説明

トレイの横揺れ防止機構を備えたディスク装置

【課題】 ディスクを載置して搬入・搬出する為のトレイを備えたディスク装置であって、トレイの横揺れを抑えると共に、一方ではトレイの反りを無くしてディスク装置の薄型化を図ることが出来るトレイの横揺れ防止機構を備えたディスク装置の提供。
【解決手段】 トレイ21の底面にはトレイ21の搬送方向に直交する方向へ摺動可能なラックローディング25から起立するカムロッドボスが遊嵌するカム溝を形成している。このカム溝は概略L形をした第1カム溝23とトレイ後端部に湾曲して設けた第2カム溝24を有し、上記第1カム溝23はトレイ21を搬送する為のラックギア22とは反対側に形成されると共にラックローディング25から起立する第1カムロッドボス26が係合し、第2カム溝24はラックギア側に設けると共にラックローディング25から起立する第2カムロッドボス27が係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトレイがディスク交換位置へ搬送されたオープン状態での横揺れを抑制する機構を備えたディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVDなどのディスクにデータを記録する場合、又記録されているデータを再生する場合、ディスク記録再生装置が使用され、ターンテーブルにディスクを載置して高速回転する。そしてディスク上の情報トラックに情報読み取り用ビームが追従するようにトラッキング制御を行うと共に、情報トラックに正確にビームスポットを形成するようにフォーカス制御を行い、確実に情報の記録・再生が行われる。
【0003】
ところで、ディスクをターンテーブルに載置するには、搬送スライドされるトレイが使用される場合が多く、キャビネットのフロントパネルからスライドして突出するトレイにディスクを載せた状態で、該トレイが後退して上記ターンテーブルに載置される。トレイはフロントパネルに形成した開口から出入りすることが出来る。
【0004】
該トレイはディスク装置に設けているガイドレールに沿ってスライドすることが出来るように、モーターで回転するピニオンギアがトレイのラックギアと噛み合い、ディスクをセットしたり、逆に取外す場合には該トレイが搬出されてオープン状態となり、セットされたディスクはトレイが閉じることでディスク装置の内部に収容される。そして、ディスクを再生する時にはトラバースユニットが上昇してトレイに載っているディスクを押上げ、ターンテーブルにクランプした状態でスピンドルモーターが高速回転する。
【0005】
図8はディスク装置を示している平面図であり、トレイ1が搬出されたオープン状態を示している。トレイ1の上面には円形凹部の浅い段差2が形成されていて、該円形凹部にディスクが嵌ってセットされる。又下面の一方側にはラックギア4が前後方向に設けられ、他方側には概略L形のカム溝5を設けている。そしてラックギア4にはピニオンギア7が噛み合い、カム溝5にはカムロッドボス8が遊嵌している。
【0006】
上記ピニオンギア7はモーター9にて回転駆動され、該ピニオンギア7が回転することでラックギア4及びトレイ1は後退して装置内へ搬入される。該トレイ1は定められた距離を前進・後退動することで開閉することになるが、概略L形のカム溝5はラックギア4と平行を成す縦カム溝10とラックギア4に対して垂直を成す横カム溝11、及び縦カム溝10と横カム溝11の間に形成されるコーナーカム溝12から成っている。そして、縦カム溝10の後方部には湾曲して概略台形に延びた湾曲部14を形成している。
【0007】
従って、トレイ1がオープン状態に成る為に前進する場合、縦カム溝10に遊嵌しているカムロッドボス8が湾曲部14に差し掛かることで該トレイ1は停止する。又トレイ1が搬入されてクローズする為に後退する場合、縦カム溝10に遊嵌しているカムロッドボス8がコーナーカム溝12に差し掛かることで該トレイ1は停止する。すなわち、カム溝5に沿ってカムロッドボス8が動くことで、本体と成るラックローディング13が左右方向に移動し、このラックローディング13の移動に伴って図示していないスイッチをON/OFFすることによって、トレイ1を駆動するモーターの稼働/停止を行うように構成されている。
【0008】
トレイ1はフロントパネルに設けているイジェクトボタンを押すことにより、モーター9が起動してピニオンギア7が回転し、ラックギア4を送り出すと共にトレイ1が搬出されてディスク交換位置(オープン状態)にて停止する。逆に、ディスク交換位置にあるトレイ1を装置内のディスク再生位置へ搬入する際には、トレイ先端を押圧して僅かに後退させることで、トレイ1の動きに伴ってラックローディング13が僅かに左方向へと移動し、図示しないスイッチがラックローディング13の動きを感知してモーター9が起動し、ピニオンギア7が回転してラックギア4をディスク装置内部へと送り込む。
【0009】
ところで、搬出されてオープン状態のトレイ1はその後方端部がフレームに設けているガイドに支持されているだけで安定性が悪く、特にモーター9が停止する直前に横振れを発生する。すなわち、ピニオンギア7に噛合ったラックギア4には送り出す方向へ力が働き、一方、縦カム溝10に係合しているカムロッドボス8が湾曲部14に差し掛かることで、送り方向とは反対向きに滑り摩擦力が作用する。その結果、トレイには反時計方向のモーメントが発生して該トレイ1の向きが変化する。特開2003−6971号に係る「ディスク装置」は、トレイがディスク交換位置へ移動したときのトレイのガタ付きを小さくしたものである。
【0010】
上記ディスク装置は、トレイがディスク交換位置へ移動したとき、トレイ後端部に係合してガタ付きのない状態に保持するために、トレイの移動方向に延在形成された係合溝114と、該係合溝114に係合する係合ピン83b,83bを設けている。そして、トレイ12が搬出されてディスク交換位置に成った状態では該係合溝114に上記係合ピン83b,83bが係合すると共に、第2ガイド溝44にはピン83aが係合している。すなわち、2本の係合ピン83b,83bと1本のピン83aの3点にてトレイ12の横揺れが防止される構造と成っている。
【0011】
上記ディスク装置のトレイ12には第2ガイド溝44の他に、トレイ後端部に係合溝114を重複して設けることで該トレイ12の横揺れ及びガタ付きは抑制されるが、両リブにて形成した係合溝114を設けたことでトレイ下側のスペースが少なくなり、部品を配置する空間が制約されてしまい、その分だけディスク装置が厚くなる。
【特許文献1】特開2003−6971号に係るディスク装置
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように従来のディスク装置では、搬出されてディスク交換位置にあるトレイの横揺れ及びガタ付き防止機構には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、簡単な機構にて搬出状態のトレイの横揺れを抑えると共に、一方ではトレイの反りを無くしてディスク装置の薄型化を図ることが出来るトレイの横揺れ防止機構を備えたディスク装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のディスク装置は、フレームにトレイを搬送する際の駆動モーターと、駆動モーターの動力を伝達するピニオンギアと、駆動モーターの稼働・停止を行うスイッチと連結したラックローディングと、ディスクの読み込み或いはディスクへの書き込みを行うピックアップユニットやディスクを回転させる為に載置するターンテーブルを備えたトラバーユユニットを備えている。
【0014】
そして、上記トレイの底面にはピニオンギアと噛合うラックギアを一方側に設け、反対側には概略L形の第1カム溝を、又ラックギア側には第2カム溝を夫々トレイと一体的に形成している。そして、第1カム溝の後方端と第2カム溝の前方端は一部重複してトレイのスライド方向と平行に設けられている。
【0015】
ラックローディングの上部にはトレイの底面に形成される第1カム溝と第2カム溝に夫々係合する第1カムロッドボス及び第2カムロッドボスを突出して設けている。そして上記第2カム溝はストレートでなく湾曲した形状とし、ラックローディングに設けた第2カムロッドボスが第2カム溝に係合し、トレイのスライドに伴いラックローディングが移動することで駆動モーターのスイッチを動作させることが出来る。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明のディスク装置のトレイは底面の一方側にラックギアを、反対側には概略L形の第1カム溝を、さらにラックギア側のトレイ後端部に第2カム溝の位置を夫々バランスして設けることで、該トレイの強度が全体にわたって均一化し、反りの発生を防止することが出来る。このことは、トレイの搬送スライドをスムーズに実現することが出来る。
【0017】
又、第1カム溝はトレイ後端部では存在せず、その代わりに第2カム溝がその位置をラックギア側に変えてトレイ後方端へ延びている為に、第2カム溝と第1カム溝が完全に重複することはなく、従ってトレイ下方に配置する部品の制約を緩和出来ると共に、ディスク装置の薄型化が可能と成る。一方、第2カム溝がトレイに搬送力を付与するラックギア側に位置することで、湾曲した第2カム溝に係合した第2カムロッドボスとの滑り摩擦に基づいて向きを変えるように働くモーメントは小さく成り、トレイを横振れさせることなくディスク交換位置へと搬出することが出来る。
【実施例】
【0018】
図1、図2は本発明に係るディスク装置の平面図であり、図1はトレイが搬出されたディスク交換位置にある場合、図2はトレイが装置内部に搬入されている場合を表している。トレイ21下面の一方側にはラックギア22が前後方向に設けられ、他方側には概略L形の第1カム溝23を設けている。そしてラックギア22側には第2カム溝24を有し、これらラックギア22、第1カム溝23、及び第2カム溝24はトレイ21と一体成形されている。
【0019】
左右方向へスライドすることでトラバースユニットを上下動する為のラックローディング25の上部には第1カムロッドボス26と第2カムロッドボス27が突出し、第1カムロッドボス26は第1カム溝23に係合し、第2カムロッドボス27は第2カム溝24に係合する。図2はトレイ21がディスク装置内部へ搬入されている状態で、この位置から該トレイ21がディスク交換位置に搬出される場合、モーターにてピニオンギアが回転するならば、噛合っているラックギア22が移動してトレイ21がスライドする。
【0020】
ここで、ラックローディング25が左方向へ移動してトラバースユニット30を降下し、同時に第1カム溝23の横カム溝28に係合している第1カムロッドボス26は左側へ移動し、ラックギア22に噛合っているピニオンギアが回転するならば、トレイ21は搬出スライドする。そして第1カム溝23は第1カムロッドボス26を拘束しながら移動し、縦カム溝29の後方端にて第1カムロッドボス26は第1カム溝23から外れる。それと同時に、第2カムロッドボス27が第2カム溝24に係合することに成る。
【0021】
図3はディスク装置の側部断面図であり、(a)はトレイ21がディスク装置内部へと搬入されている場合、(b)はトレイ21がディスク交換位置へと搬出されている場合である。トレイ21が搬入されている場合にはトラバースユニット30は上昇し、トレイ21が搬出状態にある時はトラバースユニット30は降下している。
【0022】
図3(a)は図2に相当し、図3(b)は図1に相当するが、トレイ21が搬送スライドするときには上記トラバースユニット30が降下している。そして、トレイ21が装置内に搬入されたところでトラバースユニット30が上昇してトレイ21に載置されたディスクがターンテーブル32に載置される。
【0023】
図4はトレイ21を単独で表した場合であるが、ラックギア22を一方側に設け、他方側には第1カム溝23を形成している。そして第2カム溝24はラックギア22側に設けている。このように、ラックギア22と第1カム溝23及び第2カム溝24を一方に片寄ることなくトレイ全体にバランスして設けることで、トレイ21の強度が均一化されると共に成形後の反りを防止することができる。そして、後端部中央には凹部33を形成している。
【0024】
このように、トレイ21に反りがないことで搬送スライドをスムーズに行うことが出来る。そして、第1カム溝23の後端と第2カム溝24先端とは互いに重複するように設けられ、しかも第2カム溝24はストレートではなく湾曲した形状と成っている。そこで、トレイ21が搬出行程にある場合、第1カム溝23の後端が第1カムロッドボス26から離れる前に第2カム溝24の先端が第2カムロッドボス27と係合するような位置関係と成っている。
【0025】
そして、第2カム溝24は湾曲している為に、トレイ21がオープン状態に成る手前では、ラックローディング25が左方向へ移動してスイッチを動作し、トレイ21が停止するように駆動モーターが制御される。ここで、ピニオンギアの回転によってラックギア22は送り出される方向へ力が作用し、第2カムロッドボス27が湾曲した第2カム溝24へ進入することで、該第2カムロッドボス27と第2カム溝24との滑り摩擦によってトレイ21には反対向きに力が働く。
【0026】
しかし、第2カム溝24をラックギア22側に設けていることで、発生するモーメントは小さく、トレイ21の向きを変えるほどの影響はない。前記図8に示す従来のトレイ1のごとく、ラックギア4とカム溝5との距離が大きくなれば、カムロッドボス8とカム溝5との滑り摩擦力が同じであっても、発生するモーメントは大きく成って、トレイの向きを変える力となる。
【0027】
図5(a)はトレイ21が収納されている場合のラックローディング位置での断面図、図5(b)はトレイ21がディスク交換位置へ搬出された状態でのラックローディング位置での断面図を示している。同図に示すように、第1カム溝23及び第2カム溝24はトレイ21の底面にリブ35,35を沿設することで形成される為に、該リブ35,35はトレイ21を補強することが出来、又ラックギア22もトレイ21の底面に下方へ突出して形成されることで補強することが出来る。本発明では、これらラックギア22、第1カム溝23、及び第2カム溝24をトレイ全体にバランスして設けている。
【0028】
図6はトレイ21を示す別形態であり、第1カム溝23の形状が前記図4に示したトレイ21とは違っている。すなわち、縦カム溝29はなくて一方側にリブ35を沿設し、しかしコーナーカム溝31及び横カム溝28は形成している。すなわち、トレイ自体はフレームに設けているガイドに拘束されて直進スライドし、その為にラックローディング25が位置ズレすることもなく、縦カム溝29をなくしても該ラックローディング25を規制することが出来る。図7はこのトレイをフレームに装着し、該トレイ21が収納されている場合である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】トレイがディスク交換位置のオープン状態にあるディスク装置。
【図2】トレイが収納されている状態のディスク装置。
【図3】(a)はトレイが収納状態の側部断面図、(b)はトレイがオープン状態の側部断面図。
【図4】トレイの具体例。
【図5】(a)はトレイが収納状態にあるラックローディング位置での断面図、(b)はトレイがオープン状態でのラックローディング位置での断面図。
【図6】別のトレイを示す具体例。
【図7】トレイが収納されている状態のディスク装置。
【図8】トレイがオープン状態にある従来のディスク装置。
【符号の説明】
【0030】
21 トレイ
22 ラックギア
23 第1カム溝
24 第2カム溝
25 ラックローディング
26 第1カムロッドボス
27 第2カムロッドボス
28 横カム溝
29 縦カム溝
30 トラバースユニット
31 コーナーカム溝
32 ターンテーブル
33 凹部
35 リブ


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを載置して搬入・搬出する為のトレイを備えたディスク装置において、該トレイの底面にはトレイの搬送方向に直交する方向へ摺動可能なラックローディングから起立するカムロッドボスが遊嵌するカム溝を形成し、該カム溝は概略L形をした第1カム溝とトレイ後端部に湾曲して設けた第2カム溝を有し、上記第1カム溝はトレイを搬送する為にモーターにて駆動されるピニオンギアが噛合うラックギアとは反対側に形成されると共にラックローディングから起立する第1カムロッドボスが係合し、第2カム溝はラックギア側に設けると共にラックローディングから起立する第2カムロッドボスが係合することを特徴とするトレイの横揺れ防止機構を備えたディスク装置。
【請求項2】
上記概略L形の第1カム溝における縦カム溝を、一方側リブのみで形成した請求項1記載のトレイの横揺れ防止機構を備えたディスク装置。
【請求項3】
上記トレイの後端部に凹部を形成した請求項1、又は請求項2記載のトレイの横揺れ防止機構を備えたディスク装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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