説明

トルク検定装置

【課題】「静的」な締付トルクを付加する締付工具と、該締付工具によって締め付けられる締結部品との間に組付けられ、前記締付トルクを測定するトルク検定装置であって、「動的」な締付トルクを付加する締付工具についても対応可能なトルク検定装置の提供。
【解決手段】締結部品3aを締め付ける締付工具2の締付トルクを測定するトルク測定器11と、トルク測定器11を操作するとともにトルク測定器11によって測定された締付トルクをトルク波形として取り込む操作装置12と、を有するトルク検定装置1であって、締付工具2によって締結部品3aに加えられる締付トルク(「実締付トルク」)が、連続的に付加する「静的」な締付トルクである場合と、間欠的に付加する「動的」な締付トルクである場合とに応じて、操作装置12内に取り込むトルク波形の周波数を切り替えて測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサーを備えた、ボルトやナットの締付工具において、該締付工具のトルク管理に用いられるトルク検定装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークに用いられるボルトやナット(以下、「締結部品」と記載する。)の締付工具として、ナットランナーやインパクトレンチなどが知られている。
前記締付工具にはトルクセンサーが備えられ、締結部品の締付け作業の際は、該トルクセンサーの検出値に基づいて、締結部品に加えられる締付トルクが制御されるようになっている。
従って、締付工具においては、トルク検定装置を用いてトルクセンサーを校正し、常に締付トルクのトルク管理を行って、前記トルクセンサーの精度保証を行うことが必要なのである。
【0003】
ここで、前記ナットランナーは、締結部品に対して連続的に締付トルクを加え、該締結部品を締め付ける締付工具である。
即ち、図6(a)に示すように、横軸に経過時間を表し、縦軸に締付トルクを表すこととして、ナットランナーによる締付トルクの波形(以下、「トルク波形」と記載する。)を、これら横軸および縦軸の関係によって表すと、前記トルク波形はナットランナーの運転開始直後より経過時間にともなって徐々に上昇し、ナットランナーの運転停止によって瞬時に遮断される曲線によって表される。
【0004】
このような、突発的な変動が少なく「静的」な締付トルクを付加する締付工具(ナットランナー)においては、従来から、実際に締め付けようとする締結部品と、締付工具との間に直接組付けることが可能なトルク検定装置が存在する。
従って、このようなナットランナーからなる締付工具においては、高精度なトルクセンサーの校正を行うことが可能であった。
【0005】
一方、前記インパクトレンチは、例えば作動油や圧搾空気などによって駆動されるハンマーの衝撃力を利用して、締結部品に対して間欠的に締付トルクを加え、該締結部品を締め付ける締付工具である。
即ち、図6(b)に示すように、横軸に経過時間を表し、縦軸に締付トルクを表すこととして、インパクトレンチによるトルク波形を、これら横軸および縦軸の関係によって表すと、前記トルク波形はインパクトレンチの運転開始直後より、小刻みに増減を繰り返す正弦波によって表される。
つまり、インパクトレンチにおいては、トルク波形が、運転開始から運転停止に至るまで、経過時間に伴い増加する一つの山(波形)によって表現されるナットランナーとは異なり、運転開始から運転停止に至るまで、複数の連続する山(波形)によって表現されることとなり、インパクトレンチのトルク波形の周波数は、ナットランナーに対して大きく異なるのである。
【0006】
このような、突発的な変動が多く「動的」な締付トルクを付加する締付工具(インパクトレンチ)においては、実際に締め付けようとする締結部品と、締付工具との間に直接組付けることが可能なトルク検定装置が存在せず、主に専用のトルクテスターを用いて、締付工具に備えられるトルクセンサーの校正を行っていた。
【0007】
即ち、インパクトレンチに構成される締付工具においては、トルク波形に関する周波数の違いや、衝撃力の耐久性などの理由から、ナットランナーのようにトルク検定装置を用いることが困難であり、専用のトルクテスターを余儀なく用いていた。
従って、このようなインパクトレンチに構成される締付工具においては、実際に締め付けようとする締結部品に加えられる締付トルクと、トルクテスターに加えられる締付トルクとの間に誤差を生じる可能性があり、高精度なトルクセンサーの校正を行うことが困難であった。
【0008】
そこで、インパクトレンチのような「動的」な締付トルクを付加する締付工具において、実際に締め付けようとする締結部品と、締付工具との間に直接組付けることが可能なトルク検定装置に関する技術が「特許文献1」によって示されている。
即ち、「特許文献1」においては、回転締付工具(締付工具)の回転部に設けられた回転部の捻り歪を検出する歪検出部と、該回転部に衝撃吸収手段を介して一体回転可能に設けられた信号処理部からなる回転締付工具のトルク検出装置(トルク検定装置)に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−193896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記「特許文献1」に示される技術によれば、インパクトレンチのような「動的」な締付トルクを付加する締付工具において、実際に締め付けようとする締結部品と、締付工具との間に直接組付けることが可能なトルク検定装置を実現することができる。
しかし、その反面、前記「特許文献1」によるトルク検定装置では、ナットランナーのような「静的」な締付トルクを付加する締付工具に対して、十分に対応することができなかった。
【0011】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、ナットランナーのような「静的」な締付トルクを付加する締付工具と、該締付工具によって締め付けられるボルトやナットの締結部品との間に直接組付けられ、前記締付トルクを測定するトルク検定装置であって、インパクトレンチのような「動的」な締付トルクを付加する締付工具についても対応可能なトルク検定装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、請求項1においては、締結部品を締め付ける締付工具の締付トルクを測定するトルク測定器と、該トルク測定器を操作するとともに該トルク測定器によって測定された締付トルクをトルク波形として取り込む操作装置と、を有するトルク検定装置であって、前記締付工具によって締結部品に加えられる締付トルクが、連続的に付加される「静的」な締付トルクである場合と、間欠的に付加される「動的」な締付トルクである場合とに応じて、前記操作装置内に取り込むトルク波形の周波数を切り替え可能とするものである。
【0014】
請求項2においては、請求項1に記載のトルク検定装置であって、前記トルク測定器には、前記トルク測定器を貫通する動力伝達軸が回転可能に軸支され、前記動力伝達軸は、一方の端部にて締付工具の駆動シャフトを挿嵌するとともに、他方の端部にて前記締結部品と係合可能なソケットを挿嵌し、前記トルク測定器の内部における前記動力伝達軸の外周部には、該動力伝達軸の回転角度を検知する角度センサーと、該動力伝達軸の回転トルクを検知するトルクセンサーとが内装され、前記角度センサーおよびトルクセンサーの周囲には、振動吸収材が配設されるものである。
【0015】
請求項3においては、請求項1または請求項2に記載のトルク検定装置であって、前記操作装置にはタッチパネルが備えられ、前記操作装置内に取り込むトルク波形の周波数の切り替え操作は、前記タッチパネルを介して行われるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明におけるトルク検定装置によれば、ナットランナーのような「静的」な締付トルクを付加する締付工具だけでなく、インパクトレンチのような「動的」な締付トルクを付加する締付工具に対しても、該締付工具と、該締付工具によって締め付けられるボルトやナットの締結部品との間に直接組付けられ、前記締付トルクを正確に測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係るトルク検定装置を備えるトルク検定システムの全体的な構成を示した図であって、締付工具がインパクトレンチである場合を示した構成概略図。
【図2】同じく、締付工具がナットランナーである場合を示した構成概略図。
【図3】トルク検定装置に備えられるトルク検出器の内部構造を示した断面図。
【図4】トルク検定装置に備えられる制御装置において、該制御装置に備えられるモニターの画面表示の一例を示した図であり、計測設定画面を示した概略図。
【図5】従来のトルクテスターを備えるトルク検定システムの全体的な構成を示した構成概略図。
【図6】締付工具による締付トルクのトルク波形を示した図であり、(a)は締付工具がナットランナーである場合のトルク波形を示した線図であり、(b)は締付工具がインパクトレンチである場合のトルク波形を示した線図。
【図7】トルク検定装置の操作方法を示したフローチャート。
【図8】トルク検定装置に備えられる制御装置において、該制御装置に備えられるモニターの画面表示の一例を示した図であり、計測画面を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0019】
[トルク検定システム50]
先ず、本発明を具現化するトルク検定装置1を備えたトルク検定システム50の構成について、図1、図3および図5を用いて説明する。
なお、便宜上、図1、図3および図5における上下方向は、締付工具2における駆動シャフト2bの軸方向およびトルク測定器11の上下方向をそれぞれ示すものとして規定し、以下の説明を行う。
【0020】
トルク検定システム50は、トルク検定装置1によって締付工具2のトルクセンサーを校正するためのシステムである。
ここで、締付工具2は、例えば作動油や圧搾空気などによって駆動されるハンマーの衝撃力を利用して、締結部品3aに間欠的に締付トルクを付加するインパクトレンチによって構成される。
【0021】
なお、締付工具2の構成については、インパクトレンチに限定されるものではなく、後述するようなナットランナーによって構成してもよい。
即ち、トルク検定装置1は、ナットランナーのような突発的な変動が少なく、「静的」な締付トルクを付加する締付工具102(図2を参照)に対して、締付工具102に内装されるトルクセンサー102bの校正を行う際に用いられるトルク検定装置であって、インパクトレンチのような突発的な変動が多く、「動的」な締付トルクを付加する締付工具2(図1を参照)にも対応可能とした検定装置なのである。
【0022】
図1に示すように、トルク検定システム50は締付工具2や、ボルトやナットなどの締結部品3aを有するワーク3や、これら締付工具2とワーク3との間に配設されるトルク検定装置1などにより構成される。
【0023】
そして、トルク検定装置1を用いて、実際に締付工具2が締結部品3aに付加する締付トルク(以下、「実締付トルク」と記載する。)を測定し、締付工具2に内装されるトルクセンサー(図示せず)が表示する締付トルク(以下、「設定締付トルク」と記載する。)を、前記「実締付トルク」に一致させることで、前記トルクセンサーの校正が行われるのである。
【0024】
締付工具2はワーク3の締結部品3aに締付作業を施す工具である。
締付工具2は工具本体2Aと、締付工具2の運転を制御するコントローラー2Bとを有して構成される。
【0025】
工具本体2Aは、様々な駆動機構やトルクセンサーなどを内装する本体部2aや、本体部2aより延出しつつ、軸心を中心にして回転可能に支持される駆動シャフト2bを有して構成される。
一方、コントローラー2Bは、表示部2cや様々な操作スイッチ群2dが配設されるとともに、電気コード2Cを介して本体部2aと電気的に連結されている。
【0026】
そして、操作スイッチ群2dを介して、コントローラー2Bに「設定締付トルク」が入力されると、コントローラー2Bは本体部2aに出力信号を送信する。
すると、前記出力信号を受信した本体部2aは、前述した駆動機構やトルクセンサーを介して、駆動シャフト2bを前記「設定締付トルク」によって回転駆動するのである。
なお、この際、操作スイッチ群2dを介して、コントローラー2Bに入力された「設定締付トルク」は、表示部2cによって表示されるようになっている。
【0027】
次に、トルク検定装置1の構成について説明する。
トルク検定装置1は、前述の通り、実際に締付工具2が締結部品3aに付加する「実締付トルク」を測定する装置である。
トルク検定装置1は主にトルク測定器11や操作装置12やソケット13などにより構成される。
【0028】
トルク測定器11は、締付工具2の駆動シャフト2bによって、締結部品3aに付加される「実締付トルク」を検出し、検出結果を操作装置12に送信するためのものである。
即ち、図3に示すように、トルク測定器11には、トルク測定器11を貫通する動力伝達軸11aが設けられる。
【0029】
動力伝達軸11aはトルク測定器11の内部において、軸受け11b・11bを介して回転可能に軸支される。また、動力伝達軸11aの両端部は、トルク測定器11の内部より外部に向かって各々突出している。
【0030】
そして、動力伝達軸11aの一方の端部(図3において、上方側の端部)には、嵌合穴11cが動力伝達軸11aと同軸上に形成されており、嵌合穴11cを介して、駆動シャフト2bは動力伝達軸11aと同軸上に嵌設される。
【0031】
また、動力伝達軸11aの他方の端部(図3において、下方側の端部)には、ソケット13が嵌設され、ソケット13を介して、動力伝達軸11aと、締結部品3aとが同軸上に嵌設される。
【0032】
このように、上方から下方に向かって、締付工具2の駆動シャフト2b、トルク測定器11の動力伝達軸11a、ソケット13、ワーク3の締結部品3aと順に配設されるとともに、これら部材群2b・11a・13・3aは互いに同軸上に嵌合し連結される。
【0033】
一方、トルク測定器11の内部において、動力伝達軸11aの外周部には、既知のレゾルバ式角度センサーからなる角度センサー14や、同じく既存のスリップリング式トルクセンサーからなるトルクセンサー15などが配設されている。
【0034】
そして、締付工具2(図1を参照)の駆動シャフト2bに「設定締付トルク」が付加されると、該「設定締付トルク」は動力伝達軸11a、ソケット13と伝達されて、締結部品3aに付加される。
この際、前述した「設定締付トルク」は、トルクセンサー15によって「実締付トルク」として検出され、操作装置12に送信されるのである。
【0035】
なお、トルク測定器11の内部において、角度センサー14およびトルクセンサー15は、弾性部材からなる振動吸収材16によって、各々固定保持されている。
このような構成を有することで、例えインパクトレンチからなる締付工具2(図1を参照)によって、動力伝達軸11aに「動的」な締付トルクが付加されたとしても、該締付トルクの振動は振動吸収材16によって吸収されてしまうため、角度センサー14やトルクセンサー15は、振動による悪影響を受けることがないのである。
【0036】
操作装置12は、トルク測定器11の運転を制御するための装置である。
操作装置12にはモニター12aが配設され、モニター12aには、後述する様々なタッチパネルの画面が表示されるようになっている。
【0037】
そして、操作装置12は電気コード12bを介してトルク測定器11と電気的に連結されており、前記タッチパネルの操作によって、トルク測定器11の運転が制御されるとともに、トルク測定器11によって検出された検出値が入力され、後述するように、「実締付トルク」が演算処理されるようになっている。
【0038】
このように、本実施例におけるトルク検定装置1は、インパクトレンチのような「動的」な締付トルクを付加する締付工具2に対しても、締付工具2と、締付工具2によって締め付けられる締結部品3aとの間に直接組付けられるため、前記締付トルクを正確に測定することが可能なのである。
【0039】
即ち、図5に示すように、従来においては、インパクトレンチからなる締付工具202に対して、実際に締め付けようとするボルトやナットなどの被締付部品と、締付工具202との間に直接組付けることが可能なトルク検定装置が存在せず、主に専用のトルクテスター201を用いて、締付工具202に備えられるトルクセンサーの校正を行っていた。
【0040】
より具体的には、トルクテスター201は、上面部にツール挿入部211aを有する測定器本体211と、測定器本体211と電気的に連結される制御装置212とを有して構成される。
【0041】
そして、インパクトレンチからなる締付工具202の駆動軸202aの先端部を、ツール挿入部211a内に嵌挿し、駆動軸202aを駆動回転する。すると、ツール挿入部211aを介して、測定器本体211に「実締付トルク」が伝達され、制御装置212のモニター212a上に、前記「実締付トルク」)が表示される。
【0042】
一方、締付工具202に内装されるトルクセンサー(図示せず)には、制御装置202bが電気的に連結されており、制御装置202bのモニター202c上には、駆動軸202aに付加される締付トルク(以下、「指定締付トルク」と記載する。)が表示される。
【0043】
そして、制御装置202bを操作しながら、「指定締付トルク」を「実締付トルク」に徐々に近付けて一致させることで、締付工具202に内装されるトルクセンサー(図示せず)の校正が行われる。
つまり、インパクトレンチのように、締結部品に対して「動的」な締付トルクを付加する締付工具においては、実際に締め付けようとする締結部品と、締付工具との間に直接組付けることが可能なトルク検定装置が存在せず、トルクセンサーの校正を、高精度に行うことができなかった。
【0044】
これに対して、本実施例におけるトルク検定装置1は、ナットランナーのような「静的」な締付トルクを付加する締付工具だけでなく、インパクトレンチのような「動的」な締付トルクを付加する締付工具に対しても、該締付工具と、該締付工具によって締め付けられるボルトやナットとの間に直接組付けられるため、前記締付トルクを正確に測定することが可能なのである。
【0045】
[トルク検定システム100]
次に、本発明を具現化するトルク検定装置の第二の実施形態であるトルク検定装置101を備えたトルク検定システム100の構成について、図2を用いて説明する。
なお、便宜上、図2における上下方向は、締付工具102における駆動シャフト102aの軸方向およびトルク測定器111の上下方向をそれぞれ示すものとして規定し、以下の説明を行う。
また、トルク検定装置101の構成については、前述したトルク検定システム50に備えられるトルク検定装置1と同等であるため、説明を省略する。
【0046】
トルク検定システム100は、トルク検定装置101によって締付工具102のトルクセンサー102bを校正するためのシステムである。
ここで、締付工具102は、連続的に締付トルクを付加して、締結部品103aを締め付けるナットランナーによって構成される。
【0047】
トルク検定システム100は締付工具102や、ボルトやナットなどの締結部品103aを有するワーク103や、これら締付工具102とワーク103との間に配設されるトルク検定装置101などによって構成される。
【0048】
締付工具102の駆動シャフト102aは、ワーク103の締結部品103aと互いに同軸上に配設され、これら駆動シャフト102aと締結部品103aとの間に、トルク検定装置101のトルク測定器111が配設される。
【0049】
トルク測定器111の上下方向(駆動シャフト102aの軸心方向。以下同じ。)において、一方側(締付工具102側)の端部には、動力伝達軸111aが突出しており、動力伝達軸111aの突出端部には、嵌合穴111cが動力伝達軸111aと同軸上に形成されている。また、他方側(ワーク103側)の端部には、ソケット113が動力伝達軸111aと同軸上に配設されている。
【0050】
そして、駆動シャフト102aの先端部が嵌合穴111c内に嵌挿されることで、締付工具102とトルク測定器111とは連結され、締結部品103aの頭部がソケット113の内周部に挿嵌されることで、トルク測定器111と締結部品103aとが連結される。
【0051】
こうして、互いに連結された締付工具102と、トルク検定装置101のトルク測定器111と、ワーク103の締結部品103aとにおいて、駆動シャフト102aが駆動回転すると、これにともない動力伝達軸111aも駆動回転される。
【0052】
すると、動力伝達軸111aの駆動回転にともないソケット113も駆動回転され、締結部品103aに「実締付トルク」が伝達される。また、トルク測定器111によって前記「実締付トルク」が検出され、該検出値(「実締付トルク」)は、トルク検定装置101に備えられる操作装置112のモニター112a上に表示される。
【0053】
一方、締付工具102に備えられるトルクセンサー102bには、制御装置102cが電気的に連結されており、制御装置102cのモニター102d上には、駆動シャフト102aに付加される「指定締付トルク」が表示される。
【0054】
そして、制御装置102cを操作しながら、「指定締付トルク」を「実締付トルク」に徐々に近付けて一致させることで、締付工具102に備えられるトルクセンサー102bの校正が行われるのである。
【0055】
以上のように、本発明を具現化するトルク検定装置1(101)は、変動が多く「動的」な締付トルクを付加する締付工具2(インパクトレンチ)と、変動が少なく「静的」な締付トルクを付加する締付工具102(ナットランナー)との何れであっても、実際に締め付けようとする締結部品3a(103a)と、締付工具2(102)との間に直接組付けることが可能であり、トルクセンサー102bの校正を高精度に行うことができるのである。
【0056】
[トルク検定方法]
次に、本発明を具現化すトルク検定装置1(101)の操作方法について、図4、図6および図7を用いて説明する。
【0057】
図7に示すように、先ず、トルクセンサーの校正を行う締付工具2(102)に対して、作業者は、トルク検定装置1(101)をセットする(ステップS101)。
この際、前述したように、トルク検定装置1(101)は、トルク測定器11(111)を介して、実際に締め付けようとする締結部品3a(103a)と、締付工具2(102)との間に直接組付けられる。
【0058】
締付工具2(102)へのトルク検定装置1(101)のセットが完了すると、操作装置12(112)が起動され、モニター12a(112a)上に計測設定画面40が表示される。
【0059】
計測設定画面40は、図4に示すように、複数の項目からなる入力欄41や、数値を入力する際に用いられるテンキー42などを有するタッチパネルによって構成されている。
【0060】
そして、トルクセンサーの校正を行う締付工具2(102)が、インパクトレンチのような突発的な変動が多く、「動的」な締付トルクを付加する締付工具2(以下、「動的締付方式」の締付工具2と記載する。)であるのか、あるいはナットランナーのような突発的な変動が少なく、「静的」な締付トルクを付加する締付工具102(以下、「静的締付方式」の締付工具102と記載する。)であるのかに基づき、作業者は計測設定画面40を介して、トルク検定装置1(101)の「運転モード」の切り替えを行う(ステップS102)。
【0061】
より具体的には、作業者はトルクセンサーの校正を行う締付工具が、前記「動的締付方式」の締付工具2である場合は、計測設定画面40において入力欄41のインパクトモード入力欄41aに数値「1」を入力する。
これにより、トルク検定装置1は「インパクトモード」に設定される(ステップS103)。
【0062】
また、トルクセンサーの校正を行う締付工具が、前記「静的締付方式」の締付工具102である場合は、作業者はインパクトモード入力欄41aに数値「0」を入力する。
これにより、トルク検定装置1は「非インパクトモード」に設定される(ステップS113)。
【0063】
こうして、タッチパネル方式からなる計測設定画面40において、入力欄41のインパクトモード入力欄41aに入力された数値に基づいて、トルク検定装置1(101)の「運転モード」が「インパクトモード」あるいは「非インパクトモード」の何れかに決定されるのである。
【0064】
ここで、前記「運転モード」とは、トルク測定器11(111)によって検出される締付トルクの波形(以下、「トルク波形」と記載する。)の種類に応じて予め格納された、操作装置12(112)の制御プログラムを意味する。
即ち、図6(a)に示すように、横軸に経過時間を表し、縦軸に締付トルクを表すこととして、「静的締付方式」の締付工具102によるトルク波形を、これら横軸および縦軸の関係によって表すと、前記トルク波形は締付工具102の運転開始直後より経過時間にともなって徐々に連続的に上昇し、締付工具102の運転停止によって瞬時に遮断される曲線によって表される。
【0065】
一方、図6(b)に示すように、横軸に経過時間を表し、縦軸に締付トルクを表すこととして、「動的締付方式」の締付工具2によるトルク波形を、これら横軸および縦軸の関係によって表すと、前記トルク波形は締付工具2の運転開始直後より、小刻みに増減を繰り返す正弦波によって表される。
【0066】
なお、トルク検定装置1(102)によって測定されたトルク波形は、計測設定画面40の表示方法を切り替えることによって、操作装置12のモニター12a上に表示されるようになっている。
即ち、「運転モード」の選択が「非インパクトモード」に設定された場合には、測定されたトルク波形は、図6(a)に示すような一連の曲線となって、モニター112a(図2を参照)に表示される。
また、「運転モード」の選択が「インパクトモード」に設定された場合には、測定されたトルク波形は、図6(b)に示すような正弦波からなる断片的な曲線となって、モニター12a(図1を参照)上に表示される。
【0067】
このように、「静的締付方式」の締付工具102においては、トルク波形が、締付工具102の運転開始から運転停止に渡って、経過時間に伴い増加する一つの山(波形)によって表現される一方、「動的締付方式」の締付工具2においては、トルク波形が、締付工具2の運転開始から運転停止に渡って、複数の連続する山(波形)によって表現されることとなり、これらのトルク波形の周波数は大きく異なる。
【0068】
従って、本実施例におけるトルク検定装置1(101)においては、これらトルク波形の周波数が大きく異なる「静的締付方式」の締付工具102、および「動的締付方式」の締付工具2に対して、それぞれ専用の「運転モード」を設け、タッチパネル方式からなる計測設定画面40の入力欄41(より詳しくは、インパクトモード入力欄41a)を介して、予め適切な「運転モード」を選択可能にしている。
【0069】
即ち、トルク検定装置101によってトルクセンサーの校正を行う締付工具が、ナットランナーのような「静的締付方式」の締付工具102である場合には、トルク検定装置101の設定を、予め「非インパクトモード」に切り替えることとしている。
また、トルク検定装置1によってトルクセンサーの校正を行う締付工具が、インパクトレンチのような「動的締付方式」の締付工具2である場合には、トルク検定装置1の設定を、予め「インパクトモード」に切り替えることとしている。
【0070】
そして、トルク検定装置1(101)の設定を各モードに切り替えた後、後述するように、「サンプリング数」および「サンプリング間隔」を任意に設定可能することで、本実施例におけるトルク検定装置1(101)では、これら特有の周波数からなる締付トルクの波形を操作装置12(112)内に取り込む際に、該周波数の特有の性質に見合った適切な周波数に切り替え可能としているのである。
【0071】
締付工具2(102)に関する「運転モード」の選択が完了すると、選択された「運転モード」に基づいて、さらに他の測定条件が、計測設定画面40の入力欄41を介して入力される。
【0072】
即ち、「運転モード」として「インパクトモード」が設定された場合(ステップ103)、その後、作業者は入力欄41に設けられる各項目の入力欄に、「サンプリング数」(ステップS104)、「サンプリング間隔」(ステップS105)、「トルク係数」(ステップS106)、「トルク波形フルスケール値」(ステップS107)、「角度波形フルスケール値」(ステップS108)を順に入力し、これら各項目を設定する。
【0073】
ここで、「サンプリング数」とは、実測値として操作装置12に取り込むトルク波形を再現するために取得するデータ数(測定値の数)を意味する。また、「サンプリング間隔」とは、「サンプリング数」を検出する際の時間的間隔を意味する。
そして、これら「サンプリング数」と「サンプリング間隔」との積(「サンプリング数」×「サンプリング間隔」)によって、トルク波形を再現するためのデータ総数や全体の計測時間が決定する。
【0074】
また、「トルク係数」とは、後述するように、測定されたトルク波形に基づいて、平均トルク値を算出する際における補正値を意味する。
さらに、「トルク波形フルスケール値」とは、計測設定画面40の表示方法の切り替えによって、操作装置12のモニター12a上に測定されたトルク波形を表示する場合において、縦軸に示される締付トルクの最大値を意味する。
【0075】
また、「角度波形フルスケール値」とは、計測設定画面40の表示方法の切り替えによって、操作装置12のモニター12a上に測定されたトルク波形を表示する場合において、縦軸に示される回転角度の最大値を意味する。
即ち、操作装置12のモニター12a上に測定されたトルク波形を表示する場合、横軸は通常、経過時間を示すこととしているが、インパクトレンチなどの締付工具2においては、表示されるトルク波形に関する経過時間が極めて短時間となる場合がある。
このような場合、図6(b)に示すように、例えば横軸には、回転角度としてトルク測定器11(図1を参照)の動力伝達軸11a(より詳しくは、ソケット13)の回転角度を表すこととして、モニター12a上にトルク波形を表示することとしている。
そして、前記横軸に示される回転角度の最大値は、「角度波形フルスケール値」として入力欄41に入力される。
【0076】
なお、入力欄41の計測時間入力欄41bにおいて、計測時間は前述の通り、「サンプリング数」と「サンプリング間隔」との積(「計測時間」=「サンプリング数」×「サンプリング間隔」)によって設定されるところ、「運転モード」として、「インパクトモード」が設定された場合には、これら「サンプリング数」および「サンプリング間隔」に関する数値がそれぞれ入力されると、操作装置12に格納されるプログラムによって自動的に演算処理され、該演算結果が計測時間入力欄41bに表示される。
つまり、「運転モード」として、「インパクトモード」が設定された場合には、正弦波からなる断片的な曲線(図6(b)を参照)によって示されるような、一つの山(波形)の周期が極めて短い周波数からなるトルク波形を確実に把握できるように、「サンプリング数」および「サンプリング間隔」を細かく調整しつつ任意の値に設定可能となっているのである。
【0077】
一方、「運転モード」として、「非インパクトモード」が設定された場合(ステップS113)、その後、作業者は入力欄41に設けられる各項目の入力欄に、前述した「計測時間」(ステップS114)、「トルク波形フルスケール値」(ステップS107)、「角度波形フルスケール値」(ステップS108)を順に入力し、これら各項目を設定する。
【0078】
ここで、前記「計測時間」において、「非インパクトモード」では、予め定められた「サンプリング間隔」が操作装置12に設定されており、入力欄41の計測時間入力欄41bに数値を入力することで、操作装置12に格納されるプログラムによって、「サンプリング数」は自動的に演算処理される。
つまり、「運転モード」として、「非インパクトモード」が設定された場合には、一連の連続的な曲線によって示されるとともに、「インパクトモード」に比べて一つの山(波形)の周期が比較的長い周波数からなる周波数を有したトルク波形を容易に把握できるように、「サンプリング間隔」が予め設定され、且つ「計測時間」に基づいて「サンプリング数」が自動的に把握されるようになっている。
【0079】
このように、本実施例におけるトルク検定装置1(101)においては、締付工具2(102)によって締結部品3a(103a)に加えられる「実締付トルク」が、連続的に付加する「静的」な締付トルクである場合(「非インパクトモード」に設定される場合)と、間欠的に付加する「動的」な締付トルクである場合(「インパクトモード」に設定された場合)とに応じて、「サンプリング数」および「サンプリング間隔」の設定方法を切り替えることで、操作装置12(112)内に取り込むトルク波形の周波数を切り替え可能な構成としているのである。
【0080】
ところで、各「運転モード」の選択(「インパクトモード」あるいは「非インパクトモード」)後、入力欄41による各種の測定条件の入力作業が完了すると、作業者は、図8に示す計測画面45に、操作装置12(112)のモニター12a(112a)の表示を一旦切り替え、待機する(ステップS109)。
その後、締付工具2(102)に備えられるトルクセンサーの校正が行われる(ステップS110)。
【0081】
トルクセンサーの構成は以下のようにして行われる。
即ち、締付工具2(102)の駆動シャフト2b(102a)が駆動回転され、これにともない、トルク測定器11(111)の動力伝達軸11a(111a)が駆動回転される。
【0082】
すると、動力伝達軸11a(111a)の駆動回転にともないソケット13(113)が駆動回転され、締結部品3a(103a)に「実締付トルク」が伝達される。また、トルク測定器11(111)によって前記「実締付トルク」が検出され、該検出値(「実締付トルク」)は、トルク検定装置1(101)に備えられる操作装置12(112)のモニター12a(112a)上に表示される。
【0083】
一方、締付工具2(102)に備えられるトルクセンサー(102b)には、コントローラー2B(制御装置102c)が電気的に連結されており、コントローラー2B(制御装置102c)の表示部2c(モニター102d)上には、駆動シャフト2b(102a)に付加される「指定締付トルク」が表示される。
【0084】
そして、コントローラー2B(制御装置102c)を操作しながら、「指定締付トルク」を「実締付トルク」に一致させることで、締付工具2(102)に備えられるトルクセンサー(102b)の校正が行われるのである。
【0085】
ここで、このようなトルクセンサーの校正を行う際において、「運転モード」の選択が、「インパクトモード」に設定されている場合の、「実締付トルク(TqA)」の演算方法について説明する。
【0086】
図6(b)に示すように、操作装置12には、予め「スナッグトルク値」(閾値となるトルク値)が設定されており、操作装置12に取り込まれるトルク波形の測定は、前記「スナッグトルク値」を超えた時点から開始され、前述した「計測時間」が経過した時点で終了する。
つまり、トルク波形は、「スナッグトルク値」を超えた時点から、「計測時間」によって示される時間分だけ、操作装置12に取り込まれる。
【0087】
トルク波形の測定が終了すると、該トルク波形を構成するこれら正弦波による複数の連続する山(波形)のうち、測定終了直前の山(波形)を含んだ連続する4個の山(波形)(つまり、図6(b)における山(波形)m1・m2・m3・m4)が選択される。
【0088】
その後、これら複数の山(波形)m1・m2・m3・m4に関して、「スナッグトルク値」を上回った時点から下回った時点までの最大締付トルク値(各山(波形)の頂点における締付トルク値)がそれぞれ算出され、これら最大締付トルク値(Tq1・Tq2・Tq3・Tq4)のうち、測定終了直前の山(波形)を含んだ連続する3個の山(波形)(つまり、図6(b)における山(波形)m1・m2・m3)に関する最大締付トルク値(Tq1・Tq2・Tq3)を有効と判断して、これら3個の最大締付トルク値の平均値(Tqa=(Tq1+Tq2+Tq3)/3)が求められる。
【0089】
そして、算出されたこれら3個の最大締付トルク値の平均値(Tqa)に、前述した「トルク係数(α)」が積算され、「実締付トルク(TqA)」が算出される。
つまり、「実締付トルク(TqA)」は、以下の演算式によって算出されるのである。
【0090】
TqA=α×Tqa=α×(Tq1+Tq2+Tq3)/3・・・(数式1)
【0091】
なお、前述のとおり、最大締付トルク値の平均値(Tqa)は、トルク波形を構成する4個の連続する山(波形)m1・m2・m3・m4を一旦選択し、そのうえで、測定終了直前の山(波形)を含んだ連続する3個の山(波形)(m1・m2・m3)を用いて算出することとしている。
従って、本実施例におけるトルク検定装置1では、操作装置12に取り込まれたトルク波形を構成する山(波形)が、4個以上存在しない場合、「測定不良」としてモニター12a上に異常表示がなされ、「実締付トルク(TqA)」の算出は行われないようになっている。
【0092】
一方、「運転モード」の選択が、「非インパクトモード」に設定されている場合の、「実締付トルク(TqB)」の演算方法については、以下に示す方法による。
即ち、図6(a)に示すように、操作装置12に取り込まれるトルク波形の測定は、締付工具102の駆動シャフト102aの駆動回転直後から開始され、前述した「計測時間」が経過した時点で終了する。
【0093】
トルク波形の測定が終了すると、該トルク波形の最大締付トルク値(図6(a)における締付トルク値Tqb)が算出される。
そして、該最大締付トルク値(Tqb)をもって、「実締付トルク(TqB)」が算出される。
つまり、「実締付トルク(TqB)」は、以下の演算式によって算出されるのである。
【0094】
TqB=Tqb・・・(数式2)
【0095】
なお、トルク波形の計測の終了直前に見られる、突発的に急上昇する締付トルク値(図6(a)に示す締付トルク値(Tqc))については、前記「最大締付トルク値(Tqb)」を算出するうえで省かれるようになっている。
【0096】
以上のように、本実施例におけるトルク検定装置1(101)は、締結部品3a(103a)を締め付ける締付工具2(102)の締付トルクを測定するトルク測定器11(111)と、トルク測定器11(111)を操作するとともにトルク測定器11(111)によって測定された締付トルクをトルク波形として取り込む操作装置12(112)と、を有するトルク検定装置1(101)であって、締付工具2(102)によって締結部品3a(103a)に加えられる締付トルク(「実締付トルク」)が、連続的に付加する「静的」な締付トルクである場合と、間欠的に付加する「動的」な締付トルクである場合とに応じて、操作装置12(112)内に取り込むトルク波形の周波数を切り替え可能とするものである。
【0097】
このような構成を有することで、本実施例におけるトルク検定装置1(101)によれば、ナットランナーのような「静的」な締付トルクを付加する締付工具102だけでなく、インパクトレンチのような「動的」な締付トルクを付加する締付工具2に対しても、締付工具2と、締付工具2によって締め付けられるボルトやナットの締結部品3aとの間に直接組付けられ、締付トルクを正確に測定することが可能になる。
【0098】
即ち、前述したように、「静的締付方式」の締付工具102においては、トルク波形が、締付工具102の運転開始から運転停止に渡って、経過時間に伴い増加する一つの山(波形)によって表現される一方、「動的締付方式」の締付工具2においては、トルク波形が、締付工具2の運転開始から運転停止に渡って、複数の連続する山(波形)によって表現されることとなり、これらトルク波形の周波数は大きく異なる。
よって、本実施例におけるトルク検定装置1(101)においては、締付工具2(102)によって締結部品3a(103a)に加えられる締付トルク(「実締付トルク」)が、「静的締付方式」である場合と、「動的締付方式」である場合とに応じて、「運転モード」(インパクトモード、あるいは非インパクトモード)を切り替えることとしている。
そして、トルク検定装置1(101)の設定を各モードに切り替えた後、「サンプリング数」および「サンプリング間隔」を任意に設定可能することで、本実施例におけるトルク検定装置1(101)では、これら特有の周波数からなる締付トルクの波形を操作装置12(112)内に取り込む際に、該周波数の特有の性質に見合った適切な周波数に切り替え可能としているのである。
【0099】
また、本実施例におけるトルク検定装置1(101)において、トルク測定器11(111)には、トルク測定器11(111)を貫通する動力伝達軸11a(111a)が回転可能に軸支され、動力伝達軸11a(111a)は、一方の端部にて締付工具2(102)の駆動シャフト2b(102a)を挿嵌するとともに、他方の端部にて締結部品3a(103a)と係合可能なソケット13(113)を挿嵌し、トルク測定器11(111)の内部における動力伝達軸11a(111a)の外周部には、動力伝達軸11a(111a)の回転角度を検知する角度センサー14と、動力伝達軸11a(111a)の回転トルクを検知するトルクセンサー15とが内装され、角度センサー14およびトルクセンサー15の周囲には、振動吸収材16が配設されるものである。
つまり、トルク検定装置1(101)のトルク測定器11(111)の内部において、角度センサー14およびトルクセンサー15は、弾性部材からなる振動吸収材16によって、各々固定保持されている。
【0100】
このような構成を有することで、トルク検定装置1(101)においては、例えインパクトレンチからなる締付工具2によって、トルク測定器11(111)の動力伝達軸11aに「動的」な締付トルクが付加されたとしても、該締付トルクの振動は振動吸収材16によって吸収されることとなる。
従って、トルク測定器11(111)内の角度センサー14やトルクセンサー15は、前記「動的」な締付トルクによる振動によって、悪影響を受けることもなく、前記締付トルクを正確に測定することができるのである。
【0101】
また、本実施例におけるトルク検定装置1(101)において、操作装置12(112)にはタッチパネル方式からなる計測設定画面40が備えられ、操作装置12(112)内に取り込むトルク波形の周波数の切り替え操作は、前記タッチパネル方式からなる計測設定画面40を介して行われるものである。
つまり、トルク検定装置1(101)において、「運転モード」の切り替えは、操作装置12(112)内に格納されるプログラム上において自動的に行われるのではなく、タッチパネル方式からなる計測設定画面40を介して、ハード基盤上によって行われる。
【0102】
従って、不意なプログラム上の不具合等によって、「運転モード」の切り替えについて、誤動作が発生することもなく、締付工具2(102)における締付トルクを正確に測定することができるのである。
【符号の説明】
【0103】
1・101 トルク検定装置
2・102 締付工具
2b・102a 駆動シャフト
3a・103a 締結部品
11・111 トルク測定器
11a・111a 動力伝達軸
12・112 操作装置
13・113 ソケット
14 角度センサー
15 トルクセンサー
16 振動吸収材
40 計測設定画面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結部品を締め付ける締付工具の締付トルクを測定するトルク測定器と、該トルク測定器を操作するとともに該トルク測定器によって測定された締付トルクをトルク波形として取り込む操作装置と、を有するトルク検定装置であって、
前記締付工具によって締結部品に加えられる締付トルクが、連続的に付加される「静的」な締付トルクである場合と、間欠的に付加される「動的」な締付トルクである場合とに応じて、前記操作装置内に取り込むトルク波形の周波数を切り替え可能とする、
ことを特徴とするトルク検定装置。
【請求項2】
前記トルク測定器には、前記トルク測定器を貫通する動力伝達軸が回転可能に軸支され、
前記動力伝達軸は、一方の端部にて締付工具の駆動シャフトを挿嵌するとともに、他方の端部にて前記締結部品と係合可能なソケットを挿嵌し、
前記トルク測定器の内部における前記動力伝達軸の外周部には、該動力伝達軸の回転角度を検知する角度センサーと、該動力伝達軸の回転トルクを検知するトルクセンサーとが内装され、
前記角度センサーおよびトルクセンサーの周囲には、振動吸収材が配設される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のトルク検定装置。
【請求項3】
前記操作装置にはタッチパネルが備えられ、
前記操作装置内に取り込むトルク波形の周波数の切り替え操作は、前記タッチパネルを介して行われる、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のトルク検定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−125887(P2012−125887A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279947(P2010−279947)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000158976)技研工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】