説明

トナー用鉄系黒色粒子粉末

【課題】 本発明は、着色力に優れると共に、可及的に磁化値が低い鉄系黒色粒子粉末を提供するとともに、本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、黒色を呈する顔料及び塗料、樹脂組成物の着色用材料等として使用することができる。
【解決手段】 一次粒子の平均粒子径(Dp)が0.05〜0.4μmの鉄系黒色粒子であり、前記鉄系黒色粒子の二次粒子の平均粒子径(Da)が0.06〜1.0μmであり、二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)が1.1〜2.8である鉄チタン複合酸化物からなることを特徴とするトナー用鉄系黒色粒子粉末である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色力に優れると共に、可及的に磁化値が低いトナー鉄系黒色粒子粉末を提供する。
【0002】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、黒色を呈する顔料及び塗料、樹脂組成物の着色用材料等として使用することができ、殊に、非磁性黒色トナーに用いた場合には、高い着色力を有するとともに、磁化値が低く、バインダー樹脂組成物中での黒色粒子の分散が均一なため、耐久現像性の高い非磁性黒色トナーを提供することができる。
【背景技術】
【0003】
マグネタイト粒子粉末、イルメナイト粒子粉末、カーボンブラック等の黒色顔料は、塗料用、印刷インク用、化粧品用、ゴム・樹脂組成物用等の着色剤として古くから汎用されている。
【0004】
特に、マグネタイト粒子粉末等の黒色磁性酸化鉄粒子粉末を樹脂中に混合分散させた複合体粒子は、電子写真用現像剤として用いる磁性トナーに多用されている。
【0005】
しかしながら、マグネタイト粒子は、磁性を有するため粒子相互間で磁気凝集し易く、分散性に優れるとは言い難いものである。
【0006】
近時、レーザービームプリンターやデジタル複写機の高速化及び高画質化に伴って、現像剤である黒色トナーの特性向上が強く要求されており、その為には、黒色トナーが十分な黒色度を有していることが強く要求される。
【0007】
更に、近年では、フルカラー化が進められており、対応するプリンターや複写機としては非磁性トナーが用いられている。
【0008】
そこで、黒色トナーにおいても、非磁性又は可及的に磁化値が小さく、現在のシステムに適合できる黒色非磁性トナーが要求されている。
【0009】
上述した通り、黒色非磁性トナーの諸特性の向上は強く要求されているところである。黒色非磁性トナーは、殊に、トナー中に含有する黒色顔料の特性が現像特性に大きく影響することが知られており、黒色非磁性トナーの諸特性と黒色非磁性トナー中に混合分散されている黒色顔料の諸特性とは密接な関係があり、黒色非磁性トナーに用いられる黒色顔料についても、更に一層の特性改善が強く望まれている。
【0010】
即ち、黒色度に優れた黒色非磁性トナーを得るためには、黒色粒子粉末が十分な黒色度を有し、分散性がより優れていることが要求されている。さらに、現行の非磁性トナーを用いるシステムに適合させるためには、黒色粒子粉末としても、非磁性又は可及的に磁化値が低い粒子粉末が要求されている。
【0011】
一方、カーボンブラックは非磁性ではあるが、粒子サイズが平均粒子径0.005〜0.05μm程度の微粒子粉末であるため、ビヒクル中や樹脂組成物中への分散が困難であり、また、かさ密度が0.1g/cm程度とかさ高い粉末であるため、取り扱いが困難で、作業性が悪いことが知られている。
【0012】
そこで、黒色度に優れるとともに磁化値が可及的に低く、樹脂組成物中への分散の優れる黒色粒子粉末が要求されている。
【0013】
黒色を呈した鉄系粒子粉末として、水熱処理することによって得られたイルメナイト粒子粉末(特許文献1)、FeTiOとFe−FeTiO固溶体との混合組成からなる黒色顔料(特許文献2)、Fe−FeTiO固溶体又はFe−FeTiO固溶体とスピネル型構造を有する鉄系酸化物との混合組成からなる鉄系黒色粒子粉末(特許文献3)が知られている。
【0014】
【特許文献1】特開平1−298028号公報
【特許文献2】特開平3−2276号公報
【特許文献3】特開2004−161608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
着色力に優れるとともに、可及的に磁化値が低い鉄系黒色粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0016】
即ち、前出特許文献1には、Ti3+を用いて水熱処理によってイルメナイト粒子粉末を得ることが記載されているが、水熱処理によって製造しており、工業的とは言い難い。
【0017】
前出特許文献2記載の非磁性粒子粉末は、FeTiOを含有しているので磁化値は低いが、粒度分布については考慮されておらず、着色力が低く、黒色度を満足するものとは言い難いものである。
【0018】
前出特許文献3記載の鉄系黒色粒子粉末は、粒度分布については考慮されておらず、また、飽和磁化値が5〜40Am/kgと高く、非磁性のシステムに容易に適合できるとは言い難いものである。
【0019】
そこで、本発明は、着色力に優れると共に、磁化値が低い鉄系黒色粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0021】
即ち、本発明は、一次粒子の平均粒子径(Dp)が0.05〜0.4μmの鉄系黒色粒子であり、前記鉄系黒色粒子の二次粒子の平均粒子径(Da)が0.06〜1.0μmであり、二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)が1.1〜2.8である鉄チタン複合酸化物からなることを特徴とするトナー用鉄系黒色粒子粉末である。(本発明1)。
【0022】
また、本発明は、飽和磁化値が5Am/kg未満であることを特徴とする本発明1のトナー用鉄系黒色粒子粉末である。(本発明2)
【0023】
また、本発明は、着色力を表すL*値が44.5以下であることを特徴とする本発明1又は2のトナー用鉄系黒色粒子粉末である。(本発明3)
【0024】
また、本発明は、本発明1乃至3のいずれかの鉄チタン複合酸化物粒子粉末において、Ti含有量が10〜38原子%であることを特徴とするトナー用鉄系黒色粒子粉末である。(本発明4)
【0025】
また、本発明は、鉄チタン複合酸化物粒子粉末において、構成相が少なくともFeTiO−Fe固溶体を有することを特徴とするトナー用鉄系黒色粒子粉末である。(本発明5)
【0026】
また、本発明は、本発明5において、更に、スピネル構造を有する鉄系酸化物、Na−Fe−Ti化合物、FeTiOから選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とするトナー用鉄系黒色粒子粉末である。(本発明6)
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、着色力に優れ、可及的に磁化値が低いので、黒色トナー用の着色材として好適である。
【0028】
殊に、非磁性黒色トナーに用いた場合には、高い着色力を有するとともに、磁化値が低く、バインダー樹脂中での黒色粒子の分散が均一なため、耐久現像性の高い非磁性黒色トナーとなる。
【0029】
また、本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、着色力に優れ、可及的に磁化値が低いので、黒色を呈する顔料及び塗料、樹脂組成物の着色用材料、充填材等としても好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0031】
先ず、本発明に係る鉄系黒色粒子粉末について述べる。
【0032】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、一次粒子の平均粒子径(Dp)が0.05未満の場合には、所望の黒色度が得られない。粒子相互間の凝集力が大きく分散が困難となる。0.40μmを越える場合には、所望の着色力が得られない。好ましくは0.10〜0.40μm、より好ましくは0.10〜0.35μmである。
【0033】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、二次粒子の平均粒子径(Da)を、0.06〜1.0μmに制御するものである。二次粒子の平均粒子径(Da)が0.06μm未満の場合には、工業的に生産することが困難であり、1.0μmを越える場合には、所望の着色力が得られない。凝集粒子径が大きくなり、トナー中での分散が悪くなる。好ましくは0.11〜0.648μmである。
【0034】
なお、本発明における二次粒子の粒子径は、後述するとおり、レーザー回折式粒度分布測定によって求めるものであり、体積基準による平均粒子径をDaとする。
【0035】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)が1.1〜2.8である。二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)が1.1未満の場合には、工業的に生産することが困難であり、2.8を越える場合には、加熱処理による焼結部分が多くなり、所望の着色力が得られない。また、非磁性トナーに用いた場合、樹脂中での分散性が悪くなり所望の画像濃度を得難くなる。好ましくは1.1〜2.7である。
【0036】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末の飽和磁化値は5Am/kg未満であることが好ましい。飽和磁化値が5Am/kgを越える場合には、現行の非磁性トナーを用いるシステムに容易に適合させることが困難であり、所望の画像濃度を得にくくなり、またカブリ発生の可能性が高くなる傾向にある。より好ましくは3Am/kg以下である。
【0037】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末の着色力(L*値)は、後述する評価法の展色で示した場合、35〜44が好ましい。着色力が44を越える場合には、該鉄系黒色粒子粉末を用いた非磁性黒色トナーの使用した場合に、十分な画像濃度を得ることが困難である。着色力が35未満の鉄系黒色粒子粉末は工業的に製造することができない。より好ましくは35〜43である。
【0038】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末のBET比表面積値は3〜15m/gが好ましい。BET比表面積値が3m/g未満の場合には、鉄系黒色粒子粉末が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粗大粒子となり着色力が低下する。15m/gを越える場合には、所望の黒色度を得ることが困難となる。より好ましくは6〜12m/g、更により好ましくは6.5〜11m/gである。
【0039】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末のチタン含有量は10〜38原子%が好ましく、より好ましくは12〜33.3原子%である。
【0040】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末の構成相としては、少なくともFeTiO−Fe固溶体を有するものであり、更に、FeTiO、FeTiO−Fe固溶体、FeTiO、FeTiO等の鉄チタン複合酸化物、またNaFeTi、NaFeTi10、NaFeTiO等のNa−Fe−Ti化合物が挙げられ、上記化合物の二種以上の混合物であってもよい。また、原料であるFeや、γ−Fe等のスピネル酸化鉄が存在してもよい。
【0041】
なお、本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、鉄、チタン以外にMg、Al、Si、P、Mn、Co、Ni、Cu及びZnから選ばれる1種又2種以上の元素を鉄とチタンの全量に対して0〜10原子%含んでも良い。
【0042】
次に、本発明に係る鉄系黒色粒子粉末の製造法について述べる。
【0043】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、チタン含有マグネタイト粒子を、非酸化性雰囲気下で650〜850℃の温度範囲で加熱焼成した後、粉砕して得ることができる。
【0044】
前記チタン含有マグネタイト粒子粉末は、例えば、第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応して得られた水酸化第一鉄塩コロイドを含む第一鉄塩反応溶液に酸素含有ガスを通気することによってマグネタイトを得る製造法において、水酸化第一鉄塩コロイドを含む第一鉄塩反応溶液に酸素含有ガスを通気中にチタン化合物を添加すればよい。
【0045】
本発明に用いる第一鉄塩水溶液としては、硫酸鉄水溶液が好ましい。
【0046】
本発明に用いるチタン化合物としては、硫酸チタニル、四塩化チタン、三塩化チタンを挙げることができる。
【0047】
チタン化合物の添加は、チタン化合物の添加と同時に、水酸化アルカリ水溶液、炭酸アルカリ水溶液等を添加して、水懸濁液のpH値を6.0以上に保持することが好ましい。
【0048】
本発明においては、前記チタン含有マグネタイト粒子の粒子表面に、更にチタン化合物を被覆してもよい。
【0049】
チタン含有マグネタイト粒子粉末に対するチタン化合物の被覆は、チタン含有マグネタイト粒子を含有する水懸濁液に、チタン化合物を添加する前に水酸化アルカリ水溶液、炭酸アルカリ水溶液等を添加するか、又はチタン化合物を添加すると同時に水酸化アルカリ水溶液、炭酸アルカリ水溶液等を添加し、水懸濁液のpH値を保持することが好ましい。
【0050】
チタン含有マグネタイト粒子粉末のチタン含有量は、10〜38原子%が好ましい。前記範囲外の場合には、加熱処理による焼結部が多くなり着色力が低下する。より好ましくは12〜33.3原子%である。
なお、マグネタイト粒子中には少なくとも3原子%以上のチタンを含有させることが好ましい。3原子%未満であると、加熱処理による焼結部が多くなり着色力が低下する。より好ましくは5原子%以上である。
【0051】
なお、前記異種金属元素を含有させる場合には、予めマグネタイト粒子中に含有させておいても良く、又はマグネタイト粒子の表面にチタン化合物を被覆させた水溶液に各種金属元素からなる塩、又は各種金属元素を含有する溶液を添加しても良い。
【0052】
また、Na−Fe−Ti化合物を含有させる場合には、チタン含有マグネタイト粒子、又はチタン化合物を被覆させたチタン含有マグネタイト粒子、又はそれらを含有する水懸濁液にナトリウム化合物を添加しても良い。ナトリウム化合物としては、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム又は塩化ナトリウム等が挙げられる。
【0053】
本発明における加熱焼成の雰囲気は非酸化性雰囲気下が好ましく、酸化性雰囲気下では、高い黒色度を有する鉄系黒色粒子粉末を得ることが困難である。
【0054】
本発明における加熱焼成の温度範囲は650〜850℃が好ましく、650℃未満の場合には、マグネタイト粒子とTi化合物の固相反応が不十分となり、目的とする鉄系黒色粒子粉末を得ることが困難であり、850℃を越える場合には、不要な相が生成するため好ましくない。より好ましくは680〜830℃である。
【0055】
加熱焼成後の粒子粉末は、常法によって、粉砕すればよい。
【0056】
<作用>
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末の飽和磁化値が低い理由としては、マグネタイト中にチタン化合物を含有させることによって、加熱処理時のマグネタイトとチタン化合物の反応性が高まり、残存するマグネタイトを可及的に減少させたことによるものと本発明者は推定している。
【0057】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末が粒度分布に優れるのは、加熱処理時の反応性が高まり均一な固相反応が進行したことによるものと本発明者は推定している。
【0058】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末が着色力に優れるのは、飽和磁化値が低いことによって磁気凝集が抑制されるとともに、粒子間の焼結が抑制され粒度分布に優れた粒子であることから、鉄系黒色粒子粉末が分散性に優れることによるものと本発明者は推定している。
【実施例】
【0059】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0060】
一次粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡写真に示される粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値(Dp)で示した。
【0061】
二次粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Sympatec GmbH製 HELOS&SUCELL)を用い、水400ml、鉄系黒色粒子粉末20mgに分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1mlを加え、超音波を5分間照射して測定した体積基準による平均粒子径(Da)である。
【0062】
粒子の構成相は、「X線回折装置RINT−2500」(理学電機(株)製、管球:Cu)を用いて同定した。
【0063】
BET比表面積値は、「Mono Sorb MS−II」(湯浅アイオニックス(株)製)を用いて、N吸着によるBET法により測定した値で示した。
【0064】
鉄系黒色粒子粉末の磁気特性は「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を用いて磁場796kA/m(10kOe)下で測定した値である。
【0065】
鉄系黒色粒子粉末のTiの含有量は、「蛍光X線分析装置 RIX−2100型」(理学電機工業(株)製)を用い検量線法により、測定した。
【0066】
鉄系黒色粒子粉末の着色力は、試料0.5g、ヒマシ油0.5ml及び二酸化チタン1.5gをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗布片について、分光色彩計カラーガイド(BYK−Gardner GmbH製)を用いて測色し、JIS Z 8729に定めるところに従って表色指数(L値)で示した。
【0067】
鉄系黒色粒子粉末の分散性を表す光沢は、試料0.5gとヒマシ油0.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗布片について、デジタル変角光沢計(UGV−5D スガ試験機製)を用いて入射角60°で測定した光反射率(%)で示した。
【0068】
実施例1
<鉄系黒色粒子粉末の製造>
2.76NのNaOH溶液22.2Lに、1.8mol/Lの硫酸第一鉄水溶液17.8Lを添加し、全量40L、pH6.5の水酸化鉄塩コロイドを含む反応溶液を得た。その後、この反応溶液を90℃昇温し、100分間空気を通気するとともに0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液20Lを添加し、黒色沈殿物を生成した。この間、温度90℃、pH6.5に保持した。
この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、さらにNガス流下730℃で加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄系黒色粒子粉末を得た。
【0069】
得られた鉄系黒色粒子粉末の一次粒子の平均粒子径(Dp)は0.11μm、二次粒子の平均粒子径(Da)は0.29μm、二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)は2.64、BET比表面積値は12.8m/gであり、飽和磁化値σsは1.2Am/kgであり、全鉄に対するチタン含有量は29.7原子%であり、着色力を表すL値は39.2であった。構成相はFeTiO−Fe固溶体であった。
【0070】
実施例2、3
チタン化合物の種類と添加量、反応溶液のpH、加熱焼成処理の温度を種々変化させた以外は前記実施例1と同様にして鉄系黒色粒子粉末を得た。
【0071】
実施例4
実施例1と同様にして、全量40L、pH6.5の水酸化鉄塩コロイドを含む反応溶液を得た。その後、この反応溶液を90℃昇温し、100分間空気を通気するとともに0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液3.3Lを添加し、黒色沈殿物を生成した。この間、温度90℃、pH6.5に保持した。
次いで、この黒色沈殿物を含む水溶液に0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液16.7Lを添加した。尚、添加時の水溶液のpHを8.5以上に保持するように、該水溶液にNaOHを添加した。その後、水溶液のpHを8.0に調整した。
チタンの含水酸化物で被覆されている黒色粒子粉末を、濾別、水洗、乾燥し、さらにNガス流下790℃で加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄系黒色粒子粉末を得た。
【0072】
得られた鉄系黒色粒子粉末の一次粒子の平均粒子径(Dp)は0.31μm、二次粒子の平均粒子径(Da)は0.48μm、二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)は1.55、BET比表面積値は5.2m/gであり、飽和磁化値σsは4.7Am/kgであり、全鉄に対するチタン含有量は29.9原子%であり、着色力を表すL値は42.9であった。構成相はFeTiO−Fe固溶体とFe−γ−Fe固溶体の混合物であった。
【0073】
実施例5、6
マグネタイト生成時に添加するチタン化合物の種類と添加量、反応溶液のpH、被覆処理に用いるチタン化合物の種類と添加量、加熱焼成処理の温度を種々変化させた以外は前記実施例4と同様にして鉄系黒色粒子粉末を得た。
【0074】
このときの製造条件を表1に、得られた鉄系黒色粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0075】
実施例7
2.76NのNaOH溶液22.2Lに、1.8mol/Lの硫酸第一鉄水溶液17.8Lを添加し、全量40L、pH6.5の水酸化鉄塩コロイドを含む反応溶液を得た。その後、この反応溶液を90℃昇温し、100分間空気を通気するとともに0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液20Lを添加し、黒色沈殿物を生成した。その後NaOH溶液を添加し、温度90℃、pH12.0に保持した。
この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、さらにNガス流下810℃で加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄系黒色粒子粉末を得た。
【0076】
得られた鉄系黒色粒子粉末の一次粒子の平均粒子径(Dp)は0.23μm、二次粒子の平均粒子径(Da)は0.52μm、二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)は2.26、BET比表面積値は6.9m/gであり、飽和磁化値σsは1.0Am/kgであり、全鉄に対するチタン含有量は30.8原子%であり、着色力を表すL値は38.2であった。構成相はFeTiO−Fe固溶体とNaFeTiの混合物であった。
【0077】
実施例8
実施例1と同様に、2.76NのNaOH溶液22.2Lに、1.8mol/Lの硫酸第一鉄水溶液17.8Lを添加し、全量40L、pH6.5の水酸化鉄塩コロイドを含む反応溶液を得た。その後、この反応溶液を90℃昇温し、100分間空気を通気するとともに0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液20Lを添加し、黒色沈殿物を生成した。この間、温度90℃、pH6.5に保持した。
この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、粒子表面がチタンの含水酸化物で被覆されている黒色磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
得られた粒子表面がチタンの含水酸化物で被覆されている黒色磁性酸化鉄粒子粉末2kgに硫酸ナトリウム100gを加えて混合した。次いで得られた混合物2kgをNガス流下750℃で加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄系黒色粒子粉末を得た。
【0078】
得られた鉄系黒色粒子粉末の一次粒子の平均粒子径(Dp)は0.13μm、二次粒子の平均粒子径(Da)は0.34μm、二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)は2.62、BET比表面積値は10.7m/gであり、飽和磁化値σsは1.0Am/kgであり、全鉄に対するチタン含有量は29.6原子%であり、着色力を表すL値は38.5であった。構成相はFeTiO−Fe固溶体とNaFeTiの混合物であった。
【0079】
比較例1
2.76NのNaOH溶液22.2Lに、1.8mol/Lの硫酸第一鉄水溶液17.8Lを添加し、全量40L、pH6.5の水酸化鉄塩コロイドを含む反応溶液を得た。その後、この反応溶液を90℃昇温し、100分間空気を通気し、黒色沈殿物を生成した。この間、温度90℃、pH6.5に保持した。
次いで、この黒色沈殿物を含む水溶液に0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液20Lを添加した。尚、添加時の水溶液のpHを8.5以上に保持するように、該水溶液にNaOHを添加した。その後、水溶液のpHを8.0に調整した。
チタンの含水酸化物で被覆されている黒色粒子粉末を、濾別、水洗、乾燥し、さらにN2ガス流下730℃で加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄系黒色粒子粉末を得た。
【0080】
得られた黒色粒子粉末の一次粒子の平均粒子径(Dp)は0.15μm、二次粒子の平均粒子径(Da)は0.55μm、二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)は3.67、BET比表面積値は10.3m/gであり、飽和磁化値σsは14.3Am/kgであり、全鉄に対するチタン含有量は29.8原子%であり、着色力を表すL値は44.8であった。構成相はFeTiO−Fe固溶体とFe−γ−Fe固溶体の混合物であった。
【0081】
比較例2、3
マグネタイト生成時に添加するチタン化合物の添加量、反応溶液のpH、被覆処理に用いるチタン化合物の添加量、加熱焼成処理の温度と時間を種々変化させた以外は前記比較例1と同様にして鉄系黒色粒子粉末を得た。
【0082】
このときの製造条件を表1に、得られた鉄系黒色粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
使用例1
<電子写真用トナーの製造>
実施例1で得た鉄系黒色粒子粉末を用いて、下記混合割合でヘンシェルミキサーにより混合した組成物を、二軸押し出し混練機(栗本鉄鋼社製 商品名:S−1)を用いて溶融混練し、混練物を冷却後、微粉砕した。これを体積平均粒子径8〜10μm(コールカウンター社製 商品名:Multisizerで測定)に分級し、さらに得られたトナー粉100重量部に対して、疎水性シリカ微粉末(日本アエロジル社製 商品名:RX−200)0.5重量部を外添処理し、電子写真用トナーを得た。
【0086】
スチレン−アクリル系共重合樹脂 100重量部、
(ハイマーSB−308:三洋化成工業株式会社製)
鉄系黒色粒子粉末 25重量部、
負荷電制御剤 0.5重量部、
(BONTRON E−84:オリエント化学工業株式会社製)
低分子量ワックス 5重量部。
(ビスコール550−P:三洋化成工業株式会社製)
【0087】
得られた電子写真用トナーは、初期画像濃度は1.55で、カブリの発生は無かった(4段階のうち◎)。
【0088】
使用例2
黒色粒子粉末の比較例1で得られたものに変えた以外は、前記使用例1と同様にして非磁性トナーを得た。
【0089】
このときの処理条件及び得られた非磁性黒色トナーの諸特性を表3に示す。
【0090】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末は、着色力が高く、可及的に磁化値が低いので、黒色を呈する顔料及び塗料、樹脂組成物の着色用材料、充填材等として好適である。
【0092】
本発明に係る鉄系黒色粒子粉末を用いて製造した黒色非磁性トナーは、高い黒色度を有すると共に、磁化値が低いので、非磁性トナーとして好適である。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の平均粒子径(Dp)が0.05〜0.4μmの鉄系黒色粒子であり、前記鉄系黒色粒子の二次粒子の平均粒子径(Da)が0.06〜1.0μmであり、二次粒子の平均粒子径(Da)と一次粒子の平均粒子径(Dp)との比(Da/Dp)が1.1〜2.8である鉄チタン複合酸化物からなることを特徴とするトナー用鉄系黒色粒子粉末。
【請求項2】
飽和磁化値が5Am/kg未満であることを特徴とする請求項1記載のトナー用鉄系黒色粒子粉末。
【請求項3】
着色力を表すL*値が44.5以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のトナー用鉄系黒色粒子粉末。
【請求項4】
前記いずれかの請求項に記載の鉄チタン複合酸化物粒子粉末において、Ti含有量が10〜38原子%であることを特徴とするトナー用鉄系黒色粒子粉末。
【請求項5】
前記いずれかの請求項に記載の鉄チタン複合酸化物粒子粉末において、構成相が少なくともFeTiO−Fe固溶体を有することを特徴とするトナー用鉄系黒色粒子粉末。
【請求項6】
請求項5において、更に、スピネル構造を有する鉄系酸化物、Na−Fe―Ti化合物、FeTiOから選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とするトナー用鉄系黒色粒子粉末。






【公開番号】特開2008−96758(P2008−96758A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279358(P2006−279358)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】