説明

トナー搬送装置およびこれを備えた画像形成装置

【課題】 トナー搬送のために搬送部材が回転する場合でも、搬送管との摺擦部を植毛部とすることにより、異音、異物の発生を防止し、また、搬送部材と搬送管内周面を十分に接触させることを可能にし、搬送トナーの滞留を防止するトナー搬送装置およびこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 静電画像形成装置に使用される画像形成用のトナーを、この静電画像形成装置内に設置された搬送管を構成する円筒形管1内で、螺旋状に形成された搬送部材2を回転させることにより前記搬送管1内を軸方向に搬送させるトナー搬送装置において、芯となる、一定の外径を有する芯棒5に、レース基布8にパイル9が植毛されてなる植毛レース6を、一定の巻き付け隙間幅Gを持たせて螺旋状に巻き付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電複写機、プリンタ等の現像ユニットにおいて使用されるトナー搬送装置およびこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、静電複写機、プリンタ等の電子写真式画像形成装置に使用される画像形成用トナーの回収もしくは供給に用いられる搬送手段としては、金属または樹脂によって形成される円筒形搬送管内部で棒状の金属、または樹脂により螺旋状に形成された搬送部材を回転させることによって行うことが一般的に知られている(例えば、特許文献1ないし3参照)。
しかしながら、この搬送方法では、搬送管内面と、回転する搬送部材の摺擦によって異音が発生したり、異物が発生してトナーに混入することがある。また、この不具合を回避するためには搬送管内面と搬送部材間に一定の隙間が必要であり、この隙間に搬送すべきトナーが滞留して搬送効率が低下するという不具合があった。
上記不具合を改善するためには、搬送部材を、表面に植毛レースを一定の隙間を持たせて螺旋状に巻き付けたブラシローラ状の構成とし、トナー搬送のために搬送部材が回転する場合でも、搬送管との摺擦部を植毛部とすることにより、異音、異物の発生を防止することが必要である。このことは、本発明者によって初めて知見されたものであり、本願によって初めて開示されている。
特許文献1では電子写真装置の感光体に残留したトナーと紙粉を除去するファーブラシクリーニング装置を、特許文献2では回転型ブラシロールを、そして特許文献3ではブラシローラ、画像形成装置、および、ブラシローラの製造方法を開示している。
上記特許文献1ないし3の開示では、芯金に植毛レースを巻き付けてブラシローラを構成しているが、いずれも植毛レースの巻き付け隙間を無くし、植毛密度を均一にして、電気的、機械的なクリーニング性を向上させることを目的としている。
しかし、ブラシローラをトナー搬送手段とすることは示唆さえもなされていない。
【特許文献1】特開平6−95570号公報
【特許文献2】特開平10−293439号公報
【特許文献3】特開2000−23745公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、トナー搬送装置における搬送効率低下の改善のためには、搬送部材を、表面に植毛レースを一定の隙間を持たせて螺旋に巻き付けたブラシローラ状の構成とし、トナー搬送のために搬送部材が回転する場合でも、搬送管との摺擦部を植毛部とすることにより、搬送部材と搬送管内周面を十分に接触させることを可能にし、搬送トナーの滞留を防止することが必要である。
そこで、本発明の目的は、上述した実情を考慮して、トナー搬送のために搬送部材が回転する場合でも、搬送管との摺擦部を植毛部とすることにより、異音、異物の発生を防止し、また、搬送部材と搬送管内周面を十分に接触させることを可能にし、搬送トナーの滞留を防止するトナー搬送装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、静電画像形成装置に使用される画像形成用のトナーを、この静電画像形成装置内に設置された搬送管を構成する円筒形管内で、螺旋状に形成された搬送部材を回転させることにより前記搬送管内を軸方向に搬送させるトナー搬送装置において、芯となる、一定の外径を有する芯棒に、レース基布にパイルが植毛されてなる植毛レースを、一定の巻き付け隙間幅Gを持たせて螺旋状に巻き付けたトナー搬送装置を特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記植毛レースの幅をW、巻き付け隙間幅をG、前記芯棒径をD1としたとき、
π>(W+G)/D1≧(√2)π/2
の関係である請求項1記載のトナー搬送装置を特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記植毛レースの幅W、巻き付け隙間幅Gが
G≧2W
の関係である請求項2記載のトナー搬送装置を特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、前記搬送部材のパイル先端部までの外径D2と前記搬送管内径D3がD2>D3の関係を有する搬送部材を備えた請求項1記載のトナー搬送装置を特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、前記植毛レースおよび前記芯棒が導電性である請求項1記載のトナー搬送装置を特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、前記芯棒がゴムまたはエラストマからなる弾性体である請求項1記載のトナー搬送装置を特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか一項記載のトナー搬送装置を備える画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、植毛レースの隙間の回転によりトナーを搬送させることができ、搬送部材が搬送管内周面と摺擦しても異物の発生がなく、排トナーをリサイクル使用するさいに有利となり、異音の発生もない。また植毛レースであるため搬送管内周との隙間を低減もしくは無くすことができトナーを効率よく搬送できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明によるトナー搬送装置の構成を示す概略図である。このトナー搬送装置は静電画像記録装置に使用される画像形成用のトナーをその静電画像形成装置内に設置された円筒形管(以下、搬送管という)内で、螺旋状に形成された部材を回転させることにより前記搬送管内を軸方向に搬送させる。
本トナー搬送装置におけるトナー搬送機構は、図1に示すとおり、軸方向長さLのトナー供給口3とトナー排出口4が設けられた搬送管1中に、芯となる、一定の外径を有する棒状の物体(以下、芯棒5という)を備えた、図2で説明する搬送部材2が挿入される構成になっている。
トナーを搬送する搬送部材2は、芯棒5の少なくとも一方端に装着された駆動ギヤ10(またはプーリ)を通じて外部駆動源により回転し、これに伴いトナーは搬送部材2によってトナー供給口3からトナー排出口4まで搬送管1内部を搬送される。
図1において、芯棒5の直径、すなわち、芯棒径はD1で示され、搬送管1の内径はD3で示され、そしてトナー供給口3のおよびトナー排出口4の口径(軸方向長)はLで示されている。
【0007】
図2は図1の搬送部材の詳細を示す概略図である。芯棒5には幅Wの帯状の植毛レース6が、巻き付け隙間幅Gを持って螺旋状に巻き付けられている。この構造の搬送部材2が図1の搬送管1内に挿入される。
上述したように、芯棒5の少なくとも一方端に装着された駆動ギヤ10を通じて外部駆動源により搬送部材2が回転し、これに伴いトナーは搬送部材2の巻き付け隙間幅Gとした植毛レース間隔7によって、トナー供給口3からトナー排出口4まで搬送管1内部を搬送されるようになる。
このとき、搬送管1の内径D3はφ12mmである。搬送部材2は芯棒5の材質がポリアミドエラストマ(TAPE)で、径D1はφ7mmである。レース基布8(後述の図3)は材質が導電性ポリエステル、レース基布厚さHbは0.6mmそしてパイル9(後述の図3)はその材質が導電性ナイロン、植毛密度は22k本/cm、パイル長さHpは2.4mmである。
図3は植毛レースを説明する概略図である。図3において、植毛レース6は導電性ポリエステルからなるレース基布8および導電性ナイロンからなるパイル9から構成され、このパイル9はレース基布8に植毛密度:22k本/cmで植え込まれている。
さらに、図3において、Hは植毛レースの総厚(レース基布8とパイル9の全体の厚さ)、Hpはレース基布8の厚さ、そしてHbはパイル9のパイル長さを示している。
植毛レース6の幅W、植毛レース6の巻き付け隙間幅G、芯棒径D1、巻き付け角度θは以下の関係とした。
90°>θ≧45°
ここで、本実施の形態で構成される搬送部材では、
W+G=D1πcosθ
の関係があるため、すなわち
π>(W+G)/D1≧(√2)π/2
の関係とした。
【0008】
図4は植毛レース巻き付け角度と搬送率の関係をグラフで示す図である。上述したθの範囲は図4のグラフにより定めた。
ここでは、
トナー搬送率B=(一定時間後のトナー排出口4からの排出重量/トナー供給口3からのトナー供給重量)
として、搬送効率を評価した。
巻き付け角度θが45°未満のとき、トナーは搬送部材2の回転によっても植毛レース隙間7の同位置に滞留する比率が高く、搬送率が低いことに対し、45°以上であれば、本発明のトナー搬送機構によってトナーが搬送率0.98以上で搬送管1内を効率よく搬送されるといえる。
また、90°のときは、搬送部材2の回転によってもトナーの搬送機能が得られないことはいうまでもない。さらに、植毛レース幅Wと巻き付け隙間幅Gの関係は後述するグラフの結果より定めた。トナー供給口3、トナー排出口4の口径Lは一定とした。
図5はG/Wと単位時間当たりのトナー排出量の関係をグラフで示す図である。図5によれば、G/W≧2(すなわちG≧2W)であれば、トナー排出口4からの一定時間あたりのトナー排出重量は一定値に飽和し、十分な植毛レース隙間であるといえる。
なお、植毛レース幅W、巻き付け間隔Gと、トナー供給口3、トナー排出口4の口径Lの関係は、L≧(W+G)/sinθとしておくことにより、搬送部材2の回転によってもトナー供給口3、トナー排出口4の部分には少なくともW以上の植毛レース隙間7が存在することになり、トナー搬送量にムラが生じない。
さらに、搬送部材2の芯棒5、植毛レース6にカーボン等の導電剤によって導電性を持たせておくことにより、搬送部材2の回転による搬送管1と植毛レース6の摩擦帯電を防止でき、トナーが植毛レース6に付着することがなくなるため、トナー搬送が効率よく行える。
【0009】
本発明によれば、植毛レース6の巻き付け角度θを規定することにより、トナーを効率よく搬送管1の軸方向に搬送できる。また、植毛レース6の植毛レース幅Wと巻き付け角度θの関係を規定することにより、トナーを効率よく搬送管1の軸方向に搬送できる。
搬送部材2の外径D2を搬送管1の内径D3より大きくしているので、搬送管1と搬送部材2の隙間を無くすことができ、トナーをさらに効率的に搬送できる。
搬送部材2の芯棒5および植毛レース6を導電性とすることにより、搬送管1との摺擦による摩擦帯電を防止でき、植毛レース6へのトナー付着が防止できる。また、搬送部材2の芯棒5を弾性体とすることにより搬送管1が湾曲した部分にも追随できる。
さらに、本発明によるトナー搬送装置を静電画像記録装置に使用される画像形成用のトナーを軸方向に搬送させるトナー搬送装置として用いれば、トナー搬送が効率よく行える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるトナー搬送装置の構成を示す概略図。
【図2】図1の搬送部材の詳細を示す概略図。
【図3】植毛レースを説明する概略図。
【図4】植毛レース巻き付け角度と搬送率の関係をグラフで示す図。
【図5】G/Wと単位時間当たりのトナー排出量の関係をグラフで示す図。
【符号の説明】
【0011】
1 搬送管(円筒形管)、2 搬送部材、3 トナー供給口、4 トナー排出口、5 芯棒(棒状の物体)、6 植毛レース、7 植毛レース隙間、8 レース基布、9 パイル、D1 芯棒径、D2 搬送部材外径、D3 搬送管内径、W 植毛レース幅、G 巻き付け隙間幅(間隔)、θ 巻き付け角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー搬送管を構成する円筒形管内に螺旋状に形成された部材を配置して回転させることにより、前記搬送管内のトナーを軸方向に搬送させるトナー搬送装置において、一定の外径を有する芯棒に、レース基布にパイルが植毛されてなる植毛レースを、一定の巻き付け隙間幅Gを持たせて螺旋状に巻き付けたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項2】
前記植毛レースの幅W、巻き付け隙間幅G、芯棒径D1としたとき、
π>(W+G)/D1≧(√2)π/2
の関係であることを特徴とする請求項1記載のトナー搬送装置。
【請求項3】
前記植毛レースの幅W、巻き付け隙間幅Gが
G≧2W
の関係であることを特徴とする請求項2記載のトナー搬送装置。
【請求項4】
前記搬送部材のパイル先端部までの外径D2と前記搬送管内径D3がD2>D3の関係であることを特徴とする請求項1記載のトナー搬送装置。
【請求項5】
前記植毛レースおよび前記芯棒が導電性を有した材質であることを特徴とする請求項1記載のトナー搬送装置。
【請求項6】
前記芯棒がゴムまたはエラストマからなる弾性体であることを特徴とする請求項1記載のトナー搬送装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項記載のトナー搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−91321(P2006−91321A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275610(P2004−275610)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】