説明

トリアルキルシリル基を有するオニウム塩

【課題】フッ素樹脂に優れた帯電防止性を付与できる新規なオニウム塩を提供すること。
【解決手段】式(1):
・A (1)
(式中、Qはトリアルキルシリル基を有するオニウムカチオンを示し、Aはビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン又はヘキフルオロフォスフェートアニオンを示す。)で表されるオニウム塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン部にトリアルキルシリル基を有する新規なオニウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアルキルシリル基を有するオニウム塩としては、アニオン部にトリアルキルシリル基を有するオニウム塩が公知である(例えば、特許文献1参照)。しかし、本発明のカチオン部にトリアルキルシリル基を有するオニウム塩は、文献未記載の新規な化合物である。
【特許文献1】特表2005−535690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、カチオン部にトリアルキルシリル基を有する新規なオニウム塩を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者が上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、式(1)で表わされるオニウム塩を見出し、さらに当該オニウム塩を帯電防止剤としてフッ素樹脂に使用したところ、フッ素樹脂に対して帯電防止性を付与できることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち本発明は、式(1):
・A (1)
(式中、Qは下記式(2)又は(4)で表されるオニウムカチオンを示し、Aはビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン又はヘキフルオロフォスフェートアニオンを示す。)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(1)という)に関する。
【0006】
式(2):
【0007】
【化1】

(式中、R、R及びRは、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基もしくは式(3):
−(CHOSi(R (3)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは1〜4の整数である。)で表されるトリアルキルシロキシアルキル基を示すか、又はR、R及びRのいずれか2つが互いに結合して窒素原子と一緒になって環を形成する。但し当該環が芳香環であるときは、R、R及びRのうち当該環を形成しないものは存在しない。mは前記に同じ。Yは存在しないか又は酸素原子である。)で表されるオニウムカチオン。
【0008】
式(4):
【0009】
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。Rは前記に同じ。)で表されるオニウムカチオン。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオニウム塩(1)は、フッ素樹脂に対して優れた帯電防止性を付与できるため、有用な化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
式(2)中、R、R及びRは、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基もしくは式(3):
−(CHOSi(R (3)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるトリアルキルシロキシアルキル基を示すか、又はR、R及びRのいずれか2つが互いに結合して窒素原子と一緒になって環を形成する。炭素数1〜18のアルキル基としては、直鎖又は分枝鎖状の炭素数1〜18のアルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖のアルキル基である。具体的には例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等が挙げられ、炭素数6以上のアルキル基が好ましく、炭素数8から12のアルキル基が特に好ましい。トリアルキルシロキシアルキル基としては、トリメチルシロキシエチル基、トリメチルシロキシプロピル基、トリエチルシロキシメチル基、トリエチルシロキシエチル等が挙げられる。R、R及びRのいずれか2つが窒素原子と一緒になって環を形成する場合の環としては、具体的には例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ピリジン環等が好ましい。
【0012】
式(4)中、Rとしては直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基が挙げられ、炭素数6以上のアルキル基が好ましく、特にオクチル基が好ましい。
【0013】
オニウム塩(1)の具体例としては、N,N,N−トリメチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−エチル−N,N−ジメチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−N,N−ジメチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−N,N−ジメチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−オクチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−N−メチル−N,N−ビス(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ドデシル−N−メチル−N,N−ビス(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−N,N,N−トリス(2−トリメチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−(トリメチルシリルメチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)ピペリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)ピロリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−(2−トリメチルシロキシエチル)モルフォリニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ヘキシル−N−(3−トリメチルシロキシプロピル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−(トリメチルシリルメチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−(2−トリメチルシロキシエチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−オクチル−2−(トリメチルシロキシメチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、2−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=へキサフルオロホスフェート、3−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−オクチル−4−(トリメチルシロキシメチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
【0014】
N,N,N−トリメチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−エチル−N,N−ジメチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−N,N−ジメチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−N,N−ジメチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−オクチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−N−メチル−N,N−ビス(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ドデシル−N−メチル−N,N−ビス(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−N,N,N−トリス(2−トリエチルシロキシエチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−(トリエチルシリルメチル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)ピペリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)ピロリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−(2−トリエチルシロキシエチル)モルフォリニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ヘキシル−N−(3−トリエチルシロキシプロピル)アンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−(トリエチルシロキシメチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−(2−トリエチルシロキシエチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−オクチル−2−トリエチルシロキシメチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、2−トリエチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=へキサフルオロホスフェート、3−トリエチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−オクチル−4−トリエチルシロキシメチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−トリエチルシリルメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明のオニウム塩(1)は、種々の方法で製造することができる。その代表的な方法を以下で説明する。
【0016】
本発明のオニウム塩(1)が、式(1a):
【0017】
【化3】

(式中、R〜R、m及びAは前記に同じ。)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(1a)という。)である場合は、次の製造方法1に従って製造できる。
【0018】
製造方法1:
【0019】
【化4】

【0020】
式(5)で表されるアミン類(以下アミン類(5)という。)と式(6)で表されるハロアルキルアルコール類(以下ハロアルキルアルコール類(6)という。)とを四級化反応させることにより、式(7)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(7)という。)が製造される。次にオニウム塩(7)と式(8)で表される酸又はそのアルカリ金属塩(式中、以下酸類(8)という。)とのイオン交換反応により式(9)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(9)という。)が製造され、さらにオニウム塩(9)と式(10)で表されるジジラザン類(以下ジシラザン類(10)という。)とのシリル化反応により、オニウム塩(1a)が製造できる。
【0021】
なお、式(5)〜(10)におけるR、R、R、X、X、m、M、A、A及びRの意味は次の通りである。
1)R、R及びRは、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基を示すか、又はR、R及びRのいずれか2つが互いに結合して窒素原子といっしょになって環を形成する。但し当該環が芳香環であるときは、R、R及びRのうち当該環を形成しないものは存在しない。
2)Xはハロゲン原子を示す。
3)Xはハロゲンアニオンを示す。
4)m、A及びRは前記に同じ。
5)Mは、水素又はアルカリ金属を示す。
6)Aは、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド又はヘキフルオロフォスフェートを示す。
【0022】
アミン類(5)としては、例えば、トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ブチルジメチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ヘキシルジメチルアミン、ヘプチルジメチルアミン、ジメチルオクチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン、N,N,N−トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)−N,N−ジメチルアミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)−N,N−ジエチルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−メチルアミン、N,N,N−トリス(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、4−メチルモルホリン、ピリジン等が挙げられる。
【0023】
ハロアルキルアルコール類(6)としては、2−ブロモエタノール、2―クロロエタノール、3−ブロモプロパノール、4−ブロモブタノール等が挙げられる。
【0024】
アミン類(5)とハロアルキルアルコール類(6)との四級化反応は、通常溶媒中で行われる。用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0025】
ハロアルキルアルコール類(6)の使用量は、アミン類(5)1モルに対して1モル以上であれば良く、好ましくは1.1〜2.0モルである。
【0026】
イオン交換反応に使用される酸類(8)としては、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド酸類及びヘキサフルオロリン酸類が挙げられる。
【0027】
ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド酸類としては、具体的には、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ヘキサフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(ヘキサフルオロエタンスルホニル)イミドナトリウム、カリウムビス(ヘキサフルオロエタンスルホニル)イミド等のアルキル金属ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドが挙げられ、ヘキサフルオロリン酸類としては、例えばヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム等のヘキサフルオロリン酸アルカリ金属、ヘキサフルオロリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0028】
酸類(8)の使用量は、オニウム塩(7)1モルに対して、通常1.0モル以上、好ましくは1.0モル〜1.2モルであり、より好ましくは1.00〜1.05モルである。
【0029】
イオン交換反応は通常水溶媒中で行われる。水の使用量は特に制限はないが、オニウム塩(7)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは1〜10重量部であり、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0030】
オニウム塩(7)と酸類(8)及び水の混合順序は特に限定されず、オニウム塩(7)と水を混合した後に酸類(8)を添加してもよいし、酸類(8)と水を混合した後にオニウム塩(7)を添加してもよい。また、着色が問題となる場合には、オニウム塩(7)と水を混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過して得られた濾液をイオン交換反応に用いることもできる。
【0031】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは10〜30℃である。
【0032】
シリル化反応に使用されるジシラザン類(10)としては、例えば1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン、1,1,1,3,3,3−ヘキサエチルジシラザン等が挙げられる。
【0033】
ジシラザン類(10)の使用量は、オニウム塩(9)1モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは0.5モル〜6.0モルであり、より好ましくは2.0〜4.0モルである。
【0034】
反応温度は、通常20℃以上、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。
【0035】
反応終了後の反応液からオニウム塩(1a)を分離するには、反応液を濃縮すれば残渣として、オニウム塩(1a)が得られる。また、着色が問題となる場合には、オニウム塩(1a)とアセトニトリルとを混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過した濾液を濃縮すれば、残渣としてオニウム塩(1a)が得られる。
【0036】
本発明のオニウム塩(1)が、式(1b):
【0037】
【化5】

(式中、R〜R、m及びAは前記に同じ。nは炭素数1〜18のアルキル基を示す。)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(1b)という。)である場合は、次の製造方法2に従って製造できる。











【0038】
製造方法2:
【0039】
【化6】

【0040】
式(11)で表されるアミン類(以下アミン類(11)という。)と式(12)で表されるハロゲン化アルキル(以下ハロゲン化アルキル(12)という。)とを四級化反応させることにより、式(13)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(13)という。)が製造される。次にオニウム塩(13)と酸類(8)とのイオン交換反応により式(14)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(14)という。)が製造され、さらにオニウム塩(14)とジシラザン類(10)とのシリル化反応により、オニウム塩(1b)が製造できる。
【0041】
なお、式(11)〜(14)におけるR、R10、X、X、m、n及びAの意味は次の通りである。
1)R及びR10は、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基を示すか、又は互いに結合して窒素原子といっしょになって環(ただし、芳香環を除く)を形成する。
2)X、X、m及びAは前記に同じ。
【0042】
アミン類(11)としては、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルアミン、N−ヒドロキシエチル−N,N−ジエチルアミン、N−ヒドロキシエチル−N,N−ジブチルアミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)−N,N−ジメチルアミン、N−(3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)−N,N−ジメチルアミン、N−(3−ヒドロキシ−1−ペンチルプロピル)−N,N−ジメチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン、N−ブチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、 N,N,N−トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン等が挙げられる。
【0043】
ハロゲン化アルキル(12)としては、メチルクロリド、エチルクロリド、プロピルクロリド、ブチルクロリド、ペンチルクロリド、ヘキシルクロリド、ヘプチルクロリド、オクチルクロリド、デシルクロリド、メチルブロミド、エチルブロミド、プロピルブロミド、ブチルブロミド、ペンチルブロミド、ヘキシルブロミド、ヘプチルブロミド、オクチルブロミド、デシルブロミド等が挙げられる。
【0044】
アミン類(11)とハロゲン化アルキル(12)との四級化反応は、通常溶媒中で行われる。用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0045】
ハロゲン化アルキル(12)の使用量は、アミン類(11)1モルに対して1モル以上であれば良く、好ましくは1.1〜2.0モルである。
【0046】
酸類(8)の使用量は、オニウム塩(13)1モルに対して、通常1.0モル以上、好ましくは1.0モル〜1.2モルであり、より好ましくは1.00〜1.05モルである。
【0047】
イオン交換反応は通常水溶媒中で行われる。水の使用量は特に制限はないが、オニウム塩(13)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは1〜10重量部であり、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0048】
オニウム塩(13)と酸類(8)及び水の混合順序は特に限定されず、オニウム塩(13)と水を混合した後に酸類(8)を添加してもよいし、酸類(8)と水を混合した後にオニウム塩(13)を添加してもよい。また、着色が問題となる場合には、オニウム塩(13)と水を混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過して得られた濾液をイオン交換反応に用いることもできる。
【0049】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは10〜30℃である。
【0050】
ジシラザン類(10)の使用量は、オニウム塩(14)1モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは0.5モル〜6.0モルであり、より好ましくは2.0〜4.0モルである。
【0051】
反応温度は、通常20℃以上、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。
【0052】
反応終了後の反応液からオニウム塩(1b)を分離するには、反応液を濃縮すれば残渣として、オニウム塩(1b)が得られる。また、着色が問題となる場合には、オニウム塩(1b)とアセトニトリルとを混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過した濾液を濃縮すれば、残渣としてオニウム塩(1b)が得られる。
【0053】
本発明のオニウム塩(1)が、式(1c):
【0054】
【化7】

(式中、R〜R、m及びAは前記に同じ。)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(1c)という。)である場合は、次の製造方法3に従って製造できる。
【0055】
製造方法3:
【0056】
【化8】

【0057】
式(15)で表されるアミン類(以下アミン類(15)という。)と式(16)で表されるハロアルキルシラン類(以下ハロアルキルシラン類(16)という。)とを四級化反応させることにより、式(17)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(17)という。)が製造される。次にオニウム塩(17)と酸類(8)とのイオン交換反応により式(1c)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(1c)という。)が製造できる。
なお、式(15)〜(17)におけるR、R、R、R、X、X及びmはいずれも前記に同じである。
【0058】
アミン類(15)としては、例えば、トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ブチルジメチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ヘキシルジメチルアミン、ヘプチルジメチルアミン、ジメチルオクチルアミン、N,N−ビス(2−トリメチルシロキシエチル)−N−メチルアミン、N,N,N−トリス(2−トリメチルシロキシエチル)アミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、4−メチルモルホリン、ピリジン等が挙げられる。
【0059】
四級化反応に使用されるハロアルキルシラン類(16)としては、(クロロメチル)トリメチルシラン、(ブロモメチル)トリメチルシラン、(ヨードメチル)トリメチルシラン、(ブロモエチル)トリメチルシラン、(ブロモプロピル)トリメチルシラン、(ブロモブチル)トリメチルシラン等が挙げられる。
【0060】
アミン類(15)とハロアルキルシラン類(16)との反応は、通常溶媒中で行われる。用いられる溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0061】
ハロアルキルシラン類(16)の使用量は、アミン類(15)1モルに対して1モル以上であれば良く、好ましくは1.0〜2.0モルである。
【0062】
イオン交換反応に用いられる酸類(8)の使用量は、オニウム塩(17)1モルに対して、通常1.0モル以上、好ましくは1.0モル〜1.2モルであり、より好ましくは1.00〜1.05モルである。
【0063】
イオン交換反応は通常水溶媒中で行われる。水の使用量は特に制限はないが、オニウム塩(17)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは1〜10重量部であり、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0064】
オニウム塩(17)と酸類(8)及び水の混合順序は特に限定されず、オニウム塩(17)と水を混合した後にビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸類を添加してもよいし、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸類と水を混合した後にオニウム塩(17)を添加してもよい。また、着色が問題となる場合には、オニウム塩(17)と水を混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過して得られた濾液をイオン交換反応に用いることもできる。
【0065】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは10〜30℃である。
【0066】
反応後処理としては、反応液に水不溶の有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸エチル、塩化メチレン等)を添加し、オニウム塩(1c)を抽出することができる。得られた抽出層を所望により水洗し、次いで有機溶剤を留出除去して抽出層を濃縮すれば残渣として、オニウム塩(1c)が得られる。
【0067】
本発明のオニウム塩(1)が、式(1d):
【0068】
【化9】

(式中、R、R及びAは前記に同じ。)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(1c)という。)である場合は、次の製造方法4に従って製造できる。
【0069】
製造方法4:
【0070】
【化10】

【0071】
式(18)で表されるピリジンメタノール類(以下ピリジンメタノール類(18)という。)と式(19)で表されるアルキルハライド類(以下アルキルハライド類(19)という。)とを四級化反応させることにより、式(20)で表されるピリジニウム=ハライド(以下ピリジニウム=ハライド類(20)という。)が製造される。次にピリジニウム=ハライド類(20)と酸類(8)とのイオン交換反応により式(21)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(21)という。)が製造され、さらにオニウム塩(21)をジシラザン類(10)でシリル化反応させることにより、式(1d)で表されるオニウム塩(以下オニウム塩(1d)という。)が製造できる。
なお、式(18)〜(21)におけるR、X、X及びAはいずれも前記に同じである。
【0072】
ピリジンメタノール類(18)としては、2−ピリジンメタノール、3−ピリジンメタノール及び4−ピリジンメタノールが挙げられる。
【0073】
アルキルハライド類(19)としては、例えば、メチルクロリド、エチルクロリド、プロピルクロリド、ブチルクロリド、ペンチルクロリド、ヘキシルクロリド、ヘプチルクロリド、オクチルクロリド、デシルクロリド、メチルブロミド、エチルブロミド、プロピルブロミド、ブチルブロミド、ペンチルブロミド、ヘキシルブロミド、ヘプチルブロミド、オクチルブロミド、デシルブロミド等が挙げられる。
【0074】
ピリジンメタノール類(18)とアルキルハライド類(19)との四級化反応は、通常溶媒中で行われる。用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0075】
アルキルハライド類(19)の使用量は、ピリジンメタノール類(18)1モルに対して1モル以上であれば良く、好ましくは1.1〜2.0モルである。
【0076】
イオン交換反応における酸類(8)の使用量は、ピリジニウム=ハライド類(20)1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル〜1.2モルであり、より好ましくは1.00〜1.05モルである。
【0077】
イオン交換反応は通常水溶媒中で行われる。水の使用量は特に制限はないが、オニウム塩(12)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは1〜10重量部であり、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0078】
ピリジニウム=ハライド類(20)、酸類(8)及び水の混合順序は特に限定されず、ピリジニウム=ハライド類(20)と水を混合した後に酸類(8)を添加してもよいし、酸類(8)と水を混合した後にピリジニウム=ハライド類(20)を添加してもよい。また、着色が問題となる場合には、ピリジニウム=ハライド類(20)と水を混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過して得られた濾液をイオン交換反応に用いることもできる。
【0079】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは10〜30℃である。
【0080】
ジシラザン類(10)の使用量は、オニウム塩(21)1モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1.0モル〜6.0モルであり、より好ましくは2.0〜4.0モルである。
【0081】
反応温度は、通常20℃以上、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。
【0082】
反応終了後の反応液からオニウム塩(1d)を分離するには、反応液を濃縮すれば残渣として、オニウム塩(1d)が得られる。また、着色が問題となる場合には、オニウム塩(1d)とアセトニトリルとを混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過した濾液を濃縮すれば、残渣としてオニウム塩(1d)が得られる。
【実施例】
【0083】
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。下記の実施例中、H−NMRは日本電子データム株式会社製の「AL−400」を使用し、溶媒にCDCl を用いて400MHzで測定した。融点は株式会社島津製作所製の示差走査熱量計DSC−60A(以下、DSCという。)又は株式会社石井商店製の精密微量融点測定器(以下、融点測定器という。)を用いて測定した。また、表面抵抗値は三菱化学株式会社製ヒレスタHT−210を用い、印加電圧500Vにて測定した。
【0084】
実施例1
塩化コリン14.0g(0.10モル)をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水溶液40.8g(0.10モル)、イオン交換水50g及び塩化メチレン50gと混合し、次いで25℃で1時間攪拌して反応させた。反応終了後、オイル層を分液操作により分離し、イオン交換水50gで2回洗浄した。得られたオイル層を減圧下で濃縮して塩化メチレンを除去し、液体のN−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド28.2gを得た(収率73.5%)。
得られたN−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド10.0g(0.026モル)と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン12.6g(0.078モル)との混合物を、60℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、油状のN−(2−トリメチルシロキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド11.9g(収率100%)を得た。得られたN−(2−トリメチルシロキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0085】
H−NMR(CDCl) δ:ppm4.02−3.99(m,2H)、3.50−3.48(m,2H)、3.21(s,9H)、0.15(s,9H)
【0086】
実施例2
N,N−ジメチル−N−オクチルアミン17.8g(0.20モル)、2−ブロモエタノール30.0g(0.24モル)及びアセトニトリル50gからなる混合物を、80℃で24時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、残渣にメチルエチルケトン60gを加えて固形物を洗浄し、濾過した。濾滓を減圧下に乾燥してN−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ブロミド32.9g(収率58.4%)を得た。
得られたN−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ブロミド32.9g(0.12モル)を水100gに溶解させた。得られた水溶液をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水溶液47.5g(0.12モル)と混合し、次いで1時間室温で攪拌して反応させた。反応液を静置した後、分液して得られたオイル層を水50gで2回洗浄した。その後オイル層に含まれる水を減圧下で除去して液体のN−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド56.0g(収率99.6%)を得た。
得られたN−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド10.0g(0.021モル)と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン10.3g(0.064モル)との混合物を、60℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、油状のN−(2−トリメチルシロキシエチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド11.8g(収率100%)を得た。得られたN−(2−トリメチルシロキシエチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0087】
H−NMR(CDCl) δ:ppm4.02−3.95(m,2H)、3.47−3.45(m,2H)、3.36−3.32(m,2H)、3.13(s,6H)、1.80−1.68(m,2H)、1.33−1.27(m,10H)、0.88(t,3H)、0.15(s,9H)
【0088】
実施例3
3−ジメチルアミノ−1−プロパノール50g(0.48モル)、臭化オクチル112.3g(0.58モル)及びアセトニトリル105gからなる混合物を、80℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、残渣にジエチルエ−テル315.6を加えて固形物を洗浄し、濾過した。濾滓を減圧下に乾燥して140.9の粗結晶を得た。粗結晶138.6gにアセトン27.8gを加え60℃にて溶解し、次いでトルエン277.2gを加えて冷却して濾過した。濾滓を減圧下に乾燥して、N−(3−ヒドロキシプロピル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ブロミド121.4g(収率85.9%)を得た。
得られたN−(3−ヒドロキシプロピル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ブロミド40.0g(0.14モル)を水69.7gに溶解させた。得られた水溶液をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水溶液55.0g(0.14モル)と混合し、次いで1時間室温で攪拌して反応させた。反応液を静置した後、分液して得られたオイル層を水71.7gで2回洗浄した。その後オイル層に含まれる水を減圧下で除去して液体のN−(3−ヒドロキシプロピル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド63.7g(収率95.0%)を得た。
得られたN−(3−ヒドロキシプロピル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド20.4g(0.041モル)と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン19.9g(0.123モル)との混合物を、60℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、油状のN−(3−トリメチルシロキシプロピル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド23.2g(収率99.3%)を得た。得られたN−(3−トリメチルシロキシプロピル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0089】
H−NMR(CDCl) δ:ppm3.53(t,2H)、3.26−3.19(m,2H)、3.14−3.06(m,2H)、2.93(s,6H)、1.84−1.73(m,2H)、1.64−1.52(m,2H)、1.35−1.10(m,10H)、0.75(t,3H)、−0.03(s,9H)
【0090】
実施例4
N−メチルピペリジン20.4g(0.21モル)、2−ブロモエタノール30.0g(0.24モル)及びアセトニトリル57.0gからなる混合物を、80℃で24時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、残渣にアセトニトリル40.0g及びn−ヘキサン20.0gを加えて−20℃に冷却し、濾過した。濾滓を減圧下に乾燥して、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルピペリジニウム=ブロミド35.5g(収率77.0%)を得た。
得られたN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルピペリジニウム=ブロミド27.9g(0.12モル)を水28.0gに溶解させた。得られた水溶液をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水溶液50.6g(0.12モル)と混合し、次いで1時間室温で攪拌して反応させた。反応液を静置した後、分液して得られたオイル層を1回目水55.0g、2回目水50.9gで洗浄した。その後オイル層に含まれる水を減圧下で除去して液体のN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルピペリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド44.1g(収率83.9%)を得た。
得られたN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルピペリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド30.0g(0.071モル)と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン34.3g(0.213モル)との混合物を、60℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、油状のN−(2−トリメチルシロキシエチル)−N−メチルピペリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド35.3g(収率100%)を得た。得られたN−(2−トリメチルシロキシエチル)−N−メチルピペリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMR及び融点の分析結果を次に示す。
【0091】
H−NMR(CDCl) δ:ppm4.06−3.96(m,2H)、3.63−3.53(m,2H)、3.50−3.32(m,2H)、3.13(s,3H)、1.93−1.82(m,4H)、1.75−1.46(m,2H)、0.13(s,9H)、融点7.83℃(DSCで測定)
【0092】
実施例5
実施例4のN−メチルピペリジン及び2−ブロモエタノールをそれぞれN−メチルピロリジン及び2−クロロエタノールに代えた以外は実施例4と同様な操作をして、固体のN−(2−トリメチルシロキシエチル)−N−メチルピロリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを得た。得られたN−(2−トリメチルシロキシエチル)−N−メチルピロリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMR及び融点の分析結果を次に示す。
【0093】
H−NMR(CDCl) δ:ppm4.00−3.93(m,2H)、3.63−3.50(m,4H)、3.47(t,2H)、3.10(s,3H)、2.27−2.14(m,4H)、0.12(s,9H)、融点27.88℃(DSCで測定)
【0094】
実施例6
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン23.8g(0.20モル)、臭化ヘキシル39.6g(0.24モル)及びアセトニトリル50gからなる混合物を、80℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、残渣にメチルエチルケトン60gを加えて固形物を洗浄し、濾過した。濾滓を減圧下に乾燥してN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウム=ブロミド34.1g(収率60.1%)を得た。
得られたN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウム=ブロミド34.1g(0.12モル)を水100gに溶解させた。得られた水溶液をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水溶液48.9g(0.12モル)と混合し、次いで1時間室温で攪拌して反応させた。反応液を静置した後、分液して得られたオイル層を水50gで2回洗浄した。その後オイル層に含まれる水を減圧下で除去して液体のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド43.7g(収率75.2%)を得た。
得られたN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド10.0g(0.021モル)と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン10.0g(0.062モル)との混合物を、60℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、油状のN,N−ビス(2−トリメチルシロキシエチル)−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド13.0g(収率100%)を得た。得られたN,N−ビス(2−トリメチルシロキシエチル)−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0095】
H−NMR(CDCl) δ:ppm3.99−3.92(m,4H)、3.56(t,4H)、3.38(t,2H)、3.12(s,3H)、1.71(br,2H)、1.34−1.25(m,6H)、0.87(t,3H)、0.12(s,9H)
【0096】
実施例7
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン23.8g(0.20モル)、臭化ラウリル59.8g(0.24モル)及びアセトニトリル70gからなる混合物を、80℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、残渣にメチルエチルケトン80.0gを加えて固形物を洗浄し、濾過した。濾滓を減圧下に乾燥してN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−ドデシルアンモニウム=ブロミド54.1g(収率73.5%)を得た。
得られたN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−ドデシルアンモニウム=ブロミド54.1g(0.15モル)を水150gに溶解させた。得られた水溶液をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水溶液60.0g(0.15モル)と混合し、次いで1時間室温で攪拌して反応させた。反応液を静置した後、分液して得られたオイル層を水75gで2回洗浄した。その後オイル層に含まれる水を減圧下で除去して液体のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−ドデシルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド58.0g(収率69.5%)を得た。
得られたN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−ドデシルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド10.0g(0.018モル)と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン8.5g(0.053モル)との混合物を、60℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、油状のN,N−ビス(2−トリメチルシロキシエチル)−N−メチル−N−ドデシルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド12.5g(収率100%)を得た。得られたN,N−ビス(2−トリメチルシロキシエチル)−N−メチル−N−ドデシルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0097】
H−NMR(CDCl) δ:ppm3.99−3.92(m,4H)、3.55−3.50(m,4H)、3.42−3.32(m,2H)、3.12(s,3H)、1.71(br,2H)、1.35−1.19(m,18H)、0.85(t,3H)、0.12(s,9H)
【0098】
実施例8
ピリジン2.8g(0.035モル)、(ヨードメチル)トリメチルシラン7.7g(0.036モル)及びアセトニトリル8.4gからなる混合物を、60℃で7時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、残渣にアセトニトリル5.0g及びトルエン5.0gを加えて−20℃に冷却し、濾過した。濾滓を0℃に冷却したヘキサン5.0gで2回洗浄し、減圧下に乾燥して1−(トリメチルシリルメチル)ピリジニウム=ヨージド5.6g(収率53%)を得た。
得られた1−(トリメチルシリルメチル)ピリジニウム=ヨージド5.6g(0.019モル)を水5.6gに溶解させた。得られた水溶液をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水溶液7.8g(0.019モル)と混合し、次いで1時間室温で攪拌して反応させた。反応液を静置した後、分液して得られたオイル層を水8.6gで2回洗浄した。その後オイル層に含まれる水を減圧下で除去して液体の1−(トリメチルシリルメチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド7.0g(収率82%)を得た。得られた1−(トリメチルシリルメチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0099】
H−NMR(CDCl) δ:ppm8.60−8.70(m,2H)、8.34−8.42(m,2H)、8.00(t,1H)、4.35(s,2H)、0.14(s,9H)
【0100】
実施例9
特開2004−256461に記載された方法で合成した1−(2−ヒドロキシエチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド10.0g(0.025モル)と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン12.0g(0.074モル)との混合物を、60℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、油状の1−(2−トリメチルシロキシエチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド10.8g(収率91.6%)を得た。得られた1−(2−トリメチルシロキシエチル)ピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0101】
H−NMR(CDCl) δ:ppm:8.80(d,2H)、8.51(t,1H)、8.04(t,2H)、4.70(t,2H)、4.01(t,2H)、0.00(s,9H)
【0102】
実施例10
2−ピリジンメタノール50.0g(0.46モル)、臭化オクチル106.2g(0.55モル)及びアセトニトリル80gからなる混合物を、85℃で60時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、残渣にメチルエチルケトン223.1gを加えて固形物を洗浄し、濾過した。濾滓を減圧下に乾燥して2−ヒドロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ブロミド114.7g(収率82.8%)を得た。
得られた2−ヒドロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ブロミド30.0g(0.099モル)を水60.0gに溶解させ、活性炭1.5gを加え室温で1時間攪拌した。活性炭を濾過して除き、濾残を水50gにて洗浄した。濾液及び洗浄液をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水溶液40.4g(0.099モル)に加え、次いで1時間室温で攪拌して反応させた。反応液を静置した後、分液して得られたオイル層を水52.7gで2回洗浄した。その後オイル層に含まれる水を減圧下で除去して液体の2−ヒドロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド48.5g(収率97.2%)を得た。
得られた2−ヒドロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド21.7g(0.043モル)と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン20.9g(0.13モル)のと混合物を、60℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、残渣に活性炭1.3g及びアセトニトリル75.6g加えて室温で1時間攪拌した。活性炭を濾過して除き、濾液を減圧下で濃縮し油状の2−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド23.8g(収率95.9%)を得た。得られた2−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0103】
H−NMR(CDCl) δ:ppm8.52(d,1H)、8.22(t,1H)、7.90(d,1H)、7.72(t,1H)、4.76(s,2H)、4.31−4.20(m,2H)、1.77−1.65(m,2H)、1.20−0.95(m,10H)、0.70−0.60(m,3H)、0.05(s,9H)
【0104】
実施例11
実施例10と同様にして得た乾燥2−ヒドロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ブロミド30.0g(0.099モル)を水49.0gに溶解させ、活性炭1.5gを加え室温で1時間攪拌した。活性炭を濾過して除き、濾残を水50gにて洗浄する。濾液及び洗浄液をヘキサフルオロリン酸カリウム18.3g(0.099モル)に加え、次いで3時間室温で攪拌して反応させた。反応液を静置した後、分液して得られたオイル層を水52.7gで2回洗浄した。その後オイル層に含まれる水を減圧下で除去して液体の2−ヒドロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ヘキサフルオロホスフェート32.3g(収率88.5%)を得た。
得られた2−ヒドロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ヘキサフルオロホスフェート17.9g(0.049モル)、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン23.6g(0.15モル)及びアセトニトリル23.6gからなる混合物を、60℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、残渣に活性炭1.1g及びアセトニトリル64.3g加えて室温で1時間攪拌した。活性炭を濾過して除き、濾液を減圧下で濃縮し、残渣にジエチルエーテル105gを加えて固形物を洗浄し、濾過した。濾滓を減圧下に乾燥して、2−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ヘキサフルオロホスフェート19.6g(収率91.5%)を得た。得られた2−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=へキサフルオロホスフェートのH−NMRの分析結果及び融点を次に示す。
【0105】
H−NMR(CDCl) δ:ppm8.71(d,1H)、8.40(t,1H)、8.08(d,1H)、7.90(t,1H)、4.98(s,2H)、4.45(t,2H)、2.00−1.80(m,2H)、1.40−1.10(m,10H)、0.84(t,3H)、0.05(s,9H)、融点 64〜67℃(融点測定器で測定)
【0106】
実施例12
実施例10の2−ピリジンメタノールを3−ピリジンメタノールに代えた以外は実施例10と同様な操作をして、油状の3−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを得た。得られた3−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0107】
H−NMR(CDCl) δ:ppm8.69−8.50(m,2H)、8.41−8.28(m,1H)、7.99−7.84(m,1H)、4.90−4.78(m,2H)、4.58−4.41(m,2H)、2.00−1.82(m,2H)、1.35−1.10(m,10H)、0.83(t,3H)、0.18(s,9H)
【0108】
実施例13
実施例10の2−ピリジンメタノールを4−ピリジンメタノールに代えた以外は実施例10と同様な操作をして、油状の4−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを得た。得られた4−トリメチルシロキシメチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0109】
H−NMR(CDCl) δ:ppm8.66(d,2H)、7.96(d,2H)、4.92(s,2H)、4.57−4.44(m,2H)、2.03−1.88(m,2H)、1.44−1.16(m,10H)、0.84(t,3H)、0.19(s,9H)
【0110】
応用例1
酢酸エチル100重量部、これに本発明のオニウム塩であるN−(2−トリメチルシロキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1重量部を溶解してコート液を調整した。本コ−ト液をポリテトラフルオロエチレン(商品名テフロン(登録商標))シート上にバーコーダを用いて乾燥厚み約10μmの厚みでコートし、60℃で3分間加熱させて試験片を作成した。得られた試験片を23℃、50%RHの雰囲気中に3時間保持した後、23℃、50%RHで試験片の表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
【0111】
応用例2〜13及び比較例1
応用例1のN−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの代わりに表1に示す本発明のオニウム塩を用いた以外は、応用例1と同様にして試験片を作成し、かかる試験片の表面抵抗値を応用例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。





























【0112】
【表1】

【0113】
表1の結果から、本発明のオニウム塩を帯電防止剤としてコートしたポリテトラフルオロエチレンシートは、帯電防止剤をコートしないときのポリテトラフルオロエチレンシートが1.0×1013以上という絶縁状態に比べ、10〜1011の極めて低い表面抵抗値が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
・A (1)
(式中、Qは下記式(2)又は(4)で表されるオニウムカチオンを示し、Aはビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン又はヘキフルオロフォスフェートアニオンを示す。)で表されるオニウム塩。
式(2):
【化1】

(式中、R、R及びRは、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基もしくは式(3):
−(CHOSi(R (3)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは1〜4の整数である。)で表されるトリアルキルシロキシアルキル基を示すか、又はR、R及びRのいずれか2つが互いに結合して窒素原子と一緒になって環を形成する。但し当該環が芳香環であるときは、R、R及びRのうち当該環を形成しないものは存在しない。mは前記に同じ。Yは存在しないか又は酸素原子である。)で表されるオニウムカチオン。
式(4):
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。Rは前記に同じ。)で表されるオニウムカチオン。

【公開番号】特開2010−95473(P2010−95473A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268164(P2008−268164)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】