説明

トラックボール装置

【課題】本発明は、磁気吸引手段によってボールを常時底部側へ吸引することにより、トラックボール装置の取付時の傾斜角度の制約を除去し、使用時の精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明によるトラックボール装置は、ボール(12)を磁性体で形成し、ケース(1)の底部(2)に設けた磁気吸引手段(20)によりボール(12)を底部(2)側へ磁気吸引することにより、ボール(12)と各検出軸(3,4)との接触を常時行なうようにした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックボール装置に関し、特に、ケースの底部に設けた磁気吸引手段によりボールを常時磁気吸引することにより、トラックボール装置の設置傾斜角度に関係なく、安定してボールを操作し、安定した座標入力信号を得ることができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のトラックボール装置としては、例えば、特許文献1及び2に開示されている図3の構成を挙げることができる。
すなわち、図3において符号1で示されるものは全体形状が箱型をなすと共に上部が開放された構成のケースであり、このケース1の底部2には、互いに検出軸方向が異なるX軸及びY軸からなる第1、第2検出軸3,4が各々一対の軸受5,6を介して回転自在に設けられている。
【0003】
前記各軸受5,6には、各検出軸3,4の一端に設けられたフォトセンサ又はエンコーダ等の第1、第2回転検出器7,8が設けられ、前記第1、第2回転検出器7,8からは、図示しないコンピュータ又は各種機器等の画面に入力する座標入力信号であるX軸出力9及びY軸出力10が出力されるように構成され、前記ケース1の角部には、ボールベアリング11が露出した状態で回転自在に配設され、前記底部2には、前記各回転検出器7,8からのX軸出力9及びY軸出力10を出力するための電子回路を有する電子回路基板15が設けられている。
【0004】
前記ケース1内には、前記各検出軸3,4及びボールベアリング11上にボール12が回転自在に載置して設けられ、このボール12を回転することにより前記各検出軸3,4が連動して回転するように構成されている。
また、このボール12の一部は、ケース1の上部から上方へ露出して設けられ、このケース1の上部に設けられたカバー13によってボール12がケース1の外へ飛び出さないように構成されている。
【0005】
従って、前述の構成において、ボール12を回転させると、ボール12の回転と連動して各検出軸3,4の各回転検出器7,8が回転し、前記X軸出力9及びY軸出力10が出力されるように構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−353105号公報
【特許文献2】特開平11−149346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のトラックボール装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、ケース内のボールは検出軸及びボールベアリング上でその自重によって連動回転可能に構成されているため、相手側機器に対してトラックボール装置の取付傾斜角度を±30度以内と制限されており、この角度を越えて取付けると、ボールと各検出軸との接触が不安定となり、トラックボール装置としての機能が得られなくなることになっていた。
また、ボールに手で触れていない時に、外乱によってボールが動くことがあり、誤動作の原因にもなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるトラックボール装置は、ケース内に回転自在に設けられ互いに異なる検出軸方向を有する第1検出軸及び第2検出軸と、前記ケース内に回転自在に設けられ前記各検出軸上に配設されたボールとを備え、前記ボールを回転することにより前記各検出軸を回転させ、座標入力信号を出力するようにしたトラックボール装置において、前記ボールを磁性体で形成し、前記ケースの底部に設けた磁気吸引手段により前記ボールを前記底部側へ磁気吸引するようにした構成であり、また、前記ボールは、磁性粉体入りプラスチックスで形成されている構成であり、また、前記磁気吸引手段は、磁性板とこの磁性板上に設けられた永久磁石とからなる構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるトラックボール装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ボールが磁性体で形成されているため、ケースの底部側に設けた磁気吸引手段によってボールが常時、各検出軸側に磁気吸引され、トラックボール装置の取付角度の制限をなくすことができる。
また、ボールが常時磁気吸引されていることにより、外乱によるボールの踊り(微動)をなくすことができ、座標入力信号の出力の安定化を計ることができる。
また、設置角度制限の除去により、相手方装置の使用範囲の拡大、省スペース化等、適用範囲の自由度を大幅に拡大して市場性の拡大を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ケースの底部に設けた磁気吸引手段によりボールを常時磁気吸引することにより、トラックボール装置の設置傾斜角度に関係なく、安定してボールを操作し、安定した座標入力信号を得ることができるトラックボール装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明によるトラックボール装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。また、図3の従来構成と基本的には同一であるため、図3の構成をそのまま援用することとし、図3と異なる部分についてのみ、図1及び図2を用いて説明する。
図1においてケース1内に回転自在に設けられたボール12は、磁性体よりなり、例えば、磁性粉体入りプラスチックスを射出成形によって球形に形成した構成からなり、他の構成としては、磁性金属球、樹脂球の外面に磁性金属をメッキコーティングした構成等、種々の球構造とすることもできる。
【0012】
また、前記ケース1の底部2上には、前記ボール12を磁気吸引するための磁気吸引手段20が設けられており、この磁気吸引手段20は、磁性材料からなるヨークとしての磁性板21と、この磁性板21上の永久磁石22とから構成され、平面的構成としては図2に示されるように構成されている。尚、磁気吸引手段20は電磁石を適用することも可能である。
【0013】
前述の構成において、ボール12は常時、磁気吸引手段20によって磁気吸引されているため、ボール12の外面は常に各検出軸3,4の周面と確実に接触し、ボール12の回転に連動して各検出軸3,4を確実に回転させることができる。
また、ボール12が磁気吸引手段20によって常時磁気吸引されていることにより、外乱等によってボール12が動くこともなく、誤動作による誤入力を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、装置や機器等に取付けるトラックボールだけでなく、マウス等にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるトラックボール装置を概略的に示す構成図である。
【図2】図1の要部を示す矢視A−A’図である。
【図3】従来のトラックボール装置を示す一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
1 ケース
2 底部
3 第1検出軸
4 第2検出軸
12 ボール
20 磁気吸引手段
21 磁性板
22 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(1)内に回転自在に設けられ互いに異なる検出軸方向を有する第1検出軸(3)及び第2検出軸(4)と、前記ケース(1)内に回転自在に設けられ前記各検出軸(3,4)上に配設されたボール(12)とを備え、前記ボール(12)を回転することにより前記各検出軸(3,4)を回転させ、座標入力信号を出力するようにしたトラックボール装置において、
前記ボール(12)を磁性体で形成し、前記ケース(1)の底部(2)に設けた磁気吸引手段(20)により前記ボール(12)を前記底部(2)側へ磁気吸引するように構成したことを特徴とするトラックボール装置。
【請求項2】
前記ボール(12)は、磁性粉体入りプラスチックスで形成されていることを特徴とする請求項1記載のトラックボール装置。
【請求項3】
前記磁気吸引手段(20)は、磁性板(21)とこの磁性板(21)上に設けられた永久磁石(22)とからなることを特徴とする請求項1又は2記載のトラックボール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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