説明

トリレオウイルスにより引き起こされる神経学的症状の治療および予防方法ならびに新規付随的特徴

本発明の実施形態は全般的には、トリレオウイルスにより引き起こされる神経学的症状の新規治療および/または予防方法、腸レオウイルス株(ERS)ならびに新規付随的特徴に関する。他の実施形態は全般的には、神経学的症状の治療および/または予防のためのERSを含んでなる免疫原性組成物またはワクチンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トリレオウイルスにより引き起こされる神経学的症状の治療および予防方法ならびに新規付随的特徴に関する。
【背景技術】
【0002】
レオウイルス感染は世界中で家禽において一般的に見られ、ウイルス性関節炎/腱滑膜炎、吸収不良症候群(MAS)、心膜炎、心筋炎および免疫抑制を含む多種多様な臨床徴候を示すニワトリから分離されている[McNultyら,“Virus infection of birds,”Reovirus,Chapter 13,ppl81−193(1993)]。
【0003】
特にブロイラー品種におけるウイルス性関節炎/腱滑膜炎は、レオウイルス感染に起因する最も重要な疾患である[Nibertら, Fields Virology 4:p.1681(2001)]。それは、ニワトリの飛節および脚腱に主に限局した、慢性炎症性病変を伴う持続的ウイルス感染である。該病変は滑液構造体に限局している[Menendezら,Avian Dis.19:112−117(1975);Ellisら,Avian Dis.27:644−651(1983);Kibengeら,Avian Pathol.14:87−98(1985)];[Nibertら,Fields Virology 4:p.1681−1682(2001)]。
【0004】
レオウイルス感染の臨床徴候/症状は、いくつかのグループにより吸収不良症候群(MAS)に関連づけられている[Kouwenhovenら,Avian Pathol.7:183−187(1978);Pageら,Avian Dis.26:618−624(1982);Hieronymusら,Avian Dis.27:255−260(1983);Goodwinら,Avian Dis.37:451−458(1993)]。該症候群は、不均一な成長、不完全な羽毛および未消化の食物と水様性含有物とを伴う下痢を伴った体重増加の減少により特徴づけられる。病的変化は、ほとんどの場合、前胃腸炎、膵炎および肝炎を含む。MASは消化不良もしくは吸収不良のいずれか又はそれらの両方によって引き起こされうる。見出される病変は、不十分な消化液分泌による消化不良、または不十分な吸収能による吸収不良を引き起こしうる。しかし、体重増加の減少にばらつきがあることからも分かるとおり、MASから分離されたレオウイルスの病原性は様々である[Nibertら,Fields Virology 4:p.1681−1682(2001);Pageら,Avian Dis.26:618−624(1982);McNultyら,Avian Pathol.13:429−439(1984);Decaessteckerら,Avian Pathol.15:769−782(1986);KibengeおよびDhillon,Avian Dis.31:39−42(1987);Kouwenhovenら,Avian Pathol.17:879−892(1988);Montgomeryら,Avian Dis.41:80−92(1997) Songsermら,Avian Dis.46:87−94(2002)]。現在のところ、神経学的症状を引き起こすトリレオウイルスは先行技術においては開示されていない。
【0005】
先行技術において、公知トリレオウイルスに対する幾つかのワクチンが存在する。生ワクチンの具体例には、株S1133および2177が含まれる。米国における生ワクチンは、腱滑膜炎の野外症例からvan der Heideにより分離され特徴づけられた、種々の継代レベルのトリレオウイルス株S1133から開発された。株S1133は漿尿膜(CAM)内で37℃で連続的に235回、ついでニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)内で32℃で65回培養された。さらに135回の継代がCEF内で37℃で行われた[van der Heideら,Avian Dis.,27:698−706(1983)]。株2177はRosenbergerによりトリレオウイルスの野外症例から分離され特徴づけられた[米国特許第5,525,342号]。株2177は、組織サンプルを孵化卵内に接種し卵黄流体を集めることにより、レオウイルス疾患を示すニワトリから分離された。ついで、この卵黄流体はCEF内に接種され、細胞病理が観察されるまで14回継代され、その時点で該ウイルスがプラーク精製された。ついで、ウイルスのストックを得るために、この卵黄流体は孵化卵内での増殖に付された。該ストックは非病原性であることが判明し、株2177と命名された。現在のところ、馴化無しのVero細胞上で直接、レオウイルスを増殖させる/培養することは不可能である[Nibertら,Fields Virology 4:pp.1681−1682(2001)]。最も一般的な方法は孵化鶏卵内での増殖である。先行技術においては、哺乳類細胞内で増殖しうるトリオルトレオウイルス(レオウイルス)のいくつかの特徴を有する哺乳類レオウイルスである、オーストラリアオオコウモリ由来のオルトレオウイルスが開示されている[Nibertら,Fields Virology 4:p.1682(2001)]。しかし、馴化無しで哺乳類細胞内で増殖しうるトリレオウイルスは先行技術においては開示されていない[Nibertら,Fields Virology 4:p.1682(2001)]。また、先行技術は、トリレオウイルスにより引き起こされる家禽における神経学的症状の治療および/または予防方法を開示していない。したがって、当技術分野においては、トリレオウイルスにより引き起こされる神経学的症状の治療および/予防方法が求められている。
【0006】
最近、van Loonら[Veterinary Quarterly,23:129−133(2001)]は、腸レオウイルス株(ERS)と称される新規クラスのレオウイルスの単離および同定を記載した。ERSは、高い致死性を示すものとしてブロイラーから単離された。それらのブロイラーは、レオウイルス感染に対して十分にワクチン接種された親集団に由来するものであった。ERSはレオウイルスの新規血清型であることが明らかとなった。なぜなら、該ウイルスは、プラーク減少試験を用いた場合に公知レオウイルスにより中和され得なかったからである[van Loonら,Veterinary Quarterly,23:129−133(2001)]。さらに、モノクローナル抗体のパネルでのERSの特徴づけは、これらの株が、文献に既に記載されているレオウイルス株とは異なるパネルパターンを示すことを明らかにした[Hieronymusら,Avian Dis.27:246−254(1983);Johnson,Avian Dis.16:1067−1072(1972);Olsonら,Am J Vet Res.18:735−739(1957);Rosenbergerら,Avian Dis.33:535−544(1989);van der Heideら,Avian Dis.18:289−296(1974)]。さらに、当技術分野で受け入れられている方法でプラーク減少アッセイを行うことにより、これがレオウイルスの新規抗原クラスであると同定された(米国特許出願第号)。プラーク減少アッセイの説明はNersessianらによる文献(J.Vet.Res.N50,1989,pp.1475−1480)に記載されている。この文献は、トリレオウイルスの異種免疫特性を証明しており、レオウイルス分離体間の抗原関係(類似性および相違を含むが、これらに限定されるものではない)を決定し特徴づけるためのプラーク減少アッセイの使用の正当性を立証している。野外のレオウイルスに関するスクリーニングにおいて、オランダ、ベルギー、アイルランド、英国、スペイン、ドイツ、イタリア、米国、アルゼンチン、アラブ首長国連邦、南アフリカ、フィリピンおよびインドネシアにもERS型株が存在することが認められた。これらのERS型株は、通常、MASを有する鳥類から分離された。特定病原体除去(SPF)ニワトリにおけるERSの病原性および散在は、ERSが高い致死性、腱滑膜炎(未公開の観察)およびMASを誘発しうることを証明した[van Loonら,Veterinary Quarterly,23:129−133(2001)]。レオウイルスに対する母体由来抗体を有する商業的ブロイラーにおいても、van Loonら[Veterinary Quarterly,23:129−133(2001)]は、1日齢または7日齢に接種されたブロイラーにおいてそれぞれ35%および25%の成長遅延を示した。この新規クラスの更なる研究および評価は、他の驚くべき特徴を提供している。
【発明の開示】
【0007】
(発明の概要)
全般的には、本発明の実施形態は、神経学的症状を引き起こすトリレオウイルスのクラス、ならびにトリレオウイルスのクラスにより引き起こされる神経学的症状の治療および/または予防方法に関する。
【0008】
1つの実施形態において、トリ腸レオウイルス株(Enteric Reovirus Strain)(ERS)と称されるレオウイルスのクラスが神経学的症状を引き起こすことが見出された。そのような神経学的症状には、頚部のねじれ、振戦などが含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。さらに、1つの実施形態においては、トリレオウイルスにより引き起こされる神経学的症状の治療および/または予防方法が、生、弱毒化または不活化形態のERSトリレオウイルスと担体または希釈剤とを含む免疫原性組成物またはワクチンの有効量を投与することを含むことが見出された。
【0009】
本発明の方法の1つの実施形態においては、投与する免疫原性組成物またはワクチンは、米国特許出願第09/493,484号(以下、‘484出願と称する)のウイルスのクラスの実施形態の特徴を有するものとして特徴づけられるレオウイルスの抗原クラスのレオウイルスを含む。‘484出願は、公開されている2000年1月25日付け出願の欧州特許出願番号00200256.6からの優先権を主張している。該欧州特許出願は公開番号EP 1 024 189 A1として2000年8月2日付けで公開された。
【0010】
レオウイルスのそのようなクラスは、ECACC(英国ソールズベリー(Salisbury,UK))に受託番号99011475でサンプルが寄託されている株ERSにより形成されるプラークをプラーク減少アッセイにおいて少なくとも75%減少させる抗血清を動物において誘導しうるレオウイルスのクラスに属するものとして特徴づけられ、そのようなクラスは更に、トリレオウイルス分離体(好ましくは原型レオウイルス株1133)に対して産生させたポリクローナル抗血清とのIFTにおける反応性により、ならびにモノクローナル抗体INT 13−06、INT 14−11および15−01 INT(それらのハイブリドーマはそれぞれ受託番号99011472、99011473および99011474でECACCに寄託されている)とのIFTにおける反応性の非存在により特徴づけられる。
【0011】
この概要のいかなる点も、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本発明の範囲を更に詳しく理解するためには、以下の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲に注目すべきである。
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書中で用いる「相対的(に)非病原性」なる語は、ウイルスの病原性が有意に減少していて、該ウイルスの生株で免疫された家禽の約20%以下が該ウイルスに侵されることを意味する。本明細書中で用いる「ニワトリ」なる語は、ブロイラー、繁殖株、産卵株などを含むすべてのニワトリを意味する。「家禽」なる語はニワトリ、シチメンチョウ、水鳥、ホロホロチョウ(guinea)、ウズラ、ハト、ダチョウなどを含むが、これらに限定されるものではない。本明細書中で用いる「天然」なる語は、人的介入が存在しないことを意味する。しかし、「天然に非病原性」な株は、種々の実施形態においては、ウイルスストックなどを調製するために継代されうると意図される。さらに、該ウイルスが、継代の前に、定義されているとおりの「相対的(に)非病原性」である場合には、そのような継代により、ウイルスが「天然に非病原性」でないとみなされるようになることはないと意図される。
【0013】
本明細書中で用いる「ワクチン株」なる語は、免疫原性組成物またはワクチンにおいて使用するのに適したウイルス株を意味する。「ワクチン株」には、非病原性株または相対的に非病原性の株、不活化株および/または弱毒化株が含まれうるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0014】
2000年1月28日付けの‘481出願は、トリレオウイルスの新規抗原クラスを初めて明らかにした。‘481出願は、公開されている2000年1月25日付け出願の欧州特許出願番号00200256.6からの優先権を主張している。該欧州特許出願は公開番号EP 1 024 189 A1として2000年8月2日付けで公開された。
【0015】
本出願における新規クラスはトリレオウイルスERS(腸レオウイルス株)として特徴づけられた。該クラスは腸障害、レオウイルス関連疾患(例えば、過度に液状の便および/または消化不良の食物)を引き起こすことが判明したため、該クラスはERSとして同定された。本発明において、驚くべきことに、トリレオウイルスERSであるレオウイルスクラスが神経学的症状を引き起こすことが見出された。神経学的症状には、頚部のねじれ(斜頚(torticollosis)とも称される)および振戦が含まれるが、これらに限定されるものではなく、これらのすべてが要求されるわけではない。
【0016】
したがって、本発明の実施形態は全般的には、神経学的症状を引き起こすトリレオウイルスのクラス、ならびにトリレオウイルスにより引き起こされる神経学的症状の治療方法に関する。1つの実施形態においては、本発明の方法は、神経学的症状を引き起こすトリレオウイルスの生、弱毒化または不活化形態と担体または希釈剤とを含む免疫原性組成物またはワクチンの有効量を投与することを含む。したがって、更なる実施形態は、欧州出願EP1 024 189 A1のウイルスのクラスの特徴を有するレオウイルスの抗原クラスのレオウイルスを含む免疫原性組成物またはワクチンに関する。
【0017】
レオウイルスのそのようなクラスは、ECACC,Salisbury,UKに受託番号99011475でサンプルが寄託されている株ERSにより形成されるプラークをプラーク減少アッセイにおいて少なくとも75%減少させる抗血清を動物において誘導しうるレオウイルスのクラスに属するものとして特徴づけられ、および/または、そのようなクラスは更に、トリレオウイルス分離体(好ましくは原型レオウイルス株1133)に対して産生させたポリクローナル抗血清とのIFTにおける反応性により、ならびにモノクローナル抗体INT 13−06、INT 14−11および15−01 INT(それらのハイブリドーマはそれぞれ受託番号99011472、99011473および99011474でECACCに寄託されている)とのIFTにおける反応性の非存在により特徴づけられる。
【0018】
本発明の他のレオウイルス、および本発明のワクチン/方法において使用するための他のレオウイルスは、株ERSにより形成されるプラークをプラーク減少アッセイにおいて少なくとも80%減少させる抗血清を動物において誘導しうるレオウイルスのクラスに属する免疫原性組成物またはワクチンのレオウイルスとして特徴づけられる。本発明の他のレオウイルス、および本発明のワクチン/方法において使用するための他のレオウイルスは、株ERSにより形成されるプラークをプラーク減少アッセイにおいて少なくとも90%減少させる抗血清を動物において誘導しうるレオウイルスのクラスに属する免疫原性組成物またはワクチンのレオウイルスとして特徴づけられる。
【0019】
本発明の方法における使用に適したレオウイルスを代表する典型的で非限定的な株には、ECACC,Salisbury,UKに受託番号99011475で寄託されている株ERS(分離体1)、2002年10月1日にATCC,Manassas,VA 20108,U.S.A.に受託番号pta−4735で寄託されている株ERS 1037、2002年10月30日にATCC,Manassas,VA 20108,U.S.A.に受託番号pta−4782として寄託されている株ERS 060E、および2002年10月30日にATCC,Manassas,VA 20108,U.S.A.に受託番号PTA−4783で寄託されている株ERS 074が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明の株、および本発明の方法のための免疫原性組成物またはワクチンにおいて使用する株は、当技術分野において一般的な方法に従い家禽から分離することが可能である。ニワトリの場合には、レオウイルスの株は、レオウイルス関連疾患を有するニワトリから分離される。ウイルス分離のための方法は当技術分野において一般的である。分離においては、該ウイルスは、レオウイルス関連疾患の徴候を示すブロイラーから集めた感染腱から分離した。しかし、本発明の方法は、トリのどの部分から該ウイルスが分離されたかによっては限定されない。
【0021】
実際のところ、驚くべきことに、本発明のトリレオウイルスは、トリレオウイルスにより誘発される神経学的症状に罹患した家禽の神経系、例えば脳および脊髄から分離されうることが見出された。これまでには、トリレオウイルスは、脳、脊髄、および/または神経系に関連した他の構造体からは分離されていない。さらに、神経学的症状を引き起こす株のみが、脳、脊髄、および/または神経系に関連した他の構造体から分離されうると考えられる。実際のところ、神経学的症状を引き起こさない先行技術のレオウイルスは、脳、脊髄、および/または神経系に関連した他の構造体からは分離され得ないことが、実験の部において示されている。
【0022】
したがって、本発明は、家禽の神経系から分離されうるトリレオウイルスのクラスを開示する。種々の実施形態においては、そのように特徴づけられるトリレオウイルスのクラスは、脳、脊髄、および/または神経系に関連した他の構造体から分離されうる。
【0023】
種々の実施形態においては、本発明の方法において使用する免疫原性組成物またはワクチンは、単独で又は家禽に対する他のウイルス(例えば、マレック病ウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、トリ脳脊髄炎ウイルス、鶏痘ウイルス、ニワトリ貧血ウイルスなど)ワクチンと組合せて投与することが可能である。他の実施形態は細菌抗原などを同時に含有することが可能である。さらに、本発明の方法において使用する好ましい免疫原性組成物またはワクチンとしては、若齢(例えば、1日齢)で及び/又は卵内に投与されうるワクチンが挙げられる。
【0024】
本発明の方法における免疫原性組成物またはワクチンの投与は、トリレオウイルスの投与に一般に用いられる任意の経路によるものでありうる。好ましい投与経路には、大量適用経路、例えば飲料水(経口)および噴霧が含まれる。しかし、投与の他の具体例には、注射などが含まれうる。
【0025】
飲料水経路による投与においては、免疫原性組成物またはワクチンを含有する水を動物の前に配置する前の約2〜4時間にわたり動物に水を与えないのが一般的である。均等にワクチンが分配されうるよう全てのトリが均等に水を飲めるのに十分な給水空間があることが重要である。該ワクチンは、新鮮な飲料水中に有効量(すなわち、免疫原性組成物またはワクチンに関して十分な用量を各トリに与える算出濃度)で適用される。
【0026】
種々の実施形態においては、該飲料水中の少量の塩素、鉄、亜鉛または銅イオンの存在による生存可能ワクチンウイルスの減少を妨げるために、および/または、該飲料水の乾燥による溶存塩の濃度の増加による生ワクチンウイルスの不活性化を妨げるために、少量のタンパク質保護物質、例えば脱脂乳、脱脂粉乳またはゼラチンを水相に加えることが可能である。
【0027】
噴霧法を用いる種々の実施形態においては、一般的な適用方法には、粗(coarse)噴霧適用およびエアゾール投与が含まれるが、これらに限定されるものではない。粗噴霧法においては、粒子は、通常、10〜100ミクロンの範囲の初期滴サイズを有し、エアゾール投与法においては、滴は、通常、<1〜50ミクロンの範囲である。しかし、本発明の種々の実施形態においては、任意の滴サイズを用いることが可能である。
【0028】
小さな粒子の発生のための通常の噴霧装置およびエアゾール発生装置、例えば、背負噴霧、孵化場噴霧および霧吹(atomist)噴霧のための商業的に入手可能な噴霧発生装置を使用するのが、当産業において一般的である。通常の噴霧/エアゾールワクチン接種および飲料水ワクチン接種に関する詳細は、the Gezondheidsdienst voor Pluimvee, Doorn, The Netherlandsにより発行された“Compendium,administration of poultry vaccines”,van Eckら,VI−VII,1988に記載されている。
【0029】
本発明の方法の他の実施形態においては、点眼および/または嘴の浸漬および/または当技術分野で一般的な任意の他の方法によりワクチンの投与を行うことが可能である。
【0030】
本発明の他の実施形態においては、不活化トリレオウイルスの投与を行うことが可能である。不活化形態は、長期間にわたって防御抗体が高レベルで得られるという利点を潜在的にもたらす。この特性は、場合によっては、不活化ワクチンを畜種ワクチン接種に特に良く適したものとする。
【0031】
当技術分野において公知のとおり、増殖後に集めたウイルスの不活化における目的はウイルスの複製を排除することである。一般に、これは、化学的または物理的手段により達成することができる。化学的不活化は、例えば酵素、ホルムアルデヒド、βプロピオラクトン、エチレン−イミンまたはそれらの誘導体でウイルスを処理することにより行うことができる。ついで、必要に応じて、該不活化物質を中和する。例えば、ホルムアルデヒドで不活化された物質をチオスルファートで中和することが可能である。物理的不活化は、好ましくは、ウイルスを高エネルギー放射、例えばUV光またはγ線に付すことにより行うことができる。所望により、処理後にpHを約7の値に調節することが可能である。
【0032】
不活化ワクチンは、非経口的、例えば筋肉内、皮下または当技術分野で一般的な任意の他の方法で投与することが可能である。
【0033】
本発明はその特定の実施形態に関して説明されているが、さらに修飾が施されうると理解され、添付の特許請求の範囲は、一般には本発明の原則に従う本発明の任意の変更、使用または応用を包含し、また、本発明に関連した技術分野における公知または通常の実施の範囲内に含まれる及び現在存在するか後に生じるかにかかわらず前記で説明されている本質的特徴に適用されうる本開示からのそのような逸脱を含む本発明の任意の変更、用途または応用を包含すると意図される。さらに、本発明の実施形態は特定の寸法(dimensional)特性および/または測定値に関して説明されているが、該実施形態は、本発明の原理から逸脱することなく、異なる寸法特性および/または測定値も許容されうると理解され、添付の特許請求の範囲はそのような相違を包含すると意図される。さらに、本明細書中に挙げてあるすべての特許、特許出願、文献および他の刊行物を、参照により本明細書に組み入れることとする。
【0034】
本発明の種々の実施形態を更に理解するためには、以下の実施例を参照すべきである。
【0035】
実施例:
米国におけるニワトリの集団からのサンプルを採取し、株に分離した。これらの株のうちの或る株をERS 060E、ERS 074およびERS 1037として同定した。これらのニワトリが選択された集団はERSの典型的な症状(例えば、腸炎が挙げられるが、これに限定されるものではない)を示していた。あるニワトリからの血清をBoxmeer,The Netherlandsに送って、EP 1 024 189 Alにおいて同定された抗原クラスに該ニワトリが属していたことを確認するためのパネルパターンを行った。すべての血清は、モノクローナル抗体INT 13−06、INT 14−11および15−01 INTとのIFTにおける反応性が存在しないことを示した。
【0036】
この研究を含む結果に基づき、株ERS 1037、ERS 060EおよびERS 074は、EP 1 024 189 A1においてERSとして同定されたレオウイルスの新規抗原クラスに属することが確認された。
【0037】
株ERS、ERS 060EおよびERS 074の更なる研究は、レオウイルスの新規抗原クラスが感染家禽において神経学的症状を引き起こすことを示した。そのような神経学的症状には、頚部のねじれ、振戦などが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの観察は、レオウイルスの新規抗原クラスERSによる感染の後、レオウイルスに対する母体由来抗体を有する市販ブロイラーおよびSPFニワトリの両方において行った。
【0038】
1日齢のニワトリの足肉趾(foot pad)経路および/または皮下に接種を行った1つの実施例においては、生存ニワトリは振戦および頚部のねじれのような神経症状を現した。これらの症状は接種後に認められうる。
【0039】
野外において、神経学的症状を示すニワトリからERSを分離した。これらの神経学的症状は、該分離ERS株を使用する実験条件下で再現することができた。
【実施例1】
【0040】
進行中の研究は、神経学的症状を引き起こすトリレオウイルスの株が脳および/または脊髄から分離されうることを示した。
【0041】
1つの実施例においては、以下の方法を用いて、ERS 074をSPFニワトリの脳および脊髄から再分離した。
1.神経学的症状を示すニワトリを屍検し、頭部および頚部を集め凍結した。ニワトリが、ねじれた頚部および/または振戦を示すことが観察された場合に、該ニワトリは神経学的症状を示していると判定した。
2.頭部および頚部を解凍した。
3.脳および脊髄上部を無菌的にスワブで拭き取った。
4.スワブをTPB内に配置し、ボルテックスした。
5.サンプルを3回、凍結/解凍した。
6.サンプルを約3000rpmで10分間遠心分離した。
7.上清を取り出し、0.45μmおよび0.2μmシリンジフィルターで濾過した。
8.0.1mlの濾過物質を滴CAM経路により10日の卵内に接種した。
9.卵を毎日明かりに透かして、卵が死んでいないかどうか観察した。
10.接種の6日後に、すべての卵を開いた。
11.感染胚から肝臓および漿尿膜を集めた。
12.Waringブレンダーを使用して、肝臓および漿尿膜をホモジナイズした。
13.ホモジネートを3回、凍結・解凍した。
14.トリレオウイルス抗原を検出するためにAGP(寒天ゲル沈降素試験(Agar Gel Precipitin Test))を用いた。AGP試験はトリレオウイルス抗原に関して陽性であった。
【実施例2】
【0042】
(パネルパターン):
精製トリレオウイルス株1133をウサギ(1〜1.5kg)に感染させることにより、ポリクローナル抗血清を調製した。初回注射の28日および84日後、ブースター注射を行った。最後の注射の14日後、血液を集め、血清を単離した。
【0043】
モノクローナル抗体によって異なるレオウイルスが特徴づけられた。1つの実施形態においては、初代CEL細胞を96ウェルポリスチレンマイクロタイタープレート上で増殖させた。未感染細胞を対照として使用した。37℃、5% COで2〜4日間のインキュベーションの後、感染した単層を冷96% エタノールで固定した。このアルコールを廃棄し、該プレートを洗浄バッファーで洗浄し、PBSで1:50または1:200に希釈された100μlの異なるハイブリドーマ細胞培養上清、あるいは1:50に希釈された100μlのウサギポリクローナル血清(ウサギ68A)を各ウェルに加えた。該プレートを37℃で60〜90分間インキュベートし、洗浄バッファーで2回洗浄し、1:100希釈蛍光イソチオシアナート標識ウサギ抗マウスまたは1:100希釈イソチオシアナート標識ヤギ抗ウサギ血清と反応させた。ついで該プレートを洗浄し、グリセロール/PBS溶液(1:1)で固定した。蛍光顕微鏡で蛍光の存在を観察した。
【0044】
この実験で使用した抗血清パネルは、原型トリレオウイルス株1133に対して産生させた以下のポリクローナル抗血清およびモノクローナル抗体よりなるものであった。
ウサギ68A ウサギポリクローナル抗血清
モノクローナル抗体154 Vakhariaら 1996(前掲)
モノクローナル抗体14−67 Intervet International B.V.
モノクローナル抗体INT 13−06 ECACC受託番号99011472
モノクローナル抗体INT 14−11 ECACC受託番号99011473
モノクローナル抗体15−01 INT ECACC受託番号99011474
該パネルパターンは以下のとおりであった。
【0045】
【表1】

該パネルパターンから理解されうるとおり、株ERS 1037、ERS 060EおよびERS 074は、株ERS(分離体1)に匹敵するパターンを有するが、株S1133、2408、1733および2177とは異なっている。
【実施例3】
【0046】
以下の実験は、種々の同定株で行った研究を示す。
【0047】
実験3a
実験計画
20羽の1日齢のSPFニワトリに0.5mlのプラーク精製株ERS(分離体1)(6.09 log10TCID50/トリ)を経口接種した。該ニワトリを臨床徴候に関して毎日14日間にわたり観察した。14日齢の時点で、すべてのニワトリを屠殺した。
【0048】
結果
該ニワトリの35%が最初の6日間に死亡した(表1)。第10日に、1羽のニワトリが神経学的症状を現し、第13日に、もう1羽のニワトリが神経学的症状を示した。さらに、ERSに感染した雛ニワトリは10.1グラム/日の体重増加を示し、一方、対照群は17.0グラム/日の体重増加を示した。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
実験3b
10羽の1日齢のSPFニワトリに0.2mlの株ERS 060E(10 TCID50/トリ)を皮下接種した。第15日に該ニワトリを臨床徴候に関して観察した。
【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

結果:
該トリの20%が最初の15日間に死亡した。該トリの40%が神経学的症状を示した。さらに、ERS 060Eに感染した雛ニワトリは平均93.82グラム/日の体重増加を示した。
【0054】
実験3c
10羽の1日齢のSPFニワトリに0.2mlの株ERS 074(10 TCID50/トリ)を皮下接種した。第20日に該ニワトリを臨床徴候に関して観察した。
【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

結果:
該トリの30%が最初の20日間に死亡した。該トリの0.0%が神経学的症状を示した。さらに、ERS 074に感染した雛ニワトリは126.38グラム/日の体重増加を示した。
【0057】
実験3d
10羽の1日齢のSPFニワトリに0.2mlの株ERS 060E(10 TCID50/トリ)を足肉趾経路で接種した。第20日に該ニワトリを臨床徴候に関して観察した。
【0058】
【表8】

【0059】
【表9】

結果:
該トリの20%が最初の20日間に死亡した。該トリの10%が神経学的症状を示した。さらに、ERS 060Eに感染した雛ニワトリは87.81グラム/日の体重増加を示した。
【0060】
実験3e
10羽の1日齢のSPFニワトリに0.2mlの株ERS 074(10 TCID50/トリ)を足肉趾経路で接種した。第20日に該ニワトリを臨床徴候に関して観察した。
【0061】
【表10】

【0062】
【表11】

結果:
該トリの100%が最初の20日間に死亡した。該トリの50%が神経学的症状を示した。さらに、ERS 074に感染した雛ニワトリは94.37グラム/日の体重増加を示した。
【0063】
実験3f
20羽の1日齢のブロイラーニワトリに0.2mlの株ERS 060E(10 TCID50/トリ)を皮下接種した。第14日に該ニワトリを臨床徴候に関して観察した。
【0064】
【表12】

【0065】
【表13】

結果:
該トリの15%が最初の14日間に死亡した。該トリの10%が神経学的症状を示した。さらに、ERS 060Eに感染した雛ニワトリは接種の21日後に543グラムの平均体重を示した。陰性対照トリは接種の21日後に751グラムの平均体重を有していた。
【0066】
実験3g
20羽の1日齢のブロイラーニワトリに0.2mlの株ERS 074(10 TCID50/トリ)を皮下接種した。第14日に該ニワトリを臨床徴候に関して観察した。
【0067】
【表14】

【0068】
【表15】

結果:
該トリの25%が最初の14日間に死亡した。該トリの25%が神経学的症状を示した。さらに、ERS 074に感染した雛ニワトリは接種の21日後に488グラムの平均体重を示した。陰性対照トリは接種の21日後に751グラムの平均体重を有していた。
【0069】
実験3h
20羽の1日齢のブロイラーニワトリに0.2mlの株ERS 060E(10 TCID50/トリ)を足肉趾経路で接種した。第14日に該ニワトリを臨床徴候に関して観察した。
【0070】
【表16】

【0071】
【表17】

結果:
該トリの25%が最初の14日間に死亡した。該トリの5%が神経学的症状を示した。さらに、ERS 060Eに感染した雛ニワトリは接種の21日後に442グラムの平均体重を示した。陰性対照トリは接種の21日後に751グラムの平均体重を有していた。
【0072】
実験3i
20羽の1日齢のブロイラーニワトリに0.2mlの株ERS 074(10 TCID50/トリ)を足肉趾経路で接種した。第14日に該ニワトリを臨床徴候に関して観察した。
【0073】
【表18】

【0074】
【表19】

結果:
該トリの50%が最初の14日間に死亡した。該トリの5%が神経学的症状を示した。さらに、ERS 074に感染した雛ニワトリは接種の21日後に473グラムの平均体重を示した。陰性対照トリは接種の21日後に751グラムの平均体重を有していた。
【0075】
実験3j
実験計画
レオウイルスに対する母体由来抗体を有する75羽の市販ブロイラー(MDA)および75羽のSPFニワトリを15羽のトリの5群に分けた。該トリにはプラーク精製ERS株分離体1を経口的またはSCで1または7日齢で与えた。表1は実験計画の詳細を示す。該ニワトリを臨床徴候に関して7週間にわたり毎日観察した。7週齢の時点で、残りのすべてのニワトリを屠殺した。
【0076】
【表20】

【0077】
【表21】

結果
表2は、ERS接種後に死亡したトリの割合(%)を示す。SPFトリの100%およびMDAトリの46.6%は1日齢でのSC接種後3〜7日以内に死亡した。1日齢での経口接種後の4〜8日以内の死亡率(%)はSPFニワトリおよびMDAニワトリでそれぞれ13.3%および20%であった。7日齢でトリに接種した場合には、それらのトリはいずれも死亡しなかった。表3は、ねじれた頚部(%)を示す。SPFトリおよびMDAトリのどちらにおいても、1または7日齢での経口またはSC接種後に神経学的症状が生じた。該神経学的症状は接種の6日後から認められた。
【0078】
【表22】

【0079】
実験3k
実験計画
28羽の1日齢のSPFニワトリに0.2mlのプラーク精製株ERS Poland2(4.6 log10TCID50/トリ)をSC接種した。該ニワトリを臨床徴候に関して14日間にわたり毎日観察した。14日齢の時点で、すべてのニワトリを屠殺した。
【0080】
結果
該ニワトリの96.4%が最初の6日間に死亡した(表1)。第9日に、残りの1羽のニワトリが頚部のねじれを示した。
【0081】
【表23】

【0082】
実験3l:相対的非病原性株
1日齢のブロイラーニワトリに気管内経路で接種するために使用するウイルスのストックを調製するために、ERS株1037を孵化卵内で約10回継代した。ERS株1037の研究を高病原性レオウイルス株1733に対して行った。
【0083】
【表24】

株1037は相対的に非病原性であることが示された。なぜなら、該ニワトリの約20%だけが侵され、吸収不良症候群または成長低下のいずれかの徴候を示したに過ぎず、該ニワトリは1羽も試験期間中に死亡しなかったからである。これは、同様に吸収不良ウイルスである1733とは対照的であり、1733では、該ニワトリの100%が侵され、体重減少および/または死亡を示した。同様に、認められうるとおり、株1733は該雛ニワトリの35%を死亡させが、株1037は1羽も死亡させなかった。したがって、株1037は、本明細書中に定義されているとおりに相対的に非病原性である。
【0084】
実験4:経口接種後のニワトリの脳のS1133感染
実験計画
・10羽のSPFトリに第1日に2.6 log10/トリのS1133ウイルスを経口接種する。
・屍検:2、3、5、7および10dpcにおいて2羽のトリ。
・ニワトリ胚肝細胞を使用することによる、脳からのレオウイルスの分離。
【0085】
結果:
いずれの時点においても脳からレオウイルスは分離されない。
【0086】
結論:
先行技術の株であるS1133は経口接種後にニワトリの脳に感染しない。
【0087】
実験5:ERS株の病原性態様
ウイルス株
ERS 015は、1999年にポーランドにおいて、十分にワクチン接種された親に由来する市販ブロイラーから分離された。該トリは高い致死性を示しており、屍検において、肝臓の白色斑点および漿液性心膜炎が見出された。IFTを用いて、この分離体はレオウイルスであると確認された。モノクローナル抗体のパネルでの更なる特徴づけは、該分離体がERSクラスに属することを証明した。該分離体を3回プラーク精製した。それは有効性の研究におけるチャレンジ株として使用することになる。予備実験は、ERS 015分離体が1日齢のSPFトリにおいて振戦および頚部のねじれの症状を引き起こしうることを示した。観察された症状が該新規レオウイルス株により引き起こされたことを確認するために、病原性研究を行った。
【0088】
実験計画
ERS 015株をCEF上で3回プラーク精製し、チャレンジ株として使用した。132羽の1日齢SPFトリを3群に分けた。群1は55羽のトリを含み、それらに1日齢で0.2mlのERS 015(1.0 log10 TCID50/トリ)を筋肉内接種した。群2は55羽のトリを含み、それらに1日齢で0.2mlのERS 015(2.0 log10 TCID50/トリ)を経口接種した。群3は22羽のトリを含み、それらに0.2mlのPBSを筋肉内接種し、該トリを陰性対照トリとして使用した。
【0089】
すべてのニワトリを疾患の臨床症状の出現に関して毎日観察した。本明細書中で定義されているとおりの神経学的症状に特別の注意を払った。
【0090】
接種の7、14および21日後、犠死させたトリから血液を採取した。、レオウイルス株ERSに対する抗体の存在に関してはIFTにおいて、ニューカッスル病に対する抗体の存在に関してはHI試験において、伝染性ニワトリ脳脊髄炎ウイルス(AEV)に対する抗体の存在に関してはELISAにおいて、およびマレック病に対する抗体の存在に関してはELISAにおいて、血清サンプルを検査した。
【0091】
群1および2の2または3羽のトリ、および群3の1羽のトリをチャレンジの1、2、3、4、5、6、7、10、14、17および21日後に犠死させ、肉眼的病変に関して検査した。
【0092】
ウイルスの分離のために脳のサンプルを集めた。該器官を、ガラスビーズと1mlのPBS+Pen strept(1000μgU/ml)とを含有するピコクリアス(pycocrias)チューブ内に配置した。該混合物をRetchミキサーミル内で最高速度で20分間振とうした。ホモジネーション後、該懸濁液の0.1mlをニワトリ胚肝細胞(CELi)(M6B8+0.1% NPPT+5% FCS中、110細胞/ml)上に接種した。5% CO、35℃で5日間のインキュベーションの後、すべての培養を特異的REO CPEに関して検査した。懸濁液が陰性であれば、CEL上の第2の接種を行った。
【0093】
組織学的および免疫組織化学的検査のために、脳、胸脊髄、左および右坐骨神経のサンプルを集めた。一次抗体としてのモノクローナル抗体14−67、ビオチン化二次(ウサギ抗マウス)抗体、酵素としてのアルカリホスファターゼとのストレプトアビジン−ビオチン−酵素−複合体、および基質としての新たなフクシンを使用して、レオウイルス抗原の検出のために免疫組織化学的検査を行った。
【0094】
結果の解釈
臨床症状、ウイルス分離およびウイルス抗原の脳内存在の結果を用いて、中枢神経障害を評価した。臨床症状がERS 015の接種により誘発され、ウイルスが脳に存在する場合には、ERSは、振戦および頚部のねじれのような中枢神経障害を誘発する原因因子として示された。
【0095】
結果
臨床症状
群1および2の臨床徴候の結果。臨床徴候は群3のトリにおいては認められなかった。IMの7日以内には高い致死性(80%)が認められたが、経口接種の10日後には1羽のトリが死亡したに過ぎなかった。第4日から、乏しい成長およびヘリコプター(helicopter)ニワトリが認められ、どちらの群においても、該実験の終了時まではニワトリは小さいままであった。どちらの群においても、それぞれIMまたは経口接種の9または10日後に1羽のトリが振戦および頚部のねじれを現した。
【0096】
【表25】

【0097】
【表26】

【0098】
血清学
陰性対照群においては抗体は見出されず、検査したニワトリにおいてはNDV、マレック病およびAEVに対する抗体は見出されなかった。IMおよび経口接種した場合には、ERSに対する抗体価はそれぞれ7、14および21日齢で<2.0、5.0および7.0 logであった。
【0099】
肉眼的および顕微鏡的検査
群1および2のニワトリの種々の器官において見出された肉眼的病変の結果をそれぞれ表1および2に示す。群3のトリにおいては肉眼的異常は見出されなかった。群1および2においては、病変は肝臓(多数の白色ないし黄色の病巣を伴う肥大)、脾臓(変色を伴う肥大、硬化)、水心膜(hydropericard)、脳(大脳の背部の大出血、萎縮)において見出された。群1においては、病変は脚部筋肉および腱においても見出された(浮腫を伴う腫脹)。
【0100】
顕微鏡的検査:
坐骨神経において、レオウイルス感染に(見掛け上)関連している所見は、小さな壊死病巣を伴う又は伴わないコラーゲン線維の変性、線維芽細胞の存在、単核または混合浸潤を伴う(多数)病巣炎症であった。この炎症は主として隣接(または周辺/間質/介在)結合組織において観察され、少数の場合には坐骨神経組織自体に広がっていた。さらに、単核または異親和性浸潤が観察され、レオウイルス感染に関連づけられうるであろう。脊髄においてサテリトーシスを有すると疑われる3羽の動物が見出された。脊髄神経節に隣接する脊髄神経節の結合組織(またはその証拠を有さない脊髄神経節の領域)においては、坐骨神経における浸潤と比較しうる浸潤が観察された。第2に、グリア細胞凝集体である可能性もあり、同様にレオウイルス感染に関連しているとみなされる脊髄神経節内の単核浸潤の病巣が観察された。坐骨神経(中央部分)においては、末梢坐骨神経において認められるのと同様の隣接結合組織の炎症は1羽の動物において観察されたに過ぎなかった。少数の動物において、結合組織における単核浸潤が観察された。脳においては、1病巣のグリオーシスまたは血管周囲単核浸潤、浸潤の存在を伴う又は伴わない脈絡叢ループの充血を含むいくつかの所見が観察された。
【0101】
群1のトリの右坐骨神経、腹部脊髄および脳ならびに群2の腹部脊髄および脳においてIHCを行った。陽性IHCを結合組織における浸潤/炎症の症例として記録した。7dpcにおいて群1の1羽の動物を除き、神経節細胞はウイルス抗原に関して陽性であることが判明した。脳においては、脈絡叢細胞または関連細胞は、群1では第4日から第7日まで及び群2では第5日から第7日まで陽性となった。
【0102】
【表27】

【0103】
【表28】

【0104】
レオウイルスの分離
群1および2のトリの種々の器官からのレオウイルスの分離の結果をそれぞれ表3aおよび3bに示す。群3のニワトリからはウイルスは分離されなかった。群1および2のニワトリのすべての器官においてレオウイルスが検出された。IMまたは経口接種の後、ウイルスの分離は接種のそれぞれ1または2日後から始まった。どちらの群においても、脳は接種の10日後までは陽性であり、腱は接種の21日後まで陽性のままであった。
【0105】
考察
この報告は、中枢神経系に感染するERSの経路を明らかにするためにERS 015の病原性を記載している。IMおよび経口の2つの接種経路を用いた。どちらの場合においても、ERS 015は接種の9または10日後に1羽のトリにおいて頚部のねじれを誘発することが可能であった。これらの神経学的症状は脳内のウイルスの存在に関連づけられうる。ERS 015は、接種の1または2日後から、検査したすべてのニワトリの脳から分離された。ウイルス抗原も脳内に示された。
【0106】
組織学的評価は、レオウイルスの広がりが、IM接種後には経口接種後より迅速(いくつかの器官においては病変がより早期に認められる)かつより有効(病変がより長期にわたって認められる)に生じることを示している。さらに、神経組織(末梢坐骨神経または周辺結合組織)は株ERSによるレオウイルス感染の標的組織でありうることが示された。組織学的所見は、脳へのレオウイルスの広がりが神経線維沿いにではなく血行性経路によって生じることを示唆している。
【0107】
本発明者らが知る限りにおいて、これは、トリレオウイルス分離体が中枢神経系障害を引き起こしうることを初めて示すものである。
【0108】
【表29】

【0109】
【表30】


【0110】
実験6:
ERSを含有する不活化ワクチンでワクチン接種された産卵鶏からの後代のERS 015チャレンジに対する防御
目的
本研究の目的は、ERSを含有する不活化ワクチンでワクチン接種された産卵鶏からの後代のERS 015チャレンジに対する防御のレベルを評価することであった。中枢神経障害に対する有効性のクレームの保護をこの実験において評価した。
【0111】
実験計画
不活化ERSワクチンでワクチン接種されていない又はワクチン接種されたSPF産卵鶏に由来する卵を集め、孵化させた。ERSでワクチン接種された産卵鶏からの40羽の雛ニワトリ(群1と称される)、およびERS(180EU/用量)でワクチン接種されていない産卵鶏からの40羽の雛ニワトリ(群2と称される)を、1日齢で0.2mlのERS 015(2.0 log10 TCID50/トリ)で経口チャレンジした。ERSでワクチン接種されていない産卵鶏からの8羽の雛ニワトリ(群3と称される)に0.2mlのPBSを経口およびIM接種した。
【0112】
標準的な方法に従い、疾患の臨床徴候の出現に関して、すべてのニワトリを毎日観察した。振戦および頚部のねじれのような中枢神経障害に特別な注意を払った。
【0113】
チャレンジの3、7、10、14、21、28、35および42日後、群1および2の5羽のニワトリならびに群3の1羽のニワトリを犠死させた。ウイルスの分離のために、脳のサンプルを集めた。実験5に記載されているのと同じ方法に従った。
【0114】
結果の解釈
脳に関するウイルス分離の結果を用いて、神経症状に対する防御を評価した。ワクチン接種されていない産卵鶏からの後代と比較して、ワクチン接種された産卵鶏からの後代の脳においてウイルス複製における有意な減少が示された場合に、該後代は防御されているとみなされた。
【0115】
結果
臨床症状
群3のトリにおいては臨床徴候は認められなかった。群1(5羽のニワトリ)および群2(9羽のニワトリ)においては致死性が認められた。屍検において、レオウイルス感染に関連づけられうる多数の白色斑点を伴う肥大した肝臓、肥大した脾臓および/または水心膜が、群1の5羽中2羽および群2の9羽中8羽で見出された。群1の1羽のトリで、14dpcにおいて頚部のねじれが認められた。
【0116】
レオウイルスの分離
トリの脳からの2継代後のレオウイルスの分離の結果を表1に示す。群1および2における死亡したトリの数に基づき、それは、ある屍検日においては、より少数のトリ(3または4羽)を死亡させたと判定した。群1および3のニワトリの脳からはウイルスは分離されなかった。群2においては、脳は接種の14日後まで陽性であった。
【0117】
【表31】

【0118】
考察
この実験はCNS障害に対するERS不活化ワクチンの有効性を示している。不活化ERSワクチンでの産卵鶏のワクチン接種がERS感染から後代を防御することは明らかである。母体由来抗体を有するトリでは、死亡率はより低かった。ERS感染で死亡したトリは僅か2羽であったが、抗体を有さない群では8羽であった。さらに、母体由来抗体を有するトリはいずれも、脳内にウイルスを有していなかったが、群2のすべてのトリは14dpcまでは陽性であった。群1においては1羽のニワトリが頚部のねじれを示したが、これは恐らく、ERSの抗原量が少な過ぎるワクチンによるものであろう。群2においてはCNSは認められなかったが、40羽中9羽のトリが13dpc以内に死亡し、この時点で頚部のねじれが現れた。それらのニワトリは、神経症状が現れうる前に死亡した可能性があろう。致死性および脳からのERS分離に基づき、抗ERS母体由来抗体は、ERSにより引き起こされるCNS障害から後代を防御すると結論づけることができる。
【0119】
本発明の範囲を更に理解するためには、添付の特許請求の範囲を考慮すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経学的症状を引き起こすトリレオウイルスと薬学的に許容される担体または希釈剤を含む免疫原性組成物またはワクチンの有効量を家禽に投与することを含んでなる、家禽におけるトリレオウイルスにより引き起こされる神経学的症状の治療および/または予防方法。
【請求項2】
該レオウイルスが生、弱毒化または不活化形態である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該トリレオウイルスが、ECACC(英国ソールズベリー(Salisbury,UK)に受託番号99011475でサンプルが寄託されている腸レオウイルス株(ERS)により形成されるプラークをプラーク減少アッセイにおいて少なくとも75%減少させる抗血清を動物において誘導しうるレオウイルスのクラスに属する腸レオウイルス株(ERS)である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
株ERSにより形成されるプラークの減少がプラーク減少アッセイにおいて少なくとも80%である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
株ERSにより形成されるプラークの減少がプラーク減少アッセイにおいて少なくとも90%である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
該レオウイルスが、第2のトリレオウイルス分離体に対して産生させたポリクローナル抗血清との免疫蛍光技術(IFT)における反応性により、ならびにモノクローナル抗体INT 13−06、INT 14−11および15−01 INT(それらのサンプルはそれぞれ受託番号99011472、99011473および9901474でECACCに寄託されている)とのIFTにおける反応性の非存在により特徴づけられる、請求項1または3記載の方法。
【請求項7】
第2のトリレオウイルスが、株S1133、株2408、株1733、株2177、株ERS、株ERS 060E、株ERS 074および株ERS 1037よりなる群から選ばれる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該免疫原性組成物またはワクチンが更に、マレック病ウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、トリ脳脊髄炎ウイルス、鶏痘ウイルスおよびニワトリ貧血因子の少なくとも1つのワクチン株を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該免疫原性組成物またはワクチンが更にアジュバントを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該神経学的症状が、振戦および頚部のねじれよりなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
該トリレオウイルスが、株ERS(分離体1)、株ERS 060E、株ERS 074および株ERS 1037よりなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
該家禽が、ニワトリ、シチメンチョウ、水鳥、ホロホロチョウ(guinea)、ウズラ、ハトおよびダチョウよりなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
腸レオウイルス株(ERS)と担体または希釈剤とを含んでなる、神経学的症状を予防するための免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項14】
該ERSが、株ERS(分離体1)、株ERS 060E、株ERS 074および株ERS 1037よりなる群から選ばれる、請求項13記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項15】
該免疫原性組成物またはワクチンが更に、マレック病ウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、トリ脳脊髄炎ウイルス、鶏痘ウイルスおよびニワトリ貧血因子の少なくとも1つのワクチン株を含む、請求項13記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項16】
a.家禽の神経系の少なくとも一部を得、
b.該神経系からトリレオウイルスを分離する工程を含んでなる、家禽から腸レオウイルス株を分離するための方法。
【請求項17】
家禽において神経学的症状を引き起こすトリレオウイルスのクラス。
【請求項18】
該レオウイルスが腸レオウイルス株(ERS)である、請求項17記載のクラス。
【請求項19】
該ERSが、株ERS(分離体1)、株ERS 060E、株ERS 074および株ERS 1037よりなる群から選ばれる、請求項17記載のクラス。

【公表番号】特表2006−516146(P2006−516146A)
【公表日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501130(P2005−501130)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/031901
【国際公開番号】WO2004/032959
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(394010986)アクゾ・ノベル・エヌ・ベー (31)
【Fターム(参考)】