説明

トラップ装置

【課題】漏水等の品質低下を招くことなく、製造コストを低減できるトラップ装置を提供する。
【解決手段】トラップ装置は、湯水の流れ方向に平行な面を基準に2分割された流路形成部材2、3で構成されている。この2つの流路形成部材2、3は、合致させた状態で溶着によって接合されるもので、この状態で洗い場側接続口6と浴槽側接続口5と排水側流路7と連結流路8と封水部10のそれぞれが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽側及び洗い場側から排出される湯水を外部に排水するトラップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室や台所等の所謂水回りには、排水設備が備えられており、水回りにおいて発生した使用済みの湯水は、その排水設備を介して、外部の下水配管等に排水される。特に、浴室においては、浴槽と洗い場の別々の場所において発生した使用済みの水(具体的には、浴槽に溜められた湯水や洗い場における流し湯等)を合理的に排水するため、従来より、床下において浴槽側と洗い場側の双方から排出される湯水を合流させて排水できる排水構造が採用されている。
【0003】
また、この種の排水設備は、一般的に、浴槽や洗い場において排水された湯水を封水し、下水側の臭気や害虫等の進入を阻止可能なトラップ装置と、洗い場あるいは浴槽において排水された湯水をトラップ装置側に流す排水配管とで構成されている(例えば特許文献1)。
【0004】
そして、トラップ装置は、排水配管と一体的に接続される主トラップ部材と、主トラップ部材の湯水導入口側に一体的に接着されるヘリサート部材と、ヘリサート部材に脱着可能に取り付けられ主トラップ部材と封水部を形成する副トラップ部材等によって構成されている。
【0005】
ところで、従来技術の排水設備においては、排水配管と、主トラップ部材と、ヘリサート部材の3部材を、通常、浴室の床下に配置させる前に一体的に組み立てる。即ち、施工現場あるいは工場において、予めこの3部材を一体的に接続した複合体を形成しておき、その複合体を浴室の床下に取り付ける。より具体的に言えば、従来技術においては、排水配管と、主トラップ部材と、ヘリサート部材の3部材を予め別々に成形しておき、浴槽や洗い場に取り付ける前に、接着剤等を用いて一体的に接続して複合体を形成する方法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−182118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、複合体の製造において、前記3部材のそれぞれに成形金型を用意する必要があったり、さらに各部材を接着剤で接続する接続工程を複数回行う必要があっため、製造コストが嵩んでしまう不満があった。
【0008】
また、接続工程に関して付言すると、接着剤による管部材の接続は、接着具合のばらつきにより、漏水を生じさせる懸念があるため、入念な漏水検査等が必要となり、さらなるコストの増加の要因となっていた。
【0009】
そこで、本発明では、漏水等の品質低下を招くことなく、製造コストを低減できるトラップ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、浴槽側に接続される浴槽側接続口と、洗い場側に接続される洗い場側接続口と、浴槽側接続口と洗い場側接続口とを結ぶ連結流路と、浴槽及び洗い場から排出される湯水を排水する排水側流路と、前記連結流路の中途に配された封水部とを有するトラップ装置であって、湯水の流れ方向に平行な面を基準に2分割された流路形成部材を有し、当該流路形成部材同士を合致させた状態で、洗い場側接続口と浴槽側接続口と排水側流路と連結流路と封水部のそれぞれが形成されるものであって、流路形成部材同士は、合致した状態で溶着によって接合されていることを特徴とするトラップ装置である。
【0011】
本発明のトラップ装置は、湯水の流れ方向に平行な面を基準に2分割された流路形成部材を有し、その流路形成部材同士を合致させて形成した構成とされている。即ち、本発明では、従来技術のように別々の成形金型で排水配管や主トラップ部材等を成形する必要がなく、同一の成形金型で前記排水配管と主トラップ部材にあたる部分を一体的に成形することができる。
【0012】
さらに、本発明では、合致させた流路形成部材同士を溶着によって接合しているため、接着剤を用いる場合に比べると、部材同士を短時間に一体化できる上、接着具合のばらつきが発生し難い。
【0013】
また、本発明においては、例えば、主トラップ部材に接着されるヘリサート部材を、流路形成部材に含まれるように成形することもできるため、従来技術に言う主トラップ部材と、排水配管と、ヘリサート部材の3部材を一体的に成形することができる。
【0014】
以上により、本発明のトラップ装置は、従来技術とほぼ同様の構造を確保しつつ、成形すべき部品点数を減らすことができるため、実質的に製造コストの減縮を図ることができる。さらに、部材同士を溶着によって接続することで、高品質のものを短時間に製造できるため、生産性を向上させることができる。
【0015】
なお、溶着には、公知技術の振動溶着や高周波溶着等が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のトラップ装置では、湯水の流れ方向に平行な面を基準に2分割された流路形成部材を合致させて形成されているため、従来より成形すべき部品点数が少ない。さらに、合致させた流路形成部材同士は、溶着によって接続されているため、接着具合にばらつきが発生し難く、作業効率が高い。これにより、品質低下を招くことなく、製造コストを減縮したトラップ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るトラップ装置を浴槽及び洗い場の床面に取り付けた状態を示す断面図である。
【図2】図1のトラップ装置の複合部材を示す斜視図である。
【図3】図2の複合部材の一方の流路形成部材を概念的に示すE方向矢視図である。
【図4】流路形成部材の概念的な断面図であり、(a)は図2のA−A断面図で、(b)は図2のB−B断面図で、(c)は図2のC−C断面図で、(d)は図2のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本実施形態に係るトラップ装置1について説明する。なお、以下の説明においては、上下左右の方向は、特に断りがない限り、トラップ装置1の通常の設置状態を基準に説明する。
【0019】
トラップ装置1は、浴室の床下に配され、浴槽側から排出される湯水と、洗い場側から排出される湯水を外部の下水配管等に排水するものである。
【0020】
本実施形態のトラップ装置1は、図1に示すように、複合部材4と、取付部材25及び補助部材26によって構成されている。
【0021】
複合部材4は、2つの流路形成部材2、3(図2)を一体的に接合させた部材であり、浴槽の排水用開口27に接続される浴槽側接続口5と、洗い場の排水用開口28に接続される洗い場側接続口6と、浴槽側接続口5と洗い場側接続口6とを結ぶ連結流路8と、連結流路8の中途に設けられた封水部10と、下水配管等に案内する排水側流路7を有する部材である。
【0022】
各部分について具体的に説明すると、浴槽側接続口5及び洗い場側接続口6は、上方に開口した開口部である。そして、図1に示すように、浴槽側接続口5の開口径は浴槽の排水用開口27の開口径とほぼ同じ径に設定され、洗い場側接続口6の開口径は洗い場の排水用開口28の開口径とほぼ同じ径に設定されている。また、浴槽側接続口5と洗い場側接続口6には共に、内壁の周方向に雌ネジ部24、25(図2)が形成されている。
【0023】
連結流路8は、湯水の流れ方向に沿った方向の断面形状がほぼ凹状であり、図1に示すように、浴槽側接続口5から下方に延びた浴槽側垂直流路部20と、洗い場側接続口6から下方に延びた洗い場側垂直流路部21と、浴槽側垂直流路部20の下端部と洗い場側垂直流路部21の下端部を直線状に繋いだ接続流路部22によって構成されている。そして、接続流路部22は、浴槽側から洗い場側に向かって若干下り勾配に設定されている。
【0024】
また、洗い場側垂直流路21には、接続流路部22と対向する位置に排水側流路7が接合されており、その接続部から下流に向かって若干下り勾配に設定されている。
【0025】
従って、連結流路8においては、浴槽側接続部5から導入された湯水は洗い場側に向かって流れて排水側流路7に導入され、洗い場側接続部6から導入された湯水は浴槽側に向かうことなく排水側流路7に導入される。
【0026】
封水部10は、洗い場側接続口6のほぼ直下に位置し、洗い場側垂直流路21のほぼ中央に位置する有底状の円筒部分である。具体的には、封水部10は、洗い場側垂直流路21の内径より小さい径の円筒壁23が、洗い場側垂直流路21の底部から立設するように設けられて形成されている。より詳しく言えば、円筒壁23の接続流路部22側には、接続流路部22と連通した連通孔29が設けられている。即ち、湯水が封水部10に導入されると、まず円筒壁23の内側に溜められる。その後、継続した湯水の導入があれば、円筒壁23の突端部を越境した湯水が順次、排水側流路7に排出される。なお、封水部10に一旦湯水が溜められると、人工的に排出しない限り、封止状態が維持される。
【0027】
取付部材25は、従来のそれと同様の部材であり、複合部材4を浴室の床下に固定するためのもので、浴槽側取付部材40と洗い場側取付部材41がある。即ち、浴槽側取付部材40は、浴槽の排水用開口27を介して、浴槽の内側から複合部材4の浴槽側接続口5に接続されるもので、洗い場側取付部材41は、洗い場の排水用開口28を介して、洗い場の内側から複合部材4の洗い場側接続口6に接続されるものである。
【0028】
補助部材26は、複合部材4の封水部10と対になる円筒体であり、外径が封水部10を形成する円筒壁23の内径より小さい部材である。即ち、封水部10の内部に補助部材26が配されることで、封水部10の流路形状を「S」字状にすることができる。即ち、洗い場側接続口6から導入された湯水は、まず補助部材26の内側に流入し、封水部10の底部側で補助部材26と円筒壁23との間に流れ込む。そして、補助部材26と円筒壁23との間を上方に向かって流れ、排水側流路7に導入される。また、浴槽側接続口5から導入された湯水は、ほぼ直接的に補助部材26と円筒壁23との間に流入されて、補助部材26と円筒壁23との間を上方に向かって流れ、排水側流路7に導入される。このように、補助部材26を備えることで、湯水の滞留効果を高めることができるため、封水効果が高まる。
【0029】
次に、本実施形態の特徴的構成たる2つの流路形成部材2、3について説明する。
【0030】
本実施形態における2つの流路形成部材2、3は、熱可塑性樹脂であり、トラップ装置1を湯水の流れ方向に平行な面を基準に、複合部材4を均等に2分割し、互いに鏡像の関係にある部材である。そのため以下においては、2つの流路形成部材2、3のうち、一方を説明して、他方の説明を省略する。
【0031】
流路形成部材2は、図3に示すように、流路方向に連続した1つの部材により構成されており、浴槽側接続口5の一部を形成する浴槽側開口形成部30と、洗い場側接続口6の一部を形成する洗い場側開口形成部31と、連結流路8の一部を形成する連結流路形成部32と、封水部10の一部を形成する封水形成部33と、排水側流路7の一部を形成する排水流路形成部35とを有する。
【0032】
なお、流路形成部材3における流路形成部材2の各部位と対向する部分を、浴槽側開口形成部43、洗い場側開口形成部44、連結流路形成部45、封水形成部46、排水流路形成部47とする。
【0033】
浴槽側開口形成部30は、図3に示すように、半円状の部分である。即ち、浴槽開口形成部30は、流路形成部材3の半円状の浴槽側開口形成部43が合致されて浴槽側接続口5が形成される。
【0034】
洗い場側開口形成部31は、図3に示すように、浴槽側開口形成部30より開口径及び外径が大きい半円状の部分である。即ち、洗い場側開口形成部31は、流路形成部材3の半円状の洗い場側開口形成部44が合致されて洗い場側接続口6が形成される。
【0035】
連結流路形成部32は、図4(a)、(b)、(c)に示すように、断面形状が半円状であって、開水路状の流路である。即ち、連結流路形成部32は、流路形成部材3の開水路状の連結流路形成部45が合致されて連結流路8が形成される。
【0036】
封水形成部33は、図4(c)に示すように、断面形状が半円状の円筒壁形成部36を有し、流路形成部材3の封水形成部46が有する円筒壁形成部50が合致されて円筒部10を形成する部分である。
【0037】
排水流路形成部35は、図4(d)に示すように、断面形状が半円状であって、開水路状の流路である。即ち、排水流路形成部35は、流路形成部材3の開水路状の排水流路形成部47が合致されて排水側流路7が形成される。
【0038】
続いて、流路形成部材2、3の接合方法について説明する。
【0039】
本実施形態では、流路形成部材2、3同士を、公知の振動溶着を用いて接合している。
【0040】
即ち、流路形成部材2、3は、一方を固定し、他方を一定の周波数で振動させて両者の接合面を摩擦熱によって融解し、振動が終了した後に冷却固化させて溶着している。
【0041】
なお、本発明においては、振動溶着に限らず、超音波溶着等の摩擦熱を利用した接合方法であれば他の方法であっても構わない。
【0042】
ところで、このような溶着方法を採用した場合、流路形成部材2、3との境界部に溶融した樹脂が接合面からはみ出してリブ状のバリ18を形成する。即ち、図2に示すように、バリ18は、主に複合部材4の外側であって、流路に沿って形成される。通常、このようなバリ18は、外観を損なうものとされているため、除去される。
【0043】
一方、複合部材4を浴室の床下に固定する場合、浴槽側接続口5及び洗い場側接続口6を浴槽の排水用開口27や洗い場の排水用開口28の位置に一致させてから固定しなければならない。
【0044】
そこで、本実施形態では、溶着によって発生するバリ18を、複合部材4を浴室の床下に配する際の位置決め手段として利用することとした。
【0045】
具体的には、浴槽と洗い場における複合部材4が当接し得る位置に、溝部(図示しない)を形成しておき、複合部材4のバリ18を浴槽と洗い場側の溝部に嵌め込んで、複合部材4の位置決めを行うこととした。これにより、わざわざ複合部材4を加工することなく位置決めを行うことができるため、製造コストを増加させることなく、施工性を向上させることができる。
【0046】
以上により、本実施形態では、本来、排水配管と主トラップ部材とヘリサートの3部材を別々に成形し、接着剤等で接続して複合部材を形成しなければならなかったところ、その3部材が一体化された流路の流れ方向に沿って2分割された流路形成部材2、3によって複合部材4を形成することができるため、部品点数を減らすことができ、製造コストを減縮することができる。また、摩擦熱を利用した振動溶着によって、流路形成部材2、3同士を接合しているため、短時間(10秒程度)で接合でき、生産性を向上させることができる。さらに、本実施形態では、接着具合のばらつきが発生し難いため、品質性が高い。
【0047】
上記実施形態では、洗い場側に封水部10が位置する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、浴槽側に封水部が位置するような構成を備えた複合部材であっても構わない。この場合、浴槽側の封止部に湯水が集まるようにして、浴槽側から排水側流路を介して外部に排水する構成が好ましい。
【0048】
上記実施形態では、連結流路8の接続流路部22を直線状にした構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、直線状の流路と曲線状の流路が組み合わさった流路部であっても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1 トラップ装置
2、3 流路形成部材
4 複合部材
5 浴槽側接続口
6 洗い場側接続口
7 排水側流路
10 封水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽側に接続される浴槽側接続口と、洗い場側に接続される洗い場側接続口と、浴槽側接続口と洗い場側接続口とを結ぶ連結流路と、浴槽及び洗い場から排出される湯水を排水する排水側流路と、前記連結流路の中途に配された封水部とを有するトラップ装置であって、
湯水の流れ方向に平行な面を基準に2分割された流路形成部材を有し、当該流路形成部材同士を合致させた状態で、洗い場側接続口と浴槽側接続口と排水側流路と連結流路と封水部のそれぞれが形成されるものであって、
流路形成部材同士は、合致した状態で溶着によって接合されていることを特徴とするトラップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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