説明

トラックフォーマット、記録媒体、記録装置、再生装置、再生方法、及び記録再生装置

【課題】より安定してプリアンブル部分の情報を検出して信号分離処理を行い、高記録密度化を実現することのできるトラックフォーマット及び再生装置を提供する。
【解決手段】トラックフォーマットにおいて、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、トラックには、データと、このデータを再生する制御のために必要なゲイン制御パターン、同期パターン、識別パターン、分離パターンを含むプリアンブルとが配置され、複数のトラックのうち一部のトラックのプリアンブルには、同じ種類のパターンがトラックの進行する方向において複数の位置に配置されている。再生装置は、プリアンブルの複数の位置からパターンを検出することによって、バーストエラーなどの原因で、最初のパターンの検出に失敗しても、次のパターンの検出の機会があることによって、より安定した処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能なトラックフォーマット、記録媒体、記録装置、再生装置、再生方法、及び記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ヘッドにおいては、磁気記録メディアの大容量化を図るために、更なる高密度記録が求められ、トラックのトラック幅を狭くすること(以下、「狭幅化」という。)に適した磁気ヘッドが採用されるようになってきている。一般的には、トラックの狭幅化にはトラック・サーボの精度向上が鍵となる。
【0003】
磁気テープ記録再生装置においては、狭幅化に伴い、サーボが困難になる対策案として、所謂ノントラッキング・システムが提唱され、実用化に至っている(たとえば特許文献1−5など)。このノントラッキング方式は、ヘリカル・スキャンにてダブルアジマス記録を行ったトラックに対し、識別のために、ブロックに分けてデータを記録することによって、目的のトラックを1回のトレースで再生できなくても、データを再構成できるものである。このノントラッキング方式によって、従来のトラック・サーボで必要とされる1トラック以内のトラッキング制御に対して、4倍以上のマージンが許容されるようになる。
【0004】
また、ノントラッキング技術は、ヘリカル・スキャンに留まらずリニア記録で使用されるための可能性が検討されている(たとえば特許文献6,7など)。
【0005】
ところで、磁気記録メディアの基板に、たとえばポリエステルフィルムのような伸縮性をもった非磁性支持体を使用した場合、ダブルアジマス記録を行ったとしても、許容できる変形量はトラック・サーボを併用して、例えばトラック幅の2倍程度までであり、これ以上の変形が発生する場合は、十分なSN比をもって信号を再生することができなかった。また、ダブルアジマスを持たない記録の場合では、トラックをまたがない所謂ガードバンドの幅を、トラック・サーボを併用した状態でも、エラーレート等の信頼性を劣化させないために、テープの変形量以下に押さえ込む必要があった
【0006】
このような問題は、これまで実現されていた信号再生方式においては、少なくとも1つの再生ヘッドが同時に複数のトラックから信号を読み込むことによって信号品質が著しく劣化することに起因する。それを回避するために、ガードバンドやダブルアジマス記録を行い、また再生ヘッドからは1つのトラックからの信号のみを拾うように工夫されてきた。
【0007】
しかし、さらに高トラック密度化を行う場合においては、先ずガードバンドの設置はその妨げとなる。また、再生時において隣接するトラックからの干渉を少なくすることができるダブルアジマス記録は、狭幅化した場合その効果は減少してしまう。
【0008】
このことは、ノントラッキング方式であっても同じであり、再生ヘッドは複数のトラックに跨って信号を再生するように見えるが、時間分割した場合、再生している信号は常に1つのトラックに対してだけであり、同一時間に複数のトラックを再生するということは行っていなかった。
【0009】
また、ノントラッキング方式で高トラック密度化に対応しようとした際に、対象トラックの隣接するトラックからの信号を拾うことによってノイズが混入するようになるため、トラックの狭幅化対応が限界になってきている。
【0010】
磁気ヘッド装置の背景技術としてこのほか、記録密度を向上させるために、1つのブロックに複数のヘッドを配置し、同一アジマスのブロックで形成する方式として、一度に複数のデータ・フレームを記録する技術がある(たとえば特許文献8及び特許文献9など)。
【0011】
これらの公知技術は、再生ヘッド幅をトラックの幅の半分程度にしなければならなくなるため、再生信号の出力を大きくとることができないという制約が生じ、たとえばSN比の確保の点で不利であり、更なる高密度記録化には必ずしも向いていなかった。
【0012】
MIMO(Multi-Input/Multi-Output)技術は、無線通信に用いられるものとして広く知られている(たとえば特許文献10など)。
【0013】
また、MIMOに関する技術を磁気記録に使用する技術も知られている(たとえば非特許文献1など)。しかし、たとえば記録したトラックよりも広幅の再生ヘッドを使用する場合など、実用化に際して発生する課題が解決されていなかった。
【0014】
本発明においては、MIMOを使用した磁気記録方法としては前項で紹介した論文をもって実現しえなかった、磁気記録再生方法へのMIMO技術の実用化を実現するにあたり、公知技術からは予見しえなかった技術内容を明らかにするものである。
【特許文献1】特許1842057号公報
【特許文献2】特許1842058号公報
【特許文献3】特許1842059号公報
【特許文献4】特開平04−370580号公報
【特許文献5】特開平05−020788号公報
【特許文献6】特開平10−283620号公報
【特許文献7】特開2003−132504号公報
【特許文献8】特開2003−338012号公報
【特許文献9】特開2004−071014号公報
【特許文献10】特許3664993号公報
【非特許文献1】論文IEEE Trans.Mag.Vol.30.No.6 Nov.1994 5100ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように従来の磁気記録再生方式では、記録密度を高めるに磁気記録メディアでのトラック幅を狭くする方法が採用されてきた。しかし、このまま高記録密度を追い求めてトラック幅を狭くしていくと、再生時にトラックを追いきれなくなるという問題が生じる。そこで、トラックに対する再生ヘッドの位置が多少とも外れていても、そのトラックから信号を読み取ることができるノントラッキング方式が提案されている。しかしながら、ノントラッキング方式で適切に再生信号を得るためには、再生ヘッドの設定に厳しい制約が伴う。この面からトラック幅の狭小化による高記録密度化には限界があった。
【0016】
そこで、本発明者らは、磁気記録メディアに記録ヘッドにより、データ検出のための信号処理の一単位である複数のトラックを記録し、磁気記録メディアの複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドにより、複数のトラックに対する信号を、複数のトラックに対して異なる位置関係で複数再生し、これら再生信号を一単位にまとめ、信号処理を行うことで、トラックごとの再生信号を生成するという方式を提案した。これによると、再生ヘッドの幅を決める制約が軽減し、トラック幅の狭小化、高記録密度化が可能である。
【0017】
図22は、上記の磁気記録再生方式を採用した記録装置800の構成を示す図である。
【0018】
同図に示すように、この記録装置800は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0019】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0020】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0021】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、トラックごとに特定のプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0022】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3とで構成される。
【0023】
図23は、この記録装置800によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS801)。
【0024】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS802)。
【0025】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータを再生する制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS803)。
【0026】
ここで、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置とは、連続して記録符号列が記録再生されることを考慮して決められた位置である。また、プリアンブルとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。ここで、1ユニット分の複数のトラックとは、データを再生するための信号処理の一単位を構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの開始位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0027】
それぞれのトラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3にて所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。
【0028】
この後、トラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS804)。
【0029】
そして、以上の磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作は、トラックの進行する方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返される。
【0030】
次に、上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置について説明する。
【0031】
図24は上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置900の構成を示す図である。
【0032】
同図に示すように、この再生装置900は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0033】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=3)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0034】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3とを備える。
【0035】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0036】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0037】
信号分離部230は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う同期信号検出器231と、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算及び信号分離演算を行うことによって、複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってそれぞれ再生された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する信号分離処理部236とを備える。
【0038】
マルチトラック復調部240は、信号分離処理部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いてトラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。
【0039】
復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0040】
図25は、この再生装置900のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置900では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS901)。
【0041】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS902)。
【0042】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出を行う(ステップS903)。
【0043】
次に、信号分離処理部236は、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求めた後(ステップS904)、このチャネル行列を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する(ステップS905)。
【0044】
この後は、トラックごとの再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS906)、復元部260にてトラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS907)。
【0045】
ところで同方式を採用する場合における、より安定した再生信号を得るための技術的課題としては、例えば、再生時における、信号分離処理の安定化がある。
【0046】
すなわち、信号処理の一単位を複数トラックとして記録した記録メディアを再生する場合、外乱やメディアノイズによって、再生信号の品質が劣化するおそれがある。これはデータ部分もプリアンブル部分も同様であり、したがって信号分離処理を行う際に用いられる入力再生信号もまた同様に、品質が劣化するおそれがある。
【0047】
信号分離処理における品質の劣化の具体的な要因には、例えば、プリアンブル部分において、同期パターンや識別パターンを正しく検出できない場合や、バーストエラー等による一定区間の喪失による分離パターン読み取り誤差の発生、あるいは無信号部分が長く続くことによるビット同期信号のずれ等が挙げられる。
【0048】
本発明は、かかる事情を鑑み、より安定してプリアンブル部分の情報を検出して信号分離処理を行い、高記録密度化を実現することのできるトラックフォーマット、記録媒体、記録装置、再生装置、再生方法、及び記録再生装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0049】
上記の課題を解決するために、本発明のトラックフォーマットは、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックには、データと、このデータを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルとが配置され、前記複数のトラックのうち、一部のトラックのプリアンブルには、前記パターンが前記トラックの進行する方向において複数の位置に配置されていることを特徴とする。
【0050】
このトラックフォーマットによれば、データの再生時に、一部のトラックに配置されている、データを再生する制御のために必要なパターンを、プリアンブルの複数の位置から検出することができるので、バーストエラーなどの原因で、最初のパターンの検出に失敗しても、次のパターンの検出の機会があることによって、より安定した処理を行うことができる。
【0051】
本発明のトラックフォーマットにおいて、前記複数の位置に配置された各パターンは、1以上のトラックに跨って信号を再生することが可能なように再生装置に設けられた再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンとする。
【0052】
また、本発明のトラックフォーマットにおいて、前記複数の位置に配置された各パターンは、1以上のトラックに跨って信号を再生することが可能なように再生装置に設けられた再生ヘッドにより再生された信号に対するゲインを制御するためのゲイン制御パターンとしてもよい。
【0053】
本発明のトラックフォーマットにおいて、前記複数の位置に配置された各パターンは、1以上のトラックに跨って信号を再生することが可能なように再生装置に設けられた再生ヘッドにより再生された信号に対するゲインを制御するためのゲイン制御パターンであってもよい。
【0054】
本発明のトラックフォーマットにおいて、前記複数の位置に配置された各パターンは、個々の前記トラックを識別するための識別パターンでもよい。
【0055】
本発明のトラックフォーマットにおいて、前記複数の位置に配置された各識別パターンは、互いに区別可能なように異なるパターンからなるものとしてもよい。これにより、例えば、それぞれの識別パターンの後方に配置された複数の別の種類のパターンの位置を識別パターンを基準に推定する場合に、それらの別パターンの位置を個別に推定することができる。
【0056】
本発明のトラックフォーマットにおいて、前記複数の位置に配置された各パターンは、前記再生ヘッドにより同時に再生されないようにトラックの進行する方向及びトラックの幅の方向に離れて配置されていることによって、良好に信号処理を行うことができる。
【0057】
本発明のトラックフォーマットにおいて、前記ユニットの両側にガードバンドが配置され、前記プリアンブルは、1以上のトラックに跨って信号を再生することが可能なように再生装置に設けられた再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを処理するために必要なパターンが配置された第1の区間と、前記分離パターンが配置された第2の区間とを有し、かつ、前記分離パターンを処理するために必要なパターンは、前記ガードバンドにおける前記第2の区間に対応する位置にも配置されていることとしてもよい。再生装置は、ガードバンドに配置されたパターンを検出することによって、ガードバンドを含む各トラックのトラック幅方向での位置情報を得ることができるので、再生ヘッドアレイのトラック幅方向での位置決め制御をより良好に行うことが可能になる。
【0058】
本発明のトラックフォーマットにおいて、前記分離パターンを処理するために必要なパターンは、前記再生ヘッドにより再生された信号に対するゲインを制御するためのゲイン制御パターンであってもよい。また、前記分離パターンを処理するために必要なパターンは、個々の前記トラックを識別するための識別パターンであってもよい。
【0059】
さらに、本発明のトラックフォーマットにおいて、前記複数の位置に配置された各パターンは、ビット同期処理に用いることが可能なパターンとしてもよい。ビット同期に用いられるパターンを有する部分は多ければ多いほどビット同期処理を安定させることができるので、各パターンをビット同期処理に用いることが可能なパターンとすることで、トラックごとにビット同期処理に用いられるパターンを有する部分を増やすことができる。
【0060】
本発明の別の観点に基づく記録媒体は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックには、データと、このデータを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックのうち、一部のトラックのプリアンブルには、前記パターンが前記トラックの進行する方向において複数の位置に記録されていることを特徴とする。
【0061】
この記録媒体によれば、データの再生時に、一部のトラックに配置されている、データを再生する制御のために必要なパターンを、プリアンブルの複数の位置から検出することができるので、バーストエラーなどの原因で、最初のパターンの検出に失敗しても、次のパターンの検出の機会があることによって、より安定した処理を行うことができる。
【0062】
本発明の別の観点に基づく記録装置は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する記録装置であって、前記トラックごとに記録すべきデータを符号化するマルチトラック記録符号化部と、前記マルチトラック記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データの符号列にそれぞれ、前記データを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルを付加し、このとき前記複数のトラックのうちの少なくとも一部のトラックには、前記トラックの進行する方向において複数の位置に前記パターンを配置したプリアンブルを付加するマルチトラックプリアンブル付加部と、前記マルチトラックプリアンブル付加部によって前記プリアンブルが付加された前記トラックごとのデータを記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するマルチトラック記録部とを具備する。
【0063】
この記録装置によって、本発明のトラックフォーマットで符号列を記録媒体に記録することができる。
【0064】
本発明の別の観点に基づく再生装置は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックには、データと、このデータを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックのうち、一部のトラックのプリアンブルには、前記パターンが前記トラックの進行する方向において複数の位置に記録された記録媒体を再生する再生装置であって、1以上のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドと、前記トラックごとの前記プリアンブルに配置された少なくとも1つの前記パターンを用いて、前記再生ヘッドにより再生された信号から前記データを再生するための処理を行うためのプリアンブル処理制御部を具備する。
【0065】
この発明の再生装置によれば、一部のトラックに配置されている、データを再生する制御のために必要なパターンを、プリアンブルの複数の位置から検出することによって、バーストエラーなどの原因で、最初のパターンの検出に失敗しても、次のパターンの検出の機会があることによって、より安定した処理を行うことができる。
【0066】
本発明の再生装置において、前記プリアンブルに配置された複数のパターンは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンであり、前記分離パターンを用いて、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部をさらに有し、前記プリアンブル処理制御部は、前記再生ヘッドの再生信号における前記複数の分離パターンの位置を推定し、この分離パターンの再生信号をそのまま使用するか、所定の値に置き換えて使用するかを判定して、この情報を前記チャネル推定演算部に出力することとしてもよい。
【0067】
この構成を採用することによって、分離パターンに対する処理を安定して行うことが可能になり、チャネル推定演算を良好に行うことができる。例えば、バーストエラーなどの連続的なエラーが1つの分離パターン部分に発生しても、別の分離パターンの再生信号を用いてチャネル推定演算を行うことによって、結果的に良好なチャネル推定演算結果が得られる。
【0068】
本発明の再生装置は、前記チャネル推定演算部により得られたチャネル行列を用いて、前記再生ヘッドにより再生された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部をさらに具備するものであってよい。
【0069】
本発明の再生装置において、前記プリアンブル処理制御部は、トラックに応じて、前記再生ヘッドの再生信号における前記分離パターンの位置を推定することとしてもよい。
【0070】
本発明の再生装置において、前記プリアンブルには前記トラックを識別するための識別パターンが含まれており、前記識別パターンを検出して前記トラックを識別し、この結果を前記プリアンブル処理制御部に出力する識別情報検出部をさらに具備することとしてもよい。これにより、トラックを容易にかつ精度良く識別することができ、チャネル推定演算を良好に行うことができる。
【0071】
本発明の再生装置において、前記パターンは、ビット同期処理に用いることが可能なパターンからなり、前記パターンを用いてビット同期処理を行う手段をさらに具備することとしてもよい。これにより、トラックごとにビット同期処理に用いられるパターンを有する部分を増やすことができ、ビット同期処理を安定させることができる。
【0072】
本発明の別の観点に基づく再生方法は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックには、データと、このデータを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックのうち、一部のトラックのプリアンブルには、前記パターンが前記トラックの進行する方向での複数の位置に離間して記録された記録媒体を再生する方法であって、前記プリアンブルに配置された複数の前記パターンの少なくとも1つを用いて、1以上のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドにより再生された信号から前記データを再生するための処理を行うことを特徴とする。
【0073】
この発明の再生方法によれば、一部のトラックに配置されている、データを再生する制御のために必要なパターンを、プリアンブルの複数の位置から検出することによって、バーストエラーなどの原因で、最初のパターンの検出に失敗しても、次のパターンの検出の機会があることによって、より安定した処理を行うことができる。
【0074】
本発明の別の観点に基づく記録再生装置は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録媒体に記録する記録装置と、前記記録媒体からデータを再生する再生装置とを有する記録再生装置であって、前記記録装置は、前記トラックごとに記録すべきデータを符号化するマルチトラック記録符号化部と、前記マルチトラック記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データの符号列にそれぞれ、前記データを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルを付加し、このとき前記複数のトラックのうちの少なくとも一部のトラックには、前記トラックの進行する方向において複数の位置に前記パターンを配置したプリアンブルを付加するマルチトラックプリアンブル付加部と、前記マルチトラックプリアンブル付加部によって前記プリアンブルが付加された前記トラックごとのデータを記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するマルチトラック記録部とを具備し、前記再生装置は、1以上のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドと、前記トラックごとの前記プリアンブルに配置された少なくとも1つの前記パターンを用いて、前記再生ヘッドにより再生された信号から前記データを再生するための処理を行うためのプリアンブル処理制御部とを具備する。
【0075】
この発明の記録再生装置によれば、一部のトラックに配置されている、データを再生する制御のために必要なパターンを、プリアンブルの複数の位置から検出することによって、バーストエラーなどの原因で、最初のパターンの検出に失敗しても、次のパターンの検出の機会があることによって、より安定した処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0076】
以上説明したように、本発明によれば、より安定してプリアンブル部分の情報を検出して信号分離処理を行うことができ、高記録密度化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0078】
(第1の実施形態)
【0079】
本発明の第1の実施形態として、マルチヘッドを用いた磁気記録再生方式における記録装置と再生装置について説明する。この実施形態の記録装置は、テープ状の磁気記録メディアにトラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録する装置であり、再生装置は、その磁気記録メディアからトラックごとに再生位置を揃えることなく信号を再生する装置である。ここで、記録ヘッドの数をM、再生ヘッドの数をNとし、この実施形態では、M=4、N=4とする。
【0080】
図1は、本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100の構成を示す図である。
【0081】
同図に示すように、この記録装置100は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0082】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4の数(M=4)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0083】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3,121−4で構成される。
【0084】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、ユニット単位のデータ再生の制御のために必要なプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3,131−4で構成される。
【0085】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3,141−4と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3,144−4と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3,147−4とで構成される。
【0086】
記録ヘッドアレイ150は、磁気記録メディア2にデータを含むトラックを記録するために用いられるM個の記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4を有している。
【0087】
図2は、この記録装置100によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4の数(M=4)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS101)。
【0088】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3,121−4にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS102)。
【0089】
次に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3,131−4により、記録符号化部121−1,121−2,121−3,121−4によって符号化されたそれぞれの記録データにデータ再生の制御のために必要なプリアンブルが付加され、記録符号列が得られる(ステップS103)。
【0090】
ここで、データを再生する制御のために必要なプリアンブルのパターンとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などのための同期検出に用いられる同期パターン、トラックを識別するための識別パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。1ユニット分の複数のトラックとは、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの先頭位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3,121−4で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0091】
トラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3,141−4にてそれぞれ所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3,144−4にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。記録補償処理が施されたトラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3,147−4において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS104)。
【0092】
次に、本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
図3は第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置200の構成を示す図である。
【0093】
同図に示すように、再生装置200は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0094】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=4)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0095】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3,221−4と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3,221−4の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3,224−4と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3,224−4の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3,225−4とを備える。
【0096】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3,225−4の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0097】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3,224−4は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3,225−4の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3,225−4のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3,224−4の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0098】
信号分離処理部230は、同期信号検出部231、識別情報検出部232、再生信号ゲイン制御処理部233、プリアンブル処理制御部238、チャネル推定演算部234、再生位置制御処理部235、及び信号分離演算部236を有している。
【0099】
同期信号検出部231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3,225−4より出力された再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4ごとの再生信号からプリアンブル内の同期パターンを検出する。
【0100】
識別情報検出部232は、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号内の識別パターンの位置を特定し、この識別パターンを検出してトラックの識別情報を得る。
【0101】
再生信号ゲイン制御処理部233は、同期信号検出部231を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出して、このゲイン制御パターンの信号をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号のレベルを制御する。
【0102】
プリアンブル処理制御部238は、例えば識別情報検出部232によって得られた識別情報などをもとに、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号ごとに、分離パターンの位置を推定し、その分離パターンの再生信号をそのまま使用するか、所定の値に置き換えて使用するかを判定して、この情報をチャネル推定演算部234に出力する。
【0103】
チャネル推定演算部234は、同期信号検出器231により検出された同期パターンと識別情報検出部232によって得られた識別情報とをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号のプリアンブルに含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、その分離パターン部分の再生信号と、プリアンブル処理制御部238からの情報を用いて、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算を行う。
【0104】
再生位置制御処理部235は、同期信号検出部231により検出された同期パターンをもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。
【0105】
信号分離演算部236は、再生位置制御処理部235により再生位置が揃えられた各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号から、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列を用いて、所定の演算処理によって、トラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0106】
なお、信号分離処理部230は、処理を行うために必要な情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
【0107】
マルチトラック復調部240は、図4に示すように、信号分離演算部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3,241−4と、等化器241−1,241−2,241−3,241−4の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3,242−4と、PLL242−1,242−2,242−3,242−4で生成されたビット同期信号を用いて各トラックの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3,243−4と、検出器243−1,243−2,243−3,243−4の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3,244−4と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3,244−4により検出された同期パターンをもとにデータの先頭位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3,245−4とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0108】
図3に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3,245−4より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0109】
図5は、この再生装置200のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
この再生装置200では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号を再生する(ステップS201)。
【0110】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3,224−4にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3,221−4の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3,224−4の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3,225−4にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS202)。
【0111】
次に、同期信号検出器231にて、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3,225−4より出力された、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4ごとの再生信号から同期パターンがそれぞれ検出される(ステップS203)。
【0112】
次に、識別情報検出部232にて、同期信号検出部231により検出された同期パターンをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターンを検出し、識別情報を得る(ステップS204)。
【0113】
続いて、再生信号ゲイン制御処理部233にて、同期信号検出器231を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出し、このゲイン制御パターンをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号のレベルを個別に制御する(ステップS205)。
【0114】
次に、プリアンブル処理制御部238にて、例えば識別情報検出部232によって得られた識別情報などをもとに、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号ごとに、分離パターンの位置を推定し、その分離パターンの再生信号をそのまま使用するか所定の値に置き換えて使用するかを判定し、この情報をチャネル推定演算部234に出力する(ステップS206)。
【0115】
次に、チャネル推定演算部234にて、同期信号検出器231により検出された同期パターンと識別情報検出部232によって得られた識別情報とをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号のプリアンブルに含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、その分離パターン部分の再生信号と、プリアンブル処理制御部238からの情報を用いて、所定のチャネル推定演算によりチャネル行列を求める(ステップS207)。このチャネル行列は、1ユニット内の各トラック#1,#2,#3,#4に対する個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4のトラック幅方向での位置情報に相当するもので、言い換えると、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4がそれぞれ、ユニット内のどのトラックとどんな割合で位置的に重なるかを示した情報である。
【0116】
次に、再生位置制御処理部235にて、同期信号検出部231により検出された同期パターンをもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う(ステップS208)。
【0117】
次に、信号分離演算部236にて、再生位置制御処理部235によって再生位置が揃えられた各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号から、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列を用いて、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS209)。
【0118】
この後は、トラックごとの再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS210)、復元部260にて各トラックのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS211)。
【0119】
図6は、上記の記録装置100によって記録が行われた磁気記録メディア2上のトラックフォーマットの概念図である。
【0120】
トラック#1、トラック#2、トラック#3、トラック#4はそれぞれ、記録装置100のM(M=4)個の記録ヘッドによって磁気記録メディア2に記録されたトラックである。トラック#1、トラック#2、トラック#3、トラック#4にはそれぞれ、プリアンブル21とデータ22が記録されている。プリアンブル21は、前述したように、データ22を再生するために必要な情報として、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、トラックを識別するための識別パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンを含むものである。
【0121】
ここでM個のトラック#1、トラック#2、トラック#3、トラック#4それぞれの、M個のプリアンブル21とM個のデータ22とのまとまりが、データを再生するための信号処理の一単位としてのユニット51である。
【0122】
磁気記録メディア2には、このようなユニット51がS個、互いに平行に配置され、隣接するユニット51間には、ガードバンド52と呼ばれる、何も記録されていない領域が設けられている。このガードバンド52の目的は、隣のユニット51のトラックが再生されないようにすることにある。
【0123】
ところで、識別パターンとして符号化される識別情報は、例えば、ユニットを識別する例えば"1"から"s"までの番号とユニット内のトラックを識別する例えば"1"から"4"までの番号との組み合わせによって表現されている。例えば、"1_2"は、1番目のユニットの2番目のトラックであることを示す。
【0124】
また、上記のように、ユニットに識別番号を与えるのではなく、ユニットを、例えばシステムフレームの単位としたり、エラー訂正フォーマットの単位としたりして、識別をするようにしてもよい。
【0125】
図7は図6のトラックフォーマットにおけるプリアンブル21の構成を示す図である。
第1のプリアンブル23は、ゲイン制御パターン41−1,41−2,41−3,41−4と同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4と識別パターン43−1,43−2,43−3,43−4で構成されている。第2のプリアンブル24は分離パターン44−1,44−2,44−3,44−4,44−5,44−6で構成されている。
【0126】
トラック#1上では先頭側より、ゲイン制御パターン41−1,同期パターン42−1,識別パターン43−1、分離パターン44−1,44−5の順に配置され、トラック#2上では先頭側より、ゲイン制御パターン41−2,同期パターン42−2,識別パターン43−2、分離パターン44−2の順に配置され、トラック#3上では先頭側より、ゲイン制御パターン41−3,同期パターン42−3,識別パターン43−3、分離パターン44−3の順に配置され、トラック#4上では先頭側より、ゲイン制御パターン41−4,同期パターン42−4,識別パターン43−4、分離パターン44−6,44−4の順に配置される。そして第2のプリアンブル24の後にはデータ22が配置される。
【0127】
データ22は、記録時に図1の記録装置100の記録符号化部121−1,121−2,121−3,121−4で作成された記録符号列である。第1のプリアンブル23及び第2のプリアンブル24は、プリアンブル付加部131−1,131−2,131−3,131−4によって記録符号列に対して付加されたものである。
【0128】
図7の例では、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の幅はトラック幅の1.5倍とする。すなわち、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の幅は、記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4のヘッド幅の例えば1.5倍とされ、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4はそれぞれ複数のトラックから信号を再生できるものとする。すなわち、再生ヘッドR−1は、トラック#1とトラック#2とに跨って信号を再生し、再生ヘッドR−2は、3本のトラック#1,#2,#3に跨って信号を再生し、再生ヘッドR−3は3本のトラック#2,#3,#4に跨って信号を再生し、再生ヘッドR−4はトラック#3とトラック#4とに跨って信号を再生する。
【0129】
第1のプリアンブル23において、各トラック#1,#2,#3,#4のゲイン制御パターン41−1,41−2,41−3,41−4、同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4及び識別パターン43−1,43−2,43−3,43−4は、それぞれがトラックの進行する方向での位置が互いに重ならないように配置されている。すなわち、図7において、トラック#1のゲイン制御パターン41−1、同期パターン42−1及び識別パターン43−1はTa区間に、トラック#2のゲイン制御パターン41−2、同期パターン42−2及び識別パターン43−2はTb区間に、トラック#3のゲイン制御パターン41−3、同期パターン42−3及び識別パターン43−3はTc区間に、トラック#4のゲイン制御パターン41−4、同期パターン42−4及び識別パターン43−4はTd区間にそれぞれ配置されている。そして隣り合うトラックのゲイン制御パターン41−1,41−2,41−3,41−4、同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4、及び識別パターン43−1,43−2,43−3,43−4それぞれの記録区間の間には、マージンのための隙間28が設けられている。
【0130】
再生時に、各トラック#1,#2,#3,#4のゲイン制御パターン41−1,41−2,41−3,41−4は、例えば、図3に示した再生装置200の中のゲイン調整部224−1,224−2,224−3,224−4による再生アンプ221−1,221−2,221−3,221−4のゲイン制御のための学習信号として使用される。また、ゲイン制御パターン41−1,41−2,41−3,41−4は、必要に応じて、同期信号検出器231でのビット同期検出のための学習や、再生信号ゲイン制御処理部233での各再生信号のレベル制御にも用いられる。さらに、ゲイン制御パターン41−1,41−2,41−3,41−4は、必要に応じて、再生位置制御処理部235において各再生信号の再生位置制御のために使用される。
【0131】
また、再生時に、各トラック#1,#2,#3,#4の同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4は、同期信号検出器231にて検出され、例えば、各トラック#1,#2,#3,#4の識別パターン43−1,43−2,43−3,43−4、各トラック#1,#2,#3,#4の分離パターン44−1,44−2,44−3,44−4,44−5,44−6の先頭位置及びデータ22の先頭位置を知るための情報として使用される。また、同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4は、再生位置制御処理部235での各再生信号の再生位置制御のためにも使用される。
【0132】
さらに、再生時に、各トラック#1,#2,#3,#4の識別パターン43−1,43−2,43−3,43−4は、同期信号検出器231にて検出された同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4を用いて識別情報検出部232によって検出され、トラックの識別情報を得るために使用されるとともに、チャネル推定演算部234におけるチャネル推定演算のために使用される。また、その識別情報は、再生位置制御処理部235における再生位置制御のために使用される。さらに、その識別情報は、プリアンブル処理制御部238での分離パターン部分の再生信号の処理のために使用される。
【0133】
このトラックフォーマットでは、第1のプリアンブル23において、各トラック#1,#2,#3,#4のゲイン制御パターン41−1,41−2,41−3,41−4、同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4及び識別パターン43−1,43−2,43−3,43−4のそれぞれが、互いにトラックの進行する方向での位置が重ならないように配置されていることから、各トラック#1,#2,#3,#4のチャネルクロック位置が合っていない場合でも、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4が複数のトラックを跨いで信号を再生するとき、各トラックの記録信号による打ち消し合いによる再生信号の出力低下が発生しない。これにより、ゲイン制御パターン41−1,41−2,41−3,41−4、同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4、識別パターン43−1,43−2,43−3,43−4を用いた上記の制御を良好に行うことができる。
【0134】
一方、第2のプリアンブル24において、各トラック#1,#2,#3,#4の分離パターン44−1,44−2,44−3,44−4,44−5,44−6は、再生時に、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号からトラック#1,#2,#3,#4ごとの再生信号を分離するための演算に必要なチャネル行列を、チャネル推定演算部234にて求めるために使用されるパターンである。
【0135】
図7において、トラック#1の分離パターン44−1はT1区間に、トラック#2の分離パターン44−2はT2区間に、トラック#3の分離パターン44−3はT3区間に、トラック#4の分離パターン44−4はT4区間に設けられ、分離パターン44−5は、トラック#4の分離パターン44−4と同じT4区間に、分離パターン44−6は、トラック#1の分離パターン44−1と同じT1区間に設けられている。各々の区間の間には、マージンのための所定の時間分の隙間29が設けられている。
【0136】
分離パターンは、最小記録波長と同等か、あるいはそれ以上の所定の記録波長で記録されたものである。
【0137】
第2のプリアンブル24は、チャネル推定演算部234にて、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4によって得られた1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離するためのチャネル推定情報を演算するために使用される。
【0138】
なお、分離パターン44−1,44−2,44−3,44−4,44−5,44−6は、一つの再生ヘッドによって同時に再生されないように配置されている。すなわち、同じ区間に配置された各分離パターンは、一つの再生ヘッドによって再生されないように、互いにトラックの進行する方向とトラックの幅方向のそれぞれにおいて離して配置されている。
【0139】
次に、図3の再生装置200における主要なブロックでの処理の詳細を説明する。
【0140】
(識別情報検出部232について)
識別情報検出部232では、同期信号検出部231によって検出された同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4をもとに、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4ごとの再生信号における識別パターン43−1,43−2,43−3,43−4の先頭位置を特定し、その識別パターン43−1,43−2,43−3,43−4を検出してトラックの識別情報を出力する。
【0141】
一つの再生ヘッドが複数のトラックを跨ぐ場合、同期信号検出部231によって、その再生ヘッドにより得られた再生信号からそれぞれのトラックの同期パターンが異なる区間に検出される。識別情報検出部232は、それぞれの同期パターンを用いて、各トラックの識別パターンの先頭位置を特定して、それぞれの識別パターンを検出して、それぞれのトラックの識別情報を得る。
【0142】
また、図10に示すトラックフォーマットのように、一つのトラックに複数の識別パターンが離れて記録されている場合には、識別情報検出部232によって、それぞれの識別パターンが検出され、それぞれ同一のトラック識別情報が得られる。これにより、どちらか一方の識別パターンを検出することができれば、そのトラックの識別情報を得ることができ、処理の安定化を図ることができる。
【0143】
(再生信号ゲイン制御処理部233について)
再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4ごとのゲイン制御パターン41−1,41−2,41−3,41−4の再生信号をもとに、例えば、次のようにして、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4ごとの再生信号のゲインを演算し、それぞれの再生信号のレベルを制御する。
【0144】
例えば、再生信号ゲイン制御処理部233は、図7において、再生ヘッドR−1によってトラック#1とトラック#2よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターン41−1とゲイン制御パターン41−2の信号を加算する。同様に、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−2によってトラック#1、トラック#2、及びトラック#3から再生されたゲイン制御パターン41−1とゲイン制御パターン41−2とゲイン制御パターン41−3の信号を加算する。同様に、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−3によってトラック#2、トラック#3、及びトラック#4より再生されたゲイン制御パターン41−2とゲイン制御パターン41−3とゲイン制御パターン41−4の信号を加算する。同様に、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−4によってトラック#3とトラック#4より再生されたゲイン制御パターン41−3とゲイン制御パターン41−4の信号を加算する。
【0145】
ゲイン制御パターンの再生信号の加算は、例えば、それぞれのトラックにおけるゲイン制御パターンの再生信号のピーク値を検出し、その平均値を求めることなどによって行われる。なお、この演算については、上記の方式に限らず、各再生信号の相関関係が成立つものであれば、別の方式でもかまわない。
【0146】
再生信号ゲイン制御処理部233は、以上のようにして得られた3つの演算結果の中から最大のものを選び出し、これを全ての再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4に対する基準出力とする。そして再生信号ゲイン制御処理部233は、入力された再生ヘッドごとの再生信号の値に1/(基準出力)を掛け合わせた値を制御結果として出力する。
【0147】
なお、基準出力は、チャネル推定演算部234におけるチャネル推定演算でも用いることができるし、信号分離演算部236においても用いることができる。
【0148】
(プリアンブル処理制御部238とチャネル推定演算部234について)
プリアンブル処理制御部238は、例えば、識別情報検出部232によって得られた識別情報などをもとに、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号ごとに、分離パターンの位置を推定し、その分離パターンの再生信号をそのまま使用するか、所定の値に置き換えて使用するかを判定して、この情報をチャネル推定演算部234に出力する。
【0149】
チャネル推定演算部234は、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232により検出されたトラックの識別情報をもとに、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4ごとの再生信号における分離パターン部分の再生信号の先頭位置を特定し、プリアンブル処理制御部238より与えられた情報をもとに、この再生信号をそのまま使用するか、他の所定の値に置き換えてチャネル推定演算を行い、信号分離処理のために必要なチャネル行列を生成する。チャネル推定演算部234は、再生信号をそのまま用いる場合、例えば、再生信号のピーク値の平均値、あるいは、再生信号の加算値を求めるなど、各トラック間で相関関係が成立するような値を求め、他の所定の値に置き換える場合は、例えば"0"や、ゲインに相当する所定の値に置き換える。
【0150】
このチャネル推定情報は、複数のトラックをまとめた一単位であるユニットにおける、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4のトラック幅方向での位置情報に相当する。すなわち、チャネル推定情報は、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4がそれぞれ、ユニット内のどのトラックとどんな割合で位置的に重なるかを示した情報である。
【0151】
なお、再生信号の値を所定の値に置き換える処理をチャネル推定演算部234で行うのではなく、プリアンブル処理制御部238で行い、その結果をチャネル推定演算部234に出力するようにしてもよい。
【0152】
次に、図7のトラックフォーマットを用いた場合のチャネル推定演算処理を詳細に説明する。
【0153】
図7の例では、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4のヘッド幅は記録トラック幅の1.5倍とされており、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4でそれぞれ複数のトラックの信号の再生が可能とされている。すなわち、再生ヘッドR−1は、トラック#1とトラック#2とに跨って信号を再生し、再生ヘッドR−2は、3本のトラック#1,#2,#3に跨って信号を再生し、再生ヘッドR−3は、3本のトラック#2,#3,#4に跨って信号を再生し、再生ヘッドR−4は、トラック#3とトラック#4とに跨って信号を再生する。
【0154】
図8は図7のトラックフォーマットに対する再生信号を示す図である。ここでは、オフトラックが無い場合、つまり再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4それぞれの中心がトラック#1,#2,#3,#4それぞれの中心と一致している場合での、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号を示している。なお、図8において、再生信号のトラック幅方向の大きさは出力の大きさに対応するものとする。また、簡単のために、記録時及び再生時の位相のずれは無いものとする。
【0155】
図8の例では、第1のプリアンブル23としてトラックごとに20データ分が割り当てられ、第2のプリアンブル(1つの分離パターン)24としてトラックごとに40データ分が割り当てられ、これらの間には10データ分の隙間が与えられている。このとき、チャネル推定演算部234において利用される再生信号部分は、トラック#1の分離パターン区間(T1区間)のうちの20データ、トラック#2の分離パターン区間(T2区間)のうちの20データ、トラック#3の分離パターン区間(T3区間)のうちの20データ、トラック#4の分離パターン区間(T4区間)のうちの20データである。
【0156】
ここで、再生ヘッドR−1によって第2のプリアンブル24の区間で得られる再生信号は、トラック#1のT1区間の分離パターン44−1からの再生信号1−1と、トラック#2のT2区間の分離パターン44−2からの出力の小さい再生信号1−2と、トラック#3のT3区間からの本来"0"の再生信号1−3と、トラック#1のT4区間の分離パターン44−5からの再生信号1−4である。
【0157】
再生ヘッドR−2によって第2のプリアンブル24の区間で得られる再生信号は、トラック#1のT1区間の分離パターン44−1からの出力の小さい再生信号2−1と、トラック#2のT2区間の分離パターン44−2からの再生信号2−2と、トラック#3のT3区間の分離パターン44−3からの出力の小さい再生信号2−3と、トラック#1のT4区間の分離パターン44−5からの出力の小さい再生信号2−4である。
【0158】
再生ヘッドR−3によって第2のプリアンブル24の区間で得られる再生信号は、トラック#4のT1区間の分離パターン44−6からの出力の小さい再生信号3−1と、トラック#2のT2区間の分離パターン44−2からの出力の小さい再生信号3−2と、トラック#3のT3区間の分離パターン44−3からの再生信号3−3と、トラック#4のT4区間の分離パターン44−4からの出力の小さい再生信号3−4である。
【0159】
再生ヘッドR−4によって第2のプリアンブル24の区間で得られる再生信号は、トラック#4のT1区間の分離パターン44−6からの再生信号4−1と、トラック#2のT2区間からの本来"0"の再生信号4−2と、トラック#3のT3区間の分離パターン44−3からの出力の小さい再生信号4−3と、トラック#4のT4区間の分離パターン44−4からの再生信号4−4である。
【0160】
チャネル推定演算部234は、プリアンブル処理制御部238より与えられた情報をもとに次のようにチャネル推定演算を行う。
【0161】
まず、チャネル推定演算部234は、再生ヘッドR−1の再生信号に対して処理を行う。ここで、再生ヘッドR−1のT1区間の再生信号については、チャネル推定演算のための処理が2回を行われる。すなわち、1回目は、T1区間の再生信号1−1をそのまま使用し、2回目はそのT1区間の再生信号1−1を他の所定の値に置き換える。
【0162】
また、チャネル推定演算部234は、再生ヘッドR−1のT2区間の出力の小さい再生信号1−2については、これをそのまま使用してチャネル推定演算のための処理を行う。
【0163】
また、チャネル推定演算部234は、再生ヘッドR−1のT3区間の再生信号1−3は、本来分離パターン部分の再生信号が得られない位置からの再生信号であることから、他の所定の値に置き換える。
【0164】
また、チャネル推定演算部234は、再生ヘッドR−1のT4区間の再生信号1−4については、チャネル推定演算のための処理を2回を行う。すなわち、1回目は、T4区間の再生信号1−4を他の所定の値に置き換え、2回目はそのT4区間の再生信号1−4をそのまま使用する。
【0165】
次に、チャネル推定演算部234は、T1区間の1回目の処理で得た再生信号1−1とT4区間の2回目の処理で得た再生信号1−4とを合わせた結果を、再生ヘッドR−1のT1区間の再生信号とする。
【0166】
また、チャネル推定演算部234は、T1区間の2回目の処理で得た再生信号1−1とT4区間の1回目の処理で得た再生信号1−4とを合わせた結果を、再生ヘッドR−1のT4区間の再生信号の処理結果とする。置き換える所定の値がゼロである場合、再生ヘッドR−1のT4区間の再生信号の処理結果は"0"となる。
【0167】
続いて、チャネル推定演算部234は、再生ヘッドR−2の再生信号に対して処理を行う。ここで、再生ヘッドR−2のT1区間の再生信号については、チャネル推定演算のための処理が2回を行われる。すなわち、1回目は、T1区間の再生信号2−1をそのまま使用し、2回目はそのT1区間の再生信号2−1を他の所定の値に置き換える。
【0168】
また、チャネル推定演算部234は、再生ヘッドR−1のT2区間の再生信号2−2については、これをそのまま使用してチャネル推定演算のための処理を行う。
【0169】
また、チャネル推定演算部234は、再生ヘッドR−1のT3区間の再生信号2−3についても、これをそのまま使用してチャネル推定演算のための処理を行う。
【0170】
また、チャネル推定演算部234は、再生ヘッドR−1のT4区間の再生信号2−4については、チャネル推定演算のための処理を2回を行う。すなわち、1回目は、T4区間の再生信号2−4を他の所定の値に置き換え、2回目はそのT4区間の再生信号2−4をそのまま使用する。
【0171】
次に、チャネル推定演算部234は、T1区間の1回目の処理で得た再生信号2−1とT4区間の2回目の処理で得た再生信号2−4とを合わせた結果を、再生ヘッドR−2のT1区間の再生信号とする。
【0172】
また、チャネル推定演算部234は、T1区間の2回目の処理で得た再生信号2−1とT4区間の1回目の処理で得た再生信号2−4とを合わせた結果を、再生ヘッドR−2のT4区間の再生信号の処理結果とする。
【0173】
なお、2つの再生信号を合わせる方法としては、例えば、再生出力の平均をとるほか、再生出力が大きい方の再生信号を有効とする方法などが考えられる。
【0174】
以下、再生ヘッドR−3によって再生された信号、及び再生ヘッドR−4によって再生された信号についても同様に処理を行う。
【0175】
以上により、分離パターンに対する処理を安定して行うことが可能になり、チャネル推定演算を良好に行うことができる。例えば、バーストエラーなどが第2のプリアンブル24の区間に発生しても、そのエラーが、例えば図7のトラックフォーマットのT1区間あるいはT4区間のいずれか一方にのみ発生した場合には、そのエラー部分の再生信号を取り除いてチャネル推定演算が行われることとなるので、チャネル推定演算においてエラー部分の再生信号による影響をキャンセルすることができる。この結果、例えば、図9に示されるような、4行4列の高品質なチャネル行列Hが得られる。
【0176】
また、分離パターンを、信号分離のためのビット同期処理に利用する場合には、パターンを有する部分が多いほど安定にビット同期処理を行うことができるので、1本のトラックの第2のプリアンブル24の区間内の複数の位置に分離パターンを離して配置したことで、ビット同期をより安定に行うことが可能となり、分離処理をより良好に行うことができる。
【0177】
以上は、分離パターンをトラックの複数の位置に配置する場合について説明したが、第1のプリアンブル23中の各パターンをトラックの複数の位置に配置するようにしてもよい。以下に、この場合を説明する。
【0178】
図10は、トラックフォーマットの変形例である。このトラックフォーマットは、図7のトラックフォーマットに対して、トラック#1の第1のプリアンブル23の区間に、ゲイン制御パターン41−5、同期パターン42−5、識別パターン43−5の連続を、Td区間に追加したものである。これらのゲイン制御パターン41−5、同期パターン42−5、識別パターン43−5の連続は、同じトラック#1のTa区間に配置されたパターンに対して、一つの再生ヘッドによって同時に再生されず、かつ、他のトラック#2,#3,#4のパターンに対しても一つの再生ヘッドによって同時に再生されることがない位置に配置されている。
【0179】
このように、トラックの複数の位置に、ゲイン制御パターン、同期パターン、識別パターンの連続を配置することによって、そのトラックに対する信号の再生時にパターンの検出を2箇所で行うことが可能になる。これにより、例えば、バーストエラーなどの原因で、最初の場所でのゲイン制御パターン、同期パターン、識別パターンの検出に失敗しても、次の場所でパターンの検出を試みることができ、この結果、より安定した処理を行うことができる。また、ビット同期処理においては、ビット同期を行うことのできるパターンを有する部分が多いほど、ビット同期処理を安定させることができるので、トラックの複数の位置にゲイン制御パターンを配置したことで、ビット同期をより安定して行うことができる。
【0180】
ところで、識別パターンと分離パターンとの関係に着目した場合、図10のトラックフォーマットにおいては、トラック#1の第1のプリアンブル23の区間内の2箇所に識別パターン43−1,43−5が配置され、第2のプリアンブル24の区間内の2箇所に分離パターン44−1,44−5が配置されている。ここで、識別パターン43−1と識別パターン43−5に異なるパターンを与え、識別情報検出部232にてそれぞれの識別パターン43−1,43−5の区別ができるようにしておくとともに、識別パターン43−1の位置を基準とする分離パターン44−1の位置及び長さの情報、及び識別パターン43−5の位置を基準とする分離パターン44−5の位置及び長さの情報をプリアンブル処理制御部238に与えておくことで、プリアンブル処理制御部238は、識別情報検出部232からの識別パターン43−1,43−5の検出結果をもとに、各分離パターン44−1,44−5の位置の推定を精度良く行うことができる。
【0181】
図11は、さらに別のトラックフォーマットの変形例を示す図である。
【0182】
このトラックフォーマットでは、1ユニット分のトラック数を5としている。ここで、トラック#1の分離パターン44−1と分離パターン44−6の関係に着目して説明すると、分離パターン44−1及び分離パターン44−6の再生信号に対しては、上記のように、それぞれ2回の処理が行われ、それぞれの処理で再生信号そのものと、所定の値に置き換えられた出力が得られる。そして分離パターン44−1及び分離パターン44−6のそのままの各再生信号を合わせたものが再生ヘッドR−1のT1区間の再生信号として、また、分離パターン44−1及び分離パターン44−6の各再生信号を所定の値に置き換えたものを合わせたものが再生ヘッドR−1のT4区間の再生信号として、チャネル推定演算に用いられる。以下、分離パターン44−2と分離パターン44−7との関係、分離パターン44−4と分離パターン44−8との関係、分離パターン44−5と分離パターン44−9の関係においても同様である。
【0183】
1ユニット分のトラック列の両側にはガードバンド52,52が設けられている。それぞれのガードバンド52,52には、トラック上の第1のプリアンブル23の区間と第2のプリアンブル24の区間のそれぞれに対応して、ゲイン制御パターン41−6,41−7,41−8,41−9、同期パターン42−6,42−7,42−8,42−9、識別パターン43−6,43−7,43−8,43−9が配置されている。すなわち、一方のガードバンド52には、第1のプリアンブル23の区間に対応して、ゲイン制御パターン41−6、同期パターン42−6、識別パターン43−6が配置され、第2のプリアンブル24の区間に対応してゲイン制御パターン41−8、同期パターン42−8、識別パターン43−8が配置されている。他方のガードバンド52には、第1のプリアンブル23の区間に対応して、ゲイン制御パターン41−7、同期パターン42−7、識別パターン43−7が配置され、第2のプリアンブル24の区間に対応してゲイン制御パターン41−9、同期パターン42−9、識別パターン43−9が配置されている。ガードバンド52,52の、トラックのデータ部22の区間に対応する位置には、何も有意な情報は記録されず、例えば、消去信号などが代わりに記録されている。
【0184】
再生装置200は、ガードバンド52,52に配置されたパターンを検出することによって、ガードバンド52,52を含む各トラックのトラック幅方向での位置情報を得ることができるので、再生ヘッドアレイ210のトラック幅方向での位置決め制御をより良好に行うことが可能になる。
【0185】
このようにガードバンド52,52の、第2のプリアンブル24に対応する位置にもゲイン制御パターン、同期パターン、識別パターンを配置させた場合、分離パターンの処理に、ガードバンド52,52のパターンに対する再生信号が干渉しないように、それらのパターンに対する再生信号を所定の値、例えば"0"に置き換えるようにする。これにより、ガードバンド52,52の、第2のプリアンブル24に対応する位置にゲイン制御パターン、同期パターン、識別パターンなどのパターンを配置できるようになり、第1のプリアンブル23の長さを大きくすることなく、個々のガードバンド52,52の多くの位置にパターンを配置することが可能になる。この結果、ガードバンド52,52からのゲイン制御パターン、同期パターン、識別パターンの検出を良好に行うことができる。
【0186】
さらに、このトラックフォーマットでは、T3区間の分離パターン44−3を他の期間のものよりも長くしてある。これは次のような理由による。このトラックフォーマットでは、分離パターン44−1と分離パターン44−6、分離パターン44−2と分離パターン44−7、分離パターン44−4と分離パターン44−8、そして分離パターン44−5と分離パターン44−9の各々の組み合わせにおいて、それぞれの分離パターン部分の再生信号を合わせた値と、所定の値例えば"0"に置き換えた値を得るようにしているが、トラック数の都合から、T3区間の分離パターン44−3と対となる分離パターンを配置するトラックが確保できず、同様な処理を行うことが困難である。このトラックフォーマットでは、他の期間の分離パターンの再生信号の値との均衡をとるために、分離パターン44−3の長さを他の期間の分離パターンよりも大きくすることによって対処している。
【0187】
また、分離パターン44−3の長さは、ゲイン制御パターン、同期パターン、識別パターンなどの固有のパターンに必要な長さを考慮して設定することで、より効率の良いフォーマット構成としながら、分離パターンに対する処理をより安定して行うことができ、良好なチャネル推定演算結果が得られる。
【0188】
図12は、さらに別のトラックフォーマットの変形例を示す図である。
【0189】
このトラックフォーマットでは、1ユニット分のトラック数を5としている。1ユニット分のトラック列の両側にはガードバンド52,52が設けられている。それぞれのガードバンド52,52には、トラック上の第1のプリアンブル23の区間に対応して、ゲイン制御パターン41−6,41−7、同期パターン42−6,42−7、識別パターン43−6,43−7が配置されている。また、各トラックそれぞれの、第2のプリアンブル24の区間の直前にはゲイン制御パターン41−11,41−12,41−13,41−14,41−15が配置されている。
【0190】
信号分離を行うためにはビット同期処理を行う必要があるが、このビット同期処理に用いられるパターンを有する部分は多ければ多いほど、ビット同期処理を安定させることができる。上記のように、ゲイン制御パターン41−11,41−12,41−13,41−14,41−15を第2のプリアンブル24の区間の直前にも追加したことによって、トラックごとにビット同期に用いられるパターンを有する部分を増やすことができる。
【0191】
図13は図7のトラックフォーマットから識別パターンを省いたものである。このように識別パターンがプリアンブルに含まれていなくても、トラックごとの同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4に固有のパターンを採用したり、同期パターン42−1,42−2,42−3,42−4や分離パターン44−1,44−2,44−3,44−4,44−5,44−6などの固有パターンの、トラック上での位置の関係をそれぞれ検出することによって、ユニット内の各々のトラックを識別してもよい。
【0192】
また、第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンと、第2のプリアンブル24に配置されている分離パターンとには、同一のパターンを採用してもかまわない。
【0193】
上記実施形態では、時間軸上で直交する分離パターンを用いたが、本発明は、適用可能な分離パターンに制限はないものである。例えば、周波数軸上で直交するような分離パターン、あるいは、直交符号を用いた分離パターンを用いた場合にも、本発明は適用し得るものである。
【0194】
信号分離演算部236による信号分離処理の演算方法としては、例えば、チャネル行列に対する一般化逆行列を求める方法などが挙げられる。このチャネル行列に対して一般化逆行列を求める方法は、一般に、ゼロ・フォーシング(Zero・Forcing)法と呼ばれる。但し、信号分離処理の方法はこれに限定されるものではなく、例えば、MMSE(Minimum Mean Squared Error)法を用いることもできる。
【0195】
上記の実施形態では、磁気記録メディアにトラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録し、その磁気記録メディアからトラックごとに再生位置を揃えることなく信号を再生する磁気記録再生方式について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録し、その磁気記録メディアから、トラックごとの再生位置を揃えて再生を行う磁気記録再生方式にも同様に適用できる。また、トラックごとに記録位置を揃えて信号を記録し、その磁気記録メディアから、トラックごとの再生位置を揃えることなく再生を行う磁気記録再生方式にも同様に適用できる。
【0196】
(第2の実施形態)
【0197】
次に、本発明の第2の実施形態として、シングルヘッドを用いた磁気記録再生方式を説明する。
【0198】
この実施形態の磁気記録再生方式は、1個、又はユニット当たりのトラック数より少ない個数の記録ヘッド及び再生ヘッドを有し、トラックごとに記録位置を揃えることなく記録されている記録媒体を、トラックごとに再生位置を揃えることなく再生する方式である。
【0199】
図14は、本発明の第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置300の構成を示す図である。
この記録装置300は、シングルヘッドでユニットの記録を行うものである。ここで、一つの記録ヘッドによってユニットの記録を行う所定の回数をMとし、また一つの再生ヘッドによってユニットの再生を行う所定の回数をNとする。
【0200】
同図に示すように、この記録装置300は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150、記憶部149で構成される。
【0201】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3,121−4で構成される。
【0202】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、ユニット単位のデータ再生の制御のために必要なプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3,131−4で構成される。
【0203】
記憶部149は、マルチトラックプリアンブル付加部130にて生成された、少なくとも1ユニット分の記録データの符号列を記憶する。
【0204】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与える1個の出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う1個の記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1
を駆動する1個の記録アンプ147とで構成される。
【0205】
図15は、この記録装置300のユニット記録時の動作の流れを示すフローチャートである。
【0206】
この記録装置300では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、M(M=4)個のデータ(トラックごとのデータ)に分配される(ステップS301)。
【0207】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3,121−4にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このとき符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS302)。
【0208】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、マルチトラックプリアンブル付加部130のM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3,131−4にて、ユニット単位のデータの再生制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS303)。このようにしてプリアンブルが付加されたトラックごとの記録符号列は記憶部149に記憶される(ステップS304)。
【0209】
この後、記憶部149から、最初に記録するトラックの記録符号列が読み出され(ステップS305)、このトラックの記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS306)。
【0210】
この後、1ユニット分のトラックの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS307)、終了していなければ(ステップS307のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させる(ステップS308)。この後、記憶部149から次のトラックの記録符号列を読み出して同様に記録のための処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
【0211】
次に、この第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の変形例を示す。
図16は、この第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の変形例である記録装置301の構成を示す図である。
【0212】
同図に示すように、この記録装置301は、マルチトラック記録符号化部120と、マルチトラックプリアンブル付加部130の構成が、図14の記録装置300と異なっている。マルチトラック記録符号化部120は、所定の単位の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データを記録符号化する記録符号化部121で構成され、マルチトラックプリアンブル付加部130は、トラックごとの符号化された記録データにユニット単位のデータ再生の制御のために必要なプリアンブルを付加する独立プリアンブル付加部131で構成される。さらに、この記録装置301では、図14に示す記録装置300の構成から、マルチトラック化部110(データ分配器111)が省かれている。
【0213】
図17は、この記録装置301のユニット記録の動作の流れを示すフローチャートである。
【0214】
この記録装置301では、まず、記録符号化部121にて、所定の単位の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データが、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS311)。
【0215】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、プリアンブル付加部131にて、ユニット単位のデータを再生する制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS312)。このようにしてプリアンブル符号が付加されたトラックごとの記録符号列は記憶部149に記憶される(ステップS313)。
【0216】
この後、記憶部149から最初に記録するトラックの記録符号列が読み出され(ステップS314)、このトラックの記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS315)。
【0217】
この後、1ユニット分のトラックの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS316)、終了していなければ(ステップS316のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させ(ステップS317)、記憶部149から次のトラックの記録符号列を読み出して同様に記録のための処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
【0218】
例えば、図7に示すトラックフォーマットを用いた場合には、はじめにトラック#1の位置に移動してトラック#1の記録を行い、この後、トラック#2の位置に移動してトラック#2の記録を行い、次に、トラック#3の位置に移動してトラック#3の記録を行い、最後にトラック#4の位置に移動してトラック#4の記録を行う。
【0219】
次に、本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
【0220】
図18は本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置400の構成を示す図である。
同図に示すように、この再生装置400は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0221】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出す1個の再生ヘッドR−1を有する。
【0222】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載された再生ヘッドR−1によって再生された信号を増幅する1個の再生アンプ221と、再生アンプ221の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御する1個のゲイン調整部224と、ゲイン調整部224の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化する1個のA/Dコンバータ225とを備える。
【0223】
信号分離処理部230は、同期信号検出部231、識別情報検出部232、再生信号ゲイン制御処理部233、プリアンブル処理制御部238、チャネル推定演算部234、再生位置制御処理部235、信号分離演算部236、及び記憶部237を有している。
【0224】
同期信号検出部231は、A/Dコンバータ225より出力された再生ヘッドR−1の再生信号からプリアンブル内の同期パターンを検出する。
【0225】
識別情報検出部232は、同期信号検出部231により得られた情報を用いて、再生ヘッドR−1の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して検出し、識別情報を出力する。
【0226】
再生信号ゲイン制御処理部233は、記憶部237からのスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出して、このゲイン制御パターンをもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する。
【0227】
プリアンブル処理制御部238は、例えば識別情報検出部232によって得られた識別情報などをもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号における分離パターンの位置を推定し、その分離パターンの再生信号をそのまま使用するか、所定の値に置き換えて使用するかを判定して、この情報をチャネル推定演算部234に出力する。
【0228】
チャネル推定演算部234は、同期信号検出器231により検出された同期パターンと識別情報検出部232によって得られた識別情報とをもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のプリアンブルに含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、その分離パターン部分の再生信号と、プリアンブル処理制御部238からの情報を用いて、スキャンごとの再生ヘッドR−1と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算を行う。
【0229】
再生位置制御処理部235は、同期信号検出部231により検出された同期パターンをもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過したスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。
【0230】
信号分離演算部236は、再生位置制御処理部235により再生位置が揃えられたスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号から、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列を用いて、所定の演算処理によって、トラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0231】
記憶部237は、同期信号検出器231の後方に配置され、少なくとも1ユニット分の再生信号を記憶する。
【0232】
マルチトラック復調部240は、図4に示すように、信号分離演算部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3,241−4と、等化器241−1,241−2,241−3,241−4の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3,242−4と、PLL242−1,242−2,242−3,242−4で生成されたビット同期信号を用いてトラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3,243−4と、検出器243−1,243−2,243−3,243−4の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3,244−4と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3,244−4により検出された同期パターンをもとにデータの先頭位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3,245−4とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0233】
図18に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3,245−4より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0234】
なお、シングルヘッドによる再生時のトラックのスキャンは、少なくとも1ユニットの記録トラック数の回数だけ繰り返される。すなわち、トラック数以上の回数スキャンを繰り返してもよい。その際、1ユニット分の全てのトラックが少なくとも1回はスキャンされるようにする。記憶部237には、再生ヘッドR−1が移動した各位置で再生したユニット分の信号、すなわち再生ヘッドR−1が各位置で複数のトラックからそれぞれ再生した信号であり、同期信号検出器231によって分離パターン以降の必要な再生信号が記憶される。
【0235】
図19は、この再生装置400のユニット再生動作を示すフローチャートである。
【0236】
この再生装置400では、まず、再生ヘッドR−1によって、最初の位置で複数のトラックから信号が再生される(ステップS401)。次に、ゲイン調整部224にて、再生アンプ221の出力の振幅レベルが調整された後、その出力はA/Dコンバータ225にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS402)。
【0237】
次に、同期信号検出部231により、A/Dコンバータ225より出力された再生信号に含まれる同期パターンの検出が行われた後(ステップS403)、識別情報検出部232にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターンを用いて、再生ヘッドR−1の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターンを検出し、識別情報を得る(ステップS404)。識別情報検出部232を通過した再生信号は記憶部237に記憶される(ステップS405)。
【0238】
次に、1ユニット分の再生信号が記憶部237に記憶されたかどうかを判断し(ステップS406)、1ユニット分の再生信号が記憶部237にまだ記憶されていない場合には、再生ヘッドR−1をトラック幅方向の次の位置にずらし(ステップ407)、ステップS401からステップS405までの動作を繰り返す。
【0239】
1ユニット分の再生信号が記憶部237に記憶された場合、再生信号ゲイン制御処理部233は、記憶部237に記憶された1ユニット分の再生信号を読み出し、スキャンごとの再生信号に配置されているゲイン制御パターンをもとに、スキャンごとの再生信号に対するゲインを演算して、スキャンごとの再生信号のレベルを個別に制御する(ステップS408)。
【0240】
次に、プリアンブル処理制御部238にて、例えば、識別情報検出部232によって得られた識別情報などをもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号における分離パターンの位置を推定し、その分離パターンの再生信号をそのまま使用するか、所定の値に置き換えて使用するかを判定して、この情報をチャネル推定演算部234に出力する(ステップS409)。
【0241】
この後、チャネル推定演算部234は、同期信号検出器231により検出された同期パターンと識別情報検出部232によって得られた識別情報とをもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のプリアンブルに含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、その分離パターン部分の再生信号と、プリアンブル処理制御部238からの情報を用いて、スキャンごとの再生ヘッドR−1と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算を行う(ステップS410)。
【0242】
次に、再生位置制御処理部235にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232によって得られた識別情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過したスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号の再生位置を揃える(ステップS411)。
【0243】
次に、信号分離演算部236にて、チャネル推定演算部234によって得られたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列を用いて、再生信号ゲイン制御処理部233より出力された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS412)。
【0244】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS413)、復元部260にてトラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS414)。
【0245】
なお、A/Dコンバータ225の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。また、ゲイン調整部224については、A/Dコンバータ225の後段に接続して量子化後にゲインを制御するようにしてもよい。これは、A/Dコンバータ225のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。あるいは、同期信号検出器231において利得目標値との誤差をとった情報を用いてゲイン調整部224においてゲイン調整を行うようにしてもよい。
【0246】
また、マルチトラック復調部240にて、トラックごとの出力タイミングを制御しながら復調処理を行うようにすれば、復元部260でのデータの連結処理は不要となる。したがって、この場合には復元部260は不要である。
【0247】
本発明は、上記で説明したリニア記録方式、ノンアジマス記録方式の磁気記録再生に適用されることに限らず、ヘリカル記録方式、アジマス記録方式にも適用可能である。
【0248】
その具体例を以下に示す。
図20は、例えば記録ヘッドアレイ150のように一体となった、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を用いて、ノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディア2に記録されるトラックフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン方式においても、トラック#1、トラック#2、トラック#3で構成されるユニット構成トラック列53の間にはガードバンド52が配置される。トラック#1、トラック#2、トラック#3に記録されるプリアンブル21は、上記の実施形態で示したものと同様でよい。このようなヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0249】
図21は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4,W−4,W−5,W−6を用いて、ダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるトラックフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン磁気記録では、回転するドラム上に複数のヘッドがそれぞれ独立に搭載されており、例えば複数の記録ヘッドと再生ヘッドが、回転するドラム上に交互に配置されている。
【0250】
本例では、記録用と再生用のそれぞれに6つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4,W−4,W−5,W−6が用いられている。これらの記録ヘッドのうち、連続する3つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3と、残る連続する3つの記録ヘッドW−4,W−5,W−6とは、互いにトラックの磁化方向であるアジマス方向が異なるようにしてある。すなわち、トラック#1−#3とトラック#4−#6とはアジマス方向が異なる。これらのトラック#1−#6が、データを再生するための処理の一単位であるユニットを複数含むユニット構成トラック列53となる。なお、このダブルアジマスの場合においては、ガードバンドは不要である。
【0251】
なお、この例では、トラック#1−#6のまとまりを、データを再生するための信号処理の一単位(ユニット)としているが、アジマス方向が同一である3つの連続するトラック(例えばトラック#1−#3、トラック#4−#6)を、それぞれ一つのユニットとして信号処理を行うようにしてもよい。
【0252】
各トラック#1−#6に記録されるプリアンブルは、上記の実施形態で示したものと同様でよい。このようなダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0253】
なお、本発明は、上記実施の形態に示す構成のものに限定されるものではなく、請求項に記載した技術的範囲を逸脱しない範囲において種々に変更し変形することは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図2】図1の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図4】図3の再生装置の中のマルチトラック復調部の構成を示す図である。
【図5】図3の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1の記録装置によって記録が行われた磁気記録メディア上のトラックフォーマットの概念図である。
【図7】図6のトラックフォーマットにおけるプリアンブルの構成を示す図である。
【図8】図7のトラックフォーマットに対する再生信号を示す図である。
【図9】チャネル推定演算によって得られる理想的なチャネル行列の例を示す図である。
【図10】図7のトラックフォーマットの変形例を示す図である。
【図11】図7のトラックフォーマットの別の変形例を示す図である。
【図12】トラックフォーマットのさらに別の変形例を示す図である。
【図13】図7のトラックフォーマットのさらに別の変形例を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図15】図14の記録装置のユニット記録時の動作の流れを示すフローチャートである。
【図16】図14の記録装置の変形例を示す図である。
【図17】図16の記録装置のユニット記録時の動作の流れを示すフローチャートである。
【図18】本発明の第2の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図19】図18の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図20】複数の記録ヘッドを用いてノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディアに記録されるトラックフォーマットの概念図である。
【図21】複数の記録ヘッドを用いてダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるトラックフォーマットの概念図である
【図22】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した記録装置の構成を示す図である。
【図23】図22の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図24】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した再生装置の構成を示す図である。
【図25】図24の再生装置のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0255】
1 記録データ
2 磁気記録メディア
3 再生データ
21 プリアンブル
22 データ
23 第1のプリアンブル
24 第2のプリアンブル
41−1,41−2,41−3,41−4 ゲイン制御パターン
42−1,42−2,42−3,42−4 同期パターン
43−1,43−2,43−3,43−4 識別パターン
44−1,44−2,44−3,44−4 分離パターン
51 ユニット
100 記録装置
110 マルチトラック化部
111 データ分配器
120 マルチトラック記録符号化部
121−1,121−2,121−3,121−4 記録符号化部
130 マルチトラックプリアンブル付加部
131−1,131−2,131−3,131−4 プリアンブル付加部
140 マルチトラック記録部
141−1,141−2,141−3,141−4 出力タイミング設定部
144−1,144−2,144−3,144−4 記録補償部
147−1,147−2,147−3,147−4 記録アンプ
149 記憶部
150 記録ヘッドアレイ
200 再生装置
210 再生ヘッドアレイ
220 チャネル再生部
221−1,221−2,221−3,221−4 再生アンプ
224−1,224−2,224−3,224−4 ゲイン調整部
225−1,225−2,225−3,225−4 A/Dコンバータ
230 信号分離処理部
231 同期信号検出器
232 識別情報検出部
233 再生信号ゲイン制御処理部
234 チャネル推定演算部
235 再生位置制御処理部
236 信号分離演算部
237 記憶部
238 プリアンブル処理制御部
240 マルチトラック復調部
241−1,241−2,241−3,241−4 等化器
243−1,243−2,243−3,243−4 検出器
244−1,244−2,244−3,244−4 同期信号検出器
245−1,245−2,245−3,245−4 復号器
260 復元部
261 データ結合器
R−1,R−2,R−3,R−4 再生ヘッド
W−1,W−2,W−3,W−4 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックには、データと、このデータを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルとが配置され、前記複数のトラックのうち、一部のトラックのプリアンブルには、前記パターンが前記トラックの進行する方向において複数の位置に配置されていることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項2】
請求項1に記載のトラックフォーマットであって、
前記複数の位置に配置された各パターンが、1以上のトラックに跨って信号を再生することが可能なように再生装置に設けられた再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンであることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項3】
請求項1に記載のトラックフォーマットであって、
前記複数の位置に配置された各パターンが、1以上のトラックに跨って信号を再生することが可能なように再生装置に設けられた再生ヘッドにより再生された信号に対するゲインを制御するためのゲイン制御パターンであることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項4】
請求項1に記載のトラックフォーマットであって、
前記複数の位置に配置された各パターンが、個々の前記トラックを識別するための識別パターンであることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項5】
請求項4に記載のトラックフォーマットであって、
前記複数の位置に配置された各識別パターンが、互いに区別可能なように異なるパターンからなることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項6】
請求項1に記載のトラックフォーマットであって、
前記複数の位置に配置された各パターンは、前記再生ヘッドにより同時に再生されないようにトラックの進行する方向及びトラックの幅の方向に離れて配置されていることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項7】
請求項1に記載のトラックフォーマットであって、
前記ユニットの両側にガードバンドが配置され、
前記プリアンブルは、1以上のトラックに跨って信号を再生することが可能なように再生装置に設けられた再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを処理するために必要なパターンが配置された第1の区間と、前記分離パターンが配置された第2の区間とを有し、かつ、前記分離パターンを処理するために必要なパターンは、前記ガードバンドにおける前記第2の区間に対応する位置にも配置されていることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項8】
請求項7に記載のトラックフォーマットであって、
前記分離パターンを処理するために必要なパターンは、前記再生ヘッドにより再生された信号に対するゲインを制御するためのゲイン制御パターンであることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項9】
請求項7に記載のトラックフォーマットであって、
前記分離パターンを処理するために必要なパターンは、個々の前記トラックを識別するための識別パターンであることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項10】
請求項1に記載のトラックフォーマットであって、
前記複数の位置に配置された各パターンが、ビット同期処理に用いることが可能なパターンであることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項11】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックには、データと、このデータを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックのうち、一部のトラックのプリアンブルには、前記パターンが前記トラックの進行する方向において複数の位置に記録されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項12】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する記録装置であって、
前記トラックごとに記録すべきデータを符号化するマルチトラック記録符号化部と、
前記マルチトラック記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データの符号列にそれぞれ、前記データを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルを付加し、このとき前記複数のトラックのうちの少なくとも一部のトラックには、前記トラックの進行する方向において複数の位置に前記パターンを配置したプリアンブルを付加するマルチトラックプリアンブル付加部と、
前記マルチトラックプリアンブル付加部によって前記プリアンブルが付加された前記トラックごとのデータを記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するマルチトラック記録部とを具備することを特徴とする記録装置。
【請求項13】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックには、データと、このデータを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックのうち、一部のトラックのプリアンブルには、前記パターンが前記トラックの進行する方向において複数の位置に記録された記録媒体を再生する再生装置であって、
1以上のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドと、
前記トラックごとの前記プリアンブルに配置された少なくとも1つの前記パターンを用いて、前記再生ヘッドにより再生された信号から前記データを再生するための処理を行うためのプリアンブル処理制御部を具備することを特徴とする再生装置。
【請求項14】
請求項13に記載の再生装置であって、
前記プリアンブルに配置された複数のパターンが、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンであり、
前記分離パターンを用いて、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部をさらに有し、
前記プリアンブル処理制御部は、前記再生ヘッドの再生信号における前記分離パターンの位置を推定し、この分離パターンの再生信号をそのまま使用するか、所定の値に置き換えて使用するかを判定して、この情報を前記チャネル推定演算部に出力することを特徴とする再生装置。
【請求項15】
請求項14に記載の再生装置であって、
前記チャネル推定演算部により得られたチャネル行列を用いて、前記再生ヘッドにより再生された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部をさらに具備することを特徴とする再生装置。
【請求項16】
請求項14に記載の再生装置であって、
前記プリアンブル処理制御部は、トラックに応じて、前記再生ヘッドの再生信号における前記分離パターンの位置を推定することを特徴とする再生装置。
【請求項17】
請求項16に記載の再生装置であって、
前記プリアンブルには前記トラックを識別するための識別パターンが含まれており、
前記識別パターンを検出して前記トラックを識別し、この結果を前記プリアンブル処理制御部に出力する識別情報検出部をさらに具備することを特徴とする再生装置。
【請求項18】
請求項14に記載の再生装置であって、
前記パターンは、ビット同期処理に用いることが可能なパターンからなり、
前記パターンを用いてビット同期処理を行う手段をさらに具備することを特徴とする再生装置。
【請求項19】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックには、データと、このデータを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックのうち、一部のトラックのプリアンブルには、前記パターンが前記トラックの進行する方向での複数の位置に離間して記録された記録媒体を再生する方法であって、
前記プリアンブルに配置された複数の前記パターンの少なくとも1つを用いて、1以上のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドにより再生された信号から前記データを再生するための処理を行うことを特徴とする再生方法。
【請求項20】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録媒体に記録する記録装置と、前記記録媒体からデータを再生する再生装置とを有する記録再生装置であって、
前記記録装置は、
前記トラックごとに記録すべきデータを符号化するマルチトラック記録符号化部と、
前記マルチトラック記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データの符号列にそれぞれ、前記データを再生する制御のために必要なパターンを含むプリアンブルを付加し、このとき前記複数のトラックのうちの少なくとも一部のトラックには、前記トラックの進行する方向において複数の位置に前記パターンを配置したプリアンブルを付加するマルチトラックプリアンブル付加部と、
前記マルチトラックプリアンブル付加部によって前記プリアンブルが付加された前記トラックごとのデータを記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するマルチトラック記録部とを具備し、
前記再生装置は、
1以上のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドと、
前記トラックごとの前記プリアンブルに配置された少なくとも1つの前記パターンを用いて、前記再生ヘッドにより再生された信号から前記データを再生するための処理を行うためのプリアンブル処理制御部とを具備することを特徴とする記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−32320(P2009−32320A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193888(P2007−193888)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】