説明

トランスポンダを組み込んだカード

【課題】トランスポンダを組み込んだ電子カードに関し、信頼性を維持しながらより低コストでの製造を可能にする。
【解決手段】トランスポンダを組み込んだカード2は、電子ユニット6と、この電子ユニットに接続されたアンテナ8とを備え、アンテナ8は絶縁サポート上に配置された非絶縁導体路10により構成されている。前記導体路は、少なくとも1つの巻線12を形成しており、巻線12の両側に第1端と第2端とを有している。電子ユニット6は、巻線12の内側または外側で、上記第1端の側に配置されて、これに電気的に接続されている。導体路の第2端は、巻線12に交差する絶縁被覆を装着した電線30によって、電子ユニットに電気的に接続されており、導体路の第2端と電子ユニットとの間の電気的接続のために必要な電気的接触を確保するため、電線30の第1および第2の端部32,34が、少なくとも部分的に剥き出しになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ユニットで構成されるトランスポンダと、少なくとも1つの巻線をもつアンテナとを備える電子カードの分野に関するものである。このようなカードに、他の電子的要素を組み込むこともできる。カードという用語は、銀行カード形式のプラスチックのカード、および一般的に主面に広がり任意のタイプの形状をもつ他のカードだけではなく、トークン、チケット、ラベルなども意味するものと解釈される。特に、本発明は、無線(RF)リーダによる遠隔認証を可能とするトランスポンダを搭載したアクセスカードまたはRFIDカードに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスポンダは、長年にわたって、コイル型アンテナと共に電子カードに組み込まれてきた。特に、コイル・アンテナは、非絶縁導体路(すなわち、アンテナから電子ユニットへの電気的接続を形成する前には、絶縁サポートと反対側の面が絶縁膜または絶縁被覆により覆われていないもの)により構成されている。導体路は、互いから離間したいくつかの巻線を形成して、絶縁サポート上に配置されている。この導体路は、印刷手法により形成することができ、あるいは、絶縁サポート上に導電性シートをまず被着させて、エッチングにより形成することができる。
【0003】
上記タイプの電子カードの製造において長く知られてきた問題は、コイル・アンテナの両端がそれぞれ巻線の両側に位置していることによって生じるものであり、このことは、それらの2つの端部を電子ユニットに電気的に接続する際に問題となる。様々な解決法がすでに提案されている。具体的には、電子ユニットを巻線の上方に配置することが提案されているが、このような手法は、電子ユニットが比較的大きいか、あるいはコイルの巻数が少ないという特別な場合にのみ考え得るものである。積層段階においてアンテナを部分に分割するように電子ユニットをサポートに埋め込む必要がないという理由で、カードの形成はそれほど簡単ではない。このため、本発明の枠組み内では、電子ユニットはアンテナの巻線の内側または外側に配置されるものとする。後者の場合に、接続の問題を解決するため、絶縁サポートの背面に接続ストリップを形成して、サポートに貫通するビアを利用することが提案されている。この手法は、ビアを形成すると共に絶縁サポートの両面に導体路を配置する必要があるため、比較的複雑である。この欠点を解消するため、下記特許文献1(その中の図2を参照)では、プリント・アンテナの巻線を横切る絶縁ブリッジを配置することを提案している。この絶縁ブリッジは、やはり印刷手法を用いて形成することができる。そして、導体路の一部分が、アンテナの巻線の両側にそれぞれ位置する2つの導体パッドをつなぐようにして、絶縁ブリッジの上に印刷される。この後者の手法は、いくつかの一連の処理を要し、これによって、製造時間ひいては得られるカードのコストが増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1168239号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、トランスポンダを組み込んだ電子カードであって、信頼性を維持しながら、より低コストで製造することが可能であるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、トランスポンダを組み込んだ電子カードに関し、これは、電子ユニットと、この電子ユニットに電気的に接続されたアンテナとを備え、このアンテナは、絶縁サポート上に配置された非絶縁導体路により構成されており、この導線または導体路は、少なくとも1つの巻線を形成して、この少なくとも1つの巻線の両側にそれぞれ位置する第1端と第2端とを有している。電子ユニットは、上記少なくとも1つの巻線の内側または外側で、導体路の第1端の側に配置されて、この第1端に電気的に接続されている。導体路の第2端は、上記少なくとも1つの巻線に交差する絶縁被覆を装着した電線によって、電子ユニットに電気的に接続されており、導体路の第2端と電子ユニットとの間の電気的接続のために必要な電気的接触を確保するため、電線の第1および第2の端部が、少なくとも部分的に剥き出しになっている。
【0007】
好ましい実施態様によれば、電線の第1および第2の端部は、それぞれ、電線の2つの電気接触領域を形成する第1および第2の平坦な剥き出し領域を有している。
【0008】
本発明について、以下の実施形態、その変形例、および絶縁電線の供給とその絶縁サポート上への配置のための装置の説明において、より詳細に記述する。この説明は、全く限定するものではない例として提示される添付の図面を参照して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る電子カードの製造途中の部分平面図である。
【図2】図2は、図1に示す製造途中の電子カードの部分断面図である。
【図3】図3は、図1の電子カードの完成した状態、およびそのような電子カードの中間物の、図2と同様の部分断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る電子カードの変形例の製造途中の部分平面図である。
【図5】図5は、本発明に係る電子カードの製造に関係する、剥き出しの両端部をもつ絶縁電線切片を供給するための装置を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る電子カードの実施形態について、図1および2に基づき、以下で説明を行う。これらの図では、当該カードを部分的に示している。電子カード2は、その本体の中すなわちカード内部に組み込まれたトランスポンダを有している。このトランスポンダは、アンテナ8に電気的に接続された電子ユニット6によって構成されている。このアンテナは非絶縁導体路10によって構成されており、これは、絶縁サポート4上に配置されて、いくつかの巻線12を形成している(さらに、本発明は、単一の巻線を有する変形例にも関するものである)。導体路は、例えば、導電性インクで印刷することによって、あるいはサポート4上に被着させた金属膜のエッチングによって得られる。アンテナは、巻線12の両側にそれぞれ位置する第1端16と第2端18とを有している。電子ユニット6は、それらの巻線の内側で、上記第1端16の側に配置されて、これに金属タブ26によって電気的に接続されている。別の変形例では、電子ユニットは巻線の外側に配置される。
【0011】
一般に、導体路10の第2端は、絶縁被覆36が装着された電線30により、電子ユニット6に電気的に接続されている。この電線は、巻線12に交差しており、また、その第1と第2の端部が少なくとも部分的に剥き出しになっており、これにより、導体路の第2端18と電子ユニット6との間の電気的接続のために必要な電気的接触を確保している。剥き出し領域は巻線12の両側に位置しており、それらの巻線に重なっている電線30部分は、それを取り囲む絶縁被覆よって絶縁されている。このため、巻線を横切る経路によって短絡の問題が生じることはない。供給される電線それ自体が絶縁されているので、従来技術におけるように巻線を少なくとも局部的に保護絶縁膜で覆う必要はない。
【0012】
図1に示す変形例では、絶縁サポート4上に、第1と第2の導体パッド23、24を形成する導体路の追加部22が、巻線12に関して電子ユニットの側に配置されている。第1の導体パッド23は、金属タブ28によって電子ユニットに電気的に接続されている。電線30の第1と第2の端部は、それぞれ、この電線の2つの電気接触領域を形成する第1と第2の平坦な剥き出し領域32、34を備えている。第1の平坦な剥き出し領域32は、導体路の追加部22の第2の導体パッド24上に重ねられて、この第2のパッドに電気的に接続されている。第2の平坦な剥き出し領域34は、アンテナを形成する導体路10の第2端18の上に重ねられて、この第2端に電気的に接続されている。
【0013】
注目されることは、図示していない別の実施形態において、電線30の第2の端部は、具体的には接点ブロックにより構成される電子ユニットの導体パッドに直接接続されるということである。さらに、注目されることは、電線30の2つの剥き出し端部は平坦でなくてもよいということである。積層によって2つの導体パッドは変形することが可能であり、そして、これらが何らかの接触面で円形の電線にぴったりとくっつく。一実施形態において、電線の端部は、対応する導体パッドに半田付けされる。この最後のケースでは、半田付け処理は、一緒に電線を剥き出しにするように機能することが可能である。
【0014】
効果的な変形例では、電線の第1の平坦な剥き出し領域32と導体路部分22の第2の導体パッド24との間の電気的接触、および電線の第2の平坦な剥き出し領域34と導体路10の第2端18との間の電気的接触は、半田付けすることなく形成される。図3に示すように、包み込み材料によって、これらの平坦な剥き出し領域は、それぞれ第2の導体パッド24と導体路の第2端18に対して確実に押し付けられる。この変形例において、包み込みは、サポート4と上位層40とによって達成され、これらは一緒に積層される。電気的接続を確保するための物理的接触は、サポート4に固着している上位層によって維持される。注目されることは、積層工程の後に、サポート4と上位層40との間の境界面が消滅することが可能であるということであり、これによって、それらはトランスポンダを包み込むと共にカードの本体を成すただ1つのプラスチック塊を形成する。カード2は、場合によっては、その上にプリントパターンを最終工程で設けることができる、完成したカードを形成することが可能であり、あるいは、その面に追加の層または膜を設けることにより完成される“PRELAM”または“インレイ”すなわち中間製品を形成することが可能である。
【0015】
図1では、導体路10の端部18が、巻線12を形成している導体路部分よりも大きい幅を有している。しかし、別の変形例では、端部18と巻線は同じ幅を有する。
【0016】
電線30とその絶縁被覆36は、比較的小さな直径、好ましくは50から150ミクロン(50〜150μm)の範囲にある直径を有するものとすることができる。当業者であれば、積層処理を伴うプロセスによって得られるこのようなカードにおいて、特に、実質的に円形の断面をもつ電線によるこのような解決策を考えることはなかったであろう。実際に、積層工程において電線30が巻線12を部分に分割することが予想されるので、初めは、このような解決策は技術的に不適切に思われる。しかし、特に小径の電線の場合、積層加工に変更を加えなくても、巻線が部分に分割されないことが分かっており、これは、印刷された導体路であってもそうである。サポート4上に被着させた金属膜のエッチングにより得られる導体路は、さらに頑丈であり、150μmよりも大きい直径の電線を何の問題もなく支持する。また、大径の場合は、当業者であれば、電線の下で巻線を破断させることなく変形させるように、積層加工の様々なパラメータを調整することができる。
【0017】
図4は、図1のカードの変形例を示している。図1の変形例では、電線30の端部は、この電線が巻線と交差している領域における巻線12の方向に揃っており、電線の中央の絶縁部分はアンテナ8の巻線を斜めに横切っている。このように、電線は非直線的な経路をもつものであり、これは大きな困難を伴うことなく実現することができるが、図5に基づき後述する、本発明の枠組み内で開発された比較的精巧な装置を使用する。図4の変形例では、電線30の端部、特に接触領域32、34がこの電線の中央部と一直線になるように、導体路10の端部18Aおよび導体部分22Aの導体パッド24Aが構成されており、これによって、電線はその全長に渡って同一の直線方向に維持される。本発明に直接的な関係はないが、電子ユニット6Aは2つの導体パッドを備えており、これらは、ワイヤ46、48を半田付けすることにより(ワイヤボンディング技術)、パッド16A(導体路の第1端)とパッド23A(追加導体部の第1の導体パッド)に接続されている。
【0018】
図5は、カードの製造において電線30をサポート4上に供給するための装置52を模式的に示している。この装置は、ロットごとの複数のカードの製造に適応している。各カードに必要な電線30は、実際には、同じ参照符号30を付した電線切片である。この装置は、そのような各電線切片の両端部にそれぞれ平坦な剥き出し領域(従って、絶縁被覆36を持たない)を有して絶縁された電線切片の連続的な製造を、高い生産速度で可能にするものである。また、この装置は、例えば、図1に示すように、非直線的な経路に沿って電線切片を配置することを可能にする。そこで、装置52はチャネルを備えたヘッドを有し、電線30がこのヘッドの傾斜面を有する終端部56に向けて供給される。傾斜面は、打撃ツールまたは穿孔ツール58のための当り面を形成しており、このツールは、垂直方向に可動であって、生産される各電線切片の2つの導体パッドを形成するために設けられている。この打撃ツールの後に続いて、ブレード60があり、これもやはり垂直方向に可動であって、電線30片を切片に分割するために設けられている。変形例では、電線の切片への分割を容易かつ確実にするために、可動ブレードの代わりにハサミが設けられる。最後に、プレス部材62がブレードの後に続き、これは電線をサポート4に対して押圧するように機能する。この処理を容易にするため、プレス部材62は、好ましくは、被覆36を僅かに加熱するための加熱要素を備えている。注目されることは、プレス部材62が電線を適切な位置に保持するので、打撃ツールとブレードを逆にすることが可能であるということである。好ましい変形例では、被覆36は熱融着性であり、これによって、熱を加えることで電線をサポート4および巻線12に付着させることが可能になっている。別の変形例では、加熱して、あるいは加熱なしで、図3に示すように、プレス部材により、電線をサポート4に僅かな距離、侵入させるようになっている。
【0019】
装置はつぎのように機能する。絶縁電線30をヘッド54のチャネルの中に押し入れて、打撃ツールで電線30を押しつぶし、これにより、最初は、少なくとも部分的に剥き出しにされた第1の平坦領域を形成する。絶縁被覆を局部的に取り除くことは、打撃ツールによる押しつぶしの際に達成され、これによると、電線の形状が局部的に変化して、その被覆の管形状が変形することで、被覆が局部的に裂ける。なぜなら、円形断面の外周は、押しつぶし作用が大きいときの同じ面の矩形断面の外周よりも小さいからである。一例では、円形の電線は約80μmの直径であり、平坦領域の厚さは約30μmである。同時に、あるいは少なくともその平坦領域がブレード60の位置を通り過ぎる前に、そのブレードが下に動かされて(あるいは、ハサミが作動されて)、これにより電線を切片に分割し、サポート4上に被着される電線切片の第1の端子部を形成する。つぎに、電線がヘッドの中に押し込まれ、第1の端子部がプレス部材62の下にきて、これにより、第1の平坦な剥き出し領域がサポート上に配置された第1の導体パッドに重なるように、端子部はサポートに対して押圧される。その後、装置52を、ヘッド54のチャネル内での電線の前進移動に同期させて、アンテナの巻線を横切るように所定の経路に沿ってサポートの第2の導体パッドの近傍まで水平方向に移動させる。そして、打撃ツールを再び作動させて、少なくとも部分的に剥き出しになった第2の平坦領域を形成し、これをつぎにブレード60を越えて移動させ、そしてブレードにより再び電線を切断して、その第2の端子部を形成する。引き続きヘッドを動かして、第2の端子部をプレス部材の下に移動させ、これにより、第2の平坦な剥き出し領域がサポート4の第2の導体路の第2端部18と重なるように、端子部をサポートに対して押圧する。
【0020】
最後に、注目されることは、本発明により絶縁サポート上にトランスポンダを形成するプロセスの他の典型例となる実施形態では、電線30の端子部から絶縁材を取り除く処理は、それらの端子部にサーモードを局部的に当てることにより、あるいは溶接トーチにより小火炎を発生させて絶縁被覆を局部的に昇華させることにより、実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスポンダを組み込んだカードであって、
電子ユニット(6;6A)と、この電子ユニットに電気的に接続されたアンテナ(8)とを備え、
前記アンテナは、絶縁サポート(4)上に配置された非絶縁導体路(10)により構成され、前記導体路は少なくとも1つの巻線(12)を形成して、この少なくとも1つの巻線の両側にそれぞれ位置する第1端(16;16A)と第2端(18;18A)とを有し、
前記電子ユニットは、前記少なくとも1つの巻線の内側または外側で、前記第1端の側に配置されて、これに電気的に接続されており、
当該カードは、前記導体路の前記第2端が、前記少なくとも1つの巻線に交差する絶縁被覆(36)を装着した電線(30)によって、前記電子ユニットに電気的に接続されていることを特徴とし、
前記導体路の前記第2端と前記電子ユニットとの間の電気的接続のために必要な電気的接触を確保するため、前記電線の第1および第2の端部(32,34)は、少なくとも部分的に剥き出しになっている、カード。
【請求項2】
前記電線の前記第1および第2の端部は、それぞれ、前記電線の2つの電気接触領域を形成する第1および第2の平坦な剥き出し領域(32,34)を有していることを特徴とする、請求項1に記載のカード。
【請求項3】
第1および第2の導体パッド(23,24;23A,24A)を形成する導体路の追加部(22;22A)が、前記絶縁サポート上で、前記少なくとも1つの巻線に関して前記電子ユニットの側に配置されていることを特徴とし、
前記第1の導体パッドは前記電子ユニットに電気的に接続されており、前記第1の平坦な剥き出し領域(32)は、前記第2の導体パッドに重なって、この第2の導体パッドに電気的に接続されており、
前記第2の平坦な剥き出し領域(34)は、前記導体路の前記第2端に重なって、この第2端に電気的に接続されている、請求項2に記載のカード。
【請求項4】
前記電線の前記第1の端部と前記第2の導体パッドとの間の電気的接触、および前記電線の前記第2の端部と前記導体路の前記第2端との間の電気的接触は、半田付けすることなく形成されていることを特徴とし、
包み込み材料(4,40)によって、前記平坦な剥き出し領域は、それぞれ、前記第2の導体パッドと前記導体路の前記第2端に対して確実に押し付けられている、請求項3に記載のカード。
【請求項5】
前記電線(30)は、50から150ミクロンの範囲にある直径を有することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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