説明

トレイ

【課題】小型の円柱状部品においては、係止用の孔を設けることが困難であるため、安定した部品の洗浄・搬送等が困難であった。
【解決手段】円柱形状をした部品12が複数個収納されるトレイ11において、トレイ11は、部品12の側面12aに当接してX方向13aの位置決めをする溝15と、部品12の端面12bの周縁部12cに当接してY方向13bの位置決めをするR部17を有し、このトレイ11を重ねることにより、部品12のZ方向13cの位置決めをするものである。これにより、所期の目的を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッド形状をした部品の洗浄や運搬に用いるトレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のトレイについて説明する。従来のトレイ1は図9に示すように、洗浄される部品2を支持棒3が貫通しており、この支持棒3に貫通された状態でトレイ1内に挿入される。このトレイ1内には洗浄液5(図示せず)が注入されており、この洗浄液5で部品2を洗浄するものであった。
【0003】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】実開昭58−35990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのような従来のトレイ1では、洗浄される部品2を支持棒3が貫通するため、部品2には、支持棒3を貫通させるための孔を設ける必要があった。そのため、洗浄される部品2は孔を有するか或いは改めて係止用の孔を設ける必要があった。従って、例えば円柱形状をしたレーザロッドのように、係止用の孔の無い部品、或いは係止用の孔を設けることができない部品の支持をすることはできなかった。
【0005】
そこで本発明は、このような問題を解決したもので、係止用の孔が無くとも部品を支持することができるトレイを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のトレイは、円柱形状をした部品の側面に当接してX方向の位置決めをする傾斜付きの溝と、前記部品の端面の周縁部に当接してY方向の位置決めをするR部を有する前記部品支持部を複数備えたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明は、前記トレイは積層することが可能であり、前記トレイを積層した時、前記積層されたトレイを固定することを特徴とする前記トレイ用のロックパーツも備えている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明によれば、円柱形状をした部品が複数個収納されるトレイにおいて、前記トレイは、前記部品の側面に当接してX方向の位置決めをする傾斜付の溝と、前記部品の端面の周縁部に当接してY方向の位置決めをするR部を有し、また、前記トレイを積層したときに、下層のトレイの前記部品のZ方向の位置決めを上層のトレイで行なうことができるので、X,Y,Z各方向に部品の位置決め(固定)をすることができる。
【0009】
従って、レーザロッドのように係止用の孔を設けることができない部品でも容易に支持することができるので、部品の洗浄、或いは運搬等に使用することができる。
【0010】
また、Y方向の位置決めは、端面の周縁部をR部に当接させて位置決めするので、部品の端面にR部分が接触することはなく、端面を汚したり傷つけたりすることはない。これは、部品としてレーザロッドを用いた場合、特に重要なことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明のトレイの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1におけるトレイ11の要部斜視図である。また、図2は、部品12及びその周辺部分を示す要部拡大平面図である。
【0013】
このトレイ11内には、円柱形状をした部品12がY方向(部品12の長手方向)13bに4列(図4、図5参照)と、X方向(部品12の短手方向)13aに16個(図4、図5参照)収納可能に設けられている。従って、一つのトレイ11内に部品12を(16×4=)64個収納することができる。
【0014】
部品12は、本実施の形態1においてはガラスやセラミック等で形成されたレーザロッドを示している。一般的にこの部品12の側面12a(図2参照)の長さ寸法は、10〜150mmであり、端面12b(図2参照)の直径は1.5〜8mmであり、本実施の形態においては長さ25mm、直径2mmである。
【0015】
トレイ11の材質は樹脂で形成されている。これは部品12より軟らかい材質である樹脂を用いることにより、運搬時の振動により部品12に傷をつけないためである。
【0016】
トレイ11には、2つの傾斜部からなる溝15が複数設けられ、各傾斜部が部品12と接することによりX方向13aの位置決めを行い、部品12の一方の端部近傍と他端部近傍で接することによりトレイ11上に部品12を保持している。すなわち、部品12は2つの溝15によって保持されている。
【0017】
ここで、溝15が部品12と接している厚みは薄いほうが望ましく、部品12を小面積で保持することにより、洗浄時に溝15と部品12の接触部にも洗浄液が入りやすくなり、部品12の全面を洗浄することができる。なお、溝15は、傾斜部を有していることが重要であり、図1或いは図6に示すように、溝15の底面が水平に形成された逆台形だけでなく、2つの傾斜部のみで形成されるV形(図示せず)等もこの溝15の概念に含まれるものとする。
【0018】
図2において、17はトレイ11に設けられたR部であり、このR部17は、部品12の一方側の端面12bと、他方側の端面12bの稜線(角)12cを夫々2箇所で支持しており、一方の端面12bの稜線12cにつき2つのR部17が対となっている。
【0019】
より詳細には、R部17の一点17aが部品12の端面12bの稜線12cにおいて接することにより支えられY方向13b(部品12の長手方向:図1参照)の位置決めをしている。従って、部品12はR部17の一点17aで接しているのみであるため、洗浄時には、洗浄液が接触部に入りやすくなり、部品12の端面12b全面を洗浄することができる。
【0020】
また、Y方向13bの位置決めは、端面12bの稜線12cをR部17の一点17aに当接させて位置決め固定するため、部品12の端面12bにR部17が接触することはなく、端面12bを汚したり傷つけたりすることはない。これは、部品12としてレーザロッドを用いた場合、特に重要なことである。
【0021】
ここで、V溝15間の距離は、部品12の直径の略3倍としている。従って、部品12とこの部品12に隣接する部品12の間には十分な隙間が形成され、部品12には十分な洗浄液5が行き渡り、十分に夫々の部品12を洗浄することができる。
図3は、トレイ11が積層された状態における支持装置10の溝15を含む要部断面図である。トレイ11には、部品12が収納されており、更にこの部品12が収納されたトレイ11が5個(トレイ11a〜11e)、支持装置10に積層されている。
【0022】
即ち、トレイ11を積層することにより、溝15を含むトレイ本体部14上面とトレイ11底面、例えばトレイ11dのトレイ本体部14上面とトレイ11eの底面が当接され、溝15に保持された部品12のZ方向(トレイ11の積層方向)13cが位置決め固定される。ここで上記のX方向13a、Y方向13b、Z方向13cは夫々90度異なる3次元の方向である。
【0023】
以上説明したように、トレイ11内への部品12の収納により、部品12はX方向13a、Y方向13bが位置決め固定される。即ち、部品12は、溝15内に載置されてX方向13aが位置決めされるとともに、R部17によりY方向13bが位置決めされる。部品12はトレイ11内でX方向13a、Y方向13bの位置決めをされた状態で洗浄液5内へ入れられて洗浄(例えば、超音波洗浄)が行われる。
【0024】
また、トレイ11を積層することにより、Z方向13cが位置決めされる。このようにして、部品12は、孔等の係止部を設けることなく、X方向13a,Y方向13b,Z方向13cが位置決めされる。
【0025】
なお、一番上方のトレイ11(図3におけるトレイ11e)には部品12を収納していない。このトレイ11eは、その下方のトレイ11dに収納された部品12のZ方向13cの位置決めに用いられている。
【0026】
図4は、Z方向13cの位置決め方法を説明する全体斜視図である。先ず、図4(a)に示すように、夫々のトレイ11(11a〜11d)に部品12を収納する。このとき、一番上のトレイ11eには部品12を収納しない。
【0027】
次に、図4(b)に示すように、部品12が収納されたトレイ11a〜11dと、部品12の未挿入のトレイ11eを積層する。そして、図4(c)に示すように、積層されたトレイ11a〜11eを「コ」の字型をした2個のロックパーツ18を用いることにより係止して一体化する。このように、ロックパーツ18で積層されたトレイ11a〜11eを固定することにより、部品12のZ方向13cが位置決めされる。従って、この状態で部品12の運搬を行う。
【0028】
トレイ11a〜11eが積層されたその対向面を2個のロックパーツ18で係止しているが、このロックパーツ18は特に「コ」の字型である必要はなく、積層物を係止するものであれば、他のものでも良い。
【0029】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2におけるトレイ21(実施の形態1におけるトレイ11に相当)の全体斜視図である。実施の形態2では、R部23(実施の形態1におけるR部17に相当)について説明する。なお、実施の形態1と同じ部分については同符号を付し、説明を簡略化している。これは以降の実施の形態に関しても同様である。
【0030】
図6は、R部23及びその周辺部分(図5の点線22の部分)の要部拡大斜視図である。図6において、R部23にはZ方向13cにスリット24が5個設けられている。このスリット24は、上段に形成された幅広のスリット24aと、このスリット24aに連結するとともに、下段に形成された幅狭のスリット24bとにより形成されている。
【0031】
これ等のスリット24は、実施の形態1で説明したトレイ11を用いて部品12の洗浄を行う場合、部品12の稜線12cがR部17と接触した場合、毛管力により洗浄液5が部材12から落ち切らずシミの原因となることを予防するものである。そのため、実施の形態2では、トレイ21のR部23にスリット24を設けて、部品12の稜線12cとR部23間に残った洗浄液5を毛管力によりスリット24へ引っ張りシミの原因となる洗浄液5を部材12から除去するために設けたものである。
【0032】
また、このスリット24は、図7(a)に示すように、上段と下段が同じ幅のスリット24cより、図7(b)に示すように、上段に形成されたスリット24aより、下段に形成されたスリット24bの幅を狭くすることが好ましい。その理由は、図7(a)に示すような同幅のスリット24cでは、毛管力により洗浄液5は、スリット24c内に留まりやすくなるからである。即ち、洗浄液5は洗浄滴5cとなって付着し、スリット24cから落ち切らないことも考えられる。
【0033】
これに対して、図7(b)に示すように、スリット24を幅広のスリット24aと幅狭のスリット24bを連結させることにより、下段のスリット24bが上段のスリット24a内の洗浄液5をより強い毛管力により引き出すので、部品12に洗浄液5が付着して残ることを更に防止することができる。即ち、部品12に洗浄液5によるシミを更に防止することができる。
【0034】
下段のスリット24bの幅は、上段のスリット24aの幅の略半分であり、その長さは略3分の1である。
【0035】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3におけるトレイ31(実施の形態1におけるトレイ11に相当)の要部拡大斜視図である。実施の形態3においても実施の形態2と同様、R部32(実施の形態1におけるR部17に相当)について説明する。
【0036】
図8(a)において、R部32にはスリット33がZ方向13cに5個設けられている。このスリット33は、図8(b)に示すように手前側(R部32の外縁)に形成された幅広のスリット33aと、このスリット33aに連結されるとともに、奥側に形成された幅狭のスリット33bとで形成されている。
【0037】
これ等のスリット33も実施の形態2と同様であって、実施の形態1に示したトレイ11を用いて部品12の洗浄を行う場合、部品12の稜線12cがR部32と接触すると、毛管力により洗浄液5が部品12から落ち切らずシミの原因となることを予防するものである。これを軽減するため、実施の形態3では、トレイ31(図示せず)のR部32にスリット33を設けて、部品12とR部32間に残った洗浄液5を毛管力によりスリット33b側へ引っ張り、シミの原因となる洗浄液5を部品12から更に除去するために設けたものである。
【0038】
このように、手前側と奥側に連結した2種類のスリット33a及び33bを設けることにより、図8(c)に示すように、奥側のスリット33bが手前側のスリット33a内の洗浄液5を、より強い毛管力により引き込むため、部品12の稜線12cに洗浄液5が付着して残ることを更に防止するものである。即ち、部品12に洗浄液5によるシミを防止することがより確実にできることになる。
【0039】
奥側のスリット33bの幅は、手前側のスリット33aの幅の略3分の1であり、その深さは略同じである。
【0040】
なお、同様の理由で、図8(a)に示す溝15の傾斜面15aにもスリット33、或いはスリット24を設けることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明にかかるトレイは、係止用の孔が無くとも部品を確実に支持固定することができるので、どのような形状の部品でも、その洗浄・搬送等を行う際に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1におけるトレイの要部斜視図
【図2】同要部拡大平面図
【図3】同積層されたトレイの要部断面図
【図4】同積層されたトレイの全体斜視図、(a)は同第1の状態における斜視図、(b)は同第2の状態における斜視図、(c)は同第3の状態における斜視図
【図5】同実施の形態2におけるトレイの全体斜視図
【図6】同要部斜視図
【図7】同洗浄液の状態を示す断面図、(a)は同第1の例における断面図、(b)は同第2の例における断面図
【図8】同実施の形態3におけるトレイの要部拡大斜視図、(a)は同要部斜視図、(b)は同要部拡大斜視図、(c)は同要部説明断面図
【図9】従来のトレイの斜視図
【符号の説明】
【0043】
11 トレイ
12 部品
12a 側面
12b 端面
12c 稜線
13a X方向
13b Y方向
13c Z方向
15 溝
17 R部
18 ロックパーツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状をした部品の側面に当接してX方向の位置決めをする傾斜付きの溝と、前記部品の端面の周縁部に当接してY方向の位置決めをするR部を有する前記部品支持部を複数備えたトレイ。
【請求項2】
前記部品支持部の材質は、前記トレイに収納する部品の材質より柔らかい材質を用いた請求項1に記載のトレイ。
【請求項3】
前記部品支持部のR部には複数個の第1のスリットがZ方向に設けられた請求項1に記載のトレイ。
【請求項4】
前記第1のスリットは、Z方向において上段と下段で幅が異なる形状を有しており、下段のスリット幅は上段のスリット幅より狭くした請求項3に記載のトレイ。
【請求項5】
前記第1のスリットは、手前と奥側で幅が異なる形状を有しており、前記奥側のスリット幅は前記手前のスリット幅より狭くした請求項3に記載のトレイ。
【請求項6】
前記溝には複数個の第2のスリットが前記溝の傾斜方向に設けられた請求項1に記載のトレイ。
【請求項7】
前記トレイは積層することが可能であり、前記トレイを積層した時、前記積層されたトレイをロックパーツにて固定可能なことを特徴とする請求項1に記載のトレイ。
【請求項8】
前記トレイを積層したときに、下層のトレイの前記部品のZ方向の位置決めを上層のトレイで行なうことを特徴とする請求項1に記載のトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−100290(P2010−100290A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270584(P2008−270584)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】