説明

トルエン形状選択的アルキル化によるパラキシレン製造に使用される触媒の製造法

【課題】有機アミンをテンプレート剤として使用してZSM-5分子篩を合成した場合の、有機アミン含有廃水に対する環境面からの厳しい要求及び面倒な処理を無くし、アルコール又はエーテルをテンプレート剤として使用してZSM-5分子篩を合成した場合に分子篩は小さく不均一な粒子であり、従って、それによって製造した触媒が低い触媒選択性及び低いトルエン転化率しか有さない等の従来技術の問題を解決できる、トルエンからのパラキシレン製造用触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】有機アミンとアルコールまたはエーテルとの組合せをテンプレート剤として使用してZSM-5分子篩を合成し、有機ケイ素化合物で改質して、トルエン形状選択的アルキル化によってパラキシレンを製造するのに使用される触媒を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルエン形状選択的アルキル化によってパラキシレンを製造するのに使用される触媒の製造法に関する。
【発明の背景】
【0002】
トルエンの形状選択的アルキル化は、トルエンをより実用的価値のあるパラキシレンに変換することができ、かつ反応系にパラキシレンを選択的に生成させることができるので、工業開発における極めて有用な反応の1つである。現在、ZSM-5分子篩が、大部分の関連特許において、反応体として使用されている。ZSM-5ゼオライトは、ケイ素-酸素10員環から成る三次元細孔チャンネル系を有する。ZSM-5ゼオライトの細孔径は、分子直径0.63nmを有するパラキシレンの急速拡散を可能にするが、分子直径0.69nmを有するオルトキシレンおよびメタキシレンは、かなり低い拡散係数を有する。トルエン形状選択的アルキル化反応系において、ZSM-5細孔チャンネルにおける種々の物質の拡散係数は、以下の順である:
【化1】

そのような事実は、トルエンの形状選択的アルキル化反応についての、形状選択の可能性を意味する。即ち、キシレン生成物における熱力学的平衡濃度よりかなり高いパラキシレン異性体含有量を得ることができる。しかし、細孔チャンネルから拡散される富化パラ−生成物への選択性を有さない外面酸性部位における異性化反応速度は、不均化速度よりかなり速く、従って、最終生成物はすぐに平衡組成に達する。高い空間速度および低い転化率の条件下に、大きい結晶粒度を有するZSM-5を使用することによっても、ある程度の選択性が得られることを研究は示しているが、それは実用的でない。要するに、ZSM-5の外面を改質することが必要である。さらに、ZSM-5分子篩のシリカ/アルミナ比、結晶寸法および形状は、分子篩の表面改質効果に直接的に作用し、触媒の性能指数にかなりの程度に影響を及ぼす。
【0003】
米国特許第5367099号および同第5607888号は、ZSM-5分子篩構造の改質、即ち、気孔の開口寸法を減少させ、外面の酸性活性部位を遮蔽することによって、選択的トルエンアルキル化触媒を製造することを開示している。該米国特許に使用されているZSM-5分子篩は、有機アミンテンプレート剤系を使用して合成されている。有機アミンテンプレート剤は、速い結晶化速度、および広い範囲の構造シリカ/アルミナ比という利点を有する。有機アミンテンプレート剤を使用して結晶化され合成されたZSM-5分子篩から製造したトルエン選択的アルキル化触媒は、より優れた反応性能を有するが、有機アミンテンプレート剤は、合成の間に重大な環境汚染および高い回収コストを生じる。米国特許第6486373号において、無機アミンを、ZSM-5分子篩の合成用のテンプレート剤として使用している。しかし、合成された分子篩の表面のシリカ/アルミナ比は、それらの骨格のシリカ/アルミナ比とかなり異なっている。改質後、それによって合成されたZSM-5分子篩は、有機アミンテンプレート剤を使用して合成したZSM-5より劣った反応性能を有する。改質触媒のパラ−選択性は顕著に増加するが、トルエン転化率はかなり減少する。即ち、いわゆる「逆作用」(inverse effect)が存在する。本発明は、多くの有機アミンテンプレート剤の適用において存在する多量の合成廃水、より高い製造コスト、無機アミンテンプレート剤を使用して合成された分子篩の改質下での触媒の劣った総合的性能のような問題を解決するために提供される。
【特許文献1】米国特許第5367099号
【特許文献2】米国特許第5607888号
【特許文献3】米国特許第6486373号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、下記のような従来技術の問題を解決することである:有機アミンをテンプレート剤として使用してZSM-5分子篩を合成した場合の、有機アミン含有廃水の、環境に関する厳しい要件および面倒な処理;アルコールまたはエーテルをテンプレート剤として使用してZSM-5分子篩を合成した場合の、小さく不均一な粒子、従って、それによって製造した触媒が、低い触媒選択性および低いトルエン転化率を有すること等。従って、本発明は、トルエン形状選択的アルキル化によってパラキシレンを製造するのに使用される触媒の製造法を提供する。該方法は、ZSM-5分子篩合成用の出発物質の低コスト、簡単な後処理、および低環境汚染を特徴とする。さらに、本発明の方法によって合成されたZSM-5分子篩を使用して製造したトルエン選択的不均化触媒は、より優れた総合的触媒特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の技術的問題を解決するために、本発明は、下記の技術的解決法を採用する。トルエン形状選択的アルキル化によってパラキシレンを製造するのに使用される触媒の製造法であって、
a) シリカ源として、シリカゾル、水ガラスまたはケイ酸ナトリウム、アルミナ源として、硫酸アルミニウム、メタ−アルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸塩、およびテンプレート剤として、有機アミン/アルコールまたはエーテル重量比0.05〜150の有機アミンとアルコールまたはエーテルとの混合物を使用して、モル比SiO2/Al2O3=20〜200、H2O/SiO2=30〜140、NH3/Al2O3=1〜100、Na2O/Al2O3=0〜18の合成混合物を形成し、該合成混合物を120〜200℃で10〜200時間にわたって水熱的に結晶化して、ZSM-5分子篩を含有する液体生成物を得る工程;
b) 工程a)からのZSM-5分子篩を含有する該液体生成物を、濾過し、洗浄し、該分子篩をイオン交換によってNH4型ZSM-5分子篩に変換する工程;
c) シリカゾル、水性有機ケイ素化合物、シリカゲルおよびチタンホワイトから成る群から選択される少なくとも1つの混練剤を、工程b)からのNH4型ZSM-5分子篩に添加し、付形し、乾燥し、焼成して、触媒マトリックスを得る工程;
d) フェニルメチルポリシロキサン、ヒドロキシシリコーン油、アミノシリコーン油およびジメチルシリコーン油から成る群から選択される少なくとも1つの有機ケイ素化合物を使用して該触媒マトリックスを改質して、分子篩の表面に有機ケイ素化合物を担持し、300〜600℃で0.5〜12時間焼成し、有機ケイ素化合物を無機ケイ素に変換して、トルエン形状選択的アルキル化によるパラキシレンの製造に使用される触媒を得る工程
を含んで成る製造法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記の技術的解決法において、有機アミンは、ジエチルアミン、プロピルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジプロピルアミンおよびトリプロピルアンモニウムブロミドから成る群、より好ましくは、エチルアミン、トリエチルアミンおよびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの有機アミンであり;アルコールは、第一級アルコール、第二級アルコールおよびそれらの混合物から成る群から選択され、該第一級アルコールは、好ましくは、メタノールおよびエタノールから成る群から選択され、該第二級アルコールは、好ましくは、イソプロパノールであり;エーテルは、アルキルエーテルおよびそれらの混合物から成る群、より好ましくは、ジエチルエーテルおよびジメチルエーテルから成る群から選択される。テンプレート剤における有機アミン/アルコールの重量比は、0.05〜10:1、より好ましくは0.1〜1:1であり;有機アミン/エーテルの重量比は、0.05〜15:1、より好ましくは0.1〜5:1である。
【0007】
前記の技術的解決法において、アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび塩化アルミニウムから成る群から選択され;アルミン酸塩は、メタアルミン酸ナトリウムおよびメタアルミン酸カリウムから成る群から選択される。結晶化合成速度を高めるために、本発明によって合成されたZSM-5結晶粉末を、ZSM-5分子篩の合成の間に、ZSM-5分子篩の最終収量の0.1〜15wt%の量で種結晶として添加してもよい。
【0008】
先行技術のZSM-5分子篩合成における問題に対して、本発明は、トルエン選択的アルキル化触媒に使用するのに好適な特定のZSM-5分子篩の合成を制御するために、合成条件の最適化(水/ケイ素比、アルカリ度、合成温度および時間)と組み合わせて、有機アミンテンプレート剤とアルコールまたはエーテルテンプレート剤とを混合してテンプレート剤の混合物を形成することを提案する。本発明におけるZSM-5分子篩の合成法は、主に下記の点で、先の特許に記載されているトルエン選択的アルキル化触媒に使用されるZSM-5分子篩の合成法と異なる:結晶化合成におけるテンプレート剤が、有機アミン−アルコール組合せテンプレート剤、または有機アミン−エーテル組合せテンプレート剤であり;該方法によって合成された分子篩が、高い結晶化度、および比較的均一な結晶寸法を有し、トルエン選択的アルキル化触媒製造の必要条件を満たすことができる。さらに、結晶化および合成において生じる廃水、廃棄ガスおよび廃棄残留物がより少なく、環境に優しい。本発明の方法によって合成されたZSM-5分子篩を、アトピック(atopic)ケイ素沈殿によってさらに表面改質し、それによって、製造された触媒は、優れた触媒活性および選択性を有し、前記の「逆作用」をみごとに克服する。さらに、その総合的触媒特性も、他の方法で合成されたZSM-5分子篩から製造した触媒より優れている。
【0009】
結合および付形によって、本発明の方法によって合成されたZSM-5分子篩から触媒マトリックスを製造した後、それを、アトピックケイ素沈殿によって処理して、トルエン選択的アルキル化触媒を製造する。
【0010】
「アトピックケイ素沈殿」という用語は、フェニルメチルポリシロキサン等のような有機ケイ素化合物を、n−ヘキサンのような溶媒に溶解させることを意味し、その場合、フェニルメチルポリシロキサン/溶媒の比率は、0.01〜10gフェニルメチルポリシロキサン/mL溶媒である。次に、付形した触媒を、その溶液に、0.1〜30mL溶液/g触媒の溶液対触媒比率で添加する。溶媒を除去し、室温に冷却後、触媒を焼成する。高いパラ位選択率を有する触媒を得るために、前記の工程を多数回行ってよい。
【0011】
固定床反応評価装置で、トルエン形状選択的アルキル化触媒の反応活性および選択性を評価し、その際、反応を、重量空間速度4.0h−1、温度440℃、圧力0.5MPa、水素/炭化水素モル比2で行う。
【0012】
本発明の方法は、トルエン形状選択的アルキル化によるパラキシレン触媒の製造に使用される触媒を製造するのに使用することができ、該触媒は、高い転化率および選択性(トルエン転化率>30%)、およびキシレン混合物におけるトルエン選択率>90%)を特徴とし、それによってより優れた技術的効果を得る。
【0013】
下記の実施例によって本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0014】
実施例1
水350gを、水ガラス(SiO2 26.1wt%およびNa2O 7.4wt%を含有)500gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物35g、および98%濃硫酸20gを、水600gに溶解させ、次に、水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を、容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それにトリプロピルアンモニウムブロミド200mLおよびエタノール25mLを添加した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相(X-ray phase)によってZSM-5分子篩であることを確認した。分析結果は、ZSM-5参考文献のデータと一致していた。

【0015】
上記で合成されたナトリウム型ZSM-5を、従来法によってアンモニウム型に変換し、化学分析によって測定したそのシリカ/アルミナ比は35であった。
【0016】
シリカゾル(SiO2 40wt%を含有)25g、および水6mLを、アンモニウム型ZSM-5の原粉末40gに添加した。混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成して、形状選択によって処理されていない付形触媒マトリックスAを得た。
【0017】
実施例2
水450gを、水ガラス(SiO2 25.8wt%およびNa2O 7.3wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。メタアルミン酸ナトリウム10gおよび水600gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それにジエチルアミン20gおよびメタノール30gを添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。
【0018】
水450gを、水ガラス(SiO2 25.8wt%およびNa2O 7.3wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。メタアルミン酸ナトリウム10g、水600g、およびこの実施例の前記段階に従って合成した結晶粉末5gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移しそれに、ジエチルアミン20gおよびメタノール30gを添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。それによって得られた分子篩骨組みのシリカ/アルミナ比は75であった。それによって合成されたナトリウム型ZSM-5を、従来法によってアンモニウム型に変換した。
【0019】
チタンホワイト15gおよび水6mLを、アンモニウム型ZSM-5の原粉末40gに添加した。混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成して、形状選択によって処理されていない付形触媒マトリックスBを得た。
【0020】
実施例3
水450gを、水ガラス(SiO2 25.2wt%およびNa2O 7.2wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物10gおよび水600gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それに25gプロピルアミンおよび50gイソプロパノール溶液を添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。
【0021】
水450gを、水ガラス(SiO2 25.2wt%およびNa2O 7.2wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物10g、水600g、およびこの実施例の前記段階に従って合成した結晶粉末5gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それに25gプロピルアミンおよび50gイソプロパノール溶液を添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。それによって得られた分子篩骨組みのシリカ/アルミナ比は96であった。それによって合成されたナトリウム型ZSM-5を、従来法によってアンモニウム型に変換した。
【0022】
水溶性有機ケイ素化合物(SiO2 40wt%を含有)20g、および水6mLを、アンモニウム型ZSM-5の原粉末40gに添加した。混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成して、形状選択によって処理されていない付形触媒マトリックスCを得た。
【0023】
実施例4
水450gを、水ガラス(SiO2 25.2wt%およびNa2O 7.2wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物4gおよび水600gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それに8gエチルアミン(65wt%)および65gエタノール溶液を添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。
【0024】
水450gを、水ガラス(SiO2 25.2wt%およびNa2O 7.2wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物4g、水600g、およびこの実施例の前記段階に従って合成した結晶粉末5gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それに8gエチルアミン(65wt%)および65gエタノール溶液を添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。それによって得られた分子篩骨組みのシリカ/アルミナ比は172であった。それによって合成されたナトリウム型ZSM-5を、従来法によってアンモニウム型に変換した。
【0025】
シリカゾル(SiO2 40wt%を含有)25g、および水6mLを、アンモニウム型ZSM-5の原粉末40gに添加した。混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成して、形状選択によって処理されていない付形触媒マトリックスDを得た。
【0026】
実施例5
触媒マトリックスA 45gを、n−ヘキサン200mLおよびフェニルメチルポリシロキサン4.5gによって調製した溶液に添加し、混合物を油浴によって90℃で蒸留して、n−ヘキサンを除去した。蒸留後の残渣を、マッフル炉で500℃に3時間加熱し、次に、自然冷却して、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を1回行った触媒を得た。
【0027】
前記の有機ケイ素化合物での処理を1回行った触媒40gを、n−ヘキサン200mLおよびフェニルメチルポリシロキサン4.0gで調製した溶液に添加し、混合物を油浴によって90℃で蒸留して、n−ヘキサンを除去した。蒸留後の残渣を、マッフル炉で550℃に3時間加熱し、次に、自然冷却して、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を2回行った触媒Eを得た。
【0028】
実施例6
触媒マトリックスAの代わりに触媒B 45gを使用し、フェニルメチルポリシロキサンの代わりにジメチルシリコーン油を使用した以外は実施例5に記載の方法によって、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を2回行った触媒Fを作製した。
【0029】
実施例7
フェニルメチルポリシロキサンの代わりにベンジルシリコーン油とジメチルシリコーン油との混合物を使用した以外は実施例5に記載の方法によって、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を2回行った触媒Gを触媒マトリックスAの代わりに触媒C 45gを使用し、作製した。
【0030】
実施例8
触媒マトリックスAの代わりに触媒D 45gを使用し、フェニルメチルポリシロキサンの代わりにジメチルシリコーン油とアミノシリコーン油との混合物を使用した以外は実施例5に記載の方法によって、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を2回行った触媒Hを作製した。
【0031】
実施例9
固定床反応評価装置によって、実施例1〜8で作製した触媒A〜Hについて、トルエン形状選択的アルキル化反応活性および選択率を評価した。触媒を、5.0gの量で充填した。反応を、重量空間速度4.0h−1、温度440℃、圧力0.5MPa、および水素/炭化水素モル比2で行った。反応結果を下記の表1に示す。
【0032】
トルエン転化率 = [(反応器に供給したトルエンの重量−反応器の出口におけるトルエンの重量)/反応器に供給したトルエンの重量]×100%
パラ位選択率 = (反応器の出口におけるパラキシレンの重量/反応器の出口におけるキシレンの重量)×100%
【表1】

【0033】
比較例1
シリカゾル(SiO2 40wt%を含有)50gおよび水10mLを、市販のエチレンジアミンを使用して合成されシリカ/アルミナ比52を有するZSM-5アンモニウム型原粉末80gに添加した。次に、混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成した。形状選択によって処理されていない触媒の反応を、実施例9に記載した条件によって行った。その結果、そのトルエン転化率は46.2wt%であり、パラキシレン選択率は24.3%であった。
【0034】
触媒マトリックスAの代わりに、形状選択による処理がなされていない前記触媒45gを使用した以外は実施例5に記載した方法によって、形状選択処理を2回行った触媒を作製した。その反応を、実施例9に記載した条件によって行った。その結果、そのトルエン転化率は25.4wt%であり、パラキシレン選択率は83.2%であった。
【0035】
比較例2
シリカゾル(SiO2 40wt%を含有)50gおよび水10mLを、市販のプロピルアミンを使用して合成されシリカ/アルミナ比100を有するZSM-5アンモニウム型原粉末80gに添加した。次に、混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成した。形状選択によって処理されていない触媒の反応を、実施例9に記載した条件によって行った。その結果、そのトルエン転化率は45.4wt%であり、パラキシレン選択率は24.2%であった。
【0036】
触媒マトリックスAの代わりに、形状選択による処理がなされていない前記触媒45gを使用した以外は実施例5に記載した方法によって、形状選択処理を2回行った触媒を作製した。その反応を、実施例9に記載した条件によって行った。その結果、そのトルエン転化率は23.8wt%であり、パラキシレン選択率は86.3%であった。
【0037】
実施例10
水350gを、水ガラス(SiO2 26.1wt%およびNa2O 7.4wt%を含有)500gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物22g、および98%濃硫酸20gを、水600gに溶解させ、次に、水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を、容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それにジメチルエーテル8gおよびエチルアミン(65wt%)70gを添加した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。分析結果は、ZSM-5参考文献のデータと一致していた。

【0038】
それによって合成されたナトリウム型ZSM-5を、従来法によってアンモニウム型に変換し、化学分析によって測定したそのシリカ/アルミナ比は43であった。
【0039】
シリカゾル(SiO2 40wt%を含有)25g、および水6mLを、アンモニウム型ZSM-5の原粉末40gに添加した。混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成して、形状選択によって処理されていない付形触媒マトリックスIを得た。
【0040】
実施例11
水450gを、水ガラス(SiO2 25.8wt%およびNa2O 7.3wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物21g、98%濃硫酸25gおよび水600gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それにジエチルエーテル50gおよびトリエチルアミン17gを添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。
【0041】
水450gを、水ガラス(SiO2 25.8wt%およびNa2O 7.3wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物21g、98%濃硫酸25g、水600g、および、この実施例の前記段階に従って合成された結晶粉末5gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それにジエチルエーテル50gおよびトリエチルアミン17gを添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。それによって得られた分子篩骨組みのシリカ/アルミナ比は65であった。それによって合成されたナトリウム型ZSM-5を、従来法によってアンモニウム型に変換した。
【0042】
水性有機ケイ素シリカゲル(SiO2 75wt%を含有)16g、および水15mLを、アンモニウム型ZSM-5の原粉末40gに添加した。混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成して、形状選択によって処理されていない付形触媒マトリックスJを得た。
【0043】
実施例12
水450gを、水ガラス(SiO2 25.2wt%およびNa2O 7.2wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物8g、98%濃硫酸25gおよび水600gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それにジエチルエーテル80gおよびジプロピルアミン15gを添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。
【0044】
水450gを、水ガラス(SiO2 25.2wt%およびNa2O 7.2wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物8g、98%濃硫酸25g、水600g、および、この実施例の前記段階に従って合成した結晶粉末5gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それにジエチルエーテル80gおよびジプロピルアミン15gを添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。それによって得られた分子篩骨組みのシリカ/アルミナ比は147であった。それによって合成されたナトリウム型ZSM-5を、従来法によってアンモニウム型に変換した。
【0045】
水性有機ケイ素化合物(SiO2 56wt%を含有)21g、および水9mLを、アンモニウム型ZSM-5の原粉末40gに添加した。混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成して、形状選択によって処理されていない付形触媒マトリックスKを得た。
【0046】
実施例13
水450gを、水ガラス(SiO2 25.2wt%およびNa2O 7.2wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物15g、98%濃硫酸25gおよび水600gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、それにジメチルエーテル10gおよびプロピルアミン10gを添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。
【0047】
水450gを、水ガラス(SiO2 25.2wt%およびNa2O 7.2wt%を含有)600gに添加し、次に、均一に撹拌した。硫酸アルミニウム十八水和物15g、98%濃硫酸25g、水600g、および、この実施例の前記段階に従って合成した結晶粉末5gを、該水ガラスに添加した。15分間撹拌した後、混合物を容量2Lのステンレス鋼反応器に移し、ジメチルエーテル10gおよびプロピルアミン10gをそれに添加した後、反応器を密閉した。得られた混合物を170℃で60時間結晶化し、結晶化生成物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥し、X線位相によってZSM-5分子篩であることを確認した。それによって得られた分子篩骨組みのシリカ/アルミナ比は125であった。それによって合成されたナトリウム型ZSM-5を、従来法によってアンモニウム型に変換した。
【0048】
チタンホワイト(TiO2 76wt%を含有)15gおよび水11mLを、アンモニウム型ZSM-5の原粉末40gに添加した。混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成して、形状選択によって処理されていない付形触媒マトリックスLを得た。
【0049】
実施例14
触媒マトリックスI 45gを、n−ヘキサン200mLおよびフェニルメチルポリシロキサン4.5gによって調製した溶液に添加し、混合物を油浴によって90℃で蒸留して、n−ヘキサンを除去した。蒸留後の残渣を、マッフル炉で500℃に3時間加熱し、次に、自然冷却して、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を1回行った触媒を得た。
【0050】
前記の有機ケイ素化合物での処理を1回行った触媒40gを、n−ヘキサン200mLおよびフェニルメチルポリシロキサン6.0gによって調製した溶液に添加し、混合物を油浴によって90℃で蒸留して、n−ヘキサンを除去した。蒸留後の残渣を、マッフル炉で550℃に3時間加熱し、次に、自然冷却して、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を2回行った触媒Mを得た。
【0051】
実施例15
触媒マトリックスIの代わりに触媒J 45gを使用し、フェニルメチルポリシロキサンの代わりにヒドロキシシリコーン油を使用した以外は実施例14に記載した方法によって、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を2回行った触媒Nを作製した。
【0052】
実施例16
触媒マトリックスIの代わりに触媒K 45gを使用し、フェニルメチルポリシロキサンの代わりにアミノシリコーン油を使用した以外は実施例14に記載の方法によって、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を2回行った触媒Oを作製した。
【0053】
実施例17
触媒マトリックスIの代わりに触媒L 45gを使用し、フェニルメチルポリシロキサンの代わりにジメチルシリコーン油を使用した以外は実施例14に記載した方法によって、アトピックケイ素沈殿による形状選択処理を2回行った触媒Pを作製した。
【0054】
実施例18
固定床反応評価装置によって、実施例10〜17で作製した触媒I〜Pについて、トルエンメチル化反応活性および選択率を評価した。触媒を、5.0gの量で充填した。反応を、重量空間速度4.0h−1、温度440℃、圧力0.5MPa、および水素/炭化水素モル比2で行った。反応結果を下記の表2に示す。
【0055】
トルエン転化率 = [(反応器に供給したトルエンの重量−反応器の出口におけるトルエンの重量)/反応器に供給したトルエンの重量]×100%
パラ位選択率 = (反応器の出口におけるパラキシレンの重量/反応器の出口におけるキシレンの重量)×100%
【表2】

【0056】
比較例3
シリカゾル(SiO2 40wt%を含有)50gおよび水10mLを、市販のアンモニウム28wt%を使用して合成されシリカ/アルミナ比30を有するZSM-5アンモニウム型原粉末80gに添加した。次に、混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成した。形状選択によって処理されていない触媒の反応を、実施例18に記載した条件によって行った。その結果、そのトルエン転化率は47.5wt%であり、パラキシレン選択率は24.3%であった。
【0057】
形状選択処理を2回行った触媒を、実施例14に記載した方法によって作製し、但し、触媒マトリックスIの代わりに、形状選択による処理がなされていない前記触媒45gを使用した。次に、その反応を、実施例18に記載した条件によって行った。その結果、そのトルエン転化率は28.4wt%であり、パラキシレン選択率は84.9%であった。
【0058】
比較例4
シリカゾル(SiO2 40wt%を含有)50gおよび水10mLを、市販の液体アンモニアを使用して合成されシリカ/アルミナ比58を有するZSM-5アンモニウム型原粉末80gに添加した。次に、混合物を混練し、付形し、乾燥し、500℃で2時間焼成した。形状選択によって処理されていない触媒の反応を、実施例18に記載した条件によって行った。その結果、そのトルエン転化率は46.6wt%であり、パラキシレン選択率は24.2%であった。
【0059】
形状選択処理を2回行った触媒を、実施例14に記載した方法によって作製し、但し、触媒マトリックスIの代わりに、形状選択による処理がなされていない前記触媒45gを使用した。次に、その反応を、実施例18に記載した条件によって行った。その結果、そのトルエン転化率は27.3wt%であり、パラキシレン選択率は87.1%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
e) シリカ源として、シリカゾル、水ガラスまたはケイ酸ナトリウム、アルミナ源として、硫酸アルミニウム、メタ−アルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸塩、およびテンプレート剤として、有機アミン/アルコールまたはエーテル重量比0.05〜150の有機アミンとアルコールまたはエーテルとの混合物を使用して、モル比SiO2/Al2O3=20〜200、H2O/SiO2=30〜140、NH3/Al2O3=1〜100、Na2O/Al2O3=0〜18の合成混合物を形成し、該合成混合物を120〜200℃で10〜200時間にわたって水熱的に結晶化して、ZSM-5分子篩を含有する液体生成物を得る工程;
f) 工程a)からのZSM-5分子篩を含有する該液体生成物を、濾過し、洗浄し、該分子篩をイオン交換によってNH4型ZSM-5分子篩に変換する工程;
g) シリカゾル、水性有機ケイ素化合物、シリカゲルおよびチタンホワイトから成る群から選択される少なくとも1つの混練剤を、工程b)からのNH4型ZSM-5分子篩に添加し、付形し、乾燥し、焼成して、触媒マトリックスを得る工程;
h) フェニルメチルポリシロキサン、ヒドロキシシリコーン油、アミノシリコーン油およびジメチルシリコーン油から成る群から選択される少なくとも1つの有機ケイ素化合物を使用して該触媒マトリックスを改質して、分子篩の表面に有機ケイ素化合物を担持し、300〜600℃で0.5〜12時間焼成し、有機ケイ素化合物を無機ケイ素に変換して、トルエン形状選択的アルキル化によるパラキシレンの製造に使用される触媒を得る工程;
を含むトルエン形状選択的アルキル化によってパラキシレンを製造するのに使用される触媒の製造法。
【請求項2】
有機アミンが、ジエチルアミン、プロピルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジプロピルアミンおよびトリプロピルアンモニウムブロミドから成る群から選択される少なくとも1つの有機アミンであり;アルコールが、第一級アルコール、第二級アルコールおよびそれらの混合物から成る群から選択され;エーテルが、アルキルエーテルおよびそれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機アミンが、エチルアミン、トリエチルアミンおよびそれらの混合物から成る群から選択され;第一級アルコールが、メタノールおよびエタノールから成る群から選択され;第二級アルコールが、イソプロパノールであり;エーテルが、ジエチルエーテルおよびジメチルエーテルから成る群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
有機アミン/アルコールが、重量比0.05〜10:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
有機アミン/アルコールが、重量比0.1〜1:1であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
有機アミン/エーテルが、重量比0.05〜15:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
有機アミン/エーテルが、重量比0.1〜5:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2007−50403(P2007−50403A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−221455(P2006−221455)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(501329404)中國石油化工股▲分▼有限公司 (13)
【出願人】(506278668)中國石油化工股▲分▼有限公司上海石油化工研究院 (2)
【Fターム(参考)】