トランスフェクト細胞の代謝選択のための組成物および方法
本発明は、新しい選択マーカーベクター、および真核細胞内の安定した遺伝子発現系を生成するためにこれらのベクターを使用するための方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、トランスフェクト細胞を選択する代謝選択マーカーとして、3−ケトステロイドレダクターゼのような真核生物のステロール/コレステロール生合成経路において有用な酵素を使用する、組成物および方法を提供する。一つの実施例において、前記方法は、3−ケトステロイドレダクターゼ、および少なくとも一つの異種タンパク質をコード化するベクターで、コレステロールに対し栄養要求性の細胞をトランスフェクトするステップと、コレステロールが不足した培地で生存する能力を有する細胞を選択するステップ、および/または完全合成培地および/または無血清培地におけるこれらの細胞内で異種タンパク質を生成するステップとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい選択マーカーベクター、および真核細胞内の安定した遺伝子発現系を生成するためにこれらのベクターを使用するための方法に関する。
【0002】
本出願は、参照することにより本書に組み込まれる、2005年5月18日出願の米国仮出願番号60/681,969の35U.S.C.§119(e)に基づき、利益を請求する。
【背景技術】
【0003】
哺乳類細胞培養技術の開発は、生物学的研究に革命をもたらした。細胞培養系は、ヒトへの臨床試験の危険性が高い場合、開発の初期段階において、新薬の毒性または薬効をテストするため、モノクローナル抗体のような、治療への応用に向けた複合ヒトタンパクを生成するため、そして成人および胚の幹細胞培養に関連して、細胞に基づいた治療法のためのプラットフォームとして、使用することができる。さらに、異種リコンビナントDNAを培養細胞株に導入する能力は、実験動物系の操作上強力な補助ツールを科学者に与える。
【0004】
近年、生体分子を発現し、後に治療薬を製造するために使用される細胞株の汚染に関する規制への懸念に取り組むことの必要性はより重大になっている。 バイオテクノロジー産業全般としては、潜在的な動物病原体、または疾病を引き起こす動物タンパク質が、将来生物製剤を介し、ヒト集団に導入されないことを確実とするため、市販細胞培養用のFBS−添加培地を使用しない傾向になってきている。無血清培地は、哺乳類細胞を培養するための標準プロトコルとなっており、特に生物学的製剤のパイプラインにおける遺伝子の発現と、タンパク質の精製に使用されている。
【0005】
NS−0マウス骨髄腫細胞株は、一般的に、LonzaのGS遺伝子発現系(Lonzaグループ、スイス、バーゼル)のようなタンパク質発現系で使用される。GS遺伝子発現系は、プラスミドベクターの細胞へのトランスフェクションのためのマーカーとして、酵素グルタミンシンテターゼ(GS)を使用することによって、外因性のグルタミンを成長培地に加えることなく生存するために十分なグルタミンを生成できないNS−0細胞の性質を利用している。
【0006】
またNS−0細胞はコレステロール要求体であって、結果として、この細胞株の成長を支えるために使用される培地に、コレステロールおよびグルタミンの両方を添加しなければならない状況となる。脂質は、水溶性を増加させるために、シクロデキストリンのような糖構成基に結合していなければならないので、外因性コレステロールを水溶性培地に加えることは、複雑で、時間がかかるプロセスである。さらに、結合プロセスは、本質的に不安定であり、結果として、非常に短い保存期間を有するコレステロール添加の成長培地となる。さらに、コレステロール要求性細胞株を培養するために、ウシ胎仔血清(FBS)添加の培地の代わりに、組成が化学的に明らかである完全合成の無血清培地(chemically defined, serum−free media,CD−SFM)が使用される場合、コレステロールの沈殿が頻繁に発生する。最終的に、PESのようなポリマーに対し、もともと親和性を有しているため、コレステロールは、このようなポリマーからなる小さな孔径の滅菌膜を通して簡単にろ過することができず、したがって最終的にろ過された培地において、コレステロールの量が有意に低減される。この問題はさらに、コレステロール添加の培地の調製のバッチ間における不一致の一因となる。また外因性コレステロールを、フィルターを通さずに直接培地に加えることによって、外来性物質および/または内毒素のような汚染物質をも取り込む可能性を増加させる。
【0007】
NS−0細胞のコレステロール要求性の基礎をなす分子機構が、近年同定され、特徴付けられている(European Collection of Cell Cultures−ECACC、No. 85110503、Dr J Jarvis寄託、MRC Laboratory of Molecular Biology、ケンブリッジ、73B(3)Methods in Enzymology(1981))。細胞株は、コレステロールの内因性生合成におけるステップを触媒する酵素をコードする遺伝子を発現しない。ベータ・ヒドロキシステロイド脱水素酵素の大きな酵素ファミリーの一員である3−ケトステロイドレダクターゼ(3−KSR)と呼ばれる酵素は、特定の遺伝子によってコードされている。3−KSRタンパク質は、コレステロールの前駆体であるジモステロンからジモステロールへの変換を触媒する(非特許文献1)。
【0008】
培養プロトコルをより効率的に、また水溶性培地におけるコレステロールの高溶解度への依存性を減少させることを目的として、NS−0細胞のコレステロール要求性に対処するための多種多様な技術が提案されている。一つのアプローチでは、CD培地を補うために、動物由来のコレステロールの代わりに、植物由来または合成の脂質を使用している(非特許文献2)。もう一つのアプローチは、NS−0細胞を設計することにより3−KSRを過剰に発現させ、それによって、酵素欠損を復帰させ、外因性コレステロールを加えることなく細胞株を培養させることである(非特許文献3)。最終的に、研究者はNS−0細胞における3−KSR遺伝子の不活性に対する分子的基礎を検討し、重要な上流の制御領域を脱メチル化することにより遺伝子の発現の回復を試みているが、これは3−KSR遺伝子の転写抑制を軽減するものである(非特許文献4)。
【非特許文献1】Marijanovicら、MOL. ENDOCRINOL.、第17巻第9号、第1715−25ページ、2003年。
【非特許文献2】Gorfienら、BIOTECHNOL. PROG.、第16巻第5号、第682−7ページ、2000年。
【非特許文献3】Sethら、J. BIOTECHNOL.、第121巻第2号、第241−52ページ、2006年。
【非特許文献4】Sethら、BIOTECHNOL. BIOENG.、第93巻第4号、第820−27ページ、2006年。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それにもかかわらず、バイオテクノロジー業界では、異種分子を発現することが可能な完全合成/無血清培地で、発現ベクターをトランスフェクションすることにより、定常発現株を生成することに対する必要性はいまだに大きい。さらに完全合成/無血清培地は、困難をともなう外因性コレステロールの添加を必要とせず、画一的に有用であることが極めて望ましい。本発明は、真核細胞のステロールもしくはコレステロール生合成経路内の酵素をコードする遺伝子またはポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供し、これにより、完全合成および/あるいは無血清培地で細胞が生存でき、培養が可能となる。またこの発現ベクターが、異種タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする遺伝子またはポリヌクレオチドをも構成する場合は、このベクターは、完全合成および/あるいは無血清培地で生成される異種タンパク質をコードする遺伝子を含むトランスフェクト細胞を選択するための代謝選択マーカーとして有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、新しい代謝選択マーカーベクター、さらに、これらのベクターを使用して真核細胞内で安定した遺伝子発現系を生成する方法に関する。
本発明は、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、異種ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドとを備えるベクターを含む。本発明は、ベクターで形質転換された宿主細胞をさらに含む。
【0011】
また本発明は、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドを備えるベクターを備えるベクター、と、下記の群より任意に選択される一つまたはそれ以上のものとを備えるキットを含む:コレステロールに対し栄養要求性である複数の宿主細胞;完全合成無血清培地;低播種およびクローン密度で、複数の宿主細胞の成長を支える成長補助剤;そのキットを使用するための少なくとも一つのプロトコルまたは説明書。
【0012】
さらに本発明は、コレステロールなしの培地で生存することができる細胞を選択する方法であって、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、任意に少なくとも一つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドを備えるベクターを、コレステロールに対し栄養要求性の真核細胞にトランスフェクトするステップと、コレステロールが不足する培地で生存する能力を有する細胞を選択するステップとをそなえる方法を含む。
【0013】
さらに本発明は、コレステロールが不足する培地で生存し、異種タンパク質を生成する能力を有する細胞を取得する方法であって、3−KSRのような酵素、および少なくとも一つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、ここに記載されるようなベクターを、コレステロールに対し栄養要求性の真核細胞にトランスフェクトするステップと、コレステロールが不足する培地で生存する能力を有する細胞を選択するステップとを備える方法をも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ここに記載される特定の方法および成分等に限定されず、変更しうることは明示である。またここで使用される専門用語は、特定の実施例を説明する目的においてのみ使用され、本発明の範囲を限定することを意図していないとうことを理解されたい。ここで、および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は文脈によって明確に指示されない限り、複数形も含むことを留意しなければならない。したがって、例えば、「一つのポリヌクレオチド」への言及は、一つまたはそれ以上のポリヌクレオチドであり、当業者に既知の同等のもの等を含む。「ベクター」という用語は、自己複製DNA分子に言及し、またここでは、「プラスミド」または「プラスミドクローニングベクター」と称される。ここで「プラスミドクローニングベクター」は、リコンビナントDNA実験において、外来または異種DNAのアクセプターとして使用されるプラスミドである。異種タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、容態または疾病の治療に用いることができる、あるいは試薬として有用な、いずれのタンパク質を包含するよう意図されている。
【0015】
他に定義されない限り、ここで使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。ここに記載されるものと同様または同等の、いずれの方法および材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、特定の方法、装置、および材料は、記載される。
【0016】
本発明は、酵素が欠損している真核細胞内の代謝選択遺伝子として、哺乳類のステロール生合成経路の酵素を利用することによって、トランスフェクト細胞の代謝選択に有用な組成物および方法を提供する。これら性質を有する真核細胞は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または細胞によって通常生成されない他の分子のような異種分子の生成に有用である。特に、本発明は、外因性コレステロール、または真核性のコレステロール生合成経路における3−KSRのコレステロール下流のいずれかの前駆体が不足している培地で、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のような異種分子の生成に対し、3−KSRが欠損している真核細胞株の生成において、代謝選択遺伝子として、3−ケトステロイドレダクターゼ(3−KSR)を利用する。3−KSRによって部分的に媒介された哺乳類ステロール生合成における生化学的経路を表す、図1を参照のこと。
【0017】
より詳しくは、本発明は、図1に提供されるような哺乳類のステロール生合成経路内の酵素(このような酵素として、例えば3−KSR)をコードするポリヌクレオチドおよびポリペプチド、3−KSR等の該酵素を発現させるためのベクター、3−KSR等の該酵素を欠損している細胞株、トランスフェクションプロセスで使用するための細胞培養培地および成長補助剤、および本発明の商業的開発のためのキットを提供する。
【0018】
本発明は、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメントまたはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを備えるベクターを含む。本ベクター内の酵素は、より詳しくは、3−ケトステロイドレダクターゼ(3−KSR)、さらにより詳しくは、マウス3−KSRを備えている。3−KSRをコードする特定の代表的なポリヌクレオチドには、配列番号3によって表されるアミノ酸配列をコードする配列番号1と、配列番号4によって表されるアミノ酸配列をコードする配列番号2を含む。
【0019】
上記のベクターは、好ましくはリコンビナントDNA発現ベクターであり、該ベクターは、任意にさらに、生成物の遺伝子のための、少なくとも第一転写単位を備えており、該転写単位は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にある。発現ベクターのその他の単位および要素の詳細は、ここに詳しく記載される。
【0020】
本発明は、さらに上に記載されるようなベクターで形質転換される、宿主細胞を含む。宿主細胞は、原生生物、菌類、動物界、および植物界を含む、当業者には既知の真核細胞である。したがって、菌類、植物、および哺乳類の細胞は、適切な宿主細胞として、本発明に包含されることを意図されている。宿主細胞は、好ましくは、コレステロールに対し栄養要求性である。本発明において有用な特定の宿主細胞は、NS−0、NS−1、およびCHO−215細胞であり、より詳しくは、NS−0マウス骨髄腫細胞である。
【0021】
また本発明は、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメントまたはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドを備えるベクターを備えるベクターと、下記の群より任意に選択される一つまたはそれ以上のものとを備えるキットを含む:コレステロールに対し栄養要求性である複数の宿主細胞;完全合成無血清培地;低播種およびクローン密度で、複数の宿主細胞の成長を支える成長補助剤;そのキットを使用するための少なくとも一つのプロトコルまたは説明書。上述のとおり、酵素は好ましくは3−KSRであり、より好ましくは、例えば、配列番号1および配列番号2を含む、酵素をコードする有用なポリヌクレオチドを含んだ、本ベクターを有するマウス3−KSRである。これらのポリヌクレオチドは、配列番号3および配列番号4を有する酵素のアミノ酸配列をそれぞれコードする。キット内のベクターは、好ましくは、リコンビナントDNA発現ベクターであり、該ベクターは、任意にさらに、生成物の遺伝子に対する少なくとも第一転写単位を備えており、該転写単位は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にある。
【0022】
キット内の宿主細胞は、好ましくは、NS−0、NS−1、およびCHO−215であり、より好ましくは、完全合成無血清培地および/または完全合成培地で成長させるのに適合した、NS−0マウス骨髄腫細胞である。
【0023】
本キットはさらに、任意で、無脂肪酸BSA、リコンビナントヒトインターロイキン−t(rhIL−6)、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、およびエタノールアミンの少なくとも一つを備える、成長補助剤を含んでもよい。より好ましくは、成長補助剤は、約0.1%から約5%の無脂肪酸BSA、約1ng/mLから約9ng/mLのrhIL−6、約5mg/mLから約15mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約5μg/Lから約8μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.01g/Lから約0.3g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約0.5mg/Lから約3.5mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える。より好ましくは、成長補助剤は、約1%の無脂肪酸BSA、約5ng/mLのrhIL−6、約10mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約6.7μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約2.0mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える。
【0024】
本発明はさらに、約0.1%から約5%の無脂肪酸BSA、約1ng/mLから約9ng/mLのrhIL−6、約5mg/mLから約15mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約5μg/Lから約8μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.01g/Lから約0.3g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約0.5mg/Lから約3.5mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える細胞培養補助剤の組成を含む。また本発明は、約1%の無脂肪酸BSA、約5ng/mLのrhIL−6、約10mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約6.7μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約2.0mg/Lmg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える細胞培養補助剤の組成を含む。
【0025】
さらに本発明は、コレステロール無しの培地で生存することができる細胞を選択する方法であって、真核細胞のステロール生合成経路において、酵素、その生物学的活性フラグメントまたはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、任意に少なくとも一つの、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを備えるベクターを、コレステロールに対し栄養要求性である真核細胞にトランスフェクトするステップと、コレステロールが不足する培地で生存するための能力を有する細胞を選択するステップとを備える方法を含む。好ましい宿主細胞は、NS−0、NS−1、およびCHO−215であり、より好ましくは、細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞、培地は完全合成無血清のものまたは完全合成のものである。本方法に有用な酵素は、3−KSRを備える。
【0026】
本発明はさらに、コレステロールが不足する培地で生存し、異種タンパク質を生成するための能力を有する細胞を取得する方法であって、3−KSRのような酵素と、異種タンパク質をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを含んだ、ここに記載されるようなベクターを、コレステロールに対して栄養要求性である真核細胞に、トランスフェクトするステップと、コレステロールが不足する培地で生存するための能力を有する細胞を選択するステップとを含む方法を備える。前述したように、細胞はコレステロールに対して栄養要求性であり、好ましくは、NS−0、NS−1、およびCHO−215、より好ましくは、完全合成無血清のまたは完全合成の培地で培養することができる、NS−0マウス骨髄腫細胞である。
【0027】
本発明はさらに、ここに記載される細胞培養系で異種タンパク質を生成する方法であって、コレステロールに対して栄養要求性である真核細胞に、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメントまたは生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、異種タンパク質をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドとを備えるベクターをトランスフェクトするステップと、異種タンパク質を生成する状況下で細胞を培養するステップとを備える方法を含む。本方法はさらに、当業者に既知の単離、分離、または精製の技術によって、細胞培養から異種タンパク質を取得するステップを備える。細胞は、コレステロールに対して栄養要求性であり、好ましくは、NS−0、NS−1、およびCHO−215、より好ましくは、完全合成無血清の、または完全合成の培地で培養することができる、NS−0マウス骨髄腫細胞である。
【0028】
さらに本発明は、より詳しくは、異種タンパク質を発現する方法であって、3−ケトステロイドレダクターゼと、少なくとも一つの異種タンパク質をコードする配列を備えたベクターをトランスフェクトした細胞を、好ましい細胞および培地は上に記載される、異種タンパク質を生成する状況下で、コレステロールが無い状態で培養するステップを供える方法を含む。
【0029】
1.3−ケトステロイドレダクターゼ
本発明は、異種タンパク質を生成するための代謝選択遺伝子として、真核性の3−KSRを使用する。一つの実施例において、マウス3−KSR、詳しくは、以下のようなヌクレオチド配列(配列番号1)を有し、HSD3β5(NCBIヌクレオチドアクセッション番号L41519)としても知られる3β−ヒドロキシステロイド:NADP+3−オキシレダクターゼが使用されてよい。
【0030】
【表1】
【0031】
配列番号1は、以下のようなアミノ酸配列を有する、特定の3−KSRをコードする。
マウスHSD3b5アミノ酸配列(配列番号3):
【0032】
【表2】
【0033】
また、その他の機能し得る酵素は、3−ケトステロイドレダクターゼとしてもっぱら機能すると知られている、17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼタイプ7(Hsdl7b7)、3β−ヒドロキシ−デルタ(5)−ステロイドデヒドロゲナーゼ(Hsd3b5)、ラット3β−Hsd III、マウス3β−HsdIV、マウス3β−Hsd Vおよびハムスター3β−Hsd IIIを含む遺伝子によってコードされるが、これらに限定されるものではない。特に、以下のマウスHSD17b7ヌクレオチド配列を含む、ヒドロキシステロイド(17−ベータ)デヒドロゲナーゼ7(ヌクレオチドアクセッション番号NCBI:BC011464)としても知られる、配列番号2を有するポリヌクレオチドである。
【0034】
【表3】
【0035】
配列番号2は、以下のようなアミノ酸配列を有する特定の3−KSRをコードする:マウスHSD17b7 アミノ酸配列(配列番号4):
【0036】
【表4】
【0037】
もう一つの実施例において、例えば、図1に記載されるような哺乳類ステロール生合成の第一および第二サイクルにおける、以下の前駆体の酵素的変換を促進する、3−KSRのようないずれの酵素を使用してよい。
4−メチル−5α−コレスタ−3,8,24−トリエン−3β−オール→3−KSR→3−オキソ−4α−メチル−5α−コレスタ−8,24−ジエン→3−KSR→3β−ヒドロキシ−4α−メチル−5α−コレスタ−8,24−ジエン(第一サイクル)
5α−コレスタ−3,8,24−トリエン−3β−オール→3−KSR→3−オキソ−5α−コレスタ−8,24−ジエン→3−KSR→デルタ−8,24−コレスタジエン−3β−オール(3β−ヒドロキシ−5α−コレスタ−8,24−ジエン;ジモステロール)(第二サイクル)
【0038】
本発明で使用されてよい、3−KSRのその他の具体的な例は、その他のマウス3−KSR(アクセッション番号NM_00295、NM010476、およびBC_012715)、ウシ(アクセッション番号XM_591611)、ヒト(アクセッション番号NM_016371)を含む。
【0039】
A.3−KSRポリヌクレオチド、フラグメント、およびその変異体
本発明は、いずれの3−KSRをコードするポリヌクレオチドに関する。3−KSRをコードするポリヌクレオチドに関する本発明の範囲には、ここに提供される配列のいずれか一つに示される配列を有するポリヌクレオチド;ストリンジェントな条件(特に極めてストリンジェンシーが高い条件)下でのハイブリダイゼーションによって、ここに記載される生物学的材料またはその他の生物学的起源(例えば、マウスまたはヒト起源)から取得されたポリヌクレオチド;提供されたポリヌクレオチドに対応する遺伝子;提供されたポリヌクレオチドの変異体、およびその対応する遺伝子、特にコードされた遺伝子産物の生物学的活性(例えば、一のタンパク質ファミリーおよび/または複数のタンパク質ファミリーへの遺伝子産物のアサインメント(assignment)、および/または該遺伝子産物に存在する機能ドメインの同定の結果、提供されたポリヌクレオチドに対応する遺伝子産物に起因する生物学的活性)を保持するこれらの変異体が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の範囲によって、および本発明の範囲内で意図される、その他の3−KSRポリヌクレオチド組成は、本開示が提供されれば、当業者には容易に明らかであろう。ここで使用されるように、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、特に指示されない限り、ポリヌクレオチドの長さまたは構造に関して、限定するためのものではない。
【0040】
3−KSRポリヌクレオチドは、ここに提供されるポリヌクレオチド配列のいずれか一つに示される配列を備えてよい。また本発明の3−KSRポリヌクレオチドは、天然3−KSRのDNAとの配列の類似性、または配列の同一性を有するポリヌクレオチドも含む。これは、関連する5’および3’非翻訳配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列を含む。配列の類似性を有する3−KSRポリヌクレオチドは、ストリンジェンシーが低い条件下で、例えば、50℃で10×SSC(0.9Mの生理的食塩水/0.09Mのクエン酸ナトリウム)の下でのハイブリダイゼーションによって、検出されてよく、また55℃で1×SSCにおいて洗浄される場合、結合されたままである。配列の同一性は、ストリンジェントな条件下、例えば、50℃またはそれ以上で0.1×SSC(9mMの生理的食塩水/0.9mMのクエン酸ナトリウム)の下、ハイブリダイゼーションによって決定されてよい。もちろん、ハイブリダイゼーションの方法および条件は、当業者には既知であり、さらなる3−KSRポリヌクレオチドを特定するために、すべての代替し得る方法および条件を用いてもよい。
【0041】
また本発明の3−KSRポリヌクレオチドは、3−KSRヌクレオチド配列の自然発生する変異体(例えば、縮重変異体、アレル型変異体など)を含む。本発明の3−KSRポリヌクレオチドの変異体は、ここに開示されるヌクレオチド配列で、推定変異体のハイブリダイゼーション、好ましくはストリンジェントな条件下のハイブリダイゼーションによって特定される。例えば、適切な洗浄条件を用いることによって、アレル型変異体が、選択されたポリヌクレオチドプローブに対して、多くて約25〜30%の塩基対(bp)の不一致を示す場合、ここに記載される3−KSRポリヌクレオチドの変異体は、特定することができる。一般的に、アレル型変異体は、約15〜25%bpの不一致を含み、一塩基対の不一致だけでなく、5〜15%、または2〜5%、あるいは1〜2%ほどのbpの不一致しか含まないことが可能である。
【0042】
また本発明は、ここに提供される3−KSRポリヌクレオチド配列に対応するホモログを包含するが、相同遺伝子の起源は、いかなる哺乳類種であってもよく、例えば、特にヒトといった霊長類種や、ラットのようなげっ歯類、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、酵母、線虫などであってもよい。例えばヒトやマウスのような哺乳類種間では、ホモログは一般的に、遺伝子やその部分に対する実質的な配列の類似性、例えば、少なくとも75%の配列の同一性を有し、通常少なくとも90%、さらに通常、ヌクレオチド配列間において、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列の同一性を有する。配列の類似性は、参照配列に基づいて計算されてよく、該参照配列は、例えば、保存モチーフ、コード領域の一部、隣接領域などのような、より大きな3−KSR配列のサブセットであってよい。参照配列は、通常、少なくとも隣接した長さ約18の塩基、さらに通常は少なくとも長さ約30の塩基であり、比較されている完全な3−KSR配列に及んでよい。
Altschulら、25 NUCLEIC ACIDS RES. 3389−3402(1997)に記載される、ギャップトBLASTのような配列分析のアルゴリズムは、当業者には既知である。
【0043】
一般的に、ここに記載される3−KSRポリヌクレオチドの変異体は、MPSRCHプログラム(Accelrys社、カリフォルニア州サンディエゴ)で実施されたようなSmith−Watermanの相同性検索アルゴリズムといった従来の方法を用いて決定されるように、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%より大きな配列の同一性を有し、少なくとも約90%、95%、96%、98%、99%、またはそれ以上より大きいことが可能である。例えば、以下の検索パラメータ:ギャップオープンペナルティ、12;およびギャップエクステンションペナルティ、1;で、アフィンギャップ検索を用いることで、Smith−Watermanの相同性検索アルゴリズムによって決定されるように、広範囲のDNA配列の同一性は、65%より大きいかもしれない。
【0044】
本発明の3−KSRポリヌクレオチドは、切断型またはそのフラグメント、特に細胞が無コレステロール培地で成長することができるようトランスフェクトされる、真核細胞において機能的な、生物学的に活性がある、または回復し得る3−KSR遺伝子産物をコードするフラグメントだけでなく、cDNAまたはゲノムDNAであってよい。cDNAは、天然の成熟mRNA種に見られる配列要素の配置を共有する、すべての核酸を含む。該配列要素には、エクソン、ならびに3’ および5’非コード領域がある。通常mRNA種は、隣接するエクソンを有し、介在イントロンが存在する場合は、核RNAスプライシングによって除去され、ポリペプチドをコードする連続的なオープン・リーディング・フレームをつくる。mRNA種は、エクソンおよびイントロンの両方と共に存在することがきるが、イントロンは、別のスプライシングによって除去されてよい。
【0045】
3−KSRゲノム配列は、通常、天然の染色体に存在するすべてのイントロンを含む、記載された配列に定義されるような、開始コドンと停止コドンの間に存在する核酸を備えてよい。さらに成熟mRNA内に見られる5’および3’非翻訳領域を含むことができる。ゲノム配列はさらに、翻訳領域の5’および3’末端のどちらかに、約1kbの、場合によってはそれ以上の長さの隣接ゲノムDNAを含む、プロモーター、エンハンサーなどのような特定の転写および翻訳の調節配列を含む。
【0046】
B.3−KSRポリペプチド、そのフラグメント、および変異体
本発明の3−KSRポリペプチドは、例えば、遺伝子コードの縮重の効力によって、開示された3−KSRポリヌクレオチドと同質ではない配列を有する核酸を含む、開示された3−KSRポリヌクレオチド、そのフラグメント、および変異体によってコードされるものを含む。
【0047】
3−KSRポリペプチドは、引用されたポリヌクレオチドによってコードされる全長のポリペプチドと、引用されたポリヌクレオチドによって示される遺伝子によってコードされるポリペプチドの両方に、そしてそれらの一部またはフラグメントにも、言及する。また3−KSRポリペプチドは、自然発生するタンパク質の変異体を含み、このような変異体は、自然発生する3−KSRタンパク質と同族あるいは実質的に類似しており、自然発生する3−KSRタンパク質と同一または異なった種の起源であることができる(例えば、ヒト、マウス、または引用されたポリペプチドを自然に発現する、その他の種、通常は哺乳類種)。一般的に、3−KSRポリペプチド変異体は、例えば、上記のパラメータを用いたBLAST 2.0によって測定されるように、ここに記載される3−KSRポリペプチドと、少なくとも約80%、通常は少なくとも約90%、より通常は少なくとも約95%の配列の同一性、またはそれ以上、例えば96%、97%、98%、または99%の配列の同一性を有する配列を有する。3−KSRポリペプチド変異体は、自然に、または非自然に、翻訳後に修飾されてよく、例えば、該ポリペプチドは、自然発生する3−KSRタンパク質のいずれの予測された、または実験的に特徴付けられた翻訳後修飾とは異なる、翻訳後修飾パターンを有してよい。
【0048】
また本発明は、3−KSRポリペプチド(またはそのフラグメント)のホモログを包含し、そのホモログは、いかなる種から単離されているものであってもよく、通常、例えば、マウス、ラットのようなげっ歯類、例えばウマ、ウシ、イヌ、ネコのような家畜、およびヒトといった哺乳類種である。ホモログは、ここに記載される特定の3−KSRタンパク質と、少なくとも約35%、通常は少なくとも約40%、さらに通常は少なくとも約60%のアミノ酸配列の同一性を有してよく、配列の同一性は、例えば、上記のパラメータで、BLAST 2.0アルゴリズムを用いて決定される。
【0049】
また本発明の範囲内において、ポリペプチド変異体は、突然変異体、フラグメント、および融合体を含む。突然変異体は、アミノ酸の置換、付加、または欠失を含んでよい。糖鎖付加部位、リン酸化部位、またはアセチル化部位を変更するため、または機能に必要の無い、一つまたはそれ以上のシステイン残基の置換または除去によって、ミスフォールドを最小限に抑えるため、アミノ酸置換は、保存されているアミノ酸の置換、または非不可欠なアミノ酸を排除するための置換であることができる。保存されているアミノ酸の置換は、総電荷、疎水性/親水性、および/または置換されたアミノ酸の立体的なかさを保存するものである。変異体は、タンパク質の特定領域(例えば、機能ドメイン、および/またはポリペプチドがタンパク質ファミリーの一員である場合、コンセンサス配列に関連する領域)の生物学的活性を保持または強化するよう、設計することができる。3−KSR変異体を生成するためのアミノ酸改変の選択は、アミノ酸の近接性(内部対外部)(例えばGoら、15 INT. J. PEPTIDE PROTEIN RES. 211(1980)を参照)、ポリペプチド変異体の耐熱性(例えばQuerolら、9 PROT. ENG. 265(1996)を参照)、望ましい糖鎖付加部位(例えば、OlsenおよびThomsen、137 J. GEN. MICROBIOL. 579(1991)を参照)、望ましいジスルフィド架橋(例えばClarkeら、32 BIOCHEM. 4322(1993)、およびWakarchukら、7 PROTEIN ENG. 1379(1994)を参照)、望ましい金属結合部位(例えばTomaら、30 BIOCHEM. 97(1991)、およびHaezerbrouckら、6 PROTEIN ENG. 643(1993)を参照)、およびプロリンループでの望ましい置換(例えばMasuiら、60 APPL. ENV. MICROBIOL. 3579(1994)を参照)に基づくことができる。システイン減少突然変異タンパク質は、米国特許番号4,959,314に開示されるように、生成することができる。
【0050】
また3−KSR変異体は、ここに開示されるポリペプチドのフラグメント、特に生物学的活性フラグメント、および/または機能ドメインに対応するフラグメントを含む。フラグメントが、ここに提供されるポリヌクレオチド配列の、いずれか一つの配列を有するポリヌクレオチドによってコードされる3−KSRポリペプチド、またはそのホモログと同質である、一続きのアミノ酸を有する場合、話題のフラグメントは、典型的に長さで少なくとも約10のアミノ酸(aa)から少なくとも約15aa、通常は少なくとも長さで約50aaであり、長さで300aaまたはそれ以上であることが可能であるが、通常は長さで約531aaを超えることはない。遺伝子コードは、適切なコドンを選択し、対応する変異体を構成するために使用することができる。特に、フラグメントは、3−KSRタンパク質の特定のドメインまたはエピトープを含んだものを含む。
【0051】
3−KSRのアミノ酸配列変異体は、核酸への適切なヌクレオチドの変更を導入することによって、またはペプチド合成によって調製されてよい。このような修飾には、例えば、3−KSRのアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または3−KSRのアミノ酸配列内の残基への挿入、および/または3−KSRのアミノ酸配列内の残基の置換を含む。最終的な構造が望ましい特性を有するならば、正式な3−KSR構造にたどり着くように、いかなる欠失、挿入、および置換の組み合わせもなされる。またアミノ酸の変更は、糖鎖付加部位の数や部位の変更、またはアセチル化およびリン酸化を含むその他の翻訳後修飾といった、3−KSRの翻訳後処理を変えてよい。
【0052】
突然変異誘発のために好ましい位置である、3−KSRの特定の残基または領域を識別する有用な方法は、CunninghamおよびWellsの244 SCIENCE 1081−85(1989)に記載されるように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、対象残基群の一残基またはグループは識別され(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluのような荷電残基)、中性のまたは負に荷電されたアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)によって置換されると、アミノ酸と抗原の相互作用に影響を及ぼす。置換に対する機能感受性を実証する、それらのアミノ酸の位置は、さらなる、またはその他の変異体に置換部位を導入することによって、絞り込まれる。したがって、アミノ酸配列変化を導入するための部位があらかじめ決定されている一方で、突然変異の特性は、本質的にあらかじめ決定される必要はない。例えば、所定の部位での突然変異の機能を分析するために、アラニンスキャニングまたはランダム変異導入法が、対象のコドンまたは領域で行われ、および発現した3−KSR変異体が、望ましい活性の有無でスクリーニングされる。
【0053】
アミノ酸配列の挿入は、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入だけでなく、一つの残基から、100またはそれ以上の残基を含むポリペプチドにおよぶ長さのアミノ−、および/またはカルボキシ−末端融合を含む。末端挿入の例には、N−末端メチオニル残基を有する3−KSRを含む。
【0054】
変異体のもう一つのタイプには、アミノ酸置換変異体がある。これらの変異体は、3−KSRタンパク質内に、異なった残基によって置換された、少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。
【0055】
3−KSRタンパク質の生物学的性質における実質的な変更は、(i)例えば、シート状またはヘリカル構造といった、置換部位におけるポリペプチドのバックボーンの構造、(ii)対象部位における分子の荷電または疎水性、または(iii)側鎖のかさ、を維持する上での効果が、著しく異なる置換を選択することによって、達成される。自然発生する残基は、一般的な側鎖性質に基づいてグループに分けられる。
【0056】
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile
(2)中性親水性:cys、ser、thr
(3)酸性:asp、glu
(4)塩基性:asn、gin、his、lys、arg
(5)鎖方向に影響する残基:gly、pro、および
(6)芳香族性:trp、tyr、phe
【0057】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの一のクラスのアミノ酸を、別のクラスのアミノ酸と交換することを伴う。保存的置換は、同一クラス内でのアミノ酸の交換を伴う。
【0058】
II.3−KSRをコードするベクター
本発明はさらに、コレステロールに対し栄養要求性である細胞内の、3−KSRのような、哺乳類ステロール生合成のための生化学的経路内のいずれかの酵素を発現するベクターを提供する。一般的にいずれかの原核生物のクローニングベクターは、ベクターの構築のために使用されてよい。ベクターは、哺乳類細胞のトランスフェクションに先立ち、ベクターDNAを単離するための大腸菌の宿主株内におけるベクターの増殖に有用な、バクテリア複製開始点を備えてよい。バクテリア複製開始点の例には、Col El、pUC、pBR322、または大腸菌の非病原株に起源するその他が含まれるが、これらに限定されない。ベクターはさらに、大腸菌内のプラスミドの高コピー数を拡大するための、選択マーカーを備えてよい。模範的な選択マーカーは、アンピシリン、カルベニシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ゲンタマイシン、サルファエトアゾール、トリメトプリム、およびその他といった、抗生物質に対する抵抗を与える遺伝子を含む。本発明のベクターに使用されてよい、付加的な選択マーカーは、熱ショック、金属解毒、およびその他の代謝プロセスに基づいた選択を与える遺伝子を含む。
【0059】
ベクターはさらに、3−KSR遺伝子の発現を推進するための真核性のプロモーターを備えてよい。これは、哺乳類のチミジンキナーゼ(TK)遺伝子プロモーターといった、最小限のプロモーター、またはシミアン・ウイルス40(SV40)複製開始点のような、より強力な転写カセット、および初期プロモーター領域であることが可能である。またイントロンAおよび/またはB配列の有無を問わず、サイトメガロウイルス(CMV)主要前初期(MIE)プロモーター領域、またはヒト延長因子1アルファ(EFα)のような、非常に強力なプロモーターも、3−KSR遺伝子の発現を促進するために使用されてよい。また真核性の転写終止配列、またはポリアデニル化部位も、3−KSR遺伝子の転写およびポリアデニル化シグナルを停止するために存在してよい。ポリアデニル化部位は、理論上は、いずれかの真核性の遺伝子に由来してよいが、一般的に使用される強力なポリアデニル化配列は、SV40レートポリAおよびウシ成長ホルモン(BGH)ポリAを含む。
【0060】
図2に示されるように、ベクターの一つの実施例(この場合、p3−KSRと名付ける)は、pUC由来のバクテリア複製開始点(ori)、およびこれらの抗生物質に対し感受性を有する大腸菌株に、アンピシリンまたはカルベニシリン耐性を与える、ベータ−ラクタマーゼ遺伝子(bla)を備えてよい。またベクターは、ポリリンカー領域にクローニングされた、異種リコンビナント配列の発現を促進するために、サイトメガロウイルス(CMV)主要前初期(MIE)プロモーターおよびエンハンサーを含んでよい。シミアン・ウイルス40(SV40)ポリアデニル化配列(SV40pA)は、それぞれの遺伝子からの新生mRNAを効率良くポリアデニル化するため、異種リコンビナント配列および3−KSR遺伝子の両方の下流に位置してもよい。SV40プロモーターおよび複製開始点(SV40 ori)は、この選択マーカーの発現を促進するため、3−KSR遺伝子のすぐ上流に位置してもよい。
【0061】
特定の実施例において、3−KSR遺伝子は、マウス肝cDNAライブラリから増幅されたマウス3−KSRのcDNAを直接クローンニングすることによって、ベクターに挿入されてよい。マウス肝cDNAライブラリから3−KSRを増幅するために設計されたプライマーは、例えば、pUC由来のベクターp3−KSR中の、SV40 oriおよびSV40ポリAとの間の領域に存在するPmlI部位と互換性があるように、PmlI末端を含んでよい。したがって、PmlIで制限酵素処理された3−KSRのcDNAは、この遺伝子をp3−KSRバックボーンのPmII部位にクローンニングするために使用されてよい。ベクター内の遺伝子の方向は、制限酵素解析(REN)、およびジデオキシ−終止DNAシークエンシングによって決定されてよい。
【0062】
対象となる少なくとも一つの異種ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、または遺伝子、あるいはカセットは、例えば、図3、4、または5に示されるように、3−KSR遺伝子を備えるベクターのマルチクローニング領域または部位に挿入される。挿入されたポリヌクレオチドまたはカセットは、真核性の、好ましくは哺乳類の宿主細胞における発現を可能とするプロモーターの制御下にある、または該プロモーターに操作可能に連結している。
【0063】
III.3−KSRをコードするベクターの細胞へのランスフェクション
対象となる異種タンパク質(および選択マーカーとしての3−KSR)をコードするポリヌクレオチドベクターの宿主細胞への導入は、当技術分野で既知の技術を用いて達成されてよい。このような既知の技術には、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレン・グリコール沈殿、超音波処理、トランスフェクション、形質導入、形質転換、およびウイルス感染が含まれるが、これらに限定されない。SAMBROOKら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(第3版 2001)を参照のこと。
【0064】
コレステロール栄養要求性が、3−KSR活性のような酵素活性に起因する、いずれの真核細胞、好ましくは哺乳類細胞は、トランスフェクションのために使用されてよい。典型的な細胞株には、NS−0(ECACC No. 85110503)、NS−1(ECACC No. 85011427)、およびCHO−215(Plemenitasら、265(28)J. Biol. Chem. 17012−17(1990))を含んでよいが、これらに限定されない。
【0065】
また本発明は、当初はコレステロールに対し栄養要求性ではないが、放射線、突然変異誘発物質、またはリコンビナント遺伝子ノックアウト技術を使用し、3−KSR活性をコードする内在性遺伝子を不活性化することによって、栄養要求性とされる、真核細胞、特に哺乳類細胞を包含してもよい。このような内在性遺伝子には、17β−ヒドロキシステロイド・デヒドロゲナーゼ・タイプ7(Hsdl7b7)、および3β−ヒドロキシ−デルタ(5)−ステロイドデヒドロゲナーゼ(Hsd3b5)をそれぞれコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。さらにもう一つの実施例において、対象となるノックアウト遺伝子は、もっぱら3−ケトステロイドレダクターゼとして機能すると知られている、ラット3β−HsdIII、マウス3βHsdIV、マウス3β−Hsd V、およびハムスター3β−HsdIIIを含んでよいが、これらに限定されない。
【0066】
3−KSR選択マーカー(および対象となる異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド)を含む発現ベクターがトランスフェクトされる、NS−0、NS−1、CHO−215、およびその他のコレステロール栄養要求性細胞株は、コレステロールが不足した培地で培養されるべきである。あるその他の実施例において、宿主細胞は、以下の不完全なリストにあるステロール前駆体を含む、いずれかの無血清および無コレステロール培地において培養されてよい:4−メチル−5α−コレスタ−3,8,24−トリエン−3β−オール、3−オキソ−4α−メチル−5α−コレスタ−8,24−ジエン、5α−コレスタ−3,8,24−トリエン−3β−オール、および/または3−オキソ−5α−コレスタ−8,24−ジエン。これらの前駆体は、コレステロールの生化学的経路において、3−KSRの上流で作用する。
【0067】
規制への懸念に取り組むために、(トランスフェクション前または後の)宿主細胞は、いずれの適した培地で培養されてよい。該培地には、無血清培地、無タンパク質培地、完全合成培地、または完全合成/無血清培地を含むいかなる組み合わせの培地が含まれるが、これらに限定されない。本発明のこの特別な側面は、動物由来のタンパク質、および/または起源不明のタンパク質が、リコンビナントタンパク質製品を、ヒトの治療または診断への使用には不適当にするという懸念を提言している。適した成長培地の一つの特定の実施例は、CDハイブリドーマ培地(Invitrogen(登録商標)社、カリフォルニア州カールズバッド)であり、これは、動物、植物、または合成起源のタンパク質を含まず、未特定のライセートまたは加水分解物を含まないことが確認されている、完全合成無血清培地である。
【0068】
本発明の宿主細胞は、CD−SFMのような適切な成長培地にすでに適合されているように、提供されてよい。多くの場合、細胞はトランスフェクションに先立ち、このような培地に適合される。その場合、細胞は、動物由来の成分を有していない、もう一つの完全合成無血清培地である、HyQ(登録商標) CDM4NS−0(Hyclone(登録商標)社、ユタ州ローガン)に適合されてよい。後者の市販されている培地は、コレステロール栄養要求性細胞株の培養を支えるための、十分な量のコレステロールを含んでいる。トランスフェクション後、細胞は、コレステロールを含まない適した選択培地で培養される。もう一つの方法として、トランスフェクトされた細胞は、既知の技術を用いて十分に脱脂され、親細胞の成長を支えないということが確認されている血清を添加した従来の培地を使用した、無コレステロール培地で培養される。
【0069】
トランスフェクションに続き、安定した形質転換細胞を選択するため、細胞は一般的に低密度で播種される。これに関し、いずれの適切な選択培地が使用されてよい。一つの実施例において、選択培地は、2mMのL−グルタミンまたはグルタマックス、および1×NEAA(非必須アミノ酸)(Invitrogen(登録商標)社、カリフォルニア州カールスバット)を添加した、CDハイブリドーマ培地を含んでよい。
【0070】
ある実施例において、成長補助剤の混合物が、トランスフェクション後の成長条件を最適化するために、選択培地に加えられる。成長補助剤は、トランスフェクション後に、いずれの適切な細胞株に加えられる。該細胞株は、NS−0、NS−1、CHO−215細胞を含むが、これらに限定されない。特定の実施例において、成長補助剤の混合物は、NS−0細胞に対する、トランスフェクション後の成長条件を最適化するために使用されてよい。一つの実施例において、成長補助剤の混合物は、血清アルブミン、インターロイキン−6、インスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、およびエタノールアミンを含んでよいが、これらに限定されない。
【0071】
いずれの適切な、市販されている型の血清アルブミンが使用されてよい。該血清アルブミンには、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウシ血清アルブミン画分v、および全ヒト血清アルブミンが含まれるが、これらに限定されない。ある実施例において、成長細胞にコレステロールを供給しうると考えられるコレステロール−血清アルブミン複合体を除去するため、血清アルブミンは、未処理のものの代わりに無脂肪酸のものであってよい。無脂肪酸BSAは、例えば、Research Organics社、オハイオ州クリーブランド)を含む、多くの会社から入手可能である。この成分の最終濃度は、限定されないが、選択培地で約0.1%から約5%、より詳しくは、約0.2%、約0.5%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、または約5.0%までを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、血清アルブミンの最終濃度は、選択培地で約1%である。
【0072】
成長条件を最適化するために使用されるもう一つの成長補助剤は、インターロイキン−6を含む。一つの実施例において、リコンビナントヒトIL−6(Promega社、ウィスコンシン州マディソン)が使用されてよい。IL−6の最終濃度は、限定されないが、選択培地で約1ng/mLから約9ng/mL、より詳しくは、約2ng/mL、約3ng/mL、約4ng/mL、約5ng/mL、約6ng/mL、または約9ng/mLまでを上限とし、それ以上を含んでよい。特定の実施例において、IL−6の最終濃度は、選択培地で約5ng/mLである。rhIL−6のようなIL−6の濃度は、製造者が報告した該サイトカインのEC50を対象とし、必要に応じてバッチ間で調整されてよい。
【0073】
成長補助剤の混合物はさらに、インスリン、詳しくは、リコンビナントヒトインスリン(RayBiotech社、ジョージア州ノークロス)を含んでよい。この成分の最終濃度は、限定されないが、選択培地で約5mg/Lから約15mg/L、より詳しくは、約6mg/L、約7mg/L、約8mg/L、約9mg/L、約10mg/L、約11mg/L、または約15mg/Lまでを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、インスリンの最終濃度は、選択培地で約10mg/Lであってよい。
【0074】
また亜セレン酸ナトリウムは、成長条件を最適化するために使用されてよい(J.T. Baker社、ニュージャージー州フィリップスバーグ)。この補助剤の最終濃度は、限定されないが、選択培地で約5.0μg/Lから約8.0μg/L、より詳しくは、約5.5μg/L、約6.0μg/L、約6.5μg/L、約7.0μg/Lまたは約8.0μg/Lまでを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、亜セレン酸ナトリウムの最終濃度は、選択培地で約6.7μg/Lであってよい。
【0075】
その他の実施例において、ピルビン酸ナトリウムは、成長補助剤に使用されてよい(SAFC Biosciences社、カンザス州レネクサ)。ピルビン酸ナトリウムの最終濃度は、限定されないが、選択培地で約0.01g/Lから約0.3g/L、より詳しくは、約0.05g/L、約0.1g/L、約0.15g/L、または約0.3g/Lを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、ピルビン酸ナトリウムの最終濃度は、選択培地で約0.11g/Lである。
【0076】
成長補助剤の混合物はさらに、エタノールアミン(Sigma−Aldrich(登録商標)社、ミズーリ州セントルイス)を含んでよい。この補助剤の最終濃度は、限定されないが、約0.5mg/Lから約3.5mg/L、より詳しくは、約1.0mg/L、約1.5mg/L、約2.0mg/L、約2.5mg/L、または約3.5mg/Lを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、エタノールアミンの最終濃度は、選択培地で約2.0mg/Lである。
【0077】
特定の実施例において、成長補助剤の混合物は、無脂肪酸BSA(0.1%〜5%)、rhIL−6(1ng/mL〜9ng/mL)、リコンビナントヒトインスリン(5mg/L〜15mg/L)、亜セレン酸ナトリウム(5μg/L〜8μg/L)、ピルビン酸ナトリウム(0.01g/L〜0.3g/L)、およびエタノールアミン(0.5mg/L〜3.5mg/L)(選択培地での最終濃度)を備えてよい。もう一つの特定の実施例において、成長補助剤の混合物は、無脂肪酸BSA(l%〜5%)、rhIL−6(0.5μg/mL)、リコンビナントヒトインスリン(10mg/L)、亜セレン酸ナトリウム(6.7μg/L)、ピルビン酸ナトリウム(0.11g/L)、およびエタノールアミン(2mg/L)(選択培地での最終濃度)を備えてよい。さらにもう一つの実施例において、成長補助剤の混合物は、無脂肪酸BSA(1%)、rhIL−6(0.5ng/mL)、リコンビナントヒトインスリン(10mg/L)、亜セレン酸ナトリウム(6.7μg/L)、ピルビン酸ナトリウム(0.11g/L)、およびエタノールアミン(2mg/L)(選択培地での最終濃度)を備えてよい。
【0078】
もう一つの実施例において、成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、エタノールアミンを備えてよいが、その他の成長補助剤は備えない。さらなる実施例において、成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、エタノールアミンを備えてよいが、一般的に培養細胞の成長培地に含まれるまたは使用される、その他の物質は備えない。別の実施例において、成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、エタノールアミンを備えてよいが、一般的に血清内に見られるその他の物質は備えない。さらにもう一つの実施例において、成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、エタノールアミン、および、列挙された成長補助剤のいずれかを再構成するために一般的に使用される、水を含むいずれの物質を備えてよいが、その他のいかなる物質も備えない。
【0079】
IV.異種タンパク質生成用キット
本発明はさらに、市販用のキットを提供する。ある実施例において、キットは、ベクター、複数の細胞、および成長補助剤を備える。ベクターは、哺乳類のステロール生合成のための生化学的経路内の酵素であって、例えば、3−KSRのような、ベクターがトランスフェクトされた細胞の選択に有用な酵素をコードする配列を含んでよい。キットのユーザーは、適切な制限酵素を用いて、対象となる遺伝子をベクターにクローンニングしてよい。ある実施例において、細胞はコレステロールに対し、栄養要求性である。一つの実施例において、キットにおいて提供される細胞は、完全合成培地において増殖するよう、すでに適合されている。もう一つの実施例において、キットにおいて提供される細胞は、完全合成無血清培地において培養するよう、すでに適合されている。規制基準に対応して、細胞は、外来性物質がないと判断される、実用的な細胞バンクに由来してよい。
【0080】
もう一つの実施例において、キットは、細胞の培養を支える、ここに記載されるような成長補助剤を備えていてよい。該細胞には、NS−0、NS−1、およびCHO−215が含まれるが、これらに限定されない。ある実施例において、キットは、無血清培地、無タンパク質培地、完全合成培地、または、完全合成/無血清培地を含むそれらのいずれかの組み合わせの培地において、細胞の培養を支える、成長補助剤を備えてよい。特定の実施例において、キットは、例えば、トランスフェクション後および限定希釈細胞クローニング(LDCC)フェーズの間、低播種密度におけるCD−SFM NS−0細胞の増殖を支える、ここに記載される成長補助剤を備えてよい。
【0081】
さらに本発明のキットは、対象となるいずれの異種タンパク質を発現するため使用されてよい。実際には、本発明の、細胞内で発現される異種タンパク質の特性および起源、細胞株、および細胞培養は、限定されない。例えば、プラスミドp3−KSRは、単一または少なくとも二つの遺伝子を発現させるために設計されてよい。前者は、単鎖ホルモンのようなスタンドアロンタンパク質の発現に適用され、後者は、抗体のような二重鎖分子の発現に向いている。
【0082】
本発明の特定の実施例において、リコンビナント抗体分子は、必要な遺伝子を含んだベクターを用いて、発現されてよい。例えば、図3を参照のこと。抗体は、複数の成分、詳しくは、二つのH鎖および二つのL鎖からなる、タンパク質複合体である。一つの実施例において、p3−KSRベクターは、直列にクローニングされたヒト免疫グロブリンG(IgG)の完全なH鎖およびL鎖遺伝子を含むよう、設計されてよい。このリコンビナントコンストラクトからのタンパク質発現は、結果として、後に細胞培養物から単離され、商業的利用のために精製されることが可能な、モノクローナル抗体の分泌をもたらす。ヒトモノクローナル抗体は、単一の抗原に対し特異的であり、特定の病原体、器官、または腫瘍に対して使用することができるため、ヒトへの治療法として適用するのに適切である。
【実施例】
【0083】
さらに詳述することなくして、当業者は、前出の記述を用いて、本発明を最大限に利用することができると思われる。以下の例は、説明目的のみのものであり、開示におけるその他のいかなる部分をも限定しない。
【0084】
実施例1:完全合成無血清培地における、NS‐0マウス骨髄腫細胞株のコレステロール選択の実証
NS‐0マウス骨髄腫細胞株は、前記細胞のバックグラウンドにおける、および開始時からのSFM状態における、選択マーカーとしての3‐KSRの適合性を試験するため、二つの独立した完全合成無血清培地(CD‐SFM)の処方に適応した。NS‐0細胞は、CD−ハイブリドーマ(インビトロゲン(登録商標)社)とCDM‐4‐NS‐0(HyClone(登録商標)社)とに適応した。アクセッション細胞バンク(ACB)は、それぞれのCD‐SFMに適応したNS‐0細胞株のために、作成された。CD‐SFM‐NS‐O細胞株の、前記の成長培地の中の添加コレステロールへの依存性を測定するため、アッセイを実施した。コレステロールなしの培地中でCD‐SFM‐NS‐O細胞を72時間培養した後に、細胞のわずか10%以下が生存していたことが、前記アッセイによって示された。CD‐SFMで培養して僅か5日間で、トリパンブルー排除法では生存する細胞を検出することはできなかった。加えて、コレステロールが欠如する中では、前記細胞の断続的な増殖相は観察されず、これによって、培養培地中でのこの脂質の欠乏に対する感受性が明らかとなった。
【0085】
実施例2:マウス3‐ケトステロイドレダクターゼ(3‐KSR)のPCR増幅と発現ベクターへの3‐KSRのクローニング
ハツカネズミ3β‐ヒドロキシ‐デルタ(5)‐ステロイド脱水素酵素をコードするマウス3‐ケトステロイドレダクターゼ(3‐KSR)遺伝子は、成熟雄性BALB/cマウスの肝臓から作製したcDNAから増幅された。発表済みのマウス3‐KSR Hsd3b5配列に特異的なオリゴヌクレオチドを用いてPCR増幅を行った後、約1.1kbの特徴的なバンドがアガロースゲル電気泳動によって検出された。該バンドは単離され、pCR‐BluntII‐TOPOベクター(インビトロゲン(登録商標)社)にクローニングされた後、引き続きdhfr.の代わりにpBFdhfr.1バックグラウンドに再クローニングされた。新しいコンストラクトはpBFksr.1と呼ばれる。
pBFksr.1内の1.1kbの3‐ksrのコーディング領域は、DNAシークエンシング法によって確認され、オープンリーディングフレーム(orf)は発表済みの配列と比較した。特定された配列は、NCBIアクセッション番号A49573である発表済みマウス3‐ケトステロイドレダクターゼと100%一致した。
【0086】
実施例3:完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地における、NS‐0細胞のトランスフェクションと選択
正しい3‐KSR orfを含んだコンストラクトpBF/ksr.1は、NS‐0細胞にトランスフェクトされ、完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地(Chemically−defined Fatty Acid−Free Supplemented selection medium)で選択される。培地は以下のCD‐ハイブリドーマ(インビトロゲン(登録商標)社)、グルタマックス(2mM、インビトロゲン(登録商標)社)、NEAA(非必須アミノ酸)(1×、インビトロゲン(登録商標)社)、無脂肪酸BSA(1%、カルビオケム社)、リコンビナントヒトIL‐6(5ng/ml、プロメガ社)ITS液体培地補助剤(1×、シグマアルドリッチ社)からなる。最初のトランスフェクションと選択は、以下のとおりにT‐75フラスコ中で「まとめて」行われる。トランスフェクションの日に、生存する細胞と死亡した細胞を区別するため、親となるNS‐0培養物を、トリパンブルー排除法を用いて数える。培養物は少なくとも90%が生存していなくてはならない。各トランスフェクションに対し、約1×107の細胞が必要とされる。プラスミドトランスフェクションに加え、ネガティブコントロールを確立するため、「偽の」トランスフェクション(DNAなし)を1例行わなくてはならない。細胞を遠心分離し、20mLの無血清トランスフェクション培地で細胞ペレットを再懸濁し、再度遠心分離し、細胞を洗浄する。各トランスフェクションに対し、約1×107の細胞を700μLの無血清トランスフェクション培地で再懸濁する。100μLの蒸留された滅菌水の中で、40μgの精製済みの直線化されたプラスミドDNAを再懸濁し、DNA溶液を調整する。DNAの直線化はどのDNA制限酵素でも達成されるが、通例、pBFksr1をベータ−ラクタマーゼオープンリーディングフレーム(orf)において一箇所切断するPvuI(プロテウス・ブルガリス制限酵素I)では制限酵素処理されない。全DNA溶液をエレクトロポレーションキュベットに加える。700μLの細胞懸濁液をキュベットに入ったDNA溶液に加え、ピペッティングにより静かに、泡の発生を避けつつ混合する。キャップをキュベットの上に置き、キュベットをエレクトロポレーション装置(ジーンパルサーII(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)あるいは同等品)の中に置く。250ボルト、400μFdの単一パルスをキュベットに与える(磁場強度625V/cm)。最適条件であれば、8ミリ秒ほどの時定数の値が得られる。T‐75細胞培養フラスコに入った12mLの完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地に細胞を加え、37℃で、5%の二酸化炭素、90%の比較的湿度の高い状態で一晩培養する。
【0087】
pBFksr.1をトランスフェクトされ、完全合成無脂肪酸補助添加の選択培地で選択された培養物は、3週間の選択後、コントロールに対し統計的に有意義な数の生存細胞を生じる。同様の選択条件で成長させた偽のトランスフェクトNS‐0細胞は、3週間の選択後も統計的に有意義な数の生存細胞は生じない。
【0088】
実施例4:完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地中のNS‐0細胞におけるトランスフェクション、選択、およびモノクローナル抗体の発現
構築された哺乳類発現ベクターpBFdhfr.1は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)の突然変異の親細胞株CHO‐DG44における発現のための、ヒト抗体のH鎖およびL鎖をコードする配列を含む哺乳類の遺伝子のクローニングのための重要要素として役立つ。前記ベクターを使用して、ヒトIgG1H鎖定常部の発現カセットはマルチクローニング部位(mcs)でクローンニングされ、ヒトH鎖の可変部の配列に対する受容体として役立つ。ベクターはpBFdhfr.1:Hcassetteと命名された。
【0089】
対応するL鎖の可変部の配列は、最初にヒトL鎖定常部のカセットを含むバキュロウイルス発現ベクターであるpIEI‐lightにクローニングされた。全L鎖をコードする配列は引き続き、pBFdhfr.1にクローニングされた。二重の発現ベクターを構築するため、pCMV‐MIEの5’末端および相補鎖上のBGH‐pAに特異的なプライマーを使い、両端にBg1II REN部位を含むpCMV‐MIE‐L鎖‐BGHpAを含むL鎖カセットを増幅した。このフラグメントは引き続き、それぞれの対応するpdhfr:H鎖コンストラクトの、単一のBg1II部位にクローニングされた。得られたコンストラクトであるpBFdhfr.1:humAbは、直列にクローニングされた完全なヒトの抗体H鎖とL鎖遺伝子を含む。
【0090】
マウス3‐ケトステロイドレダクターゼ(3‐KSR)遺伝子は単離され、pCR‐BluntII‐TOPOベクター(インビトロゲン(登録商標)社)にクローニングされ、引き続き、dhfr.の代わりにpBFdhfr.1:humAbに再クローニングされる。正しい3‐KSR orfを含む新しいコンストラクトpBFksr.1:HUMABは、NS‐0細胞にトランスフェクトされ、完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地で選択される。 最初のトランスフェクションと選択は「まとめて」T‐75フラスコで行われる。次のトランスフェクションでは、細胞は直接選択培地で培養される。pBF/ksr.1:HUMABでトランスフェクトされ、速やかにコレステロールなしの培地で選択された培養物は、コントロールに対し3週間の選択後に統計的に有意義な数の生存細胞を生成する。同様の選択条件で成長させた偽のトランスフェクトNS‐0細胞は、3週間の選択後も統計的に有意義な数の生存細胞は生成しない。
【0091】
トランスフェクトされた細胞の選択と成長には、無細胞の上清について、酵素免疫吸着法(ELISA)によって、リコンビナントmAbの測定を行う。簡潔に説明すると、pBFksr.1:HUMABをトランスフェクトされた培養物の上清がサンプリングされ、遠心分離され、細胞とデブリが取り除かれる。6.3mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に9μLの抗体を加え処方されたヤギの抗ヒトFabフラグメントラムダ特異的抗体(シグマアルドリッチ社、ミズーリ州セントルイス)の溶液で、96穴プレートを覆う。プレートは4度で、少なくとも24時間、わずか2週間以下でインキュベートされる。アッセイの日に、プレートを3回PBS/tweenバッファー(PBS内に0.1%tween)で洗浄する。ヒトIgG1ラムダモノクローナル抗体標準(シグマ(登録商標)社)をPBS/tweenで5μg/mLまで希釈し、連続的に1対2の割合でPBS/tweenで希釈して標準濃度のパネルを調製する。各標準を96穴プレートに、各穴100μLで加える。PBS/tweenで、抗体濃度未知の試料を1対2000で希釈し、96穴プレートに、各穴100μLで加える。プレートを1時間室温でインキュベートする。インキュベート後、プレートを3回PBS/tweenで洗浄する。ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgGFc抗体(KPL社、メリーランド州ゲイサーズバーグ)を1対2000でPBS/tweenで希釈し、96穴プレートに各穴100μLで加える。プレートを1時間室温でインキュベートする。インキュベート後、プレートを3回PBS/tweenで洗浄する。3,3’ ,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)基質(シグマ(登録商標)社)を96穴プレートに各穴100μLで加える。100μLの0.5M H2SO4(アクロス・オーガニクス社、ベルギー、ヘール)を加えることにより、約1分後に反応が停止する。プレートはサーモマックスマイクロプレートリーダーまたは同等品で、450nmの波長が読み取られる。ELISAの結果は、リコンビナントmAb生成物の存在に対し陽性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1A】3−KSR遺伝子産物によって部分的に媒介される、真核生物、特に哺乳類のステロール生合成の生化学的経路を示す。
【図1B】図1Aの説明と同様である。
【図1C】図1Aの説明と同様である。
【図1D】図1Aの説明と同様である。
【図1E】図1Aの説明と同様である。
【図1F】図1Aの説明と同様である。
【図1G】図1Aの説明と同様である。
【図1H】図1Aの説明と同様である。
【図1I】図1Aの説明と同様である。
【図1J】図1Aの説明と同様である。
【図2】p3−KSR発現ベクターのプラスミドマップを表示する。
【図3】L鎖遺伝子およびH鎖遺伝子を直列にクローニングした完全なヒト抗体を保有する、p3−KSR:mAbVL:mAbVH発現ベクターのプラスミドマップを表示する。
【図4】p3−KRS:rec_geneのプラスミドマップを表示する。該プラスミドは、p3−KSRにクローニングしたリコンビナント遺伝子コンストラクト(rec_gene)の一例である。
【図5】p3−KSR発現ベクターのマルチクローニング領域(multiplecloning region)における、6つの可能な抗体遺伝子カセット発現配向の例を提供する、pBFKSR.1HUMABを表示する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい選択マーカーベクター、および真核細胞内の安定した遺伝子発現系を生成するためにこれらのベクターを使用するための方法に関する。
【0002】
本出願は、参照することにより本書に組み込まれる、2005年5月18日出願の米国仮出願番号60/681,969の35U.S.C.§119(e)に基づき、利益を請求する。
【背景技術】
【0003】
哺乳類細胞培養技術の開発は、生物学的研究に革命をもたらした。細胞培養系は、ヒトへの臨床試験の危険性が高い場合、開発の初期段階において、新薬の毒性または薬効をテストするため、モノクローナル抗体のような、治療への応用に向けた複合ヒトタンパクを生成するため、そして成人および胚の幹細胞培養に関連して、細胞に基づいた治療法のためのプラットフォームとして、使用することができる。さらに、異種リコンビナントDNAを培養細胞株に導入する能力は、実験動物系の操作上強力な補助ツールを科学者に与える。
【0004】
近年、生体分子を発現し、後に治療薬を製造するために使用される細胞株の汚染に関する規制への懸念に取り組むことの必要性はより重大になっている。 バイオテクノロジー産業全般としては、潜在的な動物病原体、または疾病を引き起こす動物タンパク質が、将来生物製剤を介し、ヒト集団に導入されないことを確実とするため、市販細胞培養用のFBS−添加培地を使用しない傾向になってきている。無血清培地は、哺乳類細胞を培養するための標準プロトコルとなっており、特に生物学的製剤のパイプラインにおける遺伝子の発現と、タンパク質の精製に使用されている。
【0005】
NS−0マウス骨髄腫細胞株は、一般的に、LonzaのGS遺伝子発現系(Lonzaグループ、スイス、バーゼル)のようなタンパク質発現系で使用される。GS遺伝子発現系は、プラスミドベクターの細胞へのトランスフェクションのためのマーカーとして、酵素グルタミンシンテターゼ(GS)を使用することによって、外因性のグルタミンを成長培地に加えることなく生存するために十分なグルタミンを生成できないNS−0細胞の性質を利用している。
【0006】
またNS−0細胞はコレステロール要求体であって、結果として、この細胞株の成長を支えるために使用される培地に、コレステロールおよびグルタミンの両方を添加しなければならない状況となる。脂質は、水溶性を増加させるために、シクロデキストリンのような糖構成基に結合していなければならないので、外因性コレステロールを水溶性培地に加えることは、複雑で、時間がかかるプロセスである。さらに、結合プロセスは、本質的に不安定であり、結果として、非常に短い保存期間を有するコレステロール添加の成長培地となる。さらに、コレステロール要求性細胞株を培養するために、ウシ胎仔血清(FBS)添加の培地の代わりに、組成が化学的に明らかである完全合成の無血清培地(chemically defined, serum−free media,CD−SFM)が使用される場合、コレステロールの沈殿が頻繁に発生する。最終的に、PESのようなポリマーに対し、もともと親和性を有しているため、コレステロールは、このようなポリマーからなる小さな孔径の滅菌膜を通して簡単にろ過することができず、したがって最終的にろ過された培地において、コレステロールの量が有意に低減される。この問題はさらに、コレステロール添加の培地の調製のバッチ間における不一致の一因となる。また外因性コレステロールを、フィルターを通さずに直接培地に加えることによって、外来性物質および/または内毒素のような汚染物質をも取り込む可能性を増加させる。
【0007】
NS−0細胞のコレステロール要求性の基礎をなす分子機構が、近年同定され、特徴付けられている(European Collection of Cell Cultures−ECACC、No. 85110503、Dr J Jarvis寄託、MRC Laboratory of Molecular Biology、ケンブリッジ、73B(3)Methods in Enzymology(1981))。細胞株は、コレステロールの内因性生合成におけるステップを触媒する酵素をコードする遺伝子を発現しない。ベータ・ヒドロキシステロイド脱水素酵素の大きな酵素ファミリーの一員である3−ケトステロイドレダクターゼ(3−KSR)と呼ばれる酵素は、特定の遺伝子によってコードされている。3−KSRタンパク質は、コレステロールの前駆体であるジモステロンからジモステロールへの変換を触媒する(非特許文献1)。
【0008】
培養プロトコルをより効率的に、また水溶性培地におけるコレステロールの高溶解度への依存性を減少させることを目的として、NS−0細胞のコレステロール要求性に対処するための多種多様な技術が提案されている。一つのアプローチでは、CD培地を補うために、動物由来のコレステロールの代わりに、植物由来または合成の脂質を使用している(非特許文献2)。もう一つのアプローチは、NS−0細胞を設計することにより3−KSRを過剰に発現させ、それによって、酵素欠損を復帰させ、外因性コレステロールを加えることなく細胞株を培養させることである(非特許文献3)。最終的に、研究者はNS−0細胞における3−KSR遺伝子の不活性に対する分子的基礎を検討し、重要な上流の制御領域を脱メチル化することにより遺伝子の発現の回復を試みているが、これは3−KSR遺伝子の転写抑制を軽減するものである(非特許文献4)。
【非特許文献1】Marijanovicら、MOL. ENDOCRINOL.、第17巻第9号、第1715−25ページ、2003年。
【非特許文献2】Gorfienら、BIOTECHNOL. PROG.、第16巻第5号、第682−7ページ、2000年。
【非特許文献3】Sethら、J. BIOTECHNOL.、第121巻第2号、第241−52ページ、2006年。
【非特許文献4】Sethら、BIOTECHNOL. BIOENG.、第93巻第4号、第820−27ページ、2006年。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それにもかかわらず、バイオテクノロジー業界では、異種分子を発現することが可能な完全合成/無血清培地で、発現ベクターをトランスフェクションすることにより、定常発現株を生成することに対する必要性はいまだに大きい。さらに完全合成/無血清培地は、困難をともなう外因性コレステロールの添加を必要とせず、画一的に有用であることが極めて望ましい。本発明は、真核細胞のステロールもしくはコレステロール生合成経路内の酵素をコードする遺伝子またはポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供し、これにより、完全合成および/あるいは無血清培地で細胞が生存でき、培養が可能となる。またこの発現ベクターが、異種タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする遺伝子またはポリヌクレオチドをも構成する場合は、このベクターは、完全合成および/あるいは無血清培地で生成される異種タンパク質をコードする遺伝子を含むトランスフェクト細胞を選択するための代謝選択マーカーとして有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、新しい代謝選択マーカーベクター、さらに、これらのベクターを使用して真核細胞内で安定した遺伝子発現系を生成する方法に関する。
本発明は、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、異種ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドとを備えるベクターを含む。本発明は、ベクターで形質転換された宿主細胞をさらに含む。
【0011】
また本発明は、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドを備えるベクターを備えるベクター、と、下記の群より任意に選択される一つまたはそれ以上のものとを備えるキットを含む:コレステロールに対し栄養要求性である複数の宿主細胞;完全合成無血清培地;低播種およびクローン密度で、複数の宿主細胞の成長を支える成長補助剤;そのキットを使用するための少なくとも一つのプロトコルまたは説明書。
【0012】
さらに本発明は、コレステロールなしの培地で生存することができる細胞を選択する方法であって、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、任意に少なくとも一つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドを備えるベクターを、コレステロールに対し栄養要求性の真核細胞にトランスフェクトするステップと、コレステロールが不足する培地で生存する能力を有する細胞を選択するステップとをそなえる方法を含む。
【0013】
さらに本発明は、コレステロールが不足する培地で生存し、異種タンパク質を生成する能力を有する細胞を取得する方法であって、3−KSRのような酵素、および少なくとも一つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、ここに記載されるようなベクターを、コレステロールに対し栄養要求性の真核細胞にトランスフェクトするステップと、コレステロールが不足する培地で生存する能力を有する細胞を選択するステップとを備える方法をも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ここに記載される特定の方法および成分等に限定されず、変更しうることは明示である。またここで使用される専門用語は、特定の実施例を説明する目的においてのみ使用され、本発明の範囲を限定することを意図していないとうことを理解されたい。ここで、および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は文脈によって明確に指示されない限り、複数形も含むことを留意しなければならない。したがって、例えば、「一つのポリヌクレオチド」への言及は、一つまたはそれ以上のポリヌクレオチドであり、当業者に既知の同等のもの等を含む。「ベクター」という用語は、自己複製DNA分子に言及し、またここでは、「プラスミド」または「プラスミドクローニングベクター」と称される。ここで「プラスミドクローニングベクター」は、リコンビナントDNA実験において、外来または異種DNAのアクセプターとして使用されるプラスミドである。異種タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、容態または疾病の治療に用いることができる、あるいは試薬として有用な、いずれのタンパク質を包含するよう意図されている。
【0015】
他に定義されない限り、ここで使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。ここに記載されるものと同様または同等の、いずれの方法および材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、特定の方法、装置、および材料は、記載される。
【0016】
本発明は、酵素が欠損している真核細胞内の代謝選択遺伝子として、哺乳類のステロール生合成経路の酵素を利用することによって、トランスフェクト細胞の代謝選択に有用な組成物および方法を提供する。これら性質を有する真核細胞は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または細胞によって通常生成されない他の分子のような異種分子の生成に有用である。特に、本発明は、外因性コレステロール、または真核性のコレステロール生合成経路における3−KSRのコレステロール下流のいずれかの前駆体が不足している培地で、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のような異種分子の生成に対し、3−KSRが欠損している真核細胞株の生成において、代謝選択遺伝子として、3−ケトステロイドレダクターゼ(3−KSR)を利用する。3−KSRによって部分的に媒介された哺乳類ステロール生合成における生化学的経路を表す、図1を参照のこと。
【0017】
より詳しくは、本発明は、図1に提供されるような哺乳類のステロール生合成経路内の酵素(このような酵素として、例えば3−KSR)をコードするポリヌクレオチドおよびポリペプチド、3−KSR等の該酵素を発現させるためのベクター、3−KSR等の該酵素を欠損している細胞株、トランスフェクションプロセスで使用するための細胞培養培地および成長補助剤、および本発明の商業的開発のためのキットを提供する。
【0018】
本発明は、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメントまたはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを備えるベクターを含む。本ベクター内の酵素は、より詳しくは、3−ケトステロイドレダクターゼ(3−KSR)、さらにより詳しくは、マウス3−KSRを備えている。3−KSRをコードする特定の代表的なポリヌクレオチドには、配列番号3によって表されるアミノ酸配列をコードする配列番号1と、配列番号4によって表されるアミノ酸配列をコードする配列番号2を含む。
【0019】
上記のベクターは、好ましくはリコンビナントDNA発現ベクターであり、該ベクターは、任意にさらに、生成物の遺伝子のための、少なくとも第一転写単位を備えており、該転写単位は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にある。発現ベクターのその他の単位および要素の詳細は、ここに詳しく記載される。
【0020】
本発明は、さらに上に記載されるようなベクターで形質転換される、宿主細胞を含む。宿主細胞は、原生生物、菌類、動物界、および植物界を含む、当業者には既知の真核細胞である。したがって、菌類、植物、および哺乳類の細胞は、適切な宿主細胞として、本発明に包含されることを意図されている。宿主細胞は、好ましくは、コレステロールに対し栄養要求性である。本発明において有用な特定の宿主細胞は、NS−0、NS−1、およびCHO−215細胞であり、より詳しくは、NS−0マウス骨髄腫細胞である。
【0021】
また本発明は、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメントまたはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドを備えるベクターを備えるベクターと、下記の群より任意に選択される一つまたはそれ以上のものとを備えるキットを含む:コレステロールに対し栄養要求性である複数の宿主細胞;完全合成無血清培地;低播種およびクローン密度で、複数の宿主細胞の成長を支える成長補助剤;そのキットを使用するための少なくとも一つのプロトコルまたは説明書。上述のとおり、酵素は好ましくは3−KSRであり、より好ましくは、例えば、配列番号1および配列番号2を含む、酵素をコードする有用なポリヌクレオチドを含んだ、本ベクターを有するマウス3−KSRである。これらのポリヌクレオチドは、配列番号3および配列番号4を有する酵素のアミノ酸配列をそれぞれコードする。キット内のベクターは、好ましくは、リコンビナントDNA発現ベクターであり、該ベクターは、任意にさらに、生成物の遺伝子に対する少なくとも第一転写単位を備えており、該転写単位は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にある。
【0022】
キット内の宿主細胞は、好ましくは、NS−0、NS−1、およびCHO−215であり、より好ましくは、完全合成無血清培地および/または完全合成培地で成長させるのに適合した、NS−0マウス骨髄腫細胞である。
【0023】
本キットはさらに、任意で、無脂肪酸BSA、リコンビナントヒトインターロイキン−t(rhIL−6)、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、およびエタノールアミンの少なくとも一つを備える、成長補助剤を含んでもよい。より好ましくは、成長補助剤は、約0.1%から約5%の無脂肪酸BSA、約1ng/mLから約9ng/mLのrhIL−6、約5mg/mLから約15mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約5μg/Lから約8μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.01g/Lから約0.3g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約0.5mg/Lから約3.5mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える。より好ましくは、成長補助剤は、約1%の無脂肪酸BSA、約5ng/mLのrhIL−6、約10mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約6.7μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約2.0mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える。
【0024】
本発明はさらに、約0.1%から約5%の無脂肪酸BSA、約1ng/mLから約9ng/mLのrhIL−6、約5mg/mLから約15mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約5μg/Lから約8μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.01g/Lから約0.3g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約0.5mg/Lから約3.5mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える細胞培養補助剤の組成を含む。また本発明は、約1%の無脂肪酸BSA、約5ng/mLのrhIL−6、約10mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約6.7μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約2.0mg/Lmg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える細胞培養補助剤の組成を含む。
【0025】
さらに本発明は、コレステロール無しの培地で生存することができる細胞を選択する方法であって、真核細胞のステロール生合成経路において、酵素、その生物学的活性フラグメントまたはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、任意に少なくとも一つの、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを備えるベクターを、コレステロールに対し栄養要求性である真核細胞にトランスフェクトするステップと、コレステロールが不足する培地で生存するための能力を有する細胞を選択するステップとを備える方法を含む。好ましい宿主細胞は、NS−0、NS−1、およびCHO−215であり、より好ましくは、細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞、培地は完全合成無血清のものまたは完全合成のものである。本方法に有用な酵素は、3−KSRを備える。
【0026】
本発明はさらに、コレステロールが不足する培地で生存し、異種タンパク質を生成するための能力を有する細胞を取得する方法であって、3−KSRのような酵素と、異種タンパク質をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを含んだ、ここに記載されるようなベクターを、コレステロールに対して栄養要求性である真核細胞に、トランスフェクトするステップと、コレステロールが不足する培地で生存するための能力を有する細胞を選択するステップとを含む方法を備える。前述したように、細胞はコレステロールに対して栄養要求性であり、好ましくは、NS−0、NS−1、およびCHO−215、より好ましくは、完全合成無血清のまたは完全合成の培地で培養することができる、NS−0マウス骨髄腫細胞である。
【0027】
本発明はさらに、ここに記載される細胞培養系で異種タンパク質を生成する方法であって、コレステロールに対して栄養要求性である真核細胞に、真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメントまたは生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、異種タンパク質をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドとを備えるベクターをトランスフェクトするステップと、異種タンパク質を生成する状況下で細胞を培養するステップとを備える方法を含む。本方法はさらに、当業者に既知の単離、分離、または精製の技術によって、細胞培養から異種タンパク質を取得するステップを備える。細胞は、コレステロールに対して栄養要求性であり、好ましくは、NS−0、NS−1、およびCHO−215、より好ましくは、完全合成無血清の、または完全合成の培地で培養することができる、NS−0マウス骨髄腫細胞である。
【0028】
さらに本発明は、より詳しくは、異種タンパク質を発現する方法であって、3−ケトステロイドレダクターゼと、少なくとも一つの異種タンパク質をコードする配列を備えたベクターをトランスフェクトした細胞を、好ましい細胞および培地は上に記載される、異種タンパク質を生成する状況下で、コレステロールが無い状態で培養するステップを供える方法を含む。
【0029】
1.3−ケトステロイドレダクターゼ
本発明は、異種タンパク質を生成するための代謝選択遺伝子として、真核性の3−KSRを使用する。一つの実施例において、マウス3−KSR、詳しくは、以下のようなヌクレオチド配列(配列番号1)を有し、HSD3β5(NCBIヌクレオチドアクセッション番号L41519)としても知られる3β−ヒドロキシステロイド:NADP+3−オキシレダクターゼが使用されてよい。
【0030】
【表1】
【0031】
配列番号1は、以下のようなアミノ酸配列を有する、特定の3−KSRをコードする。
マウスHSD3b5アミノ酸配列(配列番号3):
【0032】
【表2】
【0033】
また、その他の機能し得る酵素は、3−ケトステロイドレダクターゼとしてもっぱら機能すると知られている、17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼタイプ7(Hsdl7b7)、3β−ヒドロキシ−デルタ(5)−ステロイドデヒドロゲナーゼ(Hsd3b5)、ラット3β−Hsd III、マウス3β−HsdIV、マウス3β−Hsd Vおよびハムスター3β−Hsd IIIを含む遺伝子によってコードされるが、これらに限定されるものではない。特に、以下のマウスHSD17b7ヌクレオチド配列を含む、ヒドロキシステロイド(17−ベータ)デヒドロゲナーゼ7(ヌクレオチドアクセッション番号NCBI:BC011464)としても知られる、配列番号2を有するポリヌクレオチドである。
【0034】
【表3】
【0035】
配列番号2は、以下のようなアミノ酸配列を有する特定の3−KSRをコードする:マウスHSD17b7 アミノ酸配列(配列番号4):
【0036】
【表4】
【0037】
もう一つの実施例において、例えば、図1に記載されるような哺乳類ステロール生合成の第一および第二サイクルにおける、以下の前駆体の酵素的変換を促進する、3−KSRのようないずれの酵素を使用してよい。
4−メチル−5α−コレスタ−3,8,24−トリエン−3β−オール→3−KSR→3−オキソ−4α−メチル−5α−コレスタ−8,24−ジエン→3−KSR→3β−ヒドロキシ−4α−メチル−5α−コレスタ−8,24−ジエン(第一サイクル)
5α−コレスタ−3,8,24−トリエン−3β−オール→3−KSR→3−オキソ−5α−コレスタ−8,24−ジエン→3−KSR→デルタ−8,24−コレスタジエン−3β−オール(3β−ヒドロキシ−5α−コレスタ−8,24−ジエン;ジモステロール)(第二サイクル)
【0038】
本発明で使用されてよい、3−KSRのその他の具体的な例は、その他のマウス3−KSR(アクセッション番号NM_00295、NM010476、およびBC_012715)、ウシ(アクセッション番号XM_591611)、ヒト(アクセッション番号NM_016371)を含む。
【0039】
A.3−KSRポリヌクレオチド、フラグメント、およびその変異体
本発明は、いずれの3−KSRをコードするポリヌクレオチドに関する。3−KSRをコードするポリヌクレオチドに関する本発明の範囲には、ここに提供される配列のいずれか一つに示される配列を有するポリヌクレオチド;ストリンジェントな条件(特に極めてストリンジェンシーが高い条件)下でのハイブリダイゼーションによって、ここに記載される生物学的材料またはその他の生物学的起源(例えば、マウスまたはヒト起源)から取得されたポリヌクレオチド;提供されたポリヌクレオチドに対応する遺伝子;提供されたポリヌクレオチドの変異体、およびその対応する遺伝子、特にコードされた遺伝子産物の生物学的活性(例えば、一のタンパク質ファミリーおよび/または複数のタンパク質ファミリーへの遺伝子産物のアサインメント(assignment)、および/または該遺伝子産物に存在する機能ドメインの同定の結果、提供されたポリヌクレオチドに対応する遺伝子産物に起因する生物学的活性)を保持するこれらの変異体が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の範囲によって、および本発明の範囲内で意図される、その他の3−KSRポリヌクレオチド組成は、本開示が提供されれば、当業者には容易に明らかであろう。ここで使用されるように、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、特に指示されない限り、ポリヌクレオチドの長さまたは構造に関して、限定するためのものではない。
【0040】
3−KSRポリヌクレオチドは、ここに提供されるポリヌクレオチド配列のいずれか一つに示される配列を備えてよい。また本発明の3−KSRポリヌクレオチドは、天然3−KSRのDNAとの配列の類似性、または配列の同一性を有するポリヌクレオチドも含む。これは、関連する5’および3’非翻訳配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列を含む。配列の類似性を有する3−KSRポリヌクレオチドは、ストリンジェンシーが低い条件下で、例えば、50℃で10×SSC(0.9Mの生理的食塩水/0.09Mのクエン酸ナトリウム)の下でのハイブリダイゼーションによって、検出されてよく、また55℃で1×SSCにおいて洗浄される場合、結合されたままである。配列の同一性は、ストリンジェントな条件下、例えば、50℃またはそれ以上で0.1×SSC(9mMの生理的食塩水/0.9mMのクエン酸ナトリウム)の下、ハイブリダイゼーションによって決定されてよい。もちろん、ハイブリダイゼーションの方法および条件は、当業者には既知であり、さらなる3−KSRポリヌクレオチドを特定するために、すべての代替し得る方法および条件を用いてもよい。
【0041】
また本発明の3−KSRポリヌクレオチドは、3−KSRヌクレオチド配列の自然発生する変異体(例えば、縮重変異体、アレル型変異体など)を含む。本発明の3−KSRポリヌクレオチドの変異体は、ここに開示されるヌクレオチド配列で、推定変異体のハイブリダイゼーション、好ましくはストリンジェントな条件下のハイブリダイゼーションによって特定される。例えば、適切な洗浄条件を用いることによって、アレル型変異体が、選択されたポリヌクレオチドプローブに対して、多くて約25〜30%の塩基対(bp)の不一致を示す場合、ここに記載される3−KSRポリヌクレオチドの変異体は、特定することができる。一般的に、アレル型変異体は、約15〜25%bpの不一致を含み、一塩基対の不一致だけでなく、5〜15%、または2〜5%、あるいは1〜2%ほどのbpの不一致しか含まないことが可能である。
【0042】
また本発明は、ここに提供される3−KSRポリヌクレオチド配列に対応するホモログを包含するが、相同遺伝子の起源は、いかなる哺乳類種であってもよく、例えば、特にヒトといった霊長類種や、ラットのようなげっ歯類、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、酵母、線虫などであってもよい。例えばヒトやマウスのような哺乳類種間では、ホモログは一般的に、遺伝子やその部分に対する実質的な配列の類似性、例えば、少なくとも75%の配列の同一性を有し、通常少なくとも90%、さらに通常、ヌクレオチド配列間において、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列の同一性を有する。配列の類似性は、参照配列に基づいて計算されてよく、該参照配列は、例えば、保存モチーフ、コード領域の一部、隣接領域などのような、より大きな3−KSR配列のサブセットであってよい。参照配列は、通常、少なくとも隣接した長さ約18の塩基、さらに通常は少なくとも長さ約30の塩基であり、比較されている完全な3−KSR配列に及んでよい。
Altschulら、25 NUCLEIC ACIDS RES. 3389−3402(1997)に記載される、ギャップトBLASTのような配列分析のアルゴリズムは、当業者には既知である。
【0043】
一般的に、ここに記載される3−KSRポリヌクレオチドの変異体は、MPSRCHプログラム(Accelrys社、カリフォルニア州サンディエゴ)で実施されたようなSmith−Watermanの相同性検索アルゴリズムといった従来の方法を用いて決定されるように、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%より大きな配列の同一性を有し、少なくとも約90%、95%、96%、98%、99%、またはそれ以上より大きいことが可能である。例えば、以下の検索パラメータ:ギャップオープンペナルティ、12;およびギャップエクステンションペナルティ、1;で、アフィンギャップ検索を用いることで、Smith−Watermanの相同性検索アルゴリズムによって決定されるように、広範囲のDNA配列の同一性は、65%より大きいかもしれない。
【0044】
本発明の3−KSRポリヌクレオチドは、切断型またはそのフラグメント、特に細胞が無コレステロール培地で成長することができるようトランスフェクトされる、真核細胞において機能的な、生物学的に活性がある、または回復し得る3−KSR遺伝子産物をコードするフラグメントだけでなく、cDNAまたはゲノムDNAであってよい。cDNAは、天然の成熟mRNA種に見られる配列要素の配置を共有する、すべての核酸を含む。該配列要素には、エクソン、ならびに3’ および5’非コード領域がある。通常mRNA種は、隣接するエクソンを有し、介在イントロンが存在する場合は、核RNAスプライシングによって除去され、ポリペプチドをコードする連続的なオープン・リーディング・フレームをつくる。mRNA種は、エクソンおよびイントロンの両方と共に存在することがきるが、イントロンは、別のスプライシングによって除去されてよい。
【0045】
3−KSRゲノム配列は、通常、天然の染色体に存在するすべてのイントロンを含む、記載された配列に定義されるような、開始コドンと停止コドンの間に存在する核酸を備えてよい。さらに成熟mRNA内に見られる5’および3’非翻訳領域を含むことができる。ゲノム配列はさらに、翻訳領域の5’および3’末端のどちらかに、約1kbの、場合によってはそれ以上の長さの隣接ゲノムDNAを含む、プロモーター、エンハンサーなどのような特定の転写および翻訳の調節配列を含む。
【0046】
B.3−KSRポリペプチド、そのフラグメント、および変異体
本発明の3−KSRポリペプチドは、例えば、遺伝子コードの縮重の効力によって、開示された3−KSRポリヌクレオチドと同質ではない配列を有する核酸を含む、開示された3−KSRポリヌクレオチド、そのフラグメント、および変異体によってコードされるものを含む。
【0047】
3−KSRポリペプチドは、引用されたポリヌクレオチドによってコードされる全長のポリペプチドと、引用されたポリヌクレオチドによって示される遺伝子によってコードされるポリペプチドの両方に、そしてそれらの一部またはフラグメントにも、言及する。また3−KSRポリペプチドは、自然発生するタンパク質の変異体を含み、このような変異体は、自然発生する3−KSRタンパク質と同族あるいは実質的に類似しており、自然発生する3−KSRタンパク質と同一または異なった種の起源であることができる(例えば、ヒト、マウス、または引用されたポリペプチドを自然に発現する、その他の種、通常は哺乳類種)。一般的に、3−KSRポリペプチド変異体は、例えば、上記のパラメータを用いたBLAST 2.0によって測定されるように、ここに記載される3−KSRポリペプチドと、少なくとも約80%、通常は少なくとも約90%、より通常は少なくとも約95%の配列の同一性、またはそれ以上、例えば96%、97%、98%、または99%の配列の同一性を有する配列を有する。3−KSRポリペプチド変異体は、自然に、または非自然に、翻訳後に修飾されてよく、例えば、該ポリペプチドは、自然発生する3−KSRタンパク質のいずれの予測された、または実験的に特徴付けられた翻訳後修飾とは異なる、翻訳後修飾パターンを有してよい。
【0048】
また本発明は、3−KSRポリペプチド(またはそのフラグメント)のホモログを包含し、そのホモログは、いかなる種から単離されているものであってもよく、通常、例えば、マウス、ラットのようなげっ歯類、例えばウマ、ウシ、イヌ、ネコのような家畜、およびヒトといった哺乳類種である。ホモログは、ここに記載される特定の3−KSRタンパク質と、少なくとも約35%、通常は少なくとも約40%、さらに通常は少なくとも約60%のアミノ酸配列の同一性を有してよく、配列の同一性は、例えば、上記のパラメータで、BLAST 2.0アルゴリズムを用いて決定される。
【0049】
また本発明の範囲内において、ポリペプチド変異体は、突然変異体、フラグメント、および融合体を含む。突然変異体は、アミノ酸の置換、付加、または欠失を含んでよい。糖鎖付加部位、リン酸化部位、またはアセチル化部位を変更するため、または機能に必要の無い、一つまたはそれ以上のシステイン残基の置換または除去によって、ミスフォールドを最小限に抑えるため、アミノ酸置換は、保存されているアミノ酸の置換、または非不可欠なアミノ酸を排除するための置換であることができる。保存されているアミノ酸の置換は、総電荷、疎水性/親水性、および/または置換されたアミノ酸の立体的なかさを保存するものである。変異体は、タンパク質の特定領域(例えば、機能ドメイン、および/またはポリペプチドがタンパク質ファミリーの一員である場合、コンセンサス配列に関連する領域)の生物学的活性を保持または強化するよう、設計することができる。3−KSR変異体を生成するためのアミノ酸改変の選択は、アミノ酸の近接性(内部対外部)(例えばGoら、15 INT. J. PEPTIDE PROTEIN RES. 211(1980)を参照)、ポリペプチド変異体の耐熱性(例えばQuerolら、9 PROT. ENG. 265(1996)を参照)、望ましい糖鎖付加部位(例えば、OlsenおよびThomsen、137 J. GEN. MICROBIOL. 579(1991)を参照)、望ましいジスルフィド架橋(例えばClarkeら、32 BIOCHEM. 4322(1993)、およびWakarchukら、7 PROTEIN ENG. 1379(1994)を参照)、望ましい金属結合部位(例えばTomaら、30 BIOCHEM. 97(1991)、およびHaezerbrouckら、6 PROTEIN ENG. 643(1993)を参照)、およびプロリンループでの望ましい置換(例えばMasuiら、60 APPL. ENV. MICROBIOL. 3579(1994)を参照)に基づくことができる。システイン減少突然変異タンパク質は、米国特許番号4,959,314に開示されるように、生成することができる。
【0050】
また3−KSR変異体は、ここに開示されるポリペプチドのフラグメント、特に生物学的活性フラグメント、および/または機能ドメインに対応するフラグメントを含む。フラグメントが、ここに提供されるポリヌクレオチド配列の、いずれか一つの配列を有するポリヌクレオチドによってコードされる3−KSRポリペプチド、またはそのホモログと同質である、一続きのアミノ酸を有する場合、話題のフラグメントは、典型的に長さで少なくとも約10のアミノ酸(aa)から少なくとも約15aa、通常は少なくとも長さで約50aaであり、長さで300aaまたはそれ以上であることが可能であるが、通常は長さで約531aaを超えることはない。遺伝子コードは、適切なコドンを選択し、対応する変異体を構成するために使用することができる。特に、フラグメントは、3−KSRタンパク質の特定のドメインまたはエピトープを含んだものを含む。
【0051】
3−KSRのアミノ酸配列変異体は、核酸への適切なヌクレオチドの変更を導入することによって、またはペプチド合成によって調製されてよい。このような修飾には、例えば、3−KSRのアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または3−KSRのアミノ酸配列内の残基への挿入、および/または3−KSRのアミノ酸配列内の残基の置換を含む。最終的な構造が望ましい特性を有するならば、正式な3−KSR構造にたどり着くように、いかなる欠失、挿入、および置換の組み合わせもなされる。またアミノ酸の変更は、糖鎖付加部位の数や部位の変更、またはアセチル化およびリン酸化を含むその他の翻訳後修飾といった、3−KSRの翻訳後処理を変えてよい。
【0052】
突然変異誘発のために好ましい位置である、3−KSRの特定の残基または領域を識別する有用な方法は、CunninghamおよびWellsの244 SCIENCE 1081−85(1989)に記載されるように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、対象残基群の一残基またはグループは識別され(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluのような荷電残基)、中性のまたは負に荷電されたアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)によって置換されると、アミノ酸と抗原の相互作用に影響を及ぼす。置換に対する機能感受性を実証する、それらのアミノ酸の位置は、さらなる、またはその他の変異体に置換部位を導入することによって、絞り込まれる。したがって、アミノ酸配列変化を導入するための部位があらかじめ決定されている一方で、突然変異の特性は、本質的にあらかじめ決定される必要はない。例えば、所定の部位での突然変異の機能を分析するために、アラニンスキャニングまたはランダム変異導入法が、対象のコドンまたは領域で行われ、および発現した3−KSR変異体が、望ましい活性の有無でスクリーニングされる。
【0053】
アミノ酸配列の挿入は、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入だけでなく、一つの残基から、100またはそれ以上の残基を含むポリペプチドにおよぶ長さのアミノ−、および/またはカルボキシ−末端融合を含む。末端挿入の例には、N−末端メチオニル残基を有する3−KSRを含む。
【0054】
変異体のもう一つのタイプには、アミノ酸置換変異体がある。これらの変異体は、3−KSRタンパク質内に、異なった残基によって置換された、少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。
【0055】
3−KSRタンパク質の生物学的性質における実質的な変更は、(i)例えば、シート状またはヘリカル構造といった、置換部位におけるポリペプチドのバックボーンの構造、(ii)対象部位における分子の荷電または疎水性、または(iii)側鎖のかさ、を維持する上での効果が、著しく異なる置換を選択することによって、達成される。自然発生する残基は、一般的な側鎖性質に基づいてグループに分けられる。
【0056】
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile
(2)中性親水性:cys、ser、thr
(3)酸性:asp、glu
(4)塩基性:asn、gin、his、lys、arg
(5)鎖方向に影響する残基:gly、pro、および
(6)芳香族性:trp、tyr、phe
【0057】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの一のクラスのアミノ酸を、別のクラスのアミノ酸と交換することを伴う。保存的置換は、同一クラス内でのアミノ酸の交換を伴う。
【0058】
II.3−KSRをコードするベクター
本発明はさらに、コレステロールに対し栄養要求性である細胞内の、3−KSRのような、哺乳類ステロール生合成のための生化学的経路内のいずれかの酵素を発現するベクターを提供する。一般的にいずれかの原核生物のクローニングベクターは、ベクターの構築のために使用されてよい。ベクターは、哺乳類細胞のトランスフェクションに先立ち、ベクターDNAを単離するための大腸菌の宿主株内におけるベクターの増殖に有用な、バクテリア複製開始点を備えてよい。バクテリア複製開始点の例には、Col El、pUC、pBR322、または大腸菌の非病原株に起源するその他が含まれるが、これらに限定されない。ベクターはさらに、大腸菌内のプラスミドの高コピー数を拡大するための、選択マーカーを備えてよい。模範的な選択マーカーは、アンピシリン、カルベニシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ゲンタマイシン、サルファエトアゾール、トリメトプリム、およびその他といった、抗生物質に対する抵抗を与える遺伝子を含む。本発明のベクターに使用されてよい、付加的な選択マーカーは、熱ショック、金属解毒、およびその他の代謝プロセスに基づいた選択を与える遺伝子を含む。
【0059】
ベクターはさらに、3−KSR遺伝子の発現を推進するための真核性のプロモーターを備えてよい。これは、哺乳類のチミジンキナーゼ(TK)遺伝子プロモーターといった、最小限のプロモーター、またはシミアン・ウイルス40(SV40)複製開始点のような、より強力な転写カセット、および初期プロモーター領域であることが可能である。またイントロンAおよび/またはB配列の有無を問わず、サイトメガロウイルス(CMV)主要前初期(MIE)プロモーター領域、またはヒト延長因子1アルファ(EFα)のような、非常に強力なプロモーターも、3−KSR遺伝子の発現を促進するために使用されてよい。また真核性の転写終止配列、またはポリアデニル化部位も、3−KSR遺伝子の転写およびポリアデニル化シグナルを停止するために存在してよい。ポリアデニル化部位は、理論上は、いずれかの真核性の遺伝子に由来してよいが、一般的に使用される強力なポリアデニル化配列は、SV40レートポリAおよびウシ成長ホルモン(BGH)ポリAを含む。
【0060】
図2に示されるように、ベクターの一つの実施例(この場合、p3−KSRと名付ける)は、pUC由来のバクテリア複製開始点(ori)、およびこれらの抗生物質に対し感受性を有する大腸菌株に、アンピシリンまたはカルベニシリン耐性を与える、ベータ−ラクタマーゼ遺伝子(bla)を備えてよい。またベクターは、ポリリンカー領域にクローニングされた、異種リコンビナント配列の発現を促進するために、サイトメガロウイルス(CMV)主要前初期(MIE)プロモーターおよびエンハンサーを含んでよい。シミアン・ウイルス40(SV40)ポリアデニル化配列(SV40pA)は、それぞれの遺伝子からの新生mRNAを効率良くポリアデニル化するため、異種リコンビナント配列および3−KSR遺伝子の両方の下流に位置してもよい。SV40プロモーターおよび複製開始点(SV40 ori)は、この選択マーカーの発現を促進するため、3−KSR遺伝子のすぐ上流に位置してもよい。
【0061】
特定の実施例において、3−KSR遺伝子は、マウス肝cDNAライブラリから増幅されたマウス3−KSRのcDNAを直接クローンニングすることによって、ベクターに挿入されてよい。マウス肝cDNAライブラリから3−KSRを増幅するために設計されたプライマーは、例えば、pUC由来のベクターp3−KSR中の、SV40 oriおよびSV40ポリAとの間の領域に存在するPmlI部位と互換性があるように、PmlI末端を含んでよい。したがって、PmlIで制限酵素処理された3−KSRのcDNAは、この遺伝子をp3−KSRバックボーンのPmII部位にクローンニングするために使用されてよい。ベクター内の遺伝子の方向は、制限酵素解析(REN)、およびジデオキシ−終止DNAシークエンシングによって決定されてよい。
【0062】
対象となる少なくとも一つの異種ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、または遺伝子、あるいはカセットは、例えば、図3、4、または5に示されるように、3−KSR遺伝子を備えるベクターのマルチクローニング領域または部位に挿入される。挿入されたポリヌクレオチドまたはカセットは、真核性の、好ましくは哺乳類の宿主細胞における発現を可能とするプロモーターの制御下にある、または該プロモーターに操作可能に連結している。
【0063】
III.3−KSRをコードするベクターの細胞へのランスフェクション
対象となる異種タンパク質(および選択マーカーとしての3−KSR)をコードするポリヌクレオチドベクターの宿主細胞への導入は、当技術分野で既知の技術を用いて達成されてよい。このような既知の技術には、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレン・グリコール沈殿、超音波処理、トランスフェクション、形質導入、形質転換、およびウイルス感染が含まれるが、これらに限定されない。SAMBROOKら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(第3版 2001)を参照のこと。
【0064】
コレステロール栄養要求性が、3−KSR活性のような酵素活性に起因する、いずれの真核細胞、好ましくは哺乳類細胞は、トランスフェクションのために使用されてよい。典型的な細胞株には、NS−0(ECACC No. 85110503)、NS−1(ECACC No. 85011427)、およびCHO−215(Plemenitasら、265(28)J. Biol. Chem. 17012−17(1990))を含んでよいが、これらに限定されない。
【0065】
また本発明は、当初はコレステロールに対し栄養要求性ではないが、放射線、突然変異誘発物質、またはリコンビナント遺伝子ノックアウト技術を使用し、3−KSR活性をコードする内在性遺伝子を不活性化することによって、栄養要求性とされる、真核細胞、特に哺乳類細胞を包含してもよい。このような内在性遺伝子には、17β−ヒドロキシステロイド・デヒドロゲナーゼ・タイプ7(Hsdl7b7)、および3β−ヒドロキシ−デルタ(5)−ステロイドデヒドロゲナーゼ(Hsd3b5)をそれぞれコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。さらにもう一つの実施例において、対象となるノックアウト遺伝子は、もっぱら3−ケトステロイドレダクターゼとして機能すると知られている、ラット3β−HsdIII、マウス3βHsdIV、マウス3β−Hsd V、およびハムスター3β−HsdIIIを含んでよいが、これらに限定されない。
【0066】
3−KSR選択マーカー(および対象となる異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド)を含む発現ベクターがトランスフェクトされる、NS−0、NS−1、CHO−215、およびその他のコレステロール栄養要求性細胞株は、コレステロールが不足した培地で培養されるべきである。あるその他の実施例において、宿主細胞は、以下の不完全なリストにあるステロール前駆体を含む、いずれかの無血清および無コレステロール培地において培養されてよい:4−メチル−5α−コレスタ−3,8,24−トリエン−3β−オール、3−オキソ−4α−メチル−5α−コレスタ−8,24−ジエン、5α−コレスタ−3,8,24−トリエン−3β−オール、および/または3−オキソ−5α−コレスタ−8,24−ジエン。これらの前駆体は、コレステロールの生化学的経路において、3−KSRの上流で作用する。
【0067】
規制への懸念に取り組むために、(トランスフェクション前または後の)宿主細胞は、いずれの適した培地で培養されてよい。該培地には、無血清培地、無タンパク質培地、完全合成培地、または完全合成/無血清培地を含むいかなる組み合わせの培地が含まれるが、これらに限定されない。本発明のこの特別な側面は、動物由来のタンパク質、および/または起源不明のタンパク質が、リコンビナントタンパク質製品を、ヒトの治療または診断への使用には不適当にするという懸念を提言している。適した成長培地の一つの特定の実施例は、CDハイブリドーマ培地(Invitrogen(登録商標)社、カリフォルニア州カールズバッド)であり、これは、動物、植物、または合成起源のタンパク質を含まず、未特定のライセートまたは加水分解物を含まないことが確認されている、完全合成無血清培地である。
【0068】
本発明の宿主細胞は、CD−SFMのような適切な成長培地にすでに適合されているように、提供されてよい。多くの場合、細胞はトランスフェクションに先立ち、このような培地に適合される。その場合、細胞は、動物由来の成分を有していない、もう一つの完全合成無血清培地である、HyQ(登録商標) CDM4NS−0(Hyclone(登録商標)社、ユタ州ローガン)に適合されてよい。後者の市販されている培地は、コレステロール栄養要求性細胞株の培養を支えるための、十分な量のコレステロールを含んでいる。トランスフェクション後、細胞は、コレステロールを含まない適した選択培地で培養される。もう一つの方法として、トランスフェクトされた細胞は、既知の技術を用いて十分に脱脂され、親細胞の成長を支えないということが確認されている血清を添加した従来の培地を使用した、無コレステロール培地で培養される。
【0069】
トランスフェクションに続き、安定した形質転換細胞を選択するため、細胞は一般的に低密度で播種される。これに関し、いずれの適切な選択培地が使用されてよい。一つの実施例において、選択培地は、2mMのL−グルタミンまたはグルタマックス、および1×NEAA(非必須アミノ酸)(Invitrogen(登録商標)社、カリフォルニア州カールスバット)を添加した、CDハイブリドーマ培地を含んでよい。
【0070】
ある実施例において、成長補助剤の混合物が、トランスフェクション後の成長条件を最適化するために、選択培地に加えられる。成長補助剤は、トランスフェクション後に、いずれの適切な細胞株に加えられる。該細胞株は、NS−0、NS−1、CHO−215細胞を含むが、これらに限定されない。特定の実施例において、成長補助剤の混合物は、NS−0細胞に対する、トランスフェクション後の成長条件を最適化するために使用されてよい。一つの実施例において、成長補助剤の混合物は、血清アルブミン、インターロイキン−6、インスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、およびエタノールアミンを含んでよいが、これらに限定されない。
【0071】
いずれの適切な、市販されている型の血清アルブミンが使用されてよい。該血清アルブミンには、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウシ血清アルブミン画分v、および全ヒト血清アルブミンが含まれるが、これらに限定されない。ある実施例において、成長細胞にコレステロールを供給しうると考えられるコレステロール−血清アルブミン複合体を除去するため、血清アルブミンは、未処理のものの代わりに無脂肪酸のものであってよい。無脂肪酸BSAは、例えば、Research Organics社、オハイオ州クリーブランド)を含む、多くの会社から入手可能である。この成分の最終濃度は、限定されないが、選択培地で約0.1%から約5%、より詳しくは、約0.2%、約0.5%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、または約5.0%までを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、血清アルブミンの最終濃度は、選択培地で約1%である。
【0072】
成長条件を最適化するために使用されるもう一つの成長補助剤は、インターロイキン−6を含む。一つの実施例において、リコンビナントヒトIL−6(Promega社、ウィスコンシン州マディソン)が使用されてよい。IL−6の最終濃度は、限定されないが、選択培地で約1ng/mLから約9ng/mL、より詳しくは、約2ng/mL、約3ng/mL、約4ng/mL、約5ng/mL、約6ng/mL、または約9ng/mLまでを上限とし、それ以上を含んでよい。特定の実施例において、IL−6の最終濃度は、選択培地で約5ng/mLである。rhIL−6のようなIL−6の濃度は、製造者が報告した該サイトカインのEC50を対象とし、必要に応じてバッチ間で調整されてよい。
【0073】
成長補助剤の混合物はさらに、インスリン、詳しくは、リコンビナントヒトインスリン(RayBiotech社、ジョージア州ノークロス)を含んでよい。この成分の最終濃度は、限定されないが、選択培地で約5mg/Lから約15mg/L、より詳しくは、約6mg/L、約7mg/L、約8mg/L、約9mg/L、約10mg/L、約11mg/L、または約15mg/Lまでを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、インスリンの最終濃度は、選択培地で約10mg/Lであってよい。
【0074】
また亜セレン酸ナトリウムは、成長条件を最適化するために使用されてよい(J.T. Baker社、ニュージャージー州フィリップスバーグ)。この補助剤の最終濃度は、限定されないが、選択培地で約5.0μg/Lから約8.0μg/L、より詳しくは、約5.5μg/L、約6.0μg/L、約6.5μg/L、約7.0μg/Lまたは約8.0μg/Lまでを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、亜セレン酸ナトリウムの最終濃度は、選択培地で約6.7μg/Lであってよい。
【0075】
その他の実施例において、ピルビン酸ナトリウムは、成長補助剤に使用されてよい(SAFC Biosciences社、カンザス州レネクサ)。ピルビン酸ナトリウムの最終濃度は、限定されないが、選択培地で約0.01g/Lから約0.3g/L、より詳しくは、約0.05g/L、約0.1g/L、約0.15g/L、または約0.3g/Lを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、ピルビン酸ナトリウムの最終濃度は、選択培地で約0.11g/Lである。
【0076】
成長補助剤の混合物はさらに、エタノールアミン(Sigma−Aldrich(登録商標)社、ミズーリ州セントルイス)を含んでよい。この補助剤の最終濃度は、限定されないが、約0.5mg/Lから約3.5mg/L、より詳しくは、約1.0mg/L、約1.5mg/L、約2.0mg/L、約2.5mg/L、または約3.5mg/Lを上限とし、それ以上の範囲を含んでよい。特定の実施例において、エタノールアミンの最終濃度は、選択培地で約2.0mg/Lである。
【0077】
特定の実施例において、成長補助剤の混合物は、無脂肪酸BSA(0.1%〜5%)、rhIL−6(1ng/mL〜9ng/mL)、リコンビナントヒトインスリン(5mg/L〜15mg/L)、亜セレン酸ナトリウム(5μg/L〜8μg/L)、ピルビン酸ナトリウム(0.01g/L〜0.3g/L)、およびエタノールアミン(0.5mg/L〜3.5mg/L)(選択培地での最終濃度)を備えてよい。もう一つの特定の実施例において、成長補助剤の混合物は、無脂肪酸BSA(l%〜5%)、rhIL−6(0.5μg/mL)、リコンビナントヒトインスリン(10mg/L)、亜セレン酸ナトリウム(6.7μg/L)、ピルビン酸ナトリウム(0.11g/L)、およびエタノールアミン(2mg/L)(選択培地での最終濃度)を備えてよい。さらにもう一つの実施例において、成長補助剤の混合物は、無脂肪酸BSA(1%)、rhIL−6(0.5ng/mL)、リコンビナントヒトインスリン(10mg/L)、亜セレン酸ナトリウム(6.7μg/L)、ピルビン酸ナトリウム(0.11g/L)、およびエタノールアミン(2mg/L)(選択培地での最終濃度)を備えてよい。
【0078】
もう一つの実施例において、成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、エタノールアミンを備えてよいが、その他の成長補助剤は備えない。さらなる実施例において、成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、エタノールアミンを備えてよいが、一般的に培養細胞の成長培地に含まれるまたは使用される、その他の物質は備えない。別の実施例において、成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、エタノールアミンを備えてよいが、一般的に血清内に見られるその他の物質は備えない。さらにもう一つの実施例において、成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、エタノールアミン、および、列挙された成長補助剤のいずれかを再構成するために一般的に使用される、水を含むいずれの物質を備えてよいが、その他のいかなる物質も備えない。
【0079】
IV.異種タンパク質生成用キット
本発明はさらに、市販用のキットを提供する。ある実施例において、キットは、ベクター、複数の細胞、および成長補助剤を備える。ベクターは、哺乳類のステロール生合成のための生化学的経路内の酵素であって、例えば、3−KSRのような、ベクターがトランスフェクトされた細胞の選択に有用な酵素をコードする配列を含んでよい。キットのユーザーは、適切な制限酵素を用いて、対象となる遺伝子をベクターにクローンニングしてよい。ある実施例において、細胞はコレステロールに対し、栄養要求性である。一つの実施例において、キットにおいて提供される細胞は、完全合成培地において増殖するよう、すでに適合されている。もう一つの実施例において、キットにおいて提供される細胞は、完全合成無血清培地において培養するよう、すでに適合されている。規制基準に対応して、細胞は、外来性物質がないと判断される、実用的な細胞バンクに由来してよい。
【0080】
もう一つの実施例において、キットは、細胞の培養を支える、ここに記載されるような成長補助剤を備えていてよい。該細胞には、NS−0、NS−1、およびCHO−215が含まれるが、これらに限定されない。ある実施例において、キットは、無血清培地、無タンパク質培地、完全合成培地、または、完全合成/無血清培地を含むそれらのいずれかの組み合わせの培地において、細胞の培養を支える、成長補助剤を備えてよい。特定の実施例において、キットは、例えば、トランスフェクション後および限定希釈細胞クローニング(LDCC)フェーズの間、低播種密度におけるCD−SFM NS−0細胞の増殖を支える、ここに記載される成長補助剤を備えてよい。
【0081】
さらに本発明のキットは、対象となるいずれの異種タンパク質を発現するため使用されてよい。実際には、本発明の、細胞内で発現される異種タンパク質の特性および起源、細胞株、および細胞培養は、限定されない。例えば、プラスミドp3−KSRは、単一または少なくとも二つの遺伝子を発現させるために設計されてよい。前者は、単鎖ホルモンのようなスタンドアロンタンパク質の発現に適用され、後者は、抗体のような二重鎖分子の発現に向いている。
【0082】
本発明の特定の実施例において、リコンビナント抗体分子は、必要な遺伝子を含んだベクターを用いて、発現されてよい。例えば、図3を参照のこと。抗体は、複数の成分、詳しくは、二つのH鎖および二つのL鎖からなる、タンパク質複合体である。一つの実施例において、p3−KSRベクターは、直列にクローニングされたヒト免疫グロブリンG(IgG)の完全なH鎖およびL鎖遺伝子を含むよう、設計されてよい。このリコンビナントコンストラクトからのタンパク質発現は、結果として、後に細胞培養物から単離され、商業的利用のために精製されることが可能な、モノクローナル抗体の分泌をもたらす。ヒトモノクローナル抗体は、単一の抗原に対し特異的であり、特定の病原体、器官、または腫瘍に対して使用することができるため、ヒトへの治療法として適用するのに適切である。
【実施例】
【0083】
さらに詳述することなくして、当業者は、前出の記述を用いて、本発明を最大限に利用することができると思われる。以下の例は、説明目的のみのものであり、開示におけるその他のいかなる部分をも限定しない。
【0084】
実施例1:完全合成無血清培地における、NS‐0マウス骨髄腫細胞株のコレステロール選択の実証
NS‐0マウス骨髄腫細胞株は、前記細胞のバックグラウンドにおける、および開始時からのSFM状態における、選択マーカーとしての3‐KSRの適合性を試験するため、二つの独立した完全合成無血清培地(CD‐SFM)の処方に適応した。NS‐0細胞は、CD−ハイブリドーマ(インビトロゲン(登録商標)社)とCDM‐4‐NS‐0(HyClone(登録商標)社)とに適応した。アクセッション細胞バンク(ACB)は、それぞれのCD‐SFMに適応したNS‐0細胞株のために、作成された。CD‐SFM‐NS‐O細胞株の、前記の成長培地の中の添加コレステロールへの依存性を測定するため、アッセイを実施した。コレステロールなしの培地中でCD‐SFM‐NS‐O細胞を72時間培養した後に、細胞のわずか10%以下が生存していたことが、前記アッセイによって示された。CD‐SFMで培養して僅か5日間で、トリパンブルー排除法では生存する細胞を検出することはできなかった。加えて、コレステロールが欠如する中では、前記細胞の断続的な増殖相は観察されず、これによって、培養培地中でのこの脂質の欠乏に対する感受性が明らかとなった。
【0085】
実施例2:マウス3‐ケトステロイドレダクターゼ(3‐KSR)のPCR増幅と発現ベクターへの3‐KSRのクローニング
ハツカネズミ3β‐ヒドロキシ‐デルタ(5)‐ステロイド脱水素酵素をコードするマウス3‐ケトステロイドレダクターゼ(3‐KSR)遺伝子は、成熟雄性BALB/cマウスの肝臓から作製したcDNAから増幅された。発表済みのマウス3‐KSR Hsd3b5配列に特異的なオリゴヌクレオチドを用いてPCR増幅を行った後、約1.1kbの特徴的なバンドがアガロースゲル電気泳動によって検出された。該バンドは単離され、pCR‐BluntII‐TOPOベクター(インビトロゲン(登録商標)社)にクローニングされた後、引き続きdhfr.の代わりにpBFdhfr.1バックグラウンドに再クローニングされた。新しいコンストラクトはpBFksr.1と呼ばれる。
pBFksr.1内の1.1kbの3‐ksrのコーディング領域は、DNAシークエンシング法によって確認され、オープンリーディングフレーム(orf)は発表済みの配列と比較した。特定された配列は、NCBIアクセッション番号A49573である発表済みマウス3‐ケトステロイドレダクターゼと100%一致した。
【0086】
実施例3:完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地における、NS‐0細胞のトランスフェクションと選択
正しい3‐KSR orfを含んだコンストラクトpBF/ksr.1は、NS‐0細胞にトランスフェクトされ、完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地(Chemically−defined Fatty Acid−Free Supplemented selection medium)で選択される。培地は以下のCD‐ハイブリドーマ(インビトロゲン(登録商標)社)、グルタマックス(2mM、インビトロゲン(登録商標)社)、NEAA(非必須アミノ酸)(1×、インビトロゲン(登録商標)社)、無脂肪酸BSA(1%、カルビオケム社)、リコンビナントヒトIL‐6(5ng/ml、プロメガ社)ITS液体培地補助剤(1×、シグマアルドリッチ社)からなる。最初のトランスフェクションと選択は、以下のとおりにT‐75フラスコ中で「まとめて」行われる。トランスフェクションの日に、生存する細胞と死亡した細胞を区別するため、親となるNS‐0培養物を、トリパンブルー排除法を用いて数える。培養物は少なくとも90%が生存していなくてはならない。各トランスフェクションに対し、約1×107の細胞が必要とされる。プラスミドトランスフェクションに加え、ネガティブコントロールを確立するため、「偽の」トランスフェクション(DNAなし)を1例行わなくてはならない。細胞を遠心分離し、20mLの無血清トランスフェクション培地で細胞ペレットを再懸濁し、再度遠心分離し、細胞を洗浄する。各トランスフェクションに対し、約1×107の細胞を700μLの無血清トランスフェクション培地で再懸濁する。100μLの蒸留された滅菌水の中で、40μgの精製済みの直線化されたプラスミドDNAを再懸濁し、DNA溶液を調整する。DNAの直線化はどのDNA制限酵素でも達成されるが、通例、pBFksr1をベータ−ラクタマーゼオープンリーディングフレーム(orf)において一箇所切断するPvuI(プロテウス・ブルガリス制限酵素I)では制限酵素処理されない。全DNA溶液をエレクトロポレーションキュベットに加える。700μLの細胞懸濁液をキュベットに入ったDNA溶液に加え、ピペッティングにより静かに、泡の発生を避けつつ混合する。キャップをキュベットの上に置き、キュベットをエレクトロポレーション装置(ジーンパルサーII(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)あるいは同等品)の中に置く。250ボルト、400μFdの単一パルスをキュベットに与える(磁場強度625V/cm)。最適条件であれば、8ミリ秒ほどの時定数の値が得られる。T‐75細胞培養フラスコに入った12mLの完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地に細胞を加え、37℃で、5%の二酸化炭素、90%の比較的湿度の高い状態で一晩培養する。
【0087】
pBFksr.1をトランスフェクトされ、完全合成無脂肪酸補助添加の選択培地で選択された培養物は、3週間の選択後、コントロールに対し統計的に有意義な数の生存細胞を生じる。同様の選択条件で成長させた偽のトランスフェクトNS‐0細胞は、3週間の選択後も統計的に有意義な数の生存細胞は生じない。
【0088】
実施例4:完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地中のNS‐0細胞におけるトランスフェクション、選択、およびモノクローナル抗体の発現
構築された哺乳類発現ベクターpBFdhfr.1は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)の突然変異の親細胞株CHO‐DG44における発現のための、ヒト抗体のH鎖およびL鎖をコードする配列を含む哺乳類の遺伝子のクローニングのための重要要素として役立つ。前記ベクターを使用して、ヒトIgG1H鎖定常部の発現カセットはマルチクローニング部位(mcs)でクローンニングされ、ヒトH鎖の可変部の配列に対する受容体として役立つ。ベクターはpBFdhfr.1:Hcassetteと命名された。
【0089】
対応するL鎖の可変部の配列は、最初にヒトL鎖定常部のカセットを含むバキュロウイルス発現ベクターであるpIEI‐lightにクローニングされた。全L鎖をコードする配列は引き続き、pBFdhfr.1にクローニングされた。二重の発現ベクターを構築するため、pCMV‐MIEの5’末端および相補鎖上のBGH‐pAに特異的なプライマーを使い、両端にBg1II REN部位を含むpCMV‐MIE‐L鎖‐BGHpAを含むL鎖カセットを増幅した。このフラグメントは引き続き、それぞれの対応するpdhfr:H鎖コンストラクトの、単一のBg1II部位にクローニングされた。得られたコンストラクトであるpBFdhfr.1:humAbは、直列にクローニングされた完全なヒトの抗体H鎖とL鎖遺伝子を含む。
【0090】
マウス3‐ケトステロイドレダクターゼ(3‐KSR)遺伝子は単離され、pCR‐BluntII‐TOPOベクター(インビトロゲン(登録商標)社)にクローニングされ、引き続き、dhfr.の代わりにpBFdhfr.1:humAbに再クローニングされる。正しい3‐KSR orfを含む新しいコンストラクトpBFksr.1:HUMABは、NS‐0細胞にトランスフェクトされ、完全合成無脂肪酸サプリメント選択培地で選択される。 最初のトランスフェクションと選択は「まとめて」T‐75フラスコで行われる。次のトランスフェクションでは、細胞は直接選択培地で培養される。pBF/ksr.1:HUMABでトランスフェクトされ、速やかにコレステロールなしの培地で選択された培養物は、コントロールに対し3週間の選択後に統計的に有意義な数の生存細胞を生成する。同様の選択条件で成長させた偽のトランスフェクトNS‐0細胞は、3週間の選択後も統計的に有意義な数の生存細胞は生成しない。
【0091】
トランスフェクトされた細胞の選択と成長には、無細胞の上清について、酵素免疫吸着法(ELISA)によって、リコンビナントmAbの測定を行う。簡潔に説明すると、pBFksr.1:HUMABをトランスフェクトされた培養物の上清がサンプリングされ、遠心分離され、細胞とデブリが取り除かれる。6.3mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に9μLの抗体を加え処方されたヤギの抗ヒトFabフラグメントラムダ特異的抗体(シグマアルドリッチ社、ミズーリ州セントルイス)の溶液で、96穴プレートを覆う。プレートは4度で、少なくとも24時間、わずか2週間以下でインキュベートされる。アッセイの日に、プレートを3回PBS/tweenバッファー(PBS内に0.1%tween)で洗浄する。ヒトIgG1ラムダモノクローナル抗体標準(シグマ(登録商標)社)をPBS/tweenで5μg/mLまで希釈し、連続的に1対2の割合でPBS/tweenで希釈して標準濃度のパネルを調製する。各標準を96穴プレートに、各穴100μLで加える。PBS/tweenで、抗体濃度未知の試料を1対2000で希釈し、96穴プレートに、各穴100μLで加える。プレートを1時間室温でインキュベートする。インキュベート後、プレートを3回PBS/tweenで洗浄する。ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgGFc抗体(KPL社、メリーランド州ゲイサーズバーグ)を1対2000でPBS/tweenで希釈し、96穴プレートに各穴100μLで加える。プレートを1時間室温でインキュベートする。インキュベート後、プレートを3回PBS/tweenで洗浄する。3,3’ ,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)基質(シグマ(登録商標)社)を96穴プレートに各穴100μLで加える。100μLの0.5M H2SO4(アクロス・オーガニクス社、ベルギー、ヘール)を加えることにより、約1分後に反応が停止する。プレートはサーモマックスマイクロプレートリーダーまたは同等品で、450nmの波長が読み取られる。ELISAの結果は、リコンビナントmAb生成物の存在に対し陽性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1A】3−KSR遺伝子産物によって部分的に媒介される、真核生物、特に哺乳類のステロール生合成の生化学的経路を示す。
【図1B】図1Aの説明と同様である。
【図1C】図1Aの説明と同様である。
【図1D】図1Aの説明と同様である。
【図1E】図1Aの説明と同様である。
【図1F】図1Aの説明と同様である。
【図1G】図1Aの説明と同様である。
【図1H】図1Aの説明と同様である。
【図1I】図1Aの説明と同様である。
【図1J】図1Aの説明と同様である。
【図2】p3−KSR発現ベクターのプラスミドマップを表示する。
【図3】L鎖遺伝子およびH鎖遺伝子を直列にクローニングした完全なヒト抗体を保有する、p3−KSR:mAbVL:mAbVH発現ベクターのプラスミドマップを表示する。
【図4】p3−KRS:rec_geneのプラスミドマップを表示する。該プラスミドは、p3−KSRにクローニングしたリコンビナント遺伝子コンストラクト(rec_gene)の一例である。
【図5】p3−KSR発現ベクターのマルチクローニング領域(multiplecloning region)における、6つの可能な抗体遺伝子カセット発現配向の例を提供する、pBFKSR.1HUMABを表示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを備えることを特徴とするベクター。
【請求項2】
前記酵素は3−ケトステロイドレダクターゼを含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記3−ケトステロイドレダクターゼはマウス3−ケトステロイドレダクターゼを含む、請求項2に記載のベクター。
【請求項4】
前記酵素をコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号1を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項5】
前記酵素をコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号2を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号3を含む前記酵素のアミノ酸配列をコードする、請求項1に記載のベクター。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号4を含む前記酵素のアミノ酸配列をコードする、請求項1に記載のベクター。
【請求項8】
前記ベクターは、リコンビナントDNA発現ベクターである、請求項1から7のいずれか一つに記載のベクター。
【請求項9】
該リコンビナントDNA発現ベクターは、生成物の遺伝子のための少なくとも第一転写単位をさらに備えており、該転写単位は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にあることを特徴とする請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項11】
前記宿主細胞は真核細胞である、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
前記宿主細胞は、コレステロールに対し栄養要求性である、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記宿主細胞は、NS−0、NS−I、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項14】
前記宿主細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項15】
真核細胞の該ステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学活性変異体をコードするポリヌクレオチドを備えるベクターと、
下記の群より任意に選択される一つまたはそれ以上のものとを備えるキット:
コレステロールに対し栄養要求性である複数の宿主細胞;
完全合成無血清培地;
低播種およびクローニング密度における前記複数の宿主細胞の成長を支える成長補助剤;
前記キットを使用するための少なくとも一つのプロトコル。
【請求項16】
前記酵素は3−ケトステロイドレダクターゼを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記3−ケトステロイドレダクターゼは、マウス3−ケトステロイドレダクターゼを含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記酵素をコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号1を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記酵素をコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号2を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号3を含む、前記酵素のアミノ酸配列をコードする、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号4を含む、前記酵素の該アミノ酸配列をコードする、請求項15に記載のキット。
【請求項22】
前記ベクターは、リコンビナントDNA発現ベクターである、請求項15から21のいずれか一つに記載のキット。
【請求項23】
該リコンビナントDNA発現ベクターは、生成物の遺伝子のための少なくとも第一転写単位をさらに備えており、該転写単位は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にある、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記宿主細胞は、NS−0、NS−I、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項15に記載のキット。
【請求項25】
前記宿主細胞は、NS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項15に記載のキット。
【請求項26】
前記宿主細胞は、完全合成無血清培地に適合される、請求項15に記載のキット。
【請求項27】
前記宿主細胞は、完全合成培地に適合される、請求項15に記載のキット。
【請求項28】
前記成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、およびエタノールアミンの少なくとも一つを備える、請求項15に記載のキット。
【請求項29】
前記成長補助剤は、約0.1%から約5%の無脂肪酸BSA、約1ng/mLから約9ng/mLのrhIL−6、約5mg/mLから約15mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約5μg/Lから約8μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.01g/Lから約0.3g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約0.5mg/Lから約3.5mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える、請求項15に記載のキット。
【請求項30】
前記成長補助剤は、約1%の無脂肪酸BSA、約5ng/mLのrhIL−6、約10mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約6.7μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約2.0mg/Lmg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える、請求項15に記載のキット。
【請求項31】
約0.1%から約5%の無脂肪酸BSA、約1ng/mLから約9ng/mLのrhIL−6、約5mg/mLから約15mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約5μg/Lから約8μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.01g/Lから約0.3g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約0.5mg/Lから約3.5mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える、細胞培養補助剤の組成。
【請求項32】
約1%の無脂肪酸BSA、約5ng/mLのrhIL−6、約10mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約6.7μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約2.0mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える、細胞培養補助剤の組成。
【請求項33】
コレステロール無しの培地で生存することができる細胞の選択方法であって、
真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、任意に少なくとも一つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを備えるベクターを、コレステロールに対して栄養要求性の真核細胞にトランスフェクトするステップと、
コレステロールが不足している培地で生存する能力を有する細胞を選択するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項34】
前記細胞は、NS−0、NS−l、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞は、NS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記培地は、完全合成および無血清である、または完全合成である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記酵素は3−ケトステロイドレダクターゼを備える、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
コレステロールが不足した培地で生存し、異種タンパク質を生成する能力を有する細胞を取得する方法であって、
請求項1から9のいずれか一つに記載のベクターと、異種タンパク質をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを、コレステロールに対し栄養要求性である真核細胞にトランスフェクトするステップと、
コレステロールが不足した培地で生存する能力を有する細胞を選択するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項39】
前記細胞は、コレステロールに対し栄養要求性である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞はNS−0、NS−1、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記培地は、完全合成および無血清である、または完全合成である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
異種タンパク質を生成する方法であって、
請求項1から9のいずれか一つに記載のベクターと、異種タンパク質をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドとを、コレステロールに対し栄養要求性である真核細胞にトランスフェクトするステップと、
異種タンパク質を生成する条件の下で、細胞を培養するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項44】
前記細胞はコレステロールに対し栄養要求性である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞はNS−0、NS−1、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記培地は、完全合成および無血清である、または完全合成である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
細胞培養物から異種タンパク質を取得するステップをさらに備える、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
異種タンパク質の発現方法であって、
コレステロールが無い状態で、異種タンパク質を生成する条件の下で、3−ケトステロイドレダクターゼおよび少なくとも一つの異種タンパク質をコードする配列を備えるベクターをトランスフェクトされた細胞を培養するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項50】
前記細胞はコレステロールに対し栄養要求性である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞はNS−0、NS−1、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記培地は、完全合成および無血清である、または完全合成である、請求項49に記載の方法。
【請求項1】
真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを備えることを特徴とするベクター。
【請求項2】
前記酵素は3−ケトステロイドレダクターゼを含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記3−ケトステロイドレダクターゼはマウス3−ケトステロイドレダクターゼを含む、請求項2に記載のベクター。
【請求項4】
前記酵素をコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号1を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項5】
前記酵素をコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号2を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号3を含む前記酵素のアミノ酸配列をコードする、請求項1に記載のベクター。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号4を含む前記酵素のアミノ酸配列をコードする、請求項1に記載のベクター。
【請求項8】
前記ベクターは、リコンビナントDNA発現ベクターである、請求項1から7のいずれか一つに記載のベクター。
【請求項9】
該リコンビナントDNA発現ベクターは、生成物の遺伝子のための少なくとも第一転写単位をさらに備えており、該転写単位は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にあることを特徴とする請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項11】
前記宿主細胞は真核細胞である、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
前記宿主細胞は、コレステロールに対し栄養要求性である、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記宿主細胞は、NS−0、NS−I、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項14】
前記宿主細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項15】
真核細胞の該ステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学活性変異体をコードするポリヌクレオチドを備えるベクターと、
下記の群より任意に選択される一つまたはそれ以上のものとを備えるキット:
コレステロールに対し栄養要求性である複数の宿主細胞;
完全合成無血清培地;
低播種およびクローニング密度における前記複数の宿主細胞の成長を支える成長補助剤;
前記キットを使用するための少なくとも一つのプロトコル。
【請求項16】
前記酵素は3−ケトステロイドレダクターゼを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記3−ケトステロイドレダクターゼは、マウス3−ケトステロイドレダクターゼを含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記酵素をコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号1を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記酵素をコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号2を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号3を含む、前記酵素のアミノ酸配列をコードする、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号4を含む、前記酵素の該アミノ酸配列をコードする、請求項15に記載のキット。
【請求項22】
前記ベクターは、リコンビナントDNA発現ベクターである、請求項15から21のいずれか一つに記載のキット。
【請求項23】
該リコンビナントDNA発現ベクターは、生成物の遺伝子のための少なくとも第一転写単位をさらに備えており、該転写単位は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にある、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記宿主細胞は、NS−0、NS−I、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項15に記載のキット。
【請求項25】
前記宿主細胞は、NS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項15に記載のキット。
【請求項26】
前記宿主細胞は、完全合成無血清培地に適合される、請求項15に記載のキット。
【請求項27】
前記宿主細胞は、完全合成培地に適合される、請求項15に記載のキット。
【請求項28】
前記成長補助剤は、無脂肪酸BSA、rhIL−6、リコンビナントヒトインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、およびエタノールアミンの少なくとも一つを備える、請求項15に記載のキット。
【請求項29】
前記成長補助剤は、約0.1%から約5%の無脂肪酸BSA、約1ng/mLから約9ng/mLのrhIL−6、約5mg/mLから約15mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約5μg/Lから約8μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.01g/Lから約0.3g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約0.5mg/Lから約3.5mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える、請求項15に記載のキット。
【請求項30】
前記成長補助剤は、約1%の無脂肪酸BSA、約5ng/mLのrhIL−6、約10mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約6.7μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約2.0mg/Lmg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える、請求項15に記載のキット。
【請求項31】
約0.1%から約5%の無脂肪酸BSA、約1ng/mLから約9ng/mLのrhIL−6、約5mg/mLから約15mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約5μg/Lから約8μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.01g/Lから約0.3g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約0.5mg/Lから約3.5mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える、細胞培養補助剤の組成。
【請求項32】
約1%の無脂肪酸BSA、約5ng/mLのrhIL−6、約10mg/Lのリコンビナントヒトインスリン、約6.7μg/Lの亜セレン酸ナトリウム、約0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム、および約2.0mg/Lのエタノールアミンの、選択培地における最終濃度を備える、細胞培養補助剤の組成。
【請求項33】
コレステロール無しの培地で生存することができる細胞の選択方法であって、
真核細胞のステロール生合成経路内の酵素、その生物学的活性フラグメント、またはその生物学的活性変異体をコードするポリヌクレオチドと、任意に少なくとも一つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを備えるベクターを、コレステロールに対して栄養要求性の真核細胞にトランスフェクトするステップと、
コレステロールが不足している培地で生存する能力を有する細胞を選択するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項34】
前記細胞は、NS−0、NS−l、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞は、NS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記培地は、完全合成および無血清である、または完全合成である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記酵素は3−ケトステロイドレダクターゼを備える、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
コレステロールが不足した培地で生存し、異種タンパク質を生成する能力を有する細胞を取得する方法であって、
請求項1から9のいずれか一つに記載のベクターと、異種タンパク質をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを、コレステロールに対し栄養要求性である真核細胞にトランスフェクトするステップと、
コレステロールが不足した培地で生存する能力を有する細胞を選択するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項39】
前記細胞は、コレステロールに対し栄養要求性である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞はNS−0、NS−1、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記培地は、完全合成および無血清である、または完全合成である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
異種タンパク質を生成する方法であって、
請求項1から9のいずれか一つに記載のベクターと、異種タンパク質をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドとを、コレステロールに対し栄養要求性である真核細胞にトランスフェクトするステップと、
異種タンパク質を生成する条件の下で、細胞を培養するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項44】
前記細胞はコレステロールに対し栄養要求性である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞はNS−0、NS−1、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記培地は、完全合成および無血清である、または完全合成である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
細胞培養物から異種タンパク質を取得するステップをさらに備える、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
異種タンパク質の発現方法であって、
コレステロールが無い状態で、異種タンパク質を生成する条件の下で、3−ケトステロイドレダクターゼおよび少なくとも一つの異種タンパク質をコードする配列を備えるベクターをトランスフェクトされた細胞を培養するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項50】
前記細胞はコレステロールに対し栄養要求性である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞はNS−0、NS−1、およびCHO−215からなる群より選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞はNS−0マウス骨髄腫細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記培地は、完全合成および無血清である、または完全合成である、請求項49に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2008−539792(P2008−539792A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512522(P2008−512522)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/019344
【国際公開番号】WO2006/125126
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507380274)バイオファクチューラ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/019344
【国際公開番号】WO2006/125126
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507380274)バイオファクチューラ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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