説明

トルクリミッタ及びバルブアクチュエータ

【課題】バルブの開閉両方のトルク検出を可能とし、開閉それぞれ異なったトルク値の調整を容易に行えるようにしたトルクリミッタを提供する。
【解決手段】トルクリミッタ17は、駆動側歯車24及び中間歯車23に連結される連結部171bと連結部171bから突出する腕部171aとからなるトルクアーム171と、バルブの開閉動作時に負荷のトルクに比例して中間歯車23の噛み合い接線方向に作用する力と釣り合うバネ力を腕部171aに付与する開側バネ手段172,閉側バネ手段173と、バルブの開閉動作時における負荷のトルクが所定値を超えたときに腕部171aによって動作する開側トルク検出スイッチ175,閉側トルク検出スイッチ174と、開閉バネ手段172,173に軸通されたトルクリミッタ軸176とを備える。トルクリミッタ軸176は、軸の片端から、開閉バネ手段172,173のバネ力をそれぞれ調整できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクリミッタ及びバルブアクチュエータに関し、より詳細には、バルブの開閉時にトルクを検出し、エアモータを停止させるトルクリミッタ及び該トルクリミッタを備えたバルブアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロセスオートメーション等において、各種流体の流れを制御するために、バルブアクチュエータによるバルブの開閉動作が行われている。このバルブアクチュエータの方式としては、空気式、電動式、油圧式、ソレノイド式など様々なものがある。この中で空気式は入力信号に比例したバルブ開度を実現する調節弁として用いられている。空気式バルブアクチュエータは、簡単な構造で、容易に大きな出力(駆動力)を得ることができ、また、ユーザが保守作業を容易に行うことができる。
【0003】
上記空気式バルブアクチュエータにおいては、バルブ閉時に伴う駆動停止の手段としてトルクリミッタを備えたものが知られている。このトルクリミッタは、例えば、特許文献1に記載されているように、適正なトルクでバルブを閉めることを目的としたもので、スプリングバランス方式を採用しバルブの締切トルクを正確に検出し、所定のトルクに達すると、エアモータを停止させる構造となっている。従って、バルブの締め過ぎによるバルブの損傷や破壊を未然に防止することができる。
【0004】
図8は、トルクリミッタの動作原理を説明するための図である。図中、101は支点、102はトルクアーム、Z〜Zは歯車、R〜Rは各歯車のピッチサークル半径、Lは支点101からトルクアーム102の点Bまでの距離を示す。ここで、トルクアーム102は、支点101にて歯車Zと結合して動作の支点をなし、トルクアーム102の点Aにて歯車Z、Zと結合し、トルクアーム102の点Bにてバネ力を受けるものである。
【0005】
を歯車Zの軸トルク、T′を歯車Zの反軸トルク、Fを歯車Zに架かる噛合接線力、F′を歯車Zに架かる噛合接線力、Pを支点101を支点としてトルクアーム102の点Aに架かる回転力、Fをトルクアーム102の点Bに架かるバネ力とすると、下記の各式が成立する。
=T/R
F′=T′/R
P=F+F′
【0006】
以上の各式から、図8(A)に示す正常回転時は、下記式が成立する。
P×(R+R)≦F×L
また、図8(B)に示すトルクリミット検出時には、下記式が成立する。
P×(R+R)>F×L
【0007】
このように互いに歯車(Z〜Z)の噛み合った3本の軸を一直線上に配置し、歯車Zに負荷をかけたとき、F及びF′のような歯車噛合接線力が発生し、これに対する軸反力P(|P|=|F|+|F′|)を皿バネにてバランスさせる軸スプリングバランス方式にてトルクを検出する。
【0008】
図9は、バルブ閉動作時におけるトルクリミッタの動作状態を説明するための図である。このトルクリミッタは図8で説明した動作原理に基づいて動作するものとする。図中、101は支点、102はトルクアーム、103は負荷側歯車、104は負荷側駆動軸、105はトルク調整ネジ、106はトルク検出スイッチ、107はトルクバランス皿バネ(トルクアーム102内に内蔵)、108は中間歯車を示す。
【0009】
図9において、トルクアーム102は支点101で支持され、トルク調整ネジ105により所定のトルク値に設定されている。バルブが全閉になったときに、弁栓は弁座に突き当たり、トルクリミッタにかかる負荷が急激に大きくなる。この負荷が予め設定されたトルクに達した瞬間、負荷側駆動軸104の負荷側歯車103と噛み合っている中間歯車108及びトルクアーム102が図中P′の方向に押され、トルク検出スイッチ106を作動させる。このトルク検出スイッチ106が作動すると、マスターバルブ(図示せず)が作動し、エアモータ(図示せず)を停止させると、負荷側駆動軸104の回転が止まり、トルクリミッタの閉動作を完了させる。
【特許文献1】特公平7−31090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の空気式バルブアクチュエータに搭載されるトルクリミッタでは、バルブの締め切り時(閉側)のトルクを検出し、エアモータを停止させていたが、バルブの開側においては、エアマイクロスイッチで位置を検出しエアモータを停止させているため、エアマイクロスイッチが機能しないなどの不具合が起こると、エアモータが停止せず、バルブを損傷、破壊してしまう可能性があり、重大事故に発展するリスクがあった。
【0011】
これに対して、開閉両方にトルクリミッタを設けることが考えられる。この場合、開閉それぞれのトルクリミッタに対して異なったトルク値を調整する必要がある。これについて下記の図10に基づいて説明する。
【0012】
図10は、開閉両方にトルクリミッタを設けた場合の構造を模式的に示した図である。図中、102はトルクアーム、105は閉側のトルク調整ネジ、105′は開側のトルク調整ネジ、106は閉側のトルク検出スイッチ、106′は開側のトルク検出スイッチを示す。このように開閉両方にトルクリミッタを設けた場合、開閉それぞれのトルク調整ネジ105,105′により両方からトルク調整を行う必要があるが、組立完了後、このトルクリミッタは図示しないケーシング内に格納されてしまい、トルクリミッタに外部からアクセスすることができなくなる。このため、組立完了後の出荷前検査におけるトルク調整や、客先納入後の現場でのトルク調整を行う場合、その都度ケーシングを取り外す必要があり、作業性が非常に悪いという問題がある。
【0013】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、バルブの開閉両方のトルク検出を可能とし、開閉それぞれ異なったトルク値の調整を容易に行えるようにしたトルクリミッタ及び該トルクリミッタを備えたバルブアクチュエータを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、第1の技術手段は、負荷を回転駆動するための負荷側歯車と、該負荷側歯車を駆動するための駆動側歯車と、該駆動側歯車の回転を前記負荷側歯車に伝える中間歯車とを備え、前記負荷側歯車と駆動軸を介して連結されるバルブの開閉動作を制御するバルブアクチュエータに内蔵されるトルクリミッタであって、該トルクリミッタは、前記駆動側歯車及び前記中間歯車に連結される連結部と該連結部から突出する腕部とからなるトルクアームと、前記バルブの開動作時に前記負荷のトルクに比例して前記中間歯車の噛み合い接線方向に作用する力と釣り合うバネ力を前記腕部に付与する開側バネ手段と、前記バルブの閉動作時に前記負荷のトルクに比例して前記中間歯車の噛み合い接線方向に作用する力と釣り合うバネ力を前記腕部に付与する閉側バネ手段と、前記バルブの開動作時における前記負荷のトルクが所定値を超えたときに前記腕部によって動作する開側トルク検出スイッチと、前記バルブの閉動作時における前記負荷のトルクが所定値を超えたときに前記腕部によって動作する閉側トルク検出スイッチと、前記開側バネ手段及び前記閉側バネ手段に軸通されたトルクリミッタ軸とを備え、前記トルクリミッタ軸は、該トルクリミッタ軸の片端から、前記開側バネ手段のバネ力と前記閉側バネ手段のバネ力とをそれぞれ調整できるようにしたことを特徴としたものである。
【0015】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記トルクリミッタ軸は、前記開側バネ手段により付勢される開側移動コマに軸通する開側調整軸と、該開側調整軸と同軸に設けられ且つ前記閉側バネ手段により付勢される閉側移動コマに軸通する閉側調整軸とから構成され、前記開側調整軸と前記閉側調整軸は、互いに独立して回転可能とし、前記開側調整軸を回転させることにより、前記開側移動コマを移動させ、前記開側バネ手段のバネ力を調整し、また、前記閉側調整軸を回転させることにより、前記閉側移動コマを移動させ、前記閉側バネ手段のバネ力を調整することを特徴としたものである。
【0016】
第3の技術手段は、第2の技術手段において、前記開側移動コマと前記閉側移動コマとが供回りしないように回り止め手段を備えたことを特徴としたものである。
【0017】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段におけるトルクリミッタを内蔵したバルブアクチュエータである。
【0018】
第5の技術手段は、第4の技術手段において、側面に開口部を設け、該開口部近傍に、前記トルクリミッタ軸の片端を配設したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バルブの開閉両方のトルク検出を可能とし、開閉それぞれ異なったトルク値の調整をトルクリミッタ軸の片端から行えるため、組立完了後の出荷前検査でのトルク調整作業や、客先納入後の現場でのトルク調整作業を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のトルクリミッタ及び該トルクリミッタを備えたバルブアクチュエータに係る好適な実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明が適用されるバルブアクチュエータを備えた空気式バルブ調節弁の一例を示す外観図である。また、図2は、図1に示す空気式バルブ調節弁をX方向から見た状態を示す図である。図中、1はバルブアクチュエータ、2はバルブボンネット、3はバルブ本体、4はバルブディスク、5は負荷側駆動軸を示す。また、バルブアクチュエータ1は、ハンドル11、エアモータ12、マスターバルブ13を備える。
【0022】
図1において、油類などの流体が流れるバルブ本体3の内部には、流体の流れを制御するためのバルブディスク4が設けられている。このバルブディスク4は負荷側駆動軸5を介してハンドル11と連結される。自動運転の場合、スイッチボックス(図示せず)からエアモータ12を動作させて、負荷側駆動軸5を回転させることで、負荷側駆動軸5を介してバルブディスク4を上下動させる。また、手動操作の場合、ハンドル11を手動操作して、負荷側駆動軸5を回転させることで、負荷側駆動軸5を介してバルブディスク4を上下動させる。そして、バルブディスク4がバルブ本体3の下部に達したときに全閉状態となり、また、バルブディスク4がバルブボンネット2の上部に達したときに全開状態となる。
【0023】
ここで、バルブアクチュエータ1はバルブディスク4の開閉両方に対応したトルクリミッタ(後述)を内蔵する。このトルクリミッタは開閉それぞれのトルク検出スイッチを備え、閉側のトルク検出スイッチが作動すると、マスターバルブ13が作動し、エアモータ12を停止させ、負荷側駆動軸5の回転が止まり、トルクリミッタの閉動作を完了させる。また、開動作についても同様に、開側のトルク検出スイッチが作動すると、マスターバルブ13が作動し、エアモータ12を停止させ、負荷側駆動軸5の回転が止まり、トルクリミッタの開動作を完了させる。
【0024】
図3は、本発明に係るバルブアクチュエータ1の内部構造を上面から見た状態の一例を示す図である。バルブアクチュエータ1は、マスターバルブ13、閉側ロジックバルブ(LVC)14、開側ロジックバルブ(LVO)15、手動/自動切替ノブ16、トルクリミッタ17、指示部18、全閉位置検出スイッチ19、全開位置検出スイッチ20、負荷側歯車21、負荷側駆動軸22(前述の負荷側駆動軸5に相当)、中間歯車23、駆動側歯車24、第2歯車25、及び減速プレート26を備える。
【0025】
マスターバルブ13は、LVC14あるいはLVO15からの指示に従って、エアモータ12の動作を制御する。
LVC14は、スイッチボックス(図示せず)の開閉セレクタから閉操作信号を受信すると、エアモータ12を閉側に制御するようにマスターバルブ13に指示する。
LVO15は、スイッチボックス(図示せず)の開閉セレクタから開操作信号を受信すると、エアモータ12を開側に制御するようにマスターバルブ13に指示する。
【0026】
手動/自動切替ノブ16は、ハンドル11の操作によりバルブの開閉を行う手動操作と、エアモータ12によりバルブの開閉を行う自動運転とを切り替えるための切替手段である。
トルクリミッタ17は、バルブの開閉時それぞれに必要な適正トルクを検出し、エアモータ12を停止させる機構である。このトルクリミッタ17の詳細は後述の図4〜図6で説明する。
【0027】
指示部18は、負荷側歯車21の回転数を取得し、全閉位置検出スイッチ19、全開位置検出スイッチ20に指示する。
全閉位置検出スイッチ19は、指示部18が取得した負荷側歯車21の回転回数(位置)が全閉位置に相当する回転回数になったときに、これを検出するマイクロスイッチである。
全開位置検出スイッチ20は、指示部18が取得した負荷側歯車21の回転回数(位置)が全開位置に相当する回転回数になったときに、これを検出するマイクロスイッチである。なお、通常の開動作時には全開位置検出スイッチ20でエアモータ12を停止させ、このマイクロスイッチに不具合が発生した場合のバックアップ用として、開側トルクリミッタによりエアモータ12を停止させるようにしてもよい。
【0028】
そして、負荷側歯車21は、負荷側駆動軸22を介してバルブ(図示せず)と連結され、負荷を回転駆動するための歯車である。駆動側歯車24は、負荷側歯車21を駆動するための歯車である。中間歯車23は、駆動側歯車24の回転を負荷側歯車21に伝える歯車である。本例の中間歯車23は、負荷側歯車21に噛み合う歯車及び駆動側歯車24に噛み合う歯車の2つの歯車で構成される。第2歯車25は、エアモータ12に連結され、エアモータ12の駆動力を駆動側歯車24に伝達する。これらの第2歯車25,駆動側歯車24,中間歯車23は減速プレート26で固定される。
【0029】
図4は、図3に示したバルブアクチュエータ1に内蔵されたトルクリミッタ17の周辺部分の一例を示す図である。トルクリミッタ17は、駆動側歯車24の回転軸及び中間歯車23の回転軸に連結される連結部171bと連結部171bから突出する腕部171aとからなるトルクアーム171と、バルブの開動作時に負荷のトルクに比例して中間歯車23の噛み合い接線方向に作用する力P2と釣り合うバネ力P2′を腕部171aに付与する開側バネ手段172と、バルブの閉動作時に負荷のトルクに比例して中間歯車23の噛み合い接線方向に作用する力P1と釣り合うバネ力P1′を腕部171aに付与する閉側バネ手段173と、バルブの開動作時における負荷のトルクが所定値を超えたときに腕部171aによって動作する開側トルク検出スイッチ175と、バルブの閉動作時における負荷のトルクが所定値を超えたときに腕部171aによって動作する閉側トルク検出スイッチ174と、開側バネ手段172及び閉側バネ手段173に軸通されたトルクリミッタ軸176とを備える。トルクリミッタ軸176は、トルクリミッタ軸176の片端(図中、Y方向)から、開側バネ手段172のバネ力P2′と閉側バネ手段173のバネ力P1′とをそれぞれ調整できるようにしている。
【0030】
なお、トルクアーム171の連結部171bは、本例では中間歯車23の回転軸と駆動側歯車24の回転軸とに連結され、駆動側歯車24の回転軸を支点として腕部171aが形成されているが、この支点の位置は、これに限定されず、連結部171bを駆動側歯車24の回転軸から延長した延長線上の任意の一点としてもよい。
【0031】
バルブアクチュエータ1は、側面に開口部27を設けており、開口部27の近傍に、トルクリミッタ軸176の片端を配設している。そして、この開口部27に対して図示しない蓋部を着脱可能としており、トルクを調整する際には蓋部を取り外すだけで、開閉それぞれ異なったトルク値の調整をトルクリミッタ軸176の片端から行えるため、組立完了後の出荷前検査でのトルク調整作業や、客先納入後の現場でのトルク調整作業を効率的に行うことができる。
【0032】
図5は、本発明に係るトルクリミッタ17の詳細構成例を示す図である。図中、トルクリミッタ17は、図4に示したトルクアーム171、開側バネ手段172、閉側バネ手段173、閉側トルク検出スイッチ174、開側トルク検出スイッチ175、トルクリミッタ軸176を備え、さらに、軸固定ナット177、ノブナット180、調整ネジ取付金具181、閉側移動コマ182、閉側発信調整ネジ183、閉側バネ受け184、開側バネ受け185、開側発信調整ネジ186、マイクロスイッチ取付板187、開側バネ押え本体188、開側移動コマ189、コマ回り止め190、ロックナット191を示す。
【0033】
閉側トルク検出スイッチ174と開側トルク検出スイッチ175はマイクロスイッチ取付板187に取り付けられ、トルクリミッタ軸176は調整ネジ取付金具181によりバルブアクチュエータ1のケーシングに固定される。マイクロスイッチ取付板187は調整ネジ取付金具181にネジで固定される。
【0034】
開側バネ手段172は、開側バネ押え本体188に格納され、開側バネ受け185と開側移動コマ189との間で伸縮可能とする。また、閉側バネ手段173は、閉側バネ受け184と閉側移動コマ182との間で伸縮可能とする。これら開側バネ手段172と閉側バネ手段173は、例えば皿バネで構成され、トルクアーム171の腕部171aに一体的に取り付けられる。
【0035】
トルクリミッタ軸176は、開側バネ手段172により付勢される開側移動コマ189に軸通する開側調整軸176aと、開側調整軸176aと同軸に設けられ且つ閉側バネ手段173により付勢される閉側移動コマ182に軸通する閉側調整軸176bとから構成される。開側調整軸176aと閉側調整軸176bは、互いに独立して回転可能とし、開側調整軸176aを回転させることにより、開側移動コマ189を移動させ、開側バネ手段172のバネ力を調整し、また、閉側調整軸176bを回転させることにより、閉側移動コマ182を移動させ、閉側バネ手段173のバネ力を調整する。
【0036】
以下、トルクリミッタ17による開閉双方向のトルク値調整方法について説明する。
まず、軸固定ナット177、ノブナット180を緩める。閉側のトルク値を設定する場合、閉側調整軸176bにはネジ部n1,n2が形成されており、この閉側調整軸176bを所定の治具を用いて軸方向に回転させ、閉側移動コマ182を移動させる。これにより閉側バネ手段173が収縮し、バネ力を変化させ、閉側のトルク値を設定する。なお、本例では、閉側調整軸176bを時計方向に回転させると、トルク値が増加し、閉側調整軸176bを反時計方向に回転させると、トルク値が減少する。
【0037】
また、開側のトルク値を設定する場合、開側調整軸176aにはネジ部n3,n4が形成されており、この開側調整軸176aを所定の治具、本例ではマイナスドライバを溝部178に嵌めて軸方向に回転させることにより、開側移動コマ189を移動させる。これにより開側バネ手段172が収縮し、バネ力を変化させ、開側のトルク値を設定する。なお、本例では、開側調整軸176aを時計方向に回転させると、トルク値が増加し、開側調整軸176aを反時計方向に回転させると、トルク値が減少する。
【0038】
上記において、トルク調整時の閉側移動コマ182と開側移動コマ189とが供回りしないように回り止め手段として、開側にコマ回り止め190を設けている。コマ回り止め190はロックナット191で固定される。開側移動コマ189には、コマ回り止め190のネジ巾分の溝が形成されており、この溝にコマ回り止め190をねじ込んでロックナット191で固定することで、閉側移動コマ182と開側移動コマ189とが互いの軸の回転により供回りしないようにすることができる。
【0039】
また、開側のトルク値に達したときに、トルクアーム171の腕部171aが図中右方向に移動することで、開側発信調整ネジ186が開側トルク検出スイッチ(開側マイクロスイッチ)175を押す。また、閉側のトルク値に達したときに、トルクアーム171の腕部171aが図中左方向に移動することで、閉側発信調整ネジ183が閉側トルク検出スイッチ(閉側マイクロスイッチ)174を押す。これによりバルブ開閉時においてエアモータを停止させる。この際、開閉時の初動作時には、トルクアーム171が若干移動することが考えられるため、発信調整ネジとマイクロスイッチの押し釦との間に隙間を設け、誤発信を防止するようにしている。
【0040】
図6は、図4に示したバルブアクチュエータ1の開口部をY方向から見た様子を示す図である。前述したように、バルブアクチュエータ1の開口部27の近傍には、トルクリミッタ軸176の片端が配設されている。そして、この開口部27に対して図示しない蓋部を着脱可能としており、トルクを調整する際には蓋部を取り外すだけで、開閉それぞれ異なったトルク値の調整をトルクリミッタ軸176の片端から行うことができる。これにより、組立完了後の出荷前検査でのトルク調整作業や、客先納入後の現場でのトルク調整作業を効率的に行うことができる。
【0041】
図7は、本発明が適用されるバルブアクチュエータ1を備えた空気式バルブ調節弁システムの構成例を示すブロック図である。図中、6はエア3点セット、7はスイッチボックスを示す。エア3点セット6は、エアーフィルタ,減圧弁(レギュレータ),オイラ(ルブリケータ)から構成され、動力用の空気配管内に設けられる。スイッチボックス7は、全閉ランプ71,全開ランプ72,開閉セレクタスイッチ73から構成され、バルブアクチュエータ1に直付けあるいは離れた場所に設けられる。
【0042】
ユーザが開閉セレクタスイッチ73をバルブ4の閉側に操作すると、閉操作信号が閉側ロジックバルブ14に出力される。この閉操作信号を受信した閉側ロジックバルブ14は、エアモータ12を閉側に駆動するようにマスターバルブ13に指示する。マスターバルブ13は、この指示に従って、エアモータ12を閉側に駆動させる。そして、エアモータ12の駆動に伴い、減速歯車部(中間歯車23,駆動側歯車24,第2歯車25)を回転させ、これらの歯車に連結される負荷側駆動軸5を回転させ、バルブ4を閉動作させる。
【0043】
そして、閉側における所定のトルク値に達したときに、減速歯車部(23,24,25)を介してトルクアーム171が移動し、閉側トルク検出スイッチ174を動作させる。閉側トルク検出スイッチ174は、全閉停止信号を閉側ロジックバルブ14に出力し、閉側ロジックバルブ14は、エアモータ12を停止するようにマスターバルブ13に指示する。マスターバルブ13は、この指示に従って、エアモータ12を停止させ、負荷側駆動軸5の回転を停止させる。また、全閉位置検出スイッチ19(図3)は、全閉信号をスイッチボックス7に出力し、全閉ランプ71を点灯させる。
【0044】
また、ユーザが開閉セレクタスイッチ73をバルブ4の開側に操作すると、開操作信号が開側ロジックバルブ15に出力される。この開操作信号を受信した開側ロジックバルブ15は、エアモータ12を開側に駆動するようにマスターバルブ13に指示する。マスターバルブ13は、この指示に従って、エアモータ12を開側に駆動させる。そして、エアモータ12の駆動に伴い、減速歯車部(中間歯車23,駆動側歯車24,第2歯車25)を回転させ、これらの歯車に連結される負荷側駆動軸5を回転させ、バルブ4を開動作させる。
【0045】
そして、開側における所定のトルク値に達したときに、減速歯車部(23,24,25)を介してトルクアーム171が移動し、開側トルク検出スイッチ175を動作させる。開側トルク検出スイッチ175は、全開停止信号を開側ロジックバルブ15に出力し、開側ロジックバルブ15は、エアモータ12を停止するようにマスターバルブ13に指示する。マスターバルブ13は、この指示に従って、エアモータ12を停止させ、負荷側駆動軸5の回転を停止させる。また、全開位置検出スイッチ20(図3)は、全開信号をスイッチボックス7に出力し、全開ランプ72を点灯させる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明が適用されるバルブアクチュエータを備えた空気式バルブ調節弁の一例を示す外観図である。
【図2】図1に示す空気式バルブ調節弁をX方向から見た状態を示す図である。
【図3】本発明に係るバルブアクチュエータの内部構造を上面から見た状態の一例を示す図である。
【図4】図3に示したバルブアクチュエータに内蔵されたトルクリミッタの周辺部分の一例を示す図である。
【図5】本発明に係るトルクリミッタの詳細構成例を示す図である。
【図6】図4に示したバルブアクチュエータの開口部をY方向から見た様子を示す図である。
【図7】本発明が適用されるバルブアクチュエータを備えた空気式バルブ調節弁システムの構成例を示すブロック図である。
【図8】トルクリミッタの動作原理を説明するための図である。
【図9】バルブ閉動作時におけるトルクリミッタの動作状態を説明するための図である。
【図10】開閉両方にトルクリミッタを設けた場合の構造を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0047】
1…バルブアクチュエータ、2…バルブボンネット、3…バルブ本体、4…バルブディスク、5,22…負荷側駆動軸、6…エアー3点セット、7…スイッチボックス、11…ハンドル、12…エアモータ、13…マスターバルブ、14…閉側ロジックバルブ(LVC)、15…開側ロジックバルブ(LVO)、16…手動/自動切替ノブ、17…トルクリミッタ、18…指示部、19…全閉位置検出スイッチ、20…全開位置検出スイッチ、21…負荷側歯車、23…中間歯車、24…駆動側歯車、25…第2歯車、26…減速プレート、171…トルクアーム、172…開側バネ手段、173…閉側バネ手段、174…閉側トルク検出スイッチ、175…開側トルク検出スイッチ、176…トルクリミッタ軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を回転駆動するための負荷側歯車と、該負荷側歯車を駆動するための駆動側歯車と、該駆動側歯車の回転を前記負荷側歯車に伝える中間歯車とを備え、前記負荷側歯車と駆動軸を介して連結されるバルブの開閉動作を制御するバルブアクチュエータに内蔵されるトルクリミッタであって、
該トルクリミッタは、前記駆動側歯車及び前記中間歯車に連結される連結部と該連結部から突出する腕部とからなるトルクアームと、前記バルブの開動作時に前記負荷のトルクに比例して前記中間歯車の噛み合い接線方向に作用する力と釣り合うバネ力を前記腕部に付与する開側バネ手段と、前記バルブの閉動作時に前記負荷のトルクに比例して前記中間歯車の噛み合い接線方向に作用する力と釣り合うバネ力を前記腕部に付与する閉側バネ手段と、前記バルブの開動作時における前記負荷のトルクが所定値を超えたときに前記腕部によって動作する開側トルク検出スイッチと、前記バルブの閉動作時における前記負荷のトルクが所定値を超えたときに前記腕部によって動作する閉側トルク検出スイッチと、前記開側バネ手段及び前記閉側バネ手段に軸通されたトルクリミッタ軸とを備え、
前記トルクリミッタ軸は、該トルクリミッタ軸の片端から、前記開側バネ手段のバネ力と前記閉側バネ手段のバネ力とをそれぞれ調整できるようにしたことを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項2】
請求項1に記載のトルクリミッタにおいて、前記トルクリミッタ軸は、前記開側バネ手段により付勢される開側移動コマに軸通する開側調整軸と、該開側調整軸と同軸に設けられ且つ前記閉側バネ手段により付勢される閉側移動コマに軸通する閉側調整軸とから構成され、
前記開側調整軸と前記閉側調整軸は、互いに独立して回転可能とし、前記開側調整軸を回転させることにより、前記開側移動コマを移動させ、前記開側バネ手段のバネ力を調整し、また、前記閉側調整軸を回転させることにより、前記閉側移動コマを移動させ、前記閉側バネ手段のバネ力を調整することを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項3】
請求項2に記載のトルクリミッタにおいて、前記開側移動コマと前記閉側移動コマとが供回りしないように回り止め手段を備えたことを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のトルクリミッタを内蔵したバルブアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載のバルブアクチュエータにおいて、側面に開口部を設け、該開口部近傍に、前記トルクリミッタ軸の片端を配設したことを特徴とするバルブアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−121702(P2010−121702A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295569(P2008−295569)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【特許番号】特許第4391576号(P4391576)
【特許公報発行日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】