示すように、円形膜の中心部を凸形状とすることにより、液滴の吐出方向を制御すると共に、たわみ振動の振幅を調整することができる。
【0104】
一方、円形膜がたわみ振動することにより、円形膜に設けられた吐出口の近傍にトナー材料液が存在すると、円形膜のたわみ振動の速度Vmに比例する音圧Pacが発生する。
また、音圧Pacは、トナー材料液の放射インピーダンスZrの反作用として発生することが知られており、音圧Pacは、放射インピーダンスZrと円形膜のたわみ振動の速度Vmの積であり、式 Pac(r,t)=Zr・Vm(r,t)で表わされる。このとき、円形膜のたわみ振動の速度Vmは、周期的に変化するため、円形膜のたわみ振動の速度Vmに比例する音圧Pacも周期的に変化する。これにより、吐出口の近傍のトナー材料液(L)が気相に吐出される。吐出されたトナー材料液は、気相との表面張力の差により、球体になるため、周期的に液滴が生成する。
【0105】
このとき、音圧Pacの変位量は、通常、10〜500kPaであり、10〜100kPaが好ましい。音圧Pacの変位量が10kPa未満であると、吐出口が目詰まりしやすくなることがあり、500kPaを超えると、トナー材料液のキャビテーションが発生しやすくなることがある。
【0106】
なお、液滴の直径は、吐出口の近傍におけるたわみ振動の変位が大きい程、大きくなる傾向にある。また、r=r1におけるたわみ振動の変位を△Lminとすると(図11参照)、△Lmax/△Lminが2.0以下であると、母体粒子の粒度分布を狭くすることができる。
【0107】
<<無機微粒子の添加混合>>
また、トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、以上のようにして製造されたトナー母体粒子に、更に疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。
【0108】
添加剤の混合は、一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。なお、添加剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中又は漸次添加剤を加えていけばよい。この場合、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよい。又はじめに強い負荷を、次に、比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合設備としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。次いで、250メッシュ以上の篩を通過させ、粗大粒子、凝集粒子を除去し、トナーが得られる。
【0109】
(現像剤)
本発明に用いられる現像剤は、本発明のトナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
【0110】
前記トナーを用いた前記一成分現像剤の場合、トナーの収支が行なわれても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像剤担持体としての現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の層厚規制部材へのトナーの融着がなく、現像手段の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行なわれても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像手段における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0111】
(キャリア)
キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層(被覆層)とを有するものが好ましい。
【0112】
―キャリア芯材―
前記芯材としては、磁性を有する粒子であれば特に限定されるものではなく、例えば、フェライト、マグネタイト、鉄、ニッケル等が好適に挙げられる。また、近年著しく進む環境面への適応性を配慮した場合には、フェライトであれば、従来の銅−亜鉛系フェライトではなく、例えば、マンガンフェライト、マンガン−マグネシウムフェライト、マンガン−ストロンチウムフェライト、マンガン−マグネシウム−ストロンチウムフェライト、リチウム系フェライト等を用いることが好適である。
【0113】
また、芯材の抵抗を制御する目的や、製造安定性を高める目的等で、芯材の組成成分として、他の元素、例えば、Li、Na、K、Ca、Ba、Y、Ti、Zr、V、Ag、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Sb、Bi等の元素を一種以上配合させてもよい。これらの配合量としては、総金属元素量の5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であることがより好ましい。
【0114】
―被覆層―
被覆層は、少なくとも結着樹脂を含有しており、必要に応じて無機微粒子等の他の成分を含有していてもよい。
【0115】
[結着樹脂]
キャリアの被覆層を形成するための結着樹脂としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択できるが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)やその変性品、スチレン、アクリル樹脂、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、塩化ビニル、ビニルカルバゾール、ビニルエーテル等を含む架橋性共重合物;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変性品(例えば、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等による変性品);ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;ユリア樹脂;メラミン樹脂;ベンゾグアナミン樹脂;エポキシ樹脂;アイオノマー樹脂;ポリイミド樹脂、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル樹脂と、シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0116】
〔定着方法〕
次いで、本発明に係る定着方法について説明する。
本発明に係る定着方法は、トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を記録媒体上のトナー像に付与して該トナーを記録媒体に定着する。このとき、トナーには上述したものを用いる。
【0117】
(液状定着液)
トナー定着液としての液状定着液は、トナーに含まれる結着樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させる成分(軟化剤)と、水系分散媒と、非水系分散媒からなり、トナーに含まれる結着樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させる成分を水系分散媒に分散させて調製した水系の分散媒を非水系分散媒に分散して形成され、トナーに含まれる結着樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させてトナーを記録媒体に定着させる。
【0118】
トナーに含まれる結着樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させる成分としての軟化剤は特に限定されないが、具体例としては脂肪族エステルを使用する。この脂肪族エステルは飽和脂肪族エステルを含む。脂肪族エステルが飽和脂肪族エステルを含む場合にはトナーに含まれる結着樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させる成分の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。
【0119】
−脂肪族エステル−
前記の脂肪族エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、飽和脂肪族エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル及び脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルであってもよい。
【0120】
−−飽和脂肪族エステル−−
前記の脂肪族エステルが飽和脂肪族エステルである場合には、液体可塑剤(軟化剤)の保存安定性(酸化、加水分解等に対する耐性)を向上させることができる。また、前記の飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる結着樹脂を1秒以内等の短時間で溶解乃至膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。
これは、飽和脂肪族エステルが、溶解乃至膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
【0121】
−−脂肪族モノカルボン酸エステル−−
前記飽和脂肪族エステルは、下記一般式(2)で表わされる化合物を含むことが好ましい。
COOR 一般式(2)
[上記一般式(2)中、Rは炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、Rは炭素数が1以上6以下の直鎖型又は分岐型のアルキル基である]
この化合物を含む場合にはトナーに含まれる結着樹脂に対する膨潤・軟化性を向上させることができる。
【0122】
前記の脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えばラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。なお、これらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。このことから、脂肪族モノカルボン酸エステルを用いて水性溶媒からなる定着液とする場合、後述の溶解助剤としてグリコール類を定着液に含有させ、溶解又はマイクロエマルジョンの形態としてもよい。
【0123】
−−脂肪族ジカルボン酸エステル−−
脂肪族エステルは脂肪族ジカルボン酸エステルを含むことが好ましい。脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる結着樹脂を溶解または膨潤させることができる。
【0124】
脂肪族ジカルボン酸エステルは下記一般式(3)で表わされる化合物であることが好ましい。
(COOR 一般式(3)
[上記一般式(3)中、Rは炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が2以上5以下の直鎖型又は分岐型のアルキル基である。]
脂肪族ジカルボン酸エステルとして上記一般式(3)で表わされる化合物を含む場合には、トナーに含まれる結着樹脂に対する膨潤・軟化性を向上させることができる。
【0125】
前記脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えばコハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。前記化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは非水系分散媒に溶解するが、水系分散媒には溶解しない。したがって脂肪族ジカルボン酸エステルの多くについては、水系分散媒に分散させてトナー定着液を得ることができる。
【0126】
−−脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキル−−
さらに、トナー定着液を形成する脂肪族エステルは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含んでもよい。脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。前記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、下記一般式(4)で表わされる化合物であることが好ましい。
(COOR−O−R 一般式(4)
[上記一般式(4)中Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上4以下のアルキル基である。]
トナー定着液が上記一般式(4)で表わされる化合物を含む場合には、トナー3に含まれる結着樹脂に対する膨潤・軟化性を向上させることができる。
【0127】
前記一般式(4)で表わされる化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えばコハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。前記化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの多くは水に若干溶解する(若干水性である)。したがって前記一般式(4)で表わされる化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの多くについては、直接、粒子として非水系媒体に分散させることによってトナー定着液を得ることができる。
【0128】
更に、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの類似構造として、一般式(5)で表わされる化合物は、エーテル基の分子内での割合が高くなるため、希釈剤である水に対する溶解性が非常に高くなり、高濃度の液体可塑剤を含有した定着液とすることができる。
(COO−(R−O)n−R10 一般式(5)
上記一般式(5)中のnは1以上3以下であり、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上3以下のアルキレン基であり、R10は炭素数が1以上4以下のアルキル基ある。
前記一般式(5)で表わされる化合物としては、例えば、コハク酸ジエトキシエトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエトキシエチル、コハク酸ジメトキシエトキシエチル、コハク酸ジメトキシメトキシプロピル等が挙げられる。
【0129】
(分散媒)
水系分散媒は単価又は多価のアルコール類、例えばエタノール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、グリセリン等を含んでいても構わない。水系分散媒がエタノールを含む場合は、エタノールは人体に対してきわめて安全な材料であり、揮発性有機物の中で唯一、オフィス環境でも使用が可能となる材料である。しかも各種の多孔質部材に対して優れた浸透性を示す材料であり、分散媒として記録媒体への優れた浸透性が得られ、定着応答性の向上が図れる。
【0130】
非水系分散媒はn−アルカンを含むことが好ましい。n−アルカンを含む場合には、特に撥水性処理されたトナーに対して高い親和性を有し、撥水性処理されたトナーを顕著に濡らすことができる。すなわち、パラフィン系溶剤であるn−アルカンは25mN/m以下の低い表面張力を有し、撥水性処理されたトナーに対して高い親和性を有する。その結果、トナー定着液を記録媒体に載せた撥水性処理されたトナーに付与するとき、撥水性処理されたトナーによって形成される画像の乱れを低減することができる。例えば、n−アルカンのうちデカン、ドデカン、ウンデカン、トリデカンは低い揮発性を有し、これらのn−アルカンのいずれかを用いることが好ましい。
【0131】
また、非水系分散媒はジメチルシリコーンを含んでいてもよい。非水系分散媒がジメチルシリコーンを含む場合には、特に撥水性処理されたトナーに対して高い親和性を有し、撥水性処理されたトナーを、顕著に濡らすことができる。すなわち、シリコーン系溶剤であるジメチルシリコーンは20mN/m程度の低い表面張力を有し、撥水性処理されたトナーに対して高い親和性を有する。その結果、トナー定着液を記録媒体に載せた撥水性処理されたトナーに付与するとき、撥水性処理されたトナーによって形成される画像の乱れを低減することができる。例えば、3mPa・秒以上の粘度を有するジメチルシリコーンは低い揮発性を有し好ましい。
【0132】
(泡状定着液)
泡状定着液は、前記液状定着液を泡状にして使用するものである。泡状定着液は、水を含む希釈剤と、定着液を泡状とする起泡剤と、トナー等の樹脂微粒子(以下においてはトナーを例に挙げて説明する。)を軟化させる軟化剤としての可塑剤(固体可塑剤、液体可塑剤)、を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなるものである。本発明の定着方法においては、この泡状定着液を用いることが好ましい。
【0133】
<固体可塑剤>
固体可塑剤は、常温で固体であり、かつ、後述の希釈剤に可溶であって、この希釈剤に溶解している状態でトナーなどの樹脂微粒子を軟化させる得る限り、特に制限はない。ここで、「常温」とは、熱したり冷やしたりせずに達成される温度のことをいい、例えば、JIS Z8703にて定義されている、5℃〜35℃であることが好ましい。この常温の範囲内であると、固体可塑剤は固体状態となる。すなわち、泡状態の定着液においては水を含むために固体可塑剤は溶融している状態にあるが、未定着のトナーに付与され、該トナーに浸透し、さらにトナーに浸透した定着液の水分が気化などにより量が低下した場合には、前記固体可塑剤は固体の状態に変化する。固体可塑剤を含む定着液を用いた場合には、このように、固体可塑剤が固体の状態に変化する点に注目し、この特性を利用することで定着液付与後のトナー固さを高めることができる。また、常温における適当な条件下で固体可塑剤がトナー(以下、樹脂微粒子とも称する。)に対する可塑能力を発揮するとともに、可塑能力を失い固体の状態となると、それ自体が硬化し、タックの防止に寄与することとなる点で、好ましい。
【0134】
固体可塑剤としては、例えば、被定着物である樹脂微粒子と一定の相溶性を有するなどの親和性を有する官能基を有することが好ましい。ここでいう親和性を有する官能基とは、好ましくは、樹脂微粒子を構成する分子に含まれる官能基と、固体可塑剤に含まれる官能基とが同一である場合に加え、これらの官能基間で一定の相互作用をし得る官能基を有することを意味する。固体可塑剤に含まれる官能基が樹脂微粒子を構成する分子と一定の相互作用をし得る官能基を有すると、これらの官能基の相互作用により樹脂微粒子を構成する分子間に固体可塑剤が進入するきっかけとなり、結果として、固体可塑剤と樹脂微粒子との間でいわゆるポリマーブレンドの状態を形成し、固体可塑剤がトナーなどの樹脂微粒子の少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる際に効果的であるためである。
【0135】
具体的な例を挙げると、固体可塑剤がポリエチレングリコールであって、該ポリエチレングリコールにエチレンオキサイド基が含まれる。そして、対応する樹脂微粒子には、樹脂分子中にエチレンオキサイド基を含む組み合せがそれに相当する。このような場合、固体可塑剤と樹脂微粒子の両者にエチレンオキサイド基が含まれ、これにより親和性を高めることで、両者の相溶性を高める効果が奏するものである。一方、この考え方は、固体可塑剤と樹脂微粒子の両者に親和性を有する官能基を有することで成り立つため、前記エチレンオキサイド基に限定されることはなく、他の例としては、プロピレンオキサイド基を利用してもよく、さらには、公知のトナーに含まれる官能基を固体可塑剤内に含ませる場合も有効に作用する。
【0136】
固体可塑剤としては、上記の要件のほか、一定の条件下で可塑能力を発揮するものが挙げられ、例えば、下記のものが挙げられる。
(1)後述の希釈剤に溶解することで可塑能力が発揮されるもの:
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、分子量が1,000〜2,000のもの
(2)希釈剤に溶解されても可塑能力は発揮されないが後述の液体可塑剤が少量存在すると可塑能力が発揮されるもの
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、分子量が2,000〜10,000のもの
(3)希釈剤に溶解されても可塑能力は発揮されないが若干の加温(例えば、50℃〜100℃程度)により可塑能力が発揮されるもの
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、分子量が2,000〜10,000
ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類:ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテルなど
【0137】
上記(1)で例示したポリエチレングリコールの分子量が、1,000未満であると、周囲環境によって定着画像が溶融する場合があり、2,000を超えると、前記常温状態で固体状態ではなくなるため、固体可塑剤のみを利用し、任意成分である後述の液体可塑剤を共有しない定着液の系内においては充分な可塑能力が発揮できない場合がある。このような技術的な意義のもと、前記分子量は、1,000〜2,000であることが好ましい。
【0138】
上記(2)で例示したポリエチレングリコールの分子量が、10,000を超えると、常温状態で明らかに固体状態ではなくなるため、被定着物である樹脂微粒子間に粒界が生じてしまう場合がある。このような観点から、固体可塑剤のみを利用し、液体可塑剤を共有しない定着液の系内においては、分子量が10,000以上である場合は使用が困難であることを明らかにすると共に、定着液に水を含む態様にて使用される場合には、分子量を1,000から10,000が使用可能な分子量であることを見出した。
【0139】
上記(3)に例示の固体可塑剤の加温の温度としては、可塑能力が発揮できる範囲であれば、特に制限はないが、50℃〜100℃が好ましい。上記加温の温度が、50℃未満であると、定着が不充分である場合があり、100℃を超えると、エネルギー消費の点で、不経済である。
【0140】
固体可塑剤の含有量としては、特に制限はないが、定着液の質量に対して、5質量%〜30質量%であることが好ましい。含有量が、5質量%未満であると、定着が困難となるためであり、30質量%を超えると、定着液及び泡状定着液としての粘度が高くなり、加えて泡立ちの悪さや、泡としての安定性に欠け、品質上問題が生じる。
【0141】
<液体可塑剤>
定着液は、液体可塑剤を有してもよい。希釈剤に可溶であって、一定の条件下で可塑能力を発揮するものであれば、特に制限はなく、例えば、単独で可塑能力を発揮してトナーの少なくとも一部を溶解乃至膨潤させることでトナーを軟化させるものであってもよいが、上記の固体可塑剤と組み合わせることで可塑能力を発揮するものであってもよい。
【0142】
液体可塑剤の例としては、一定の条件下で溶解性乃至膨潤性に優れている点で、エステル化合物が挙げられる。このエステル化合物のなかでも、結着樹脂の軟化能力が優れている点、又は後述する希釈剤による起泡性の阻害の程度が低い点で、脂肪族エステル又は炭酸エステルが、より好ましい。当該脂肪族エステルとしては、前記液状定着液の軟化剤として例示した脂肪族エステル(例えば、飽和脂肪族エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル及び脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキル)を目的に応じて適宜選択して好ましく用いることができる。
【0143】
液体可塑剤は、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きいことが好ましく、5g/kg以上であることがより好ましい。液体可塑剤として、前記の脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高いものであることから、特に好ましい。
【0144】
また、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行なわれ、液体可塑剤は、トナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。この点で、液体可塑剤は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。前記の脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し刺激臭を持たない点で、より好ましい。
【0145】
−炭酸エステル−
液体可塑剤の一例である炭酸エステルとしては、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)などの環状エステル類、グリセロール1,2−カルボナート、4−メトキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等が挙げられる。
【0146】
また、前記以外のエステル化合物としては、例えばクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジアセタート等のグリコールをエステル化した化合物;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のグリセリンをエステル化した化合物等が挙げられる。
【0147】
液体可塑剤の含有量は、定着液の質量に対して、0.5質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜40質量%であることがより好ましい。含有量が、0.5質量%未満であると、トナーに含まれる樹脂微粒子を溶解乃至膨潤させる効果が不充分になることがあり、50質量%を超えると、長時間に亘りトナーに含まれる樹脂の流動性を低下させることができず、定着トナー層が粘着性を有する可能性がある。
【0148】
<溶解助剤>
定着液は、定着液中の液体可塑剤を溶解する目的で、溶解助剤を含有してもよい。溶解助剤としては、液体可塑剤を溶解させ得るものであれば、特に制限はなく、多価のアルコール類が挙げられる。この多価のアルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが挙げられる。なかでも、液体可塑剤が高濃度でも溶解可能であり且つ起泡剤の起泡性を劣化させない点で、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールであることが好ましい。前記多価のアルコール類の含有量は、定着液の質量に対して、1質量%〜30質量%の範囲が好ましい。含有量が、30質量%を超えると、起泡性がむしろ劣化するため適さず、1質量%未満では、定着液中の液体可塑剤濃度が高くなると希釈溶液である水に液体可塑剤が溶解しにくくなる場合がある。
【0149】
<増泡剤>
定着液は、泡状化されて、後述の泡状定着液として、樹脂微粒子の定着に用いられるところ、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。
そこで、本発明による定着液は、このような現象を抑え泡沫安定性を向上させる目的で、増泡剤をさらに有してもよい。増泡剤としては、特に制限はないが、脂肪酸アルカノールアミドであることが好ましく、泡沫安定性の点で、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型であることがより好ましい。増泡剤の含有量としては、定着液の質量に対して、0.01質量%〜3質量%であることが好ましい。
【0150】
<起泡剤>
本発明において定着液に含まれる起泡剤としては、定着液の泡状化するものであれば、特に制限はなく、優れた起泡性と泡沫安定性を実現することができる。起泡剤としては、飽和若しくは不飽和の脂肪酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、及び、モノアルキルリン酸塩等のリン酸塩等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0151】
−脂肪酸塩−
起泡剤のなかでも、脂肪酸塩は、最も泡沫安定性に優れ、定着液の起泡剤として最も適する。
脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウム塩又は脂肪酸アミン塩であることが好ましく、脂肪酸アミン塩であることがより好ましい。これらの脂肪酸塩の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで製造してもよい。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5〜1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液中に脂肪酸と脂肪酸アミン塩とを混合させることができる。同じことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
【0152】
起泡剤として用い得る不飽和脂肪酸塩としては、特に制限はないが、炭素数18で2重結合数が1〜3の不飽和脂肪酸塩が好ましい。具体的には、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩が挙げられる。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を一種単独又は二種以上を混合して起泡剤として用いてもよい。また、上記の飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩とを混合して起泡剤として用いてもよい。
【0153】
液体可塑剤は、消泡作用が強く、定着液中で液体可塑剤の濃度上昇と共に、定着液の起泡性及び泡沫安定性が悪くなり、なかなか起泡しなくなり、泡が直ぐに破泡するため、泡密度の低い泡状定着液を得ることができなくなることがある。
そこで、定着液中の液体可塑剤濃度を高めたときの起泡性が劣化してしまうことを解消するため、起泡剤としてアニオン系界面活性剤のうちで炭素数12〜18の脂肪酸塩を用い、更に炭素数12〜18の脂肪酸を定着液中に含有することにより、液体可塑剤の濃度が高くなっても、定着液の起泡性を維持できる。
【0154】
ここで、定着液に含まれる起泡剤において、脂肪酸塩の炭素数としては、単に水を起泡する場合と比較して起泡性に優れている点で、12〜18であることが好ましい。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、ペンタデシル酸(炭素数15)、パルミチン酸塩(炭素数16)、マルガリン酸(炭素数17)、ステアリン酸塩(炭素数18)が挙げられる。
【0155】
起泡剤として用いられる脂肪酸塩と共に用いられる脂肪酸と、液体可塑剤との作用について説明する。液体可塑剤としてエステル化合物を用いた場合、エステル化合物はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、液体可塑剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基とが定着液の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させると考えられる。
【0156】
起泡剤として用い得る炭素数12〜18の脂肪酸塩において、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性にきわめて優れている。そこで、この脂肪酸塩としては、単独の脂肪酸塩を用いてもよいが、炭素数12〜18の脂肪酸塩であって異なる炭素数を有する複数の脂肪酸塩を混合する方がより好ましい。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが好ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の質量比で、0:6:3:1、0:4:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1等が適する。
【0157】
起泡剤の含有量は、定着液の質量に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがより好ましい。含有量が、0.1質量%未満であると、起泡性が不充分になることがあり、20質量%を超えると、定着液の粘度が高くなり、起泡性が低下する可能性がある。
【0158】
定着液中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで、液体可塑剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。液体可塑剤の濃度が、10質量%未満であると、脂肪酸を含有しなくても起泡性に問題はない。しかし、液体可塑剤の濃度が10質量%以上、特に液体可塑剤の濃度が30質量%以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる場合がある。起泡性が悪くなった場合であっても、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
【0159】
ただし、脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる場合がある。このような場合、起泡性が優れている点で、脂肪酸塩のモル数は、脂肪酸のモル数以上のモル数としてもよく、脂肪酸と脂肪酸塩の比率を、5:5〜1:9の範囲としてもよい。
【0160】
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩との組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンであり脂肪酸がステアリン酸である組合せや、脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムであり脂肪酸がステアリン酸である組み合わせのように、炭素数が12〜18の範囲で脂肪酸塩と脂肪酸との炭素数が異なる組合せであってもよい。炭素数12〜18の範囲の脂肪酸を定着液に含有することで、高濃度の液体可塑剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、密度のきわめて低い泡化を可能とする。
【0161】
また、起泡性が悪化するのを防止し得る点で、他のアニオン系界面活性剤(例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES))を起泡剤とし、炭素数12〜18の脂肪酸をさらに含有してもよい。
【0162】
<希釈剤>
本発明において、定着液に含まれる希釈剤としては、水を含む限り特に制限はなく、例えば、水、水にアルコール類等を添加した水性溶媒、等が好ましい。水としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
【0163】
希釈剤として水性溶媒を用いる場合には、界面活性剤を添加してもよく、なかでも、定着液の表面張力を20mN/m〜30mN/mとすることが好ましい。前記アルコール類としては、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする点で、例えばセタノール等の単価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
【0164】
希釈剤は、浸透性改善や紙等媒体のカール防止と目的として、油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成であることも好ましい。この油性成分としては、公知の種々の材料を用いることができる。油性成分を含有する希釈剤の場合、分散剤を用いてエマルジョンを形成してもよく、このエマルジョンの形成に用いる分散剤としては、公知の種々の材料を用いることができるが、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレート等のソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖エステル等が好ましい。
【0165】
分散剤を用いて定着液をエマルジョンの形態に分散させる方法として、特に制限はなく、公知の種々の方法を用いればよい。例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。なかでも、定着液中の軟化剤に強いせん断応力を加える方法であることが好ましい。
【0166】
さらに、本発明に係る定着装置の具体例を挙げて図面に基づき詳細に説明する。
(定着装置)
−泡状定着液を用いた場合の定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
泡状定着液を用いた場合の定着方法は、泡状定着液生成工程と、膜厚調整工程と、泡状定着液付与工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
泡状定着液を用いた場合の定着装置は、泡状定着液生成手段と、泡状定着液付与手段と、膜厚調整手段とを有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
【0167】
<泡状定着液生成工程及び泡状定着液生成手段>
泡状定着液生成工程は、定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する工程であり、泡状定着液生成手段により実施される。
【0168】
図14に示すように、定着液を泡状定着液生成手段によって泡で構成された泡状定着液(14)とすることで、定着液のかさ密度を低くできると共に塗布ローラ(11)上の定着液層を厚くすることができ、更には定着液の表面張力による影響が抑えられるため、塗布ローラ(11)へのトナーのオフセットを防止しながら記録媒体(12)上のトナー像(以下、トナー層、樹脂微粒子層とも称する。)(13)に均一に泡状定着液(14)を塗付することができる。
【0169】
図15は塗布時の泡状定着液の層構成例を示す概略図である。同図に示す液体(21)は軟化剤を含有し、液体中に気泡(22)を含有した泡状の構成である。このように、気泡(22)を大量に含有することで、定着液(20)のかさ密度はきわめて低くすることができる。この構成とすることで、定着液塗布時は、体積が多い状態で塗布しても、かさ密度が低く、塗布重量は小さいため、その後気泡(22)が破泡してしまえば、実質的な塗布量はきわめて少なくすることができる。なお、本発明における泡状とは、液体中に気泡が分散し、液体が圧縮性を帯びた状態を示す。
【0170】
泡状定着液生成工程及び泡状定着液生成手段としては、上記の本発明による定着液を泡状化して泡状定着液を生成し得るものであれば、特に制限はない。その一態様について、図15を参照して、説明する。
【0171】
図15は、本発明における定着装置が備える泡状定着液生成手段の構成を示す概略図である。図15に示す泡状定着液生成手段(30)は、上記の本発明における定着液等の液状定着液(32)を貯留する定着液容器(31)と、液状定着液(32)を液搬送する液搬送パイプ(34)と、液搬送するための駆動を得る搬送ポンプ(33)と、気体と液体とを混合する気体・液体混合部(35)と、液状定着液(32)を泡状化して所望の泡状定着液を得る泡生成部(38)とを有する。
【0172】
定着液容器(31)に貯留された液状定着液(32)は、搬送ポンプ(33)の駆動力によって液搬送パイプ(34)を液搬送され、気体・液体混合部(35)へと送られる。
搬送ポンプとしては、液状定着液を液搬送し得るものであれば、特に制限はなく、ギヤポンプ、ベローズポンプ等があるが、チューブポンプが好ましい。ギヤポンプ等の振動機構や回転機構があると、ポンプ内で定着液が起泡し、定着液に圧縮性が出て、搬送能力が低下する恐れがある。また、上記の機構部品等が定着液を汚染したり、逆に機構部品を劣化させる恐れがある。一方、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、定着液と接する部材はチューブだけであり、定着液に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
【0173】
気体・液体混合部(35)には、空気口(36)が設けられ、液の流れとともに、空気口(36)に負圧が発生し、空気口(36)から気体が気体・液体混合部(35)に導入され、液体と気体が混合される。更に、微小孔シート(37)を通過することで、泡径の揃った大きな泡を生成させることができる。孔径は、30μm〜100μmが好ましい。
図15の微小孔シート(37)に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30μm〜100μmを有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。また、別の大きな泡の生成方法としては、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液と空気口からの空気を羽根状攪拌子で攪拌しながら、液に気泡を巻き込みながら大きな泡を生成させる構成や、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液に空気供給ポンプ等でバブリングを行ない大きな泡を生成する構成も好ましい。
【0174】
次に、空気と混合された液状定着液(32)は、所望の泡状定着液を得る泡生成部(38)に送液される。泡生成部(38)において、空気と混合された液状定着液(32)には、せん断力が加えられ、大きな泡を分割して2つ以上に分泡化される。泡生成部(38)の構成としては、このように行なわれ得るものであれば、特に制限はないが、閉じた二重円筒で、内側円筒が回転可能な構成とし、外部円筒の一部より、大きな泡状定着液を供給し、内部の回転する円筒と外部円筒との隙間(ここが流路となる)を通過しながら、回転円筒によりせん断力を受けるような構成であってもよい。このせん断力により、大きな泡は微小な泡へと変化し、外側円筒に設けられた泡の出口より、所望の微小な泡径を有する泡状定着液を得ることができる。また、内側円筒にらせん状の溝を設けて、円筒内での液搬送能力を高くしてもよい。
【0175】
定着液は、紙等の記録媒体上のトナー等の樹脂微粒子層への塗布時に泡状となっていればよく、定着液容器内で泡状である必要はない。定着液容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液を供給する時点や、樹脂微粒子層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にする手段を設ける構成が好ましい。これは、定着液容器では液体であり容器から液を取り出した後に泡状とする構成のほうが、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
【0176】
定着液は、泡状化され、泡状化された定着液からなる泡状定着液層の厚みは、定着される樹脂微粒子層の厚みに応じて、記録媒体面全体に対し後述するように泡状定着液付与手段の面において、調整される。例えば樹脂微粒子がトナーを構成し、記録媒体上にカラー画像や白黒文字が混在する場合、記録媒体面全体を同じ厚みの泡状定着液層で付与すると、カラー写真画像のような厚いトナー層では、定着不良や画像抜けが生じたり、白黒文字部に粘着感が生じて印刷物同士がくっついたりする部分不具合が生じる場合がある。
【0177】
一般的に0.5mm〜1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には数秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、この所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡の生成が容易で、且つすばやく得ることができる点に着目し、大きな泡から素早く5μm〜50μm程度の微小な泡を生成する方法を鋭意検討した結果、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、上記のような液状態から微小な泡を起泡させる方法に比べ、きわめて素早く所望の大きさの微小な泡が生成できることを見出した。この点、上記のような泡状定着液生成手段(30)の構成は、これを実現するために好ましい態様である。
【0178】
このように、液状定着液を大きな泡径を有する液へと変化させる大きな泡生成部と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を生成する微小な泡生成部とを組み合わせることで、液状定着液をきわめて短時間に5μm〜50μmの微小な泡径を有する泡状定着液を生成させることができる。
【0179】
特に、樹脂微粒子の平均粒径が5μm〜10μm程度の場合、記録媒体(12)上の樹脂微粒子層(13)を乱すことなく泡状定着液(14)を樹脂微粒子層(13)に付与するには、泡状定着液(14)の泡径範囲が、5μm〜50μmであることが好ましい。なお、図15に示すように、気泡(22)で構成された泡状定着液(20)は、気泡(22)のそれぞれを区切る液体(21)から構成される。
【0180】
<膜厚調整工程及び膜厚調整手段>
本発明に係る定着方法における膜厚調整工程は、泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する工程であり、膜厚調整手段により実施される。
【0181】
膜厚調整手段としては、泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成し得る限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば膜厚調整用ブレード、ブレードと塗布ローラとの組み合わせが挙げられる。なお、膜厚調整工程及び膜厚調整手段の態様については、後述する。
【0182】
<泡状定着液付与工程及び泡状定着液付与手段>
本発明に係る定着方法における泡状定着液付与工程は、所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上の樹脂微粒子層(トナー像)に付与する工程であり、泡状定着液付与手段により実施される。
【0183】
図16(A)及び図16(B)は、本発明に係る定着装置における膜厚調整手段及び泡状定着液付与手段の一例を示す概略構成図である。図16に示す本発明における定着装置(40)は、上述した泡状定着液生成手段(30)によって生成された所望の微小な泡の泡状定着液を、トナー等を構成する樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層(トナー粒子層)へ付与するための塗布ローラ(41)と、塗布ローラ面に所望の微小な泡の泡状定着液の膜厚を、記録媒体上の未定着のトナー層の厚さに応じて調整し、泡状定着液の最適な膜厚の調整を行なう膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード(42)と、塗布ローラ(41)と対峙する位置に加圧ローラ(43)とを有する。
【0184】
未定着トナー(樹脂微粒子からなるもの)を表面上に有する記録媒体は、塗布ローラ(41)と加圧ローラ(43)とからなるニップ部を通過する。一方、泡状定着液生成手段(30)で生成された泡状定着液は、膜厚調整用ブレード(42)によって膜厚調整され、所望の厚みの泡状定着液層として塗布ローラ(41)に配置される。このように塗布ローラ(41)上に形成された泡状定着液層は、未定着トナーを有する記録媒体のニップ部の通過に同期して、未定着トナー上に付与される。
【0185】
また、図16(B)は、塗布ローラ(41)及び膜厚調整用ブレード(42)を拡大した概略図であって、泡状定着液付与手段を構成する塗布ローラ(41)上には、泡状定着液の層が記録媒体上の未定着のトナー層の厚さに応じて膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード(42)を通じて形成される。この膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード(42)によって泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間に対して最適化した定着液層の膜厚となる。
所望の微小な泡の泡状定着液は、上記のように、大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段(30)で生成され、液供給口より塗布ローラ(41)と膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード(42)との間に滴下される。
【0186】
泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整は、図17(A)及び図17(B)に示すように、塗布ローラ(41)とギャップを設けた膜厚調整用ブレード(42)を用い、図17(A)に示すように膜厚を薄くするときはギャップを狭くし、図17(B)に示すように膜厚を厚くするときはギャップを広くするように行なってもよい。ギャップの調整は、膜厚調整用ブレード(42)の端部に、駆動可能な回転軸を用い、トナー層の厚さや環境温度等、更には泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間を調整するための最適な膜厚を調整してもよい。
【0187】
泡状定着液付与手段を構成する塗布ローラの形状、構造、大きさ及び材質としては、泡状定着液を付与し得る限り、特に制限はないが、曲面部を少なくともその表面の一部に有するものであることが好ましい。
【0188】
膜厚調整用ブレードとしては、図17(A)及び図17(B)の膜厚調整用ブレードのほかに、ワイヤーバーであってもよい。ワイヤーバーによって、塗布ローラ上の泡状定着液の厚みを調整し、泡状定着液は、上記のごとく、大きな泡を生成する大きな泡生成部とその大きな泡をせん断力で分泡する微小な泡生成部とを有する泡状定着液生成手段によって生成され、液供給口より、膜調整ワイヤーバーと塗布ローラとの間に滴下する。ワイヤーバーを膜厚調整手段として用いることで、ブレードに比べ、塗布ローラ面の軸方向の泡状定着液膜均一性が向上する。
【0189】
泡状定着液のかさ密度としては、0.01g/cm〜0.1g/cm程度の範囲が好ましい。更に、定着液付与時に媒体面に残液感を生じないようにするためには、0.01g/cm〜0.02g/cmが好ましい。なぜならば、図16(A)及び図16(B)の塗布ローラ(41)のように、接触付与手段面の定着液の泡膜は、記録媒体上の樹脂微粒子層の厚み以上であることが必須条件で(樹脂微粒子層の隙間を泡状定着液で埋めるため)、おおよそ、泡膜厚みは、50μm〜80μmが好ましい。一方、記録媒体面への定着液付着における残液感(ぬれたような感触)を生じさせないためには、定着液付着量として、記録媒体の単位面積当たり、0.1mg/cm以下が好ましい。このことから、泡のかさ密度としては、0.0125g/cm〜0.02g/cmの範囲が好ましい。
【0190】
図18は、本発明に係る定着装置を実施するための定着装置における一実施の形態の構成を示す概略構成図である。図18に示す実施の形態の定着装置(40)において、加圧ローラ(43)は、弾性層として弾性多孔質体(以下、スポンジ素材とも称する。)を用いて構成してもよい。泡状定着液がトナー等の樹脂微粒子層を浸透して紙等の記録媒体まで到達した後に塗布ローラと樹脂微粒子層とが剥離するようにニップ時間のタイミングを取る必要がある。この点、スポンジ素材からなる加圧ローラ(43)は、ニップ時間として50ミリ秒〜300ミリ秒の範囲を確保し、且つ弱い加圧力で大きく変形可能であることから、好ましい。
【0191】
なお、ニップ時間は、ニップ時間=ニップ幅/紙の搬送速度により算出される。紙の搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、記録媒体を塗布ローラ(41)及び対峙する加圧ローラ(43)に挟んで加圧(各ローラは回転させない状態で)し、記録媒体に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。
【0192】
記録媒体の搬送速度に応じてニップ幅を調整することで、ニップ時間を泡状定着液のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。図18に示す例では、加圧ローラ(43)を弾性層としてスポンジ素材とすることで、記録媒体の搬送速度に応じて、塗布ローラ(41)と加圧ローラ(43)との軸間距離を変更しニップ幅を変えることが容易となる。スポンジの代わりに弾性ゴムを加圧ローラ(43)の素材として用いてもよいが、スポンジは弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ(41)の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
【0193】
なお、定着液中には可塑剤(軟化剤)が含有されており、スポンジ素材で形成された加圧ローラに定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがある。そのため、スポンジ素材の樹脂材は、液体可塑剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が好ましい。また、スポンジ素材を用いた加圧ローラは、可撓性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が液体可塑剤で劣化する素材であっても、液体可塑剤により軟化や膨潤を示さない可撓性フィルムで覆うことでスポンジローラの劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、特に制限はなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂の多孔質体が挙げられる。また、スポンジを覆う可撓性フィルムとしては、可撓性を有する限り、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
【0194】
図18において、塗布ローラ(41)とスポンジ素材を用いた加圧ローラ(43)とが常時接触している構成の場合、記録媒体が搬送されていないときに塗布ローラ(41)上の泡状定着液が加圧ローラ(43)に付着し汚す恐れがある。これを防止するため、塗布ローラ(41)からみて記録媒体の搬送方向の上流に紙先端検知手段(不図示)を設け、先端検知信号に応じて、記録媒体の先端から後方にのみ泡状定着液が塗布されるようなタイミングで塗布ローラ(41)に泡状定着液を形成することが好ましい。
【0195】
図18に記載の定着装置(40)は、待機時は塗布ローラ(41)とスポンジ素材を用いた加圧ローラ(43)とはそれぞれ離れており、図示していない駆動機構により、塗布時のみ、記録媒体の先端検知手段に応じて塗布ローラ(41)とスポンジ素材を用いた加圧ローラ(43)とを接触させる構成であることも好ましい。また、図18に記載の定着装置(40)は、記録媒体の後端検知も行ない、記録媒体の後端検知信号に応じて塗布ローラ(41)とスポンジ素材を用いた加圧ローラ(43)とを離すように構成することも好ましい。
【0196】
図19は、本発明の一実施の形態に係る定着装置の別の構成を示す概略構成図である。
図19に示す実施の形態の定着装置(40)は、図18の加圧ローラ(43)の代わりに加圧ベルト(44)を用いたものである。大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段(30)で生成され液供給口より所望の泡径を有する泡状定着液を、膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード(42)の供給口へチューブ等を用いて供給する。
そして、膜厚調整手段の膜厚調整用ブレード(42)と塗布ローラ(41)とのギャップを調整して塗布ローラ(41)上の泡状定着液の層膜厚を調整し、泡状定着液の最適膜厚の調整を行なう。加圧ベルト(44)の材料としては、例えばシームレスニッケルベルト、シームレスPETファイル等の基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いてもよい。
【0197】
このように、ベルトを用いる構成では、ニップ幅を容易に広くすることが可能となる。
したがって、ベルトを用いる構成としては、図19に限らず、塗布ローラをベルトとし、加圧手段をベルトではなくローラとする構成も好ましい。また、塗布側又は加圧側の少なくとも一方をベルトとする構成とすることで容易にニップ幅を広くすることが可能となり、紙にしわが発生するような無理な力をかけることがない。また、ニップ時間と紙の搬送速度とが同様であると、紙の搬送速度を速くすることが可能となり、高速定着が可能となる。
【0198】
また、トナーの定着装置は、本発明における定着液をトナーに供給した後、少なくともその一部が軟化乃至膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、軟化乃至膨潤した上記のトナーを加圧することによって、軟化乃至膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ軟化乃至膨潤したこのトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0199】
<その他の工程及びその他の手段>
<<加温工程及び加温手段>>
本発明による定着方法及び定着装置は、泡状定着液が付与された樹脂微粒子層を加温する加温工程及び加温手段をさらに有してもよい。加温工程及び加温手段における加温の温度としては、充分な定着特性の得られる範囲であれば、特に制限はないが、例えば、50℃〜100℃が好ましい。上記加温の温度が、50℃未満であると、定着が不充分である場合があり、100℃を超えると、エネルギー消費の点で、不経済である。
【0200】
加温手段の形態としては、上記の態様を実施できるものであれば、ローラなど、適宜選択すればよい。加温手段をローラで構成する場合、例えば図20に示すように、加圧ローラ(46)と加圧ローラ(48)とで構成し、被定着物と接する側のローラに赤外線ヒータ(47)などの加温媒体を設けた定着装置(45)であってもよい。
【0201】
〔画像形成方法〕
本発明の画像形成方法は前記本発明の定着方法を用いており、本発明の画像形成装置は本発明の定着方法を具現化した定着装置を用いている。
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体(以下、単に潜像担持体とも称する。)表面に均一に帯電を施す帯電工程と、帯電した潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光工程(静電潜像形成工程)と、現像剤担持体上に現像剤層規制部材により所定層厚の現像剤層を形成し、現像剤層を介して潜像担持体表面に形成された静電潜像を現像し、可視像(トナー像)化する現像工程と、潜像担持体表面の可視像を被転写体(記録媒体)に転写する転写工程と、被転写体上の可視像を定着させる定着工程と、を有し、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。そして、定着工程は、本発明の定着方法により行なわれる。なお、前記現像工程は、静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体、現像剤を前記現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材、及び、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器を備えてなり、前記静電潜像を前記現像剤を用いて現像して現像してトナー像を形成する現像手段により実現される。
【0202】
本発明の画像形成装置は、静電潜像を担持する静電潜像担持体(以下、単に潜像担持体とも称する。)と、潜像担持体表面に均一に帯電を施す帯電手段と、帯電した該静電潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段(静電潜像形成手段)と、潜像担持体表面に形成された静電潜像にトナーを供給し可視像(トナー像)化する現像手段と、潜像担持体表面の可視像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体(記録媒体)上の可視像を定着させる定着手段と、を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなり、前記トナーは上述の本発明に係るトナーである。なお、前記現像手段についてより詳しくは、静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体、現像剤を前記現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材、及び、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器を備えてなり、前記静電潜像を前記現像剤を用いて現像して現像してトナー像を形成する。
【0203】
前記静電潜像の形成は、例えば前記潜像担持体の表面を帯電手段により一様に帯電させた後、露光手段により像様に露光することにより行なうことができる。
前記現像による可視像の形成は、現像剤担持体としての現像ローラ上にトナー層を形成し、現像ローラ上のトナー層を潜像担持体である感光体ドラムと接触させるように搬送することにより、感光体ドラム上の静電潜像を現像することでなされる。トナーは、撹拌手段により攪拌され、機械的に現像剤供給部材へ供給される。現像剤供給部材から供給され、現像剤担持体に堆積したトナーは現像剤担持体の表面に当接するよう設けられた現像剤層規制部材を通過することで均一な薄層に形成されるとともに、さらに帯電される。潜像担持体上に形成された静電潜像は、現像領域において、前記現像手段により帯電したトナーを付着させることで現像され、トナー像となる。
【0204】
前記可視像の転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記潜像担持体(感光体)を帯電することにより行なうことができ、前記転写手段により行なうことができる。
転写された可視像の定着は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いてなされ、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行なってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行なってもよい。
前記定着装置は、前述の本発明に係る定着方法を実施可能な定着装置をそのまま採用できる。
【0205】
次に本発明の実施形態に係る画像形成装置(プリンタ)の基本的な構成について図21及び22を参照してさらに説明する。
図21は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、電子写真方式の画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。画像形成装置は、イエロー(以下、「Y」と記す。)、シアン(以下、「C」と記す。)、マゼンタ(以下、「M」と記す。)、ブラック(以下、「K」と記す。)の4色のトナーから、カラー画像を形成するものである。
【0206】
まず、複数の潜像担持体を備え、該複数の潜像担持体を表面移動部材の移動方向に並列させる画像形成装置(「タンデム型画像形成装置」)の基本的な構成について説明する。
この画像形成装置は、潜像担持体として4つの感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)を備えている。なお、ここではドラム状の感光体を例に挙げているが、ベルト状の感光体を採用することもできる。各感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)は、それぞれ表面移動部材である中間転写ベルト(10)に接触しながら、図21中矢印の方向に回転駆動する。各感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)は、それぞれ中間転写ベルト(10)に接触しながら、図21中矢印の方向に回転駆動する。各感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)は、比較的薄い円筒状の導電性基体上に感光層を形成し、更にその感光層の上に保護層を形成したものであり、また、感光層と保護層との間に中間層を設けてもよい。
【0207】
図22は、感光体を配設する作像形成部(2)の構成を示す概略図である。なお、画像形成部(2Y)、(2C)、(2M)、(2K)における各感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)周りの構成はすべて同じであるため、1つの作像形成部(2)についてのみ図示し、色分け用の符号Y、C、M、Kについては省略してある。感光体(1)の周りには、その表面移動方向に沿って、帯電手段としての帯電装置(3)、現像手段としての現像装置(5)、感光体(1)上のトナー像を記録媒体又は中間転写体(10)に転写する転写手段としての転写装置(6)、感光体(1)上の未転写トナーを除去するクリーニング装置(7)の順に配置されている。帯電装置(3)と現像装置(5)との間には、帯電した感光体(1)の表面の画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段としての露光装置(4)から発せられる光が感光体(1)まで通過できるようにスペースが確保されている。
【0208】
帯電装置(3)は、感光体(1)の表面を負極性に帯電する。本実施形態における帯電装置(3)は、いわゆる接触・近接帯電方式で帯電処理を行なう帯電部材としての帯電ローラを備えている。即ち、この帯電装置(3)は、帯電ローラを感光体(1)の表面に接触又は近接させ、その帯電ローラに負極性バイアスを印加することで、感光体(1)の表面を帯電する。感光体(1)の表面電位が−500Vとなるような直流の帯電バイアスを帯電ローラに印加している。
【0209】
なお、帯電バイアスとして、直流バイアスに交流バイアスを重畳させたものを利用することもできる。また、帯電装置(3)には、帯電ローラの表面をクリーニングするクリーニングブラシが設けてもよい。なお、帯電装置(3)として、帯電ローラの周面上の軸方向両端部分に薄いフィルムを巻き付け、これを感光体(1)の表面に当接するように設置してもよい。この構成においては、帯電ローラの表面と感光体(1)の表面との間は、フィルムの厚さ分だけ離間したきわめて近接した状態となる。したがって、帯電ローラに印加される帯電バイアスによって、帯電ローラの表面と感光体(1)の表面との間に放電が発生し、その放電によって感光体(1)の表面が帯電される。
【0210】
このようにして帯電した感光体(1)の表面には、露光装置(4)によって露光されて各色に対応した静電潜像が形成される。この露光装置(4)は、各色に対応した画像情報に基づき、感光体(1)に対して各色に対応した静電潜像を書き込む。なお、本実施形態の露光装置(4)は、レーザ方式であるが、LEDアレイと結像手段とからなる他の方式を採用することもできる。
【0211】
トナーボトル(31Y)、(31C)、(31M)、(31K)から(一部が現像剤収納器として機能する)現像装置(5)内に補給されたトナーは、供給ローラ(現像剤供給部材)(5b)によって搬送され、現像ローラ(現像剤担持体)(5a)上に担持されることになる。この現像ローラ(5a)は、感光体(1)と対向する現像領域に搬送される。ここで、現像ローラ(5a)は、感光体(1)と対向する領域(以下、「現像領域」と記す。)において感光体(1)の表面よりも速い線速で同方向に表面移動する。そして、現像ローラ(5a)上のトナーが、感光体(1)の表面を摺擦しながら、トナーを感光体(1)の表面に供給する。このとき、現像ローラ(5a)には、図示しない電源から−300Vの現像バイアスが印加され、これにより現像領域には現像電界が形成される。そして、感光体(1)上の静電潜像と現像ローラ(5a)との間では、現像ローラ(5a)上のトナーに静電潜像側に向かう静電力が働くことになる。これにより、現像ローラ(5a)上のトナーは、感光体(1)上の静電潜像に付着することになる。この付着によって感光体(1)上の静電潜像は、それぞれ対応する色のトナー像に現像される。
【0212】
転写装置(6)における中間転写ベルト(10)は、3つの支持ローラ(11)、(12)、(13)に張架されており、図21中矢印の方向に無端移動する構成となっている。この中間転写ベルト(10)上には、各感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)上のトナー像が静電転写方式により互いに重なり合うように転写される。静電転写方式には、転写チャージャを用いた構成もあるが、ここでは転写チリの発生が少ない転写ローラ(14)を用いた構成を採用している。具体的には、各感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)と接触する中間転写ベルト(10)の部分の裏面に、それぞれ転写装置(6)としての一次転写ローラ(14Y)、(14C)、(14M)、(14K)を配置している。ここでは、各一次転写ローラ(14Y)、(14C)、(14M)、(14K)により押圧された中間転写ベルト(10)の部分と各感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)とによって、一次転写ニップ部が形成される。そして、各感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)上のトナー像を中間転写ベルト(10)上に転写する際には、各一次転写ローラ(14)に正極性のバイアスが印加される。これにより、各一次転写ニップ部には転写電界が形成され、各感光体(1Y)、(1C)、(1M)、(1K)上のトナー像は、中間転写ベルト(10)上に静電的に付着し、転写される。
【0213】
中間転写ベルト(10)の周りには、その表面に残留したトナーを除去するためのベルトクリーニング装置(15)が設けられている。このベルトクリーニング装置(15)は、中間転写ベルト(10)の表面に付着した不要なトナーをファーブラシ及びクリーニングブレードで回収する構成となっている。なお、回収した不要トナーは、ベルトクリーニング装置(15)内から図示しない搬送手段により図示しない廃トナータンクまで搬送される。
【0214】
また、支持ローラ(13)に張架された中間転写ベルト(10)の部分には、二次転写ローラ(16)が接触して配置されている。この中間転写ベルト(10)と二次転写ローラ(16)との間には二次転写ニップ部が形成され、この部分に、所定のタイミングで記録媒体としての転写紙が送り込まれるようになっている。この転写紙は、露光装置(4)の図中下側にある給紙カセット(20)内に収容されており、給紙ローラ(21)、レジストローラ対(22)等によって、二次転写ニップ部まで搬送される。そして、中間転写ベルト(10)上に重ね合わされたトナー像は、二次転写ニップ部において、転写紙上に一括して転写される。この二次転写時には、二次転写ローラ(16)に正極性のバイアスが印加され、これにより形成される転写電界によって中間転写ベルト(10)上のトナー像が転写紙上に転写される。
【0215】
二次転写ニップ部の転写紙搬送方向下流側には、図示していない露光装置からの画像情報に基づいてフォーム状の定着液の膜厚を制御する定着装置(23)によって定着される。
すなわち、画像形成部(30)から排出された後の記録部材に転写された未定着のトナー像には、露光装置(4)からの画像情報、例えばカラー画像又は黒ベタ画像に基づいてフォーム状の定着液層の膜厚が制御されたトナーの定着装置から供給されるフォーム状の定着液が付与され、フォーム状の定着液に含まれる、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる軟化剤によって、未定着のトナー像を、記録部材に定着させる。
これにより、転写紙上に載っていたトナー像が転写紙に定着される。そして、定着後の転写紙は、排紙ローラ(24)によって、装置上面の排紙トレイ上に排出される。尚、定着装置(23)は例えば一対のローラ対(23a,b)を備える。
【0216】
−噴霧方式による定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
図23には、複写機、プリンタ、ファクシミリ、またはそれらの複合機などの画像形成装置の要部構成を示す。図示のものは、電子写真方式のタンデム型カラー画像形成装置であって、中間転写体を用いずに、像担持体上のトナー像を記録材である用紙に直接画像転写する直接転写方式のものである。
【0217】
図23中符号(10)は、無端ベルト状の搬送ベルトである。搬送ベルト(10)は、図示例では駆動ローラ(12)と従動ローラ(13)間に掛けまわして図中反時計まわりに回転走行可能に設ける。もちろん、搬送ベルト(10)を掛けまわすローラは、2つに限らず、別途搬送ベルト(10)の片寄りを調整するローラや、テンションローラなどを設けて、3つ以上のローラに掛けまわすようにしてもよい。
【0218】
搬送ベルト(10)のまわりには、駆動ローラ(12)と従動ローラ(13)間の水平張り渡し部分上に、搬送ベルト(10)の走行方向に沿って順に、ブラック・マゼンタ・シアン・イエローの4つの作像手段(15K)、(15M)、(15C)、(15Y)を横に並べて設置し、タンデム作像装置(16)を構成する。タンデム作像装置(16)の上には、図示省略するが、さらに露光装置などを設けてなる。
【0219】
搬送ベルト(10)とタンデム作像装置(16)間には、搬送ベルト(10)の反時計まわりの走行とともに図23中右から左へと、記録媒体である用紙(17)を搬送する用紙搬送路を形成する。用紙搬送路に沿って、上流には図示しないレジストローラを配置し、下流には定着装置(18)を設置する。
【0220】
図24には、図23に示す画像形成装置に備える1つの作像手段(15)の概略構成を示す。4つの作像手段(15K)、(15M)、(15C)、(15Y)は、それぞれ図24に示すような同一構成とする。
【0221】
図24中符号(20)は、ドラム状の静電潜像担持体である感光体である。感光体(20)のまわりには、左上方に配置する帯電装置(21)から図中矢示する回転方向に順に、現像装置(22)、転写装置(23)、クリーニング装置(24)、除電装置(25)などを配置する。
【0222】
ここで、帯電装置(21)は、図示例では帯電チャージャを用いて均一なマイナス帯電を与える非接触帯電方式を採用したが、もちろん帯電ローラを用いる接触帯電方式を採用してもよい。現像装置(22)は、この例では、プラス帯電キャリア(26)とマイナス帯電トナー(27)とからなる二成分現像剤を使用し、それを現像スリーブ(現像剤担持体)(28)で担持して感光体(20)にトナー(27)のみを付着し、感光体(20)上の静電潜像を可視像(トナー像)化する。
【0223】
また、転写装置(23)は、図示例では非接触のプラス転写コロナチャージャ方式を採用し、搬送ベルト(10)を挟んで感光体(20)に対向するように配置するが、非接触のコロナチャージャ方式の他に導電性ブラシや転写ローラなどを用いることもできる。また、クリーニング装置(24)には、クリーニング部材として、クリーニングブラシ(30)と、クリーニングブレード(31)を設ける。これにより、クリーニングブラシ(30)やクリーニングブレード(31)で掻き落としたトナーは、不図示の回収スクリュやトナーリサイクル装置で現像装置(22)に回収して再利用することができる。また、除電装置(25)としては、例えば除電ランプを用いる。
【0224】
そして、感光体(20)の時計まわりの回転とともに、感光体(20)の表面を帯電装置(21)で一様に帯電し、不図示の露光装置で書込み光(L)(図23ではLk・Lm・Lc・Ly)を照射してそれぞれ感光体(20)上に静電潜像を形成して後、現像装置(22)で各色トナーを付着してその静電潜像を可視像化し、各感光体(20)上に各色の単色トナー像を形成する。
【0225】
記録媒体(記録材、用紙)(17)は、用紙搬送路を通して搬送し、感光体(20)上に形成した各色トナー像にタイミングを合わせてレジストローラで搬送ベルト(10)上に送り込む。そして、搬送ベルト(10)の走行とともにさらに記録材(用紙)(17)を搬送してその搬送する用紙(17)にそれぞれ転写装置(23)で、各感光体(20)上の単色トナー像を順次転写し、その用紙(17)上に各色の単色トナー像を重ね合わせて合成カラー画像を形成する。トナー像転写後の感光体(20)は、表面をクリーニング装置(24)で清掃して後、除電装置(25)で除電して初期化し、再び帯電装置(21)からはじまる再度の画像形成に備える。
【0226】
合成カラー画像を形成する用紙(17)上のマイナス帯電トナー(27)は、この時点では電気的に用紙(17)に付いているだけであり、強い衝撃を受けたり擦ったりすると、用紙(17)上から離れてしまうことから、合成カラー画像を形成した用紙(17)は、搬送ベルト(10)で搬送して定着装置(18)へと導き、その定着装置(18)で転写画像を定着して後、不図示の排紙スタック部へと排出する。
【0227】
定着装置(18)には、図23に示すように、トナー定着液が定着液滴として噴霧される噴霧手段(33)と、その噴霧手段(33)で噴霧された定着液滴に未定着トナーと同極性のマイナスの電荷を付与させる液滴帯電手段(34)と、その液滴帯電手段(34)で電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して、未定着トナーが載っている用紙(17)を搬送する媒体搬送手段(35)と、その媒体搬送手段(35)で搬送する用紙(17)を未定着トナーおよび定着液滴とは逆極性のプラスに帯電させる記録材帯電手段(36)とが備えられている。
【0228】
図25には、図23に示す定着装置(18)を拡大して示す。
図25から判るとおり、噴霧手段(33)は、筐体(37)で区画された噴霧室(38)内に向けて設置されており、不図示の定着液貯留部に貯留されるトナー定着液が、最頻値の滴径が15μm以下の定着液滴として噴霧されて、噴霧室(38)が定着液滴で満たされる。
【0229】
液滴帯電手段(34)としては、イオナイザなどを用い、噴霧室(38)内に空気イオンを噴霧して、噴霧手段(33)で噴霧された定着液滴に混ぜ合わせ、定着液滴を未定着トナーと同極性のマイナスに帯電させる。図示例とは異なり、未定着トナーがプラスに帯電しているときは、定着液滴もプラスに帯電させる。
【0230】
記録媒体搬送手段(35)は、複数のローラ(40)と、それらのローラ(40)に掛けまわされて静電吸着して用紙(17)を搬送する搬送ベルト(41)とで構成されている。そして、転写装置(23)で転写されて図示するように残留電荷がマイナスの未定着トナー(42)が乗っている用紙(17)が、搬送ベルト(10)により搬送されて定着装置(18)に送り込まれ、定着装置(18)の媒体搬送手段(35)の搬送ベルト(41)で引き続いて図25中右から左に、液滴帯電手段(34)で電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して搬送される。
【0231】
記録媒体帯電手段(36)は、ローラ(40)に掛けまわされている搬送ベルト(41)の内側に配置される電極(44)と、その電極(44)に接続される電源(45)とで構成されている。そして、電源(45)により搬送ベルト(41)の内側に配置される電極(44)に電圧が印加されて、搬送ベルト(41)で搬送される用紙(17)を未定着トナー(42)および定着液滴とは逆極性のプラスに帯電させる。このとき、もちろん搬送ベルト(41)は、用紙(17)の帯電を妨げない材料で形成される。これにより、クーロン力で用紙(17)の裏側から吸引することで、用紙(17)に付着された定着液滴がさらに用紙(17)の裏側まで浸透するようにし、用紙(17)の表裏でなお一層液濃度を均等にして用紙(17)のカールを少なくすることができる。
【0232】
なお、図25中符号(46)は、定着装置(18)から出た用紙(17)に接触して除電する除電部材としての除電ローラであり、もちろんローラに限らずブラシなどでもよい。
【0233】
以上のとおり、図23〜25の図示例によれば、噴霧手段(33)で噴霧された定着液滴に、液滴帯電手段(34)で用紙(17)上の未定着トナー(42)と同極性の電荷を付与させる一方、電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して、媒体搬送手段(35)で、未定着トナー(42)が載っている用紙(17)が搬送され、その搬送される用紙(17)を記録材帯電手段(36)で未定着トナー(42)および定着液滴とは逆極性に帯電させ、クーロン力で強制的に吸引されて記録媒体(用紙)(17)に未定着トナー(42)および定着液滴(53)が吸着され、記録媒体(用紙)(17)に定着される。
【0234】
噴霧手段(33)でトナー定着液が、最頻値の滴径が15μm以下の定着液滴として噴霧されると、噴霧された定着液滴がドライミストとして空間に均一に浮遊して、用紙(17)に無駄なくムラなく付着されるので、定着液滴を用紙(17)に無駄なく付着して定着液の有効使用を図るとともに定着ムラを解消することができる。
【0235】
−接触手段方式による定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
図26に示すものは、電子写真方式のタンデム型カラー画像形成装置であって、中間転写体を用いて、静電潜像担持体(20)上のトナー像をいったん中間転写体に一次転写した後、その中間転写体上のトナー像を記録材に二次転写する中間接転写方式のものである。
【0236】
図26は、本実施形態に係る画像形成装置の定着手段としての定着装置を含む部分の概略構成図である。本実施形態の画像形成装置は、中間転写ベルト(10)の表面移動方向において2次転写部の上流側に定着装置(90)が配置されている。この定着装置(90)は、中間転写ベルト(10)の表面と微小間隔を空けて対向するように配置される定着液供給手段(定着液付与)としての供給ローラ(91)を備えている。定着装置(90)は、供給ローラ(91)が中間転写ベルト(10)の表面に対して近接したり離間したりできるように、図示しない駆動機構によって移動可能な構成となっている。また、定着装置(90)の定着液タンク(93)の内部には定着液(92)が収容されており、この定着液(92)に供給ローラ(91)が浸った状態で配置されている。供給ローラ(91)は、トナーに定着液(92)を付与する際には図中矢印の方向に回転駆動する。これにより、供給ローラ(91)の表面に定着液(92)が汲み上げられる。このようにして汲み上げられた定着液(92)は、メータリングブレード(94)によって規制され、供給ローラ(91)の表面に付着する定着液が適量に調整される。そして、供給ローラ(91)上の定着液は、供給ローラ(91)の回転に伴って中間転写ベルト(10)の表面との対向位置まで搬送され、中間転写ベルト(10)の表面に定着液を供給する。
【0237】
また、中間転写ベルト(10)上のトナーに定着液を供給する定着液供給手段として供給ローラ(91)を用いた場合、中間転写ベルト(10)上に担持されたトナー像を乱してしまうおそれがある。そのため、本実施形態では、導電性材料で構成した基体を絶縁層又は高抵抗層で覆った供給ローラ(91)を用い、その供給ローラ(91)に電界形成手段としての電源(95)を接続している。具体的には、例えば、ステンレス製の芯金に導電性のゴム層を形成し、その表面を絶縁性のPFAチューブで覆ったものを用いることができる。このような構成により、供給ローラ(91)と中間転写ベルト(10)との間には、トナーを中間転写ベルト側に押し付ける方向の電界が形成される。このような電界を形成することで、液供給位置における中間転写ベルト(10)上のトナーの中間転写ベルト(10)側への拘束力を高めることができる。これにより、中間転写ベルト(10)上に担持されたトナー像を乱すことなく、そのトナーに対して定着液(92)を供給することができる。
次いで、定着液(92)が付与されたトナー像を担持する記録媒体は、さらに搬送され、定着搬送ベルト(22)との対向位置まで達する。この対向位置においてトナー像は加圧され、完全に定着された状態となる。
しかる後に定着搬送ベルト(22)上をさらに搬送され、画像形成装置外に排出される。
【実施例】
【0238】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0239】
―結着樹脂(1)〜(4)―
結着樹脂(1)〜(4)はエチルセルロースであり、分子量を段階的に変えたものである。これらはすべてDow Chemical Company製のものを使用した。
【0240】
―結着樹脂(5)―
結着樹脂(5)は酢酸セルロースである。これはダイセル化学製のものを使用した。
【0241】
(製造例1)
―結着樹脂(6)の製造―
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物81質量部、フマル酸184質量部、及びジブチルスズオキサイド3質量部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させた後、10〜15mmHgで5時聞反応させた。次に、反応容器に無水トリメリット酸10質量部を入れ、180℃、常圧で3時間反応させることにより、結着樹脂(6)を得た。結着樹脂(6)は、重量平均分子量が50,000であり、Tgが60℃であった。
【0242】
(製造例2)
―結着樹脂(7)の製造―
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物81質量部、テレフタル酸264質量部、及びジブチルスズオキサイド3質量部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させた後、10〜15mmHgで5時聞反応させた。次に、反応容器に無水トリメリット酸35質量部を入れ、180℃、常圧で3時間反応させることにより、結着樹脂(7)を得た。結着樹脂(7)は、重量平均分子量が15,200であり、Tgが61℃であった。
【0243】
結着樹脂(1)〜(7)について、重量平均分子量(Mw)、Tg〔℃〕及び浸透時間〔秒/1μm〕を、前述の方法により測定した。結果を下記表1に示す。
【0244】
【表1】

【0245】
(実施例1〜7、比較例1〜4)
<トナー母体1、3〜10の作成>
以下にトナー母体1、3〜10の作成方法を記載するが、工程が多くあるため幾つかの工程に分けて記載する。まずはトナー母体1の作成方法を説明する。
【0246】
−着色剤分散液の調製−
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(Printex35、デグサ社製、DBP吸油量:42mL/100g、pH:9.5)17質量部、顔料分散剤3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。
該顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、5μm以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
【0247】
−トナー母体1の組成液の調製−
結着樹脂1を100質量部、前記着色剤分散液30質量部、酢酸エチル840質量部を、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行ない、均一に分散させ、[トナー組成液1]を得た。溶媒希釈によって顔料が凝集することはなかった。
【0248】
−トナー母体1の作製−
得られた[トナー組成液1]500mlを、前述したトナー製造装置(図9)の液滴吐出ユニット(210)の流路(111)に供給した。
使用した薄膜(111a)は、外径20.0mm、40μm厚のニッケル板に、真円形状の直径10μmのノズル(N)を有しており、電鋳法による加工で作製した。
吐出孔は各吐出孔間の距離が100μmピッチとなるように千鳥格子状に、薄膜(111a)中心の約2mmφの範囲にのみ設けた。
振動手段(振動発生手段)212は内径4mm、直径15mm、厚1.5mmのチタン酸ジルコン酸鉛である。
以下のようなトナー作製条件で、液滴を吐出させた後、該液滴を乾燥固化することにより、トナー母体粒子を作製した。
【0249】
〔トナー母体1作製条件〕
トナー組成液固形分 :10.0%
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
振動数 :53.0kHz
印加電圧サイン波ピーク値:48.9Vp−p
【0250】
なお、「振動数」とは、図10では図示される電気的駆動装置(112e)による液滴吐出ユニット(210)への入力振動周波数である。気流中で乾燥固化したトナー粒子は、軟X線照射による除電をして、1μmの細孔を有するフィルターで吸引捕集した。捕集した粒子を更に35℃の雰囲気下で乾燥させ、トナー母体1を得た。
【0251】
−トナー母体3の作製−
トナー母体3作成に用いる[トナー組成液3]は、前記[トナー組成液1]の作成方法において酢酸エチルの調整によって固形分を変更する以外は同様の操作によって得た。
得られた[トナー組成液3]を前記トナー母体1作成における操作において下記の条件以外は同様に操作し、トナー母体4を得た。
トナー母体3は小粒径で粒度分布の狭い特徴があるが、トナー母体1作成の条件に対して、組成液の固形分を低減することで粒径を小さくすることができ、入力電圧の低減により微粉発生を抑え、乾燥空気量を増やすことで粒子同士の結合を防止する措置を設定することで得られた。
〔トナー母体3作製条件〕
トナー組成液固形分 :6.0%
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 40.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
振動数 :53.0kHz
印加電圧サイン波ピーク値:50.0Vp−p
【0252】
−トナー母体4の作製−
トナー母体4作成に用いる[トナー組成液4]は、前記[トナー組成液1]の作成方法において酢酸エチルの調整によって固形分を変更する以外は同様の操作によって得た。
得られた[トナー組成液4]を前記トナー母体1作成における操作において下記の条件以外は同様に操作し、トナー母体4を得た。
【0253】
トナー母体4は大粒径の特徴があるが、トナー母体1作成の条件に対して、組成液の固形分を増すことで粒径を大きく設定することができる。
【0254】
〔トナー母体4作製条件〕
トナー組成液固形分 :12.6%
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
振動数 :53.1kHz
印加電圧サイン波ピーク値:48.5Vp−p
【0255】
−トナー母体5の作製−
トナー母体5作成に用いる[トナー組成液5]は、前記[トナー組成液1]の作成方法において[結着樹脂1]の代わりに[結着樹脂2]を用いる以外は同様に操作して得た。
得られた[トナー組成液5]を前記トナー母体1作成における操作において下記の条件以外は同様に操作し、トナー母体5を得た。
【0256】
トナー母体5は粒径がトナー母体1と同等であり、ほぼ同条件である。
【0257】
〔トナー母体5作製条件〕
トナー組成液固形分 :10.0%
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
振動数 :53.0kHz
印加電圧サイン波ピーク値:47.0Vp−p
【0258】
−トナー母体6の作製−
トナー母体6作成に用いる[トナー組成液6]は、前記[トナー組成液1]の作成方法において[結着樹脂1]の代わりに[結着樹脂3]を用いる以外は同様に操作して得た。
得られた[トナー組成液6]を前記トナー母体1作成における操作において下記の条件以外は同様に操作し、トナー母体6を得た。
【0259】
〔トナー母体7作製条件〕
トナー組成液固形分 :8.0%
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
振動数 :53.1kHz
印加電圧サイン波ピーク値:49.5Vp−p
【0260】
−トナー母体7の作製−
トナー母体7作成に用いる[トナー組成液7]は、前記[トナー組成液1]の作成方法において[結着樹脂1]の代わりに[結着樹脂5]を用い、固形分を変更する以外は同様に操作して得た。
得られた[トナー組成液7]を前記トナー母体1作成における操作において下記の条件以外は同様に操作し、トナー母体7を得た。
【0261】
〔トナー母体8作製条件〕
トナー組成液固形分 :9.0%
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
振動数 :53.0kHz
印加電圧サイン波ピーク値:49.5Vp−p
【0262】
−トナー母体8の作製−
トナー母体8作成に用いる[トナー組成液8]は、前記[トナー組成液1]の作成方法において[結着樹脂1]の代わりに[結着樹脂4]を用い、固形分を変更する以外は同様に操作して得た。
得られた[トナー組成液8]を前記トナー母体1作成における操作において下記の条件以外は同様に操作し、トナー母体8を得た。
【0263】
〔トナー母体9作製条件〕
トナー組成液固形分 :8.5%
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
振動数 :53.0kHz
印加電圧サイン波ピーク値:49.8Vp−p
【0264】
−トナー母体9の作製−
トナー母体9作成に用いる[トナー組成液9]は、前記[トナー組成液1]の作成方法において[結着樹脂1]の代わりに[結着樹脂6]を用いる以外は同様に操作して得た。
得られた[トナー組成液9]を前記トナー母体1作成における操作において下記の条件以外は同様に操作し、トナー母体9を得た。
【0265】
〔トナー母体9作製条件〕
トナー組成液固形分 :10.0%
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
振動数 :53.0kHz
印加電圧サイン波ピーク値:49.9Vp−p
【0266】
−トナー母体10の作製−
トナー母体10作成に用いる[トナー組成液10]は、前記[トナー組成液1]の作成方法において[結着樹脂1]の代わりに[結着樹脂7]を用いる以外は同様に操作して得た。
得られた[トナー組成液10]を前記トナー母体1作成における操作において下記の条件以外は同様に操作し、トナー母体10を得た。
【0267】
〔トナー母体10作製条件〕
トナー組成液固形分 :10.0%
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度 :27〜28℃
振動数 :53.0kHz
印加電圧サイン波ピーク値:46.5Vp−p
【0268】
<粉砕法トナー母体(2)の作成>
粉砕法によって得られるトナー母体(2)について説明する。使用する顔料マスターバッチの作成についても詳細に説明する。
【0269】
―トナー母体(2)作製―
結着樹脂(1)88質量部、前記乳化凝集で用いたものと同じマスターバッチ(1)12質量部をヘンシェルミキサー「MF20C/I型」、(三井三池加工機株式会社製)に投入し、回転羽の速度が30m/sとなる回転数で30秒間混合、60秒間休止の条件を5回繰り返し混合した後、2軸押出機(東芝機械株式会社製)にて溶融混練し、10℃に温度調整したスチールベルト上で冷却した。前記混練は、2軸押出機出口での混練生成物の温度が120℃前後となるように設定して行なった。次いで、「IDS−2型」ジェットミル(ニューマチック工業)にて粉砕し、次いで風力分級を行なって、[トナー母体(2)]を作製した。
【0270】
―マスターバッチ(2)の作製―
結着樹脂(2)100質量部、カーボンブラック(Printex35、デグサ社製、DBP吸油量:42mL/100g、pH:9.5)100質量部、水50質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合した。得られた混合物を、二本ロールを用いて80℃にて30分間混練後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕し、2mmφの目開きの篩通過ぶんを回収して[マスターバッチ(2)]を作製した。
【0271】
<キャリアの作製>
シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100質量部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、カーボンブラック10質量部、トルエン100質量部を、ホモミキサーで20分間分散させて、[樹脂層塗布液]を調製した。その後、流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径が35μmの球状フェライト1,000質量部の表面に[樹脂層塗布液]を塗布して、[キャリア]を作製した。
【0272】
<現像剤の作製>
[トナー(1)]〜[トナー(10)]のそれぞれを5質量部と、前記[キャリア]95質量部とを混合して、実施例1〜7及び比較例1〜3の各現像剤を作製した。
【0273】
次に、得られた各トナー、各現像剤を用いて、以下のようにして定着性、耐熱保存性について評価を行ない、総合評価を下した。その結果を、実施例1〜9及び比較例1〜3で用いられたトナーの重量平均分子量、ガラス転移温度、Dv、及びDv/Dnと共に表2に示す。
【0274】
《定着性》
定着装置を除去した電子写真方式のプリンタ(リコー社製 IpsioColorCX8800)に各現像剤を入れて、定着後に所定濃度となる濃度設定のハーフトーン画像の未定着トナー画像が形成されたPPC用紙に、図18に示す定着装置を用いてローラ塗布し、以下に示すようにして得られた定着液を搭載した塗布装置例からなる定着装置にてスポンジの加圧ローラと塗布ローラとの軸間距離を15mm(ニップ時間100ms)にて定着を行なった。このときの紙搬送速度は150mm/sである。
【0275】
<定着液の作製>
◇軟化剤を含有する液体
希釈溶媒:
イオン交換水 53wt%
軟化剤:
コハク酸ジエトキシエトキシエチル(高級アルコール工業株式会社) 10wt%
炭酸プロピレン 20wt%
増粘剤:
プロピレングリコール 10wt%
増泡剤:
ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM) 0.5wt%
起泡剤:
パルミチン酸アミン 2.5wt%
ミリスチン酸アミン 1.5wt%
ステアリン酸アミン 0.5wt%
分散剤:
POE(20)ラウリルソルビタン(花王 レオドールTW−S120V) 1wt%
ポリエチレングリコールモノステアレート(花王 エマノーン3199) 1wt%
【0276】
なお、分散剤は、軟化剤の希釈溶媒(希釈剤)への溶解性を助長するために用いた。脂肪酸アミンは、脂肪酸とトリエタノールアミンにより脂肪酸アミンを合成した。
【0277】
上記成分比にて、先ずは、液温120℃にて軟化剤を除いて混合攪拌し溶液を作製した。次に、軟化剤を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて軟化剤が溶解した定着液(フォーム化する前の原液)を作製した。
【0278】
<定着性(速度)>
ハーフトーン(定着後のID=0.25となる設定)画像を定着後、5秒後および1時間後に、画像の表面をクロックメーターにて15mmφの面積でJISL 0803 綿3号で5回擦り、綿布の汚れを反射濃度計(X−Rite 939)にて測定し、下記基準で定着性を評価した。
【0279】
〔評価基準〕
◎:反射濃度が0.20未満
○:反射濃度が0.20以上0.30未満
△:反射濃度が0.30以上0.40未満
×:反射濃度が0.40以上
《定着性(密着性)》
ハーフトーン(定着後のID=1.0となる設定)画像を定着後、1分後に画像の表面にスコッチ メンディングテープ 810(3M製);幅 24mmはりつけゴムローラを5mm/sの速度で3回往復させ画像表面に密着させる。1時間放置した後、貼り付けたテープを画像に対して90°の角度が維持されるように5mm/sの速度で剥がし、これを白紙にはりつけ、テープによって画像表面より剥離されたトナーを反射濃度計(X−Rite 939)にて測定し、下式に従ってテープ剥離強度を求め、下記基準で定着性を評価した。
式 テープ剥離強度={(テープ剥離後画像濃度)/(初期画像濃度)}*100(%)
〔評価基準〕
◎:テープ剥離強度が95%以上
○:テープ剥離強度が90%以上、95%未満
△:テープ剥離強度が80%以上、90%未満
×:テープ剥離強度が80%未満
【0280】
《耐熱保存性(針入度)》
50mlのガラス容器に各トナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により、針入度(mm)を測定し、下記基準で耐熱保存性を評価した。なお、針入度が大きい程、耐熱保存性が優れていることを意味し、針入度が5mm未満であるものは、使用上、問題が発生する可能性が高い。
【0281】
〔評価基準〕
◎:針入度が25mm以上
○:針入度が15mm以上25mm未満
△:針入度が5mm以上15mm未満
×:針入度が5mm未満
【0282】
《総合評価》
以上の評価結果から、総合的に判断して、下記基準により評価した。
【0283】
〔評価基準〕
各評価項目の◎を3点、○を2点、△を1点、×を0点とし、下記の基準で評価する。
◎:非常に良好(8〜9点)
○:良好(5点以上8点未満で×なし)
△:不良(3点以上5点未満で×なし)
×:極度に不良(×が一つ以上)
【0284】
【表2】

【0285】
以上の実施例1〜9及び比較例1〜3によれば、本発明に係るトナーは、定着工程における消費エネルギーがきわめて小さいにも関わらず、定着直後の画像強度が高く、ハーフトーン画像においても擦れに対して強い画像が得られると共に、耐熱保存性にも優れたものであることがわかった。
【符号の説明】
【0286】
(図1〜12)
100、200 トナーの製造装置
110、110’、110’’、210 液滴吐出ユニット
111、211 流路部材
111a、111a’ 薄膜
111b、211b 流路部材本体
111c、111c’、211c 液室
111d 絞り
111e 開口部
112、212 振動部材
112a、212a 電歪振動子
112b ホーン
112c、112d、212c、212d 電極
112e 電源
113 気相流路
120 乾燥塔
130 捕集部
131 テーパー面
132 配管
140 貯留部
150 供給部
151 タンク
152 ポンプ
153、154 配管
155 流量センサ
L トナー材料液
L’ 液滴
G、G’ 乾燥気体
T 母体粒子
N、N’ 吐出口
S 渦流
(図13〜20)
11 塗布ローラ
12 記録媒体
13 樹脂微粒子層
14 泡状定着液
20 泡状定着液
21 液体
22 気泡
30 泡状定着液生成手段
31 定着液容器
32 液状定着液
33 搬送ポンプ
34 液搬送パイプ
35 気体・液体混合部
36 空気口
37 微小孔シート
38 泡生成部
40 定着装置
41 塗布ローラ
42 膜厚調整用ブレード
43 加圧ローラ
44 加圧ベルト
45 加温手段
46 加圧ローラ
47 赤外線ヒータ
48 加圧ローラ
50 画像形成装置
51 中間転写ベルト
52 支持ローラ
53 支持ローラ
54 支持ローラ
55 画像形成ユニット
56 画像形成ユニット
57 画像形成ユニット
58 画像形成ユニット
59 二次転写装置
(図21、22)
1 感光体
2 作像形成部
3 帯電装置(帯電ローラ)
4 露光装置
5 現像装置
5a 現像ローラ
5b 現像剤供給ローラ
5c 規制ブレード
6 転写装置
7 クリーニング装置
10 中間転写ベルト
11、12、13 支持ローラ
14 一次転写ローラ
15 ベルトクリーニング装置
16 二次転写ローラ
T トナー(現像剤)
(図23〜図25)
15K、15M、15C、15Y 作像手段
17 用紙(記録材)
18 定着装置
23 転写手段
33 噴霧手段
34 液滴帯電手段
35 媒体搬送手段
36 記録材帯電手段
38 噴霧室
40 ローラ
41 搬送ベルト
42 未定着トナー
44 電極
45 電源
50 印加手段
53 定着液滴
64 中間転写体
67 二次転写手段
69 一次転写手段
(図26)
10 中間転写ベルト
90 定着装置
91 供給ローラ
92 定着液
93 定着液タンク
94 メータリングブレード
95 電源
【先行技術文献】
【特許文献】
【0287】
【特許文献1】特許第3290513号公報
【特許文献2】特開2004−109749号公報
【特許文献3】特開昭59−119364号公報
【特許文献4】特開2009−8967号公報
【特許文献5】特開2008−139504号公報
【特許文献6】特開2004−163640号公報
【特許文献7】特開2005−23322号公報
【特許文献8】特開2005−346092号公報
【特許文献9】特開2008−122604号公報
【特許文献10】特開2008−89829号公報
【特許文献11】特開2007−279713号公報
【非特許文献】
【0288】
【非特許文献1】Fick A. Uber diffusion. Ann. Phys(ik). 1855:94:59-86.(東大図書館所蔵)
【非特許文献2】DIFFUSION IN SOLIDS SHEWMON P;笛木和雄/訳;北澤宏一/訳、コロナ社、1985/07/15

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、結着樹脂と、を含み、当該トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を用いて記録媒体に定着されるトナーであって、
結着樹脂は水に不溶かつ有機溶剤に可溶のセルロース誘導体であって、重量平均分子量が30,000から100,000であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
重量平均粒子径が3.0〜6.0μmであり、且つ、重量平均粒子径/個数平均粒子径が1.15以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記重量平均粒子径/個数平均粒子径が1.10以下であることを特徴とする請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記結着樹脂がエチルセルロールでありエチル基の置換度が40〜50%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
着色剤と、結着樹脂と、を含み、当該トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を用いて記録媒体に定着されるトナーの製造方法であって、
前記トナーは結着樹脂はセルロース誘導体であって、重量平均分子量が30,000から100,000であり、
工程(A):前記結着樹脂及び前記着色剤を含有するトナー組成物を分散乃至溶解させたトナー組成液が満たされた液室から、該液室に設けられた複数のノズルが形成された薄膜と、該薄膜に平行な振動面を持つ振動発生手段と、を用いて前記トナー組成液を前記複数のノズルから周期的に液滴化して液滴を吐出し、
工程(B):次いで、前記液滴を乾燥固化させてトナーを製造することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項6】
前記ノズルは、径が4μm乃至20μmであり、
前記振動発生手段は、振動周波数が20kHz以上2.0MHz未満であることを特徴とする請求項5に記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
前記液室に配置されるノズルは、2乃至5,000個であることを特徴とする請求項5または6に記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
前記液室の外部に気流路が設けられ、前記複数のノズルのトナー組成液の吐出方向に気流が形成されてなり、
前記気流路は、前記トナー組成液が前記複数のノズルから吐出される位置の直後で、気流が通過する断面積を縮小せしめる気流絞りが設けられてなることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
前記トナー組成液は、溶媒を含有し、
前記工程(B)は、前記液滴を溶媒除去部で乾燥することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
前記工程(B)は、前記溶媒除去部内で液滴吐出方向と同方向に流れる乾燥気体によって前記液滴を搬送して溶媒を除去することを特徴とする請求項9に記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
重量平均粒粒子径が3.0〜6.0μmであり、且つ、重量平均粒子径/個数平均粒子径が1.15以下であることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項12】
前記結着樹脂はエチルセルロールでありエチル基の置換度が40〜50%であることを特徴とする請求項5乃至11のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項13】
トナーを軟化させる軟化剤を含む定着液を記録媒体上のトナー像に付与して該トナーを記録媒体に定着する定着方法において、
前記トナーは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナーであることを特徴とする定着方法。
【請求項14】
前記定着液は、水を含む希釈剤と、当該定着液を泡状とする起泡剤と、軟化剤と、を含有し、
前記定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成工程と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに調整する膜厚調整工程と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー像に付与する泡状定着液付与工程と、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の定着方法。
【請求項15】
前記軟化剤は、常温で固体であり、且つ、前記希釈剤に可溶であり、当該希釈剤に溶解している状態で前記トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる固体可塑剤であることを特徴とする請求項14に記載の定着方法。
【請求項16】
前記固体可塑剤は、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項15に記載の定着方法。
【請求項17】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記記録媒体上に転写されたトナー像を定着させる定着工程と、
を含む画像形成方法であって、
前記定着工程は、請求項13乃至16のいずれか1項に記載の定着方法により行なわれることを特徴とする画像形成方法。
【請求項18】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体、
現像剤を前記現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材、
及び、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器を備え、
前記静電潜像を前記現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体上に転写されたトナー像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段は、定着液を記録媒体上のトナーに付与する定着液付与手段を有し、
前記トナーは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項19】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体、
現像剤を前記現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材、
及び、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器を備え、
前記静電潜像を前記現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体上に転写されたトナー像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段は、定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、前記泡状定着液を記録媒体上のトナー像に付与する泡状定着液付与手段と、前記泡状定着液付与手段の泡状定着液の膜厚を調整する膜厚調整手段と、を有し、
前記トナーは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−8278(P2012−8278A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143029(P2010−143029)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】