説明

トラクタのレバー操作構造

【課題】規制部材の再装着の手間や紛失などの虞がなく、レバーをリフトアーム操作範囲と油圧供給範囲との間で容易に移動させることができて、操作性能の良いレバー操作構造を提供すること。
【解決手段】規制部材24は、リフトアーム操作範囲から油圧供給範囲への油圧ポジションレバー20の移動を規制するロック状態から、リフトアーム操作範囲から油圧供給範囲への油圧ポジションレバー20の移動を規制しない非ロック状態に手動で切り替え可能であり、規制部材24を手動で非ロック状態にして油圧ポジションレバー20を油圧供給範囲に移動させた後、油圧ポジションレバー20をリフトアーム操作範囲に移動させると、規制部材24がリフトアーム操作範囲への動作を許して前記ロック状態に自動的に切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタのリフトアームを操作するリフトアーム操作範囲と油圧シリンダの油圧を外部に供給する油圧供給範囲との間を移動可能な油圧ポジションレバーと、前記リフトアーム操作範囲から前記油圧供給範囲への前記油圧ポジションレバーの移動を規制する規制部材とを備えるトラクタのレバー操作構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のトラクタの従来のレバー操作構造としては、油圧ポジションレバーをガイドするレバーガイドを備え、そのレバーガイドのガイド孔におけるリフトアーム操作範囲と油圧供給範囲との境界付近(リフトアーム操作範囲の上限位置)に、油圧ポジションレバーの移動を当接規制する規制部材がボルトを介して固定されるものが知られている。
【0003】
上述のレバー操作構造においては、油圧ポジションレバーを、レバーガイドのガイド孔に沿って、リフトアーム操作範囲で昇降移動させることでリフトアームの昇降動作を実施することができ、ボルトを回して規制部材を取り外し、油圧ポジションレバーをリフトアーム操作範囲から油圧供給範囲に移動させることで、油圧シリンダの油圧を取り出すことができるように構成されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、別の種類のトラクタのレバー操作構造では、リフトアーム操作範囲と油圧供給範囲との境界付近にバネ部材を設け、油圧ポジションレバーを油圧供給範囲に移動させた際、手を離すとバネ部材の弾性復元力で自動的に、油圧ポジションレバーがリフトアーム操作範囲に戻るように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−129776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の従来構造では、規制部材を取り外す必要があるため、油圧の取り出しを終えた後に規制部材を再装着するのを忘れていたり、あるいは規制部材を紛失するなどの虞がある。規制部材による規制がなければ、レバーは不必要に油圧供給範囲まで移動してしまい、動力損失、油温の上昇、油圧部品の故障等を招く。
また、上記別の従来構造では、油圧ポジションレバーを油圧供給範囲に操作する為には、バネ部材の弾性復元力に抗して油圧ポジションレバーを油圧供給範囲に操作しなければならず、油圧供給範囲において油圧ポジションレバーの操作が極端に重くなり、操作性能を悪化させる。
【0007】
本発明の目的は、規制部材の再装着の手間や紛失などの虞がなく、油圧ポジションレバーをリフトアーム操作範囲と油圧供給範囲との間で容易に移動させることができて、操作性能の良いレバー操作構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1特徴構成は、トラクタのリフトアームを操作するリフトアーム操作範囲と油圧シリンダの油圧を外部に供給する油圧供給範囲との間を移動可能な油圧ポジションレバーと、前記リフトアーム操作範囲から前記油圧供給範囲への前記油圧ポジションレバーの移動を規制する規制部材とを備えるトラクタのレバー操作構造であって、前記規制部材は、前記リフトアーム操作範囲から前記油圧供給範囲への前記油圧ポジションレバーの移動を規制するロック状態から、前記リフトアーム操作範囲から前記油圧供給範囲への前記油圧ポジションレバーの移動を規制しない非ロック状態に手動で切り替え可能であり、前記規制部材を手動で前記非ロック状態にして前記油圧ポジションレバーを前記油圧供給範囲に移動させた後、前記油圧ポジションレバーを前記リフトアーム操作範囲に移動させると、前記規制部材が前記リフトアーム操作範囲への動作を許して前記ロック状態に自動的に切り替わるように構成してある点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、油圧を取り出すために、規制部材を手動で非ロック状態に切り替えた後、油圧ポジションレバーをリフトアーム操作範囲から油圧供給範囲に移動させるため、非ロック状態に切り替える際に規制部材をいちいち取り外す必要はなく、規制部材の再装着の手間や規制部材を紛失する虞がない。
また、油圧シリンダの油圧の取り出しを終えて、油圧ポジションレバーを再びリフトアーム操作範囲に移動させると、規制部材が自動的にロック状態に切り替わるため、規制部材のロック状態への戻し忘れも生じない。
さらに、本構成においては、油圧ポジションレバーに対してバネ部材等の付勢手段を設ける必要はない。そのため、油圧ポジションレバーをリフトアーム操作範囲と油圧供給範囲との間で容易に移動させることができて、操作性能も良い。
【0010】
本発明に係る第2特徴構成は、前記規制部材を非ロック状態からロック状態に付勢するバネ部材を備えており、前記油圧ポジションレバーが前記油圧供給範囲に位置していると、前記非ロック状態の規制部材が、前記油圧ポジションレバーの移動方向と直交する方向から前記油圧ポジションレバーの横側面に接当し、前記バネ部材により前記油圧ポジションレバーの横側面に押圧されるように構成してある点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、油圧供給範囲において、油圧ポジションレバーが規制部材による押圧力によって確実に油圧供給範囲に保持されるため、油圧シリンダの油圧の取り出し操作をより安定して実施することができる。
油圧ポジションレバーを油圧供給範囲からリフトアーム操作範囲に移動させる際、規制部材は油圧ポジションレバーの横側面を摺動するような状態となって、油圧ポジションレバーの移動が許容される。この場合、油圧ポジションレバーに規制部材から摺動抵抗が掛かるが、あまりに大きな抵抗にはならない。
【0012】
本発明に係る第3特徴構成は、前記ロック状態と非ロック状態とは別に、前記油圧供給範囲への前記油圧ポジションレバーの移動を規制せず、且つ前記バネ部材に抗して前記油圧ポジションレバーの横側面に接当しない位置に前記規制部材を保持する中間状態を設定し、前記規制部材を前記中間状態に設定した状態で前記油圧ポジションレバーを前記リフトアーム操作範囲から前記油圧供給範囲に移動させると、前記規制部材が前記中間状態から非ロック状態となるように構成してある点にある。
【0013】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、中間状態を設けることによって、作業者は油圧シリンダの油圧の取り出し操作を行う際に、規制部材を中間状態に設定した後に、油圧ポジションレバーを油圧供給範囲に操作することができるため、規制部材と油圧ポジションレバーとを同時に操作しなくてすみ、より操作性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】トラクタに連結したダンプトレーラの側面図
【図3】トラクタとダンプトレーラとの連結部分の平面図
【図4】ポジション制御用の油圧回路図
【図5】規制部材がロック状態にあるときのレバー操作構造の(a)側面図(b)縦断正面図(c)平面図
【図6】規制部材が中間状態にあるときのレバー操作構造の(a)側面図(b)縦断正面図(c)平面図
【図7】規制部材が非ロック状態にあるときのレバー操作構造の(a)側面図(b)縦断正面図(c)平面図
【図8】規制部材がロック状態にあるときのレバー操作構造の(a)側面図(b)縦断正面図(c)平面図
【図9】レバー操作構造の斜視図
【図10】別実施形態に係るレバー操作構造の平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
〔トラクタの全体構成〕
図1〜図3に基づいて本発明に係るレバー操作構造を備えるトラクタについて説明する。
図1〜図3に示すように、このトラクタは、操向操作される前輪1と推進車輪である後輪2を備えるとともに機体前部にエンジン3が搭載され、また、機体後部に、ロータリ等の作業装置を連結するための3点リンク機構4と、これを昇降駆動する左右一対のリフトアーム5が装備されるとともに、左右後輪2の間に位置させて運転座席6が配備された構造となっている。
【0016】
図4に、リフトアーム5を油圧駆動する油圧回路が示されている。リフトアーム5は単動型の油圧シリンダ7で駆動されるものである。油圧シリンダ7は、エンジン3により駆動されるポンプ31からの圧油供給によって伸長作動することでリフトアーム5が上昇駆動され、油圧シリンダ7から排油されることによって短縮作動することでリフトアーム5が自重下降するよう構成されている。そして、この油圧シリンダ7がポジションコントロールバルブ8によって作動制御されるようになっている。
【0017】
ポジションコントロールバルブ8には、主スプール11、下降用バルブ12、リリーフバルブ13、チェックバルブ36、パイロット操作式のチェックバルブ34等が含まれており、油圧シリンダ7とポジションコントロールバルブ8のシリンダポート14とが落下速度調節バルブ15を介して接続されている。油圧シリンダ7と落下速度調節バルブ15との間にリリーフバルブ35が接続されており、ダンプトレーラ23の荷台29の昇降動作を行うダンプシリンダ10は、油圧シリンダ7と、落下速度調節バルブ15との間に設けられる油圧取り出し部16に取り外し自在に接続される。
【0018】
主スプール11の端部には天秤リンク17が揺動自在に連結され、この天秤リンク17の両端に、ポジション調節軸18から延出された調節アーム18aとフィードバック軸19から延出されたフィードバックアーム19aがそれぞれ係合されている。また、ポジション調節軸18と運転座席6の右脇に前後揺動可能に配備された油圧ポジションレバー20とが連係リンク32を介して機械的に連係されるとともに、フィードバック軸19とリフトアーム5とがフィードバックリンク33を介して機械的に連係されている。
【0019】
上記構成のポジションコントロールバルブ8は、ダンプシリンダ10を接続していない状態において以下のように作動する。
図4に示す状態は、油圧ポジションレバー20をリフトアーム操作範囲Aのある操作位置に保持した中立状態であり、主スプール11が中立位置11Nに操作され、下降用バルブ12が閉路位置に操作されて、チェックバルブ34の閉側へのパイロット圧が消失した状態である。この状態において、ポンプ31の圧油はチェックバルブ34を介して排出され、油圧シリンダ7の圧油はチェックバルブ36及び下降用バルブ12の閉路位置によって止められる。
【0020】
図4に示される中立状態から、例えば、油圧ポジションレバー20を上昇(U)側に操作すると、これに連動してポジション調節軸18が図4において反時計方向に回動され、天秤リンク17は、フィードバックアーム19aとの係合点を中心にして紙面下方向に揺動される。これにより、下降用バルブ12が閉路位置に保持された状態で、主スプール11が上昇位置11Uに操作され、パイロット油路37のパイロット圧によりチェックバルブ34が閉状態に保持されて、パイロット油路38のパイロット圧によりリリーフ弁13が閉状態に保持され、シリンダポート14から油圧シリンダ7に圧油が送出されて、リフトアーム5が上昇駆動される。
【0021】
そして、リフトアーム5が上昇変位すると、この変位がフィードバックリンク33を介してフィードバック軸19に、図4において反時計方向の回転としてフィードバック伝達され、天秤リンク17が調節アーム18aとの係合点を中心にして紙面上方向に揺動され、主スプール11が中立位置11N側に操作される。そして、ポジション調節軸18の回動操作位置に対応した所定の回動位置までフィードバック軸19が回動された時点で主スプール11が中立位置11Nに復帰されて上昇作動が停止する。
【0022】
また、図4に示される中立状態から、油圧ポジションレバー20を下降(D)側に操作すると、これに連動してポジション調節軸18が図4において時計方向に回動され、天秤リンク17は、フィードバックアーム19aとの係合点を中心にして紙面上方向に揺動され、主スプール11が下降位置11Dに操作されるとともに、これに接当追従する下降用バルブ12が開路位置に切換えられ、シリンダポート14が下降用バルブ12を介してタンクに連通されることで油圧シリンダ7からの排油が可能となり、リフトアーム5が自重で下降作動する。
【0023】
そして、リフトアーム5が下降変位すると、この変位がフィードバックリンク33を介してフィードバック軸19に、図4において時計方向の回転としてフィードバック伝達され、天秤リンク17が調節アーム18aとの係合点を中心にして紙面下方向に揺動され、主スプール11が中立位置11N側に操作される。そして、ポジション調節軸18の回動操作位置に対応した所定の回動位置までフィードバック軸19が回動された時点で主スプール11が中立位置11Nに復帰され、下降用バルブ12が閉路位置に操作されて下降作動が停止する。
【0024】
つまり、油圧ポジションレバー20をレバーガイド21のリフトアーム操作範囲A内で操作すると、その操作位置に応じた高さまでリフトアーム5が昇降して自動的に停止するように構成されている。なお、油圧ポジションレバー20を上限位置に操作した時のリフトアーム5は、リフトアーム5自体の機械的な上昇限界より若干低い位置に設定され、また、油圧ポジションレバー20を最下方位置に操作した状態では、リフトアーム5の下降変位に伴うフィードバック作動にかかわらずポジションコントロールバルブ8は中立復帰されることなく下降状態が維持されるようになっており、リフトアーム5が機械的な下限まで自重下降可能な状態、いわゆるフローティング状態がもたらされるように設定されている。
【0025】
また、油圧ポジションレバー20をレバーガイド21の油圧供給範囲Bに移動させることによって、油圧シリンダ7の油圧を取り出して、ダンプトレーラ23等の外部装置に供給することができるように構成されている。
【0026】
〔レバー操作構造〕
図9に示すように、レバー操作構造は、油圧ポジションレバー20と、レバーガイド21と、規制部材24とを備えて構成されている。
【0027】
図5〜図8に示すように、運転座席6の右横のレバーガイド21に形成した前後に長いガイド孔22には、トラクタのリフトアーム5を操作するリフトアーム操作範囲Aと油圧シリンダ7の油圧を外部に供給する油圧供給範囲Bとが設けられている。
【0028】
油圧ポジションレバー20は、ガイド孔22に貫通配備されるとともに、その揺動支点Pには皿バネを利用した摩擦保持機構25が備えられ、リフトアーム操作範囲Aと油圧供給範囲Bとの間を移動可能で、且つこれらの範囲の所望の位置に保持しておくことができるようになっている。
【0029】
図9に示すように、規制部材24は、L字形に屈曲した長さの異なる2つの丸棒材を、F字形に組み合わせて溶接して一体にしたものであり、短軸部24a、長軸部24b、及び把持部24cを備えて構成される。
【0030】
規制部材24の短軸部24aは、レバーガイド21の上部下面に溶接固着された断面U字形のブラケット26の相対する2つの側壁26a,26aに亘って横方向に貫通しており、これにより規制部材24は、ブラケット26に対して、その短軸部24aの軸心X周りに前後に回倒可能に枢支連結される。尚、規制部材24の短軸部24aの外周には、ブラケット26の内側に配置されるようにバネ部材27が設けられている。このバネ部材27は、規制部材24を非ロック状態からロック状態に付勢するものであって、本実施形態では、その弾性復元力により規制部材24を車体の右方向(図5(b)の紙面右から左の方向)に移動するように付勢する。
【0031】
レバーガイド21の上側左部には、深部28aと浅部28bと円弧状の案内部分28cとからなるL字形の切り欠き28が設けられている。
【0032】
ダンプシリンダ10を接続しない状態において、リフトアーム5の昇降動作を実施する場合には、規制部材24をロック状態として、リフトアーム操作範囲Aから油圧供給範囲Bへの油圧ポジションレバー20の移動を規制する。
【0033】
図5(a)〜(c)に示すように、規制部材24がロック状態にある場合、その短軸部24aは、リフトアーム操作範囲Aと油圧供給範囲Bとの境界付近C(リフトアーム操作範囲Aの上限位置付近)において、平面視でレバーガイド21のガイド孔22と直交するように、油圧ポジションレバー20の揺動軌跡内に突き出た状態となる。そして、規制部材24の把持部24cが切り欠き28の深部28aに配置されることにより、図5(c)に示すように、規制部材24の長軸部24bは、平面視において短軸部24aよりも後側に配置される。
【0034】
これにより、油圧ポジションレバー20は、境界付近Cで規制部材24の短軸部24aに当たり、その移動が規制されるため、境界付近Cよりも上側に移動させることができず、油圧ポジションレバー20は、リフトアーム操作範囲Aの上限から下限までの範囲内でのみ移動可能となる。
【0035】
また、油圧シリンダ7の油圧を取り出してダンプトレーラ23等の外部装置に供給する場合には、先ず図6に示すように、作業者が手動で、規制部材24の把持部24cをバネ部材27の弾性復元力に抗して車体左右中央側(図6(b)の紙面右側)に引っ張った後、規制部材24の短軸部24aの軸心X周りに後方に回倒させて切り欠き28の浅部28bに配置させることで規制部材24を中間状態に設定する。
【0036】
中間状態の規制部材24は、油圧供給範囲Bへの油圧ポジションレバー20の移動を規制せず、且つバネ部材27に抗して油圧ポジションレバー20の横側面に接当しない位置に保持される。即ち、図6(b),(c)に示すように、規制部材24の短軸部24aが油圧ポジションレバー20の揺動軌跡から外れると共に、規制部材24の長軸部24bが平面視において短軸部24aよりも少し前側に配置されて、油圧ポジションレバー20の揺動軌跡内に突き出た状態となる。
【0037】
次いで、図7に示すように、油圧ポジションレバー20を油圧供給範囲Bに移動させると、規制部材24の長軸部24bが油圧ポジションレバー20によって後方に押されるため、規制部材24が、その短軸部24aの軸心X周りに前方に回倒して、把持部24cが切り欠き28の浅部28bから外れて、規制部材24の短軸部24aがバネ部材27の弾性復元力によって車体の右方向(図7(b)の紙面右から左の方向)に移動しようとする。
【0038】
そのため、規制部材24の短軸部24aは、油圧ポジションレバー20の移動方向と直交する方向、即ち、平面視でレバーガイド21のガイド孔22と直交する方向から油圧ポジションレバー20の左横側面に接当し、バネ部材27により油圧ポジションレバー20の左横側面に押圧される状態となる。
【0039】
これにより、規制部材24は、リフトアーム操作範囲Aから油圧供給範囲Bへの油圧ポジションレバー20の移動を規制しない非ロック状態となり、油圧シリンダ7の油圧を取り出すことができるようになる。油圧供給範囲Bにおいてフィードバックリンク33は作用せず、油圧が供給され続ける。これにより、ダンプシリンダ10は伸長作動してダンプトレーラ23の荷台29は上昇する。
【0040】
尚、油圧ポジションレバー20をリフトアーム操作範囲Aから油圧供給範囲Bに操作する場合においてリフトアーム操作範囲Aの範囲では作業装置が連結されていないリフトアーム5は前述のように上昇駆動されて上限位置に位置するのに対して、ダンプシリンダ10は荷台29の負荷を支持しているので、実際にはダンプシリンダ10は作動しない(荷台29は上昇駆動されない)。
【0041】
そして、ダンプトレーラ23の荷台29を下降又は停止させる場合、図8に示すように、油圧ポジションレバー20をリフトアーム操作範囲Aに移動すると、油圧ポジションレバー20の左横側面に対する規制部材24の短軸部24aの当接が解除される。
【0042】
油圧ポジションレバー20を油圧供給範囲Bからリフトアーム操作範囲Aに操作した場合、油圧取り出し部16の圧力が比較的高いと、作業装置が連結されていないリフトアーム5は上限位置に位置しているので、主スプール11は中立位置11Nに操作されず、ダンプシリンダ10は収縮作動し続ける(荷台29は下降し続ける)。落下速度調節バルブ15を操作して、ダンプシリンダ10の収縮作動に伴って油圧シリンダ7も収縮作動するようにすると、リフトアーム操作範囲Aにおいてフィードバックリンク33が機能することになり、油圧ポジションレバー20の操作位置に対応する位置でダンプシリンダ10が停止する(荷台29が停止する)。
【0043】
油圧ポジションレバー20を油圧供給範囲Bからリフトアーム操作範囲Aに移動させる際、規制部材24の短軸部24aは、油圧ポジションレバー20の横側面を摺動するような状態となって、油圧ポジションレバー20の移動が許容される。この場合、油圧ポジションレバー20に規制部材24の短軸部24aから摺動抵抗が掛かるが、あまりに大きな抵抗にはならない。
【0044】
そして、規制部材24の短軸部24aは、バネ部材27の付勢力によって自動的に、リフトアーム操作範囲Aと油圧供給範囲Bとの境界付近C(リフトアーム操作範囲Aの上限位置付近)において、平面視でレバーガイド21のガイド孔22と直交するように、油圧ポジションレバー20の揺動軌跡内に突き出た状態となると共に、規制部材24の把持部24cが切り欠き28の円弧状の案内部分28cを介して深部28aに入り込んで、上記ロック状態に自動的に復帰する(切り替わる)。これにより、規制部材24のロック状態への戻し忘れを防止できる。
【0045】
〔別実施形態〕
〔1〕図10に示すように、前述の実施形態における規制部材24を、先端にテーパー面24dを備える棒状体を用いてバネ部材27で付勢するようにしても良い。即ち本構成においては、図10(a)に示すように、油圧ポジションレバー20がリフトアーム操作範囲Aにあるときには、規制部材24が油圧ポジションレバー20の揺動軌跡内に突き出てロック状態となる。
そして、図10(b)に示すように、作業者が手動で、規制部材24を油圧ポジションレバー20の揺動軌跡から遠ざかる方向に引っ張ったまま油圧ポジションレバー20を油圧供給範囲Bに移動させた後、図10(c)に示すように、油圧ポジションレバー20を再びリフトアーム操作範囲Aに移動させようとすると、油圧ポジションレバー20が規制部材24のテーパー面24dに当接する。
これにより、規制部材24が油圧ポジションレバー20の揺動軌跡から遠ざかる方向に押し上げられて、油圧ポジションレバー20のリフトアーム操作範囲Aへの動作を許す状態となり、油圧ポジションレバー20がリフトアーム操作範囲Aに移動すると、バネ部材27の弾性復元力により規制部材24が再び図10(a)に示すようなロック状態に自動的に切り替わる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、リフトアームの操作と、油圧シリンダの油圧の取り出しとの切り替えを行うトラクタに有用である。
【符号の説明】
【0047】
5 リフトアーム
7 油圧シリンダ
20 油圧ポジションレバー
24 規制部材
27 バネ部材
A リフトアーム操作範囲
B 油圧供給範囲


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタのリフトアームを操作するリフトアーム操作範囲と油圧シリンダの油圧を外部に供給する油圧供給範囲との間を移動可能な油圧ポジションレバーと、前記リフトアーム操作範囲から前記油圧供給範囲への前記油圧ポジションレバーの移動を規制する規制部材とを備えるトラクタのレバー操作構造であって、
前記規制部材は、前記リフトアーム操作範囲から前記油圧供給範囲への前記油圧ポジションレバーの移動を規制するロック状態から、前記リフトアーム操作範囲から前記油圧供給範囲への前記油圧ポジションレバーの移動を規制しない非ロック状態に手動で切り替え可能であり、前記規制部材を手動で前記非ロック状態にして前記油圧ポジションレバーを前記油圧供給範囲に移動させた後、前記油圧ポジションレバーを前記リフトアーム操作範囲に移動させると、前記規制部材が前記リフトアーム操作範囲への動作を許して前記ロック状態に自動的に切り替わるように構成してあるトラクタのレバー操作構造。
【請求項2】
前記規制部材を非ロック状態からロック状態に付勢するバネ部材を備えており、
前記油圧ポジションレバーが前記油圧供給範囲に位置していると、前記非ロック状態の規制部材が、前記油圧ポジションレバーの移動方向と直交する方向から前記油圧ポジションレバーの横側面に接当し、前記バネ部材により前記油圧ポジションレバーの横側面に押圧されるように構成してある請求項1に記載のトラクタのレバー操作構造。
【請求項3】
前記ロック状態と非ロック状態とは別に、前記油圧供給範囲への前記油圧ポジションレバーの移動を規制せず、且つ前記バネ部材に抗して前記油圧ポジションレバーの横側面に接当しない位置に前記規制部材を保持する中間状態を設定し、
前記規制部材を前記中間状態に設定した状態で前記油圧ポジションレバーを前記リフトアーム操作範囲から前記油圧供給範囲に移動させると、前記規制部材が前記中間状態から非ロック状態となるように構成してある請求項2に記載のトラクタのレバー操作構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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