説明

トランス

【課題】巻線の巻回が容易で1次巻線と2次巻線との磁気結合が良好なトランスの提供。
【解決手段】巻芯部13の周面の直上に巻芯部13の周面に当接して2次巻線22が、巻芯部13の軸方向における一端から他端に至るまで44ターン巻回されて周面直上巻回部22−1をなす。2次巻線22の79ターンの残りの35ターンのうちの周面直上巻回部22−1に続く18ターンは、周面直上巻回部22−1上に巻回されている。残りの17ターンは、周面直上巻回部22−1上に巻回された前述の18ターンの更にその上に巻回されている。この17ターン及び18ターンは余り部層状巻回部22−2をなす。1次巻線21は、12ターン全てが周面直上巻回部22−1上であって余り部層状巻回部22−2が設けられていない部分の全体に渡って巻回されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスに関し、特に、1次巻線の巻回数と2次巻線の巻回数とが異なるトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスとしては、一対の鍔部と当該一対の鍔部を連結する巻芯部とを有するドラムタイプコアを備える構成のものが知られている。ドラムタイプコアの巻芯部には、絶縁被覆された銅線からなる1次巻線と2次巻線とが巻回されている。巻線の一端又は他端は、鍔部に設けられた端子電極に電気的に接続されている。巻芯部に巻回される1次巻線の巻回数と2次巻線の巻回数とは同一である。このようなトランスは、例えば特開平10−326715号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−326715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トランスによっては、上述したトランスとは異なり、巻芯部に巻回される1次巻線の巻回数と2次巻線の巻回数とが異なるように、即ち1次巻線と2次巻線との巻回数比が異なるように1次巻線、2次巻線が巻芯部に巻回される場合がある。このような場合には、例えば、先ず巻回数の多い一方の巻線を巻芯部の軸方向に沿って巻芯部の周面全面に巻回し、当該一方の巻線が巻回された巻芯部の更にその上から他方の巻線を巻回する巻回方法が考えられる。
【0005】
この場合には、当該一方の巻線が巻芯部の周面上に1層で巻ききれずに余ることがあるが、このような余りの部分を2層目とし、当該余りの部分が2層目として積み上げられていない1層目の当該一方の巻線上のわずかなスペースに、他方の巻線を同様に2層目として巻回することが考えられる。
【0006】
この場合には、当該余りの部分が2層目として1層目上に広範囲に積み上げられている分、2層目として他方の巻線を巻回するスペースが少なくなり、狭いスペースに他方の巻線を巻回しなければならないため巻回が困難となる。また、一方の巻線と他方の巻線との磁気結合が悪化する。
【0007】
そこで、本発明は、巻線の巻回が容易で1次巻線と2次巻線との磁気結合が良好なトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、巻心部と、該巻心部の軸方向における両端にそれぞれ設けられた鍔部と、を有するドラムタイプコアと、該巻心部にそれぞれ巻回された1次巻線及び2次巻線と、一方の該鍔部に該1次巻線及び該2次巻線の一端部の数と同数設けられ、他方の該鍔部に該1次巻線及び該2次巻線の他端部の数と同数設けられ、該1次巻線、該2次巻線の一端部、他端部がそれぞれ一つずつ電気的に接続された端子電極と、を備え、該1次巻線の巻回数と該2次巻線の巻回数とは異なり、該1次巻線の巻回数と該2次巻線とのうちの巻回数の多い一方の該巻線は、該一方の鍔部から該他方の鍔部へ向かって該巻心部の軸方向に沿って該巻芯部の周面上に巻回されるか又は該一方の鍔部と該他方の鍔部との間で該巻心部の軸方向に沿って往復するように該巻芯部の周面上に巻回されて奇数層の層状をなす層状の周面直上巻回部と、該層状の周面直上巻回部に含まれない余り部からなり該他方の鍔部から該一方の鍔部へ向かった所定の位置と該他方の鍔部との間の該層状の周面直上巻回部上に該巻心部の軸方向に沿って往復するように巻回されて偶数層の層状をなす余り部層状巻回部と、を有し、該1次巻線の巻回数と該2次巻線とのうちの巻回数の少ない他方の該巻線は、該余り部層状巻回部が設けられていない該層状の周面直上巻回部上の部分に該巻心部の軸方向に沿って巻回されている重畳巻回部を有するトランスを提供している。
【0009】
1次巻線の巻回数と2次巻線の巻回数とは異なり、1次巻線の巻回数と2次巻線とのうちの巻回数の多い一方の巻線は、一方の鍔部から他方の鍔部へ向かって巻芯部の軸方向に沿って巻芯部の周面上に巻回されるか又は一方の鍔部と他方の鍔部との間で巻芯部の軸方向に沿って往復するように巻芯部の周面上に巻回されて奇数層の層状をなす層状の周面直上巻回部と、層状の周面直上巻回部に含まれない余り部からなり他方の鍔部から一方の鍔部へ向かった所定の位置と他方の鍔部との間の層状の周面直上巻回部上に巻芯部の軸方向に沿って往復するように巻回されて偶数層の層状をなす余り部層状巻回部と、を有し、1次巻線の巻回数と2次巻線とのうちの巻回数の少ない他方の巻線は、余り部層状巻回部が設けられていない層状の周面直上巻回部上の部分の略全体に渡って巻芯部の軸方向に沿って巻回されている重畳巻回部を有するため、巻芯部の軸方向において重畳巻回部を配置する領域を広く確保することができる。このため、他方の巻線の巻回作業を容易とすることができる。また、広く確保された重畳巻回部を配置するための領域に、重畳巻回部を巻芯部の軸方向に広く配置させることにより、一方の巻線と他方の巻線との磁気結合を向上させることができる。
【0010】
ここで、該重畳巻回部は、該余り部層状巻回部が設けられていない該層状の周面直上巻回部上の部分の略全体に渡って該巻心部の軸方向に沿って設けられていることが好ましい。「余り部層状巻回部が設けられていない層状の周面直上巻回部上の部分の略全体に渡って、」とは、余り部層状巻回部が設けられていない層状の周面直上巻回部上の部分の全体に渡る場合のみならず、当該全体よりも僅かに狭い領域で重畳巻回部が設けられている場合を含む。
【0011】
重畳巻回部は、余り部層状巻回部が設けられていない層状の周面直上巻回部上の部分の略全体に渡って巻心部の軸方向に沿って設けられているため、一方の巻線と他方の巻線との磁気結合を確実に向上させることができる。
【0012】
また、該巻心部の軸方向において、該重畳巻回部の該一方の鍔部側の端部は該層状の周面直上巻回部の最上層の該一方の鍔部側の端部と当接し、該巻心部の軸方向において、該重畳巻回部の該他方の鍔部側の端部は該余り部層状巻回部に当接していることが好ましい。
【0013】
巻芯部の軸方向において、重畳巻回部の一方の鍔部側の端部は周面直上巻回部の最上層の一方の鍔部側の端部と当接し、重畳巻回部の他方の鍔部側の端部は余り部層状巻回部に当接しているため、重畳巻回部を配置可能な周面直上巻回部上の部分の領域において、巻芯部の軸方向の一端から他端に至るまで重畳巻回部が配置された状態とすることができる。このため、周面直上巻回部と重畳巻回部とが重なる領域をより広く確保することができ、一方の巻線と他方の巻線との磁気結合をより向上させることができる。
【0014】
また、該巻心部の軸方向において、該重畳巻回部の該他方の鍔部側の端部と該余り部層状巻回部とは離間していることが好ましい。
【0015】
重畳巻回部の他方の鍔部側の端部と余り部層状巻回部とは離間しているため、他方の巻線を巻回する際に、他方の巻線が余り部層状巻回部に接触することをより効果的に防止することができ、余り部層状巻回部を構成する一方の巻線の周面に当該接触による傷がつくことを防止することができる。
【0016】
また、該重畳巻回部では、該巻心部の軸方向において該他方の巻線の周面同士は所定の間隔を隔てて互いに離間していることが好ましい。
【0017】
重畳巻回部では、巻芯部の軸方向において他方の巻線の周面同士は所定の間隔を隔てて互いに離間しているため、巻芯部の軸方向において重畳巻回部を広く確保することができる。このため、巻芯部の軸方向に直交する方向において周面直上巻回部と重畳巻回部とが重なる領域を、巻芯部の軸方向においてより広く確保することができ、一方の巻線と他方の巻線との磁気結合をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上により本発明は、巻線の巻回が容易で1次巻線と2次巻線との磁気結合が良好なトランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1(a)】本発明の実施の形態によるトランスを示す平面図。
【図1(b)】本発明の実施の形態によるトランスから板状コアが取り除かれた状態を示す平面図。
【図1(c)】本発明の実施の形態によるトランスを示す正面図。
【図1(d)】本発明の実施の形態によるトランスを示す側面図。
【図2】図1(a)のII−IIに沿った断面図。
【図3】本発明の実施の形態によるトランスの変形例の1次巻線、2次巻線の巻回状態を示す概略断面図。
【図4】本発明の実施の形態によるトランスの他の変形例の1次巻線、2次巻線の巻回状態を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態によるトランスについて図1乃至図2に基づき説明する。トランス100は、図1に示されるようなフェライト製のドラムタイプコア1と、ドラムタイプコア1に巻回される1次巻線21、2次巻線22と、フェライト製の板状コア3とを備える、いわゆるバルントランスである。
【0021】
図1に示されるように、ドラムタイプコア1は、一対の鍔部11、12と巻芯部13(図2)とを備えており、鍔部11、12は巻芯部13の軸方向の両端に設けられ、巻芯部13は一対の鍔部11、12を互いに連結する。
【0022】
一対の鍔部11、12は略同一の略直方体形状をなしており、一方の鍔部11の、当該略直方体形状を画成する6つの面の内の、最も広い一対の面の一方11Aの略中心位置は、巻芯部13の一端に接続されている。同様に、他方の鍔部12の、当該略直方体形状を画成する6つの面の内の、最も広い一対の面の他方12Aの略中心位置は、巻芯部13の他端に接続されている。
【0023】
巻芯部13の一端と他端とにそれぞれ接続されている一対の鍔部11、12を画成する面11A、12Aは、互いに対向する対称の位置関係となっており、略長方形状の面11A、12Aのそれぞれの4角は、巻芯部13の軸方向においてそれぞれ対向する位置関係となっている。また、面11A、12Aは互いに略平行の位置関係をなしている。
【0024】
一対の鍔部11、12には端子電極14、15、端子電極16、17がそれぞれ設けられている。端子電極14〜17は、一対の鍔部11、12のそれぞれにおいて、1次巻線21、2次巻線22の合計本数に対応した数の2つずつ計4つ設けられている。端子電極14〜17はそれぞれ帯状をなしており、それぞれ一端部14A、15A、16A、17A、他端部14B、15B、16B、17B、中央部14C、15C、16C、17Cを有している。
【0025】
一端部14A、15Aは鍔部11の上面11B上に所定の間隔を隔てて配置されている。他端部14B、15Bは鍔部11の底面11C上に所定の間隔を隔てて配置されている。中央部14C、15Cは鍔部11の側面11D上に所定の間隔を隔てて配置されている。
【0026】
同様に、一端部16A、17Aは鍔部12の上面12B上に所定の間隔を隔てて配置されている。他端部16B、17Bは鍔部12の底面12C上に所定の間隔を隔てて配置されている。中央部16C、17Cは鍔部12の側面12D上に所定の間隔を隔てて配置されている。
【0027】
端子電極14〜17の他端部14B〜17Bは、図示せぬ実装基板上の導電パターンに電気的に接続されるユーザ電極をなす。端子電極14、15の一端部14A、15A間の鍔部11の上面11Bの部分と、端子電極16、17の一端部16A、17A間の鍔部12の上面12Bの部分とはそれぞれ電極不存在部11E、12Eをなす。
【0028】
巻芯部13は、その長手方向に切った断面、即ち、軸方向に垂直に切った断面が略四角形の角柱状をなしており、前述のように、その軸方向における一端と他端とが一対の鍔部11、12の面11A、12Aにそれぞれに接続されている。
【0029】
1次巻線21は、直径が0.06mm程度であり、2次巻線22は、直径が0.03mm程度である。従って、1次巻線21は2次巻線22の2倍の太さを有している。1次巻線21、2次巻線22は、それぞれ高絶縁性の絶縁材料によって被覆された銅線により構成されている。
【0030】
1次巻線21、2次巻線22の一端部は、一方の鍔部11の各端子電極14、15の一端部14A、15Aにそれぞれ固着されて電気的に接続され継線されている。そして、1次巻線21、2次巻線22は、それぞれ図示せぬ巻線装置が用いられてドラムタイプコア1の巻芯部13に螺旋状に巻回されている。1次巻線21、2次巻線22の他端部は、他方の鍔部12の各端子電極16、17の一端部16A、17Aにそれぞれ固着されて電気的に接続され継線されている。1次巻線21、2次巻線22の一端部、他端部の、端子電極14〜17への固着は、図示せぬヒーターチップが用いられて熱圧着により行われている。
【0031】
巻芯部13(図2)における1次巻線21、2次巻線22の巻回については以下のとおりである。1次巻線21は巻芯部13に12ターン巻回され、2次巻線22は巻芯部13に79ターン巻回されている。図2に示される断面図で見たときに、巻芯部13の軸方向において、隣接する1次巻線21の各ターンを構成する1次巻線21の部分の周面同士、2次巻線22の各ターンを構成する2次巻線22の部分の周面同士は互いに接触するように隙間なく巻回されている。
【0032】
より詳細には、巻芯部13の周面の直上に巻芯部13の周面に当接して2次巻線22が、一方の鍔部11に接続されている巻芯部13の部分から他方の鍔部12に接続されている巻芯部13の部分に至るまで巻芯部13の軸方向へ、即ち、巻芯部13の軸方向における一端から他端に至るまで44ターン巻回されている。2次巻線22のこの部分は、層状の周面直上巻回部22−1に相当する。
【0033】
2次巻線22の79ターンの残りの35ターンのうちの周面直上巻回部22−1に続く18ターンは、周面直上巻回部22−1上に巻回されている。即ち、この18ターンは、他方の鍔部12から巻芯部13の軸方向における略中央位置に至るまで巻芯部13の軸方向へ、周面直上巻回部22−1が設けられた巻芯部13に巻回されている。
【0034】
2次巻線22の79ターンのうちの前述のように44ターン巻回され更に18ターン巻回された後の残りの17ターンは、周面直上巻回部22−1上に巻回された前述の18ターンの更にその上に巻回されている。より詳細には、この17ターンは、巻芯部13の軸方向における略中央位置から他方の鍔部12近傍に至るまで巻芯部13の軸方向へ、周面直上巻回部22−1及び前述の18ターン分が設けられた巻芯部13の更にその上に巻回されている。周面直上巻回部22−1上に巻回された上述の2次巻線22の35ターン分の部分は余り部層状巻回部22−2に相当する。
【0035】
1次巻線21は、12ターン全てが周面直上巻回部22−1上に巻回されている。より詳細には1次巻線21は、一方の鍔部11から巻芯部13の軸方向における略中央位置に至るまで巻芯部13の軸方向へ巻回されている。即ち1次巻線21は、巻芯部13の周面直上巻回部22−1上であって余り部層状巻回部22−2が設けられていない部分の全体に渡って巻回されている。巻芯部13に巻回された1次巻線21の12ターン分の部分は重畳巻回部21−1に相当する。
【0036】
このように、2次巻線22は周面直上巻回部22−1と、周面直上巻回部22−1上に設けられた余り部層状巻回部22−2とを有し、1次巻線21は、余り部層状巻回部22−2が設けられていない周面直上巻回部22−1上の部分に巻回された重畳巻回部21−1を有しているため、巻芯部13の軸方向において重畳巻回部21−1を配置させるための領域を広く確保することができる。このため、1次巻線21の巻回作業を容易とすることができ、また、1次巻線21と2次巻線22との磁気結合を向上させることができる。
【0037】
図2の下側に示されるように、巻芯部13の軸方向において、重畳巻回部21−1の一方の鍔部11側の端部は周面直上巻回部22−1の一方の鍔部11側の端部と当接している。より詳細には、2次巻線22の一部であって一方の鍔部11から数えて1ターン目の部分に、重畳巻回部21−1を構成する1次巻線21の一部であって一方の鍔部11から数えて1ターン目の部分は当接している。また、図2の下側に示されるように、巻芯部13の軸方向において、重畳巻回部21−1の他方の鍔部12側の端部は余り部層状巻回部22−2に当接している。より詳細には、2次巻線22の一部であって余り部層状巻回部22−2を構成する2層のうちの下層(図2の下側では上層)の18ターンの一部であって一方の鍔部11から数えて1ターン目の部分に、重畳巻回部21−1を構成する1次巻線21の一部であって他方の鍔部12から数えて1ターン目の部分は当接している。
【0038】
このように、巻芯部13の軸方向において、重畳巻回部21−1の一方の鍔部11側の端部は周面直上巻回部22−1の一方の鍔部11側の端部と当接し、重畳巻回部21−1の他方の鍔部12側の端部は余り部層状巻回部22−2に当接しているため、重畳巻回部21−1を配置可能な周面直上巻回部22−1上の部分の領域において、巻芯部13の軸方向の端から端まで重畳巻回部21−1が配置された状態とすることができる。このため、巻芯部13の軸方向に直交する方向において周面直上巻回部22−1と重畳巻回部21−1とが重なる領域をより広く確保することができ、一方の巻線と他方の巻線との磁気結合をより向上させることができる。
【0039】
また、前述のように1次巻線21は2次巻線22の2倍の太さを有しているため、図2の上下方向において、巻芯部13の上面から重畳巻回部21−1の上端を構成する1次巻線21の上端までの高さh1と、巻芯部13の上面から余り部層状巻回部22−2の上端を構成する2次巻線22の上端までの高さh2とは略一致している。このため、図2の上下方向における巻芯部13の上面から鍔部11、12の上面までの高さh3を、少なくともh1分確保すればよく、鍔部11、12の同方向における低背化を図ることができる。
【0040】
板状コア3は略板状の略長方形状をなしている。板状コア3の長手方向の一端部及び他端部であって板状コア3の幅方向における中央位置には、凸部3Aが設けられている。凸部3Aは、板状コア3がドラムタイプコア1に固着されている状態で、鍔部11、12の電極不存在部11E、12Eに対向しており、電極不存在部11E、12Eに接着剤により固着されている。また、板状コア3の上面上には、板状コア3の方向を示す円形マーク3B(図1(a))が設けられている。
【0041】
本発明によるトランスの製造方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、余り部層状巻回部22−2は他方の鍔部12寄りの巻芯部13の部分に設けられたが、これに限定されない。例えば、図3に示すトランス200のように、他方の鍔部12寄りの巻芯部13の部分と一方の鍔部11寄りの巻芯部13の部分との両方に設けられていてもよい。
【0042】
2次巻線22の巻回に際しては、巻芯部13の軸方向における巻芯部13の中央位置に2次巻線22を位置決め固定し、図3の矢印に示されるように、両方の鍔部11、12へ向かって巻芯部13に螺旋状に2次巻線22を巻回して周面直上巻回部22−1を形成する。余り部層状巻回部22−2の形成については、本実施の形態と同様に、一方の鍔部11、他方の鍔部12のそれぞれの近傍において、一方の鍔部11と一方の鍔部11から所定の距離だけ離間した巻芯部13上の位置との間、他方の鍔部12と他方の鍔部12から所定の距離だけ離間した巻芯部13上の位置との間、のそれぞれにおいて巻芯部13の軸方向に往復するようにして2次巻線22を巻回して形成すればよい。
【0043】
また、本実施の形態では、巻芯部13の軸方向において、重畳巻回部21−1の一方の鍔部11側の端部は周面直上巻回部22−1の一方の鍔部11側の端部と当接し、また、巻芯部13の軸方向において、重畳巻回部21−1の他方の鍔部12側の端部は余り部層状巻回部22−2に当接していたが、このように当接しなくてもよい。
【0044】
例えば、巻芯部13の軸方向において、重畳巻回部21−1の他方の鍔部12側の端部と余り部層状巻回部22−2とは1次巻線21の直径よりも短い距離で離間していてもよい。このようにすることで、1次巻線21を巻回する際に、1次巻線21が余り部層状巻回部22−2に接触することをより効果的に防止することができ、余り部層状巻回部22−2を構成する2次巻線22の周面に当該接触による傷がつくことを防止することができる。
【0045】
また、本実施の形態では、巻芯部13の軸方向において隣接する1次巻線21の各ターンを構成する1次巻線21の部分の周面同士は、互いに接触するように隙間なく巻回されていたが、これに限定されない。例えば、図4に示すように、重畳巻回部21−1では、巻芯部13の軸方向において1次巻線21の周面同士、即ち、隣接する1次巻線21の各ターンを構成する1次巻線21の部分の周面同士は所定の間隔を隔てて互いに離間して等間隔で巻回されていてもよい。
【0046】
このようにすることで、巻芯部13の軸方向において重畳巻回部21−1を広く確保することができる。このため、巻芯部13の軸方向に直交する方向において周面直上巻回部22−1と重畳巻回部21−1とが重なる領域を、巻芯部13の軸方向においてより広く確保することができ、2次巻線22と1次巻線21との磁気結合をより向上させることができる。
【0047】
また、1次巻線21、2次巻線22のターン数、直径は本実施の形態の数値に限定されない。例えば、2次巻線22のターン数が多い場合には、周面直上巻回部22−1は、一方の鍔部11と他方の鍔部12との間で巻芯部13の軸方向に沿って往復するように巻芯部13の周面上に巻回されて奇数層の層状をなすようにすればよい。ここで、2次巻線22のターン数は多いが周面直上巻回部22−1が偶数層になってしまうような場合には、当該偶数よりも一つ数の少ない奇数層とし、残りの2次巻線22の部分を余り部層状巻回部22−2とすればよい。
【0048】
また例えば、2次巻線22を全部で72ターン巻回することとし、層状の周面直上巻回部22−1として巻芯部13の周面の直上に巻芯部13の周面に当接して2次巻線22が41ターン巻回され、2次巻線22の72ターンの残りの31ターンのうちの周面直上巻回部22−1に続く16ターンは、周面直上巻回部22−1上に巻回され、2次巻線22の72ターンのうちの前述のように41ターン巻回され更に16ターン巻回された後の残りの15ターンは、周面直上巻回部22−1上に巻回された前述の16ターンの更にその上に巻回されてもよい。
【0049】
また、鍔部や巻芯部の形状は本実施の形態の形状に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、特に1次巻線と2次巻線との良好な磁気結合が要求されるトランスの分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 ドラムタイプコア
11、12 鍔部
13 巻芯部
14、15、16、17 端子電極
21 1次巻線
21−1 重畳巻回部
22 2次巻線
22−1 周面直上巻回部
22−2 余り部層状巻回部
100、200 トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻心部と、該巻心部の軸方向における両端にそれぞれ設けられた鍔部と、を有するドラムタイプコアと、
該巻心部にそれぞれ巻回された1次巻線及び2次巻線と、
一方の該鍔部に該1次巻線及び該2次巻線の一端部の数と同数設けられ、他方の該鍔部に該1次巻線及び該2次巻線の他端部の数と同数設けられ、該1次巻線、該2次巻線の一端部、他端部がそれぞれ一つずつ電気的に接続された端子電極と、を備え、
該1次巻線の巻回数と該2次巻線の巻回数とは異なり、
該1次巻線の巻回数と該2次巻線とのうちの巻回数の多い一方の該巻線は、該一方の鍔部から該他方の鍔部へ向かって該巻心部の軸方向に沿って該巻芯部の周面上に巻回されるか又は該一方の鍔部と該他方の鍔部との間で該巻心部の軸方向に沿って往復するように該巻芯部の周面上に巻回されて奇数層の層状をなす層状の周面直上巻回部と、該層状の周面直上巻回部に含まれない余り部からなり該他方の鍔部から該一方の鍔部へ向かった所定の位置と該他方の鍔部との間の該層状の周面直上巻回部上に該巻心部の軸方向に沿って往復するように巻回されて偶数層の層状をなす余り部層状巻回部と、を有し、
該1次巻線の巻回数と該2次巻線とのうちの巻回数の少ない他方の該巻線は、該余り部層状巻回部が設けられていない該層状の周面直上巻回部上の部分に該巻心部の軸方向に沿って巻回されている重畳巻回部を有することを特徴とするトランス。
【請求項2】
該重畳巻回部は、該余り部層状巻回部が設けられていない該層状の周面直上巻回部上の部分の略全体に渡って該巻心部の軸方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1記載のトランス。
【請求項3】
該巻心部の軸方向において、該重畳巻回部の該一方の鍔部側の端部は該層状の周面直上巻回部の最上層の該一方の鍔部側の端部と当接し、該巻心部の軸方向において、該重畳巻回部の該他方の鍔部側の端部は該余り部層状巻回部に当接していることを特徴とする請求項2記載のトランス。
【請求項4】
該巻心部の軸方向において、該重畳巻回部の該他方の鍔部側の端部と該余り部層状巻回部とは離間していることを特徴とする請求項1記載のトランス。
【請求項5】
該重畳巻回部では、該巻心部の軸方向において該他方の巻線の周面同士は所定の間隔を隔てて互いに離間していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一記載のトランス。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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