説明

トナー用添加剤及びトナー

【課題】本発明の目的は、長期に渡って安定した良好な画像が得られるトナー用添加剤及びトナーを提供することにある。
【解決手段】平均粒径が0.05〜1μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の微粒子、及び、平均粒径が0.05〜1μmの非フィブリル形成性のテトラフルオロエチレン重合体の微粒子のうち、少なくとも一方を含む、水性分散体またはオルガノゾルからなるトナー用添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナー用添加剤及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のプリントオンデマンドの発達により、印刷後の後処理として製本化やカタログ化、郵便物の作成等が行われているが、後処理工程でかかるストレスが強く、特に紙同士の擦り合わせにより、定着後の画像品質が著しく低下する。
【0003】
そこで、定着性の向上を目的として、例えば、特許文献1には、結晶性ポリエステルを結着樹脂として含有するトナーが記載されている。また、特許文献2には、フッ素系樹脂微粉末で外添されたトナーが記載されている。特許文献3には、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルを含むトナーが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−113514号公報
【特許文献2】特開2003−114548号公報
【特許文献3】特開2008−116666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、長期に渡って安定した良好な画像が得られるトナー用添加剤及びトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平均粒径が0.05〜1μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の微粒子、及び、平均粒径が0.05〜1μmの非フィブリル形成性のテトラフルオロエチレン重合体の微粒子のうち、少なくとも一方を含む、水性分散体またはオルガノゾルからなるトナー用添加剤である。
【0007】
本発明は、上記のトナー用添加剤と、トナー母粒子と、を含むことを特徴とするトナーである。
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のトナー用添加剤は、平均粒径が0.05〜1μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕の微粒子、及び、非フィブリル形成性のテトラフルオロエチレン重合体〔TFE重合体〕の微粒子のうち、少なくとも一方を含む、水性分散体またはオルガノゾルからなる。
【0010】
本発明のトナー用添加剤は、PFAおよび非フィブリル形成性のTFE重合体の一方又は両方を用いることによってフィブリル化せず、かつPFAの微粒子および非フィブリル形成性のTFE重合体の微粒子の一方又は両方を含む水性分散体またはオルガノゾルを用いることによって、トナーに均一に分散するという有利な効果を奏する。本発明のトナー用添加剤が均一に分散すると、PFAおよび/または非フィブリル形成性のTFE重合体の微粒子がトナー表面に効率的に付着して、現像ロールへのトナー融着が防止され、長期に渡って安定した良好な画像が得られる。
【0011】
上記TFE重合体は、非フィブリル形成性であり、撥水性、耐熱性、耐薬品性に優れていることが必要であり、たとえば、非フィブリル形成性のTFE単独重合体(TFEホモポリマー)または非フィブリル形成性の変性PTFE等があげられる。
【0012】
上記非フィブリル形成性の変性PTFEとしては、溶融流動性を付与しない程度の少量の他の共単量体とTFEとを共重合させてえられる重合体を含む。この共単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)、トリフルオロエチレンおよびパーフルオロアルキルエチレンなどがあげられる。共単量体の共重合割合はその種類によって異なるが、共単量体として、たとえばパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、あるいはパーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)を用いるばあいには、通常2質量%まで、好ましくは、0.01〜1質量%の量で共重合成分として用いることができる。
【0013】
また、上記TFE重合体以外にTFE−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕共重合体〔PFA〕(ただし、PAVEの共重合割合は2質量%を超える)、TFE−ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕、TFE−PAVE−HFP三元共重合体〔EPA〕、TFE−HFP−ビニリデンフルオライド〔VDF〕三元共重合体などの各種共重合体を用いることができるが、これらのうちでも加熱により融解しにくいという点からPFAが好ましい。
【0014】
なお、本発明において、上記非フィブリル形成性のTFE重合体及びPFAは、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
TFE重合体以外の各種共重合体は本発明でいうフィブリル形成性はもともと有していない。
【0016】
上記TFE重合体のフィブリル形成性はその平均分子量に関係する。平均分子量は、通常の高分子量のTFE単独重合体に関しては、標準化された成形品の比重を用いた換算式によって求められる(たとえば特開平4−154842号公報記載の式:
【0017】
【数1】

【0018】
SSGはASTM D−1457 83aで規定された標準比重を表す))。
【0019】
しかし、低分子量のTFE単独重合体ではこの測定法は適用できない。また変性PTFEのばあいも適用できない。
【0020】
通常、TFE単独重合体の平均分子量が100万以下のばあい、フィブリル形成性が失われるといわれている。
【0021】
本発明ではPTFE及び変性PTFEのフィブリル形成性と平均分子量に関して詳細に検討した結果、分子量と強い相関関係にある溶融粘度を用いてフィブリル形成性の目安とした。
【0022】
すなわち、「TFE重合体のフィブリル形成性が失われる」及び「非フィブリル形成性のTFE重合体」とは、TFE重合体の380℃における溶融粘度が1×10ポイズ以下であることをいう。TFE重合体がフィブリル形成性を更に有しにくい観点から5×10ポイズ〜1×10ポイズであることが好ましい(1×10ポイズで分子量はおよそ100万±30万と見積られる)。1×10ポイズ未満であると耐熱性が劣る傾向がある。
【0023】
フィブリル形成性の有無はTFEの乳化重合体から作られた粉末である「高分子量PTFEファインパウダー」を成形する代表的な方法である「ペースト押出し」で判断した。通常、ペースト押出しが可能であるのは、高分子量PTFEがフィブリル形成性を有するからである。ペースト押出しでえられた未焼成の成形物に実質的な強度や伸びがないばあい、たとえば伸びが0%で引っ張ると切れるようなばあいはフィブリル形成性がない(すなわち、非フィブリル形成性。)とみなすことができる。
【0024】
本発明のトナー用添加剤は、上記のように非フィブリル形成性のTFE重合体(以下、単に「TFE重合体」ともいう。)やPFAを用いることに特徴があり、さらにTFE重合体やPFAを用いるに際し、これらの微粒子を水性分散体またはオルガノゾルのような液状の形態にして該付与剤に用いることにも特徴がある。
【0025】
上記微粒子は、分散性の観点から、平均粒径が0.05〜1μmであることが好ましい。好ましい平均粒径は、0.05〜0.3μmであり、さらに好ましいのは0.05〜0.1μmである。
【0026】
本発明においては、とくに非フィブリル形成性のTFE重合体の微粒子の平均粒径が0.05〜0.3μmで、かつ380℃における溶融粘度が1×10ポイズ以下であることにより、生産性に優れ、かつトナー全体にほぼ微粒子の形のまま均一に分散される。
【0027】
上記平均粒径が0.05〜1μmの微粒子を形成する上記TFE重合体やPFAは、通常の乳化重合によって製造することができる。これらのうち、たとえば非フィブリル形成性のPTFEは、たとえば特公昭57−22043号公報、特公昭51−25275号公報に記載の製法にしたがって製造可能である。また、PFAは、たとえば特公昭48−20788号公報に記載の製法で製造される。これらの製法では、上記微粒子を含む水性分散体が直接えられ、一般に、これら水性分散体中の微粒子の濃度は10〜45質量%である。なお平均粒径が小さな微粒子をうるには、重合で使用する乳化剤の種類や量を選ぶことで容易に製造できる。
【0028】
本発明において、上記乳化重合により製造される水性分散体は、そのままでもトナー用添加剤に用いることができるが、輸送時や濃縮、トナー母粒子との混合などの作業時の分散安定性に問題を生じるばあいもあるので、このようなときはpHを7〜11のアルカリ側に調整し、かつ界面活性剤を添加して安定化させることが好ましい。
【0029】
上記界面活性剤の種類はとくに限定されないが、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の少なくとも1種を使用することができる。これらの界面活性剤のうち、一般的には水性分散体の安定性に優れているという点から非イオン系界面活性剤が好ましい。
【0030】
上記非イオン系界面活性剤の種類はとくに限定されないが、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型界面活性剤の一群、たとえば脂肪酸のグリコールエステル、脂肪酸ソルビタンおよびマンニトールエステルなどのポリオキシエチレン系化合物があげられ、ポリオキシエチレン縮合型界面活性剤の一群、たとえば、高級脂肪酸、高級アルコール、高級アルキルアミン、高級脂肪酸アミド、高級アルキルメルカプタン、アルキルフェノールなどのポリオキシエチレン縮合物などがあげられる。その他、ポリエチレンイミン縮合型の界面活性剤もあげられる。
【0031】
本発明において、非イオン系界面活性剤は添加しなくてもよいが、必要により添加するときの添加量としては、水性分散体中の微粒子の全量に対してたとえば1〜20質量%程度であればよい。少なすぎると長期の分散安定性が充分でないばあいもあり、多すぎるとトナーに悪影響を及ぼす。
【0032】
なお、本発明のトナーをうるには、上記界面活性剤は必須のものではなく、上記水性分散体に界面活性剤を添加することなく各トナー母粒子を混合しても差し支えない。
【0033】
本発明における水性分散体中の微粒子の濃度は、上記乳化重合によりえられる水性分散体をそのままでまたは希釈もしくは濃縮して、1〜70質量%、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは5〜60質量%、とくに好ましくは10〜40質量%の範囲で用いるのが好ましい。濃度が高すぎると水性分散体の粘度が高くなり作業性に劣り、低すぎると適度な水分を除去するのに手間がかかり、トナー製造の効率が低下する。
【0034】
本発明における上記PFA微粒子を含むオルガノゾルは、上記乳化重合によりえられる水性分散体から常法(たとえば、米国特許第2593583号明細書参照。)により該微粒子を凝析によって分離し、さらに乾燥してえられる粉末を後記するような分散媒中に機械的または超音波により再分散することで容易に製造できる。または、特公昭49−17016号公報に記載されているような転層法によって、粉末化する工程をへることなくオルガノゾルにすることもできる。
【0035】
ただし、オルガノゾル中では、上記微粒子は水性分散体のような微分散状態がえられにくく、微粒子がいくらか凝集している。通常、凝集した粒子は1〜5μmの大きさを有する。しかし、凝集した粒子は微粒子が単に凝集しているだけで融着したものではないため、比表面積は凝集により実質的に変化しない。本明細書において平均粒径とは、凝集した粒子の平均粒径を意味するものではなく、微粒子の平均粒径を指している。
【0036】
上記オルガノゾルの分散媒は、上記微粒子を濡らしうる有機分散媒であればよく、とくに限定されない。たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸ブチルなどのエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)などの水溶性アルコール類、N−メチルピロリドン(NMP)などが好ましい。
【0037】
上記微粒子を単独では濡らしにくい有機分散媒、たとえば四塩化炭素、トリクロロエチレン、ジイソブチルケトンでは油溶性の界面活性剤を少量添加することによりオルガノゾルにすることも可能である。微粒子の分散性やトナー作製の作業性を考慮して、とくに好ましく使用できる有機分散媒は、IPA、エタノールまたはMIBKである。オルガノゾルをトナー母粒子と混合するばあいは、乾燥が水性分散体に比べて容易であり、また、水性分散体のように添加される界面活性剤によるトナーへの悪影響を少なくできる長所がある。
【0038】
本発明におけるオルガノゾル中の上記微粒子の濃度は、5〜70質量%、さらに好ましくは5〜40質量%の範囲で用いるのが好ましい。濃度が高すぎると分散性がわるくトナー母粒子との均一な混合物をうるのが困難になる。濃度が低すぎると高い帯電性及び低摩擦性に必要なPFA及びPTFEの量がえられにくくなる。
【0039】
本発明のトナー用添加剤は、水性分散体からなることが、上記に示したトナー母粒子と均一に混合され易いという点から好ましい。なお、本発明のトナー用添加剤は、混ぜるときの強い剪断力によってもフィブリルが発生せず、フィブリル化による粘度上昇を伴わない。
【0040】
本発明のトナー用添加剤は、水性分散体の形態でトナー母粒子と混合することも可能であるが、オルガノゾルの形態で混合することも可能である。オルガノゾルの形態で混合すると、トナーの乾燥が容易という利点がある。
【0041】
本発明のトナー用添加剤は、特にトナーの外添剤として好適に利用可能である。本発明のトナー用添加剤は、特にトナー表面の摩擦力の低減による定着性の向上に寄与する。
【0042】
本発明のトナー用添加剤と、トナー母粒子とを含むトナーも本発明の一つである。トナー母粒子とは、結着樹脂を含み、さらに必要に応じて電荷調整樹脂及び着色剤を含んでいてもよい。
【0043】
上記結着樹脂としては、ポリエステル、スチレン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン及びそれらの複合物等が挙げられるが、これらの中では、本発明の効果が発揮されやすい点から、ポリエステルが好ましい。ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは100質量%である。
【0044】
ポリエステルは、公知のアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られる。
【0045】
アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチログリコールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられ、これは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
また、カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。
【0048】
また、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを併用してもよい。
【0049】
結晶性ポリエステルとしては、非晶質ポリエステルとの相溶性の観点から、ワックスの存在下で原料モノマーを重合させて得られる結晶性ポリエステルが好ましい。
【0050】
非晶質ポリエステルも、結晶性ポリエステルと同様にして製造することができる。
【0051】
上記電荷調整樹脂及び着色剤としては、公知のものを使用することができる。
【0052】
本発明のトナーは、さらに、荷電制御剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含有してもよい。
【0053】
本発明のトナーにおいて、トナー用添加剤の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、固形分換算で0.2〜20質量部であることが好ましく、0.3〜10質量部であることがより好ましく、0.4〜5.0質量部であることが更に好ましい。
【0054】
本発明のトナーは、トナー母粒子に本発明のトナー用添加剤を添加したのち乾燥させ、得られた混合粉末とトナー用添加剤以外の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機、V型ブレンダー等を用いる乾式混合法により製造することができる。本発明のトナーは、また、トナー母粒子に本発明のトナー用添加剤とトナー用添加剤以外の添加剤を同時に混合した後、乾燥させることにより製造することができる。
【0055】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、粉体としての扱いやすさの観点から、4〜12.5μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0056】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができるが、帯電制御の観点から、二成分現像剤として用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0057】
本発明のトナー用添加剤は、トナーに均一に分散するので、トナー表面の摩擦力の低減による定着性を大きく向上させることができる。本発明のトナーは、強い機械的ストレスを受けても、定着性が良好で、高い品質を維持することのできる画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下に実施例・比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0059】
実施例および実施例における試験方法をつぎに示す。
【0060】
微粒子の平均粒径の測定
走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−4000型)を用いて、加速電圧3〜5KVで20000倍の写真をえたのち、約100個の微粒子について定方向の粒径を測定しその平均を求めた。
【0061】
ペースト押出し試験
TFE重合体またはPFAなどの共重合体の粉末50gに炭化水素油である押出し助剤(商品名IP1620、出光石油化学(株)製)10.8gを混合し、室温(25±2℃)で8時間放置し、双方を充分になじませる。つぎに、シリンダー(内径25.4mm)のついた、絞り角30度で下端に内径2.54mm、ランド長7mmのオリフィスを有する押出しダイに上記混合物を充填し、60kgの負荷をシリンダーに挿入したピストンに加え1分間保持する。こののち、直ちに室内においてラムスピード(ピストンの押し下げ速度)20mm/分で上記混合物をひも状に押し出す。連続した押出し物がえられる場合、引張速度200mm/分で室温で引張試験を行う。
【0062】
溶融粘度
島津製作所(株)製高化式フローテスターを用い、TFE重合体またはPFAの粉末2.0gを内径11.3mmのシリンダーに充填し、温度380℃で5分間保持した後、ピストンに荷重し(7または32kg)、内径(2R)2.1mm、長さ(L)8mmのオリフィスを通して押出し、流出量(Q;cm/sec)を測定して下式で溶融粘度ηを求める。
【0063】
η(poise)=ΔP・2R・π・R/16・L・Q
(式中、ΔPは荷重(dyne)を表す)
【0064】
実施例1
ステンレス製アンカー型撹拌翼と温度調整用ジャケットを備え、内容量が6リットルのステンレス鋼(SUS316)製オートクレーブに、脱イオン水2960ミリリットルおよびCOCF(CF)CFOCF(CF)COONH9.0g、さらに乳化安定剤としてパラフィンワックス(日本石油(株)製)120gを仕込み、窒素で3回、TFEで2回系内を置換して酸素を取り除いたのち、TFEで内圧を1.0MPaにして、250rpmで撹拌しながら、内温を70℃に保った。
【0065】
つぎに、連鎖移動剤として常圧で130cc分のエタンと、共単量体として15.0gのパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)および重合開始剤である300mgの過硫酸アンモニウムを溶かした40mlの水溶液を系内に仕込み反応を開始した。反応中は、系内の温度を70℃、撹拌を250rpmに保ち、オートクレーブの内圧は常に1.0±0.05MPaに保つように連続的にTFEを供給した。
【0066】
開始剤を添加してから反応で消費されたTFEが530gに達した時点で、TFEの供給と撹拌を停止し、かつオートクレーブ内のTFEを常圧まで放出して反応を終了した。全反応時間は6時間、えられた水性分散体の一部を蒸発乾固して求めた固形分の濃度(ほぼPFAの濃度に等しい)は15.0質量%であり、PFAの微粒子の平均粒径は電子顕微鏡写真による測定で0.08μmであった。
【0067】
えられた水性分散体の一部に凝析剤として炭酸アンモニウムを添加し、撹拌しながら凝析、さらに洗浄した後、130℃で16時間乾燥し粉末状とした。
【0068】
乾燥粉末の一部を使用して溶融粘度の測定およびペースト押出しを行ったところ、溶融粘度は1.5×10ポイズであり、また押出し物は不連続なものしかえられず、明らかにフィブリル化による強度、伸びがなかった。
【0069】
なお、特開昭60−240713号公報記載の方法に従い、共重合体のパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)の含量を測定したところ、2.5質量%であった。
【0070】
つぎにイソプロパノールを分散媒として、えられた粉末のオルガノゾル(以下、「オルガノゾル1」という)を作製した。イソプロパノール100質量部に対して粉末10質量部を加え、20KHz、100ワットの超音波を30分間照射して作製した。なお、オルガノゾルの一部を室温で乾燥させて電子顕微鏡で確認したところ、微粒子が凝集した約3μmの大きさの粒子が観察された。しかし、基本の微粒子の平均粒径は重合直後にえられたもとの水性分散体中の微粒子と同じ0.08μmであった。
【0071】
一方、残りの水性分散体には非イオン系界面活性剤としてTDS−80C(第一工業製薬製)を、含まれる共重合体の質量に対して6.0質量%添加し、さらにアンモニア水でpHを9.0に調整した後、減圧下で水分を蒸発させてPFAの固形分が60質量%になるよう濃縮した。濃縮した水性分散体(以下、「水性分散体1」という)中のPFAの微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真による測定で、もとの水性分散体と同じ0.08μmであった。
【0072】
実施例2
ステンレス製アンカー型撹拌翼と温度調整用ジャケットを備え、内容量が6リットルのステンレス鋼(SUS316)製オートクレーブに、脱イオン水2960ミリリットルおよびパーフルオロオクタン酸アンモニウム3.0g、さらに乳化安定剤としてパラフィンワックス(日本石油(株)製)120gを仕込み、窒素で3回、TFEで2回系内を置換して酸素を取り除いた後、TFEで内圧を1.0MPaにして、250rpmで撹拌しながら、内温を70℃に保った。
【0073】
つぎに、連鎖移動剤として常圧で150cc分のエタンおよび重合開始剤である300mgの過硫酸アンモニウムを溶かした20mlの水溶液を系内に仕込み反応を開始した。反応中は、系内の温度を70℃、撹拌を250rpmに保ち、オートクレーブの内圧は常に1.0±0.05MPaに保つように連続的にTFEを供給した。
【0074】
開始剤を添加してから反応で消費されたTFEが1000gに達した時点で、TFEの供給と撹拌を停止し、かつオートクレーブ内のTFEを常圧まで放出して反応を終了した。全反応時間は9時間、えられた水性分散体の一部を蒸発乾固して求めた固形分の濃度(ほぼTFE重合体の濃度に等しい)は25.0質量%であり、TFE重合体の微粒子の平均粒径は電子顕微鏡写真による測定で0.22μmであった。
【0075】
実施例1と同様の操作で粉末を調製し、溶融粘度を測定したところ、2×10ポイズであった。
【0076】
また、乾燥粉末の一部を使用してペースト押出しを行ったところ、押出し物は不連続なものしかえられず、明らかにフィブリル化による強度、伸びがなかった。
【0077】
つぎにMIBKを用いて、えられた粉末のオルガノゾル(以下、「オルガノゾル2」という)を調製した。MIBK100質量部に対して粉末10質量部を加え、20KHz、100ワットの超音波を30分照射した。実施例1でえられたオルガノゾル1と同様に電子顕微鏡で、微粒子が凝集した粒子が観察されたが、基本の微粒子の平均粒径は重合直後にえられたもとの水性分散体と同じ0.22μmであった。
【0078】
一方、残りの水性分散体には非イオン系界面活性剤としてTDS−80C(第一工業製薬製)を、含まれるTFE重合体の質量に対して6.0質量%添加し、さらにアンモニア水でpHを9.0に調整したのち、減圧下で水分を蒸発させてTFE重合体の固形分が60質量%になるよう濃縮した。濃縮した水性分散体(以下、「水性分散体2」という)中のTFE重合体の微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真による測定で、もとの水性分散体と同じ0.22μmであった。
【0079】
実施例3
実施例2において、消費されたTFEが500gに達した時点でTFEの供給と撹拌を停止したこと以外は、実施例2と同様にして水性分散体を調製した。えられた水性分散体の固形分濃度は14.3質量%であり、TFE重合体の微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真による測定で0.12μmであった。溶融粘度は、1×10ポイズであり、乾燥粉末の一部を使用してペースト押出しを行なったところ、実施例1または2でえられたPFAまたはTFE重合体と同様に不連続なものしかえられず、フィブリル化による強度、伸びはなかった。
【0080】
この水性分散体の一部を実施例1または2と同様の方法により濃縮し、TFE重合体の固形分濃度が60質量%となるように濃縮した水性分散体(以下、「水性分散体3」という)をえた。水性分散体3中のTFE重合体の微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真による測定では、もとの水性分散体と同じ0.12μmであった。
【0081】
一方、残りの水性分散体に非イオン系界面活性剤としてTDS−80C(第一工業製薬製)を水性分散体中のTFE重合体の質量に対して0.1質量%添加し、さらにアンモニア水でpHを9.0に調整したのち、水性分散体の固形分濃度が10質量%になるようにイオン交換水を追加し水性分散体(以下、「水性分散体4」という)をえた。水性分散体4中のTFE重合体の微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真による測定ではもとの水性分散体と同じ0.12μmであった。
【0082】
実施例4〜9
実施例1〜3で得られたオルガノゾル、及び水性分散体(固形分換算で0.2g)とトナー母粒子、正帯電性疎水性シリカ及び負帯電性疎水性シリカをヘンシェルミキサーで混合したのち、乾燥することによりトナーを得た。
【0083】
試験例
実施例4〜9で得られた乾燥したトナーを電子顕微鏡で観察し、表面に被着しているPTFE粒子の分散分布を観察し判定した。
トナー表面全体に均一にPTFEが被着している混合物を◎と判定した。
トナー表面のPTFEの被着分布に濃淡があり、明らかにPTFEリッチな部分とプアーな部分が観察される混合物は×と判定した。
上記◎と×の中間の分布の場合は、△と判定した。結果を表1に示す。
【0084】
比較例として、粉末状のPTFEを用いた以外は、実施例4と記載の方法でトナーを得た。
比較例1は、添加用PTFEであるKTL−500F(株式会社喜多村製)を用いた。
比較例2は、PTFE M12(ダイキン工業株式会社製)を用いた。
比較例3は、PTFE F104(ダイキン工業株式会社製)を用いた。
【0085】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のトナー用添加剤は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーに好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.05〜1μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の微粒子、及び、平均粒径が0.05〜1μmの非フィブリル形成性のテトラフルオロエチレン重合体の微粒子のうち、少なくとも一方を含む、水性分散体またはオルガノゾルからなるトナー用添加剤。
【請求項2】
微粒子の平均粒径が0.05〜0.3μmである請求項1記載のトナー用添加剤。
【請求項3】
微粒子の平均粒径が0.05〜0.1μmである請求項1記載のトナー用添加剤。
【請求項4】
微粒子を1〜70重量%含む水性分散体からなる請求項1〜3のいずれかに記載のトナー用添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のトナー用添加剤と、
トナー母粒子と、
を含むことを特徴とするトナー。

【公開番号】特開2010−85741(P2010−85741A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255193(P2008−255193)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】