トリガ機能付き固定部および免震装置
【課題】簡単な機構でありかつ設計通りの力で破断するようにして、使い勝手のよいトリガ機能付き固定部を提供する。また、このトリガ機能付き固定部を用いて製造容易にし、かつ設計通りの力で免震開始するようにして免震性能を向上させた免震装置を提供する。
【解決手段】第1取り付け部11、連結固定部12、および、第2取り付け部13の順に配列された状態で一枚の板体から一体に形成されるトリガ機能付き固定部10であって、板体側面から視たときの厚みが薄く、かつ、板体正面から視たときの連結固定部12の幅が第1取り付け部11および第2取り付け部13の幅よりも薄く形成されるトリガ機能付き固定部とした。また、このようなトリガ機能付き固定部を用いる免震装置とした。
【解決手段】第1取り付け部11、連結固定部12、および、第2取り付け部13の順に配列された状態で一枚の板体から一体に形成されるトリガ機能付き固定部10であって、板体側面から視たときの厚みが薄く、かつ、板体正面から視たときの連結固定部12の幅が第1取り付け部11および第2取り付け部13の幅よりも薄く形成されるトリガ機能付き固定部とした。また、このようなトリガ機能付き固定部を用いる免震装置とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定力を超えたときに固定を解くトリガ機能付き固定部およびこのトリガ機能付き固定部を搭載した免震装置に関する。
【0002】
従来技術の免震装置として、例えば、特許文献1(特開2000−17891号公報、発明の名称「免震装置」)に記載の発明が知られている。
特許文献1に記載の従来技術では、丸棒状であって細径部を有するトリガ機構が免震装置に取り付けられ、免震装置に加わる振動が設定した力以下の場合にはトリガ機構が破断しないで免震動作を行わないが、免震装置に加わる振動が設定した力を超える場合にはトリガ機構の細径部が破断して免震動作を開始する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−17891号公報(段落番号[0014],図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の免震装置では、先に説明したように丸棒状であって細径部を有するトリガ機構であるため、例えば、円形の免震装置への中央への配置に限定されるきらいがあった。
また、特許文献1に記載のトリガ機構は免震装置の内部へ配置されるため、取り付けは容易ではないという問題もあった。
さらにまた、特許文献1に記載のトリガ機構は丸棒体に細径部を形成するというものであり、加工に手間を要するという問題もあった。
さらにまた、特許文献1に記載のトリガ機構では、トリガを開始する力を大きくすると細径部が大きくなるため、トリガ機構の大型化が避けられないという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な機構でありかつ設計通りの力で破断するようにして、使い勝手のよいトリガ機能付き固定部を提供することにある。
また、このトリガ機能付き固定部を用いて製造容易にし、かつ設計通りの力で免震開始するようにして免震性能を向上させた免震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るトリガ機能付き固定部は、
免震装置の上側免震架台に固定される第1取り付け部と、
前記第1取り付け部と一体に連結される連結固定部と、
前記連結固定部と一体に連結されており、免震装置の下側免震架台に固定される第2取り付け部と、
を有し、前記第1取り付け部、前記連結固定部、および、前記第2取り付け部の順に配列された状態で一枚の板体から一体に形成されるトリガ機能付き固定部であって、
前記第1取り付け部、前記連結固定部、および、前記第2取り付け部は、板体側面から視たときの厚みが薄く、かつ、
前記連結固定部は、板体正面から視たときの幅が第1取り付け部および第2取り付け部の幅よりも薄く形成される、
ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項1に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部または前記第2取り付け部は、少なくとも一方に固定ねじが挿通される長孔が形成され、かつ他方に固定ねじが挿通される円孔が形成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項2に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記トリガ機能付き固定部は、その正面が略工字状の形状を有し、かつその側面が線状の形状を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項1に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部または前記第2取り付け部は、免震装置の上側免震架台および下側免震架台にそれぞれ設けられる上側と下側の孔部にトリガ機能付き固定部が挿通されたときに両方の孔部内に位置することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項4に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部に固定され、前記上側免震架台に係止される係止部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項4または請求項5に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記トリガ機能付き固定部は、その正面が略工字状の形状を有し、かつその側面が略L字状の形状を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7に係る免震装置は、
上側免震架台と、
下面が地面または床面に固定されており、上側免震架台を水平方向に移動するように支持する下側免震架台と、
前記上側免震架台と前記下側免震架台とをこれらの側面で連結固定する請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の複数のトリガ機能付き固定部と、
を有し、所定力以下の力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部が上側免震架台の移動を抑え、また、所定力を超える力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部の連結固定部が破断して、上側免震架台を移動させて免震する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な機構でありかつ設計通りの力で破断するようにして、使い勝手のよいトリガ機能付き固定部を提供することができる。
また、このトリガ機能付き固定部を用いて製造容易にし、かつ設計通りの力で免震開始するようにして免震性能を向上させた免震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施するための形態のトリガ機能付き固定部の説明図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。
【図2】本発明を実施するための形態の免震装置の説明図であり、図2(a)は通常型の免震装置の平面図、図2(b)は通常型の免震装置の側面図である。
【図3】トリガ機能付き固定部の水平方向免震装置への取り付けを説明する説明図であり、図3(a)はスペーサの配置の説明図、図3(b)はトリガ機能付き固定部の配置の説明図、図3(c)はトリガ機能付き固定部の固定の説明図である。
【図4】本発明を実施するための形態の免震装置の説明図であり、図4(a)は大型の免震装置の平面図、図4(b)は大型の免震装置の側面図である。
【図5】本発明を実施するための他の形態のトリガ機能付き固定部の説明図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図である。
【図6】ストッパ金具の説明図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図、図6(c)は側面図である。
【図7】本発明を実施するための他の形態の免震装置の説明図であり、図7(a)は通常型の免震装置の平面図、図7(b)は通常型の免震装置の側面図である。
【図8】トリガ機能付き固定部の水平方向免震装置への取り付けを説明する説明図であり、図8(a)はトリガ機能付き固定部の取り付け前状態の説明図、図8(b)はトリガ機能付き固定部の取り付け状態の説明図である。
【図9】本発明を実施するための形態の免震装置の説明図であり、図9(a)は大型の免震装置の平面図、図9(b)は大型の免震装置の側面図である。
【図10】本発明を実施するための他の形態のトリガ機能付き固定部の説明図であり、図10(a)は正面図、図10(b)は側面図である。
【図11】本発明を実施するための他の形態のトリガ機能付き固定部の説明図であり、図11(a)は正面図、図11(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、本発明を実施するための形態のトリガ機能付き固定部について図を参照しつつ以下に説明する。本形態のトリガ機能付き固定部10は、図1(a),(b)で示すように、第1取り付け部11、連結固定部12、第2取り付け部13を備えている。
また、本形態の免震装置100は、図2(a),(b)で示すように、複数のトリガ機能付き固定部10、水平方向免震装置20を備え、水平方向免震装置20の側面に複数のトリガ機能付き固定部10が設置固定される。
【0016】
続いて各構成について説明する。まず、トリガ機能付き固定部10の構成について説明する。
第1取り付け部11は、図1(a)で示すように、略長方形の部材であり、水平方向免震装置20の上側免震架台21(図2,図3参照)に固定される部分である。中央付近には、水平方向免震装置20の上側免震架台21に固定ねじ40(図3参照)が挿通される略長方形の長孔11aが形成されている。
連結固定部12は、第1取り付け部11と第2取り付け部13とを連結する部材であり、長方形の部材である。
第2取り付け部13は、略長方形の部材であり、水平方向免震装置20の下側免震架台22(図2,図3参照)に固定される部分である。中央付近には、水平方向免震装置20の下側免震架台22に固定ねじ40(図3参照)が挿通される円孔13aが形成されている。
【0017】
このようなトリガ機能付き固定部10は、合成樹脂製や金属製の一枚の板体から一体に形成され、第1取り付け部11、連結固定部12、および、第2取り付け部13の順で一体に配列された状態となる。これらのような第1取り付け部11、連結固定部12、および、第2取り付け部13は、図1(b)で示すように、ともに板体側面の厚みtは同じ幅であって薄く形成されている。さらに、連結固定部12は、第1取り付け部11および第2取り付け部13の横側の幅aと比較して、正面から視たとき横側の幅bが幅薄に形成される。また、正面から視たときの縦側の長さは同じ断面積の箇所が長くなるように形成されている。このような構造であるため、第1取り付け部11および第2取り付け部13に剪断力が働く場合には、連結固定部12に力が加わって容易に折れやすくなっている。
【0018】
トリガ機能付き固定部10は、図1(a)のように正面から視ると、その正面の形状が略工字状の形状を有している。また、トリガ機能付き固定部10は、図1(b)のように側面から視ると、その側面の形状が線状の形状を有している。
【0019】
このような形状のトリガ機能付き固定部10の製造方法では、適宜な大きさに形成された長方形の一枚板を準備し、この長方形状の一枚板に連結固定部12の両サイドの側面部材を切り取って切り欠き部12aを形成すれば、第1取り付け部11、連結固定部12、第2取り付け部13が一体に形成されることとなる。そして長孔11aや円孔13aを形成して完成する。例えば、切削などで形成される。なお、長孔11a、切り欠き12a、円孔13aを打ち抜き、パンチングなどにより同時に形成してもよい。また、型等を用いて鋳物や樹脂により切削等なしに形成してもよい。
【0020】
続いて、このようなトリガ機能付き固定部10を用いる免震装置100について図を参照しつつ説明する。本形態の免震装置100は、図2(a),(b)で示すように、複数のトリガ機能付き固定部10、水平方向免震装置20を備え、水平方向免震装置20の側面に複数のトリガ機能付き固定部10が設置固定される。さらに水平方向免震装置20は、上側免震架台21、下側免震架台22を備える。
【0021】
上側免震架台21は、サーバ等の免震対象1(図2中の一点鎖線による想像線部)が配置される台であり、詳しくは2個の台部211と、これら2個の台部211を連結する連結梁部212と、を備えている。中央には開口部213が設けらることとなり軽量化が図られている。
【0022】
下側免震架台22は、詳しくは2個の台部221と、これら2個の台部221を連結する連結梁部222と、を備えている。中央には開口部223が設けらることとなり軽量化が図られている。このような下側免震架台22の下面が地面(床面)に固定されており、下側免震架台22は上側免震架台21を水平方向に移動するように支持されている。上側免震架台21は例えば、図2で示すX方向とY方向に一定距離にわたり移動可能としても良いが、本形態では説明の便宜上のためX方向にのみ一定距離にわたり移動するものとして以下説明する。
【0023】
水平方向免震装置20の横側には複数のトリガ機能付き固定部10が固定される。図2(a)の上下両側でそれぞれ2個ずつ計4個配置される。
【0024】
続いてトリガ機能付き固定部10を水平方向免震装置20へ取り付けて免震装置100を構成する作業について説明する。図3(a)で示すように上側免震架台21および下側免震架台22のネジ孔に合わせるようにしてにそれぞれスペーサ30を配置する。なお、スペーサ30は必須構成ではなく、例えばスペーサ30を不要とするような側面形状を採用しても良い。そして、図3(b)で示すようにスペーサ30の表面にトリガ機能付き固定部10を配置し、図3(c)で示すように長孔11aや円孔13aに固定ねじ40を挿通させてからねじ締結により上側免震架台21と下側免震架台22との間にトリガ機能付き固定部10を連結固定する。そして、このような取り付けを複数箇所(本形態では4箇所)にわたり行う。
免震装置100はこのようなものである。
【0025】
このような免震装置100では、上側免震架台21に所定力以下の力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部10が上側免震架台21の移動を抑える。また、上側免震架台21とともにトリガ機能付き固定部10が多少移動したとしても長孔11aが移動して固定ねじ40によるトリガ機能付き固定部10の即座の拘束解除を回避しているため、やはり上側免震架台21の移動を抑える。そして、上側免震架台21に所定力を超える力が加わるときに、固定ねじ40が長孔11aの端で接触してトリガ機能付き固定部10の移動が固定ねじ40により拘束された状態となり、さらに力が加わって全てのトリガ機能付き固定部10の特に連結固定部12が破断し、拘束が完全に解除されて上側免震架台21を移動させて免震する。免震装置100による免震動作はこのようなものである。
【0026】
以上本形態のトリガ機能付き固定部10および免震装置100について説明した。なお、本形態以外にも各種の変形形態が可能である。例えば、先に説明したトリガ機能付き固定部10を、図4(a),(b)で示すような水平方向に4個の台座211を有する大型の水平方向免震装置20に取り付けて、大型の免震装置100としても良い。この場合、トリガ機能付き固定部10を適宜個数を増やして取り付けるようにしても良い。
【0027】
また、図2,図4にてX方向にのみ移動するものとして上下両側でそれぞれ2個ずつ計4個配置されるものであるとして説明したが、水平方向免震装置20がX方向およびY方向に移動するものとして上下両側でそれぞれ2個ずつ計4個、および左右両側でそれぞれ2個ずつ計4個、総計8個配置される構成としても良い。これにより、左右上下両方向で移動しないように拘束している。
【0028】
また、トリガ機能付き固定部10は第1取り付け部11を上側免震架台21に、また、第2取り付け部13を下側免震架台22に取り付けたが、上下逆転し、第1取り付け部11を下側免震架台22に、また、第2取り付け部13を上側免震架台21に取り付けても良い。または、これら変形形態を適宜組み合わせた形態であっても良い。これらのような免震装置100であっても良い。
【0029】
続いて、本発明を実施するための他の形態のトリガ機能付き固定部について図を参照しつつ以下に説明する。本形態のトリガ機能付き固定部50は、図5(a),(b)で示すように、第1取り付け部51、連結固定部52、第2取り付け部53、係止部54を備えている。
また、本形態の免震装置200は、図7(a),(b)で示すように、複数のトリガ機能付き固定部50、ストッパ金具60(図6参照)、水平方向免震装置20を備え、水平方向免震装置20の側面に複数のトリガ機能付き固定部50が設置固定される。
【0030】
続いて各構成について説明する。まず、トリガ機能付き固定部50の構成について説明する。
第1取り付け部51は、図5(a)で示すように、略長方形の部材であり、水平方向免震装置20の上側免震架台21(図7,図8参照)に固定される部分である。
連結固定部52は、第1取り付け部51と第2取り付け部53とを連結する部材であり、長方形の部材である。
第2取り付け部53は、略長方形の部材であり、水平方向免震装置20の下側免震架台22(図7,図8参照)に固定される部分である。
係止部54は、第1取り付け部51に対して側面から視て約90°折り曲げられた状態で連結して設けられている。
【0031】
このようなトリガ機能付き固定部50は、一枚の板体から一体に形成され、第1取り付け部51、連結固定部52、および、第2取り付け部53の順で一体に配列された状態となる。これらのような第1取り付け部51、連結固定部52、および、第2取り付け部53は、図5(b)で示すように、ともに板体側面から視たときの厚みtは同じ幅であって薄く形成されている。さらに、連結固定部52は、第1取り付け部51および第2取り付け部53の横側の幅aと比較して、正面から視たとき横側の幅bが幅薄に形成される。
【0032】
トリガ機能付き固定部50は、図5(a)のように正面から視ると、その正面の形状が略工字状の形状を有している。また、トリガ機能付き固定部50は、図5(b)のように側面から視ると、係止部54が約90°で折り曲げられているため、その側面の形状が略L状の形状を有している。
【0033】
このような形状のトリガ機能付き固定部50のような製造方法では、適宜の大きさに形成された長方形の一枚板を準備し、この長方形状の一枚板に連結固定部52の両サイドの側面部材を切り取って切り欠き部52aを形成すれば、係止部54を含む第1取り付け部51、連結固定部52、第2取り付け部53が一体に形成されることとなる。そして係止部54を含む第1取り付け部51を所定の位置で折り曲げることにより第1取り付け部51と一体に連結する係止部54を形成して完成する。
【0034】
ストッパ金具60は、図6(a)に示すように中央に凹部61が形成されて平面がハット形の形状を呈している。また、図6(b)に示すように両側に固定ねじ40を挿通させてねじ止めするための孔部62が設けられている。ストッパ金具60は、図8(a)に示すように、上側免震架台21および下側免震架台22にそれぞれ2個の固定ねじ40により固定される。
【0035】
続いて、このようなトリガ機能付き固定部50を用いる免震装置200について図を参照しつつ説明する。本形態の免震装置200は、図7(a),(b)で示すように、複数のトリガ機能付き固定部50、水平方向免震装置20、ストッパ金具60を備え、水平方向免震装置20の側面に複数のトリガ機能付き固定部50が設置固定される。さらに水平方向免震装置20は、上側免震架台21、下側免震架台22を備える。
【0036】
上側免震架台21は、サーバ等の免震対象(図示せず)が配置される台であり、詳しくは2個の台部211と、これら2個の台部211を連結する連結梁部212と、を備えている。中央には開口部213が設けらることとなり軽量化が図られている。
【0037】
下側免震架台22は、詳しくは2個の台部221と、これら2個の台部221を連結する連結梁部222と、を備えている。中央には開口部223が設けらることとなり軽量化が図られている。このような下側免震架台22の下面が地面(床面)に固定されており、下側免震架台22は上側免震架台21を水平方向に移動するように支持されている。上側免震架台21は例えば、図7で示すX方向とY方向に一定距離にわたり移動可能としても良いが、本形態では説明の便宜上のためX方向にのみ一定距離にわたり移動するものとして以下説明する。
【0038】
水平方向免震装置20の横側には複数のトリガ機能付き固定部50が固定される。図7(a)の上下両側でそれぞれ1個ずつ計2個配置される。また、中央を交差するように配置している。
【0039】
続いてトリガ機能付き固定部50を水平方向免震装置20へ取り付けて免震装置200を構成する作業について説明する。図8(a)で示すように上側免震架台21および下側免震架台22にそれぞれストッパ金具60が上下に配置されているものとする。この場合、上側免震架台21と凹部61とで上側の孔部が形成され、また、下側免震架台22と凹部61とで下側の孔部が形成されている。そして、図8(b)で示すようにトリガ機能付き固定部50を上下2個の孔部内に配置し、係止部54を上側免震架台21に当接させ、上側免震架台21と下側免震架台22との間にトリガ機能付き固定部50を固定する。この際、上側の孔部に第1取り付け部51が、また、下側の孔部に第2取り付け部53が当接する。締結固定部52はいずれにも当接しない。そして、このような取り付けを複数箇所(本形態では2箇所)にわたり行う。
免震装置200はこのようなものである。
【0040】
このような免震装置200では、上側免震架台21に所定力以下の力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部50が上側免震架台21の移動を抑える。そして、上側免震架台21に所定力を超える力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部50の特に連結固定部52が破断し、上側免震架台21を移動させて免震する。免震装置200による免震動作はこのようなものである。
【0041】
以上本形態のトリガ機能付き固定部50および免震装置200について説明した。なお、本形態以外にも各種の変形形態が可能である。例えば、先に説明したトリガ機能付き固定部50を、図9(a),(b)で示すような水平方向に3個の台座211を有する大型の水平方向免震装置20に取り付けて、大型の免震装置200としても良い。この場合、図9で示すように、トリガ機能付き固定部50を上下両側でそれぞれ2個ずつ計4個配置されるというように適宜個数を増やして取り付けるようにしても良い。
【0042】
また、図7,図9にてX方向にのみ移動するものとして上下両側でそれぞれ1個ずつ計2個配置されるものであるとして説明したが、X方向およびY方向に移動するものとして上下両側でそれぞれ1個ずつ計2個、および左右両側でそれぞれ1個ずつ計2個配置される構成としても良い。これにより、左右上下両方向で移動しないように拘束している。このような免震装置200であっても良い。
【0043】
なお、上記形態ではトリガ機能付き固定部50を長方形の連結固定部であるものとして説明した。しかしながら、例えば、図10(a),(b)で示すトリガ機能付き固定部70のように、本体部71の一方の側に切れ込み部73を偏らせた状態で設けて配置するようにしても良い。
また、図11(a),(b)で示すトリガ機能付き固定部80のように、連結固定部がない場合でも比較的破断しやすい材質にてトリガ機能付き固定部80を形成すれば、本体部81が破断して上記のようなトリガ機能を発揮できる。このような構成としても良い。
【0044】
以上、本発明のトリガ機能付き固定部10,50および免震装置100,200について説明した。本発明によるトリガ機能付き固定部10,50は側面が線状または略L字状であるため、先に説明したように側面配置でも突出するようなことがなくなり、円形の免震装置への中央への配置はもちろんのこと、本発明の側面のように、各種位置に配置することができる。
【0045】
また、本発明のトリガ機能付き固定部10,50を用いる免震装置100,200は側面配置構造であるため取り付けは極めて容易になり、組み立てやすくすることができる。
【0046】
さらにまた、本発明のトリガ機能付き固定部10,50は適切な硬度を有する金属や合成樹脂の板体を用いて切り出し加工や曲げ加工程度で製作できるため、製作も容易にすることができる。
【0047】
さらにまた、トリガ機能付き固定部10,50は材質と取り付け部の幅aに対する連結固定部の幅bにより破断する所定力が設計できるため、設計が容易になる。また、破断する所定力の大小は、トリガ機能付き固定部10,50の個数を変更することでも可能であり、免震装置100,200としての設計も容易である。
【0048】
さらにまた、トリガ機能付き固定部10,50は小形構造であるため、トリガ機構としても小型化が可能であり、その結果免震装置100,200の小型化も可能になる。
【0049】
総じて、簡単な機構でありかつ設計通りの力で破断するようにして、使い勝手のよいトリガ機能付き固定部を提供することができる。
また、このトリガ機能付き固定部を用いて製造容易にし、かつ設計通りの力で免震開始するようにして免震性能を向上させた免震装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、特に構造の簡素化・部品点数の低減等が相俟って大幅なコスト低減を必要とする実現するトリガ機能付き固定部や免震装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:免震対象
100:免震装置
10:トリガ機能付き固定部
11:第1取り付け部
11a:長孔
12:連結固定部
12a:切り欠き部
13:第2取り付け部
13a:円孔
20:水平方向免震装置
21:上側免震架台
211:台座
212:連結梁部
213:開口部
22:下側免震架台
221:台座
222:連結梁部
223:開口部
30:スペーサ
40:固定ねじ
50:トリガ機能付き固定部
51:第1取り付け部
52:連結固定部
52a:切り欠き部
53:第2取り付け部
54:係止部
60:ストッパ金具
61:凹部
62:孔部
70:トリガ機能付き固定部
71:本体部
72:係止部
73:切れ込み部
80:トリガ機能付き固定部
81:本体部
82:係止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定力を超えたときに固定を解くトリガ機能付き固定部およびこのトリガ機能付き固定部を搭載した免震装置に関する。
【0002】
従来技術の免震装置として、例えば、特許文献1(特開2000−17891号公報、発明の名称「免震装置」)に記載の発明が知られている。
特許文献1に記載の従来技術では、丸棒状であって細径部を有するトリガ機構が免震装置に取り付けられ、免震装置に加わる振動が設定した力以下の場合にはトリガ機構が破断しないで免震動作を行わないが、免震装置に加わる振動が設定した力を超える場合にはトリガ機構の細径部が破断して免震動作を開始する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−17891号公報(段落番号[0014],図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の免震装置では、先に説明したように丸棒状であって細径部を有するトリガ機構であるため、例えば、円形の免震装置への中央への配置に限定されるきらいがあった。
また、特許文献1に記載のトリガ機構は免震装置の内部へ配置されるため、取り付けは容易ではないという問題もあった。
さらにまた、特許文献1に記載のトリガ機構は丸棒体に細径部を形成するというものであり、加工に手間を要するという問題もあった。
さらにまた、特許文献1に記載のトリガ機構では、トリガを開始する力を大きくすると細径部が大きくなるため、トリガ機構の大型化が避けられないという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な機構でありかつ設計通りの力で破断するようにして、使い勝手のよいトリガ機能付き固定部を提供することにある。
また、このトリガ機能付き固定部を用いて製造容易にし、かつ設計通りの力で免震開始するようにして免震性能を向上させた免震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るトリガ機能付き固定部は、
免震装置の上側免震架台に固定される第1取り付け部と、
前記第1取り付け部と一体に連結される連結固定部と、
前記連結固定部と一体に連結されており、免震装置の下側免震架台に固定される第2取り付け部と、
を有し、前記第1取り付け部、前記連結固定部、および、前記第2取り付け部の順に配列された状態で一枚の板体から一体に形成されるトリガ機能付き固定部であって、
前記第1取り付け部、前記連結固定部、および、前記第2取り付け部は、板体側面から視たときの厚みが薄く、かつ、
前記連結固定部は、板体正面から視たときの幅が第1取り付け部および第2取り付け部の幅よりも薄く形成される、
ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項1に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部または前記第2取り付け部は、少なくとも一方に固定ねじが挿通される長孔が形成され、かつ他方に固定ねじが挿通される円孔が形成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項2に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記トリガ機能付き固定部は、その正面が略工字状の形状を有し、かつその側面が線状の形状を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項1に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部または前記第2取り付け部は、免震装置の上側免震架台および下側免震架台にそれぞれ設けられる上側と下側の孔部にトリガ機能付き固定部が挿通されたときに両方の孔部内に位置することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項4に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部に固定され、前記上側免震架台に係止される係止部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に係るトリガ機能付き固定部は、
請求項4または請求項5に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記トリガ機能付き固定部は、その正面が略工字状の形状を有し、かつその側面が略L字状の形状を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7に係る免震装置は、
上側免震架台と、
下面が地面または床面に固定されており、上側免震架台を水平方向に移動するように支持する下側免震架台と、
前記上側免震架台と前記下側免震架台とをこれらの側面で連結固定する請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の複数のトリガ機能付き固定部と、
を有し、所定力以下の力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部が上側免震架台の移動を抑え、また、所定力を超える力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部の連結固定部が破断して、上側免震架台を移動させて免震する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な機構でありかつ設計通りの力で破断するようにして、使い勝手のよいトリガ機能付き固定部を提供することができる。
また、このトリガ機能付き固定部を用いて製造容易にし、かつ設計通りの力で免震開始するようにして免震性能を向上させた免震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施するための形態のトリガ機能付き固定部の説明図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。
【図2】本発明を実施するための形態の免震装置の説明図であり、図2(a)は通常型の免震装置の平面図、図2(b)は通常型の免震装置の側面図である。
【図3】トリガ機能付き固定部の水平方向免震装置への取り付けを説明する説明図であり、図3(a)はスペーサの配置の説明図、図3(b)はトリガ機能付き固定部の配置の説明図、図3(c)はトリガ機能付き固定部の固定の説明図である。
【図4】本発明を実施するための形態の免震装置の説明図であり、図4(a)は大型の免震装置の平面図、図4(b)は大型の免震装置の側面図である。
【図5】本発明を実施するための他の形態のトリガ機能付き固定部の説明図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図である。
【図6】ストッパ金具の説明図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図、図6(c)は側面図である。
【図7】本発明を実施するための他の形態の免震装置の説明図であり、図7(a)は通常型の免震装置の平面図、図7(b)は通常型の免震装置の側面図である。
【図8】トリガ機能付き固定部の水平方向免震装置への取り付けを説明する説明図であり、図8(a)はトリガ機能付き固定部の取り付け前状態の説明図、図8(b)はトリガ機能付き固定部の取り付け状態の説明図である。
【図9】本発明を実施するための形態の免震装置の説明図であり、図9(a)は大型の免震装置の平面図、図9(b)は大型の免震装置の側面図である。
【図10】本発明を実施するための他の形態のトリガ機能付き固定部の説明図であり、図10(a)は正面図、図10(b)は側面図である。
【図11】本発明を実施するための他の形態のトリガ機能付き固定部の説明図であり、図11(a)は正面図、図11(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、本発明を実施するための形態のトリガ機能付き固定部について図を参照しつつ以下に説明する。本形態のトリガ機能付き固定部10は、図1(a),(b)で示すように、第1取り付け部11、連結固定部12、第2取り付け部13を備えている。
また、本形態の免震装置100は、図2(a),(b)で示すように、複数のトリガ機能付き固定部10、水平方向免震装置20を備え、水平方向免震装置20の側面に複数のトリガ機能付き固定部10が設置固定される。
【0016】
続いて各構成について説明する。まず、トリガ機能付き固定部10の構成について説明する。
第1取り付け部11は、図1(a)で示すように、略長方形の部材であり、水平方向免震装置20の上側免震架台21(図2,図3参照)に固定される部分である。中央付近には、水平方向免震装置20の上側免震架台21に固定ねじ40(図3参照)が挿通される略長方形の長孔11aが形成されている。
連結固定部12は、第1取り付け部11と第2取り付け部13とを連結する部材であり、長方形の部材である。
第2取り付け部13は、略長方形の部材であり、水平方向免震装置20の下側免震架台22(図2,図3参照)に固定される部分である。中央付近には、水平方向免震装置20の下側免震架台22に固定ねじ40(図3参照)が挿通される円孔13aが形成されている。
【0017】
このようなトリガ機能付き固定部10は、合成樹脂製や金属製の一枚の板体から一体に形成され、第1取り付け部11、連結固定部12、および、第2取り付け部13の順で一体に配列された状態となる。これらのような第1取り付け部11、連結固定部12、および、第2取り付け部13は、図1(b)で示すように、ともに板体側面の厚みtは同じ幅であって薄く形成されている。さらに、連結固定部12は、第1取り付け部11および第2取り付け部13の横側の幅aと比較して、正面から視たとき横側の幅bが幅薄に形成される。また、正面から視たときの縦側の長さは同じ断面積の箇所が長くなるように形成されている。このような構造であるため、第1取り付け部11および第2取り付け部13に剪断力が働く場合には、連結固定部12に力が加わって容易に折れやすくなっている。
【0018】
トリガ機能付き固定部10は、図1(a)のように正面から視ると、その正面の形状が略工字状の形状を有している。また、トリガ機能付き固定部10は、図1(b)のように側面から視ると、その側面の形状が線状の形状を有している。
【0019】
このような形状のトリガ機能付き固定部10の製造方法では、適宜な大きさに形成された長方形の一枚板を準備し、この長方形状の一枚板に連結固定部12の両サイドの側面部材を切り取って切り欠き部12aを形成すれば、第1取り付け部11、連結固定部12、第2取り付け部13が一体に形成されることとなる。そして長孔11aや円孔13aを形成して完成する。例えば、切削などで形成される。なお、長孔11a、切り欠き12a、円孔13aを打ち抜き、パンチングなどにより同時に形成してもよい。また、型等を用いて鋳物や樹脂により切削等なしに形成してもよい。
【0020】
続いて、このようなトリガ機能付き固定部10を用いる免震装置100について図を参照しつつ説明する。本形態の免震装置100は、図2(a),(b)で示すように、複数のトリガ機能付き固定部10、水平方向免震装置20を備え、水平方向免震装置20の側面に複数のトリガ機能付き固定部10が設置固定される。さらに水平方向免震装置20は、上側免震架台21、下側免震架台22を備える。
【0021】
上側免震架台21は、サーバ等の免震対象1(図2中の一点鎖線による想像線部)が配置される台であり、詳しくは2個の台部211と、これら2個の台部211を連結する連結梁部212と、を備えている。中央には開口部213が設けらることとなり軽量化が図られている。
【0022】
下側免震架台22は、詳しくは2個の台部221と、これら2個の台部221を連結する連結梁部222と、を備えている。中央には開口部223が設けらることとなり軽量化が図られている。このような下側免震架台22の下面が地面(床面)に固定されており、下側免震架台22は上側免震架台21を水平方向に移動するように支持されている。上側免震架台21は例えば、図2で示すX方向とY方向に一定距離にわたり移動可能としても良いが、本形態では説明の便宜上のためX方向にのみ一定距離にわたり移動するものとして以下説明する。
【0023】
水平方向免震装置20の横側には複数のトリガ機能付き固定部10が固定される。図2(a)の上下両側でそれぞれ2個ずつ計4個配置される。
【0024】
続いてトリガ機能付き固定部10を水平方向免震装置20へ取り付けて免震装置100を構成する作業について説明する。図3(a)で示すように上側免震架台21および下側免震架台22のネジ孔に合わせるようにしてにそれぞれスペーサ30を配置する。なお、スペーサ30は必須構成ではなく、例えばスペーサ30を不要とするような側面形状を採用しても良い。そして、図3(b)で示すようにスペーサ30の表面にトリガ機能付き固定部10を配置し、図3(c)で示すように長孔11aや円孔13aに固定ねじ40を挿通させてからねじ締結により上側免震架台21と下側免震架台22との間にトリガ機能付き固定部10を連結固定する。そして、このような取り付けを複数箇所(本形態では4箇所)にわたり行う。
免震装置100はこのようなものである。
【0025】
このような免震装置100では、上側免震架台21に所定力以下の力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部10が上側免震架台21の移動を抑える。また、上側免震架台21とともにトリガ機能付き固定部10が多少移動したとしても長孔11aが移動して固定ねじ40によるトリガ機能付き固定部10の即座の拘束解除を回避しているため、やはり上側免震架台21の移動を抑える。そして、上側免震架台21に所定力を超える力が加わるときに、固定ねじ40が長孔11aの端で接触してトリガ機能付き固定部10の移動が固定ねじ40により拘束された状態となり、さらに力が加わって全てのトリガ機能付き固定部10の特に連結固定部12が破断し、拘束が完全に解除されて上側免震架台21を移動させて免震する。免震装置100による免震動作はこのようなものである。
【0026】
以上本形態のトリガ機能付き固定部10および免震装置100について説明した。なお、本形態以外にも各種の変形形態が可能である。例えば、先に説明したトリガ機能付き固定部10を、図4(a),(b)で示すような水平方向に4個の台座211を有する大型の水平方向免震装置20に取り付けて、大型の免震装置100としても良い。この場合、トリガ機能付き固定部10を適宜個数を増やして取り付けるようにしても良い。
【0027】
また、図2,図4にてX方向にのみ移動するものとして上下両側でそれぞれ2個ずつ計4個配置されるものであるとして説明したが、水平方向免震装置20がX方向およびY方向に移動するものとして上下両側でそれぞれ2個ずつ計4個、および左右両側でそれぞれ2個ずつ計4個、総計8個配置される構成としても良い。これにより、左右上下両方向で移動しないように拘束している。
【0028】
また、トリガ機能付き固定部10は第1取り付け部11を上側免震架台21に、また、第2取り付け部13を下側免震架台22に取り付けたが、上下逆転し、第1取り付け部11を下側免震架台22に、また、第2取り付け部13を上側免震架台21に取り付けても良い。または、これら変形形態を適宜組み合わせた形態であっても良い。これらのような免震装置100であっても良い。
【0029】
続いて、本発明を実施するための他の形態のトリガ機能付き固定部について図を参照しつつ以下に説明する。本形態のトリガ機能付き固定部50は、図5(a),(b)で示すように、第1取り付け部51、連結固定部52、第2取り付け部53、係止部54を備えている。
また、本形態の免震装置200は、図7(a),(b)で示すように、複数のトリガ機能付き固定部50、ストッパ金具60(図6参照)、水平方向免震装置20を備え、水平方向免震装置20の側面に複数のトリガ機能付き固定部50が設置固定される。
【0030】
続いて各構成について説明する。まず、トリガ機能付き固定部50の構成について説明する。
第1取り付け部51は、図5(a)で示すように、略長方形の部材であり、水平方向免震装置20の上側免震架台21(図7,図8参照)に固定される部分である。
連結固定部52は、第1取り付け部51と第2取り付け部53とを連結する部材であり、長方形の部材である。
第2取り付け部53は、略長方形の部材であり、水平方向免震装置20の下側免震架台22(図7,図8参照)に固定される部分である。
係止部54は、第1取り付け部51に対して側面から視て約90°折り曲げられた状態で連結して設けられている。
【0031】
このようなトリガ機能付き固定部50は、一枚の板体から一体に形成され、第1取り付け部51、連結固定部52、および、第2取り付け部53の順で一体に配列された状態となる。これらのような第1取り付け部51、連結固定部52、および、第2取り付け部53は、図5(b)で示すように、ともに板体側面から視たときの厚みtは同じ幅であって薄く形成されている。さらに、連結固定部52は、第1取り付け部51および第2取り付け部53の横側の幅aと比較して、正面から視たとき横側の幅bが幅薄に形成される。
【0032】
トリガ機能付き固定部50は、図5(a)のように正面から視ると、その正面の形状が略工字状の形状を有している。また、トリガ機能付き固定部50は、図5(b)のように側面から視ると、係止部54が約90°で折り曲げられているため、その側面の形状が略L状の形状を有している。
【0033】
このような形状のトリガ機能付き固定部50のような製造方法では、適宜の大きさに形成された長方形の一枚板を準備し、この長方形状の一枚板に連結固定部52の両サイドの側面部材を切り取って切り欠き部52aを形成すれば、係止部54を含む第1取り付け部51、連結固定部52、第2取り付け部53が一体に形成されることとなる。そして係止部54を含む第1取り付け部51を所定の位置で折り曲げることにより第1取り付け部51と一体に連結する係止部54を形成して完成する。
【0034】
ストッパ金具60は、図6(a)に示すように中央に凹部61が形成されて平面がハット形の形状を呈している。また、図6(b)に示すように両側に固定ねじ40を挿通させてねじ止めするための孔部62が設けられている。ストッパ金具60は、図8(a)に示すように、上側免震架台21および下側免震架台22にそれぞれ2個の固定ねじ40により固定される。
【0035】
続いて、このようなトリガ機能付き固定部50を用いる免震装置200について図を参照しつつ説明する。本形態の免震装置200は、図7(a),(b)で示すように、複数のトリガ機能付き固定部50、水平方向免震装置20、ストッパ金具60を備え、水平方向免震装置20の側面に複数のトリガ機能付き固定部50が設置固定される。さらに水平方向免震装置20は、上側免震架台21、下側免震架台22を備える。
【0036】
上側免震架台21は、サーバ等の免震対象(図示せず)が配置される台であり、詳しくは2個の台部211と、これら2個の台部211を連結する連結梁部212と、を備えている。中央には開口部213が設けらることとなり軽量化が図られている。
【0037】
下側免震架台22は、詳しくは2個の台部221と、これら2個の台部221を連結する連結梁部222と、を備えている。中央には開口部223が設けらることとなり軽量化が図られている。このような下側免震架台22の下面が地面(床面)に固定されており、下側免震架台22は上側免震架台21を水平方向に移動するように支持されている。上側免震架台21は例えば、図7で示すX方向とY方向に一定距離にわたり移動可能としても良いが、本形態では説明の便宜上のためX方向にのみ一定距離にわたり移動するものとして以下説明する。
【0038】
水平方向免震装置20の横側には複数のトリガ機能付き固定部50が固定される。図7(a)の上下両側でそれぞれ1個ずつ計2個配置される。また、中央を交差するように配置している。
【0039】
続いてトリガ機能付き固定部50を水平方向免震装置20へ取り付けて免震装置200を構成する作業について説明する。図8(a)で示すように上側免震架台21および下側免震架台22にそれぞれストッパ金具60が上下に配置されているものとする。この場合、上側免震架台21と凹部61とで上側の孔部が形成され、また、下側免震架台22と凹部61とで下側の孔部が形成されている。そして、図8(b)で示すようにトリガ機能付き固定部50を上下2個の孔部内に配置し、係止部54を上側免震架台21に当接させ、上側免震架台21と下側免震架台22との間にトリガ機能付き固定部50を固定する。この際、上側の孔部に第1取り付け部51が、また、下側の孔部に第2取り付け部53が当接する。締結固定部52はいずれにも当接しない。そして、このような取り付けを複数箇所(本形態では2箇所)にわたり行う。
免震装置200はこのようなものである。
【0040】
このような免震装置200では、上側免震架台21に所定力以下の力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部50が上側免震架台21の移動を抑える。そして、上側免震架台21に所定力を超える力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部50の特に連結固定部52が破断し、上側免震架台21を移動させて免震する。免震装置200による免震動作はこのようなものである。
【0041】
以上本形態のトリガ機能付き固定部50および免震装置200について説明した。なお、本形態以外にも各種の変形形態が可能である。例えば、先に説明したトリガ機能付き固定部50を、図9(a),(b)で示すような水平方向に3個の台座211を有する大型の水平方向免震装置20に取り付けて、大型の免震装置200としても良い。この場合、図9で示すように、トリガ機能付き固定部50を上下両側でそれぞれ2個ずつ計4個配置されるというように適宜個数を増やして取り付けるようにしても良い。
【0042】
また、図7,図9にてX方向にのみ移動するものとして上下両側でそれぞれ1個ずつ計2個配置されるものであるとして説明したが、X方向およびY方向に移動するものとして上下両側でそれぞれ1個ずつ計2個、および左右両側でそれぞれ1個ずつ計2個配置される構成としても良い。これにより、左右上下両方向で移動しないように拘束している。このような免震装置200であっても良い。
【0043】
なお、上記形態ではトリガ機能付き固定部50を長方形の連結固定部であるものとして説明した。しかしながら、例えば、図10(a),(b)で示すトリガ機能付き固定部70のように、本体部71の一方の側に切れ込み部73を偏らせた状態で設けて配置するようにしても良い。
また、図11(a),(b)で示すトリガ機能付き固定部80のように、連結固定部がない場合でも比較的破断しやすい材質にてトリガ機能付き固定部80を形成すれば、本体部81が破断して上記のようなトリガ機能を発揮できる。このような構成としても良い。
【0044】
以上、本発明のトリガ機能付き固定部10,50および免震装置100,200について説明した。本発明によるトリガ機能付き固定部10,50は側面が線状または略L字状であるため、先に説明したように側面配置でも突出するようなことがなくなり、円形の免震装置への中央への配置はもちろんのこと、本発明の側面のように、各種位置に配置することができる。
【0045】
また、本発明のトリガ機能付き固定部10,50を用いる免震装置100,200は側面配置構造であるため取り付けは極めて容易になり、組み立てやすくすることができる。
【0046】
さらにまた、本発明のトリガ機能付き固定部10,50は適切な硬度を有する金属や合成樹脂の板体を用いて切り出し加工や曲げ加工程度で製作できるため、製作も容易にすることができる。
【0047】
さらにまた、トリガ機能付き固定部10,50は材質と取り付け部の幅aに対する連結固定部の幅bにより破断する所定力が設計できるため、設計が容易になる。また、破断する所定力の大小は、トリガ機能付き固定部10,50の個数を変更することでも可能であり、免震装置100,200としての設計も容易である。
【0048】
さらにまた、トリガ機能付き固定部10,50は小形構造であるため、トリガ機構としても小型化が可能であり、その結果免震装置100,200の小型化も可能になる。
【0049】
総じて、簡単な機構でありかつ設計通りの力で破断するようにして、使い勝手のよいトリガ機能付き固定部を提供することができる。
また、このトリガ機能付き固定部を用いて製造容易にし、かつ設計通りの力で免震開始するようにして免震性能を向上させた免震装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、特に構造の簡素化・部品点数の低減等が相俟って大幅なコスト低減を必要とする実現するトリガ機能付き固定部や免震装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:免震対象
100:免震装置
10:トリガ機能付き固定部
11:第1取り付け部
11a:長孔
12:連結固定部
12a:切り欠き部
13:第2取り付け部
13a:円孔
20:水平方向免震装置
21:上側免震架台
211:台座
212:連結梁部
213:開口部
22:下側免震架台
221:台座
222:連結梁部
223:開口部
30:スペーサ
40:固定ねじ
50:トリガ機能付き固定部
51:第1取り付け部
52:連結固定部
52a:切り欠き部
53:第2取り付け部
54:係止部
60:ストッパ金具
61:凹部
62:孔部
70:トリガ機能付き固定部
71:本体部
72:係止部
73:切れ込み部
80:トリガ機能付き固定部
81:本体部
82:係止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置の上側免震架台に固定される第1取り付け部と、
前記第1取り付け部と一体に連結される連結固定部と、
前記連結固定部と一体に連結されており、免震装置の下側免震架台に固定される第2取り付け部と、
を有し、前記第1取り付け部、前記連結固定部、および、前記第2取り付け部の順に配列された状態で一枚の板体から一体に形成されるトリガ機能付き固定部であって、
前記第1取り付け部、前記連結固定部、および、前記第2取り付け部は、板体側面から視たときの厚みが薄く、かつ、
前記連結固定部は、板体正面から視たときの幅が第1取り付け部および第2取り付け部の幅よりも薄く形成される、
ことを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項2】
請求項1に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部または前記第2取り付け部は、少なくとも一方に固定ねじが挿通される長孔が形成され、かつ他方に固定ねじが挿通される円孔が形成されることを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項3】
請求項2に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記トリガ機能付き固定部は、その正面が略工字状の形状を有し、かつその側面が線状の形状を有することを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項4】
請求項1に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部または前記第2取り付け部は、免震装置の上側免震架台および下側免震架台にそれぞれ設けられる上側と下側の孔部にトリガ機能付き固定部が挿通されたときに両方の孔部内に位置することを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項5】
請求項4に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部に固定され、前記上側免震架台に係止される係止部を備えることを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記トリガ機能付き固定部は、その正面が略工字状の形状を有し、かつその側面が略L字状の形状を有することを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項7】
上側免震架台と、
下面が地面または床面に固定されており、上側免震架台を水平方向に移動するように支持する下側免震架台と、
前記上側免震架台と前記下側免震架台とをこれらの側面で連結固定する請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の複数のトリガ機能付き固定部と、
を有し、所定力以下の力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部が上側免震架台の移動を抑え、また、所定力を超える力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部の連結固定部が破断して、上側免震架台を移動させて免震する、
ことを特徴とする免震装置。
【請求項1】
免震装置の上側免震架台に固定される第1取り付け部と、
前記第1取り付け部と一体に連結される連結固定部と、
前記連結固定部と一体に連結されており、免震装置の下側免震架台に固定される第2取り付け部と、
を有し、前記第1取り付け部、前記連結固定部、および、前記第2取り付け部の順に配列された状態で一枚の板体から一体に形成されるトリガ機能付き固定部であって、
前記第1取り付け部、前記連結固定部、および、前記第2取り付け部は、板体側面から視たときの厚みが薄く、かつ、
前記連結固定部は、板体正面から視たときの幅が第1取り付け部および第2取り付け部の幅よりも薄く形成される、
ことを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項2】
請求項1に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部または前記第2取り付け部は、少なくとも一方に固定ねじが挿通される長孔が形成され、かつ他方に固定ねじが挿通される円孔が形成されることを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項3】
請求項2に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記トリガ機能付き固定部は、その正面が略工字状の形状を有し、かつその側面が線状の形状を有することを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項4】
請求項1に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部または前記第2取り付け部は、免震装置の上側免震架台および下側免震架台にそれぞれ設けられる上側と下側の孔部にトリガ機能付き固定部が挿通されたときに両方の孔部内に位置することを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項5】
請求項4に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記第1取り付け部に固定され、前記上側免震架台に係止される係止部を備えることを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のトリガ機能付き固定部において、
前記トリガ機能付き固定部は、その正面が略工字状の形状を有し、かつその側面が略L字状の形状を有することを特徴とするトリガ機能付き固定部。
【請求項7】
上側免震架台と、
下面が地面または床面に固定されており、上側免震架台を水平方向に移動するように支持する下側免震架台と、
前記上側免震架台と前記下側免震架台とをこれらの側面で連結固定する請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の複数のトリガ機能付き固定部と、
を有し、所定力以下の力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部が上側免震架台の移動を抑え、また、所定力を超える力が加わるときに複数のトリガ機能付き固定部の連結固定部が破断して、上側免震架台を移動させて免震する、
ことを特徴とする免震装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−38619(P2011−38619A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188828(P2009−188828)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000145954)株式会社昭電 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000145954)株式会社昭電 (22)
【Fターム(参考)】
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