説明

トラックボール装置および電子機器

【課題】確実な操作性が得られるトラックボール装置および電子機器を提供する。
【解決手段】筐体11の収容部12に収容されている球体13は、収容部12の内面12aに設けられている保持手段20により弾性的に保持されており、収容部12の内面12aに接触しないようになっている。そして、保持手段20を弾性的に後退させながら球体13を収容部12の底部12bに向かって押し込むと、球体13は抑制手段40に弾性接触して徐々に転動を抑制されるので、ある程度転動が抑制された状態で球体13を転動させることにより、微細なポインタの移動を行うことができる。また、ポインタ等の位置決め後さらに球体13を押し込むと、球体13の転動を抑制した状態で移動するので、ポインタ等の位置を正確な位置で変えることなく押圧スイッチ14を押圧して確定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラックボール装置および電子機器に係り、例えば、情報処理装置等の電子機器においてデータ入力装置として使用できるトラックボール装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、表示画面上に表示されているポインタやカーソル等の指示点を、任意の位置に移動させて所望の操作を行う手段として、トラックボール装置が採用されている。
このトラックボール装置では、ハウジング内に全方向に回転自在として保持されたトラックボールと、トラックボールに当接するとともに回転自在に軸支された一対のローラ部材とを有しており、使用者がトラックボールを回転させることにより表示画面上の所望の位置にポインタ等を移動させる。
このようなトラックボール装置は、その後、トラックボールの近傍に配設された確定ボタンをクリックすることで、操作対象の確定を行っている。
【0003】
そして、近年では、ポインタ等の位置に応じてトラックボールの回転を制御するデータ入力装置であるトラックボール装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
図5に示すように、特許文献1に記載されているトラックボール装置100では、あらゆる方向へ回転可能な球体101を有しており、球体101はその上部が露出して、使用者が接触して操作可能となっている。球体101は、球体101を原点として直交するX軸、Y軸上で球体101に接触する車輪102、103によって回転自在に支持されている。両車輪102、103には、軸102a、103aが一体的に取り付けられている。軸102aには、X軸方向の位置センサ(XPOS)104、ブレーキ(XBRAKE)105、加速手段(XACC)106が設けられており、位置センサ104から処理装置110にデータが送られるとともに、処理装置110の制御によりブレーキ(XBRAKE)105および加速手段(XACC)106が作動するようになっている。また、軸103aには、Y軸方向の位置センサ(YPOS)107、ブレーキ(YBRAKE)108、加速手段(YACC)109が設けられており、位置センサ107から処理装置110にデータが送られるとともに、処理装置110の制御によりブレーキ108および加速手段109が作動するようになっている。
【特許文献1】特許3652378号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、トラックボール装置は、使用者が手の腹や指によって球体を転動させるため、手や指で球体を押し込んでクリックやダブルクリックする際に、球体の上に載せた手や指が移動して球体を転動させるおそれがある。このため、ポインタ等が所望の位置からずれた状態でクリック等をしてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、確実な操作性が得られるトラックボール装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のトラックボール装置は、筐体に設けられた収容部に収容されるとともに球面が突出する球体と、前記収容部の内面に設けられて前記球体に対して弾性的に接触することにより前記収容部の内面に接触しないように前記球体を保持する保持手段と、前記筐体に対する前記球体の転動を検出する検出手段と、前記保持手段を弾性的に後退させながら前記球体を前記収容部の底部に向かって移動させたときに前記球体に弾性接触することにより前記球体の転動を抑制する抑制手段と、前記抑制手段を弾性変形させながら前記球体を前記収容部の底部に向かって移動させたときに前記球体に押圧される押圧スイッチとを有することを特徴としている。
【0007】
このように構成されたトラックボール装置においては、筐体の収容部に収容されて突出している球体の球面を手や指で回転させると、検出手段が球体の転動を検出してポインタ等を移動させる。なお、球体は、収容部の内面に設けられている保持手段により弾性的に保持されており、収容部の内面に接触しないようになっている。そして、保持手段を弾性的に後退させながら球体を収容部の底部に向かって押し込むと、球体は抑制手段に弾性接触して徐々に抵抗が増大して転動を抑制されるので、ある程度転動が抑制された状態で球体を転動させることにより、微細なポインタの移動を行うことができる。また、ポインタ等の位置決め後さらに球体を押し込むと、球体の転動をさらに抑制した状態で移動するので、ポインタ等の位置を正確な位置で変えることなく押圧スイッチを押圧して確定できる。
【0008】
また、本発明のトラックボール装置は、前記抑制手段および前記押圧スイッチが、前記球体の移動線に沿って配置されていることを特徴としている。
【0009】
このように構成されたトラックボール装置においては、抑制手段および押圧スイッチが球体が押し込まれる移動線に沿って同一線上に配置されているので、小型化を図ることができる。
【0010】
また、本発明のトラックボール装置は、前記検出手段が、前記収容部の内面に設けられた弾性変形可能な弾性片と、前記弾性片に支持されて前記球体に接触する検出部とを有するとともに、前記保持手段が、前記収容部の内面に設けられた弾性片と、前記弾性片に支持されて前記球体に接触する接触片とを有し、前記検出手段が前記保持手段を兼ねていることを特徴としている。
【0011】
このように構成されたトラックボール装置においては、検出手段と保持手段とで共通の部品を用いることにより、部品点数を減少させて、構造を簡素化するとともに、コストダウンを図ることができる。
【0012】
また、本発明にかかる第4の特徴である電子機器は、上記本発明の第1から第3のいずれかの特徴に記載したトラックボール装置を備えたものである。
【0013】
このように構成された電子機器においては、入力手段であるトラックボール装置の球体を押し込むと、球体は抑制手段によって抑制された状態で球体を転動するので、微細なポインタの移動を行うことができる。また、ポインタ等の位置決め後さらに球体を押し込むと、球体の転動を抑制した状態で移動するので、ポインタ等の位置を正確な位置から移動させることなく押圧スイッチを押圧して確定できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、入力手段であるトラックボール装置の球体を押し込むと、球体は抑制手段によって抑制された状態で球体を転動するので、微細なポインタの移動を行うことができる。また、ポインタ等の位置決め後さらに球体を押し込むと、球体の転動を抑制した状態で移動するので、ポインタ等の位置を正確な位置で変えることなく押圧スイッチを押圧して操作対象を確定できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係るトラックボール装置を示す断面図、図2はトラックボールを途中まで押し込んだ状態を示す断面図、図3はトラックボールをさらに押し込んで確定した状態を示す断面図、図4は本発明の実施形態に係る電子機器である携帯端末の斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るトラックボール装置10は、筐体11に設けられた収容部12に収容されるとともに球面13aが突出する球体13を全方向に回転可能に有している。収容部12の内面12aには保持手段20が設けられており、球体13に対して弾性的に接触することにより収容部12の内面12aに接触しないように球体を保持している。筐体11に対する球体13の転動は、検出手段30により検出される。
さらに、保持手段20を弾性的に後退させながら球体13を収容部12の底部12bに向かって移動させたときに、球体13に弾性接触することにより球体13の転動を抑制する抑制手段40と、抑制手段40を弾性変形させながら球体13を収容部12の底部12bに向かって移動させたときに、球体13によって押圧される押圧スイッチ14とを有している。
【0017】
収容部12は筐体11に少なくとも球体13の半分以上が埋没する深さで凹設されており、例えば、下半分が球状のものが一般的であるが、その他の形状でも良い。また、収容部12の開口12cは、球体12の赤道(最大の水平な外周)部分よりも上側で、且つ球体12の直径よりも小さく設けられている。
これにより、球体12が収容部12から脱落するのを防止している。
【0018】
保持手段20は収容部12の内面12aに設けられており、球体13が収容部12の内面12aに接触しないように球体を保持している。
このため、保持手段20は、一端が収納部12の内面12aに剛結された弾性片としての板バネ21と、この板バネ21に取り付けられて球体13に対して弾性的に接触する接触片としての支持突起22とを有している。
【0019】
支持突起22が球状や円柱状のように球体13に点接触する場合、板バネ21および支持突起22は球体13を支持するために、赤道よりも下方において少なくとも3箇所以上設ける必要がある。
なお、さらに赤道よりも上方にも設けて、球体13が収容部12から脱落するのを防止するようにしても良い。
【0020】
一方、支持突起22が球体13の球面13aに線接触する円弧状の場合には、互いに対向する位置に2箇所設けるようにすることもできる。
従って、球体13を収容部12の底部12bに向かって外力Fを加えて押し込むと、球体13は支持突起22を介して板バネ21を弾性変形させながら移動し、外力Fを取り除くと上昇して元の位置に復帰する。
なお、支持突起22は、球体13を回転自在に保持するために、球面13aとの間の摩擦抵抗が小さいものが望ましい。
【0021】
検出手段30は収容部12の内面12aに設けられており、筐体11に対する球体13の転動を検出する。このため、検出手段30は、収容部12の内面12aに設けられた弾性変形可能な弾性片としての板バネ31と、この板バネ31に支持されて球体13に接触する検出部であるセンサ32を有しており、センサ32は板バネ31の弾性力によって球体13の球面13aに接触するように常時付勢されている。センサ32は、光学式センサであるが、例えば機械式であるロータリエンコーダを直交方向に2個配置して用いてもよい。
【0022】
なお、保持手段20における板バネ21と、検出手段30における板バネ31とを共通な部品とすることにより、部品種類を減少させるのが望ましい。さらに、センサ32でも球体13を支持するようにして、検出手段30が保持手段20を兼ねるようにするのが望ましい。これにより、共通の部品を用いることにより、部品点数を減少させて、構造を簡素化するとともに、コストダウンを図ることができる。
【0023】
抑制手段40は収容部12の底部12bに設けられており、保持手段20の板バネ21を弾性的に変形させながら球体13を収容部12の底部12bに向かって押し込んだときに、弾性接触するする回転制動部41を有している。回転制動部41および押圧スイッチ14は、球体13の移動線に沿って配置するのが望ましい。
例えば、図1に示すように、収容部12の底部12bに押圧スイッチ14を取り付け、この押圧スイッチ14の上に回転制動部41を設けることにより、装置の小型化を図ることができる。従って、球体13を下方へ押し込むことにより、球体13の転動を抑制することができ、さらに押し込むことにより押圧スイッチ14を押してオンとできる。
【0024】
なお、回転制動部41を直接収容部12の底部12bに設け、回転制動部41とは別の位置に押圧スイッチ14を取り付けることも可能である。
また、回転制動部41は球体13の転動を摩擦力によって防止するものであるため、球体13との間の摩擦係数が大きな材質を用いるのが望ましい。
【0025】
次に、図1〜図3に基づいて、トラックボール装置10の操作について説明する。
図1に示すように、非使用時あるいは球体13を回転させてポインタやカーソルの移動を行う際には、使用者は球体13の露出している上部球面13aを指や手で移動させて球体13を転動させる。球体13は、保持手段20によって収容部12の内面12aに接触しないように支持されており、
また、抑制手段40の回転制動部41に接触していないので、容易に回転する。この球体13の回転を検出手段のセンサ32が検知して、処理装置(図示省略)に情報を送る。
【0026】
図2に示すように、球体13を一段階軽く押し込むと、保持手段20の板バネ21が下方へ弾性変形するとともに検出手段30の板バネ31も弾性変形するので、センサ32は球体13の球面13aに接触した状態を維持する。このため、球体13が下降して下部が抑制手段40の回転制動部41に接触するので、球体13の回転抵抗が大きくなる。
これにより、球体13の微細な転動を容易に行うことができ、ポインタ等の微妙な移動を容易に行うことができる。
【0027】
図3に示すように、さらに球体13を押し込むと、保持手段20および検出手段30の変形とともに、球体13は回転制動部41を強く押圧する。このため、球体13の回転抵抗がさらに大きくなり、あるいは球体13の転動が抑止されて、回転制動部41を介して押圧スイッチ14を操作対象を確定する。
【0028】
以上、説明したトラックボール装置10によれば、収容部12に収容されている球体13を手や指で回転させると、センサ32が球体13の転動を検出してポインタ等を移動させる。そして、保持手段20の板バネ21を弾性的に変形させながら球体13を収容部12の底部12bに向かって押し込むと、球体13は抑制手段40の回転制動部41に弾性接触して徐々に転動を抑制されるので、ある程度転動が抑制された状態で球体13を転動させることにより、微細なポインタの移動を行うことができる。また、ポインタ等の位置決め後さらに球体13を押し込むと、球体13の転動が抑制された状態で移動するので、ポインタ等の位置を正確な位置から移動させることなく押圧スイッチ14を押圧して操作対象を確定できる。
【0029】
次に、図4に基づいて、上述したトラックボール装置10を用いた電子機器の一例について説明する。
図4に示すように、例えば、電子機器としての携帯端末50は、上筐体50Aと、この上筐体50Aに連結部50Cを介して折りたたみ自在に連結される下筐体50Bを有している。上筐体50Aは、表面にLCD等の主表示部51やレシーバ52等を備えている。また、図示はしないが、裏面には、副表示部やスピーカ等を備えている。
【0030】
一方、下筐体50Bは、表面に各種キー53aが配列された主操作部53、マイクロフォン54等を備えるとともに、側端面にメモリカード挿入口蓋55等を備え、且つ、制御部、通信部等が設けられた回路基板と、通信部に接続されたアンテナとが収容されている。なお、主操作部53には、前述したトラックボール装置10が設けられており、例えば、主表示部51に表示されているカーソルやポインタ等の移動、選択、確定等が可能となっている。
連結部50は、上筐体50Aおよび下筐体50Bの境界に沿って連結軸56が配置されたヒンジとされている。
【0031】
従って、この携帯端末50は、連結部50Cの連結軸56を中心として上筐体50Aおよび下筐体50Bを相対的に回動させることにより、主表示部51および主操作部53が互いに対面するように上筐体50Aおよび下筐体50Bが互いに積層した携帯状態と、表示部51および主操作部53が略同一方向を向くように上筐体50Aおよび下筐体50Bが隣接配置される伸長状態(図4に示す状態)とを選択できる。
【0032】
以上、説明した携帯端末50によれば、主操作部53のトラックボール装置10の球体13を押し込むと、球体13は抑制手段40によって抑制された状態で球体13を転動するので、片手で携帯端末50を持って操作する際でも微細なポインタ等の移動を行うことができる。また、ポインタ等の位置決め後さらに球体13を押し込むと、球体13の転動を抑制した状態で移動するので、ポインタ等の位置を正確な位置で変えることなく押圧スイッチ14を押圧して確定できる。
【0033】
なお、本発明のトラックボール装置10および携帯端末50は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態においては、電子機器としてトラックボール装置10を有する折り畳み式の携帯端末50を例示したが、本発明の電子機器はその他例えばパソコン等にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明に係るトラックボール装置および電子機器は、入力手段であるトラックボール装置の球体を押し込むと、球体は抑制手段によって抑制された状態で球体を転動するので、微細なポインタの移動を行うことができる。また、ポインタ等の位置決め後さらに球体を押し込むと、球体の転動を抑制した状態で移動するので、ポインタ等の位置を正確な位置で変えることなく押圧スイッチを押圧して確定できるという効果を有し、情報処理装置等の電子機器においてデータ入力装置として使用できるトラックボール装置および電子機器等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係るトラックボール装置を示す断面図である。
【図2】トラックボールを第1段階押し込んだ状態を示す断面図である。
【図3】トラックボールを押し込んで確定した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電子機器である携帯端末の斜視図である。
【図5】従来のデータ入力装置であるトラックボール装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 トラックボール装置
11 筐体
12 収容部
12a 内面
12b 底部
13 球体
13a 球面
14 押圧スイッチ
20 保持手段
21 板バネ(弾性片)
22 支持突起(接触片)
30 検出手段
31 板バネ(弾性片)
32 センサ(検出部)
40 抑制手段
50 携帯端末(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けられた収容部に収容されるとともに球面が突出する球体と、
前記収容部の内面に設けられて前記球体に対して弾性的に接触することにより前記収容部の内面に接触しないように前記球体を保持する保持手段と、
前記筐体に対する前記球体の転動を検出する検出手段と、
前記保持手段を弾性的に後退させながら前記球体を前記収容部の底部に向かって移動させたときに前記球体に弾性接触することにより前記球体の転動を抑制する抑制手段と、
前記抑制手段を弾性変形させながら前記球体を前記収容部の底部に向かって移動させたときに前記球体に押圧される押圧スイッチとを有することを特徴とするトラックボール装置。
【請求項2】
前記抑制手段および前記押圧スイッチが、前記球体の移動線に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載のトラックボール装置。
【請求項3】
前記検出手段が、前記収容部の内面に設けられた弾性変形可能な弾性片と、前記弾性片に支持されて前記球体に接触する検出部とを有するとともに、
前記保持手段が、前記収容部の内面に設けられた弾性片と、前記弾性片に支持されて前記球体に接触する接触片とを有し、
前記検出手段が前記保持手段を兼ねていることを特徴とする請求項1および請求項2のうちのいずれかに記載のトラックボール装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれかに記載したトラックボール装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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