説明

トリガートランスおよび該トリガートランスを備えたフラッシュランプ発光装置

【課題】高電圧を発生させるトリガートランスを、2次電流が大電流を流せる構造としたことで、部品点数を削減して小形化、軽量化できるフラッシュランプ発光装置を提供する。
【解決手段】筒状の絶縁筒20の回りに2次巻線22を巻き付けて、電流波形を成形するコイルとして機能させるとともに、2次巻線22の外側に1次巻線21を巻き付けた高圧用のトリガートランス4とする。このトリガートランス4は、2次巻線22が空芯コイル(ソレノイド)を形成し、大電流を流すことが可能となり、電流波形を成形するコイルとして機能するとともに、2次巻線22の外側に1次巻線21を巻き付けることにより、高電圧用としながらも、トリガートランス4自体の小形化を図ることが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガートランスおよび該トリガートランスを備え、充放電用コンデンサに蓄えた電気エネルギーをフラッシュランプに供給して発光させるフラッシュランプ発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充放電用コンデンサに電気エネルギーを蓄えて、この電気エネルギーをフラッシュランプに間欠的に供給して発光させる技術が知られており、例えば特許文献1に開示されている閃光装置や特許文献2に開示されているストロボ装置がある。
【0003】
一般的に、このような技術を使用した装置では、フラッシュランプを発光させる際に、フラッシュランプの電極間を導通させるために高電圧を発生させるトリガートランス(イグナイター)を設ける必要がある。
また、フラッシュランプ発光時の電流波形を成形するために、フラッシュランプと直列にコイルを設ける必要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−292649号公報
【特許文献2】実開平5−20298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フラッシュランプ発光時の電流波形を成形するためには、大きなインダクタンスを持ち、かつ大電流を流すことができる大きなコイルが必要となる。よって、特許文献1記載の装置のように、トリガートランスとは別個に波形成形用コイルを設けた構成では、部品点数が増加することに加え、装置が大型化してしまう。
【0006】
一方、特許文献2記載の装置(図3)では、トリガートランスの各巻線と電磁結合される別巻線をフラッシュランプと直列に接続している。しかしながら、特許文献2には、トリガートランスと別巻線の具体的構成について何ら記載がなく、フラッシュランプの電極間を導通させるために高電圧を発生させる機能(トリガートランスの機能)と、フラッシュランプ発光時の電流波形を成形する機能とをどのように両立させるかが明らかになっていなかった。
一般に、上記した機能を両立させるには、高電圧用でかつ、比較的大形のトランスが必要となるが、このようなトランスを製作することは、技術的にもコスト的にも困難な状況にあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、トリガートランスの機能とフラッシュランプ発光時の電流波形を成形する機能とを両立させながらも、装置全体をコンパクトに形成することが可能なトリガートランスおよび該トリガートランスを備えたフラッシュランプ発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、充放電用コンデンサに蓄えられた電気エネルギーより高電圧を発生させるトリガートランスにおいて、筒状の絶縁体の回りに2次巻線を巻き付けて、電流波形を成形するコイルとして機能させるとともに、2次巻線の外側に1次巻線を巻き付けて高圧用トランスとしたことを特徴とするトリガートランスである。
【0009】
このように構成された発明では、トリガートランスは、筒状の絶縁体の回りに2次巻線を巻き付けることにより、2次巻線が空芯コイル(ソレノイド)を形成し、大電流を流すことが可能となり、電流波形を成形するコイルとして機能する。
さらに、このような2次巻線の外側に1次巻線を巻き付けることにより、高電圧用としながらも、トランスの小形化を図ることができる。
【0010】
また、第2の発明は、充放電用コンデンサと、前記充放電用コンデンサに蓄えられた電気エネルギーで発光するフラッシュランプと、前記フラッシュランプに対して直列に接続された第1の発明に係るトリガートランスと、前記充放電用コンデンサを充電する充電電源と、前記トリガートランスにトリガー電圧を印加して前記フラッシュランプの両極間に電位差を発生させるトリガー回路と、前記充放電コンデンサの電気エネルギーを放電させるスイッチ回路とを備えたことを特徴とするフラッシュランプ発光装置である。
【0011】
このように構成された発明では、トリガートランスは、筒状の絶縁体の回りに巻き付けた2次巻線が空芯コイル(ソレノイド)を形成し、大電流を流すことが可能となり、フラッシュランプの電流波形を成形するコイルとして機能するとともに、2次巻線の外側に1次巻線を巻き付けることにより、高電圧用としながらも、トランスの小形化を図ることができる。
よって、トリガートランスの機能とフラッシュランプ発光時の電流波形を成形する機能とを両立させながらも装置全体をコンパクトに形成することが可能なフラッシュランプ発光装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のとおり、筒状の絶縁体の回りに2次巻線を巻き付けることにより、2次巻線が空芯コイル(ソレノイド)を形成し、大電流を流すことが可能なトリガートランスが形成され、フラッシュランプの電流波形を成形するコイルとして機能する。さらに、このような2次巻線の外側に1次巻線を巻き付けることにより、高電圧用としながらも、トランスの小形化を図ることができる。
よって、トリガートランスの機能とフラッシュランプ発光時の電流波形を成形する機能とを両立させながらも装置全体をコンパクトに形成することが可能なフラッシュランプ発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るフラッシュランプ発光装置の構成図である。
【図2】(A)は、本実施形態に係るトリガートランスの側面図であり、(B)は、本実施形態に係るトリガートランスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本願発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係るフラッシュランプ発光装置1の構成図である。図2(A)は、本実施形態に係るトリガートランス4の側面図であり、図2(B)は、本実施形態に係るトリガートランス4の断面図である。
【0015】
(フラッシュランプ発光装置1の構成)
フラッシュランプ発光装置1は、図1に示すように、主として、フラッシュランプ2と、電源3と、フラッシュランプ2と電源3との間に直列に接続されたトリガートランス4と、トリガー回路5と、電源3とトリガートランス4との間に直列に接続されたランプ発光用サイリスタ6(スイッチ回路)と、ランプ発光用サイリスタ6のアノードと接地間に接続された充放電用コンデンサ7とを備えている。
【0016】
更に、フラッシュランプ発光装置1には、ランプ発光用サイリスタ6のカソードと接地間に第1サージアブソーバ8が設けられている。
なお、接地箇所には接地抵抗17が設けられている。
また、補助電源9、第1抵抗10、および、第1ダイオード11がフラッシュランプ2に接続され、またトリガートランス4の1次巻線21の出力側がフラッシュランプ2に接続されている。
【0017】
また、トリガートランス4の2次巻線22側にトリガー充電用コンデンサ12とトリガー発生用サイリスタ13との直列回路が接続されている。
更に、トリガー回路5としての第2抵抗14と第2ダイオード15と第2サージアブソーバ16とがトリガー発生用サイリスタ13に対して並列に接続されている。
そして、補助電源9の正極側とトリガートランス4の2次巻線22の出力側との間に第2抵抗14、第2ダイオード15、第2サージアブソーバ16、トリガー発生用サイリスタ13が並列接続されている。
【0018】
フラッシュランプ2には、キセノンランプを使用している。
このキセノンランプは、キセノンガスを充填したバルブに高圧電流を放電して電気エネルギーを発光エネルギーに変換して発光するランプであり、発光光量が大きく、消費電力に対する発光効率が高い性質がある。
【0019】
電源3および補助電源9には、直流電源として電池を使用している。
【0020】
充放電用コンデンサ7は、電源3から給電される電気エネルギーを蓄える役割を果たす。
【0021】
トリガー回路5は、トリガー発生用サイリスタ13がオンにスイッチングされた場合に、トリガートランス4に対してフラッシュランプ2の両端の端子に電位差を発生させるトリガー電圧を印加する機能を果たす。
これにより、フラッシュランプ2の発光前に、フラッシュランプ2を微弱放電の状態に保つことができる。
【0022】
ランプ発光用サイリスタ6は、オンにスイッチングされた場合に、充電された充放電用コンデンサ7の電気エネルギーをフラッシュランプ2に一気に与え、瞬間的に強い放電を生じさせて短時間だけ発光させるスイッチ回路の役割を果たす。
【0023】
第1サージアブソーバ8は、ランプ発光用サイリスタ6のスイッチングによって発生する過渡的な過大電圧(サージ)からフラッシュランプ発光装置1を保護するために設けられている。
同様に、第2サージアブソーバ16もトリガー発生用サイリスタ13のスイッチングによって発生する過渡的な過大電圧(サージ)からトリガー回路5を保護するために設けられている。
【0024】
トリガートランス4は、1次巻線21および2次巻線22を有しており、図2の(A)、(B)に示すように、円筒状の絶縁筒20に、2次巻線22としての銅線をソレノイド状に巻き付け、1次巻線21としての銅線を2次巻線22の外側に2次巻線を囲繞するようにソレノイド状に巻き付けた構成をしている。
これにより、1次巻線21にて発生した電気エネルギーを2次巻線22に伝達し、2次巻線22に伝達された電気エネルギーがフラッシュランプ2の端子に印加されることになる。
【0025】
このトリガートランス4は、トリガー発生用サイリスタ13がオンにスイッチングされることにより印加されたトリガー電圧を受けて、フラッシュランプ2の両端の端子に電位差を発生させたうえで、フラッシュランプ2を微弱放電の状態に保つ役割を果たす。
【0026】
また、フラッシュランプ発光装置1では、ランプ発光用サイリスタ6がオンにスイッチングされた場合に、充電された充放電用コンデンサ7の電気エネルギーをフラッシュランプ2に一気に与える際に、充放電用コンデンサ7のインダクタンス値、トリガートランス4のインダクタンス値、および、フラッシュランプ2のインピーダンス値によって決定される振動条件を持った電流波形の電流をフラッシュランプ2に流すことになる。
すなわち、トリガートランス4は、フラッシュランプ2発光時の電流波形を成形するコイルの役割を果たす。
なお、上記トリガートランス4のインダクタンス値は、トリガートランス4の2次巻線22での値を使用する。
また、振動条件は、充放電用コンデンサ7のインダクタンス値、トリガートランス4のインダクタンス値、および、フラッシュランプ2のインピーダンス値の関係が臨界制動条件を満たす値で設定されている。
【0027】
(フラッシュランプ発光装置1の動作)
次に、フラッシュランプ発光装置1の動作について説明する。
【0028】
まず、電源3から充放電用コンデンサ7に充電がなされた状態にする。同様に、補助電源9からトリガー充電用コンデンサ12に充電がなされた状態にする。
【0029】
次に、トリガー発生用サイリスタ13をオンにスイッチングする。
トリガー発生用サイリスタ13がオンにスイッチングされると、トリガー充電用コンデンサ12が放電されて、トリガートランス4に対してトリガー電圧を印加する。
【0030】
トリガー発生用サイリスタ13がオンにスイッチングされることにより印加されたトリガー電圧を受けて、トリガートランス4は、フラッシュランプ2の両端の端子に電位差を発生させたうえで、フラッシュランプ2を微弱放電の状態にする。
【0031】
次に、ランプ発光用サイリスタ6をオンにスイッチングする。
ランプ発光用サイリスタ6がオンにスイッチングされると、充放電用コンデンサ7に充電された電気エネルギーがフラッシュランプ2に一気に供給される。
【0032】
この際、充放電用コンデンサ7のインダクタンス値、トリガートランス4の2次巻線22でのインダクタンス値、および、フラッシュランプ2のインピーダンス値によって決定される振動条件を持った電流波形の電流がフラッシュランプ2に流れることになる。
【0033】
その結果、フラッシュランプ2に瞬間的に強い放電を生じさせて、短時間だけフラッシュランプ2は発光することになる。
【0034】
上記の構成によれば、トリガートランス4は、フラッシュランプ2の両端の端子に電位差を発生させる役割と、フラッシュランプ2の発光時の電流波形を成形するコイルの役割とを果たすことができる。即ち、トリガートランス4は、筒状の絶縁体の回りに2次巻線22を巻き付けることにより、2次巻線22が空芯コイル(ソレノイド)を形成し、大電流を流すことが可能となり、電流波形を成形するコイルとして機能する。
さらに、このような2次巻線22の外側に1次巻線21を巻き付けることにより、高電圧用としながらも、トリガートランス4の小形化を図ることができる。
よって、トリガートランスの機能とフラッシュランプ2の発光時の電流波形を成形する機能とを両立させながらも装置全体をコンパクトに形成することが可能なフラッシュランプ発光装置1を提供することができる。
【0035】
また、トリガートランス4を、円筒状の絶縁筒20に2次巻線22を巻き付け、1次巻線21を2次巻線22の外側に2次巻線22を囲繞するように巻き付けた空芯トランスとすることにより、ある程度大きなインダクタンスを確保しつつ、フラッシュランプ2発光時の電流波形を成形するための大電流を流すことも可能となる(図2(A)参照)。
【0036】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。
また、上記トリガートランスは、フラッシュランプ発光装置以外に、トリガー電圧を必要とするギャップ負荷で、かつメイン放電させるような装置に使用可能であり、このような装置として、例えばアーク蒸着器等が挙げられる。
【符号の説明】
【0037】
1 フラッシュランプ発光装置
2 フラッシュランプ
3 電源
4 トリガートランス
5 トリガー回路
6 ランプ発光用サイリスタ
7 充放電用コンデンサ
8 第1サージアブソーバ
9 補助電源
10 第1抵抗
11 第1ダイオード
12 トリガー充電用コンデンサ
13 トリガー発生用サイリスタ
14 第2抵抗
15 第2ダイオード
16 第2サージアブソーバ
17 接地抵抗
20 絶縁筒
21 1次巻線
22 2次巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電用コンデンサに蓄えられた電気エネルギーより高電圧を発生させるトリガートランスにおいて、
筒状の絶縁体の回りに2次巻線を巻き付けて、電流波形を成形するコイルとして機能させるとともに、前記2次巻線の外側に1次巻線を巻き付けて高圧用トランスとしたことを特徴とするトリガートランス。
【請求項2】
充放電用コンデンサと、
前記充放電用コンデンサに蓄えられた電気エネルギーで発光するフラッシュランプと、
前記フラッシュランプに対して直列に接続された請求項1に記載のトリガートランスと、
前記充放電用コンデンサを充電する充電電源と、
前記トリガートランスにトリガー電圧を印加して前記フラッシュランプの両極間に電位差を発生させるトリガー回路と、
前記充放電コンデンサの電気エネルギーを放電させるスイッチ回路と、
を備えたことを特徴とするフラッシュランプ発光装置。

【図1】
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【図2】
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