説明

トラック用のエンジンオフ電動式空調システム

【課題】長距離輸送車両における環境を冷房するための空調システムを提供する。
【解決手段】空調システムは、電気駆動式の可変速度コンプレッサを含み、長距離輸送車両のエンジンが作動していないときのシステムの作動を可能にする。システムは、モジュール式であり、車両の側方荷物室への設置に適し、既存の車両がノーアイドリング空調を具備するよう改造されることを可能にする。システムのハウジングは、そこを貫通する2本の流路である1本の低温空気流路および1本の高温空気流路を形成する。高温空気流路は、凝縮器を少なくとも2回通過するように構成され、ハウジングの同じ壁を通って空気を吸い込み放出する。空気案内装置は、高温空気流路を流れる空気再循環の量を低減し、システムの効率を向上させるために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね空調システムに関し、より詳細には、長距離輸送トラック用の車両に搭載される空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な経済の拡大は、原材料および完成製品を求める輸送需要に対応することを強いられてきた。実際に、資格のある大型トレーラードライバーに対する需要は、市場の需要を満たす人員を補充して訓練する業界の処理能力を遥かに上回っていた。結果として、既存の要員および車両を活用しようとする輸送業界の要求は、市場の需要を満たす試みにおいて、道路上および車両内において費やされる時間を増加させることになった。
【0003】
ハイウェイの安全性を維持することを目指して、ドライバーが運転に費やし得る時間を管理する連邦規則が設定されることになった。そのような最大限の時間に到達すると、ドライバーは、車両を道路から外して休息を取るように要求される。料金所、計量所および休憩施設に止められているトラックの台数が、そのような規則に対する遵法性を示している。しかし、これらの場所は、しばしば、ドライバーが休息する場所を提供するものではない。このことは、車両内に居続けることを余儀なくしている。
【0004】
輸送業界の需要に応じて、かつドライバーが休息するように強要される場所を認識して、長距離輸送車両のメーカーは、車両の設計および製造において人間工学的要素における力点を増大させ続けてきた。実際に、現代の長距離輸送車両の内部は、車両の操作中にドライバーに掛かるストレスおよび疲労を最小限にする多くの機能を内包している。これらの機能は、例えば、シートにおける振動ダンパーおよび腰部サポートと、遮音性の向上と、暖房・換気・空調(HVAC)システムとを含み、ドライバーに快適な環境を提供する。必要とされる休息時間に適応させるために、そして、典型的には1人が運転する間にもう1人が寝ている2人の人員を含む運転チームの利用の増加を認識して、多くの長距離輸送車両は、仮眠室を含んでいる。この仮眠室は、温度制御されるものでもあり、その中で過ごす時間が滞在者に快適かつ落ち着きを提供するように温度制御される。
【0005】
仮眠室を空調するために、長距離輸送トラックにおける空調システムの多くは、エンジンベルト駆動式コンプレッサを採用する。これらのエンジンベルト式コンプレッサは、トラックのエンジンが作動している間は空調システム内に冷媒を循環させ、圧送するのに適切であるが、エンジンが停止しているときは作動させることができない。その結果として、長距離輸送車両のエンジンが作動し続け無い限り、空調システムは仮眠室を冷房し得ないことになる。残念ながら、単に運転室に空調を提供するためにのみエンジンを作動させておくことは、金銭を浪費し、トラックの寿命の全体にわたって発生する汚染を増大させる。
【0006】
この問題に対処するために、最新型の長距離輸送トラックのいくつかは、ノーアイドリング空調システムを備えて製造される。ノーアイドリング空調システムは、トラックのエンジンが停止しているときも、客室の冷房および/または暖房を提供することができる。このようなノーアイドリング空調システムは、典型的には、エンジンベルトの代わりに、1つ以上のバッテリで駆動される直流(DC)モータ駆動式の可変速度コンプレッサを使用してもよい。DCモータ駆動式コンプレッサを使用することによって、ノーアイドリング空調システムは、車両のエンジンが停止しているときであっても、仮眠室を冷房することが可能である。このようなノーアイドリングシステムは、本件出願の譲受人に対して譲渡されている、Vehicle Air Conditioning And Heating System Providing Engine On And Off Operation(エンジンオン及びエンジンオフ作動を備えている車両空調暖房システム)という標題の米国特許明細書第6,889,762号に開示されている。その教示内容および開示内容は、参照することによりそれら全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
残念ながら、多くの新しく製造された長距離輸送車両および現存するほとんどの長距離輸送車両は、そのようなノーアイドリング空調システムを含んでいない。その結果、トラック運転手は、快適に休息しようとする間、しばしば、理想に満たない2つの状況の間で選択するように強いられる。第1に、彼らは、彼らが休息する間に空調するため、ほぼ一晩中、車両のエンジンをかけ続けることを選択するかもしれない。この第1選択肢は、長距離輸送車両を稼動させるコストを大きく増加させ、トラックによって発生する汚染をも増大させる。何故なら、単に空調システムを作動させるためにのみ、エンジンをかけ続けなければならず、余分な燃料を燃焼させるからである。
【0008】
代替的に、トラック運転手は、エンジンを停止して、温度制御されない環境で休息するかもしれない。車両が駐車する場所の外部の温度および/または湿度が高い場合には、十分な休息を取ることが困難である。この第2選択肢は、エンジンが停止しているので車両を稼動させるコストを増大させないが、ドライバーは仮眠室における高くて不快な温度の故に十分に休息を取ることができないかもしれない。従って、長距離輸送車両の運転上の安全性は潜在的に低下する。
【0009】
ノーアイドリング空調システムを有していない新しい及び既存のトラックのために、ノーアイドリングシステムをトラックに設置し或いは組み込み改良することは、困難な仕事であるかもしれない。これは、少なからず、設置可能なスペースが限られているからである。また、仮にノーアイドリング空調システムを余りに小さな領域に設置しようとすると、システム内においてコンプレッサおよび凝縮器によって発生する温かいおよび/または熱い空気が、適切かつ十分には排出され得ないことになる。その結果、ノーアイドリング空調システムの効率は、大きく低下し、冷房出力もまた低下する。
【0010】
従って、当該分野では、車両のエンジンが作動しているかどうかに拘わらず、また、車両に容易におよび/またはモジュール式に取り付けられ得るようにした、車両内部の空調を効果的に行うことができる車両空調システムの需要が存在する。本発明は、このような空調システムを提供する。本発明のこれらおよびその他の利点、並びに追加の発明性ある特徴は、本文において提示される本発明の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記に照らして、本発明は、当該分野に存在する上述の問題およびその他の問題を克服する長距離輸送車両用の新規かつ改善した空調システムを提供する。より詳細には、本発明は、ノーアイドリング作動および長距離輸送車両の客室の空調をもたらす新規かつ改善した空調システムを提供する。更に詳細に言えば、本発明は、既存の車両に組み込まれてそのようなノーアイドリングシステムの利点をもたらし得るモジュール式設計によってノーアイドリング作動を提供する、新規かつ改善した空調システムを提供する。更に、本発明は、長距離輸送車両の側方荷物室内にシステムを取り付けることによって後付けできる新規かつ改善した空調システムを提供する。
【0012】
本発明の1つの実施の形態では、ハウジングの内部を2つのセクションに分割するように配設されたバリア壁をもつハウジングを有するモジュール式空調システムを提供する。ハウジングは、ハウジングの外部とハウジングの1つのセクションとの間において第1の開口および第2の開口を画成するフロントパネルを含んでいる。本システムは、ハウジングの1つのセクションの中に配設された第1の熱交換器とフロントパネルに近接してハウジングの他方のセクションの中に配設された第2の熱交換器とを利用する、コンプレッサ駆動式冷媒システムを含んでいる。第1のファンは、ハウジングの第1のセクションを貫通し、かつ第1の熱交換器を横断する、ハウジング内に形成された第1の流体流路を通る空気流動を供給するように配設されている。第2のファンは、第2の流体流路を通る空気流動を供給するように、フロントパネルの開口の一方に近接して配設されている。この第2の流体流路は、フロントパネルの第1の開口を通り、第2の熱交換器を1回目に通り、ハウジングの第2のセクションを通り、第2の熱交換器を2回目に通り、第2の開口を通るようにして、ハウジング内に形成される。
【0013】
好ましい1つの実施の形態では、フロントパネルは、2つの開口を分けている壁を含んでいる。好ましくは、そのシステムは、更に、開口の一方に近接してフロントパネルに取り付けられたプレナムを含んでいる。この実施の形態では、ファンは、プレナムと第2の熱交換器との間に配設される。好ましい1つの実施の形態では、コンプレッサ駆動式冷媒システムは、長距離輸送車両のエンジンが作動していないときに機能し得る可変速度の電気駆動式コンプレッサを含んでいる。好ましくは、そのコンプレッサは、ハウジングの第2のセクションに配設される。別の実施の形態では、コンプレッサ駆動式冷媒システムは、長距離輸送車両のエンジンが作動していないときに機能し得るDCモータ駆動式の可変速度コンプレッサを含んでいる。
【0014】
更に好ましい実施の形態では、そのシステムは、フロントパネルに近接して配設された換気口を含んでいる。その換気口は、フロントパネル内の第1の開口に近接する空気吸込み部分と、第2の開口に近接する空気出口部分とを含んでいる。好ましくは、空気吸込み部分は、1つの方向に空気流を案内するように配設された多くのルーバーを含んでおり、空気出口部分は、別の方向に空気流を案内するように配設された多くのルーバーを含んでいる。特に好ましい実施の形態では、これらのルーバーは、これらの間の空気再循環を低減するように配設されている。
【0015】
本発明の代替的な実施の形態では、長距離輸送車両の側方荷物室への取り付け用のエンジンオフ電動式空調システムを提供する。そのシステムは、第1の流体流路および第2の流体流路を形成するハウジングを含んでいる。ハウジングは、第2の流体流路の始端および末端を形成する第1の開口および第2の開口を有する。更に含まれるものは、電気モータ駆動式コンプレッサを利用する冷媒システムである。冷媒システムの第1の熱交換器は、第1の流体流路が少なくとも1回は横断するようにハウジング内に配設されている。冷媒システムの第2の熱交換器は、第2の流体流路が少なくとも2回は横断するようにハウジング内に配設されている。好ましくは、そのシステムは、ハウジングのフロントパネルに緊密に近接して配設された換気口をも含んでいる。この換気口は、第2の流体流路を流れる空気の再循環を低減するように構成されている。
【0016】
本発明の他の側面、目的および利点は、以下の詳細な説明および添付図面からより明らかとなるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書の中に組み込まれかつその一部を形成する添付図面は、本発明のいくつかの側面を例示し、その説明と共に、本発明の原理を説明するように機能する。
【0018】
本発明を特定の好適な実施の形態と併せて説明するが、これらの実施の形態に限定するものではない。逆に、添付の特許請求の範囲により定義されるように、本発明の精神および範囲により、全ての代替、改変、および均等物を含めるよう意図する。
【0019】
図1を参照して、本発明の1つの実施の形態で構成された空調システム10を説明する。本実施の形態の空調システム10は、好ましくは、長距離輸送車両、特に、以下で更に十分に説明するようにアフターマーケット改造用途として長距離輸送車両内に取り付けることができるモジュールである。しかし、以下の内容から当業者には理解されるように、本発明のシステム10は、長距離輸送車両の相手先ブランドによる生産(OEM)の構成要素として含まれてもよい。
【0020】
システム10は、コンプレッサ駆動式空調システムがその中に収容されるハウジング11を含んでいる。このようなシステムは、膨張弁12、蒸発器14、第1の空気流動装置16、コンプレッサ18、凝縮器20、および第2の空気流動装置22を含んでいてもよい。好ましくは、コンプレッサ18は、可変速度の電気駆動式コンプレッサである。典型的な1つの実施の形態では、コンプレッサ18は、可変速度の直流モータ駆動式コンプレッサである。それ故、空調システム10は、車両のエンジンが作動していないときに機能し得るノーアイドリング空調システムとして機能するようになっている。
【0021】
膨張弁12、蒸発器14、コンプレッサ18および凝縮器20は、例えば、配管または吸込みラインによって作動可能に接続されている。1つの実施の形態では、それらは、内蔵モジュール式空調システムを形成する常設接続を有する固定配管によって接続されている。システム10は、システム10の使用を通じて内部暖房が所望される場合には冷媒システムをヒートポンプとして作動させる逆転弁または他の手段を含んでいてもよい。
【0022】
第1の空気流動装置16は、蒸発器14に近接しかつそれに流体連通して配設され、冷房される車両の客室からの空気を流動させおよび/または吸い込んで、蒸発器14を通して客室へ戻すように構成されている。図1に示すように、蒸発器14および第1の空気流動装置16を通る空気の経路は、客室から蒸発器に向かう矢印24、空調システム10内の矢印26、および第1の空気流動装置16から出て冷房される客室に向かう矢印28によって示されている。好ましい実施の形態では、第1の空気流動装置16は、例えば遠心ファン(すなわち羽根車型ファン)のようなファンである。バリア36は、ハウジング11を分割し、ハウジング11内を流れる空気をファン16に導く(矢印26参照)。
【0023】
第2の空気移動装置22は、凝縮器20に近接して配設され、凝縮器20を通る空気を流動させおよび/または吸い込んで、そこから熱を取り除くように構成されている。好ましい実施の形態では、第2の空気流動装置22は、例えば軸流ファンのようなファンである。図1に示すように、凝縮器20および第2の空気流動装置22を通る空気の経路は、凝縮器に向かう矢印30、空調システム10内の矢印32、および第2の空気流動装置22の外に向かう矢印34によって示されている。図示したように、第2の空気流動装置22は、循環の間に少なくとも2回は空気を凝縮器20に通過させる。空気を凝縮器20に複数回通過させることによって、熱の放散が改善され、空調システム10の全体的効率も向上する。このような複数回通過空気流は、本発明のシステム10を、以下で更に十分に説明するように、それを通る空気流の容量が多くないかもしれない長距離輸送車両上の様々な場所に取り付けることを可能にする。
【0024】
引き続き図1を参照すると、前述のように、空調システム10のハウジング11は、概ね蒸発器14を凝縮器20から分離する、すなわちシステム10の低温側を高温側から分離する、バリア36を更に含んでいる。言い換えれば、バリア36すなわち壁は、概ね空調システム10のハウジング11を各区画に分割し、冷却された空気が温かい空気と混ざることを抑制および/または回避する。空調システム10を分割することに加えて、図1に示すように、バリア36は、更に、冷却されている空気(矢印24、26、28で示される)と、凝縮器20から熱を取り除いている空気(矢印30、32、34で示される)とをハウジング11内で導きおよび/または案内するように配設される。
【0025】
ここで図2を参照して、空調システム38の代替的な実施の形態を説明する。この実施の形態では、第2のファン40は、矢印42、44で示したように、凝縮器20を冷却する空気が凝縮器20の両側における2つの離間した場所において空調システム38の中に流入することを許容するように配設される。空気は、矢印46で示したようにハウジング11の内部を循環し、その後、矢印48で示したように、ファン40を通る単一の場所において空調システムから出て行く。図1に例示した前述の実施の形態と同様に、空気を凝縮器20に複数回通過させることが、そこからの熱の除去を向上させ、空調システム10の効率を向上させる。
【0026】
図2は、更に、他の構成要素を視認可能とするために図1では図示されなかった囲い壁37、39を示している。ハウジング11のこれらの囲い壁37、39は、システム10の高温領域および低温領域の間の分離を完全にして、ハウジング11内を通る適切な空気流が不適当に混合されることなく維持されることを確実にする。これは、システム10の効率を向上させるのに寄与する。
【0027】
ここで図3を参照する。図3は、図1に図示され説明された本発明の実施の形態の正面斜視図であり、空調装置10のハウジング11のフロントパネル50が、より明瞭に観察されるであろう。理解され得るように、フロントパネル50は、空気がファン22によってフロントパネル50内の開口52を経由して凝縮器20の露出部分を通ってハウジング11の中に吸い込まれることを確実にするように構成される。この実施の形態では、開口52は、ファン22の配置から横方向に位置決めされ、壁53でファン22の配置の領域と分離されている。ファン22が位置するフロントパネル50の領域57は、ファン22を通る以外に凝縮器への空気の出入がないように閉鎖される。空気がファン22によって吸い込まれる凝縮器20の表面積を増大させるために、フロントパネル50の領域57は、ファン22を収容するプレナム55がそれを覆って取り付けられる大きな開口を含んでいる。
【0028】
上述のように、矢印30で示したように、ファン22は、空気流をフロントパネル50内の開口52を通ってハウジング11の中に流入させて凝縮器20を横断させるように作動する。その後、空気は、ハウジング11の中を循環し(図1の矢印32を参照)、矢印34で示したようにファン22を経由してプレナム55を通ってハウジング11から放出される前に、再び凝縮器20を横断する。この構成は、これらの2本の空気流路が近接しているにも拘わらず、空気が、システム10の効率を低下させるハウジング11のフロントパネル50の直近の領域だけを循環しないことを確保する。
【0029】
さらに空気流を促進し、上述のようなハウジング11の前部の回りにおける空気の望ましくない再循環を禁止するために、空気案内装置すなわち図4に例示した換気口54が使用されてもよい。この換気口54は、フロントパネル50に近接して配設され、好ましくは開口52およびファン22の両者の少なくとも一部を覆うように配設される。換気口54は、空気再循環、すなわちシステム10の効率を低下させ得るフロントパネル50の直近の領域のみにおける空気循環の可能性を低下させるべく設計される。図4の実施の形態では、換気口54は、空気吸込み部分60および空気出口部分56を含んでいる。これらの部分56、60の各々は、他方の部分から離れる方向に向いた開口を有するルーバーを含んでいる。このようにして、空気は、矢印62で示したように、第1の方向からハウジング11の中に吸い込まれる。その後、空気は、空気出口部分を通って放出され、矢印58で示すように空気吸込み部分60から離れる方向に向かう。
【0030】
上述のように、本発明の1つの実施の形態は、既存の車両にノーアイドリング空調システムを供給するアフターマーケットシステムとして長距離輸送車両の中に取り付けられるために特に適切である。このような1つの実施の形態では、システム10は、例えば図5に示したように、長距離輸送車両66の側方荷物室64の中に取り付けられてもよい。側方荷物室は、長距離輸送車両66の外部環境すなわち外気に対するアクセスだけでなく、車両66の仮眠室68および/または運転席70へのアクセスをも提供し、或いは迅速かつ容易に提供するように改装することができる。
【0031】
この実施の形態におけるコンパクトなモジュール式設計の構成によって可能となるそのような取り付けでは、フロントパネル50(図3参照)が区画64のドア72に近接して配設されるように、空調システム10が長距離輸送車両66の区画64の中に設置される。好ましくは、換気口54は、区画64の範囲でシステム10に出入りする方向付けられた空気流を供給するため、ドア72の中に設置され、凝縮器の冷却とシステム10の効率的な作動とを提供する。ダクト(図示せず)が、長距離輸送車両66の内部から、システム10の蒸発器を通って、その内部へ戻る空気循環を提供するために使用される。
【0032】
代替的な1つの実施の形態では、空調システム10のハウジング11のフロントパネル50は、区画64のドア72に取って代わるべく大きさ及び寸法が設定される。このような実施の形態では、ドア72が取り除かれ、空調システム10は、開放区画64の中に取り付けられて固定される。好ましくは、換気口54は、上述のようにシステム10の向上した効率の作動を提供するために、フロントパネル50を覆うように取り付けられる。
【0033】
このモジュール設置配列では、空調装置10は、車両のエンジンを作動させることなく仮眠室68および/または運転室70を冷房することができる。更に、システム10は、システムの作動効率を向上させるために、矢印30および34で示したように再循環を防止するような方法で空気を外部環境から引き込んだり換気したりする。これは、少なくとも部分的には凝縮器20の中を流れる空気の複数回の通過の故に、エネルギーの取り込みを低下させ、システムの作動寿命を引き延ばす。
【0034】
特に、第1のファン16は、仮眠室68および/または運転室70の環境内部からの空気を吸い込み、空気を冷却及び除湿するために蒸発器14に空気を流す。その後、冷却除湿された空気は、環境が快適な温度になるまで、仮眠室68および/または運転室70の中に流入する。その際、空調システム10を温度制御することができる。システム10は、出願人が共通する、「Vehicle Air Conditioning and Heating System Providing Engine On and Engine Off Operation」(エンジンオン作動およびエンジンオフ作動を提供する車両の空調兼暖房システム)という標題の米国特許明細書第6,889,762号において記述したように、制御されてもよい。その教示内容および開示内容は、参照することによりそれら全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0035】
空調システム10の他方の側面では、第2のファン22が、外部環境から空気を引き込み、その空気を少なくとも2回凝縮器20に通して流し、凝縮器20から熱を放散させる。その後、加熱された空気は、外部環境に排出される。再循環が低減されて空調装置が効率を向上させて機能することを確実にするために、換気口54が使用されてもよい。上述のように、換気口54は、空気再循環を引き起こさない方向において、空気を凝縮器20の中に引き込み、かつそこから排出させるようにする。
【0036】
上述の内容から、当業者は、本発明が、車両の中に容易におよび/またはモジュール式に取り付けることができ、エンジン作動中だけでなくエンジン停止すなわちノーアイドリング状態においても車両の内部の空調を効率的に提供し得る、車両空調システムを提供すると認識することであろう。
【0037】
本明細書中で引用する公報、特許出願および特許を含むすべての文献は、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込んだのと同様に、また、その開示内容のすべて記載されているのと同様に、ここで参照して組み込まれる。
【0038】
本発明の説明に関連して(特に特許請求の範囲に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の記載は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に記載されているのと同様に、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中の如何なる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、特許請求の範囲に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0039】
本明細書中では、発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、好ましい実施の形態で考えられるすべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の教示内容に従って構築される空調システムの1つの典型的な実施の形態における平面かつ略後方の斜視図である。
【図2】本発明の教示内容に従って構築される空調システムの代替的な実施の形態の平面斜視図である。
【図3】図1の空調システムの正面斜視図である。
【図4】図1の空調システムにおいて採用される空気案内装置の正側面斜視図である。
【図5】図1の空調システムが取り付けられた長距離輸送車両の平面後方斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
10 空調システム
11 ハウジング
14 蒸発器
16 第1の空気流動装置
18 コンプレッサ
20 凝縮器
22、40 第2の空気流動装置
36 バリア
50 フロントパネル
52 開口
54 換気口
55 プレナム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングであって、前記ハウジングの内部を第1のセクションと第2のセクションとに分割する前記ハウジング内に配設されたバリア壁を有し、前記ハウジングの外部と前記ハウジングの前記第2のセクションとの間で流体連通する第1の開口と第2の開口とを形成するフロントパネルを含むハウジングと;
前記ハウジングの前記第1のセクション内に配設された第1の熱交換器と、前記フロントパネルに近接して前記ハウジングの前記第2のセクション内に配設された第2の熱交換器とを含むコンプレッサ駆動式冷媒システムと;
前記ハウジングの前記第1のセクションを通りかつ前記第1の熱交換器を横断する前記ハウジング内に形成された第1の流体流路を通る空気流動を供給するように配設された第1の空気流動装置と;
前記フロントパネルの前記第1の開口を通り、前記第2の熱交換器を1回目に通り、前記ハウジングの前記第2のセクションを通り、前記第2の熱交換器を2回目に通り、更に前記第2の開口を通る前記ハウジング内に形成された第2の流体流路を通る空気流動を供給するように、前記フロントパネルの前記第2の開口に近接して配設された第2の空気流動装置とを備える;
モジュール式空調システム。
【請求項2】
前記フロントパネルが前記第1の開口を前記第2の開口から分離する壁を含む、請求項1に記載のモジュール式空調システム。
【請求項3】
前記フロントパネルを貫通する前記第2の開口に近接して前記フロントパネルに取り付けられたプレナムをさらに備える、請求項1に記載のモジュール式空調システム。
【請求項4】
前記第2の空気流動装置が前記プレナムと前記第2の熱交換器の間に近接して配設された、請求項3に記載のモジュール式空調システム。
【請求項5】
前記コンプレッサ駆動式冷媒システムが、長距離輸送車両のエンジンが作動していないときに作動し得る可変速度の電気駆動式コンプレッサを含む、請求項1に記載のモジュール式空調システム。
【請求項6】
前記コンプレッサが前記ハウジングの前記第2のセクションに配設された、請求項5に記載のモジュール式空調システム。
【請求項7】
前記コンプレッサ駆動式冷媒システムが、長距離輸送車両のエンジンが作動していないときに作動し得るDCモータ駆動式の可変速度コンプレッサを含む、請求項1に記載のモジュール式空調システム。
【請求項8】
前記フロントパネルに近接して配設された換気口を更に備え、前記換気口が、前記フロントパネルの前記第1の開口に近接する空気吸込み部分と、前記第2の開口に近接する空気出口部分とを含む、請求項1に記載のモジュール式空調システム。
【請求項9】
前記空気吸込み部分が空気流を第1の方向に案内するように配設された第1の複数のルーバーを含み、前記空気出口部分が空気流を第2の方向に案内するように配設された第2の複数のルーバーを含む、請求項8に記載のモジュール式空調システム。
【請求項10】
前記空気吸込み部分が第1の複数のルーバーを含み、前記空気出口部分が第2の複数のルーバーを含み、前記第1および前記第2の複数のルーバーがそれらの間における空気再循環を低減するように配設された、請求項8に記載のモジュール式空調システム。
【請求項11】
前記第1の空気流動装置が遠心ファンである、請求項1に記載のモジュール式空調システム。
【請求項12】
前記第2の空気流動装置が軸流ファンである、請求項1に記載のモジュール式空調システム。
【請求項13】
前記ハウジングが長距離輸送車両の荷物室に取り付けられるのに適する、請求項1に記載のモジュール式空調システム。
【請求項14】
前記フロントパネルが前記長距離輸送車両の荷物室ドアに取って代わるのに適する、請求項13に記載のモジュール式空調システム。
【請求項15】
長距離輸送車両の側方荷物室に取り付けるエンジンオフ電動式空調システムであって:
ハウジングであって、前記ハウジング内を通る第1の流体流路と第2の流体流路とを形成し、前記第2の流体流路の始端および末端を形成する第1の開口および第2の開口を含むハウジングと;
電気モータ駆動式コンプレッサと、第1の熱交換器であって前記第1の流体流路が少なくとも1回前記第1の熱交換器を横断するようにハウジング内に配設された第1の熱交換器と、第2の熱交換器であって前記第2の流体流路が少なくとも2回前記第2の熱交換器を横断するようにハウジング内に配設された第2の熱交換器とを含む冷媒システムとを備える;
エンジンオフ電動式空調システム。
【請求項16】
前記第1の開口および前記第2の開口が前記ハウジングのフロントパネルを貫通して位置決めされる、請求項15に記載のエンジンオフ電動式空調システム。
【請求項17】
前記第2の熱交換器が、前記第2の流体流路が前記第1の開口及び前記第2の開口で前記第2の熱交換器を横断するように前記フロントパネルに緊密に近接して配設された、請求項16に記載のエンジンオフ電動式空調システム。
【請求項18】
前記フロントパネルに緊密に近接して配設された換気口を更に備え、前記換気口が、前記第2の開口部から前記第1の開口部への空気の再循環を低減するように構成された、請求項16に記載のエンジンオフ電動式空調システム。
【請求項19】
前記第1の流体流路に流体連通して配設された第1のファンと、前記第2の流体流路に流体連通して配設された第2のファンとをさらに備える、請求項15に記載のエンジンオフ電動式空調システム。
【請求項20】
前記第2の熱交換器が凝縮器である、請求項15に記載のエンジンオフ電動式空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−201410(P2008−201410A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−37067(P2008−37067)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(508051137)バーグストローム・インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Bergstrom, Inc.
【住所又は居所原語表記】2390 Blackhawk Road P.O.Box 6007 Rockford Illinois 61125−6007 United States of America
【Fターム(参考)】