説明

トンネルの水路構造体及びトンネル構造

【課題】トンネル内に漏出した危険な液体を連続的に処理して周囲に拡散することを防止することが可能であり、経済性と安全性の両面を達成できるトンネルの水路構造体を提供する。
【解決手段】底面部11と両側の側壁12・12と上面部13とから構成される四角筒状で矩形水路14が内設され、トンネルの路側に設けられるトンネルの水路構造体であって、上面部13に、矩形水路14の延びる方向に連続して延びる連続溝15が設けられ、連続溝15に、矩形水路14に貫通する呑口57が連続溝15の延びる方向に離間して所定間隔で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの路側に設けられるコンクリート製等の水路構造体及びトンネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水、事故で漏れたオイル、事故処理の薬液等を排水するために、トンネルの路側には円形水路が設けられているが、円形水路に替わる矩形水路も提案されている。この矩形水路は、図7に示すように、底面部51と両側の側壁52、52と上面部53とから構成される細長四角筒状の水路構造体50に設けられ、水路構造体50の内部が水が流通する矩形水路54になっている。上面部53には、内部の矩形水路54に貫通する路面排水取入用の短冊形状の呑口57が形成され、呑口57は水路構造体50の長手方向に互いに離間して所定間隔で配置されている(特許文献1参照)。
【0003】
この矩形水路54は、同一水量を流す円形水路よりも水路構造体50の高さを低くすることができるため、トンネルの掘り下げ量、埋め戻し量、コンクリート量を減らすことができ、材料費や工事費を低減することができると共に、トンネル断面の縮小化を図れるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−45399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記矩形水路54の水路構造体50は、上面部53の強度を確保するために呑口57を連続させずに断続的に設ける必要があるが、この構造では、万一の火災時等にガソリン等の危険な液体の漏洩を呑口で連続的に処理することができず、呑口57と呑口57との間に危険な液体が溜まって周囲に拡散する可能性がある。そのため、危険な液体を連続的に処理して周囲に拡散することを防止でき、経済性と安全性の両面を達成できる水路構造が求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、トンネル内に漏出した危険な液体を連続的に処理して周囲に拡散することを防止することが可能であり、経済性と安全性の両面を達成できるトンネルの水路構造体及びトンネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトンネルの水路構造体は、底面部と両側の側壁と上面部とから構成される四角筒状で内部に矩形水路を有し、トンネルの路側に設けられるトンネルの水路構造体であって、前記上面部に、前記矩形水路の延びる方向に連続して延びる有底の連続溝が設けられ、前記連続溝に、前記矩形水路に貫通する呑口が前記連続溝の延びる方向に離間して所定間隔で形成されることを特徴とする。
前記構成では、矩形水路の延びる方向に連続する連続溝に液体を線状に排水して一旦溜めてから流すことができるので、火災時等にトンネル内に漏出した危険な液体を連続溝に溜めて連続的に処理し、周囲に拡散することを防止することができる。従って、矩形水路による経済性と安全性の両面を達成することができる。また、連続溝の下側部分で上面部は連結されているので、上面部及び水路構造体の必要強度を確保することができる。
【0008】
本発明のトンネルの水路構造体は、前記連続溝が蛇行して設けられることを特徴とする。
前記構成では、渋滞時等に水路構造体上を二輪車が万一走行した場合に対応し、二輪車の安全性を確保することができる。即ち、二輪車は走行特性上、走行方向に直線状に延伸する溝があると前後輪のうち何れか一方がずれてスリップし、バランスを崩して危険であるが、この危険を回避することができる。
【0009】
本発明のトンネルの水路構造体は、前記連続溝の幅が5cm以上6cm以下、深さが5cm以上とされると共に、前記連続溝の下側の架橋部の内部に補強鉄筋が配置されることを特徴とする。
前記構成では、連続溝の幅を5cm以上、深さを5cm以上とすることにより、トンネル内に危険な液体が漏出した場合等に、その液体を確実に連続溝に線状排水して連続的に処理し、周囲に拡散することをより確実に防止することができると共に、連続溝の幅を6cm以下とすることにより、二輪車等の車輪が溝内に脱落するのを防止することができる。また、連続溝の下側の架橋部の内部に補強鉄筋が配置されることにより、水路構造体の必要強度をより確実に確保することができる。
【0010】
本発明のトンネル構造は、底面部と両側の側壁と上面部とから構成される四角筒状で内部に矩形水路を有し、前記上面部に、前記矩形水路の延びる方向に連続して延びる有底の連続溝が設けられ、前記上面部の表面が両側の側壁から連続溝に向けて下がる方向の傾斜形状に形成され、前記連続溝に、前記矩形水路に貫通する呑口が前記連続溝の延びる方向に離間して所定間隔で形成されるトンネルの水路構造体が、トンネルの路側に設けられることを特徴とする。
前記構成では、トンネルの水路構造体が、通常道路トンネルの路面に形成される道路中心から側壁に向けて下がる方向の傾斜に対応した傾斜形状の表面に形成されているため、矩形水路の延びる方向に連続する連続溝に液体を迅速に導水することができるので、火災時等にトンネル内に漏出した危険な液体を道路に滞留させずに連続溝に速やかに排水して連続的に処理し、周囲に拡散することを防止することができる。従って、矩形水路による経済性と安全性の両面を達成することができる。また、連続溝の下側部分で上面部は連結されているので、上面部及び水路構造体の必要強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトンネルの水路構造体或いはトンネル構造は、矩形水路の延びる方向に連続する連続溝に液体を線状に排水して一旦溜めてから流すことができるので、火災時等にトンネル内に漏出した危険な液体を連続溝に溜めて連続的に処理し、周囲に拡散することを防止することができる。従って、矩形水路による経済性と安全性の両面を達成することができる。また、連続溝の下側部分で上面部は連結されているので、上面部及び水路構造体の必要強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明による第1実施形態のトンネルの水路構造体を示す斜視図、(b)は同図(a)のA−A断面図、(c)は同図(a)のB−B断面図。
【図2】本発明による第1実施形態のトンネルの水路構造体を示す平面図。
【図3】第1実施形態のトンネルの水路構造体をトンネルに設置した状態を示す部分断面説明図。
【図4】(a)は矩形水路の水路構造体の断面図、(b)は比較例である円形水路の水路構造体の断面図。
【図5】本発明による第2実施形態のトンネルの水路構造体を示す斜視図。
【図6】(a)は第2実施形態のトンネルの水路構造体の平面図、(b)はその正面図、(c)はその縦断面図。
【図7】(a)は従来のトンネルの水路構造体を示す斜視図、(b)は同図(a)のA−A断面図、(c)は同図(a)のB−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態のトンネルの水路構造体及びトンネル構造〕
本発明による第1実施形態のトンネルの水路構造体及びトンネル構造について説明する。図1及び図2は第1実施形態のトンネルの水路構造体を示す図である。
【0014】
第1実施形態のトンネルの水路構造体10は、コンクリート等により予め工場等で生産され、トンネルの路側に設けられるものであり、図1及び図2に示すように、底面部11と、その両側で立設する側壁12・12と、側壁12・12の上端間に設けられる上面部13とから構成される四角筒状であり、その内部には中空の矩形水路14が内設されている。矩形水路14は横断面視で略横長矩形状になっている。水路構造体10内には、矩形水路の延びる方向に延びる主筋21と、主筋21に交差し底面部11、側壁12・12、上面部13を矩形に囲う形のフープ筋22が、所定間隔で(図示例においては水路延伸方向200mmごとに)設けられている。上面部13の表面は、両側の側壁12・12から連続溝15に向けて下がる方向の傾斜形状に形成され、この傾斜は図示例においてはそれぞれ2%勾配(通常の道路に設定される勾配と同等)が設定されている。
【0015】
上面部13には、矩形水路14の延びる方向に連続して延び且つ矩形水路14に沿って線状(本例では直線状)に延びる有底の連続溝15が設けられ、連続溝15はトンネルの路側に設置した際に壁際側に寄る様に一方側の側壁12に寄った位置に形成されている。また、連続溝15の下側は連続溝15の両側の上面部13の部分を架橋する架橋部16になっている。連続溝15の幅tは5cm以上6cm以下、連続溝15の深さは5cm以上とし、又、連続溝15の下側の架橋部16には補強鉄筋としてフープ筋22が配置されており、架橋部16の厚さはフープ筋22が十分なコンクリートかぶり厚さを確保する厚さとすると好適である。尚、連続溝15は、水路構造体10及び矩形水路14が曲線状に延びる場合には、これに沿って曲線状に形成するとよい。
【0016】
連続溝15には、矩形水路に貫通する呑口17が連続溝15の延びる方向に離間して所定間隔で複数形成され、各呑口17は架橋部16に貫通して形成されている。本例の呑口17は連続溝15の幅と同幅で矩形に形成されている。呑口17は、架橋部16のフープ筋22のかぶり分のコンクリートを避けた形でそれ以外の部分全てを開口するように形成すると好適である。
【0017】
トンネルの水路構造体10は、例えば図3に示すトンネル100の路側に設置される。トンネル100の中央部分は自動車道路101になっていると共に、その側壁102側に監視員等が歩行する通路103が一段高くなるようにして形成されている。そして、自動車道路101と通路103との間に水路構造体10が埋め込まれて設けられる。水路構造体10は、連続溝15が寄っている側を通路103側にして配置され、自動車道路101の路面と上面部13の上面が連続するように設けられると共に、複数の水路構造体10が矩形水路14を連続するようにして連設される。また、連続溝15の側壁102側の端縁から上方に立設するようにして段差壁104が設けられ、段差壁104の上面が通路103と略同一面とされている。
【0018】
尚、図4に示すように、矩形水路14の水路構造体10は、同じ排水量で同じコンクリート巻厚の円形水路64の水路構造体60に対し、深さを浅くして必要なトンネル掘下量を小さくし、必要なコンクリート量を少なくすることができる。図4の例では、矩形水路14の水路構造体10の深さD1は円形水路64の水路構造体60の深さD2に対して18%浅くすることができ、又、矩形水路14の水路構造体10のコンクリート量は円形水路64の水路構造体60に対して16%少なくすることができる。
【0019】
自動車道路101は、中央よりも側壁102側の端部が低くなるように(通常2%程度の勾配)形成されており、自動車道路101の路面の水や漏出した液体等は水路構造体10の方に流れる。そして、水路構造体10の上面部13の表面は、両側の側壁12・12から連続溝15に向けて下がる方向すなわち通常道路トンネルの路面に形成される道路中心から側壁に向けて下がる方向の傾斜に対応した傾斜形状の表面に形成されているため、火災時等にトンネル内に漏出した危険な液体は、道路に滞留することなく連続溝15に流れ込み、連続溝15で開口している呑口17を通って矩形水路14に入り、円滑に排水されるようになっている。更に、漏出等で一度に大量の液体が路面に生じた場合には、その液体が連続溝15に線状に流れ込んで一旦溜まり、その後に呑口17を介して矩形水路14に流れ込むようになっている。
【0020】
第1実施形態では、連続溝15に液体を線状に排水して一旦溜めてから流すことができるので、火災時等にトンネル内に漏出した危険な液体を連続溝15に溜めて連続的に処理し、周囲に拡散することを防止することができる。また、連続溝15の下側部分である架橋部16で上面部13は連結されているので、断面欠損を間欠的に留めて上面部13及び水路構造体10の必要強度を確保することができる。また、連続溝の幅を5cm以上、深さを5cm以上とする場合には、トンネル100内に危険な液体が漏出した場合等に、その液体を確実に連続溝15に線状排水して連続的に処理し、周囲に拡散することをより確実に防止することができると共に、連続溝15の幅を6cm以下、連続溝15の下側の架橋部の内部に補強鉄筋が配置される場合には、水路構造体10の必要強度をより確実に確保することができる。
【0021】
〔第2実施形態のトンネルの水路構造体及びトンネル構造〕
次に、本発明による第1実施形態のトンネルの水路構造体及びトンネル構造について説明する。図5及び図6は第2実施形態のトンネルの水路構造体を示す図である。
【0022】
第2実施形態のトンネルの水路構造体10aも、コンクリート等により予め工場等で生産され、トンネルの路側に設けられるものであり、図5及び図6に示すように、第1実施形態と同様、底面部11と、両側の側壁12・12と、上面部13とから構成される四角筒状であり、その内部に矩形水路14が内設されている。更に、第1実施形態と同様に、鉄筋である主筋21と、鉄筋であるフープ筋22とが設けられ、フープ筋22は架橋部16内に配置されている(図示省略)。
【0023】
上面部13には、矩形水路14の延びる方向に連続して延び且つ蛇行する経路の連続溝15aが設けられており、又、連続溝15aの下側は連続溝15aの両側の上面部13の部分を架橋する架橋部16になっている。連続溝15aの幅、深さや、連続溝15aの下側の架部16の厚さは第1実施形態と同様に設定すると好適である。連続溝15aには、矩形水路に貫通する呑口17が連続溝15aの延びる方向に離間して所定間隔で複数形成され、各呑口17は架橋部16に貫通して形成されている。呑口17の大きさ、形状は第1実施形態と同様に設定することが可能である。また、呑口17は、蛇行経路の曲がり部分に設ける構成の他、略直線状の直線部分に設ける構成とすることも可能である。
【0024】
トンネルの水路構造体10aも、第1実施形態と同様に、例えば図3に示すトンネル100の路側に設置される。
【0025】
第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、渋滞時等に水路構造体10a上を二輪車が万一走行した場合に対応し、蛇行する連続溝15aで二輪車がスリップすることを防止でき、二輪車の安全性を確保することができる。
【0026】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明には、各発明や実施形態等の構成の他に、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものも含まれ、例えば下記変形例も包含する。
【0027】
例えば第1、第2実施形態の水路構造体10、10aは、トンネルの路側に設けるものであれば適宜であり、監視員等が歩行する通路のないトンネルに設けてもよい。また、連続溝15は、自動車道路101と段差無く連なる面の端縁に配置されるように設けると好適であるが、この端縁よりも自動車道路101の中央寄りに設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、例えば自動車用道路のトンネル等の構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10、10a、50、60…水路構造体 11、51…底面部 12、52…側壁 13、53…上面部 14、54、64…矩形水路 15、15a…連続溝 16…架橋部 17、57…呑口 21…主筋 22…フープ筋 100…トンネル 101…自動車道路 102…側壁 103…通路 104…段差壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部と両側の側壁と上面部とから構成される四角筒状で内部に矩形水路を有し、トンネルの路側に設けられるトンネルの水路構造体であって、
前記上面部に、前記矩形水路の延びる方向に連続して延びる有底の連続溝が設けられ、
前記連続溝に、前記矩形水路に貫通する呑口が前記連続溝の延びる方向に離間して所定間隔で形成されることを特徴とするトンネルの水路構造体。
【請求項2】
前記連続溝が蛇行して設けられることを特徴とする請求項1記載のトンネルの水路構造体。
【請求項3】
前記連続溝の幅が5cm以上6cm以下、深さが5cm以上とされると共に、前記連続溝の下側の架橋部の内部に補強鉄筋が配置されることを特徴とする請求項1又は2記載のトンネルの水路構造体。
【請求項4】
底面部と両側の側壁と上面部とから構成される四角筒状で内部に矩形水路を有し、
前記上面部に、前記矩形水路の延びる方向に連続して延びる有底の連続溝が設けられ、
前記上面部の表面が両側の側壁から連続溝に向けて下がる方向の傾斜形状に形成され、
前記連続溝に、前記矩形水路に貫通する呑口が前記連続溝の延びる方向に離間して所定間隔で形成されるトンネルの水路構造体が、
トンネルの路側に設けられることを特徴とするトンネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−179173(P2011−179173A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41626(P2010−41626)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】