説明

トラック型エッジワイズコイル製造装置

【課題】トラック型の直線部でも半円弧部でも扁平編組線の厚さが一定のトラック型エッジワイズコイルを製造する。
【解決手段】直線駆動装置(4)を作動させてトラック型巻芯(1)の第1の直線部(1a)に平行な方向にトラック型巻芯(1)を直線移動させトラック型巻芯(1)の第1の半円弧部(1b)の中心を回転駆動軸(3)に一致させ、回転駆動軸(3)を作動させてトラック型巻芯(1)を半回転させ、直線駆動装置(4)を作動させてトラック型巻芯(1)の第2の直線部(1c)に平行な方向にトラック型巻芯(1)を直線移動させトラック型巻芯(1)の第2の半円弧部(1d)の中心を回転駆動軸(3)に一致させ、回転駆動軸(3)を作動させてトラック型巻芯(1)を半回転させる。この周期運動を繰り返す。
【効果】扁平編組線を用いたトラック型エッジワイズコイルを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック型エッジワイズコイル製造装置に関し、更に詳しくは、扁平編組線を用いたトラック型エッジワイズコイルであってトラック型の直線部でも半円弧部でも扁平編組線の厚さが一定のトラック型エッジワイズコイルを製造することが出来るトラック型エッジワイズコイル製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偏平編組線を送り出す扁平形状編組線送出手段と、扁平編組線の扁平面を押し付けうる平面部を有し且つ軸回転しつつ扁平編組線をソレノイド状に巻き取るための巻芯と、扁平編組線が巻芯に巻き取られるのを軸回転しつつ補助し且つ巻芯に巻き取られた扁平編組線のターン数に応じて巻芯の回転軸方向に移動する巻線ローラーとを具備したトラック型エッジワイズコイル製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−200387号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のトラック型エッジワイズコイル製造装置では、巻線ローラーが巻芯の回転軸から放射方向に移動可能になっており且つ巻芯に巻き取られた扁平編組線の外周面を巻線ローラーの外周面規制部が押すようになっている。従って、トラック型の巻芯を用いると、トラック型エッジワイズコイルを製造することが出来た。
しかし、巻線ローラーの外周面規制部がトラック型の直線部の外周面を押すときの作用効果と半円弧部の外周面を押すときの作用効果とが異なり、トラック型の直線部と半円弧部とで扁平編組線の厚さが一定にならない問題点があった。
そこで、本発明の目的は、トラック型の直線部でも半円弧部でも扁平編組線の厚さが一定のトラック型エッジワイズコイルを製造することが出来るトラック型エッジワイズコイル製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、絶縁被覆電線を編んだ編組線であって且つ断面が扁平形状の扁平編組線(W1)をトラック型にエッジワイズ巻きするためのトラック型巻芯(1)と、前記トラック型巻芯(1)に対する前記扁平編組線(W1)の巻始め位置を規制するための巻始め規制部材(2)と、前記トラック型巻芯(1)を回転させるための回転駆動軸(3)と、前記トラック型巻芯(1)を直線移動させるための直線駆動手段(4)と、前記直線駆動手段(4)を作動させて前記トラック型巻芯(1)の第1の直線部(1a)に平行な方向に前記トラック型巻芯(1)を直線移動させ前記トラック型巻芯(1)の第1の半円弧部(1b)の中心を前記回転駆動軸(3)に一致させ次いで前記回転駆動軸(3)を作動させて前記トラック型巻芯(1)を半回転させ次いで前記直線駆動手段(4)を作動させて前記トラック型巻芯(1)の第2の直線部(1c)に平行な方向に前記トラック型巻芯(1)を直線移動させて前記トラック型巻芯(1)の第2の半円弧部(1d)の中心を前記回転駆動軸(3)に一致させ次いで前記回転駆動軸(3)を作動させて前記トラック型巻芯(1)を半回転させる周期運動を繰り返すための巻芯周期運動手段(5a,5b)と、前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた状態での扁平編組線(W3)の曲がりとは逆向きの曲がり癖を付けてから前記扁平編組線(W1)を前記トラック型巻芯(1)に巻き取られるように供給すると共に前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)の巻数に応じて前記トラック型巻芯(1)に対して相対移動する線ガイド手段(6)と、前記線ガイド手段(6)から供給された扁平編組線(W1)を前記巻始め規制部材(2)の方向に押すと共に前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)の巻数に応じて前記トラック型巻芯(1)に対して相対移動する線押え部材(7)とを具備したことを特徴とするトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)を提供する。
上記第1の観点によるトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)では、扁平編組線(W1)をトラック巻芯(1)に巻回する際、トラック型の外周面を押さないため、トラック巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)の厚さをトラック型の直線部(1a,1c)でも半円弧部(1b,1d)でも一定にすることが出来る。
なお、トラック型巻芯(1)を直線移動させるだけでトラック型の直線部(1a,1c)に扁平編組線を巻回しているが、それだけでは直線部(1a,1c)の中央近傍で扁平編組線(W3)が直線部(1a,1c)から浮いてしまうことがある。そこで、トラック型巻芯(1)に巻き取られた状態での扁平編組線(W3)の曲がりとは逆向きの曲がり癖を線ガイド手段(6)によって扁平編組線(W1)に付けている。これにより、直線部(1b,1d)の中央近傍でも扁平編組線(W3)が直線部(1b,1d)に密着するようになる。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)において、前記線ガイド手段(6)は、前記扁平編組線(W1)を通過させることで前記曲がり癖を付ける線通過穴または溝(6a)を有することを特徴とするトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)を提供する。
上記第2の観点によるトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)では、線ガイド手段(6)の線通過穴または溝(6a)を扁平編組線(W1)が通過することで、トラック型巻芯(1)に巻き取られた状態での扁平編組線(W3)の曲がりとは逆向きの曲がり癖を扁平編組線(W1)に付けることが出来る。
【0007】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点によるトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)において、前記トラック型巻芯(1)を半回転させるときに前記トラック型巻芯(1)が直線移動しないように規制する直線移動規制手段(8a〜8e)を設けたことを特徴とするトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)を提供する。
上記第3の観点によるトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)では、トラック型巻芯(1)を半回転させるときに、直線移動規制手段(8a〜8e)によりトラック型巻芯(1)が直線移動しないように規制するため、トラック型の半円弧部(1b,1d)に好適に巻線することが出来る。
【0008】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点によるトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)において、前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)と前記線押え部材(7)の間に前記線ガイド手段(6)から供給された扁平編組線(W1)が入り易いように前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)を前記巻始め規制部材(2)の方向に押すコイル押え部材(9)を設けたことを特徴とするトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)を提供する。
上記第4の観点によるトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)では、トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)をコイル押え部材(9)により巻始め規制部材(2)の方向に押すため、線ガイド手段(6)から供給された扁平編組線(W1)が、トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)と線押え部材(7)の間に入り易くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)によれば、トラック巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)の厚さがトラック型の直線部(1a,1c)でも半円弧部(1b,1d)でも一定のトラック型エッジワイズコイルを製造することが出来る。また、扁平編組線(W3)が直線部(1b,1d)の中央近傍でも直線部(1b,1d)に密着するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置を示す左側面図(第1の直線移動工程直前時の状態)である。
【図2】図1の状態での一部省略正面図である。
【図3】実施例1に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置を示す一部省略正面図(第1の直線移動工程直後時の状態)である。
【図4】実施例1に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置を示す左側面図(第1の半回転工程直前時の状態)である。
【図5】実施例1に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置を示す一部省略正面図(第1の半回転工程で1/4回転した時の状態)である。
【図6】図5の状態での左側面図である。
【図7】実施例1に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置を示す一部省略正面図(第1の半回転工程直後時の状態)である。
【図8】実施例1に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置を示す左側面図(第2の直線移動工程直前時の状態)である。
【図9】実施例1に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置を示す一部省略正面図(第2の直線移動工程直後時の状態)である。
【図10】実施例1に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置を示す一部省略正面図(第2の半回転工程直後時の状態)である。
【図11】図10の状態での一部省略右側面図である。
【図12】製造されたトラック型エッジワイズコイルを示す斜視図である。
【図13】実施例2に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置を示す左側面図(第1の直線移動工程直前時の状態)である。
【図14】図13の状態での一部省略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
−実施例1−
図1は、実施例1に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置100を示す左側面図(第1の直線移動工程直前時の状態)である。図2は、図1の状態での一部省略正面図である。
このトラック型エッジワイズコイル製造装置100は、トラック型巻芯1と、巻始め規制部材2と、回転駆動軸3と、直線駆動装置4と、巻芯周期運動制御装置5aと、線ガイド部材6と、線押え部材7と、直線移動規制回転板8aと、コイル押え部材9とを具備している。
【0013】
トラック型巻芯1は、第1の直線部1aと,第1の半円弧部1bと,第2の直線部1cと,第2の半円弧部1dとを有するトラック型の巻芯であり、回転駆動軸3を挿通する貫通孔1eを有する。
貫通孔1eは、第1の直線部1aおよび第2の直線部1cに平行な直線部を有している。
【0014】
巻始め規制部材2は、トラック型巻芯1より大きい相似形状のトラック型であり、巻端末止め具2aと、直線移動規制穴2b,2cと、扁平編組線W1の巻端末W3を止めるための切欠き2dと、トラック型巻芯1の貫通孔1eと同形状の貫通孔2eとを有する。
【0015】
回転駆動軸3は、トラック型巻芯1の貫通孔1eの直線部に適合する直線部を有する断面形状を持っており、モーター5bによって軸回転しうる。
【0016】
直線駆動装置4は、押し棒4aを突き出して巻始め規制部材2の半円弧部の外周面を押し、一体化したトラック型巻芯1と巻始め規制部材2と線押え部材7とを直線移動させるものである。
【0017】
巻芯周期運動制御装置5aは、モーター5bの作動と、直線駆動装置4の作動と、アクチュエータ8eの作動とを制御する。
【0018】
アクチュエータ8eは、ハンド8dを前後に移動し、直線移動規制回転板8aを第1の位置(図1参照)または第2の位置(図4参照)に移動する。また、ハンド8dを開閉し、直線移動規制回転板8aを掴む(図1参照)か又は放す(図4参照)。
【0019】
線ガイド部材6は、板状体であり、線通過穴6aと巻ピッチ送り突起6eと線押え部材9を有し、レール6b,6cにより支持され、トラック型巻芯1に巻き取られた扁平編組線の巻数に応じて巻ピッチ送り駆動機構6dによりトラック型巻芯1に対して相対移動する。
絶縁被覆電線を編んだ編組線であって且つ断面が扁平形状の扁平編組線W1は、線通過穴6aを通過することによりトラック型巻芯1に巻き取られた状態での扁平編組線の曲がりとは逆向きの曲がり癖が付けられてから、トラック型巻芯1に巻き取られるように供給される。
【0020】
線押え部材7は、トラック型巻芯1より大きく巻始め規制部材2より小さい相似形状のトラック型であり、トラック型巻芯1の貫通孔1eと同形状の貫通孔7eと、線ガイド部材6の巻ピッチ送り突起6eと嵌合する溝7fを有し、トラック型巻芯1に対する線ガイド部材6の相対移動に連動して移動しうる。
【0021】
直線移動規制回転板8aは、回転駆動軸3の軸方向に移動可能に回転駆動軸3に嵌合しており、回転駆動軸3と共に回転しうる円板である。
また、直線移動規制回転板8aは、巻始め規制部材2の直線移動規制穴2bに嵌合しうる直線移動規制突起8bと、巻始め規制部材2の直線移動規制穴2cに嵌合しうる直線移動規制突起8cとを有している。
【0022】
コイル押え部材9は、線ガイド部材6から出てくる扁平編組線W1の、巻始め規制部材2側の面と略面一の面を、巻始め規制部材2側の面として有する舌片であり、線ガイド部材6から突出している。
【0023】
次に、トラック型エッジワイズコイル(図12のA)の製造工程を説明する。
[初期状態]
図1,図2に示すように、操作者は、回転駆動軸3の直線部が水平になった状態で回転駆動軸3を停止させる。また、押し棒4aを引っ込めた状態にして直線駆動装置4を停止させる。また、直線移動規制突起8bと直線移動規制突起8cを結ぶ直線が水平になり且つハンド8dで直線移動規制回転板8aを掴んだ状態で第1の位置に停止させる。
次に、固定リング10aを回転駆動軸3に嵌める。
他方、巻始め規制部材2とトラック型巻芯1とをネジで一体化する。
次に、巻始め規制部材2とトラック型巻芯1の一体化物を回転駆動軸3に嵌め、巻始め規制部材2の直線移動規制穴2bに直線移動規制突起8bの先端が僅かに入らない位置で止まるように固定リング10aと回転駆動軸3とをネジで固定する。さらに、固定リング10bを回転駆動軸3に嵌め、固定リング10bと回転駆動軸3とをネジで固定する。
次に、線ガイド部材6の巻ピッチ送り突起6eを線押え部材7の溝7fに嵌合させた状態で線押え部材7をトラック型巻芯1に嵌めるのと同時に線ガイド部材6をレール6b,6cおよび巻ピッチ送り駆動機構6dに取り付ける。次に、扁平編組線W1の先端部分を線通過穴6aに挿通し、線ガイド部材6から出た扁平編組線W1の巻端末W2を巻始め規制部材2の巻端末止め具2aに止める。そして、巻始め規制部材2に当たるまで線ガイド部材6を移動して止める。
【0024】
[第1の直線移動工程]
図3に示すように、操作者のスタート指示により巻芯周期運動制御装置5aは、直線駆動装置4の押し棒4aを突き出して巻始め規制部材2を押し、トラック型巻芯1の第1の直線部1aに平行な方向に巻始め規制部材2とトラック型巻芯1の一体化物を直線移動させ、トラック型巻芯1の第1の半円弧部1bの中心を回転駆動軸3の中心軸に一致させる。線押え部材7は、トラック型巻芯1に嵌っているので、トラック型巻芯1の直線移動に従って直線移動する。
この第1の直線移動工程により、トラック型巻芯1の第1の直線部1aに扁平編組線W1が沿うことになる。
【0025】
[第1の半回転工程]
図4に示すように、巻芯周期運動制御装置5aは、アクチュエータ8eを作動し、ハンド8dで直線移動規制回転板8aを掴んだ状態で第1の位置から第2の位置へと直線移動規制回転板8aを移動し、第2の位置で直線移動規制回転板8aをハンド8dから放して回転可能にした後、アクチュエータ8eを停止する。直線移動規制回転板8aの直線移動規制突起8bは巻始め規制部材2の直線移動規制穴2bに嵌合し、巻始め規制部材2とトラック型巻芯1の一体化物の直線移動が規制される。
【0026】
図5に示すように、巻芯周期運動制御装置5aは、直線駆動装置4の押し棒4aを引き込む。次いで、モーター5bを作動し、回転駆動軸3を回転させる。
図5は、回転駆動軸3を1/4回転した状態の一部省略正面図である。
図6は、同左側面図である。
図7に示すように、巻芯周期運動制御装置5aは、さらにモーター5bを作動し、回転駆動軸3を図5からさらに1/4回転させ、モーター5bを停止する。
この第1の半回転工程により、トラック型巻芯1の第1の半円弧部1bに扁平編組線W1が巻き付けられることになる。
【0027】
図8に示すように、巻芯周期運動制御装置5aは、アクチュエータ8eを作動し、ハンド8dで直線移動規制回転板8aを掴み、その掴んだ状態で第2の位置から第1の位置へと直線移動規制回転板8aを移動し、第1の位置で直線移動規制回転板8aをハンド8dで掴んだまま、アクチュエータ8eを停止する。直線移動規制回転板8aの直線移動規制突起8bは巻始め規制部材2の直線移動規制穴2bから抜けて、巻始め規制部材2とトラック型巻芯1の一体化物の直線移動の規制が解除される。
【0028】
[第2の直線移動工程]
図9に示すように、巻芯周期運動制御装置5aは、直線駆動装置4の押し棒4aを突き出して巻始め規制部材2を押し、トラック型巻芯1の第2の直線部1cに平行な方向に巻始め規制部材2とトラック型巻芯1の一体化物を直線移動させ、トラック型巻芯1の第2の半円弧部1dの中心を回転駆動軸3の中心軸に一致させる。線押え部材7は、トラック型巻芯1に嵌っているので、トラック型巻芯1の直線移動に従って直線移動する。
この第2の直線移動工程により、トラック型巻芯1の第2の直線部1cに扁平編組線W1が沿うことになる。
【0029】
[第2の半回転工程]
巻芯周期運動制御装置5aは、アクチュエータ8eを作動し、ハンド8dで直線移動規制回転板8aを掴んだ状態で第1の位置から第2の位置へと直線移動規制回転板8aを移動し、第2の位置で直線移動規制回転板8aをハンド8dから放して回転可能にした後、アクチュエータ8eを停止する。直線移動規制回転板8aの直線移動規制突起8cは巻始め規制部材2の直線移動規制穴2cに嵌合し、巻始め規制部材2とトラック型巻芯1の一体化物の直線移動が規制される。
【0030】
図10に示すように、巻芯周期運動制御装置5aは、直線駆動装置4の押し棒4aを引き込む。次いで、モーター5bを作動して回転駆動軸3を半回転させ、モーター5bを停止する。
図10は、回転駆動軸3を半回転した状態の一部省略正面図である。
図11は、同右側面図である(直線駆動装置4は図示省略している)。
この第2の半回転工程により、トラック型巻芯1の第2の半円弧部1dに扁平編組線W1が巻き付けられることになる。
【0031】
つまり、第1の直線移動工程から第2の半回転工程により、トラック型巻芯1に扁平編組線W1が1ターンだけ巻き付けられることになる。
【0032】
第1の直線移動工程から第2の半回転工程の間に、巻ピッチ送り駆動機構6dにより、線ガイド部材6は、トラック型巻芯1に巻き付いた扁平編組線W3の幅だけ移動する。
【0033】
図11から判るように、コイル押え部材9は、トラック型巻芯1に巻き付いた扁平編組線W3を巻始め規制部材2側へと押さえている。これにより、線ガイド部材6から出てくる扁平編組線W1が、トラック型巻芯1に巻き取られた扁平編組線W3と線押え部材7の間に入り易くなる。
【0034】
次いで、巻芯周期運動制御装置5aは、アクチュエータ8eを作動し、ハンド8dで直線移動規制回転板8aを掴み、その掴んだ状態で第2の位置から第1の位置へと直線移動規制回転板8aを移動し、第1の位置で直線移動規制回転板8aをハンド8dで掴んだまま、アクチュエータ8eを停止する。直線移動規制回転板8aの直線移動規制突起8cは巻始め規制部材2の直線移動規制穴2cから抜けて、巻始め規制部材2とトラック型巻芯1の一体化物の直線移動の規制が解除される。
【0035】
以後、巻芯周期運動制御装置5aは、必要なターン数だけ、第1の直線移動工程から第2の半回転工程を繰り返す。
これにより、図12に示す如きトラック型エッジワイズコイルAを製造できる。
【0036】
−実施例2−
図13は、実施例2に係るトラック型エッジワイズコイル製造装置200を示す左側面図(図1に相当する。)である。図14は、図13の状態での一部省略正面図(図2に相当する。)である。
このトラック型エッジワイズコイル製造装置200は、線ガイド部材6を大きな板状体とし、線押え部材7の移動をガイドするガイド孔6fを設けたものである。巻ピッチ送り突起6eは、ガイド孔6fの内側に突き出したリブ状になっている。また、線ガイド部材6を支持するレール6g,6hと、巻ピッチ送り駆動機構6iとが追加されている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のトラック型エッジワイズコイル製造装置は、高周波での損失が少ない扁平編組線を用いたトラック型エッジワイズコイルの製造に利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 トラック型巻芯
2 巻始め規制部材
3 回転駆動軸
4 直線駆動装置
5a 巻芯周期運動制御装置
6 線ガイド部材
6a 線通過穴
7 線押え部材
8a 直線移動規制回転板
9 コイル押え部材
100,200 トラック型エッジワイズコイル製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆電線を編んだ編組線であって且つ断面が扁平形状の扁平編組線(W1)をトラック型にエッジワイズ巻きするためのトラック型巻芯(1)と、前記トラック型巻芯(1)に対する前記扁平編組線(W1)の巻始め位置を規制するための巻始め規制部材(2)と、前記トラック型巻芯(1)を回転させるための回転駆動軸(3)と、前記トラック型巻芯(1)を直線移動させるための直線駆動手段(4)と、前記直線駆動手段(4)を作動させて前記トラック型巻芯(1)の第1の直線部(1a)に平行な方向に前記トラック型巻芯(1)を直線移動させ前記トラック型巻芯(1)の第1の半円弧部(1b)の中心を前記回転駆動軸(3)に一致させ次いで前記回転駆動軸(3)を作動させて前記トラック型巻芯(1)を半回転させ次いで前記直線駆動手段(4)を作動させて前記トラック型巻芯(1)の第2の直線部(1c)に平行な方向に前記トラック型巻芯(1)を直線移動させて前記トラック型巻芯(1)の第2の半円弧部(1d)の中心を前記回転駆動軸(3)に一致させ次いで前記回転駆動軸(3)を作動させて前記トラック型巻芯(1)を半回転させる周期運動を繰り返すための巻芯周期運動手段(5a,5b)と、前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた状態での扁平編組線(W3)の曲がりとは逆向きの曲がり癖を付けてから前記扁平編組線(W1)を前記トラック型巻芯(1)に巻き取られるように供給すると共に前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)の巻数に応じて前記トラック型巻芯(1)に対して相対移動する線ガイド手段(6)と、前記線ガイド手段(6)から供給された扁平編組線(W1)を前記巻始め規制部材(2)の方向に押すと共に前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)の巻数に応じて前記トラック型巻芯(1)に対して相対移動する線押え部材(7)とを具備したことを特徴とするトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)。
【請求項2】
請求項1に記載のトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)において、前記線ガイド手段(6)は、前記扁平編組線(W1)を通過させることで前記曲がり癖を付ける線通過穴または溝(6a)を有することを特徴とするトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)において、前記トラック型巻芯(1)を半回転させるときに前記トラック型巻芯(1)が直線移動しないように規制する直線移動規制手段(8a〜8e)を設けたことを特徴とするトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)において、前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)と前記線押え部材(7)の間に前記線ガイド手段(6)から供給された扁平編組線(W1)が入り易いように前記トラック型巻芯(1)に巻き取られた扁平編組線(W3)を前記巻始め規制部材(2)の方向に押すコイル押え部材(9)を設けたことを特徴とするトラック型エッジワイズコイル製造装置(100,200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−119490(P2011−119490A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276094(P2009−276094)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】