説明

トラクタのセミクローラ装置

【課題】従来、トラックローラフレームを支持する機構は、第1支持フレームと第2支持フレームとの前後2つの支持機構からなり、トラックローラフレームの揺動支点となる軸の支持機構がきわめて複雑な構成で、また、支持軸が片持ち支持のために強度上にも問題があった。
【解決手段】トラクタ車体の車軸に、駆動スプロケットを着脱自由に取り付けて設け、前記車軸を支持するアクスルケースの下側部に、該車軸と平行に軸架する揺動支持軸の左右両端部を軸受して支持する軸受装置を構成し、該軸受装置に支持した前記揺動支持軸は、下方において前後方向に配置するトラックローラフレームに下部を連結している支持フレームの上部を取り付けて支持し、無端帯状のクローラは、前記駆動スプロケットと、前記トラックローラフレームに軸架している複数の転輪とに巻き掛けて構成したトラクタのセミクローラ装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ車体の後輪に代えて取り付けて走行するセミクローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、湿地帯、特に湿田等において、トラクタの後輪に代えて使用するセミクローラ装置は、多くの開発例、公知技術が知られているが、本件出願に比較的近い技術が開示されたものとして、特開平11−245859号公開特許公報(特許文献1参照)がある。該公報に記載されているクローラ装置は、農用トラクタにおいて、左右のクローラ装置の間隔を変更できるようにする目的で、トラクタ車体の左右に軸着する駆動スプロケットの間隔を変更する構成にしたものである。
【0003】
この公報に記載された技術は、駆動スプロケットを、機体の駆動軸に固定されるディスク部と、ディスク部に固定される駆動歯部とを備えて構成し、ディスク部の機体中心側面に駆動歯部を固定して、左右の駆動スプロケットの駆動歯部の間隔が狭くなる第1状態、並びにディスク部の機体外側面に駆動歯部を固定して、左右の駆動スプロケットの駆動歯部の間隔が広くなる第2状態とに切換自在に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−245859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前項で説明した特許文献1に開示されている公知技術は、トラックフレームを支持する機構が、第1支持フレームと第2支持フレームとの前後2つの支持機構から構成され、第1支持フレームは、車体の中心位置にあるミッションケースに基部を取り付けて側方位置まで延長した支持杆と、複数のU型ボルトとを使用してボスを後車軸ケースに支持し、これに片持ちにして支持軸を支持した構成となっている。そして、該公知技術は、上記構成に加えて、前輪に寄った位置にトラックフレームを上下に案内するための第2支持フレームが設けられている。
【0006】
このように、特許文献1の公知技術は、トラック(ローラ)フレームの揺動支点となる軸の支持機構がきわめて複雑な構成で、製造時にコスト高となると共に、支持軸が片持ち支持のために、強度上にも課題がある。
【0007】
それに対して、本件出願の発明は、詳細には後述するが、車軸を支持するアクスルケースに一体として下側部に、車軸と平行に軸架する揺動支持軸の左右両端部を両持ちで支持・軸受する軸受装置を構成し、前記揺動支持軸は、支持フレームを介して下部のトラックローラフレームに連結して揺動自在に支持する構成として、従来技術の上記課題を解消したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、トラクタ車体(1)の車軸(2)に、駆動スプロケット(3)を着脱自由に取り付けて設け、前記車軸(2)を支持するアクスルケース(4)の下側部に、該車軸(2)と平行に軸架する揺動支持軸(5)の左右両端部を軸受して支持する軸受装置(6a,6b)を構成し、該軸受装置(6a,6b)に支持した前記揺動支持軸(5)は、下方において前後方向に配置するトラックローラフレーム(7)に下部を連結している支持フレーム(8)の上部を取り付けて支持し、無端帯状のクローラ(9)は、前記駆動スプロケット(3)と、前記トラックローラフレーム(7)に軸架している複数の転輪(10)とに巻き掛けて構成したトラクタのセミクローラ装置であって、軸受装置(6a)(6b)は、車軸(2)と平行に軸架する揺動支持軸(5)の左右両端部を支持する両持ち支持の構成とし、前記アクスルケース(4)に一体として下側部に設けており、構成が比較的簡単で低コストで製造できるものでありながら、充分な強度が確保でき耐久性に富む支持構成となった。
【0009】
つぎに、請求項2に記載した発明は、前記トラックローラフレーム(7)は、側面視において、前記駆動スプロケット(3)の車軸(2)を基準にして、後部側より前部側を長くして設け、前記駆動スプロケット(3)と複数の転輪(10)とに巻き掛けた前記クローラ(9)は、略三角形に近い形状で前側が長く接地する構成とし、前記トラックローラフレーム(7)の揺動支点Pとなる前記揺動支持軸(5)は、前記車軸(2)の下側で、且つ車軸(2)より前寄りの位置に軸架して構成した請求項1記載のトラクタのセミクローラ装置であって、無端状のクローラ(9)は、トラクタの側面視において、車軸(2)を基準にして前側部分の接地長さが、後ろ側より長くなり、セミクローラ装置全体の重心位置が前寄りに構成されている。したがって、請求項2の発明は、セミクローラ装置の揺動支点Pとなる揺動支持軸(5)を車軸(2)より前寄りに軸架して、走行の安定性を向上させたものである。
【0010】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記駆動スプロケット(3)は、クローラ(9)を係止して推進する外輪(3a)と、車軸(2)の外側端部に連結する内輪(3b)とから構成し、該内輪(3b)を椀状として前記外輪(3a)との連結部に対して、内側と外側とに付け替え可能に構成し、前記支持フレーム(8)は、揺動支持軸(5)に連結する上部位置と、トラックローラフレーム(7)に連結する下部位置とが、正面視で左右にずれて形成されて左右を反転して取り付け可能に構成した請求項1記載のトラクタのセミクローラ装置であって、外輪(3a)の内側と外側とに内輪(3b)を付け替える操作と、同時に、前記支持フレーム(8)の左右を反転して取り付け替える操作とによって、セミクローラ装置のトレッド調節ができるものとなっており、前掲の特許文献1の構成に比較して操作が楽にできる利点がある。
【0011】
つぎに、請求項4に記載した発明は、前記揺動支持軸(5)は、軸方向に貫通した油路孔(11)を内部に形成し、該油路孔(11)は、一方の軸受装置(6a)から他方の軸受装置(6b)に潤滑油を供給できる構成とした請求項1又は請求項2又は請求項3記載のトラクタのセミクローラ装置であって、揺動支持軸(5)の内部に左右の軸受装置(6a,6b)間に潤滑油を送る油路孔(11)を設けて潤滑油を供給しながら揺動支持軸(5)を円滑に揺動させ耐久性の向上を図ったものである。
【発明の効果】
【0012】
まず、請求項1に記載した発明は、軸受装置(6a,6b)を、揺動支持軸(5)の左右両端部を支持する両持ち支持とし、アクスルケース(4)の下側部分に一体として構成しているから、支持構成において、充分な強度が確保されて耐久性に富む装置となった特徴がある。しかも、請求項1の発明は、従来の如く、第一、第二の2箇所の支持フレームに代えて、アクスルケース(4)に設けた一箇所の構成(軸受装置)で充分な機能が発揮できるから、支持構成がきわめてコンパクトになり、製造コストを大幅に低減できる特徴がある。
【0013】
そして、請求項2に記載した発明は、無端状のクローラ(9)を、トラクタの側面視において、車軸(2)を基準にして前側部分の接地長さが、後ろ側より長くなり、セミクローラ装置全体の重心位置が前寄りに構成されている。したがって、請求項2の発明は、セミクローラ装置の揺動支点Pとなる揺動支持軸(5)を車軸(2)の下側で、且つ前寄りに軸架して、クローラ(9)全体の重量バランスの安定化を図り、走行の安定性を向上させた特徴がある。
【0014】
そして、請求項3に記載した発明は、セミクローラ装置のトレッド調節を可能にした点では、前掲の特許文献1と目的を同じくするが、該公知技術に比較して具体的な調節手段を異にし、構成が簡単であると共に調節操作もきわめて楽にできる特徴がある。
【0015】
そして、請求項4に記載した発明は、揺動支持軸(5)の内部に油路孔(11)を設けて、ミッションケースから送られたオイルを、一方の軸受装置(6a)から他方の軸受装置(6b)に潤滑油として送ることができる構成としているから、メンテナンスフリーとなり、充分に潤滑しながら揺動支持軸(5)を軸受け支持して、円滑に揺動させ耐久性を向上させた特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】セミクローラ装置を支持した車軸部における切断正面図。
【図2】上記図1からトレッド調節をした切断正面図
【図3】セミクローラ装置の側面図
【図4】トラクタの側面図
【図5】軸受装置の潤滑油路を示す正面図
【図6】トレッド調節の実施例
【図7】トレッド調節の実施例
【図8】トレッド調節の実施例
【図9】トレッド調節の実施例
【図10】セミクローラ装置の内側斜面図
【図11】セミクローラ装置の内側斜面図
【図12】駆動スプロケットの一部拡大正面図
【図13】駆動スプロケットの分解斜面図
【図14】テンションロッドを設けたトラックローラフレームの一部の側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、トラクタ15は、図4に示すように、トラクタ車体1の前部には左右一対の前輪16,16が軸架して設けられ、後部の後輪を軸着する車軸2には、後述するクローラ9を装備して構成している。そして、トラクタ車体1は、上側にキャビン17が搭載され、その前側にはボンネット18によって覆われたエンジンルーム19が構成され、エンジンが内装されている。
【0018】
そして、トラクタ車体1は、図面に示すように、後部には対地作業機を装着する連結装置20を装備している。そして、運転操縦席22は、前記キャビン17の室内後部に配置し、その前側にステアリングハンドル23を設け、その周辺には操縦用のスイッチ類やレバー類を集中させて配置し、座ったままトラクタ15の運転ができる構成としている。
【0019】
つぎに、この発明の主要部であるセミクローラ装置について、その実施例を図面に基づき具体的に説明する。
まず、セミクローラ装置は、図1、乃至図3に示すように、通常後輪を軸架する車軸2に着脱自由に取り付けた駆動スプロケット3と、その下側に配置しているトラックローラフレーム7に軸架した複数の転輪10(後述するテンションローラ10a、下部転輪10b、後部転輪10c)とに無端帯状のクローラ9を巻き掛けて構成している。そして、セミクローラ装置は、上述もしたが、湿地帯において、湿田の作業時に後輪に代えて装着するものである。
【0020】
そして、車軸2は、図1、及び図2に示すように、ミッションケース25側から、図示は省略しているが、走行動力を取り出すホイルギヤに接続し、トラクタ車体1の両側に突出させて設けた左右のアクスルケース4にそれぞれ軸装し、車体の後部で側部位置まで延長した構成としている。そして、駆動スプロケット3は、図面に示すように、前記車軸2の端部に取り付けた内輪3aの外周に、クローラ9を内側から係止して推進する外輪3aを着脱自由に取り付けて構成している。
【0021】
そして、軸受装置6a,6bは、図面に示すように、前記アクスルケース4の下側に形成しているが、前記車軸2と平行状態に軸架する揺動支持軸5の左右両端部をそれぞれ軸受して支持する構成としている。そして、揺動支持軸5は、その下方において、前後方向に沿わせて配置しているトラックローラフレーム7を下部に連結している支持フレーム8の上部を取り付けて支持した構成としている。
【0022】
この場合、上記揺動支持軸5は、支持フレーム8を介して連結支持したトラックローラフレーム7の揺動支点Pとなっている。
そして、上記トラックローラフレーム7には、図3に示すように、複数の転輪10を設けているが、前側からテンションローラ10aと、下側に下部転輪10b、後部には後部転輪10cがそれぞれ軸架されている。そして、クローラ9は、図3に示すように、前記駆動スプロケット3と、上記トラックローラフレーム7に軸架している各転輪10a,10b,10cに巻き掛けてセミクローラ装置を構成している。
【0023】
実施例は、上述のように構成することによって、軸受装置6a,6bを、揺動支持軸5の左右両端部を支持する両持ち支持とし、アクスルケース4の下側部分に一体として構成しているから、支持構成において、充分な強度が確保されて耐久性に富む装置となっている。しかも、実施例の支持構成は、従来公知の装置における第一、第二の2箇所の支持フレームに代えて、アクスルケース4に設けた一箇所の構成(軸受装置)で充分な機能が発揮できるから、支持構成がきわめてコンパクトになり、製造コストを大幅に低減することができた。
【0024】
そして、前記トラックローラフレーム7は、図3で解るように、側面視において、前記駆動スプロケット3の車軸2の位置から仮想垂直線を下ろし、これを基準にして、後部側より前部側が長くなっており、当然、駆動スプロケット3や転輪10に巻き掛けたクローラ9も略三角形で、前側が長く接地する構成となっている。したがって、セミクローラ装置は、前記仮想垂直線より前側に重心位置が寄っており、前バランスの状態になっている。そこで、実施例の揺動支持軸5は、前記車軸2の下側位置において、車軸2より前側に寄せた位置に軸架して重量バランスを極力均等化して安定支持をする構成としている。
【0025】
したがって、実施例は、揺動支点Pを車軸2の位置より前側に寄せて設けることによって、前後に配置されているクローラ9全体の重量バランスが均等に近づいて安定化が図られ、走行時の安定性が増すものとなっている。
【0026】
つぎに、実施例のトレッド調節について説明する。
この種のトラクタ15は、圃場において、左右のクローラ9を圃場内の溝に入れて走行させながら、間の畝上の作物を収穫する等の作業を行うとき、左右の溝幅の異なる場合があり、トレッド調節が必要である。
【0027】
まず、駆動スプロケット3は、図1、及び図2に示すように、車軸2の端部にボルトによって取り付ける椀状の内輪3bと、クローラ9を内側から係止して推進する外輪3aとから構成し、該外輪3aの連結部に対して、前記内輪3bを内側(図1参照)と外側(図2参照)とに付け替え可能に構成している。
【0028】
更に、具体的に説明すると、実施例における外輪3aと内輪3bとは、図6、乃至図9に示すように、総計8パターンの調節幅を得ることができる構成となっている。
すなわち、図6(A)(B)は、外輪3aに対して内輪3bを内側と外側とに付け替えた実施例を示している。つぎに、図7(A)(B)は、外輪3aを、内外反転させた状態にして、その外輪3aに対して、内輪3bを内側と外側とに付け替えた実施例を示している。そして、図8(A)(B)は、内輪3bを内外反転させて車軸2の端部に取り付けて、その内輪3bを、外輪3aの内側と外側とに付け替えた実施例を示している。最後の図9(A)(B)は、上記図8(A)(B)における外輪3aを内外反転させて取り付け替えた実施例を示している。
【0029】
以上、各実施例のトレッド調節において、左右のクローラ9,9の間隔(左右駆動スプロケット3の間隔)が最も広いのが図8(A)であり、最も狭いのが図7(B)となる。
そして、支持フレーム8は、図1、及び図2に示すように、揺動支持軸5に連結する上部位置と、トラックローラフレーム7に連結する下部位置とが、正面視で左右にずれて形成しており、これの左右を反転して取り付け替える構成にしている。そして、実施例の場合、支持フレーム8は、トラックローラフレーム7との連結部において、左右に微調整ができる構成にしている。
【0030】
このようにして、セミクローラ装置は、唯単にトレッド調節を可能にした点では、前掲の特許文献1と目的を同じくするが、該公知技術に比較して具体的な調節手段を異にし、構成が簡単であると共に調節操作もきわめて楽にできる点で優れている。
【0031】
なお、駆動スプロケット3は、上記説明の通り、外輪3aと内輪3bとの分割式に形成して内側、外側とに取り付け替えする構成としているから、合わせ面部分をインローの構成とし、組み合わせの容易化と同心度等、精度の向上を図っている。
【0032】
そして、実施例の場合、図10に示すように、トラックローラフレーム7の揺動時の前側ストッパー(前上がりストッパー)30と後ろ側ストッパー(前下がりストッパー)31とが、支持フレーム8の回動範囲の両側に配置してスタピライザーのブラケット32に設けて構成している。
【0033】
このように、前側ストッパー30と後ろ側ストッパー31とは、支持フレーム8が揺動支持軸5を揺動支点Pとして、トラックローラフレーム7と一体となってセミクローラ装置全体を揺動しながら円滑に走行することができるが、前側、又は後側の限界に達した箇所でストッパー機能を発揮することができる。
【0034】
実施例は、スタピライザーのブラケット32を取り付け用に利用することによって構成を簡略化でき、コストダウンを図ることができたものである。
そして、実施例のセミクローラ装置は、図11に示すように、駆動スプロケット3の内側において、支持フレーム8を揺動支持軸5に支持し、この支持フレーム8にトラックローラフレーム7を連結して支持した構成にしているから、クローラ9を左右(内外)に貫通する空間33の容積が広くなって泥溜りがなくなった利点がある。
【0035】
つぎに、駆動スプロケット3は、図12、及び図13に示すように、クローラ9の係合突起34を係合するピン35を取り付けるにあたり、内側35aの嵌合をきつくして、外側35bの嵌合を緩くして構成している。したがって、駆動スプロケット3は、図13に示すように、組み立て時には、ピン35の内側35aを先に組み立てた後に、外側35bの緩い嵌合側を組み立てることができるから左右の組立作業を後先にずらしてできるから、作業が楽で容易となる利点がある。
【0036】
そして、ピン35は、端部の嵌合位置に切欠きを形成して回り止めを構成しておくと、交換が容易となって、メンテ性が向上する利点がある。
そして、実施例の駆動スプロケット3は、図13に示すように、外周に近い位置に等間隔で配列して取り付けるピン35の内側部分に広くクリアランスをとる構成としている。したがって、駆動スプロケット3は、内部における泥だまりや雪だまりがなくなって、泥土中や雪上の走行が楽になる特徴もある。
【0037】
つぎに、テンションロッド26は、図14に示すように、前述したトラックローラフレーム7の前部に調節自由に取り付けて、前部に軸架しているテンションローラ10aを前後に調節する構成としている。この場合、テンションロッド26は、フレーム36内に収納状態に設けて、調節部(工具を接合する部位)37には開閉自由のカバー38を設けて被覆した構成としている。
【0038】
したがって、テンションロッド26は、泥や雪を被ることはなく、調節操作の支障にならない利点がある。
つぎに、揺動支持軸5の両端部分を軸受けする軸受装置6a,6bを潤滑する実施例について、図5に基づいて説明する。
【0039】
まず、前記揺動支持軸5は、図5に示すように、軸方向に貫通した油路孔11を内部に形成し、一方の軸受装置6aから他方の軸受装置6bに潤滑油を供給できる構成としている。この場合、一方の軸受装置6aは、トラクタ車体1側のミッションケース25に油孔で連通され、ケース内のオイルが供給される構成としている。そして、ミッションオイルは、一方側の軸受装置6aから前記揺動支持軸5内の油路孔11を通って他方側の軸受装置6bに送られ、潤滑されるものである。
【0040】
このように、実施例は、揺動支持軸5の内部に油路孔11を設けて、ミッションケース25から送られたオイルを、一方の軸受装置6aから他方の軸受装置6bに潤滑油として送ることができる構成としているから、メンテナンスフリーとなり、充分に潤滑しながら揺動支持軸5を軸受・支持して、円滑に揺動させ耐久性を向上させることができるものとなった。
【符号の説明】
【0041】
1 トラクタ車体
2 車軸
3 駆動スプロケット
3a 外輪
3b 内輪
4 アクスルケース
5 揺動支持軸
6a 軸受装置
6b 軸受装置
7 トラックローラフレーム
8 支持フレーム
9 クローラ
10 転輪
10a テンションローラ
10b 下部転輪
10c 後部転輪
11 油路孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ車体(1)の車軸(2)に、駆動スプロケット(3)を着脱自由に取り付けて設け、前記車軸(2)を支持するアクスルケース(4)の下側部に、該車軸(2)と平行に軸架する揺動支持軸(5)の左右両端部を軸受して支持する軸受装置(6a,6b)を構成し、該軸受装置(6a,6b)に支持した前記揺動支持軸(5)は、下方において前後方向に配置するトラックローラフレーム(7)に下部を連結している支持フレーム(8)の上部を取り付けて支持し、無端帯状のクローラ(9)は、前記駆動スプロケット(3)と、前記トラックローラフレーム(7)に軸架している複数の転輪(10)とに巻き掛けて構成したトラクタのセミクローラ装置。
【請求項2】
前記トラックローラフレーム(7)は、側面視において、前記駆動スプロケット(3)の車軸(2)を基準にして、後部側より前部側を長くして設け、前記駆動スプロケット(3)と複数の転輪(10)とに巻き掛けた前記クローラ(9)は、略三角形に近い形状で前側が長く接地する構成とし、前記トラックローラフレーム(7)の揺動支点Pとなる前記揺動支持軸(5)は、前記車軸(2)の下側で、且つ車軸(2)より前寄りの位置に軸架して構成した請求項1記載のトラクタのセミクローラ装置。
【請求項3】
前記駆動スプロケット(3)は、クローラ(9)を係止して推進する外輪(3a)と、車軸(2)の外側端部に連結する内輪(3b)とから構成し、該内輪(3b)を椀状として前記外輪(3a)との連結部に対して、内側と外側とに付け替え可能に構成し、前記支持フレーム(8)は、揺動支持軸(5)に連結する上部位置と、トラックローラフレーム(7)に連結する下部位置とが、正面視で左右にずれて形成されて左右を反転して取り付け可能に構成した請求項1記載のトラクタのセミクローラ装置。
【請求項4】
前記揺動支持軸(5)は、軸方向に貫通した油路孔(11)を内部に形成し、該油路孔(11)は、一方の軸受装置(6a)から他方の軸受装置(6b)に潤滑油を供給できる構成とした請求項1又は請求項2又は請求項3記載のトラクタのセミクローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−20675(P2011−20675A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219034(P2010−219034)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2007−149385(P2007−149385)の分割
【原出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)